2008年度 iVDRハードディスクドライブ・コンソーシアムセミナー iVDRが切り開く新しいコンテンツビジネス 2008年5月27日 株式会社シネマプラス 松尾秀城 目次 1. 映像コンテンツ収録メディアとしてのiVDRの特徴 2. iVDRにとっての映像コンテンツビジネス (包括的な整理) 3. 「ビデオグラム」と「配信(公衆送信)」 4. 事業の実現性の評価 5. iVDRでの映像コンテンツビジネスの「手札」 6. 映像コンテンツビジネスの特性 7. 映像コンテンツビジネスの特性とiVDRの親和性 8. iVDRでの映像コンテンツビジネスの課題 9. iVDRでの映像コンテンツビジネスのために (準備すべきことの例示) 1 シネマプラスの紹介 商号 • 株式会社シネマプラス(Cinema Plus Co.,Ltd.) 主な事業 • 業務施設向けVOD番組供給事業/機器卸売事業 設立日 立 • 2005年9月16日 資本金 • 3億円 役員 • • • • 代表取締役 取締役 取締役 監査役 株主 • • • • • • • • 東映株式会社 ・ • 東映アニメーション株式会社 • 東映ビデオ株式会社 松竹株式会社 ・ 東宝株式会社 ・ 角川映画株式会社 ・ 株式会社インデックス・ホールディングス 株式会社エフワンインタラクティブコンテンツ 株式会社東映エージエンシー ・ 株式会社ブリッジ・モーション・トゥモロー • http://www.cinema-plus.co.jp/ Webページ 折坂 哲郎 古玉 國彦 松尾 秀城 安田 健二 株式会社野村総合研究所 KDDI株式会社 株式会社ネットマークス 加賀電子株式会社 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 2 1.映像コンテンツ収録メディアとしてのiVDRの特徴 大容量 映画や舞台など1作品2時間として・・ 160GBあれば、フルハイビジョンで10作品、DVD並み画質で30作品収録可能 最大10作品 Hi-Vision DVD 「iV」160GB 高い # データ量当たりを云々している のではなく絶対金額として HDDである 最大30作品 シンプルなHDDの値段から類推すると・・・ 容量の如何を問わず、原価でも数千円台後半が限界? (+SAFIAのライセンスフィー) コンピューター製品的な取り扱いが可能。 例えば、ネット経由で情報を入手しての収録内容の追記や更新が容易。 この3つの特徴により・・・ 1つのメディアにたくさんのコンテンツを入れることが必須 より特性を活かすためには ネットと連携し 作品関連情報を連携・収録 より特性を活かすためには、ネットと連携し、作品関連情報を連携・収録 3 2.iVDRにとっての映像コンテンツビジネス ビデオセル • • メディアが高価なため、1つのメディアに1つのタイトルでは割が悪い(例えば、 1つの映画を1~2万円で売ることとなり、現実的ではない)。いわゆるヒットも のは向いていない。 大容量のため、複数のタイトルを収録できるので、シリーズものや全集もの ズ が適切(DVDボックスの企画・編成と同様;アニメやテレビの1シリーズや特 定ジャンルの全集もの)。 商品価格に対するメディアの原価比率を合理的な水準に抑えるには、最低 でも、3~4万円以上のパッケージとなり、趣味性、嗜好性の強い、 も 上 パ ケ ジとなり 趣味性 嗜好性 強 高くても買い手がつくようなプレミアム感のあるものが求められる。 • iVDRという収録媒体をユーザーとビデオレンタル主体間で「通い箱」的に使う。 う収録媒体を ザ デオ ンタル 体間 通 箱」的 使う。 • オンラインレンタルDVDは、1度にDVD2枚、1ヶ月8枚程度を郵送でユー ザーとの間をやり取りし、ビデオレンタルを成立させているが、本事業では、例 えば、同程度もしくはそれ以上の作品数を、1ヶ月分としてiVDRに収録し、 iVDRを「通い箱」としてやり取りする iVDRを「通い箱」としてやり取りする。 • • ビデオレンタル (包括的な整理) (具体的なビジネスモデルを次ページに例示) 4 2.iVDRにとっての映像コンテンツビジネス (つづき) (ビジネスモデル事例) 「iV」を使った月額定額会員型ビデオネットレンタル 月額定額○○円で、ユーザーは、毎月確実に、視たいビデオ新作をレンタルすることができます。 3 4 「iV」にこの☆作品のビデオファイルを収録し ユーザーに送付します。ユーザーは、 1ヶ月間の内に送付された作品を視聴します。 ユーザーは、毎月末に 翌月の視聴希望☆作品を選ぶと同時に 「iV」を私どもに返送します。 1 ネットレンタルは、毎月、毎月、 有力ビデオ新作を ○作品ほど、準備します。 「iV」が通い箱 データ参照 「iV」送付 書き換え 「iV」送付 2 ユーザーは、○作品の新作ラインナップ から☆作品を選択します。 データ送信 データ管理 管理センタ 管理センター 登録 エンドユ エント ユーサ ザー 「iV」は、DVDと違い、何度でも書き換えができる 記録媒体です。「iV」が通い箱となり、ユーザー にレンタルビデオを送り届けます。 5 2.iVDRにとっての映像コンテンツビジネス EST (Electronic Sell-Through) • • • (つづき) ネットワーク経由のPCもしくはTVでの映像のダウンロード販売 ビデオセル/レンタルと異なり、iVDRに映像が固定され、iVDRが物理的に 移動することにより、ユーザーの手元に到達するわけではないので、何らか の意図を持って、映像コンテンツを束ねる必要はなく、コンテンツを単品で販 像 売することができる。 コンテンツの収録先がiVDRとなり、iVDRの手軽に、大量の映像データ保存 ができるという特性をコンテンツ単品売りで活かすことができる。 6 3.「ビデオグラム」と「配信(公衆送信)」ビジネス ビデオグラム 映像をメディアに固定し、流通するもの 配信(公衆送信) 映像をサーバーにアップロードし 映像をサ バ にアップロ ドし、ネットワ ネットワークを通じてアクセス(流通)するもの クを通じてアクセス(流通)するもの どちらにあたるかで、権利者の利用許諾の形態が異なる・・・ ビデオレンタル ビデオグラム (通い箱方式) のビジネス は? POD 配信 (Package on Demand)は? のビジネス コンピューターシステムを用いた対応をしており、配信に近しい イメージがあるが、ネットワークを通じて、映像を流通させてい ないため、配信にあたらない。 DVDを使っており、ビデオグラムとイメージしがちであるが、 映像の流通をインターネット通じて行っているため、 配信となり ビデオグラムとはならない 配信となり、ビデオグラムとはならない (参考)POD(Package g on Demand)の事業例 (会社名)株式会社ウェブストリーム (商品名)DVD Toaster • DVDの映像ファイルをダウンロードし、DVDメディアに書き込むESTの一種となる。 • 後述の理由などもあり、現時点では、タイトルのラインナップは限定的(グラビアものなど旬が短く、低コスト、 権利処理が容易なもの) 権利処理が容易なもの)。 7 4.事業の実現性の評価 ビデオセル • • • • ビデオレンタル (通い箱方式) • • • • EST (Electronic Sell-Through) • • • 1タイトルからでも事業をはじめることができる。 ビデオグラム化権を持つ事業者であれば、すぐにでも対応が可能であり、事 業の実現性は高い。 高 価格 高い価格で、強いニーズがあるものを手がければ、利益を出すことが可能。 強 ズがあるも を手が れば 利益を出す とが 能 ただし、広範な動きとなるかは、後述する課題がある。 1タイトルでははじめられず、業界として取り組むところまで進まないと事業が 成立 な 成立しない。 また仮にそこをクリアしても、事業開始初期コストが大きく、オンラインレンタ ルDVDより経済合理性に適った事業形態となるかは不明。 オンラインレンタルDVDと競合となるが、、同分野自体が既に競争が激しく、 業界 位 業界2位以下が生き残るのは大変。 が生き残る は大変 ビデオレンタル(店舗、オンライン)と共存共栄の映画/ビデオ会社が、現在 の関係を不安定にしてまで、事業実施に協力があるかは未知数。 ワーナーなど洋画会社では取り組みをはじめたところがあるが、邦画会社は 現時点では行っていない。 以下にあげる理由等があり、本格化までは時間が必要。 次ページに課題を整理。 課 。 8 4.事業の実現性の評価 (つづき) EST (Electronic Sell-Through)の実現までの課題 権利処理の問題 セルビデオとの関係 • 現在の配信は、全部ストリーミングでの実施が前提で、権利処理ルー ル(権利者への支払料率等)が決まっている。 • ストリーミングの特性 • 映像を固定できない。 • 視聴が期間限定で可能(→レンタル的な扱い) • • ESTとなると、このルールを一から再度作ることとなる。 ちなみに、ストリーミングの時には、ルールの検討開始から合意まで、 事実上2~3年を要した。 • • ESTは、セルビデオとのカニバリゼーションが発生するとされている。 映画は、上映からビデオ販売、VOD、有料放送、地上波放送等マルチ ユースをして、投資を回収していくビジネスであるが、これらの中で、EST を、どのウィンドウで、どの位置付けでビジネスしていくのかが定まって いない。 9 5. iVDRでの映像コンテンツビジネスの「手札」 ビデオセル ○ ビデオレンタル(通い箱方式) × 事業実現のハードルが高い(既事業者の参入必要) 事業実現のハ ドルが高い(既事業者の参入必要) EST (Electronic Sell-Through) △ 本格化までに時間がかかる(2~3年?) 放送の私的録画 ○ (DVDのリッピング) 検討しない(下記参照) (参考)DVDのリッピング • DVDビデオはそもそも技術的に複製禁止 ・・・ 10 6.映像コンテンツビジネスの特性 DVDビデオの市場から見る映像コンテンツビジネスの特性 ビデオ 市場から見る映像 ビジネ 特性 セルビデオは、2割に満たない人で、9割以上の市場を形成している 世でよくいう2:8のビジネスの典型であり、極端にヘビーユーザーに依拠した市場である。 レンタルもセルほどではないが、同様の傾向。 セル市場におけるヘビーユーザー 人数 8 2% 10.0% 8.2% 10 0% 7.9% 7 9% 8.5% 8 5% 65 4% 65.4% 71.5% 利用金額 19.5% 6.1% 2 9% 2.9% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 3万円以上 1万円以上3万円以内 5千円以上1万円以内 1円以上5千円未満 購入なし レンタル市場におけるヘビーユーザー ンタル市場における ザ 人数 3.2% 利用金額 0% 9.9% 6.3% 31.3% 20% 37.8% 42.8% 25.9% 40% 20.8% 60% 22.0% 80% 100% 2万円以上 1万円以上2万円以内 5千円以上1万円以内 1円以上5千円未満 購入なし (出所) 「DVDマーケット調査2006」(社団法人 日本映像ソフト協会によるアンケート調査) 11 6.映像コンテンツビジネスの特性 (つづき) ヘビーユーザーの消費特性 ビ ザ の消費特性 またヘビーユーザーは、一般的なヒットものの購入の割合は相対的に低く、 特定の性質を持つコンテンツに、強い嗜好性を持つ。 年間購入金額層別のDVD購入ジャンル 年間購入金額層別のDVD購入ジャンル 3万円以上 22.3% 4.8% 26 6% 26.6% 1万円以上3万円以内 5千円以上1万円以内 7 7% 7.7% 29.9% 1円以上5千円未満 42.1% 0% 23.2% 20% 8.3% 10.2% 14 7% 14.7% 13.4% 39.6% 16 0% 16.0% 24.9% 6.0% 7.3% 10.4% 40% 35 0% 35.0% 60% 23.5% 34.2% 80% 100% 海外の映画 日本の映画 日本のアニメーション 日本の音楽ビデオ その他 (出所) 「DVDマーケット調査2006」(社団法人 日本映像ソフト協会によるアンケート調査) 12 6.映像コンテンツビジネスの特性 (つづき) 映像 映像コンテンツの市場とは・・・ 市場とは 1人当たり の購入量 1人当たり の購入量 嗜好/人の広がり 漠然とした「薄く、広い」市場が、 層を重ねていっているものではなく・・・ 嗜好/人の広がり 「濃く、深い」市場が束ねられてできている市場である。 13 7.映像コンテンツビジネスの特性とiVDRの親和性 iVDR 映像 コンテンツ たくさん入る! 「濃く、深く」、「ためて、揃えて」 「濃く 深く」 「ためて 揃えて」 がヘビーな利用形態 iVDRの特性を活かして、「ためて、揃えて」価値が出るコンテンツにiVDRを使う 「ためて、揃えて」価値が出るコンテンツ • • • 何度も見る(かもしれない) 捨てたくない 情報・時間消費型ではなく、趣味・娯楽型のコンテンツ iVDRは、映像コンテンツビジネスのコアなユーザーの部分を掬いとることができる大きな可能性を秘めている。 ところがこのままではうまくいかない! なぜか? 14 8. iVDRでの映像コンテンツビジネスの課題 認知度が低い • • • 映画/ビデオ会社のビデオ販売企画の担当者の間でさえ、認知度が非常に低い 普及 の尽力が映画/ビデオ会社 伝わっていない(シンボリックな動きがないし、 普及への尽力が映画/ビデオ会社へ伝わっていない(シンボリックな動きがないし、 アーリーアダプター等のための専門媒体やWebでさえ、情報に接する機会がない) 映画/ビデオ会社がiVDRの未来をイメージしにくい(期待値が発生する状況にな い) このままでは、どこも映画会社/ビデオ会社はiVセルビデオを出さない • • パッケージ制作のための機器等への初期投資、都度の制作作業費 iV視聴可能な機器の台数規模が小さい • 映画会社/ビデオ会社自らもうかるかどうかわからなくて出すメリットはない(リスク を負ってでも、iVDRを普及させるインセンティブはビデオ会社にはもちろんない) 仮にこうした費用を持たないとしても、権利者への説明が非常に大変 • 15 8. iVDRでの映像コンテンツビジネスの課題 (つづき) もっと本質的な課題! iVDRがパーソナルなメディアに脱皮できていない がパ ナ な デ 脱皮 き な • • • コンテンツの趣味・嗜好・必要性は、各人により様々 モニターは家族共通のものでいいが、本質的にコンテンツはパーソナルなもの(家族一緒のものではな い) iVDRがパーソナル性のニーズにきめ細かな対応をした機能開発ができるかどうか HDDレコーダー(プレーヤー)が、iPodのようなパーソナルなメディアに脱皮する必要 ではどんな機能開発を? → 秘密! では準備す きことは? では準備すべきことは? 16 9. iVDRでの映像コンテンツビジネスのために (準備すべきことの例示) (参考)iPod • • 数千~数万曲、大量のCDライブラリが手のひらに、外に 優れた検索性(&作品情報付与)、操作性 • ある意味 究極のパ ソナルメデ ア ある意味、究極のパーソナルメディア どんどんリッピング そしてiTunesを通じて どんどんダウンロード! 個人的趣味・嗜好の映像コンテンツをどんどん収録していくための「橋渡し」が必要。 • 例えば、iPodにとってのiTunesみたいなもの。 (具体的な一案) • • • TV番組をどんどん録画、将来的にはESTでどんどんダウンロードを促していくための趣味・嗜好別の PC及びTVのWebページをいくつも立ち上げていく。 「濃く、深い」コンテンツのコミュニティを吸い寄せる。 魅力的な情報と 発録画、ダウン 魅力的な情報と一発録画、ダウンロードを実現する機能。 ドを実現する機能。 • 「濃く、深い」コミュニティサイトをいくつもつくり、必要に応じてそれを束ねたサイトを作っていく。漠然 とした総合コンテンツサイトを作ってもiVDRと親和性がない。 • 「濃く、深い」コミュニティは、必ずしもおたくではないです。 • ただし、TVのWeb利用に際しては、パワフルなブラウジングが必須 • 知的好奇心旺盛なコミュニティが相手です。 • PCが使えない人のためのTVのWebブラウジングではありません。 17 9. iVDRでの映像コンテンツビジネスのために (準備すべきことの例示) あとは、iVセルビデオを出してもらう誘い水を作ること • • 究極は「勝ち馬に見せる」ことが最終の目標だが、まずは映画/ビデオ会社に知ってもらうことが必要 とにかくど かの ミ とにかくどこかのコミュニティをターゲットにiVDRを普及させたい側がiVセルビデオを出すこと ティをタ ゲットにiVDRを普及させたい側がiVセルビデオを出す と • 認知してもらわないとはじまらないし、コミュニティを知らないと映像コンテンツビジネスの戦略は一向に 深まらない 18
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