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『MEXICO ROCK GASOLINE BACK BREAKER』 やりたいこと

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『MEXICO ROCK GASOLINE BACK BREAKER』
□やりたいこと
『世界は滅びても、ロックと映画は死なない』をテーマに、核戦争後の廃墟と化した
東京にやってくる伝説のロックバンド、それにあこがれる少年、どんな世界でも自分
の夢を追いかける男たち、自由と権力の対立、つまり若者のすべてをマッドマックス
2的な世界観と骨太なロックのビートに乗せて描きたい。
色は『19』のような色あせた感じ。70 年代のアメリカ映画をお昼のロードショーで
見るような質感。崩壊世界を表現するのにマッドペインティングとかを駆使してやっ
てみたい。実在のロックバンドを崩壊世界に登場させ、コンサートをさせたい。サン
トラとかも出して、カッチョよくしたい。
□登場人物
フルタ(17)…高校を脱走して、トライセラトップスのコンサートを東京まで見にくる高
校生。でも、気が弱い。写真を撮るのが好き。
ニッタ(18)…フルタのマブダチの不良高校生。ロックスター志望。
トライセラトップス…伝説のロックバンド。ミサイル搭載のマークⅡに乗って、崩壊した
東京にコンサートをしにやってくる。
映画屋(25)…無法地帯化した東京で仲間と共に映画を撮る男。だが、その撮影は過激で
度重なるテロ行為から、支配者と対立している。
タムラ(25)…映画屋のクルーでカメラマン。プロレスラーなみの体格に全身刺青。無口
な男だが、とても母親思い。
モヒカン(24)…映画屋のクルーで雑用係。パンクな格好のわりに仲間内では一番常識人
だったりする。モヒカンなのにマンガ『北斗の拳』が大好き。
アロハ(26)…映画屋のクルーで、自称プロデューサー。元サギ師で口だけは達者な小男。
いつもアロハシャツを着ている。
女王(25)…映画屋たちのたまり場、喫茶店ギャルのマスター。ヘビースモーカー。
カンナ(17)…女王の妹。姉に似てヘビースモーカー。
支配者(43)…東京復興を目指す支配者。東京の街を壊滅させる映画屋たちのテロ行為ま
がいの撮影に『映画はファシズムにジャマになる』と言い放つ。
老人(76)…いつも映画屋のことを見ている謎の老人。実は昭和の俳優、天本英世。
『MEXICO ROCK GASOLINE BACK BREAKER』
テロップ
−世界は滅びても、ロックと映画は死なない−
1.道路(昼)
−A FEW YEARS FROM NOW(今から数年後)−
焼けつくアスファルト。もやのようなものが出ている。
まるで西部劇のように砂煙や新聞紙が飛んでいる。
世界は滅び文明は荒廃し、まるでマッドマックス2(1でも3でもない)のような世
界と化している。東京タワーも見事に折れ曲がっている。
ボロボロになった『東京都』の標識。
道をふたりのつなぎを着た少年が歩いている。田舎のヤンキー風味。でも、どこかと
ぼけた感じのある憎めない少年たちである。背中にはでかい背番号。
首からニコンのカメラを下げた心配性のフルタに、ギターを背負ったいい加減な感じ
のにきび顔の少年ニッタ。
ニッタ「イギー・ポップ」
フルタ「プロデジィ」
ニッタ「イングヴェ」
フルタ「エルビス・コステロ」
ニッタ「ロビンマスク」
フルタ「違うよそれ、キン肉マンじゃん」
ふたり、地面にぺたりと座り込んでごろんと寝転んでみる。
ニッタ「ホントになんにもないよ」
フルタ「大丈夫かな…」
ニッタ「大丈夫だよ。先公なんてここまで追ってくる度胸なんかないよ」
フルタ「そうじゃなくってサ…。こんなところまできて…帰れるかなあ?」
ニッタ「馬鹿言うなよ今さら学校帰ったって、停学だろ?」
フルタ「今なら反省文で済むよ」
ニッタ「めんどくせー」
フルタを背にして寝ているニッタの顔に新聞紙が飛んできてひっつく。
ニッタうざったそうにそれを払いのけて丸めようとするが、記事に目を通して慌てて、
ニッタ「やっぱり!これ見てみろ。やっぱりくるんだよ。トライセラーが!!」
大喜びするニッタ。東スポ風の新聞記事には“トライセラトップスが関東でコンサー
ト”と書かれている。日付は 200X 年 7 月となっている。
□タイトル
クラシックなテレビからライブの模様。テレビ画面の荒れた映像。
核爆弾の投下された軍用映像。
トライセラトップスがメチャメチャなテンションでライブをしている。
その映像にキャスト・スタッフクレジットがかぶる。
『MEXICO ROCK GASOLINE BACK BREAKER』
ラストのクレジットが終わったところで TV がドカンと爆発する。
○食堂(*ここから映画屋たちの登場まで一連で昼)
バラックで壊れかけの食堂。
フルタとニッタがメシを食べている。
それを見ている店のオヤジ。一見、弱そうなやさぐれ風のショボい親父。
一気にメシを食い終えるフルタとニッタ。
ニッタ「オヤジ、お茶くれ」
オヤジ、ぶっきらぼうにヤカンごと置いていく。
フルタ、親父が去っていったのを確認して小声で。
フルタ「ねえ、金持ってるの?」
お茶を飲みながら、
ニッタ「ん?」
フルタ「いや、だって俺たち金なんて持ってないじゃん」
ニッタ「うん」
フルタ「うんってどうするの?」
ニッタ「あ?バカかお前。金はな、払うもんじゃねえ、奪うんだ」
ニッタ、腰からナイフを取り出す。
ニッタ「ジジイひとりだろ、ちょろいもんよ」
ニッタ、ヤカンを持って大声で、
ニッタ「オヤジ、お茶だよ!」
オヤジがめんどくさそうに戻ってくる。そこに、オヤジの喉笛にナイフを突きつけ。
ニッタ「金出せ、ありったけだ」
フルタ「(調子こいて)なんだよ。ビビって声も出ないの?」
オヤジ、黙ってレジの中からリボルバーのコルトパイソンを取り出して、ニッタのア
タマに逆に突きつける。顔は善良そうに笑っている。
ニッタ「(ビビりながら)脅しは…」
オヤジ、迷うことなく引き金を引く。
バンと発砲して、間一髪アタマをずらしたニッタはしりもちをついて倒れる。
ニッタ「あぶねえだろ!殺す気かよ!」
○定食屋・前
定食屋の前でボコボコにされているニッタ。
オヤジ、フルタの背負っているギターを奪い、地面でタバコを消す。
オヤジ「これで命だけは許してやる。とっとと学校帰れ」
オヤジ、店の中に帰っていく。
ニッタ、オヤジが帰ったのを確認してようやく起き上がる。
フルタ「大丈夫…?」
ニッタ「(強がって)今日はここで勘弁しといてやる」
道につばを吐き捨てて、また歩いて行く。
○交番
半分壊れかけた交番。
『今日の死亡者』の欄には“かなりたくさん”とか書かれている。
『今日の事故者』の欄には“はかりしれない”とかかれている。
『無事故目標数』のところには“特になし”と書かれている。
フルタとニッタが被害届を出しにきている。
なぜか警官、調書を取りながら半笑い。
ニッタ「いや、だからね…」
警官「ギター取られたっていうんでしょ。聞いたよ。だいたいね、ここどこかわかってる
の?東京よ、東京。犯罪者の天国。外じゃどうか知らないけどさ」
警官、東京の地図に赤線を引っ張りながら、
警官「戦争のあと、法律が通じるのはここからここまで。(東京以外)ここで人を殺したと
しても、こっち(東京)に逃げ込んでこればおとがめなし。法律なんておかまいなしの
連中だらけなんだから、日本であって日本じゃないのよ、ここは」
ニッタ「なんだよそれ、俺たち被害者なんだから…」
警官「(態度が変わり)それ、しつこい。いいか?さっきから言ってるけど、ここじゃ法律
なんてないの。法律がないってことは、警察なんてあるわけないでしょ。わかる?」
○交番・前
手錠をかけられ、みぐるみはがされるフルタとニッタ。ニッタのGショックも外され
ている。警官は警察官の格好をしているだけのニセ警官。
半笑いのニセ警官は、ポパイのブルートみたいな人買いにふたりを売り渡してる。
フルタ「ココ警察じゃないの?」
ニッタ「なんだよ、その格好はよ!まぎらわしいんだよ!」
ニセ警官「ファッションだよ。ええ?3 千円なの?これじゃ、ファミコンも買えないよ」
人買い「あとは歩合。資本主義だから」
警官、人買いのルックスを見て、
ニセ警官「顔がマルクスなんだよ」
フルタたちがトラックに連れられていっている。
ニセ警官「(笑って)働け、バカ」
フルタとニッタ、トラックに乗せられていく。
半笑いの警官、笑って交番の中に入っていく。
○トラック
トラックに揺られているふたり。無言のまま。
フルタ「どうするの…?」
ニッタ「(しょんぼり)…」
○丘の上
小高い丘の上で 16 ミリのカメラをセッティングするタンクトップの巨大な筋肉質の男、
タムラ(25)。全身に『ケープ・フィアー』のデ・ニーロばりの刺青をしている。
タムラ、腰のバックから露出計を取り出し、器用に露出を測っている。
もうひとりのリーゼントで調子よさげなアロハシャツをきた小男アロハ(26)。
軍事無線を手にとり、
アロハ「よさげなトラックきたぞ」
○砂地
ジープに乗って双眼鏡を覗き込む軍服にサングラスの男。まるでテロリスト。
パックの森永牛乳を飲んでいる。
ジープのうしろにはラジコンの田宮模型の星マークシールがついてる。
サングラスの男は映画監督。通称“映画屋”(25)。
どでかい軍事用の無線を手にとって、
アロハの声『聞いてるか?』
映画屋「聞こえてる」
隣ではモヒカンの凶悪そうな男がジープの運転席に座ってマンガの『北斗の拳』を読
んでいる。
映画屋「お前がそのマンガ読んでるの、かなりギャグだよ」
モヒカン「なんで?」
○トラック
口笛を吹きながら運転する人買い。
ニッタが小窓から顔を出して、人買いに懇願している。
ニッタ「なあ、帰してくれよ!俺たち、埼玉からきたんだよ、ヤングドーナツやるからさ」
フルタ「ライブ見にきただけなんですよ!」
人買い、裏拳でニッタの顔を殴る。
ニッタ、鼻を押さえてうずくまってる。
○砂地
ジープの映画屋たち。
マンガに熱中するモヒカンのアタマを叩いて、
映画屋「行くぞ」
モヒカン「マンガの途中なのに」
バンと『北斗の拳』を置く。そしてモヒカン、車を走らせる。
映画屋「一発勝負だからな。ミスるなよ」
モヒカン「わかってるよ。タムラに言え」
アロハの声『じゃあ、お前、失敗したら坊主な』
モヒカン「うるせー」
映画屋「ハハ」
目の前にニッタたちが乗ったトラックが迫ってくる。
○トラック
人買い、目の前から爆走してくるジープに、
人買い「?」
○丘の上
ニヤリと笑うアロハ。
アロハ「さあ、ド派手に行こうぜ!用意!」
○砂地
映画屋「スタート!」
ジープがトラックの前に立ちふさがるカタチで止まる。
映画屋、巨大なマシンガン(バズーカかも?)を取り出し、トラックに向けて乱射す
る。
トラックはタイヤを打ち抜かれて横転する。
モヒカン「やった!」
トラックの中のフルタたち、中で思いっきり回転している。
気がつくと、さかさまになったトラックの扉が開いている。フルタとニッタとりあえ
ず逃げ出す。外では横転したトラック。
人買いが車にはさまれて、もがいている。
人買い「なんだよ一体!俺に恨みでもあるのか!戦争は海外でやれこのスカタンが!」
映画屋、そんな人買いを無視してトランシーバーで会話してる。
映画屋「撮れたか?」
アロハの声『バッチリ、スローモーション』
映画屋「爆発の絵も欲しいな」
アロハの声『大丈夫タムラ?まだ、充分フィルムあまってるよ』
ガソリンがガソリンタンクからポタポタともれてきている。
呆然とその模様を見ているフルタとニッタ。
フルタ「あの…なにしてるんですか?」
映画屋「あ?」
ニッタ「いや、これなに?」
発火筒をバシュっとつける映画屋。
映画屋「あ、そこ。どいたほうがいいぞ。爆破するから」
ニッタ「ちょ、ちょ、ちょ」
思い切りトラックの瓦礫に挟まってる人買い。
人買い「おい、お前ら助けろよ!」
映画屋、発火筒を投げ捨ててガソリンに引火させる。
間一髪逃げるフルタとニッタ。後ろでトラックで大爆発してる。
映画屋「あはは!」
モヒカン「スゲー、戦争みたい」
ふたりとも、大笑い。
爆発のススまみれのフルタとニッタ。状況が理解できない。
フルタ「…」
ニッタ「…」
ジープのボンネットに座っているフルタとニッタ。
タムラがカメラを担いで歩いてくる。プロレスラーみたいなタムラにびびるふたり。
映画屋「みない顔だな。本土から迷い込んだか?」
モヒカン「ライブみにきたんだと。中坊か?」
ニッタ「高校だよ」
アロハ「悪いこた言わない、送ってやるから学校帰んな。今だったら丸坊主で許してもら
えるだろ?」
ニッタ「誰が切るか!髪はロッカーの命なんだ」
モヒカン「ハハ、レゲエの王様みたい。キライじゃないよ、そういうの」
モヒカンがマックスコーヒーをふたりに渡し。
モヒカン「飲む?」
フルタとニッタ、黙ってそれを飲む。
フルタ「甘い…」
映画屋「そのうち慣れる」
フルタ「なにしてるんですか?」
映画屋「なにって…。見ればわかるだろ?」
ニッタ「あれだ、テロリスト」
映画屋「こんなに愉快なテロリストがいるかよ」
アロハ「映画撮ってるんだよ。映画」
フルタ「映画?」
モヒカン「トラックが爆発炎上するシーンが欲しかったんだ。バッチリ押さえた。な?タ
ムラ」
タムラ、軽く手を上げて答える。カメラを大事そうにしまっている。
ニッタ「はあ?そんな理由でトラックぶっこわしたの?」
映画屋「そうだよ。悪い?」
ニッタ「そいうの犯罪って言うんだよ」
モヒカン「ハハ」
頭を手で押さえて、手錠をうらめしそうに見つめるニッタ。
映画屋、笑って腰のコルトウッズマン(『ワイルド7』で飛葉が使用してたもの)を抜
き出し狙いをつける。
ニッタ、撃ち殺されると思い両手を上げて、
ニッタ「やめて…!」
映画屋、パンと手錠の鎖を打ち抜く。
ニッタ、すっ転んで目をぱちくりさせて、
ニッタ「あぶねっ!!あぶねーよ!」
○廃車工場(アロハの家)(*映画屋の家まで一連で夜)
ボロボロの廃車工場。廃車が山のように積んである。
アロハの飼い犬、ミサイルがぐうぐう眠っている。
映画屋とタムラ、工事用のバーナーのマスクをつけてフルタの手錠を焼き切ってる。
横で見ているニッタと、けだるい感じでタバコを吸っている少女、カンナ(17)。歯に
矯正のギプスをつけている。
ニッタ「(カッコつけて)1 本くれよ」
カンナ、タバコを 1 本渡す。バーナーで火をつける。
ニッタ恐る恐る火をつけるが、すぐにむせて咳き込む。
ニッタ「なんだこれ?」
カンナ「センブンスター。ダサ」
タムラがフルタの手錠を焼ききる。
フルタ「ありがとうございます」
映画屋「次」
映画屋、今度はニッタの手錠も焼ききろうとするが、ニッタは文句が多い。
ニッタ「熱いよ!」
映画屋「文句言うな」
カンナ「男の子でしょ」
ニッタ「熱い!熱いって!」
映画屋「(恐い)うるせえバカヤロー!黙ってろ!」
と、言ってるうちにバーナーのガスが切れる。
映画屋「あれ?」
ニッタ「なんだよ、早くしろよ」
映画屋「ガス切れ。まあ、いいか。鎖は取れてるわけだし」
ニッタ「ふざけんなよ。どうにかしろよ」
タムラがニッタのアタマをどつく。
映画屋「あんまり調子に乗るなよ」
ニッタ「(弱気…)すいません」
鎖のちぎれた手錠をつけたままのニッタ。不満そう。
○廃車工場・前
カンナを呼び止める、映画屋。
映画屋「カンナ、女王いま店にいるか?」
カンナ「たぶん」
映画屋「わかった」
車に乗り込む。
カンナ「姉貴になんか用?」
映画屋「頼みごと」
カンナ「店まで行くなら連れてってよ」
○車
走る車。映画屋とカンナ。カンナ、タバコを吸っている。
映画屋「子供がタバコ吸うなよ」
カンナ「来月で 18。もう大人よ」
映画屋「パッケージ見てみろ。タバコは 20 歳になってからだ」
○喫茶店ギャル
映画屋たちのたまり場の喫茶店。どこにでもありそうな普通の喫茶店。
この店はカンナの姉の女王が経営している。
入ってくる映画屋とカンナ。
映画屋「よお女王」
後ろ向きでラジオで競馬中継を聞いている若い女。映画屋と同じくらいの年齢だろう
か?カンナの姉の女王(25)、タバコを吸っている。女王、映画屋がいるのにまったく
無視してラジオを聞いている。そして、一通り聞き終えた後、ようやく振り返る。や
はりカンナの姉で美人である。
女王「アンタがくるまでいい感じだったのよね。マッタク」
映画屋「またハズレか。いいかげんやめにしろよ。そのぶん料理の学校にでも行け」
女王「よけいなお世話よ。カンナ、バカがうつるから離れな」
映画屋「頼みがあるんだけどよ」
女王「金ならないよ」
映画屋「わかってるよ、バカ。いや、お前の家まだ部屋余ってたろ?高校生のガキがふた
りいるんだけど、しばらく預かってくれねえかな?」
女王「お断り」
映画屋「なんでだよ」
女王、カンナの方を見ながら、
女王「家には年頃の妹がいるの。女の二人暮しの邪魔しないで」
映画屋「そんな冷たいこというなよ」
女王「じゃあ、アンタがカンナ預かってくれる?」
映画屋「…」
女王「ウソ」
女王、手を差し出し、
映画屋「?」
女王「1 泊 1000 円でいいよ」
映画屋「ふざけんな」
○映画館・倉庫
半分土に埋まったぶっ壊れた映画館。
フルタとニッタ、毛布を持たされている。
埃まみれの倉庫に連れてこられてる。きしむドアを思いっきり蹴破ると埃が山のよう
に降ってくる。まるで座敷牢みたいな 4 畳半に裸電球の倉庫。そこにはビデオやマン
ガ本が散乱している。2人でいるだけでいっぱいになる部屋。
映画屋「いろいろ聞いてみたんだけどな、あのでかいの、タムラん家はオフクロがいるし、
アロハはウチが車だし、モヒカンのアパートは拾ってきたマンガでいっぱいだから、ま
あここ使えよ」
フルタ「ありがとうございます…」
映画屋、ふたりに歯ブラシを渡して、
映画屋「歯だけは磨け。明日は 6 時出発だから、夜更かしするなよ」
ニッタ「え?」
○東京スラム(*撮影現場のくだりは一連で昼から夕方)
フルタとニッタがなぜかADで撮影に参加している。
映画屋「今日からADで入ったフルタとニッタ」
フルタ「(元気よく)フルタです」
ニッタ「(やる気がない)…」
DATを首からさげてガンマイクを持ってヘッドホンで音を確認しているモヒカン。
フルタとニッタ重い荷物ばっかり持たされている。
ニッタ「なんでこんなこと…」
フルタ「とりあえずサ、バイトしないと」
ニッタ「だいたい金持ってるのかよ、コイツら」
モヒカンの声「ハイハット!」
ニッタ「はい!」
作り笑いで、持っていく。
アロハ「は、本番行くぞー」
モヒカン、ヘッドホンを当てて、音を聞いている。
モヒカン「ちょい待ち!なんか飛行機の音が入ってくる」
映画屋「バカ野郎!撃ち落せ!」
モヒカン「無理なことばっか言うなよ!」
アロハ「もういいよ、はいじゃあ本番!」
フルタが珍しそうにタムラのカメラをのぞきこんでる。タムラ、フルタをじろりと見
る。フルタ、思いっきりビビって、
フルタ「すいません…」
撮影中。NG が出る。
映画屋「おーい、誰かマックスコーヒー買ってきて」
フルタ「あ、僕が」
フルタ、買いに走っていく。
ニッタがふてくされてシケモクを吸っている。そして、ヤスリではまったままの手錠
をちぎる。
モヒカン「はやくしろよー。あんまり遠くに行くなよ」
○自動販売機前
砂に埋もれた自動販売機。
お金を入れても出てこない。
フルタ「あれ…?」
○撮影現場
アロハ時計を見て、
アロハ「おせえな…」
モヒカン「マックス・コーヒー飲みたい」
映画屋「相棒、なにやってんだよ」
シケモクを吸ってると頭をはたかれる
○荒野
荒野をボロボロの自転車で必死で走るフルタ。
歩いていたあみあみ帽子にベストをきた老人に道を聞いている。
フルタ「この辺で自販機ありませんでしたか?」
○撮影現場
撮影中。役者みたいなハンサムな男が息絶えるシーンを撮影している。
でも、全然 OK がでない。
映画屋「全然違うよ。死にかけてるんだぞ!もう一度」
でも、NG…。
有名俳優「なにが悪いんだよ」
映画屋「リアルじゃねえんだよ、お前の芝居が」
有名俳優「なんだ?何様のつもりだよ」
映画屋「監督だよ」
有名俳優と映画屋がメンチの切り合い。
有名俳優「なんだあ」
映画屋「やんのか…」
アロハが割って入る。
アロハ「まあまあ、すいませんね。カントク、作品入っちゃうと前しか見えないもんで。
ホントすみません」
有名俳優「ったくよう…。(小声で)一丁前なこと言いやがって」
アロハ「スイマセン」
カメラサイドにいる映画屋とタムラ。
映画屋「カメラ回せ」
有名俳優「今日の弁当さあ、ちゃんとマリネ入れてくれた?」
映画屋、腰の拳銃を抜き出して、俳優の足に撃ちこむ。
俳優、本当に血を流して、のた打ち回ってる。
有名俳優「ぎゃああああ!」
映画屋「それだよ!」
有名俳優「なにするんだ、この人殺し!なに考えてるんだ!」
映画屋「映画のことに決まってるだろ」
○喫茶店 “ギャル”
(*ギャルのくだりは一連で夜)
女王がタバコを吸いながら競馬のラジオ中継を聞いている。
店はいかがわしい連中がいっぱい。飲んだくれの片目の中年がいる。
こき使われてヘトヘトのニッタ。
アロハ「今日のバイト代な」
と、言って 500 円玉を 1 枚渡す。
ニッタ「は?ふざけんなよ!まる 1 日働いて 500 円って、マクドナルドでバイトしたほう
がよっぽどいいじゃねえか!」
映画屋たち、それを聞いて大笑い。
モヒカン「マクドナルドだって」
ニッタ「?」
アロハ「ここじゃ超高級レストランだ。俺らなんか10年くらいビックマックなんて食っ
たことないぜ」
片目「昔はイヤと言うほど拾って食えたのに」
映画屋「もう1回食ってみたいよ」
女王「あんなもの、ジャンクフードよ。体こわすよ」
と、言って山盛り焼きそばの皿を出す。
モヒカン「ここのメシもな、ガキのころからかわりばえしねえ」
女王「イヤなら食べなくていいよ。犬にやるから」
モヒカンのテーブルから皿をかっさらって、床に寝ているアロハの愛犬ミサイルに食
べさせる。が、ミサイルは食べない。
アロハ「(笑う)フフ。オイ、女王。俺もなにか食わせて」
女王、床の焼きそばを今度はそのままテーブルに置く。女王はそのまま競馬のラジオ
中継に夢中。
アロハ「…」
そこに砂で汚れたフルタがマックスコーヒーを持って帰ってくる。
フルタ「遅くなりました!」
映画屋「どこまで買いにいってんだよ?」
フルタ「すいません。どこも売り切れてて…」
映画「サンキュ。そこ置いといて」
あみあみ帽子の老人もフルタに連れられて店に入ってくる。
アロハ「はい、ごくろうさん。今日のバイト代」
ニッタのとなりに座るフルタ。
ニッタ「どんくせえな。お前のおかげで俺が怒られたんだからな!500 円はもらうぜ」
フルタ「そんな…」
映画屋と女王が話してる。
ラジオの競馬中継でまたも負ける。
女王「あーあ。今月の売上全部突っ込んだのに。また赤字だ」
映画屋「だから賭け事なんてやめとけ。アロハのバカと同じだぞ。(灰皿を見て)タバコの
量もへらねえし」
女王「タダで飲み食して帰る客が減れば、赤字もタバコもなくなるんだけどね」
映画屋「イヤミかよ。やだね、ハズレ馬券のとばっちりは」
女王、カウンターの映画屋のところまで身を乗り出して向かい合う。
映画屋「なんだ?キスしてほしいのか?」
女王、映画屋の首に包丁をつきつける。
女王「今月のツケ払わないとメシ食わせないからね」
そこに地図を持ったアロハが割って入る。
アロハ「またケンカして。ちょっといい?監督さあ今度はマジだよ。調べたんだよ俺、自
衛隊が駐屯してる区域ってさ、日銀の周辺なんだよな。絶対なにかあるよ。日銀には金
塊がたくさん保管してあったって言うし、これはでかいよ」
映画屋「またその話かよ。懲りねえな、お前もよ。ダイアモンドの次は金か。おめでたい
よ、お前の頭。なに入ってるんだ?こないだだって死にかけたろうよ、一歩間違えば全
員海に沈んだままだったぞ」
アロハ「昔話をほじくりかえすなよ。映画にだって金が要るんだから。で、なくても赤字
なんだよ。ちょっとは考えろよな」
映画屋「ハイハイ」
と、席を離れる。
アロハ「明日、スポンサー回りなんだからスーツでこいよ。そのモジャモジャもキチンと
セットしろよ。社会人なんだから」
映画屋「わかってる」
アロハ、モヒカンをじっと見て、
アロハ「お前は…、どうしような?」
モヒカン「へ?」
○喫茶店“ギャル”・外
アロハが外に出ると、タムラがひとりでカメラの整備をしている。
アロハ「タムラ、その辺にしてメシ食えよ」
タムラ「ああ…もう少し」
機材の整備をしている。
アロハ「これオフクロさんに」
アロハ、リュックに入った缶詰とかをたくさん渡す。
空には流れ星、キラリ。
○東京スラム(*ギャルの前まで一連で昼)
翌日。スラムのようになっている東京マーケット。遠くで東京タワーが折れている。
戦後のヤミ市のようなマーケットに来ているフルタとニッタ。コンサートの情報を仕
入れに来ている。メチャメチャこわそうな連中に恐る恐る聞き込みを続けている。
(ち
ょっとインタビューのドキュメンタリーみたいな画角)
ダフ屋「トライセラー?ウワサだよウワサ。わざわざこんな東京にくるバンドなんていね
えよ。今回もどうせガセだろ?」
フルタ「そうですかねえ」
ニッタ「そんなことねえよ。ほれ、ビラ」
ニッタ、ビラを見せる。
ダフ屋「興行屋がよくやる手だよ。こうやって客集めて、カスバンド出してくるんだ。こ
ないだは、RCサクセションがくるっていうから 10 万払っていったのに、出てきたのが
タミヤのRCカーって、ダジャレだろ?死んだね、アレは。そのあと暴動」
ニッタ「次行こうぜ、次」
フルタ「あ、あれ」
フルタの指差す方向に質屋のショウウインドがある。
○質屋
質屋にニッタのギターが置いてある。
窓にへばりついてそれを見るふたり。
店のババア(曽我町子=デンジマンのへドリアン女王)に掛け合うニッタ。
ニッタ「だから、俺たちのなんだって」
ババア「どっからきたのか知らないけどね、ここじゃあんたらみたいなガキの言うこと聞
く人間なんかひとりもいないよ。アレがほしけりゃ、30 万耳をそろえて持ってきな」
ニッタ「…」
○会社
窮屈そうにスーツを着た映画屋、モヒカン、アロハ。会社訪問をしている。
モヒカンはスーツを着てもやっぱりモヒカンだ。緊張でせっせと汗を拭いている。
アロハ「だから素晴らしい映画なんですよ!絶対儲かる。な?」
モヒカン「あ、ハイ」
映画屋、黙って腕組みをしている。
アロハ「ほら、監督も黙ってね、男は黙って。決意の表れですよ」
社長、適当に資料を読みながら、
社長「で、誰が出んの?」
アロハ「シルベスター・スタローンとか、どうっすかね?」
社長「はあ?」
そこに電話がかかってくる。社長、電話に出てへこへこしている。
社長「ああ、もしもし。どうもどうも。今ですか、全然大丈夫ですよ。おかしな連中が来
て困ってたんですよ。(電話を押さえて)あ、もう帰って。仕事のジャマだから。(電話
に出て)スミマセン。いえいえ、陽気ですかねえ。バカが増えるのは」
ぞんざいな社長の態度。
怒った映画屋、灰皿で思いっきり社長を殴る。
○会社・外
タムラが吸殻を山盛りにしてジープで待っている。
映画屋が怒って出てくる。ネクタイを外して、帰ろうとしている。
アロハが急いで追ってきて、
アロハ「せっかくのスポンサーになんてことを!」
映画屋「あんなヤツから金もらったってうれしくねえよ!」
アロハ「金は金だろ?もうちょっと冷静になれ」
映画屋「冷静?俺は冷静だ!お前みたいに儲け話ときたら片っ端から試して、全部失敗し
てるようなバカじゃねえ。そのたびに全部俺たちがケツふいてやってんじゃねえか!」
アロハ「そんな言い方ってあるかよ!」
モヒカン「やめろよ!」
映画屋、モヒカンのモヒカンをつかんで、
映画屋「うるせえ!大体なんだお前その格好!おでかけニワトリか!」
モヒカン「なんだよ!カチンときたな!ヒトのスタイルまで口出すなよ!」
3人で取っ組み合いになってる。
そこにピストルのしょぼい音。
ビルの窓から血まみれの社長が拳銃で映画屋たちを狙っている。
社長「このガキども!殺してやる!」
タムラ、ゆっくりと手投げ弾を出して、ビルに投げ込む。
ビルは爆発してこっぱみじん。
アロハ「あーあ…」
モヒカン「まあ、いっか。行こ」
ジープに乗って帰っていく。
○喫茶店 “ギャル”
(*夜)
やっぱりラジオ中継を聞いてる女王。
ニッタ、じたばたしながら叫んでる!
ニッタ「ギター返せっつうのババア!」
“タイフーン”と英語で書かれた扇風機がカラカラと回っている。
カメラの整備をするフルタ。
フルタ、店にいるカンナを見て、すごく気になる。
フルタ「…」
TV からはアメリカの模様。KISS(そっくりさん可)が TV で演奏している。
“世界は滅びた”と殴りつけたような文字で書かれた星条旗をバックにいつものよう
にメチャクチャに演奏している。まわりには武装化した KISS アーミー(KISS のファ
ン)が大歓声を起こしている。KISS は未来ではアメリカを牛耳るカルト集団のカリス
マになっている。KISS アーミーが叫ぶ。
KISS アーミー『
(英語で)世界は滅んでもロックンロールは死なない!!』
カンナがタバコを吸いながら食事を運んでくる。
ニッタ、カンナに気があるのかかりやすくカッコつけてる。
カンナ「なに?」
カンナ、煙を吹きかけて、ニッタをむせさせる
カンナ「ミエミエな中坊なんてキライ」
ニッタ「(咳き込みながら)高校だよバカ、ガンで死ぬぞ」
フルタ「カワイイよね」
ニッタ「なんだよ、あんなのがタイプかよマゾだね、お前」
フルタ「いいじゃん。個人の趣味まで干渉しないでよ」
ニッタ「じゃあ、デートに誘ってみろよ。お前じゃ無理だろうけど」
フルタ「やってみる…」
フルタ、うつむいたままカウンターのほうに歩いていってカンナに話しかける。そし
て戻ってくる。
ニッタ「な?ダメだろ?」
フルタ「OKだって…」
ニッタ「(びっくり)マジで!」
カウンターで話すカンナと映画屋たち。まだ全員スーツ。
小さなTVからはアニメ『聖戦士聖矢』が流れている。
カンナ「デート誘われちゃった」
TVに熱中している映画屋。
映画屋「(平然と)ああいうのタイプなんだ」
カンナ「…」
ぶすっとして、カレーをぶっきらぼうに置いていく。
ラジオを聞いてる女王がチラリとカンナを見る。
『北斗の拳』を読んでいるモヒカン。カンナの様子に気がつきニヤニヤ笑う。
カンナ「なに?」
モヒカン「(笑って)なんでもない」
カンナ「なにアンタその格好、よそ行きのニワトリみたい」
アロハ「アハハ」
−暗転−
○交番(支配者のくだり一連で昼)
フルタたちを人買いに売った悪徳警官が荒くれどもに取り押さえられてる。
センチュリーから降りてくる白いスーツの男。なぜか足元はぞうり履き。
男はこのスラムを仕切る支配者。荒くれを何人か従えている。
支配者「喜べ。殉職は 2 階級特進だ」
ニセ警官「警官じゃないんだって俺、シュミなんだよ」
支配者「よけい悪いだろ。ニセ警官の追いはぎなんて」
ニセ警官。目隠しをされている。
支配者「一応シュミどおり、軍隊風処刑にしてやるからな」
ニセ警官「もうしないよ。なんだったらホントに警官になる」
支配者「間に合ってる」
ニセ警官「お前だって、ヤクザ上がりで東京で支配者ヅラしてるだけじゃねえか。ドロボ
ーの俺とどう違うんだよ?」
支配者「だったらお前も街を仕切ってみろ!」
支配者、ピストルをパンパン撃つが、まったく当たらない。
支配者「なんだこの拳銃。照準狂ってるぞ」
部下「そんなはずないですけどねえ」
部下が撃つと、ニセ警官のヒザに当たる。
ニセ警官「痛ええ!」
支配者、めんどくさくなってその場を後にする。
銃声が響いてニセ警官が処刑される。
部下が支配者に耳打ちする。
なにやら苦虫を噛み潰した表情をする支配者。
○会社
爆破された先ほどの会社。もう火は消えている。
部下「また、映画屋です」
支配者「今月で何件目だ?」
部下「大小あわせて 6 件ほどです。具体的には死亡者 8 名、車などの破壊 10 台、ビルなど
の損害が今日を含めて3件、被害総額は2800万円ほど…」
支配者「警告は?」
部下「再三しているのですが…」
支配者「甘いんじゃないか?もっと締め付けろ。来月は東京にとっても大事な興行がある
んだ。本土からの客もくるだろ。しこたま金持ってな。キャバレー、カジノ、ロックン
ロール。治安は維持しておく必要があるんだ」
部下「はあ」
支配者「ガキどもが金にならんことを。映画はファシズムのジャマになる」
−暗転−
○荒野(*昼)
映画屋のポスターが貼ってある。映画屋は賞金首。
あみあみ帽子の老人がそれを見ている。
○撮影現場(*映画館の前まで一連で昼)
映画屋たちが撮影している。
フルタ、ショットガンをものほしそうに見つめて。
フルタ「ちょっと持ってみていいスか?」
モヒカン「いいよ」
ショットガンを構えて撃ってみる。
映画屋のとなりのコーヒー缶をぶち抜き、フルタは反動で後ろに倒れてしまう。
映画屋「あぶねえ!ガキにライフルなんて持たせるな!」
モヒカン「はは」
ニッタ、小道具の中からプロレスのマスクを見つけて、
ニッタ「これなんに使うの?」
アロハ「なんとなく、気分だよ」
ニッタ「これ借りるよ」
アロハ「ちゃんと返せよ」
○質屋・前
プロレスマスク(メキシカン・マスカラスとタイガー・マスク)をかぶってライフル
を持ち、質屋の前で見張りをしているフルタ。でも、時間を気にしてオドオドしてい
る。
明らかに悪そうな荒くれがそれをじっと見ている。
フルタ「…」
バツが悪くなって質屋の中に入っていく。
○質屋
中ではニッタがババアにライフルを構えている。
フルタ「早くしてよ」
ニッタ「だってよ…」
ババア「やっぱりきのうのガキじゃないか。早くウチ帰って宿題しな」
フルタ「違います」
ニッタ「ギター出せよ!」
ババア「だから、ギターほしけりゃ金持ってくるんだよ。こんなバアさんイジメて楽しい
かい?まったく仕事のジャマになるから帰っておくれ」
フルタ「行こう」
フルタとニッタ、仕方なく帰っていく。
ニッタ「覚えてろ」
○バス
バスにマスクのまま乗るふたり。無言。
○撮影現場
ビックリマンチョコを箱で持ってきているアロハ。
映画屋「なんだこれ?」
アロハ「オヤツにいいかなと思って」
一拍あって、
モヒカン「いいじゃん」
そこに部下をひきつれセンチュリーに乗った支配者が現れる。
支配者、映画屋たちとは一定の距離を保って拡声器で話しかける。
支配者「3 時のオヤツか。子供と変わらんな」
映画屋「誰?」
アロハ「アハハ」
支配者の部下がライフルを空に向かって撃つ。
支配者「いいかこれは警告じゃない。この街にいたかったらテロ行為はやめろ。でなけれ
ば殺す。お前らにはホトホト迷惑してるんだ」
映画屋「テロ?俺たちゃ映画撮ってるだけだ」
支配者「だったら街を荒らすな。おとなしくしてろ。俺の街で勝手は許さん」
映画屋「なにが俺の街だ」
映画屋、ライフルで支配者の方に向けて発砲。窓ガラスが割れる。
支配者「車はやめろバカ!いい度胸だ。
(拡声器をはずして)撃て」
部下「遠すぎます」
支配者「…。
(拡声器で)俺は心の広い男だ。今日のところは見逃してやる。いいか?悔い
改めろよ」
と言い残して帰っていく。
アロハ「なにが言いたかったんだ?」
映画屋「さあ?自慢話だろ?」
モヒカン「お、スーパーゼウス!」
アロハ「スゲー!」
○映画館・倉庫(*夜)
その日の夜。デート用の洋服のコーディネイトを考えているフルタ。
ニッタ「めんどくせー。動くとダルいから、寝てるわ」
ニッタ、横になったまま動かない。
朝の目覚ましがリーンと鳴る。
○東京スラム(*ギャルの前まで一連で昼)
フルタがちょっとオシャレしてきてる。
かなり早くきて待っているためか、やたらマックスコーヒー缶がたまっている。
カンナがやってくる。
カンナ「待った?」
フルタ「全然。今きたばっかりで。あの…、これ」
一輪のチューリップを渡す。
カンナ「ありがと」
○荒野
サンドイッチを食べながら双眼鏡で荒野をのぞいているアロハとモヒカンとニッタ。
相変わらずモヒカンはマンガを読んでいる。
アロハ「つれないね」
ニッタ「なんで休日に、野郎と一緒なんだよ」
アロハ「じゃあノコノコついてくるなよ。キャバクラでも行くと思ったのか?高えんだよ。
こないだボラれたばっかだし」
モヒカン「マジで?懲りないね、お前」
アロハ「冒険家と言って」
モヒカン「バカ」
ニッタ「帰るわ」
アロハ「そういうこと言ってるうちはモテないぞ。ガーンと稼いでカンナをモノにしよう
よ。まあ、金があっても無理だろうけどね」
ニッタ「どうして?」
モヒカン「ちょっと考えればわかるだろうよ。鈍いね」
○東京スラム
カンナがスラムを案内している。
カンナ「ここがストリップの店。アタシは行ったことないけど、いいらしいよ」
フルタ「…」
カンナ「なに?もっとスゴイところがいい?」
フルタ「いや…」
カンナ「なに?にえきらないオトコってキライ」
フルタ「いや、もっとさフツーのことしようよ」
カンナ「フツーって?」
フルタ「動物園とか映画館とか…。デートで映画見て感想を話し合うとか」
カンナ「いいよ」
○映画館
映画館ではポルノ映画(もしくはドロドロのスプラッター)がやっていてとてもデー
ト気分じゃない。
フルタ「…」
カンナは平気な顔でポップコーンを食べている。
○喫茶店
カップルがきそうなオシャレな普通の喫茶店。
TVからはソウルトレイン。
カンナ「感想は?」
フルタ「(口ごもって)いや…」
カンナ「なんか話さないの?」
フルタ「いや、いい天気だね」
カンナ「くもりだよ」
フルタ「ああ…ゴメン」
カンナ「すぐ謝るオトコってキライ」
フルタ「ゴメン。あ」
カンナ「いいよ」
気まずい沈黙が続く。
フルタ「歳はいくつ?」
カンナ「17」
フルタ「僕も。高校生?」
カンナ「学校行ってない」
フルタ「そっか…」
カンナ「ソウルトレインっていいよね」
フルタ「乗ったことないなあ…」
○荒野
双眼鏡の先では自衛隊が演習をしている。
ニッタ「なんだ?ありゃ」
アロハ「ちょっと歩いていってみろ」
ニッタ、歩いていくといきなり銃火にされされる。慌ててもどってきて、
ニッタ「殺す気かよ!」
アロハ「あの先に日銀の金庫があるってウワサなんだけど、連中がいるから行けやしない。
おまけに 24 時間ずっといるしよ。なにかいい方法ねえかな?」
モヒカン「もうやめとけよ。また失敗するぞ」
○マンホール
マンホールを歩くニッタとアロハ。
アロハ「頭いいよお前。地下なんてさ」
ニッタ「見つけたら山分けだぞ」
アロハ「わかってるよ。モヒカンのバカがかえっちまったから、そのぶん大目に分けよ」
ニッタ「しかし本当に金庫なんてあるのかな?」
アロハ「夢があっていいじゃない」
ニッタ「この辺じゃねえか?」
はしごの先にはマンホール。
ニッタ「じゃあ、俺が」
アロハ「いいな。第一発見者」
マンホールを開けるニッタ。
アロハ「どうだ、なにか見えるか?」
ニッタ「(深刻に)見える…」
アロハ「なに?」
○砂丘
マンホールの出口の砂丘。
ニッタが出たのは自衛隊たちが駐屯しているど真ん中。
囲まれて拳銃を突きつけられてる。
ニッタ「自衛隊…」
○マンホール
アロハは薄情に走って逃げていく。
ニッタ「おい!」
○喫茶店 “ギャル”
(映画館のくだりまで一連で夜)
泥まみれで帰ってくるニッタ。
アロハ「すげー!帰ってきたよ」
モヒカン「俺の負けか…」
女王「はい、出して」
女王が客から金を徴収している。
みんなでニッタの生死の賭けをしている。
ニッタ「ふざけんなよ、こっちは殺されかけたんだぞ!」
アロハ「怒らない。ほら、半分やるから3000円」
ニッタ「…」
○映画館・前
デートから帰ってくるフルタ。
○映画館・廊下
映写室のほうから音と光が漏れてきている。それをのぞくフルタ。
そこでは映画屋がDJ用のマグライトがついたメガネをかけて、フィルムを編集して
いる。フルタに気がつく映画屋、メガネを外し、
映画屋「デートどうだった?」
フルタ「嫌われたかも」
映画屋「カンナ無愛想だから。気にするな。アイツ、同じ歳くらいの友達いないから仲良
くしてやって」
フルタ「なにしてるんですか?」
映画屋「ああ、これ?面白いよ」
映画屋、編集機のビューワーを指差す。
フルタ、ビューワーを覗き込むと、こないだ撮影されたトラックの爆発の模様が映っ
ている。逃げ惑うフルタとニッタも写っている。
フルタ「あ」
映画屋「よく写ってるだろ」
フィルムが終わる。映画屋、フィルムを架け替える。次のフィルムには荒くれがカー
チェイスしている模様が映ってる。
フルタ「なんすか?」
映画屋「わかんない?」
フルタ「はい」
映画屋、2 本のフィルムを編集し始める。
映画屋「見てろ」
手際よい編集でフィルムが 1 本にまとまる。それをビューワーにかける映画屋。そこ
にはカーチェイスでトラックが爆発炎上するように編集されている。でも、映画文法
的にはメチャクチャな映像。
フルタ、それを見て思わず微笑む。
映画屋「わかった」
フルタ「はい」
映画屋「こういうのもある」
と、適当にフィルムをつなぎ変えて全く違うシーンにしてしまう。
フルタ「(感動)わあ…。スゲエ」
タバコを吸いながら小さなビューワーを無言で見るふたり。笑っている。
○撮影現場(音楽)(*撮影現場一連で昼)
メチャクチャな撮影現場。
ロックを流しながらテンポよく表現。
ポジっぽい記録映像風の画面もある。
ニッタを車に乗せて、それを全員で拳銃を撃ちながら追う。
ニッタ「殺す気か!」
映画屋「ホラ、走れよ!止まったら死ぬぞ!」
バーで楽しくゲームをしたりするフルタとニッタたち。
ピンボールやファミコンや人生ゲームをしている。
あみあみ帽子の老人が映画屋たちを見ている。
撮影現場にピカピカのセンチュリーが運ばれてきている。
映画屋「スゲエな」
アロハ「(得意そうに)出所は聞くなよ」
支配者のオフィス。駐車場の電気をつける支配者。
愛車のセンチュリーがない。
支配者「…」
映画屋の撮影現場。
センチュリーを落書きしたりボコボコにバットでこわしている(もしくは爆破)。
ニッタ「明日の予定は?」
アロハ「銀行強盗」
プロレスのマスクをかぶって銀行強盗をする映画屋たち。
札束はほとんど新聞紙。大笑いする。
絶叫する支配者。
支配者「また映画屋か!」
賞金首の額がどんどんあがっている。
手配書の人相は最初のものより凶悪になっている。
そして、音楽終わり。
−暗転−
○東京スラム(*昼)
凶悪な感じの荒くれどもが次々とスラムにやってきている。
○喫茶店 “ギャル”
(支配者のオフィスまで一連で昼)
自分たちの手配書を見て笑っているモヒカンとアロハ。
モヒカン「すげえな有名人だ。役者になろうかな?」
アロハ「個性ねえっつうの!」
女王が端の老人に食事を出している。
老人「…」
モヒカン、女王に手配書を見せに行って、
モヒカン「なあ、女王。見てよこの顔、傑作じゃねえ?」
女王、いきなりモヒカンのアタマをひっぱたく。
モヒカン「痛え!なにするんだよ!」
女王「アンタら悪ふざけもいいかげんにしなよ。このままじゃ本当に殺されるか捕まるか
するよ。外見てみな、おかしな連中がうろうろしてる」
モヒカン「…だってさ」
女王「マッタク、いいトシしてバカばっかだね」
女王、カンナが弁当を作ってるのを見て、
女王「カンナ、どこ行くの?」
カンナ「散歩」
女王「(複雑な表情)…」
アロハ、そんな女王の表情を見ている。
アロハ「浮かない顔だな」
女王「当たり前よ。カンナは大事な妹なの」
アロハ「姉妹って似るのかね?そっくりだよ。男の好みのセンスのなさは」
女王「大きなお世話」
アロハ「まあ、いいんじゃないの。世の中自由恋愛だし」
女王「本気で言ってる?」
アロハ「…」
女王「イヤよアタシは絶対。アイツとは友達だけど、兄弟にはなりたくないの」
○タムラの家
タムラを呼びにきた映画屋。ブザーを鳴らすとタムラが出てくる。
映画屋「どうした?時間だぞ」
タムラ「…」
タムラ、自分が載っている手配書を映画屋に渡す。
小窓から映画屋のことをにらんでいるタムラの母親。
映画屋「…」
○海辺
映画屋がカメラを持ってひとりで海辺で撮影している。
そこにカンナがバスケットを持ってやってくる。
カンナ「お昼、持ってきた」
映画屋「サンキュ」
カンナ「タムラは?」
映画屋「親孝行」
カンナ、思いっきり背伸びをして、
カンナ「いい天気!」
映画屋「お前もたまにはこうやって外に出ろよ。ずっと店じゃ、どんどん暗くなるぞ」
カンナ「じゃあ、連れてってよ」
映画屋「だから撮影一緒に来いって」
カンナ「そういうのじゃなくて…」
映画屋「あ、そこのマガジンとって」
カンナ、不満そうにカメラのマガジンを取りに行って渡す。
映画屋、笑ってカンナを撮ってやる。
カンナ「なに?」
映画屋「撮ってやる。ガキのころ撮ってやったきりだろ」
カンナ「いいよ。キライなの、そういうの」
映画屋、カメラを構えている。
映画屋「撮ってやるって言ってるんだから。ホラ、動け。写真じゃないから」
カンナ「えー?」
カンナ、恥ずかしそうにポーズをつけてみせる。
映画屋「悪くない」
カンナ「こっちきなよ」
カンナ、映画屋をカメラの前に引っ張っていく。
映画屋「イヤだよ」
カンナ「いいから」
カンナ、映画屋に抱きついたり、カンフーの攻撃をしたりしている。
子供のように無防備で楽しそうなカンナ。映画屋も笑っている。
○質屋前
ショウウインドをものほしげにのぞきこむニッタ。
ギターの値札が 30 万から 50 万円になっている。
帰ろうとすると、いきなりギャングみたいな連中に拉致される。
○クラウン
ボロボロのクレスタに目隠しをさせられて乗せられているニッタ。
両サイドにはゴリラみたいな荒くれが黙って座っている。
クラウンが止まる。
○荒野
荒野のど真ん中に連れ出されるニッタ。訳もわからず怯えている。
後頭部にショットガンを突きつけられ、両膝を地面につけて両手を上げている。
ニッタ「お、俺がなにしたって言うんだよ」
支配者「アタマ吹っ飛ばされたくなかったら、ぴーぴーわめかずに黙って聞け。いい情報
を教えてやる。来月トライセラトップスが東京にくる」
ニッタ「マジで!」
支配者「ウチの大事な興行だ。残念だけどチケットはもうとっくに売り切れ。プラチナど
ころかダイアモンドだ。ヤミルートだと 100 万は下らん。お前ら学生じゃ逆立ちしたっ
て無理だな」
ニッタ「…」
そこに支配者、ポケットから札束を投げる。10 万円ほどある。
ニッタ「?」
支配者「心の広い俺は、君にコンサートに行けるようにチャンスをやる。いくつかやって
ほしいことがある。成功すれば 100 万円。で、これ前金」
ニッタ「…」
支配者「簡単なことだ。中学生でもできる」
ニッタ「…」
○東京スラム
車から降ろされるニッタ。
フルタが歩いている。
フルタ「誰あれ?」
ニッタ「手下」
フルタ「はは」
○廃車工場
カメラの整備をするタムラ。となりで見ながら勉強しているフルタ。
タムラ、フルタの壊れたカメラを手にとり、分解して修理してやる。
フルタ「すごい。どこで勉強したんですか?」
車の整備をしているアロハ、車の下から出てきて、
アロハ「タムラはなこう見えていつも勉強は 1 番だったんだぜ。勉強もスポーツもなにや
らしてもイチバン。俺はダメだったけど。(手袋をはずしながら)はい、おしまい」
電卓をはじいて予算を計算しだすアロハ。赤字でため息。
アロハ「明日の弁当はおかずナシかな…」
フルタ「アロハさん、どうしてカントクにそんなにしてあげるんですか?車の修理のバイ
トも制作費にまわすんでしょ?なんか弱みでも握られてるんですか?」
アロハ「ハハ」
フルタ「だってそうでしょ?全然お金にならないし」
アロハ「ガキのころ万引きしたの代わってもらったんだ」
フルタ「…」
アロハ「ウソ。ええ?いいじゃん映画なんて夢があってさ。こんな脚本見せられても俺に
はまったくわかんないけど、一生懸命じゃんアイツ。一発当てたいとかなんだかんだ言
ってもさ、実際俺にはなんにもないんだよね。だからさ、夢のある人間に少しばかわけ
てもらおうっていうんだよ。2番手狙いのコバンザメ的生き様ってヤツ。ダサイね」
フルタ「そんなことないっすよ」
○映画館
映画屋の部屋を調べているニッタ。
映画の機材しかない。
○モヒカンのアパート
モヒカンのアパートを調べているニッタ。
やっぱりマンガばっかり読んでいる。
○タムラの家
タムラの家には病気の母親がいる。
それをのぞいているニッタ。
○アロハのカーハウス
アロハのカーハウスを調べるニッタ。
ミサイルが動かないままじっとにらんでいる。
ニッタ「…」
アロハ「(うしろから)なにやってんの?みんなきてるぞ」
ニッタ「(動揺して)いや、カントクからの伝言でから揚げ食べたいって…」
アロハ「から揚げ?」
ニッタ「明日の弁当」
と、言ってそそくさと帰っていく。
アロハ「勝手なことばっかり言いやがって」
○支配者のオフィス
タムラやスタッフの履歴書を持ってきてるニッタ。
支配者「はぁ?『北斗の拳』が好き?なんだ?クズ情報だらけだな。まあ、いいだろ」
ニッタ「こんなもん、なんに使うんだよ」
支配者、また 10 万円を放り投げて、
支配者「いいから続けろ。1 ヶ月はあっという間だぞ」
憮然と帰っていくニッタ。
支配者「タムラあたりが落ちやすいんじゃないか?」
○倉庫(*夜)
カレンダーのトライセラトップスがくる日に印がつけてある。
フルタ「なにこの印?」
ボーっとしているニッタ。
フルタ「どうしたの?」
ニッタ「なんでもない…。お前、明日撮影行くなよ」
フルタ「どうして?」
ニッタ「いいから聞いとけよ。どんくせえな」
フルタ「?」
○フィルムラボ(*東京スラム一連で昼)
ラボにフィルムを現像にきてるタムラ。オヤジが手配書を見せて、
オヤジ「いいかげんオフクロさん安心させてやったらだどうだ。お前だったら外でも十分
やってける」
タムラ「…」
○東京スラム
歩いているタムラ、そこに、
支配者の声「よう、シンイチ」
振り向くとそれは、国産のぼろいクレスタに乗った支配者。
タムラ「…」
支配者「シンイチくんだろ、キミ?見えないけど」
タムラ、無視していこうとする。
支配者「さっきお母さんのところにご挨拶してきたよ」
タムラ「…」
支配者「お母さんは君がいい歳して、仕事もしないで映画なんか撮ってるってことをすご
く心配されてる」
タムラ「…」
支配者「お母さんの病気、悪いらしいな。どこの病院も金はかかるし、いっぱいだ。俺の
知ってるところでいい病院があるんだがなあ…」
タムラ、支配者を締め上げる。
部下たちがいっせいに拳銃を突きつける。
支配者「シンイチくん、コワイよ。社会復帰、社会復帰」
○撮影現場(*撮影現場は昼)
準備する映画屋たち。タムラがいない。ニッタもいない。
映画屋「ADは?」
フルタ「腹痛です」
映画屋「タムラは…?」
モヒカン、申し訳なさそうに。
モヒカン「…ああ、就職するって…」
映画屋「はあ?」
モヒカン「いや、最近いろいろ締め付けが激しいし、オフクロさんのこともあるだろ?い
つまでもな、バカやってるわけには…」
タバコを投げ捨てて、
映画屋「なんだよ、それ…」
モヒカン「いや、俺もさあ…」
うしろからモヒカンの肩をつかむアロハ。
モヒカン、あとの言葉を飲み込む。
フルタ「…」
そんなアロハを見てなんともいえない表情。
アロハ「(明るく)まあ、いいや。やろやろ!から揚げ弁当も買ってきたし」
場を和ませて撮影を始める。
ちょっとした撮影。
アロハ「じゃあ昼メシいれまーす」
けたたましい銃声とともに、荒くれたちが襲ってくる。
映画屋たち、ジープの陰に隠れて応戦。
映画屋、拳銃を抜いて構えるが崖の上からの狙撃には対応できない。
映画屋「ライフルよこせ!」
フルタ、ライフルを映画屋に放り投げる。
映画屋、的確な射撃で崖の狙撃手を撃ち殺す。
映画屋「やったか?」
まわりの様子を確認するために立ち上がる映画屋。だが、その背後に敵が。
アロハ「バカ!うしろ!」
アロハ、映画屋をかばうようにして覆いかぶさる。映画屋、倒れざまにライフルを撃
ち、相手を殺す。
となりで倒れてるアロハを見つけて、ライフルを捨てて駆け寄るが、すでに死んでい
る。
映画屋「(かみ殺して)クソ!」
アロハの死体がシュラフに包まれてジープに乗っている。
映画屋「続けるぞ…」
抗争が終わっても撮影を続けようとする映画屋。
モヒカン「なに言ってるんだよ?」
映画屋「続けるんだ…」
モヒカン、思いきり映画屋を殴る。ひざをついて倒れる映画屋。続いて馬乗りになっ
てボコボコに殴る。モヒカンを必死で押さえるフルタ。
モヒカン「もうやめろよ!お前のせいでこんなことになってるんだよ!もうたくさんだ
よ!」
モヒカン怒って帰っていく。
それを黙って見つめるフルタ。
○映画館・倉庫(*夕方か夜)
帰ってくるフルタ。腹痛のはずのニッタがいない。不審に思ってあたりを捜すと、札
束が出てくる。そこにニッタが戻ってくる。
ニッタ「なにやってんだよ?」
フルタ「こっちのセリフだよ。腹痛は?」
ニッタ「治ったんだよ」
フルタ「じゃあ、この金は何?」
ニッタ「(動揺して)バイトしたんだよ」
フルタ「なんのバイト?こんな金、普通じゃないよ」
ニッタ「それは…」
フルタ「きのう、撮影に行くなって言ったよね?今日襲われた。どうして撮影場所知って
たんだろうね?」
ニッタ「なんだよ、それ…」
フルタ「最近のニッタ、ヘンだ。ボーっとしてるし。まさかサ、この金って…」
ニッタ「…」
フルタ「黙ってるってことは認めたってことだよね?なにやってんの?」
ニッタ「…だからなんだ?」
フルタ「だからなんだ?仲間が死んだんだぞ!そんな言い方ってあるか!」
ニッタ「アイツらが仲間?アマチュアなんだよ、発想が。俺は仲間だなんて思ったことな
んか一度もねえよ」
フルタ、ニッタを思いっきり殴る。ニッタ、札束の上に倒れこむ。
ニッタ「…なにが悪い。トライセラーのライブがあるんだ…」
フルタ「まだそんなウワサ」
ニッタ「本当だよ、再来週くる。聞いたんだ、間違いない。チケットが欲しいんだよ。金
が要る。お前のぶんだって買うつもりだったんだ」
フルタ「そんな金で行けるかよ!」
ニッタ「なんのために学校脱走してきたんだよ!トライセラーを見るためだろ!そのため
には何だってやるさ」
フルタ「最低だ。そんなの、ロックでもなんでもない」
フルタ、ニッタを置いて出て行く。
ニッタ、フルタのニコンを投げつける。レンズが取れて転げ落ちる。
○カレンダー
カレンダーにどんどん×がついていっている。
確実にトライセラトップスのくる日は近づいている。
○工場(*昼)
ライン工場でライン作業をするタムラとモヒカン。
アナウンス「昼休みまであと 2 時間です。ハッスルして働きましょう」
モヒカン「はあ…。だれも子供のころからラインで働きたかった訳じゃないよな」
黙黙と作業を続けるタムラに対して、モヒカンはミスが多い。先のほうでエラーのブ
ザーがブーブー鳴っている。
工場長「こらぁ!」
モヒカン「すんません」
○喫茶店 “ギャル”
(*砂丘まで一連で昼)
映画屋たちがいなくなって客がまばらになっている。
女王「最近こないね、アイツら。まあ、静かでいいけど」
カンナ「…」
奥で食事をしているあみあみ帽子の老人。
○砂丘
ひとりで 8 ミリをまわしている映画屋。砂丘を駆け下りながら楽しそうに撮影してい
るが、つまづいて転げ落ちていく。砂の中に突っ込む映画屋。鼻血を出しながらもな
んとかカメラだけは守る。
映画屋「…」
それを見ているあみあみ帽子の老人。
老人「仲間はどうした」
映画屋「ああ…。みんな、やってられねえってよ」
老人「ひとりでやるのか…?」
映画屋「仕方ねえだろ、ひとりしかいねえし」
老人「…」
映画屋「ジイさん、アンタ運がいいよ。俺の映画に出してやる」
老人「?」
映画屋「ほら、そこから立って歩いて」
老人を撮影する映画屋。
映画屋「なんかウソくさいな。もうちょっとさ、ちゃんと芝居できないの?これだから素
人はやりにくいんだよな」
老人「(憮然と)…」
映画屋「ダメダメ、なにやってるんだよ。もう一回」
○映画館(*荒野までのくだりは一連で夜)
カンナが映画館を訪ねてきてる。
映写室で映画を見ている映画屋。チャップリンの『独裁者』
。
カンナ「いい?」
映画屋「ああ」
カンナ「ミサイルは?」
映画屋「鶏肉しか食わないから困ってるんだ。あのクソ犬。寝てばっかだし」
カオル「だから、店で飼うって言ったのに。…みんな就職したよ。タムラもみんな一生懸
命働いてる」
映画屋「そう」
しばし、間。
カンナい「映画楽しい?」
映画屋「楽しいよ」
カンナ「友達なくして、街から追い出されることが?」
映画屋「違うよ。映画を撮ることが、だ」
カンナ「一緒に暮らそ。ここじゃなくてもいいから」
映画屋「…」
カンナ「ひとりで傷つかなくてもいいよ」
映画屋「この映画どう思う?」
カンナ「コメディよ。くだらない」
映画屋「くだらないよな。そのくだらないことのためにコイツは国を追われても、家族に
見捨てられても、映画撮っちゃうんだから。本当にバカだよ。でも本当にいい映画なん
だよ。まいっちゃうよ、マッタク」
笑って映画を見ている映画屋。すでにカンナの言葉など聞いていない。
カンナ「…」
映画屋に失望したカンナ、席を立ち帰っていく。
フィルムが終わる。カラカラと音がする。
○映写室
映画屋、映写機からフィルムを外す。
ミサイルは相変わらず眠っている。
机の上には前に誕生日プレゼント用に買った、一輪のひまわりとカンナを撮影したフ
ィルム缶にリボンがかけられている“ハッピーバーズデー”と書かれている。
映画屋「…」
それを渡そうとカンナを追っていく。
○映画館・外
外に出た瞬間、映画屋をライトが照らす。映画館中荒くれに囲まれている。
その中に支配者とカンナがいる。それは支配者の最後通告だった。
映画屋「…」
カンナ「…」
支配者「撃て!」
一斉に銃撃が始まる。映画館に逃げ込む映画屋。
突撃する荒くれたち。プレゼントを踏み潰して、中に突入していく。
○映画館・映写室
映画屋、自分の撮影したフィルムをリュックサックに詰めて急いで、バイクのエンジ
ンをかける。ミサイル(犬)をゴミ箱の中に入れて隠す。
○映画館・外
こだまする銃声。
憮然と黙ってタバコを吸っているカンナ。
カンナ「…」
○映画館・裏口
裏口からバイクで逃げる映画屋。
それを追う荒くれたち。
○荒野
荒くれがどんどん迫ってくる。いつのまにか危険区域に入っていっている。
映画屋、バイクのバランスを崩して思いっきり倒れる。
目の前から戦車に乗った自衛隊が映画屋をライトで照らす。
前方には戦車と自衛隊、後ろからは支配者の部下の荒くれども。完全に囲まれる。
映画屋、観念して、せめてフィルムだけを地中に隠そうとする。
手で土をかきわけ、穴を掘る。
無様な姿を見て大笑いする荒くれたち。危険区域のギリギリ外にいる。
ついに戦車が銃撃を開始する。弾道はキュンキュンと土をはじきながら映画屋のほう
に向かっていく。だが、弾丸は映画屋に当たるかと思いきや、弾道はそのまま映画屋
を通り過ぎ後ろの荒くれどもを一掃する。
自衛隊相手に荒くれが勝てる訳はなく、あっという間に屍の山になる。
映画屋「?」
自衛隊が一斉に整列し、後方に向かって敬礼をする。
その後ろからなんといつも飲み屋にいたあみあみ帽子の老人が現れる。
映画屋「…」
○地下(*老人とのくだりは一連で夜)
地下に映画屋を連れてくる老人。映画屋、訳もわからずついていく。
老人「見せたいものがある」
地下を抜けていくと、そこには数々の名画のポスターが飾ってある。
映画屋「…?」
○地下映写室
部屋に通される。そこはキレイな試写室。そこは崩壊した TCC 試写室。
そこには新品同様の編集機材がそろっている。
映画屋「(驚く)…」
老人「好きに使うといい。もう、誰も使うことなんかないと思ってた」
老人、フィルムを映写機にかけながら感慨深く、
老人「思い出は、永遠に映画の中にある」
老人、1 本のフィルムを見せる。そこには昔の TV 映画『仮面ライダー』が映し出され
る。なんとその中で老人が世界を破滅に導く博士の役で熱演しているではないか!
彼は昭和の俳優、天本英世。
映画屋「ジイさん、アンタ俳優だったのか…」
映画屋、思わず笑ってしまう。
黙ってフィルムを見る天本。
−暗転−
○ライブハウス・前(*昼)
今日はトライセラトップスのライブ。
ものすごい人数の人間がライブハウスの前を占拠してる。泊り込んでる連中がいたり、
チケットを売って欲しいとプレートを出している人間もいる。その中にニッタも混じ
ってる。
ニッタ「金ならあるんだよ、足元見ないで売れよ。百万出すからさ」
後からきた連中が札束でチケットを買って行く。
ダフ屋「兄ちゃん、当日に百万で買おうなんて無理だよ」
○喫茶店
カンナとデートしてるフルタ。
カンナはスカートをはいている。
カンナ、フルタにキスをしている。
でも、なぜか深刻な顔をしているフルタ。
カンナ「どうしたの?」
フルタ「こんなのウソだ…」
フルタ、金を置いてそのまま出て行く。
○工場(*昼)
作業するタムラ。
入り口に無言で立っているフルタ。
フルタ「…」
じっとタムラを見つめる。
○映写室(*昼)
映画屋のいない映写室。キレイに整理されたフィルム缶が並んでいる。
天本「…」
○工場(*昼)
働いていないタムラ。ベルトコンベアーだけがくるくると回っている。
工場長「なにやってるの?」
タムラ「やめます」
タムラ、そのまま出て行ってしまう。
となりで一生懸命作業をしていたモヒカンもなんとなくついていく。
フルタを乗せてジープに乗っていく。
○荒野(*昼)
1 台のプレジデントが止まっている。なぜか屋根にミサイルを積んでいる。
バリバリにカッコいいチンピラみたいな男たちがたむろってる。
その中のひとりがギターを弾いている。バリバリキマってる。
それを聞くグローブを持った子供。
子供「あれなあに?」
後ろでそれを聞いてる映画屋。リュックを背負っている。
映画屋「ロックだよ。ロック」
ギター弾き、演奏を止めて子供と映画屋に笑いかける。
マックスコーヒーを飲むヒゲの男も映画屋を見ている。
ヒゲの男、マルボロ・メンソールを吸おうとするが、ない。
映画屋、自分のセンブンスターを放り投げて渡す。
ヒゲの男「…」
ぐびぐびビール(テキーラでも可)を飲む革ジャンの男。ちょっと酔いどれ。
ギター弾き「ライブハウスってどっちかな?」
映画屋「南にずっとまっすぐだ。東京タワーのあたりにライブハウスがある」
ギター弾き「ありがと。今日、俺らのライブがあるんだけど、よかったらくる?」
映画屋「悪い、無理だ。これから撮影なんだ」
ギター弾き一行、車に乗り込りこみ出発の準備。
ヒゲの男、飲みかけのマックスコーヒーを映画屋に渡し、
ヒゲの男「東京はコーヒーがマズイ。甘すぎる」
ニヤリと笑う映画屋。
男たち、砂煙の中プレジデントに乗って走り去っていく。
彼らが伝説のロックバンド、トライセラトップス。
○雀荘(*昼)
支配者がマージャンをしながら電話を取っている。それはニッタから。
支配者「ああ、お前か。なんだ、チケットが買えない?知るかよ。忙しいんだ」
ガチャンと切る。
支配者「それ、ポン」
○東京スラム(*昼)
公衆電話を切って憮然としているニッタ。
質屋のショウウインドウにはニッタのギターと新品のニコンのカメラが。
ニッタ「…」
ダフ屋「兄ちゃん、チケットあるよ」
○荒野(*ラストシーンまで昼)
マックスコーヒーを飲んで一休みしている映画屋。
そこにアロハの飼っていた犬が走ってくる。首にはなぜか手榴弾をぶら下げている。
映画屋、しゃがんで犬をなでていると、その近くでタムラやモヒカンやフルタがジー
プで映画屋を待っている。
フルタ「僕らも連れて行ってください」
映画屋「…」
モヒカン「ちょっと髪短くなっちゃったけどさ、まだまだイケルよ」
映画屋「やめとけ」
タムラ「…」
映画屋「カンナは?」
フルタ「(笑って)フラれましたよ。意地悪だなあ、わかってるくせに…」
映画屋「…」
黙って、映画屋のリュックを背負う。そして、手際よくカメラの組み立てを始める。
モヒカン、車のエンジンをかけて準備する。
フルタ、荷物を次々と車に詰め込んでいく。
あっという間に準備が完了する。
映画屋「…」
フルタやタムラやモヒカン、ただ笑っている。
○東京スラム
ダフ屋からチケットを買おうとしているニッタ。
ダフ屋「どうした?百万でいいって言ってるんだ。いっそ俺が行きたいよ…」
ニッタ「…」
なにやら悩んでいる。
○喫茶店“ギャル”
店の準備をする女王とカンナ。
女王「タバコは?」
カンナ「もうやめた」
女王「スカートは」
カンナ「(笑って)やめた。バカな男はもうこりごり」
女王「はは」
○ジープ
撮影に向かう 4 人と犬。
でも、それは確実に死を意味している。
の、割には楽しそうな 4 人。
まるでピクニックに行く感じ。
○雀荘
大三元ができかけている支配者。ゆっくりとツモっているとそこに、まるで『ワイル
ドバンチ』のパイク一味のような映画屋たちが入ってくる。
支配者の部下たちが映画屋に一斉に銃を向ける。
だが映画屋、ひるまずに支配者に銃を向ける。そして、支配者を撃ち殺す。
雀卓にパイが飛び散る。その手には大三元の当たり牌。
ミサイル(犬)が支配者の部下に飛びかかり、攻撃の邪魔をする。
壮絶な銃撃戦。
その中で撮影をするタムラ。銃弾を体中に浴びても仁王のように立ち尽くしている。
タムラが死に、かわりにひたすらカメラを回すフルタ。
モヒカン、映画屋に“努力”と書いた壁掛けの横に飾ってある日本刀を渡す。
日本刀で応戦する映画屋。ばったばったと切り倒す。
銃弾を浴びて死にかけのモヒカン、ミサイル(犬)の首輪についていた手榴弾を投げ
て敵を全滅させる。笑いながら中指を立てて息絶える。
映画屋も激しい銃弾の応戦で血まみれですっ転んで床に倒れる。
モヒカンも映画屋もタムラも支配者も全員死ぬ。
血に染まった店内でカメラを持ったまま立ち尽くすフルタ。
フルタ「…」
壮絶な光景を目にして放心している。
体中に銃弾を浴びて血まみれの映画屋が、ひょっこりと起き上がって、
映画屋「撮ったか?」
首のあたりを手で押さえているが、血がこぼれるように出ている。
フルタ「はい…」
映画屋「そうか。イテテ…。帰るぞ…。タムラ!タムラ!俺がオフクロさんに怒られるん
だから…」
テクテク歩いていって、タムラやモヒカンが死んでいるあたりでつまずいて死ぬ。
犬がさみしそうに映画屋たちの死体のところで鳴いている。
フルタ「…」
○荒野
フィルム缶を担いで歩くフルタ。
彼方からニッタがバイクで走ってくる。
フルタ「ライブは?」
ニッタ「やめた」
フルタ「どうして?」
ニッタ、恥ずかしそうにバイクのサイドからギターバックを取り出す。
ニッタ「こっちにした。ロッカーだからよ」
ニッタ、ポケットからフルタのニコンのカメラを取り出し。
ニッタ「お前のぶんも」
フルタ、黙って受け取る。
ハイライトを吸うニッタ。
フルタ「学校出たらなんになりたい?」
ニッタ「ロックンロール・スター」
フルタ「(笑って)悪い、無理だよ」
○コンサート会場
トライセラトップスのコンサートがついに始まる…
熱狂する人々。まるでウッドストック。爆音でライブが始まる。
次々とスポットライトに照らされて登場するメンバーの面々。
ワダ、ハヤシ、ヨシダ。
スタンドマイクで絶叫するワダ。
ワダ「(獣の雄叫びのような咆哮)!!!!!!!!」
−暗転・エンドクレジット−
○荒野
エンドクレジットが終わって。
バイクで走っていくニッタとフルタ。
『MEXICO ROCK GASOLINE BACK BREAKER』
おわり
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