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事業者向けコンセプト集
便利屋
∼成熟社会におけるアシスト・ビジネス∼
「便利屋」とは
個人、家族、地域の困りごとが便利屋の仕事です。ちょっとした人手不足、ちょっとした力不足、ち
ょっとした技術不足、ちょっとした道具不足、ちょっとしたコミュニケーション不足、ちょっとした配
慮不足、ちょっとした心の不満を埋め合わす役割を便利屋は担っています。
一つ一つの業務は小さいが、かき集めれば専門業者の枠を超えた新しい業態が地域の中で成り立ち、
成熟社会の成長産業として便利屋は注目に値します。
昔の村落共同体が担ってきた「結」などのボランタリーなサービスを、都市化で共同体を失った現
代に、有料で便利屋が補っているといえるでしょう。
コンセプトの背景
■ 個人の心理的な葛藤を吸収する装置としての便利屋
・都市生活者の孤立感を癒すために話し相手
(カウンセラー)
が求められている。
・人との面倒な関係を断ち切るために代理人が必要とされている。
・無償ボランティアの派遣は、社会に借りをつくっているようでプライドが許さな
い。契約関係で対等になれる有償ボランティアが求められる場合がある。
■ 家族、血縁関係の崩壊を補完する労働提供装置としての便利屋
・核家族化に伴うちょっとした労働力不足を補うための代行が不足している。
・結婚式の代理出席など希薄になる血縁関係の代理役が求められている。
・安否確認など孤立する高齢者世帯にちょっとした人手が必要とされている。
・女性の社会進出に伴う家事労働の一部を補うために代行役が求められている。
■ 希薄化する地域のつながりをコーディネートする関節装置としての便利屋
・共同体のつながりを失った都市社会を結ぶコーディネータが求められている。
・地域のつながりを一時的に断ち切るための仲介役が求められている。
関連キーワード
◎ボランティア
自発的な個人の活動で、社会に対する参加の一方法。
無償の行為か有償の行為かは別の次元の問題。
◎アウトソーシング
業務の外部化。一組織ですべての業務を自前で行う
には、人件費がかさむリスクがあるので、専門サー
ビスを提供する外部に委託するケースが増えた。
◎人材派遣
派遣元の会社に席を置きながら派遣先の就業規則
や指示に則り労働を提供するサービス。これまで、
一部に限られていた派遣先業種が規制緩和された。
◎業務請負
人材派遣と類似しているが、派遣元の就業規則や指
示で業務を遂行するため、業務責任は派遣元にある
ところが異なる。便利屋は業務請負の範疇。
◎結・講・座
村落共同体で保有していた代表的な社会システム。
結は農耕や家作りなどでの労働交換システム。講は、
くじや金融など財の循環システム。座は市場などの
経済交流システムの機能を担っていた。
◎カウンセリング
クライアントの話を傾聴することで、心理的トラウ
マなどの葛藤を自己解決へ導く心理学的手法。
事業者向けコンセプト集
コンセプトの構造
C.Bへの活用例
◎・・・・・・・
「福祉の便利屋」
善意の押し付けになりがちなボランティアや画一的なサービスの行政支援
や業務の効率化を急ぐ企業のケアビジネスには賄えないサービスを提供するの
が福祉便利屋です。とくに、保険制度に当てはまらない業務を請け負います。
◎・・・・・・・
「買物代行タクシー」
地域の足になることを理念とする岐阜県多治見市の企業「コミュニティ・タ
クシー」は、高齢者や障害者の足として地域のコンビニエンスストアと連携し
て買物代行を企画するなど移動手段の便利屋として地域の期待に応えています。
◎・・・・・・・
「経営の便利屋」
経営のことなら何でも相談に乗り、具体的な解決まで手伝うのが経営便利屋
です。公的機関が保有する経営支援センターの専門家にはいない、経営の実務
支援やいざというときの専門家ネットワークを活用したチーム支援が特長です。
◎・・・・・・・
「まちのカウンセラー」
便利屋の仕事の中で以外に多いのが「聞き役」です。心理学という専門知識
はありませんが、ちょっとした愚痴や話し相手として、病人扱いされることな
く利用できる「耳のレンタル業」がまちのカウンセラーとしての便利屋です。
事業自立のポイント
■見積もりの妙
便利屋の見積りは、定価がないだけに経験を要するところですが、人材派遣
やアウトソーシングのように時間単価で決められます。しかし、利益を出して
いる便利屋は、見積りを即答せず、依頼現場まで行って相手の顔を見て決める
か、明瞭なメニューでシステマチィックに運営するかどちらかのようです。
■商圏を絞って顔の見える関係づくり
サービス内容や価格体系が不明瞭な便利屋が地域から選ばれるためには、信
用を売るしかありません。活動地域を絞って顔が見える範囲で実績を積み、口
コミ営業により顧客を獲得することに地域密着の便利屋らしい活動があります。
地域での役立ち分野
■有償ボランティア
「ボランティアに世話になるほど自分は老いぼれていない」と思っている元
気なお年寄りに、無償のボランティアや行政支援は受け入れがたいものです。
対等な契約関係でちょっとしたサービスの提供が受けられ、プライドを傷つけ
られずにすむ有償ボランティアが便利屋の貢献分野です。
■地域のつなぎ役、まちのコーディネータ
村落共同体が存在している地方では、
「結・講・座」などの社会システムが残
っており便利屋業は不要です。一方、都市化、核家族化、高齢化、女性の社会
進出が進む地域では共同体のつながりが失われているため、これを埋め合わせ
る便利屋がまちのコーディネータとして活躍することが期待されています。