ヨシノボリふしぎ発見

ヨシノボリふしぎ発見
水産科 3 年
1
青木勇人
武藤正人
若林幹夫
研究の動機
昨年の研究でヨシノボリの種の同定にふれた際、明らかに種が違うと思いながらも、種
の確定には至らなかった。したがって今年は、ヨシノボリの分類について詳しく研究して
みようと思った。
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目
的
ヨシノボリは種の同定が曖昧で、模様・形態に地域差が大きく現在の分類法も確定して
いるとはいえないので、自分達なりにヨシノボリの種類を明らかにする。
3
ヨシノボリについて
ヨシノボリの研究は数十年前から取り組まれてきたが、なかなかこれというものがなか
ったようだ。現在は1989年に発表された
「配偶者選択実験やアイソザイム分析などの調査結果からこれらの型の間には生殖的隔離
が成立している場合が多く、生物学的概念を適用すれば、少なくとも 9 種に分けられる」
というものが分類の一応の基準となっている。
ヨシノボリの分類型
シマヨシノボリ
・・・横斑型
オオヨシノボリ
・・・黒色大型
ヒラヨシノボリ
・・・南黒色大型
ルリヨシノボリ
・・・瑠璃型
クロヨシノボリ
・・・黒色型
アヤヨシノボリ
・・・モザイク型
トウヨシノボリ
・・・橙色型・偽橙色型・縞鰭型
アオバラヨシノボリ・・・中卵型・腹部が瑠璃色のもの
キバラヨシノボリ
・・・中卵型・腹が黄色のもの
これが、その 9 種である。学名はラシノゴビアスだが、ヨシノボリの仲間であることを
意 味 す る sp が つ き 、 種 名 が 学 名 に 含 ま れ て い な い こ と か ら わ か る よ う に 、 種 の 分 類 に つ
いて細かいところまではわかっておらず、種の判別は主に外部観察による体長と模様の違
い、生息地の違いによって分けられている。検索図鑑によると、頬にミミズ状の線がある
ものはシマヨシノボリ、ないもので尾鰭基底に黒色の横帯があるものがオオヨシノボリ、
という具合で分けていき、最終的に 9 種まで分けられる。
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研究方法・研究手順
(1)県内の那珂川水系を中心にヨシノボリを採集する
(2)検索図鑑を用いて、種の同定を行う
(3)同種ごとに地域差、基底による違い等見比べる
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研究の実施
(1)ヨシノボリの採集
ヨシノボリを採捕した河川は、那珂川、矢又川、城間川、久那川、小口川、武茂川、権
津川、大沢川、江川、箒川。ほかに、中禅寺湖と氏家にある大溜という調整池でも採捕を
行い、多くのヨシノボリを採集した。
これは採集した魚たちの写真だ。明らかに大きさの異なるヨシノボリや同じハゼ科の仲
間のヌマチチブなどが捕れた。
(2)種の同定
分類のために図鑑等で調べたところ、例えばトウヨシノボリでも、橙色型、宍道湖型、
偽橙色型、縞鰭型と、トウヨシノボリだけで4つの型に分けられるなど、地域差がかなり
大きく、分類についても確実性に乏しい。そのため、今回行った分類は、検索図鑑にこだ
わらず、まず自分たちなりの観点でいくつかのグループに分けてみて、その後で検索図鑑
でいうところの種に当てはめてみる、という手法を用いた。グループ分けのポイントとし
て は 、体 の 模 様 は 周 囲 の 色 や 環 境 に よ っ て 変 化 し て し ま い や す い た め 、顔 、特 に 頬 の 模 様 、
胸びれの斑紋、尾鰭の斑紋等の変化しにくい部位を重視して分けた。
(3)グループ分け
採集したヨシノボリは次の4つのグループに分けられた。
グループⅠ
シマヨシノボリ変異型
那珂川水系・中禅寺湖で採捕
頬に赤い点有り
胸鰭基部に三日月型の斑紋
尾鰭基部にカモメ型の斑紋
尾鰭軟条部に点状紋有り
1つめのグループは、頬に赤い点々があり、胸鰭基部に三日月状型の斑紋、尾鰭基部に
カモメ型の斑紋、尾鰭軟状部に点状紋がある個体である。このグループは頬のミミズ状の
線がないだけで、ほかの特徴はシマヨシノボリに当てはまるため、シマヨシノボリ変異型
とした。那珂川水系と中禅寺湖で捕れ、中禅寺湖で捕れたヨシノボリはほとんどがこのグ
ループだった。
グループⅡ
トウヨシノボリ偽橙色変異型
那珂川水系で採捕
頬に赤い点無し
胸鰭基部に斑紋無し
尾鰭基部に斑紋無し
尾鰭軟条部に点状紋有り
2つめのグループは、頬にも胸鰭にも、尾鰭にも特徴的な模様がなく、尾鰭軟状部の点
状紋以外に特別目立つ特徴のない個体である。検索図鑑の分類に当てはめると、トウヨシ
ノボリ偽橙色型に似た部分があるため、トウヨシノボリ偽橙色変異型とした。このグルー
プは、那珂川水系の河川で採捕されたが、数は少数だった。
グループⅢ
アオバラヨシノボリ類似型
中禅寺湖で採捕
頬に赤い点有り
胸鰭基部に斑紋無し
尾鰭基部に黄色の横線
尾鰭軟条部に点状紋無し
3つめのグループは、胸鰭と尾鰭には目立つ特徴はないが、頬に赤い点々があり、一番
の 特 徴 と し て 尾 鰭 の 基 部 に 黄 色 の 横 線 が あ っ た 。少 し わ か り に く い が 写 真 で も 確 認 で き る 。
この個体はアオバラヨシノボリに特徴が似ているためアオバラヨシノボリ類似型としたが、
アオバラヨシノボリは沖縄にのみ生息しているため、アオバラヨシノボリとは別種と思わ
れる。中禅寺湖で採捕された。
グループⅣ
シマヨシノボリ橙色型
那珂川水系で採捕
頬に赤い点有り
胸鰭基部に三日月型の斑紋
尾鰭基部にカモメ型の斑紋
尾鰭基部に強い橙色
4つめのグループは、頬の赤い点々、胸鰭の三日月型斑紋、尾鰭基部のカモメ型の斑紋
と 、グ ル ー プ 1と 非 常 に 似 通 っ て い る が 、尾 鰭 基 部 に 強 い 橙 色 が あ り 、個 体 数 も 多 か っ た た
め、違うグループに分けた。シマヨシノボリの特徴に強い橙色があるので、シマヨシノボ
リ 橙 色 型 と し た 。 那 珂 川 水 系 で 採 捕 さ れ た 中 で 、 グ ル ー プ 1に 次 ぐ 個 体 数 だ っ た 。
グループⅤ
オオヨシノボリ類似型
武茂川で採捕
頬に赤い点有り
胸鰭基部に台形型紋通常
明らかに黒色が強い
明らかに大きい
5つめのグループは、まず、他に比べ大きく、色が黒く、明らかに別種だと思われる。
写真を見るとほかに比べ明らかに大きいのがわかる。模様の特徴としては、頬の赤い点々
と、胸鰭基部に台形型の斑紋があった。
この個体はオオヨシノボリ(ヨシノボリ黒色大型)の特徴に当てはまるため、オオヨシ
ボリ類似型とした。
このグループは、武茂川でのみ採捕できた。採捕数はそれほど多くないが、武茂川で採
捕できたヨシノボリは、全てこのグループだった。
(4)基底の違いによる体色変化実験
基底による体色の変化をみるため、基底が黒と白の水槽に入れ、観察を行った。黒い水
槽の方は体色が黒化し、モザイク状の模様がはっきりと出る。
白い水槽の方は体色が白くなり、模様が弱まり暖色系の色が目立ってくる。
同じヨシノボリでも基底の色が違うだけでこれだけの違いが出る。
写真1
黒い基底の水槽。体色が黒化し、
模様がモザイク状にはっきり出る
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写真2
白い基底の水槽体色が白くなり、
模様が弱まるが暖色系の色が目立ってくる
結果
今回確認できたヨシノボリは、シマヨシノボリに分類されると思われるものが二種、ト
ウヨシノボリに分類されると思われるものが一種、オオヨシノボリに分類されると思われ
るものが一種、アオバラヨシノボリに類似したものが一種だった。
この中で、このオオヨシノボリ類似型は、オオヨシノボリだと見ていいと思われる。こ
のオオヨシノボリは、先ほどの写真を見てもわかるように、他のヨシノボリ属の魚とくら
べ 明 ら か に 大 き く 、特 徴 的 で 、別 種 と し て も い い と 僕 た ち は 考 え て い る 。今 回 調 べ て み て 、
なぜ別種に分けられていないのかと疑問に思った。
那珂川水系で確認できたヨシノボリ
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グループⅠ
シマヨシノボリ変異型
グループⅡ
トウヨシノボリ偽橙色変異型
グループⅢ
アオバラヨシノボリ類似型
グループⅣ
シマヨシノボリ橙色型
グループⅤ
オオヨシノボリ類似型
考察
同じヨシノボリでも基底によってこれだけ変化し、それ以上に地域差が大きいため、現
在の分類基準では的確に分類をするためには不十分といえると思われる。特に、トウヨシ
ノボリについては、地域差によっていくつもの型に分けられていることから、科学的手法
を使ったより詳細な研究が必要と思われる。
今回研究して、最初はどれも同じに見えたヨシノボリも、見方を変えることによって模
様や色の明らかに違うものが多数存在し、調べれば調べるほどヨシノボリの謎にのめりこ
み、はまっていくようだった。