第 8 回 「キュビスムから未来派、ダダイスムへ」

第 8 回 「キュビスムから未来派、ダダイスムへ」
ピカソ、ブラック、コルビュジェ、レジエなど立体派の理論と絵画、キリコとそれに続くボッチオー
ニ、バッラ、カルラ、セヴェリーニを中心としたイタリア未来派とデュシャン、アルプ、マンレイ、シ
ュヴィッターズなどダダイズムの前衛運動について。
ピカソ (1881-1973) Pablo Picasso…アンダルシア地方マラガ生まれ、父は絵画教師
14 歳 バルセロナ…父の美術学校に入学、世紀末の雰囲気
1904 パリを拠点に青の時代…貧しい人々、老人、陰鬱な叙情性
モンマルトルの「洗濯船」Bateau-Lavoir、ロートレックの影響
「絵画は私にとって破壊の集積である」
1905-6 ばら色の時代…造形的な関心、形態の変貌
〈アヴィニョンの娘たち〉…バルセロナ下町の娼婦、複数の視点
幾何学的形態に還元、複雑な多面体の集合
新古典主義の時代…キュビスムの対極、鮮やかな変身
1930 年代…自由奔放な形態の変貌、シュルレアリスムの刺激、社会的関心
1937<ゲルニカ>に結晶…ドイツの攻撃で 2000 人の死亡
第二次大戦後…過去の名作のヴァリエーション
ベラスケス〈宮廷の侍女たち〉、ドラクロア〈アルジェの女〉、マネ〈草上の昼食〉
キュビスムの美学…対象の解体と再構成、破壊することによってつくりあげていく、自己否定の連続、
二次元の平面に遠近法を用いずにいかにして三次元の存在を表現するか
ルネサンス以来の絵画空間の崩壊、フォーヴィスムの色彩の変革のあとに形態と空間の問い直し
ブラックの<エスタック風景>…1908 サロン・ドートンヌ、積み木のようなブロック
マチスがを「キューブ」で構成されていると批評
対象を冷たく眺めて解体、死体解剖する外科医(アポリネール)
人間中心から対象中心の世界に移行…見るものよりも触れるもの
コップ、果実、楽器、新聞、トランプ…触れることで意味を持つ対象を好んで描く
オブジェの概念が芽生える…コラージュ(貼り付け)の技法
分析から綜合へ…「感覚はデフォルメし、精神はフォルメする」(ブラック)
ブラック (1882-1963) Georges Braque
1900 パリで短期間フォーヴ時代
1907-14 キュビスムの探求、冷静で理知的, cf.情熱的なピカソ
第一次大戦後…古典的世界、深みのある色調、
晩年「アトリエ」「鳥」のシリーズ…日常的な詩情
「対象となるものはない。あるのは〈もの〉と私の調和のとれた関係だけだ」
レジエ (1881-1955) Fernand Leger
セザンヌからキュビスムを経て抽象絵画へ、戦後は金属質のフォルムで都市の変貌や機械文明を主題
ピカソ「アヴィニョンの娘たち」1907
ブラック「エスタックの家」1908
ニューヨーク近代美術館
ベルン美術館
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レジエ「三人の女」1921
ニューヨーク近代美術館
未来派 (futurisme) …
イタリアで機械時代の新しい美
1909 未来派宣言…マリネッティ、ムッソリーニと親交
1910 未来派画家宣言…ボッチオーニ、カッラ、ルッソロ、バッラ、ゼヴェリーニ
「競争用自動車はサモトラケのニケよりも美しい」…感覚が機械により変貌
伝統的材料にかえてガラス、セメント、布、電球などを自由に用いる…ダダ的要素
ロシア未来派…ブルリューク、パリモフ、日本の前衛運動に影響
形而上派(Scuola Metafisica)
未来派の激しい破壊運動の後に、静かで不安に満ちたイメージが誕生
キリコ(1888-1978)Giorgio de Chirico…イタリア人
第一次大戦をはさんだ前後 10 年に優れた作例
父親が鉄道技師でギリシャに育つ…古典古代の思い出
機械文明の象徴としての鉄道…憧れと反発
1906 ミュンヘンでベックリン、クリンガーなどにふれる…現実を超えた世界
日常の合理性を超えた論理に思いがけない未知の世界を切り開く
広場とマネキン…シュルレアリスムの創始者
ダダ…キリコの現代的不安を急進的な行動で実現
1916 ニューヨークとチューリッヒで運動の開始、反芸術運動
第一次大戦の最中に中立国で起こる…戦火を逃れた芸術家たちによるレジスタントとして
チューリッヒ…拠点キャバレー・ヴォルテール、詩人フーゴ・バルが開設、ツァラとアルプが加わる
辞書の 1 頁から「ダダ」の語を見つける
アルプ(1887-1966)Jean Arp…うねるような曲線、フォルムの創造、絵画から造形へ
ニューヨーク
ピカビア(1879-1953)Francis Picabia…1913 パリからアーモリーショウでアメリカへ
デュシャン(1887-1968)Marcel Duchamp…1912〈階段を降りる裸体〉
第一次大戦とともにアメリカへ
1917 アンデパンダン展に陶器の便器〈泉〉…「レディメイド」のオブジェ
物体に対する新しい思考…ポップアート、ジャンクアートへ
晩年は芸術を放棄してチェスにふける
バッラ
つながれた犬のダイナミズム 1912 ニューヨーク
デ・キリコ
デュシャン
出発の苦悶 1914 バッファロー
泉 1917
By Masaaki Kambara
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