ドイツにおける高級牛肉流通・販売状況等把握調査報告書16.58 MB

平成27年度輸出に取り組む事業者向け対策事業
(ジャパン・ブランドの確立に向けた取組)
ドイツにおける高級牛肉流通・販売状況等
把握調査報告書
平成28年3月
日本畜産物輸出促進協議会
は し が き
28の国で構成され、約6億の人口を有する EU は、古くから牛肉を食する一大消費地で
あることから、農林水産省が平成25年に策定した牛肉輸出戦略においても最重点国に位置
付けられている地域である。
同地域向け牛肉輸出は平成26年6月に開始され、まもなく2年が経過する。日本畜産物輸
出協議会では、これまでの間、関係団体・会員等と連携しながら、イギリス、フランス、
ドイツを中心に和牛のプロモーションを企画・実施してきた。また、プロモーションと並行
して、次なるプロモーションや現地の実情にあった企画・設計に資するため、現地における
日本産和牛の普及・浸透状況を含む高級牛肉の流通・販売状況等の把握にも努めてきた。
本書は、ドイツにおける今後の和牛の輸出拡大に向けた展開方向を探るため、同国内の
人口20%を占めるノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州を中心に牛肉販売事業者
等を抽出し、取り扱っている付加価値牛肉の内容と流通・小売状況等を把握したものであ
る。調査員による聞き取りを中心に行ったものだが、調査を通じて、現在の食肉店等にお
ける日本産和牛の認知度等も聞いている。さらに、ドイツの食肉流通・小売業界の事情や
ドイツ産 WAGYU の生産の実態なども盛り込んでまとめており、本書を利用し、
「和牛」の
現地展開に活用いただければ幸いである。
なお、本調査の実施およびとりまとめにあたっては、上智大学短期大学部講師の工藤花
野氏に多大な協力を賜った。ここに深く謝意を表する次第である。
平成28年3月
日本畜産物輸出促進協議会
目
次
第1章 調査概要
1.1 調査概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.2 地理的特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.2.1. ドイツ全体における大都会の数とNRW州の位置づけ・・・・・・・
1.2.2. NRW州における主要都市間のアクセス・・・・・・・・・・・・・
1.3 調査方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.3.1. 調査対象 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.3.2. 調査方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.3.3. 調査内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.4 調査日程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.5 調査場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.5.1. NRW州における現地調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.5.2. ANUGA和牛ブースにおける聞き取り調査・・・・・・・・・・・
1.5.3. フランクフルトにおける現地調査・・・・・・・・・・・・・・・・
1.5.4. ドイツ食肉協会への聞き取り・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.5.5. メールによる回答・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.6 調査員 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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第2章 ドイツの食肉流通・小売業界の最新事情 ・・・・・・・・・・・・・・
2.1 DFV概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.1.1. 食肉小売り業最上部の組織DFV ・・・・・・・・・・・・・・・
2.1.2. 幹部会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.1.3. DFV総会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.1.4. 運営 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.1.5. 規模・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.1.6. 歴史ある食肉組合 Fleischerinnung・・・・・・・・・・・・・・・
2.2 食肉の生産と消費動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.2.1. 全体のと畜頭数と食肉生産量・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.2.2 食肉消費量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.2.3. 畜産物価格・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.3 食肉流通の現状(食肉専門店)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.3.1. 業界全体の企業数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.3.2. 経営規模の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.3.3. 売上ルート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.4 食肉流通の現状(大規模小売店)
・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.4.1 大規模小売店の種類と伸び・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.4.2 食肉加工品の流通割合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.4.3 流通価格・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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2.5
2.6
2.6.1.
2.6.2.
2.7
2.7.1.
2.7.2.
2.7.3.
2.7.4
第3章
ドイツにおける WAGYU の生産・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドイツ WAGYU 協会の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
構成員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
食肉トレンドおよび高級牛肉需要の可能性
-DFV 広報担当 Gero Jentzsch 氏に聞く- ・・・・・・・・・
ブームとしての食肉消費の傾向・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドイツにおける日本産和牛への意識・・・・・・・・・・・・・・・
日本産和牛の売り方として・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
終わりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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NRW州及びフランクフルトの小売店・レストラン等調査 ・・・・・・ 26
第4章 WAGYU 生産農家(Wagyu‐Muensterland)の生産実態・・・・・・・
4.1 ホルトマン農場の経営概要(内容、規模、体制)
・・・・・・・・・・
4.1.1. 経営規模・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.1.2. 経営内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.1.3. 作業分担・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.1.4. 技術支援体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.2 農場の施設と飼養実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.3 受精卵入手から製品化までの流れ・・・・・・・・・・・・・・・・
4.3.1. 人工授精~誕生~仕分け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.3.2. 飼料の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.3.3. と畜・枝肉の分割、商品化と販売・・・・・・・・・・・・・・・・
4.4 なぜドイツで WAGYU を飼うのか・・・・・・・・・・・・・・・・
4.4.1. WAGYU の需要が高まっている・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.4.2. 純血種の WAGYU を求めて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.5 欧州初の繁殖牛のオークション(European Wagyu Gala)
・・・・
4.5.1. オークション概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.5.2. 成果(R.ホルトマン氏の評価)
・・・・・・・・・・・・・・・・
4.6 R.ホルトマン、M.ホルトマン夫妻の
WAGYU 生産にかける思いと展望・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.6.1. WAGYU との出会いと活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.6.2. WAGYU 生産農家としての未来・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.7 終わりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.7.1 ドイツにおける WAGYU 生産のホルトマン農場・・・・・・・・・・
4.7.2. ドイツの消費者に向けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.7.3. 日本産との競合の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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第1章 調査概要
1.1 調査概要
日本産和牛の EU 向け輸出は、2014 年6月に始まった。ドイツにおける日本からの牛
肉輸入量は、2014 年が EU 向けの約3分の1に相当する 16tであった(2015 年は 18%
に相当する 20t)
。EU 域内流通が活発なことから、同国内の普及、流通・販売状況につ
いては未だに実態が不明である。
さて、2015 年は隔年で開催され、16 万人以上が来場する世界最大級の総合食品見本市
「ANUGA2015」の開催年である(10 月 10 日~14 日、ドイツ・ノルトライン=ヴェス
トファーレン州(以下、
「NRW 州」という)ケルン市で開催)
。この ANUGA の開催時期
にあわせて、見本市会場内および同州の主要都市等で聞き取り調査を行い、現地の牛肉販
売のトレンドや和牛の競合品などの把握に努めた。
なお、NRW 州には多くの中規模都市(人口 30 万~60 万)が近接しており、古くはル
ール工業地帯の名でも知られるように、都市単位ではなくいくつもの都市が連なるように
大規模経済圏を形成している。NRW 州だけで、ドイツ全体の人口の 20%を占めており、
EU 内において単独としては最大の地方自治体である。それゆえに、この地域の動向がド
イツ全体(あるいは EU 全体)に与えるであろう影響を考えれば、限られた地域とはいえ、
今回の調査対象としては望ましいと言えよう。
本章では、NRW 州の地理的特徴、調査方法、調査日程、調査場所の順に紹介する。訪
問先での聞き取り内容および全体の講評については次章以降、詳細に述べることとする。
1.2 地理的特徴
1.2.1.ドイツ全体における大都市の数と NRW 州の位置づけ
2014 年のデータによれば、ドイツ連邦共和国は 8119 万 7537 人の人口を抱え、そのう
ち 10 万人以上の規模を「大都市」
、2万人以上を「中都市」と定めている。ドイツ全体で
76 ある「大都市」のうち 28 都市が NRW 州に属しており、2位のバーデン=ヴュルテン
ベルク州(9都市)を大きく上回る(図1)
。
NRW 州全体では、人口 1763 万 8098 人を抱える。ドイツ人口第1位のベルリン(340
万人)
、2位のハンブルク(170 万人)
、3位のミュンヘン(140 万人)などの大都市と比
較すると、第4位のケルン(100 万人)は別にして、7位のデュッセルドルフ(59 万人)
、
8位のドルトムント(57 万人)
、9位のエッセン(56 万人)などは、どちらかと言えば中
規模の都市である。主要都市としては、ケルンを除き、州都デュッセルドルフ以下、全国
第 20 位のミュンスターまで、人口は 30~60 万人の間に収まっており、個々の都市として
決して大規模とは言えない。しかしながら、これらの都市は利便性の高い鉄道網によって
緊密に結びついており、通勤圏・生活圏として近接した都市間をまたぐ大規模な経済圏が
いくつか形成されており、大都市圏と変わらぬ人口を抱える(図2および図3)
。
1
(図1)ドイツにおける 50000 人以上の都市(2014 年)
(ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンを除くと、NRW 州に多くが集中している。
)
NRW 州の経済規模はドイツ全体の 22%(2012 年)を占めており、州内の1人当たり
GDP も近年伸び続けている。中心となるケルンやデュッセルドルフでは外食文化も発展
しており、高級レストランや高級食材を使ったケータリングの需要も高い。
州内の上場企業には、スーパー大手の METRO、ALDI、REWE や、KRUPP、BAYER
などの世界的製造業のほか、流通大手の E.ON や DEUTSCHE POST、航空会社
LUFTHANSA などがある。
2
1. Köln (103,4175) 2. Düsseldorf (59,8686) 3. Dortmund (57,5944) 4. Essen (56,9884) 5. Duisburg (48,6855) 6. Bochum (36,1734) 7. Wuppertal (34,3488) 8. Bielefeld (32,8864) 9. Bonn (31,1287) 10. Münster (29,9708) 11. Gelsenkirchen (25,7850) 12. Mönchengladbach (25,5430) 13. Aachen (24,1683) (図2)NRW 州における人口分布図(2014 年)
(全国の 25 万人以上の都市をアルファベットで示した 28 件中 13 件が NRW 州に集中する。
)
1.2.2.NRW 州における主要都市間のアクセス
デュッセルドルフからの
所要時間
ドルトムント (58 分)
エッセン (29 分)
ケルン (33 分)
ミュンスター(90 分)
フランクフルト
(ICE で 90 分)
(図3)NRW 州の主な鉄道路線
3
1.3 調査方法
調査先の選定にあたっては、日本畜産物輸出促進協議会の事務局である(公社)中央畜産
会が有するリスト(Der Feinschmecker 2001 掲載店、過去の和牛セミナー参加者、ドイ
ツ食肉協会等)のほか、オンライン検索により把握した現地で付加価値牛肉料理を提供す
る飲食店、現地新聞の記事で取り上げられた WAGYU 飼養農家等とした。
また、卸売事業者等のバイヤーへの聞き取りは、効率的な実施のため、訪問方式ではな
く、ANUGA 会場での聞き取りを併用した。
1.3.1.調査対象
①NRW 州内の主要都市における、Feinschmecker500 選の精肉店・小売店
②2015 年 1 月に(公社)中央畜産会がフランクフルト及びミュンヘンで開催した和牛セミ
ナー参加者のうち NRW 州の企業
③NRW 州内の主要都市における大手スーパー・デパートの店舗及び本社
④NRW 州内の主要都市およびフランクフルトにおける、
「WAGYU」をメニューに載せ
ているレストラン
⑤NRW 州内で WAGYU を生産している農家
⑥ドイツ食肉協会
⑦ANUGA2015 での和牛ブースへの来場者
⑧その他現地での口コミ等による
1.3.2.調査方法
①メールによる問い合わせ及び取材の申込み
②対象店舗・対象者への現地での聞き取り
③ANUGA 来場者へのアンケート形式の聞き取り
1.3.3.調査内容
①小売店舗・レストラン等に対する付加価値牛肉取扱状況把握と日本産和牛拡大の可能
性等の聞き取り
取扱牛肉(特に付加価値牛肉商品)の販売概要(産地、部位、価格等)
、日本産和牛に
対する認知度や取扱意向、付加価値牛肉の販売傾向、取扱理由、PR ポイント等の聞き
取り。
②対 ANUGA 来場者に対する日本産和牛拡大の可能性等の聞き取り
取扱牛肉(特に付加価値牛肉商品)の販売概要(産地、部位、価格等)
、日本産和牛に
対する認知度や取扱意向の聞き取り。
③ドイツ産 WAGYU の生産・流通状況把握
ドイツ産 WAGYU の生産状況、商品の特徴、品質向上のための取り組み、販売状況、
ターゲットとする顧客層、自社商品と日本産和牛との差別化のポイント等の聞き取り。
4
④ドイツ食肉協会に対するドイツ国内の食肉流通状況と日本産和牛拡大の可能性等の
聞き取り
ドイツの牛肉流通・消費状況と食肉専門販売店等の経営実態等を聞き取り及び精肉店
における今後の日本産和牛の普及拡大にむけて必要な事項等の情報交換。
1.4 調査日程
調査期間は、平成 27 年 10 月 10~15 日であった。
1日目(10 月 10 日)は、ケルンの販売店等を調査した。
2日目(10 月 11 日)は、日曜日にあたることから ANUGA 来場者への聞き取り取材を
中心に実施した。
3日目(10 月 12 日)は、NRW 州のケルン以外の都市(エッセン、ドルトムント、デ
ュッセルドルフの一部)を中心に実施した。
4日目(10 月 13 日)は、ミュンスター、アルバハテンでの聞き取りと、ケルンでのフ
ォローアップを実施した。
5日目(10 月 14 日)は、フランクフルトでドイツ食肉協会および販売店等を調査した。
6日目(10 月 15 日)はデュッセルドルフ市内で主要店の聞き取り等を行った。
上記のほか、可能な限り、メールや電話での照会等を行った。
1.5 調査場所
1.5.1.NRW 州における現地調査
①ケルン(2015 年 10 月 10 日、13 日、15 日)※は電話による聞き取り
企業名
業種
住所
【1】Estilo Argentino GmbH & Co. KG
牛肉専門店
Marktstrasse 8, 50968 Köln
REWE Markt GmbH
スーパー
Domstraße 20, 50668 Köln
GALERIA Kaufhof Köln Hohe Straße
デパート
Hohe Straße 41-53, 50667 Köln
【2】Werner’s
精肉店
Severinstr. 13, 50678 Köln
【3】Metzgerei Stürmer
精肉店
Severinstr. 103, 50678 Köln
【20】Heinz Jansen※
精肉店
Welserstraße 10a, 51149 Köln
【21】Willi Odenkirchen※
精肉店
Gottesweg 110, 50939 Köln
【22】Scholl※
精肉店
Bodestraße 1, 51061, Köln
②デュッセルドルフ(2015 年 10 月 12 日、15 日)※は電話による聞き取り
企業名
業種
住所
【18】Schmalzried
精肉店
Oststr. 76, 40210 Düsseldorf
【17】Schlösser
精肉店
Oststr. 154, 40210 Düsseldorf
【23】Klöpfer※
精肉店
Duisburgerstr. 84, 40479 Düsseldorf
【19】Kagaya GmbH
レストラン
Charlottenstr. 60, 40210 Düsseldorf
5
③エッセン(2015 年 10 月 12 日)
企業名
業種
住所
【6】Der Filletshop (Essen)
高級肉専門店
Rüttenscheider Straße 153, 45131 Essen
【8】Gronau
精肉店
Rüttenscheider Str. 92, 45130 Essen
【7】Reinolsmann
精肉店
Rüttenscheider Str. 220, 45131 Essen
【5】Bistecca Grillroom
レストラン
Rüttenscheider Str. 2, 45128 Essen
【4】Restaurant am Park
レストラン
Huyssenallee 55, 45128 Essen
(Sheraton Essen Hotel)
④ドルトムント(2015 年 10 月 12 日)
企業名
【9】Der Filletshop
業種
高級肉専門店
住所
Saarlandstraße 102, 44139 Dortmund
⑤ミュンスター・アルバハテンにおける聞き取り(2015 年 10 月 13 日)
企業名
Wagyu Münsterland - Hof
業種
住所
生産農家
Ventrup 60, 48163 Münster
農業関連(遺伝子)
Eisenbahnstr. 1, 48341 Altenberge
Holtmann
World Wide Sires, Ltd. Germany
1.5.2.ANUGA 和牛ブースにおける聞き取り調査(2015 年 10 月 11 日、13 日)
①NRW 州の企業 ※はアンケートのみ
企業名
業種
所在地
Onkek Kethe※
報道
Dortmund
Eventcatering Essen
ケータリング/料理教室
Essen
CSB-System AG※
コンサルタント
Geilenkirchen
Frischeparadies KGNL Hürth
スーパー
Hürth
GWK
レストラン/ケータリング
Köln
Estilo Argentino DAT Köln
牛肉専門店
Köln
bacomzumsteak.de※
報道
Köln
Partyservice Hans Demmer※
ケータリング
Langenfeld
②NRW 州以外の企業 ※はアンケートのみ
企業名
業種
所在地
Captian Sushi
レストラン/ケータリング
Bremen
Fleisch-Heck
精肉店
Mosbach(Baden-Würtenberg)
Fleischerei Feldmann
精肉店
Pfungstadt(Hessen)
P. Daemen※
流通サービス
オランダ
Wakpol
製造
ポーランド
Neumayer & Meyer GmbH※
精肉店
Salzburg (オーストリア)
6
Strand Café※
レストラン
Wien (オーストリア)
Großhandel Karl KG※
卸売
不明
ALDO※
レストラン
不明
Dolu turizm Gün Tesi※
レストラン
不明
ELPOZO※
製造
スペイン
1.5.3.フランクフルトにおける現地調査(2015 年 10 月 14 日)
企業名
【11】Metzgerei und Gourmet
業種
住所
精肉店
Textorstr.9,
精肉店
Große Eschenheimer Str. 5
【14】Metzgerei Hoos GmbH
精肉店
Berger Straße 56,
【10】Meyer Feinkost
精肉店
Schweizer Straße 42,
【13】Heininger
精肉店
Neue Kräme 31, 60311 Frankfurt
【16】Sushimoto
レストラン
Konrad-Adenauer-Straße 7, 60313 Frankfurt
【12】IIMORI Restaurant
レストラン
Braubachstraße 24, 60311 Frankfurt
Service BUMP
【15】Metzgerei & Feinkost Michael
Ebert
Sachsenhausen
1.5.4.ドイツ食肉協会への聞き取り(2015 年 10 月 14 日)
企業名
Deutscher Fleischer Verband e.V.
業種
食肉協会
住所
Kennedyallee 53, 60596 Frankfurt/Main
1.5.5.メールによる回答
企業名
業種
住所
【24】Aldi Süd(本社)
スーパー
Burgstraße 37, 45476 Mülheim an der Ruhr
【25】METRO(本社)
スーパー
Otto-Hahn-Straße 15, 50997 Köln
1.6 調査員
工藤 花野(上智大学短期大学部講師)
近田 康二(日本畜産物輸出促進協議会事務局)
7
第2章
ドイツの食肉流通・小売業界の最新事情
2.1 DFV 概要
調 査 日:2015 年 10 月 14 日
調査対象:ドイツ食肉同業者組合連合会
(Deutscher Fleischer-Verband e. V.:DFV)
広報担当 Gero Jentzsch 氏
調査場所:DFV 本部(フランクフルト・アム・マイン)
連 絡 先:T E L +49 (0) 69-63302-0 FAX +49 (0) 69-63302-150
E-mail [email protected]
W E B:HP http://www.fleischerhandwerk.de
所 在 地:Kennedyallee 53,60596 Frankfurt am Main, Germany
調査内容:1.ドイツ食肉同業者組合連合会(DFV)の概要
2.ドイツ食肉業者について
3.ドイツの食肉生産・消費動向
4.ドイツの食肉流通の現状
(生産・輸出の増減・小売とスーパーの割合や消費の増減)
5.ドイツの食肉のトレンドおよび日本産和牛需要の可能性
2.1.1.食肉小売り業最上部の組織 DFV
ドイツ食肉同業者組合連合会(Deutscher Fleischer Verband 以下「DFV」)は 15 の食肉
業者同業組合の地域連合(Landesinnungsverband、以下「LIV」)の自発的な団体であり、
職人中央組合としてドイツの職人の業種別組合の全国組合(die Bundesvereinigung der
Fachverbände des deutschen Handwerks ) お よ び ド イ ツ 職 人 中 央 組 合 ( der
Zentralverband des Deutschen Handwerks)に所属する。DFV は 1875 年にゴータで設立
され、140 年の歴史を遡ることができる。
2.1.2.幹部会
協会の運営は幹部会が行い、ここには会長と4人の副会長が所属する。
2.1.3.DFV 総会
各組合員会議間の決定コミッションとしての役割を持ち、DFV 総会内で実施される。DFV
総会は、DFV 幹部会および 15 の LIV の代表者1人ずつにより行われる。この LIV 代表者
は、それぞれの LIV に応じた票数を持つ。そのほか各 LIV の会長も総会に参加する。これ
により、総会には重要な調整機能が課せられる。政治的および公的な問題提起の際し、ここ
で戦略と語彙に関する規定が統一され、精肉業界の各団体の発言に統一性を保証する。
8
2.1.4.運営
DFV の運営は、本部で行われる。この本部はフランクフルト・アム・マインにあり、代
表者は経営学修士の Martin Fuchs 氏である。
2.1.5.規模
フランクフルト本部事務局 17 人とブリュッセル支局2人の計 19 人で運営される。独立
した精肉業者のみの約 9000 人の組合員で構成され、と畜場やカット肉工場は含まれない。
食肉専門店はそれぞれが市町村に準ずるその地域の組合(Innung)に所属、地域組合
(Innung)はそれぞれが州に準ずる地域組合連合(LIV)に所属、LIV はそれぞれが全国組
合(DFV)に所属するという段階的構造を成す。15 の LIV と合わせて 285 の Innung が存
在する(表 1)。
(表1)地域組合連合ごとの地域組合と精肉業者対応表(参考)
地域組合連合(LIV)1)
地域連合
所属精肉業者 2)
全国精肉業者数 3)
(Innung)
バイエルン
62
705~
3566
ノルトライン=ヴェストファーレン
45
400~
1876
バーデン=ヴュルテンベルク
32
314~
2242
ニーダーザクセン・ブレーメン
31
540
1096
ヘッセン
24
500~
1299
ラインラント=ラインヘッセン
13
286
ザクセン
12
44~
694
チューリンゲン
11
16~
419
ザクセン=アンハルト
8
26~
386
ベルリン・ブランデンブルク
7
103~
447
シュレスヴィヒ=ホルシュタイン
7
52~
317
メクレンブルク=フォアポンメルン
6
17~
128
ザールラント
6
―
171
プファルツ
4
―
※
ハンブルク
1
50
合計
269
3053~
※846
86
13559
1)ドイツ連邦行政区である 16 の連邦州のうち、ベルリンおよびブレーメンがそれぞれブランデンブルク州、ニーダーザク
セン州と合体、ラインラント=プファルツ州がラインラント=ラインヘッセンとプファルツに分裂。
2)DFV 統計資料『ドイツ食肉組合 2015(DFV2015)』の「ドイツにおける食肉加工販売業」(表6)を参照。
3)地域組合によっては所属企業の数を明示しないため、実際の組合所属企業数は不明。
※ラインラント=ラインヘッセンとプファルツは別団体であるが、全国統計では州としての合算値しか出ていないので実際
の所属企業数は不明。
9
2.1.6.歴史ある食肉組合 Fleischerinnung
食肉組合は、食肉加工・販売業の基礎となる組織であり、800 年以上の伝統
を遡ることができる古い同業組合の一つである。こういった組合の目的は、か
つては同業者間の団体の利益を守ることであったが、今日ではそこから大幅に
発展しており、業界内にとどまらず、業界の外すなわち消費者やメディアにと
っての包括的なサービス提供を目的とする。
食肉組合用の櫃
食肉組合の形成も、そこへの加入も自由意思によるものであり、組合はその フランクフルト
(1731 年)
地域の独立した食肉マイスターの結合を意味する。
職人のための条例すなわち職人憲章に組合の使命が示されている。特に、見習い職人(シ
ューレ)および職人(ゲゼレ)試験制度や、マイスターの開業規則を規定している。見習い
職人、職人、マイスターの育成や研修を世話し、それぞれの技能を促進する。組合の会長は
名誉職であり、組合所属の食肉マイスターによって選出された上級マイスターが引き受ける。
2.2 食肉の生産と消費動向
2.2.1.全体のと畜頭数と食肉生産量
ドイツ食肉同業者組合連合会(DFV)がまとめた「食肉関係統計資料 2015」によると、2014
年にドイツ全体でと畜された牛は、321 万 5800 頭、牛肉量としては 1081t、子牛ではそれ
ぞれ 36 万 8000 頭、5万 3080tであった(表2)。牛、豚、鶏ともに自給率 100%を超えて
いるのは、2014 年 8 月以降 EU 各国が実施している対ロシア経済制裁による輸出減少が背
景にある。一方、羊は輸入に頼っていることが分かる。
(表2)2014 年のと畜頭数
と畜頭数
自給率
3,215,800 頭
1,081,013t
368,000 頭
53,080t
豚
58,852,000 頭
5,520,300t
117%
羊
1,515,300 頭
30,715t
50%
1,526,280t
109%
牛
子牛
鶏
(資料
食肉産出量
-
111%
DFV2015, 32 ページ)
2.2.2.食肉消費量
表3は、ドイツにおける食肉消費量の推移を表している。ドイツ人1人当たりの年間食肉
消費量は 1950 年の 26.3kg から 2004 年が 60.3kg と 2.3 倍に増えている。消費のピークは
1985 年(66.1kg)であり、2005 年には 59.6kg にまで大幅に減少したが、それ以降は全体
値としては横ばいである。
牛肉の消費量は、1975 年の 15.3kg がピークであり、その後 2000 年頃の BSE 問題で
8.3kg にまで減少し、近年は横ばいである。消費は横ばいであるものの、生産量が増加し、
自給率が向上、輸出量も増加しているということになる。
現在のドイツでは肉の輸出を大変重視している。近年の傾向として、ドイツ人は徐々に肉
10
を消費しなくなっている。人口統計上、日本同様に高齢化が進んでおり、高齢者があまり肉
を消費しないからである。加えて、特に中東からの移民も増えており、彼らは一方では肉を
消費するほどお金をかけられず、もう一方ではムスリムが多いため、宗教上の理由で豚肉を
消費しない。
このようなことから、ドイツにおける肉の消費は横ばいか減少傾向にある。ゆえにドイツ
の生産者は、日本、中国、オランダ、ロシア等の外国への肉の輸出に高い関心を寄せている
のである。
(表3)食肉消費量の推移
長 期 間 比 較 に よ る 食 肉 消 費 (kg)
牛・子牛肉
豚肉
羊肉
主要肉合計
馬肉
内臓
鶏肉
その他の肉
食肉合計
(資料
1950
9.0
13.9
0.4
23.3
0.6
1.0
0.7
0.6
26.2
1975
15.3
31.9
0.4
47.6
0.1
2.0
5.4
0.7
55.8
1985
15.1
41.8
0.5
57.4
0.1 –
2.1
5.6
1.0
66.1
1995
11.4
39.6
0.7
51.7
2005
8.3
39.6
0.7
47.9
–
1.2
8.0
0.9
61.8
2010
8.8
38.9
0.6
48.9
–
0.3
10.4
0.9
59.6
2013
9.0
38.5
0.6
48.1
–
0.2
11.1
1.1
61.3
2014
8.9
38.2
0.5
47.6
–
0.2
11.5
1.0
60.7
0.2
11.5
1.0
60.3
DFV2015, 39 ページ)
2.2.3.畜産物価格
ドイツ全体での畜産物の平均価格は下がっている。EU 全体のデータは割愛するが、おそ
らく全体的に下がっているであろう。例えば過去2年間の豚と若い雄牛の価格の推移がある
が、2014 年8月の対ロシア経済制裁以降、豚は値段を下げている。季節によって価格は変
動するが全体的に下がっている(表4)。
と畜場におけると畜用家畜の価格(枝肉卸売価格)の推移をみる(表 5)。雄牛、若齢雄
牛、雌牛、未経産牛、子牛などの平均価格は一様に下がっている。特に 2014 年の豚価は、
前年比-8.8%と大幅減になっている。全体でいえば、牛肉の需要は少し増えているが、価
格は下がっている。「しかし、需要がこのまま上がっていけば、価格も上がるだろう。価格
に反映されるのは少し先なので、この先また上がっていくはずだ」というのがおおかたの食
肉業界筋の見方である。その理由は、消費者の需要に応じて生産調整していくのが定石だか
らである。特に 2014 年8月の対ロシア経済制裁で市場が閉じられたので、それ以降は、輸
出分がそっくり供給過多の格好になり、価格が下落した。これは特殊な事情であり、今後は
上昇していくものと思われる。対ロシア経済制裁開始時は、すでに市場に多くの家畜が出回
っており、価格下落を招いたのである。
調査時(2015 年 10 月時点)も状況は変わらず、ロシア向け輸出は止まっていた。表4は
最新データであるが、2014 年全体の数字を使っているので、ここで実際に対ロシア経済制
裁の影響が出ている。自給率(表2)でも牛肉生産 111%という数字があったように、ドイ
ツの肉の輸出にとって大きな出来事であったといえる。
11
(表4)豚・牛枝肉価格(2013~2015 年)
豚
等級E-P
縦軸
EUR/kg(と畜重
量)
横軸
(図
1-12 月
DFV2015, 46 ページ)
若い雄牛
縦軸
等級R3
EUR/kg(と畜重
量)
横軸
(資料
1-12 月
DFV2015, 46 ページ)
(表5)豚および牛の枝肉卸売価格
取引等級
E
M
(S )E - P
と 畜 豚 価 格 ( E U R / kg)
2013
2014 EUR絶 対 値
変 動 値 (% )
1 .7 0
1 .5 5
- 0 .1 5
- 8 .8
1 .3 9
1 .3 0
- 0 .0 9
- 6 .5
1 .7 0
1 .5 5
- 0 .1 5
- 8 .8
種 類 ごとの と 畜 牛 価 格
( E U R / 屠 殺 重 量 kg)
等級
去 勢 牛 R3
若 い 雄 牛 R3
牝 牛 R3
未 経 産 牛 R3
子 牛 (E - P )
DFV2015
(資料
級 , 47 ページ)
牛全等
豚 (S ) E - P
2013
3 .8 7
3 .7 7
3 .2 9
3 .7 6
4 .4 3
3 .3 4
1 .7 0
2014 EUR絶 対 値
変 動 値 (% )
3 .7 9
- 0 .0 8
- 2 .1
3 .6 0
- 0 .1 7
- 4 .5
3 .0 4
- 0 .2 5
- 7 .6
3 .6 7
- 0 .0 9
- 2 .4
4 .3 6
- 0 .0 7
- 1 .6
3 .1 1
- 0 .2 3
- 6 .9
1 .5 5
- 0 .1 5
- 8 .8 0
12
2.3 食肉流通の現状(食肉専門店)
2.3.1.業界全体の企業数
DFV の 2015 年統計によれば、ドイツ全体の食肉専門店は1万 3599 店舗であり、うち、
加工・販売を担う店舗は 9150 店にのぼる(表6)。
(表6)ドイツにおける食肉加工販売業
ドイツにおける食肉加工販売業
食肉専門店13,559と加工販売をする店舗(9,150) (地図上から下へ)
Schleswig-Holstein
シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン
317(105)
Mechlenburg-Vorpommernメックレンブルク・フォアポメルン
128(185)
Hamburg
ハンブルク
86(26)
Bremen
ブレーメン
41(36)
Berlin
ベルリン
106(92)
Niedersachsen
ニーダーザクセン
1,055(613)
Brandenburg
ブランデンブルク
341(371)
Sachsen-Anhalt
ザクセン・アンハルト
386(550)
Nordrhein-Westfalen
ノルトライン・ウエストファーレン
1,876(969)
Sachsen
ザクセン
694(947)
Thüringen
テューリンゲン
419(578)
Hessen
ヘッセン
1,299(603)
Rheinland-Pfalz
ラインラント・プファルツ
846(496)
Saarland
ザールラント
171(95)
Beyern
バイエルン
3,566(2,148)
Baden-Württenburg
バーデン・ビュルッテンベルク
2,242(1,340)
ドイツ食肉組合2015
(資料
DFV2015, 12 ページ)
2.3.2.経営規模の推移
一般的な食肉専門店(加工・販売業)の雇用規模は、従業員2人から 150 人である。1企
業当たりの平均従業員は約 10 人、研修生が2人、売上高は 120 万から 130 万ユーロであ
る。過去 10 年の推移をみると、業者数は 25%減(1 万 8032 件から 1 万 3559 件へ)、従業
員数は 15%減(16 万 8000 人から 14 万 3070 人へ)と減少傾向をたどっている。しかし、
業界全体の総売上高は4%増(156 億 4800 万ユーロから 163 億 1300 万ユーロへ)と伸び
ている。小企業は減少傾向にあるが、効率化を図ることにより、生き残る企業ほど売り上げ
を伸ばし、支店を含めた売り上げが伸びているのである(表7)。これは食肉専門店のみの
統計であるが、大型スーパーなど大規模小売店でも同じ傾向がみられる。
13
(表7)食肉加工販売業の構造データ(2004~2014 年)
年
(資料
食肉加工販売業の構造データ2004-2014
総売上(100万
ユーロ単位)
従業員数
売上(ユーロ単位)
事業所数
合計
事業所あたり
事業所あたり 従業員あたり
2004
18,032
168,000
9.3
15,648
867,572
93,143
2005
17,605
162,100
9.2
15,342
871,457
94,645
2006
17,138
159,400
9.3
15,776
920,527
98,971
2007
16,761
155,300
9.3
15,311
913,487
98,590
2008
16,226
152,500
9.4
15,985
998,098
104,820
2009
15,770
151,300
9.6
15,740
1,031,298
104,032
2010
15,496
148,750
9.6
15,981
1,098,567
107,435
2011
14,969
146,260
9.8
16,444
1,141,943
112,433
2012
14,372
145,700
10.1
14,412
1,141,943
112,624
2013
13,931
143,500
10.3
16,428
1,178,092
114,481
2014
13,559
143,070
10.6
16,313
1,203,112
114,021
DFV2015, 17 ページ)
2.3.3.売上ルート
各食肉専門店が取り入れる販売方式のうち、カウンター(対面式)販売(94.6%)や軽食・
温かい食事(59.5%)などの店内でのサービスと並んで、パーティー・ケータリングサービ
ス(75.7%)を取り入れている店も多くなっている(表8)。
(表8)食肉専門店の販売方式
食肉専門店の売上ルート
2014(%)
カウンター販売
セルフ式カウンター
パーティー・ケータリングサービス
大口消費者への配送
軽食・温かい食事
食品小売への配送
移動式販売
オンライン・ショップ
(資料
94.6
10.8
75.7
37.8
59.5
16.2
7.7
4.8
DFV2015, 23 ページ)
一方、販売方式別の売上高をみると、対面式販売が約3分の2、店内軽食・温かい食事、
パーティー・ケータリングがそれぞれ 10%程度を占める。ほかに幼稚園、病院、老人ホー
ムなどを対象とした大口消費者への配送が8%、セルフ式カウンターおよびスーパー等の食
品小売業者への配送(パック販売)が3%と続く(表9)。
14
(表9)売上に占める割合
2014
総売上におけるルート
カウンター販売
64.2
セルフ式カウンター
3.1
パーティー・ケータリングサービス
9.8
大口消費者への配送
8.5
軽食・温かい食事
9.4
食品小売への配送
(資料
(%)
3
移動式販売
1.6
オンライン・ショップ
0.4
DFV2015, 24 ページ)
2.4 食肉流通の現状(大規模小売店)
2.4.1.大規模小売店の種類と伸び
流通においても食肉専門店の経営規模の推移と同様の影響がある。小規模のスーパーは減
り、消費者市場全体では業務スーパーのような大規模(面積 2500 ㎡以上)の大型店は売り
上げを伸ばしている。ディスカウント店は少し伸び悩み、一般的なスーパーはドイツでは縮
小している。大型店はより大きく、スーパーは小さくなったが、普通のスーパーは減少、小
型スーパー(面積 399 ㎡以下)は大幅に減少している(表 10)。
売り上げの欄をみても同様で、小型店はみな売り上げを減らしている。ドラッグストアは
伸びているが、ここは食品を扱わないので特にカウントしなくてよいだろう。全体として、
食品を扱う小型スーパーは縮小している。ディスカウント店では、ドイツでは「アルディ
(Aldi)」や「リドル(Lidl)」が特に大きいが、他にも「ペニー(Penny)」や「ネット(Netto)」
などが挙げられる。
(表 10)店舗形態による食品小売構造およびドラッグストアの構造
店舗形態による食品小売構造およびドラッグストアの構造
店舗形態
2014.1.1
数
業務スーパー 総数
7,100
大(≧2,500平米)
2,018
小(1,000〜2,499平米)
5,082
ディスカウンター
16,169
スーパー 総数
9,753
大(400〜999平米)
4,694
小(100〜399平米)
5,059
ドラッグストア
4,087
総計
37,109
(資料
%
19.1
5.4
13.7
43.6
26.3
12.7
13.6
11.0
100.0
数
2015.1.1
数
7.291
2,062
5,229
16,093
8,922
4,482
4,440
4,349
36,655
%
19.9
5.6
14.3
43.9
24.3
12.2
12.1
11.9
100,0
DFV2015, 28 ページ)
15
変化
(%)
2.7
2.2
2.9
-0.5
-8.5
-4.5
-12.2
6.4
-1.2
売上(100万ユーロ)
2013
2014
数
% 数
%
68,975 41.4 72,085 42.2
42,665 25.6 44,170 25.9
26,310 15.8 27,915 16.3
64,480 38.7 65,835 38.5
20,165 12.1 19,160 11.2
16,165 9.7 15,430 9.0
4,000 2.4
3,370 2.2
12,935 7.8 13,825 8.1
166,555 100,0 170,905 100,0
変化
(%)
4.5
3.5
6.1
2.1
-5.0
-4.5
-6.8
6.9
2.6
表 11 に上位 20 社の売上を示した。2014 年の売上第1位はディスカウント店の「ネット」
を傘下に置く大型チェーンの「エデカ(Edeka)」グループであった。2位は同じくディス
カウント店の「ペニー」を傘下に置く「レ―ヴェ(Rewe)」であった。それぞれ前年比で2%
台の成長を遂げており、なかでも食品売上はエデカ(グループ全体で約 470 億ユーロ)が突
出し、2位のレ―ヴェ(同約 276 億ユーロ)以下を大きく引き離している。
(表 11)2014 ドイツ食品小売業トップ 30
2014 ドイツ 食品小売業 トップ30
総売上(額面)
2014(100万
2013に対する 食品の占める
ユーロ)
変化(%)
割合
51,850
2.0
90.6
38,504
1.9
89.1
13,221
2.2
95.0
125
2.5
98.0
37,999
2.4
72.5
35,023
2.5
70.6
19,820
3.3
90.2
7,532
0.5
90.0
7,671
2.4
1.0
2,976
1.2
95.0
34,060
2.5
81.2
20,460
3.3
82.0
13,600
1.3
80.0
29,718
-0.3
36.5
9,139
-0.7
70.0
5,473
0.3
76.0
15,106
-0.2
1.8
27,505
1.3
82.0
15,500
0.6
82.0
12,005
2.2
82.0
8,790
4.6
99.0
7,515
2.2
26.3
2,061
-4.1
96.0
5,454
4.8
0.0
6,400
9.6
90.0
5,407
7.6
90.0
4,731
3.0
67.0
3,889
4.0
77.7
2,275
3.4
76.0
1,614
4.8
80.0
3,160
5.2
86.4
3,127
3.4
85.0
2,857
2.7
41.0
2,070
2.0
87.0
1,407
-3.2
91.8
1,232
-3.4
92.0
175
-1.7
90.0
1,276
-0.1
84.0
1,203
1.0
93.0
1,070
-0.6
80.0
1,053
4.1
70.0
810
19.8
95.0
769
2.3
54.0
766
15.5
95.0
722
0.0
80.0
642
1.1
85.0
545
0.9
90.0
495
4.0
88.0
474
3.0
80.0
438 ランク入り初
90.0
350
1.4
95.0
ランク 企業
1 エデカグループ(在ハンブルク)
エデカ地域会社
ネット、マックスヒュッテ・ハイトホフ
その他の企業・部門
2 レーヴェグループ(在ケルン)
レーヴェ・コンツェルン
フォルゾーティメント
ペニー(在ケルン)
その他の企業・部門
レーヴェ・ドルトムント(在ドルトムント)
3 シュワルツ・グループ(在ネッカースウルム)
リドル(在ネッカースウルム)
カウフラント(在ネッカースウルム)
4 メトロ・グループ(在デュッセルドルフ)
レアル(在メンヘングラートバッハ)
メトロC+C(在デュッセルドルフ)
その他の企業・部門
5 アルディグループ(在エッセン、ミュールハイム)
アルディ南(在ミュールハイム)
アルディ北(在エッセン)
6 レッカーラント(在フレヘン)
7 テンゲルマン・グループ(在ミュールハイム)
カイザース・ゲルスマン(在ミュールハイム)
その他の企業・部門
8 dm(在カールスルーエ)
9 ロスマン(在ブルクヴェーデル)
10 グローブス(在ザンクト・ヴェンデル)
11 バルテルス・ラングネス(在キール)
バルテルス・ラングネス(在キール)
チティ(在キール)
12 トランスグルメ・ドイチュラント(在ノイ・イーゼンブルク)
13 ノルマ(在ニュールンベルク)
14 ミュラー(在ウルム)
15 ビュンティッヒ(在レーア)
16 ドーレ・グループ(在ジークブルク)
ヒット(在ジークブルク)
その他ドーレ参加メンバー
17 コープ(在キール)
18 ネット北(在シュターフェンハーゲン)
19 テグート(在フルダ)
20 フレスナップフ(在クレーフェルト)
21 デンレー(在テペン)
22 ケース(在マウアーシュテッテン)
23 アルナトゥーラ(在ビッケンバッハ)
24 ハンデルスホーフ(在ケルン)
25 クラース+コック(在グロナウ)
26 ヴァスガウ(在ピルマーゼンス)
27 リューニング(在リートベルク)
28 ブトニコフスキー(在ハンブルク)
29 シュトレーマン(在ミュンスター)
30 シェフス・クリナー西(在ヴェーゼ)
(資料
DFV2015, 31 ページ)
16
2014食品売上
(100万ユー
ロ)
46,999
34,317
12,560
123
27,559
24,732
17,878
6,779
75
2,827
27,657
16,777
10,880
10,832
6,397
4,159
276
22,554
12,710
9,844
8,702
1,979
1,979
5,760
4,866
3,170
3,020
1,729
1,291
2,730
2,658
1,171
1,801
1,291
1,133
158
1,072
1,119
856
737
770
415
728
578
546
491
436
379
394
333
2.4.2.食肉加工品の流通割合
食肉専門店の売り上げは、一般的な大型店やスーパーに負けており、ソーセージなどの加
工品であっても今やスーパーでパックされたものを買う人が多いという。1990 年に 30%だ
ったハムやソーセージなどの食肉加工品や精肉製品のパック販売が、25 年で 2 倍の 60%以
上になっていることが分かる(表 12)。
(表 12)食肉製品の提供形態の変化
食 肉 製 品 の 提 供 形 態 の 変 化
(民間家計での購入分に占める%)
提供形態
1990
1995 2000 2005 2010 2013 2014
バラ
61.0
60.0
51.6
32.4 30.3 29.7
18.9
パック済み
30.4
33.3
43.2
62.3 64.1 65.1
66.1
保存食品
8.6
6.7
5.2
5.3
5.6
5.1
5.0
DFV2015, 43 ページ)
(資料
表8や表9で示したとおり、食肉専門店の商品は対面方式の販売が多いので、すなわちこ
れはスーパー等の小売りの割合ということになる。つまり、販売量からいえば精肉店の割合
は 30%、売り上げでいえば 40%を占めるといえるだろう。量は少なくても、大型店やディ
スカウント店ではより価格が低く、精肉店では少量でも高くなるので、販売量としては3分
の1、売上価格としては 40%程度になる。ただし食肉専門店の方は専門店であるため、商
品数は多く、特定の客に向けた商品や、地域の生産品や特産品、他に動物愛護の点での希少
価値や、大量生産はしないというスタイルを打ち出すことができる。こういった点はドイツ
の消費者にとって非常に重要である。特に家畜を長時間運搬しないなど、アニマルウェルフ
ェアの観点は専門店ならではの売り方である。こうした点を重視する消費者には、食肉専門
店が好まれる。しかし、当然のこととして価格の安さのみを求める消費者もいるので、この
数字が示すように、大型店やディスカウント店が売り上げを伸ばしている(表 13)。
(表 13)2014 食肉加工品およびソーセージの提供形態
2014 食肉加工品およびソーセージの提供形態(%)
民間家計の食肉加工品および
ソーセージの購入量
バラ
パック済み 保存食品
ゆで素材ソーセージ
30.9
66.3
生ソーセージ
26.7
73.1
ゆでソーセージ
41.8
49.7
ミニソーセージ
18.7
61.9
焼きソーセージ
25.8
73.9
ハム
20.2
79.6
薄切りソーセージ
73.7
26.3 –
ベーコン
14.8
85.2 –
煮こごり(アスピック・ジュルツェ)
42.6
38.2
フライ
47.2
52.8 –
肉パテ・肉巻きロール
22.8
75.2
総計
28.9
66.1
(資料
DFV2015, 44 ページ)
17
2.8
0.2
8.5
19.5
0.3
0.2
19.2
2.1
5.0
2.4.3.流通価格
値段については、特定の製品を求めるとなれば食肉専門店の方が高くなるが、一般的に専
門店では高め、大型店では普通、ディスカウント店になるとさらに低くなっている。ところ
が、食肉専門店と品ぞろえの多い大型スーパーを比べた場合、例えば「エデカ」や「レ―ヴ
ェ」だが、そこでは実際のところ一般的な商品であれば、価格は拮抗している。価格のみが
重視されるディスカウント店では大変低くなるのははっきりしているが、食肉専門店と「レ
―ヴェ」では、価格は同じくらいになっている。「アルディ」や「リドル」に行けば、価格
はぐっと下がる。
2.5 ドイツにおける WAGYU の生産
調査の時間的な制約があり、生産者側の状況を詳細に説明することはできなかったが、個
人的な感覚としてドイツ国内の WAGYU の生産は年々増加傾向をたどっていると思われた。
規模は小さいながらも、潜在需要の高まりを背景にその生産意欲に強いものを感じた。
日本で畜種別に家畜改良増殖目標が策定されているが、ドイツでも「ドイツ肉牛飼育者・
保持者連盟(Bundesverband Deutscher Fleischrinderzüchter und -halter)
」
(BDF)とい
う生産者組織が各品種別に厳格な「飼育目標(Zuchtziel)」というものを設定しており、そ
れぞれの品種の完成形がどういった外見になるのか、つまり大きさや増体量などの標準化を
分かりやすく規定している。
BDF が定めた肉牛の「飼育目標」は 22 品種におよび、各品種の外見の様子だけでなく、
行動様式についても規定がある(表 15)。大きさ、色、頭や角の形、そういったものが保持
されるように、品種の特性が厳密に決められている。品種それぞれに特有の望ましい形態の
保持を目的として、登録された雄牛と雌牛のみが交配することを許される。ドイツの生産者
は各品種のオリジナルの原型を留めたいので、こういったものが設定されている。
WAGYU 生産に関してもこのシステムが適用されている。図は WAGYU の飼育目標を掲
載したものだが、望ましい色、体格、特徴、大きさや体重、行動様式などが非常に細かく記
されている。
BDF がまとめた肉牛飼養に関する2つの統計があるので、ここに紹介したい(表 14)。
2014 年の飼養農場は 6029 ヵ所、飼養頭数が6万 4197 頭となっている。前年に比べると事
業者数が 0.8%、頭数が 1.1%の微増となっている。このうち WAGYU は 39 ヵ所で種雄牛
30 頭、繁殖雌牛 94 頭、合計 124 頭が飼われている。アンガス種(9000 頭)、シャロレー種
(8000 頭)、フレックフィー(シメンタール)種(1 万 1000 頭)、リムーザン種(1 万 1000
頭)に比べれば、大変少ない頭数である。
WAGYU に関しては、100%の純粋種の登録だけが認められている。つまり、論理上は登
録外の飼育も可能だが、この場合は正式の飼育とは認められない。もちろんプライベートで
ペットとして WAGYU を飼うなら良いが、生産者として飼育する場合は登録が必要となる。
繁殖牛1頭ごとに「血統書」に登録された実際の登録牛の頭数、飼育者数のみがこの数字だ
という。つまり登録している WAGYU 生産者は、公式に登録している数の頭数しか保持し
ていないということになる。登録外で WAGYU を飼育しても、WAGYU とは認められない。
18
また、表 16 にはドイツにおける WAGYU 生産の推移を示した。2008 年に2件で5頭を
飼養するに過ぎなかったが、この6年間に事業所数で6倍、頭数で 25 倍に増加している。
分母は小さいながら、ポテンシャルを感じさせる伸び率といえる。
(表 14)2014 年の参加事業所数と種別
(資料
BDF のホームページより)
19
(図4)WAGYU 種の詳細と飼育目標
<種の詳細>
色
:単色の毛皮であり、黒、赤あるいは赤茶まで。黒の個体の場合のひづめは濃い茶色から黒
にいたる。赤い個体の場合は明るい色。
体のつくり:中程度の大きさの牛であり、頭は軽く、前脚部は奥行きを持ち力強く、調和のとれたつな
がりをしており、ほぼ水平な骨盤の位置で軽く上がり、また軽く下っているものが良い。繊
細で乾いた四肢をしており、ひづめは比較的大きく固い。良く長く伸びた太ももと幅広で筋
肉のついた肩をしており調和のとれた筋肉の付き方である。わずかに、あるいは適度に曲が
った角で角の根元は堂々としている。遺伝上、角がないものもある。
製品の特徴:落ち着いており、穏便かつ良い牧草地適正あり。飼育の成熟は早く、メスで 15 ヵ月、オス
は 12 ヵ月から。非常に繁殖力旺盛であり 365 日ごとに子を産むように、困難ないお産で定期
的に産む。母性も良く、自らの子牛の飼育に十分な乳を産出する。乳房は、形状・垂れ具合・
毛の向きにおいて非常に良い。遅くと畜されるタイプでは 30 ヵ月になるものがあるが、食餌
システムしだいである。重要で際立つ種の特徴としては、筋肉内脂肪の割合が非常に高いた
めに筋肉の大理石状模様の度合いが極端に高くなっている、最上のと畜身体を生み出すこと
である。
オスで1日 1000g、メスで1日 850g の体重増加が1年目には目指すところであり、一般的
な個体は雌牛 340kg、雄牛は 400kg を1年経過の時点で目指すところ。
成長した雄牛と雌牛の主要なデータ:
雄牛
雌牛
仙骨の高さ cm
約 145
約 132
体重 kg
約 1,000
約 650
<飼育目標>
表記の種の詳細を維持のこと。体に斑点のある個体で、その斑点が周囲の色とは異なるためはっきりと
目に付くものは望ましくなく、最高でも型評点で最高4しか与えないこと。非常によい乳房を維持のこと、
雌牛で乳房がひどく垂れたものや吸えない乳首のものは型において最高でも4で評価のこと。
目指すべきは、毎年の子牛生産であり、その間隔が短く、子牛が生きて生まれること。乳の質および関連
する飼育の質の改善は 200 日重量で計測することが望ましい。お産が困難にならないためには幅広の骨盤
が望ましい。太ももが過度に形成されることは種の特徴とは違い、望ましくない。
非公開の血統証明書が作成される。
※2012 年 11 月 27 日の委員会で決定したもの(BDF のホームページ http://www.bdf-web.de/より)
20
(表 15)BDF が「飼育目標」を定めた 22 品種
決定年月日
種
2012 年 11 月 27 日
オーブラック、ブロンド・ダキュテーヌ、デクスター、フレックフィー・シ
メンタール、ギャロウェイ、グランリント、ヘアフォード、ハイランド・キ
ャッスル、リムーザン、メーヌ・アンジュ、ピエモンテ、ピンツガウアー、
ローテス・へーヘンフィー、セーラーズ、ショートホーン、ウッカ―メルカ
ー、WAGYU、ウェルシュ・ブラック、ツヴェルグゼーブ
2013 年 06 月 18 日
資料
アンガス、シャロレー、ゲルプフィー
BDF ホームページ
(表 16)ドイツにおける WAGYU 生産の推移
年
資料
事業者数
繁殖用に供する頭数
血統証明書
血統証明書
有り
無し
計
雄牛
雌牛
計
2008
2
0
2
0
5
5
2009
6
0
6
2
9
11
2010
11
0
11
6
23
29
2011
17
0
17
9
27
36
2012
25
1
26
25
38
63
2013
28
2
30
22
56
78
2014
37
2
39
30
94
124
BDF ホームページ
※「和牛」は 2008 年から統計に載る。2007 年以前は他の種と合わせて「その他」に分類されている。
2.6 ドイツ WAGYU 協会の概要
2.6.1.概要
・名
称:Wagyu Verband Deutschland e.V.
・設
立:2008 年
・構 成 員:80
・活
動:年次総会、見本市への出展、競りの開催、海外 WAGYU 生産現場の視察などを
行う。
・代 表 者:Klaus Möbius 氏。
・本
部:ザクセン州ケムニッツ。
・所 在 地:Hofer Str. 5c, 09224 Mittelbach bei Chemnitz, Germany
・E-mail :[email protected]
・U R L:www.wagyuverband.com
21
2.6.2.構成員
ドイツ WAGYU 協会は 2008 年設立され、現在は全国
80 の生産者が所属する。毎年1回、2日間(金曜
日、土曜日)にわたる総会が開催され、ひとつの農家
に集まり、飼育方法や飼料や商品化の方法などについ
て意見交換、その農場で飼育されている WAGYU の試食
会などが行われる。
2014 年はドイツ北西部ミュンスター近郊で WAGYU
を飼養しているホルトマン農場(第4章で報告)で開
催され、2015 年はバイエルン州のミュンヘン近郊の
Bad Tülz で開催された。金曜日夜はレセプションで
新メンバーの紹介など、土曜日には大きな大会があ
る。WAGYU 協会に所属していなくても数ユーロを払っ
て参加できるという。
WAGYU 協会所属生産者分布図
毎回、いろいろな講演者が招かれ、2014 年のホルト
(2015 年現在)
マン農場では Ralph Valdez 氏を招き、WAGYU の飼育方
※ドイツ WAGYU 協会 HP より
法、血統の種類やそれぞれの特徴などについての講演
が行われた。さらに化学ラボの遺伝子の専門家が牛の遺伝性障害やその検査方法について
話し、意見交換をした。「日曜日の朝食までいた人もいる。去年うちではミュンスターの日
本料理店が寿司などの日本式朝食を用意した」(ホルトマンさん)という。
しかし、ドイツ WAGYU 協会に加入している 80 の事業者のうち、100 頭規模の繁殖・肥育
一貫経営は5事業者(農場)のみで、他の 75 の事業者は農地や畜舎を所有していなかった
り、正しい飼養方法を知らない者も多いという。また、ミュンヘン、カッセル、キールで
飼育している農家は、おそらくアメリカやオーストラリアから生体で仕入れて飼育してい
るとのことだ(詳細は、第4章参照)。
(写真)2015 年 6 月 3~5 日バイエルン州バート・テルツで開催されたドイツ WAGYU 総会
22
2.7 食肉トレンドおよび高級牛肉需要の可能性―DFV 広報担当 Gero Jentzsch 氏に聞く
フランクフルトに本部を置くドイツ食肉同業者組合連合会(DFV)の広報担当・Gero
Jentzsch 氏にブームとしての食肉消費の傾向や高品質牛肉の取り扱いの現状、さらに日本
産和牛需要の可能性について聞いた。
2.7.1.ブームとしての食肉消費の傾向
現在ドイツでは、食ブームが起きている。ケルンで開催された世界最大規模の食品展示・
商談会「ANUGA」
(アヌーガ)でもみられた傾向だが、一方で「ヴェジタリアン」
(菜食主
義者)や「ビーガン」
(絶対菜食主義者)、他方で「プレミアム商品」というのが重要なキー
ワードになっている。
ドイツ人は、10 年前、15 年前と比べて、非常に食への関心を高めており、生活において
「食」がますます重要になっている。5~10 年前からこのトレンドが起こったと思うが、
今後もどんどん強まっていくと思われる。人々は、商品の質についてより関心を高めている。
10 年前は、安ければそれで良かったが、現在は肉の生産地やアニマルウェルフェアを気
にするという傾向が徐々に高まっている。BIO(オーガニック)であるかどうか、あるいは
品種は何かということを気にする人も多くなり、その結果、これらの肉が付加価値商品とな
っている。
このことから、日本産和牛のようなプレミアム商品がドイツで人気が高まっていくだろう
と考える。今は 100%というほどではないが、傾向として需要はまだまだ増えていくはずで
ある。
例えばドイツでは豚肉の消費の方が牛肉より大きく、値引き対象になりやすいが、その豚
肉でも特別な品種など高価なものも売り出されている。しかし、こういった高級路線展開は
まずは牛肉の方で始まった。牛肉の方が高く売れるし、現在、ドライエージング(熟成)の
ようなスタイルがドイツでも大人気になっている。
ANUGA でも高級路線の豚肉や加工品を多く見かけたが、スペインのイベリコやハンガ
リーのマンガリッツァ、ベントハイム黒豚など特別な品種はすでに街中でも見かけるように
なった。しかし、まだ一般的に広まっているというわけではない。スーパーでもすでにドラ
イエージングビーフを見るが、シュヴェービッシュハレ豚やイベリコはまだない。今後、豚
肉の高級志向は広がっていくと思う。
2.7.2.ドイツにおける日本産和牛への意識
日本畜産物輸出促進協議会が 2015 年1月にフランクフルトで行った和牛セミナーについ
てドイツ食肉専門新聞「AFZ」(Allgemeine Fleischer-Zeitung)」に「ドイツにおける和牛
への意識」の記事が掲載されたが、実は AFZ も DFV の関係組織で隣のビルに入っている
「ドイツ専門出版社(Deutscher Fachverlag)」に属している。新聞は DFV にも届いてお
り、私自身は参加を予定していたのに所用で行くことができなかったのだが、このセミナー
は DFV にとっても大変興味深い内容だったと思う。
ドイツにおける日本産和牛の需要は、確実にある。知名度はあるし、先に述べたような近
23
年のプレミアム志向に合致している。和牛は確実にプレミアム商品で、非常に高価である。
例えば、DFV の所在地であるフランクフルトでは和牛を置いている可能性がある店は3つ
挙げられる。
「エーベルト(Ebert)」、
「マイヤー(Meyer)」、
「ブンプ(Bump)」という食肉
専門店だ。これらの店では和牛を置いている。ただし店頭ではなく、特別なイベント時にの
み扱っているはずだ。
「エーベルト」も「マイヤー」も高級食材やデリカテッセン(そう菜)
に力を入れているし、
「ブンプ」はザクセンハウゼン地区で高い価格で地域産の商品を扱っ
ている店だ。
また、フランクフルトで和牛を置いているレストランをすぐに2、3は挙げることもでき
る。例えば「鮨元」は大変良い日本食レストランだ。季節によって和牛を用意していないと
いうことはなく、いつ行っても置いているはずだ。ほかにも「グスト(Gusto)
」など多くの
レストランではメニューの目玉商品として和牛を扱っている。フランクフルトは大きな都市
で富裕層もいるが、その中でも「鮨元」はフランクフルト一といえる店だろう。
2.7.3.日本産和牛の売り方として
一般的に日本産和牛の戦略として考えられるのは一部の特別なマーケットを狙うことで
ある。和牛は確実にプレミアム商品で高額商品となるので、例えばベルリンの「カー・デー・
ヴェー(KaDeWe)」やミュンヘンの「ダルマイヤー(Dalmayr)」のようなデリカテッセン
市場、キャビアやトリフなどのぜいたく品を買えるようなファインコスト市場などで売れる
だろう。食肉専門店の中でもデリカテッセン部門に力を入れている店、例えばハンブルクの
「バイサー(Beisser)
」やフランクフルトの「マイヤー」といった店の客層には需要があり
そうだ。
ただし、おそらく常に在庫を置くというわけにはいかない。というのは和牛を置くという
のは、主に特別な機会のみだと思うからだ。和牛の価格は、一般的なドイツの牛肉の値段よ
りも格段に高くなる。日本国内でも贅沢品だ思うが、ドイツでもそういう扱いになるであろ
う。キャビアやイベリコ豚といった高級品と同様に特別扱いとなる。そこで、元々そういっ
た商品を扱っている店が対象になり、当然スーパーでは扱わないだろう。食肉専門店でも、
特に街中にあり、そういったものを購入できる層、つまりは富裕層が住むような地域にある
店では扱うだろう。これは理性的で、結果的に価格の暴落を防げることになるだろう。神戸
牛はドイツではあまり出回らないので、高級食品としての地位は保たれる。
しかし、実際には、店頭よりも、パーティーサービスでの扱いが多くなるのではないかと
思う。つまり結婚式や企業のイベントなどだが、そういった際のケータリングには、ドイツ
人は費用を惜しまない。神戸牛は店頭よりもパーティー業で売れるだろう。なぜならドイツ
人はそういう機会に注目しやすく、特に高価なものを欲している場合は、費用を惜しまない
からだ。ゲストへの印象を良くしたいので、見栄えのためにお金を出すのだ。
24
2.7.4.終わりに
日本産和牛のパンフレットはドイツ語で日本食レシピの紹介まであるのは素晴らしく、食
欲をそそる内容だ。こうした和牛のパンフレットがあることを知り合いの食肉店関係者に紹
介したい。ドイツの食肉店はケータリングの際に個人で注文したがるので、和牛関連企業の
連絡先にきっと興味を持つはずだ。
スーパーと違って、専門店なら是非の決定が早く、個人取引ができる。喜んで紹介したい。
(写真)DFV 広報担当 Gero Jentzs 氏
25
第3章 NRW 州及びフランクフルトの小売店・レストラン等調査
【1】 Estilo Argentino GmbH & Co. KG
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
備考
精肉店・食品・そう菜・卸売
Marktstrasse 8, 50968 Köln
+49 (0)221 36790878/+49 (0)221 367 908 79
[email protected]
http://www.estiloargentino.com/
月-金 9:00~20:00 土 9:00~16:00
中心地から 10 分程離れた卸売市場に隣接。
業務用と個人客。
アルゼンチンとウルグアイの契約農家産の完全放牧牛が売り。
20 年来の業務。ケルン市内には他に卸売専門の店が 1 店ある。
牛肉は 40~50 のコンテナで一気に輸入される。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
プレミアム牛(放牧) アルゼンチン
ヒルトンカット
40/kg~
ブラックアンガス種
ウルグアイ
【WAGYU の取り扱い状況・展望】
産地
部位
価格(ユーロ) 頻度
オーストラリア
ボトムサーロイン、いちぼ、 例)バーガー
不定期(仕入による)
はらみ、ともバラ
18.31/600g
備考
高級部位(ヒレやヒルトンカット)は扱わない。購入可能な部位に限り仕入れている。
【調査メモ】
日本の牛と承知。オーストラリア産 WAGYU の取り扱い経験あり。顧客の反応は良い。日本産和牛に
興味あり。日本産のポイントは、ブランド、品質、供給、栄養管理、安全、文化、高級感全て。日本産
を扱う際に重視したいのは、供給、保管状況、認知度。
(写真左)オリジナルバーガーの中に、アイルランド産アンガス牛・熟成牛、ウルグアイ産放牧牛、US
ビーフなどに並んで、オーストラリア産 WAGYU がある。値段は1パック分。
(写真右)卸売市場に隣り合う本店では、飲料や調味料の他、炭などの BBQ 用品を中心に、若年層向
けに BBQ のトータルコーディネートを提供する。
26
【2】 Werner’s Metzgerei GmbH & Co.KG
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
備考
精肉店
Severinstraße 13, 50678 Köln
+49 (0)221 31 13 75 /+49 (0)2241 5 30 09(Siegburg 本店のみ)
[email protected]
http://www.wernersmetzgerei.de
月-金 8:00~19:00 土 8:00~16:00
旧市街に続く人通りの多いショッピング街にある。
一般向け。
ケルン近郊の Siegburg に本店があり、ケルン市内に 4 店舗、Bonn と Brühl と
Neunkirchen-Seelscheid に 1 店舗、計 8 店舗を経営する。
特に、Siegburg 近郊の自然公園ジーベンゲビルゲ産、また NRW 州南西部の国
立公園アイフェル産の牛や豚を扱う。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
熟成放牧牛
アイフェル(ドイツ) サーロイン
3.89/100g
熟成未経産牛
アイフェル(ドイツ) チョップ
3.29/100g
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
産地
部位
価格
頻度
―
―
―
不定期(注文による)
備考
注文に応じて取り寄せる。
【調査メモ】
店内は狭いながら落ち着いた様子。ショッピング街に面しており、入れ替わり立ち替わり地元の常連
客が注文に来る。
チーフに社長への取り次ぎをお願いしたがかなわず。
27
【3】 Metzgerei Stürrmer – Catering GmbH
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
備考
精肉店・ケータリング
Severinstraße 103, 50678 Köln
+49 (0)221-313143/+49 (0)221-318916
[email protected]
http://www.metzgereistuermer.de
月-金 7:30~18:30 土 7:30~14:30
旧市街に近く人通りの多いショッピング街の中の角地。
一般向け。
広い店舗にビストロを構え、惣菜に力を入れている。
ケルン市内に 2 店舗、郊外に工場を持つ。
BIO 製品やシュヴェービッシュハル種の豚を中心に扱う。
【高級牛肉の取り扱い状況】
特別な牛肉の取り扱いはない。
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
特に日本産和牛に興味はない。
【調査メモ】
周囲はディスカウントショップや格安ドラッグストアが並ぶエリアで、庶民的な場所。
【4】 Restaurant am Park (Sheraton Essen Hotel)
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
レストラン
Huyssenallee 55, 45128 Essen
+49 (0)201 1007 165/+49 (0)201 1007777
[email protected]
http://www.sheratonessen.com/de
月-金 6:30~10:30/12:00~15:00/18:00~22:30
土日 6:30~11:00/12:00~15:00/18:00~22.30 (日はなし)
エッセン市立オペラハウスに隣接するシェラトンホテル内にあり、店内より市
立公園が一望できる。
一般。
28
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
―
アルゼンチン
ヒレ、サーロイン
30€/200g
※頻度:20kg/月
※参考(メニューより)
・仔牛のカルパッチョ(13.00€)
・牛肉のラビオリ(12.00€)
・コールド・ローストビーフの野菜添え(17.00€)
・牛ヒレステーキ(31.00€)
【日本産和牛および WAGYU の取り扱い状況・展望】
価格が高すぎるのでレストランとしては取り扱う予定はないが、シェフ個人は非常に興味をもってい
る。過去にオーストリアの星付ホテルで扱ったことがある。
【調査メモ】
日本の牛と承知。シェフ自身は今までに日本産和牛の扱いを経験。客受けは大変良かった。和牛を扱
う理由は最高級ランクのものを提供するため。日本産和牛に興味あり。日本産のポイントは高級感。取
り扱いに際して重視したいのは安定した品質(価格は問題ではない)
。
「和牛は肉の中のフェラーリだ。本来ならば価格は問題ではない。質が一番重要だが、当ホテルで扱
うには特に和牛は価格が高すぎる。過去に自分でオーストリアのホテルで和牛を扱ったことはある。普
通のステーキではなく、少量での提供というやり方もこのホテルではそぐわない(他のレストランでの
やり方は知らないが)
。エッセンよりもデュッセル、ドルトムントの方が和牛を扱うレストランが多いだ
ろう。
」
【5】 Bisteca Grillroom
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
備考
レストラン
Rüttenscheider Str. 2, 45128 Essen
+49 (0) 201-74716931/+49 (0) 201-615 99 48
[email protected]
http://bistecca-grillroom.de
月-金 12:00~15:00/18:00~23:00 土 18:00~23:00
周囲は企業や公園などが並ぶ大通りに面している。
オペラハウスからも近く、映画館と公園に挟まれている。
一般。
ニューヨークやシカゴをイメージした前衛的なスタイルで、質の高い牛肉を提
供する。熟成用の貯蔵庫を備えており、メニューには、産地や飼料の説明の他
それぞれの種・部位の特徴なども書かれる。グルメファン向けの料理教室やグ
ルメフェアなどを頻繁に開催。
29
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
オマハ牛、
米国
ブラックアンガス
オーストラリア
部位
価格(ユーロ)
ヒレ、リブロース、
40~300/kg
ランプ、T ボーン、ト ―
マホーク
※頻度は(日本産和牛も含めて)1200kg/月
【参考(メニューより)
】
US ビーフ:リブアイステーキ 300g(34.00€)、ヒレステーキ 300g(47.00€)
【WAGYU の取り扱い状況・展望】
産地
部位
価格(ユーロ) 頻度
オーストラリア
リブロース
245/kg
―
ヒレ
395/kg
―
備考
2014 年の日本産和牛の EU 輸入解禁を受け、2015 年 10 月現在では注文に応じてのみ日本産和牛(神
戸、松坂)も入れており、しゃぶしゃぶなどで提供する。
※頻度は(他の牛肉も含めて)1200kg/月
【参考(メニューより)
】
AUS ビーフ:WAGYU リブアイステーキ 300g(69.00€)、WAGYU ヒレステーキ 300g(115€)
特製 WAGYU バーガー200g(25.90€)
【調査メモ】
「ドイツ人に人気なのは、しゃぶしゃぶ、ランプステーキ、ヒレ、トマホークなど。ヒレのみがいい、
というのは最近はなくなってきている。
」
店の裏側にあるテラス横の芝生から大通りを見下ろす等身大の牛のフィギュアが看板。
NY スタイルを意識した内装で、店内に客席から見えるように、大型の冷蔵庫を設置。
30
【6】 Der Filetshop Essen
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
精肉店・フードスタンド・グルメ食料品
Rüttenscheider Straße 153, 45131 Essen
+49 (0) 201 61 53 63 39/+49 (0) 201 61 53 63 40
[email protected]
http://www.der-filetshop.de
月-金 9:00~20:00 土 9:00~18:00
中心街の大通り 2 本が交差する角地、エッセン中央駅から地下鉄で 3 つ目の
Martinstrasse 駅の前にある。周囲には格安スーパーの他にホテルやブティッ
ク、ステーキレストランがある。
顧客層
一般向け。
備考
2011 年にドルトムントで設立された本店のエッセン支店として 2015 年 3 月に
開店。
「少量でも高品質のものを」をモットーに世界各地の高級肉を販売。ド
イツでは最高級部位として人気のヒレを中心に、ブランド牛等の高級部位のみ
を扱う。高額の商品でも量を減らすことにより求めやすい価格で提供する。月
に 5~7 回のステーキ関連のイベントを開催し、最高の肉に最適なレシピを
人々に提案する他、高額商品の持つ背景を丁寧に説明する「高級肉ブティック」
としての自負を持つ。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
最低価格(ユーロ)
熟成アイリッシュ
アイルランド
ヒレ、サーロイン、ロ ヒレ
8.9/100g
ース、T-Bone、
サーロイン 59.90/kg
アントルコート
アントル 49.90/kg
オマハ牛
米国
ヒレ、ランプ、ポータ ヒレ
9.90/100g
(プライム・チョイス)
ーハウス、フランク、 ランプ
49.90/kg
T-Bone
アントル 55.90/kg
ヘリテージアンガス
カナダ
ヒレ、トマホーク、カ ヒレ
8.90/100g
ウボーイカット、リブ
ロース
ブラックアンガス
オーストラリア
ヒレ、サーロイン、ア ヒレ
6.90/100g
ントレコート
サーロイン 44.90/kg
アントル 49.90/kg
未経産牛(Bio)
ドイツ
ヒレ
ヒレ
49.90/kg
―(Bio)
ドイツ
サーロイン、
サーロイン 49.90/kg
アントルコート
アントル 45.90/kg
―
アルゼンチン
ヒレ、サーロイン、
ヒレ
44.90/kg
アントルコート
サーロイン 34.90/kg
アントル 39.90/kg
熟成牛
ドイツ、スペイン、ア リブロース
リブロース 49.90/kg
イルランド、米国
キアーナ牛
イタリア
肩ロース
調理済で 79.90/kg
(Bistecca Fiorentina)
T-Bone
熟成ガリシアビーフ
スペイン
調理済で 89.90/kg
※2015 年夏/秋版の販売パンフレット参照。
31
【日本産和牛および WAGYU の取り扱い状況・展望】
産地
部位
最低価格(ユーロ)
頻度
オーストラリア
ヒレ、バーガー用
ヒレ 29.90/100g
―
(MS9+)
バーガー7.50/150g
日本
ヒレ
ヒレ 49.90/100g
―
備考
2014 年の EU 向け輸出解禁により、世界全体で 300 頭のうちでもほとんどアジア地区から出ない本物
の神戸牛を仕入れることに成功した。2015 年の開店より、看板に大きく「日本産和牛」と掲げて、本
物だとアピールする。食材の特性を生かす和風の食べ方(しゃぶしゃぶ、焼肉、すき焼き、鉄板焼)
を合わせて紹介。
【調査メモ】
Bisteca Grillroom から聞いて立ち寄った。料理教室やグルメフェアなどを共同で企画中ということであ
る。店内はブティックという名に合う赤と黒が基調のスタイリッシュな空間。オリジナルのフライパン
やナイフの他に、BBQ 用品や付け合せソースなどを揃える。
店が掲げる品質保証のロゴマークには、
2015 年 3 月からは日本の和牛統一ロゴマークも含まれている。
輸入卸業者による少量パックのおかげで価格を抑えての販売が実現。左は豪州産 WAGYU。
32
【7】 Reinolsmann
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
備考
精肉店・そう菜・ケータリング
Rüttenscheider Straße 220, 45131 Essen
+49 (0)201 42 13 88/+49 (0)201 8 41 91 67
[email protected]
http://www.reinolsmann.de
月-金 7:00~18:00 土 7:30~13:00
ショッピング街の終盤に位置する。両隣はカフェ。住宅街のそば。
一般向け
自然素材のみで作ったソーセージなど加工品に力を入れる。取り扱う牛・豚肉
は全てエッセン近郊の 8 つの契約農家で飼育されるドイツ産のみ。日替わりラ
ンチの他、ケータリングに力を入れている。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
―
ドイツ
―
―
【参考(ケータリングメニューより)
】
・牛ヒレステーキ 1 人前(7.80€)
・仔牛のたたき 1 人前(11.50€)
【8】 Metzger Gronau
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
精肉店・食品・そう菜
Rüttenscheider Straße92, 45130 Essen
+49 (0)201 76 10 15/+49 (0)201 76 17 20
[email protected]
http://www.metzger-gronau.de
月-金 8:00~18:00 土 8:00~13:00
閑静な住宅街と木立の並ぶショッピング街に位置しており、人通りの量も多く
雰囲気も大変好ましい。
顧客層
一般向け。
備考
市内に 2 店舗と工場を持つ、そう菜に力を入れる町のお肉屋さん。牛豚鶏は全
てドイツ産のみを扱う。
「新鮮で自然な」をモットーに、動物と人間にとって
健康な製品を提供する。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格
未経産牛
ドイツ(アイフェル) ―
―
【参考(パンフレットより)
】
エッセン近郊の契約農家 1 軒で飼育された牛のみを扱う。乳牛 30 頭と仔牛他は藁と自然牧草の他、
サイレージやホップ、モルト、菜種の滓などの混合飼料を与えられる。
33
【日本産和牛および WAGYU の取り扱い状況・展望】
一度扱ったことがあるが、価格の面で社長は気に入らず、現在は一般向けに販売を辞めた。
説明を担当した店員が KOBE の文字入りの冷凍パックを見せてくれた。
【調査メモ】
デリ・精肉部門に合わせて常時 8-10 人のスタッフが店頭に出ている。
日替わりのそう菜目当てに
昼食時には長い列ができる。
店内での飲食も可。
パンフレットでは、牛の仕入先である契約農家の
所在地と飼育状況を簡単に説明している。豚、鶏
も同様。
【9】 Der Filetshop
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
備考
精肉店・フードスタンド・グルメ食料品
Saarlandstraße 102, 44139 Dortmund
+49 (0) 231 95096450/+49 (0) 231 95096451
[email protected] / [email protected]
http://www.der-filetshop.de
月-土 9:00~20:00
若者に流行のブティックや有名飲食店などが多く集まる人気エリアである
Saarland 通りにある。
一般向け
2011 年にオープンしたショーケースのみが置かれた小売専門店。エッセン支
店と同じく「肉のブティック」として高級食材の新しい食べ方を提案する。
34
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
熟成アイリッシュ
アイルランド
オマハ牛
(プライム・チョイス)
米国
ヘリテージアンガス
カナダ
ブラックアンガス
オーストラリア
未経産牛(Bio)
―(Bio)
ドイツ
ドイツ
―
アルゼンチン
部位
ヒレ、サーロイン、ロ
ース、T-Bone、
アントルコート
ヒレ、ランプ、ポータ
ーハウス、フランク、
T-Bone
ヒレ、トマホーク、カ
ウボーイカット、リブ
ロース
ヒレ、サーロイン、ア
ントレコート
ヒレ
サーロイン、
アントルコート
ヒレ、サーロイン、
アントルコート
熟成牛
最低価格(ユーロ)
ヒレ
8.9/100g
サーロイン 59.90/kg
アントル 49.90/kg
ヒレ
9.90/100g
ランプ
49.90/kg
アントル 55.90/kg
ヒレ
8.90/100g
ヒレ
6.90/100g
サーロイン 44.90/kg
アントル 49.90/kg
ヒレ
49.90/kg
サーロイン 49.90/kg
アントル 45.90/kg
ヒレ
44.90/kg
サーロイン 34.90/kg
アントル 39.90/kg
リブロース 49.90/kg
ドイツ、スペイン、ア リブロース
イルランド、米国
キアーナ牛
イタリア
肩ロース
調理済で 79.90/kg
(Bistecca Fiorentina)
T-Bone
熟成ガリシアビーフ
スペイン
調理済で 89.90/kg
※2015 年夏/秋版の販売パンフレットを参照した。
【日本産和牛および WAGYU の取り扱い状況・展望】
産地
部位
最低価格(ユーロ)
頻度
オーストラリア
ヒレ、バーガー用
ヒレ 29.90/100g
―
(MS9+)
バーガー7.50/150g
日本
ヒレ
ヒレ 49.90/100g
―
備考
2014 年の EU 向け輸出解禁により、2015 年初頭より神戸牛を販売。仕入先で小さくカットされたステ
ーキ肉をより手ごろな価格で販売した。食材の特性を生かす和風の食べ方(しゃぶしゃぶ、焼肉、す
き焼き、鉄板焼)を合わせて紹介。
【調査メモ】
エッセン店と同様、格安スーパーやブティックなどの並びにあるショッピング街に面しているが、ドル
トムント本店はよりこじんまりとした店構えで、一見高級食材店に見えない。近づけば、和牛ロゴ入り
の説明ポスターに気づく。やや狭い店内には、パック入り商品の陳列ケースの他エッセン店と同じく
AUSKOBE の文字が目を惹くバーガー用冷蔵庫がある。ここではオーストラリア産 WAGYU(7.5€)と
US プレミア牛(4.5€)を販売する。
「AUSKOBE」という商標登録は、オーストラリア産 KOBE の他に、
ドイツ語では「KOBE 産(aus)
」を想起させる。
35
【10】 MEYER FEINKOST GMBH Sachsenhausen
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
レストラン・精肉店・食品・そう菜・ケータリング
Schweizer Strasse 42, 60594 Frankfurt am Main
+49 (0)69 61 50 10/+49 (0)69 6 03 20 19
[email protected]
http://www.meyer-frankfurt.de/de/delicatessen/feinkost-sachsenhausen/
月-金 8:00~19:00 土 8:00~16:00
中世風木組みの家や老舗レストラン、美術館などが多く集まるフランクフル
ト市街でも有数の人気エリア Sachsenhausen にある。周囲には高級食材を
扱うブティックや生鮮食品店、カフェなどが並ぶ。
顧客層
一般向け。
備考
市内に小売店の他レストランやカフェを 2 店舗ずつの他に、ケータリングや
料理イベントなど計 12 箇所で展開する Meyer Feinkost 社の支店。新鮮な生
肉、ソーセージの他に、100 種類を越すサラダ、練り物、ヌードル、ワイン、
調味料類まで自家製で揃える店内は、狭いながら計 1500 種の商品を扱う。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格
―
ドイツ
ヒレ
―
米国
サーロイン
アルゼンチン
アントレコート
フランス
※頻度:毎日
【日本産和牛および WAGYU の取り扱い状況・展望】
WAGYU の取り扱いはしていないが、日本産和牛に興味はある。
【調査メモ】
日本の牛と承知。和牛の取り扱いは未経験。日本産和牛に興味あり。日本産のポイントは、ブランド、
品質、供給、栄養管理、安全。取り扱いの際に重視したいのは供給、価格などになるという。
インタビューには、Sachsenhausen 店のマネージャーが応じてくれた。
上:路上に近い位置にある店のロゴを挟んだ
左側がワインや調味料用、右側がそう菜用の
入り口に分かれているが、中ではつながって
いる。軽食用テーブルは店外に置かれる。
下:精肉部門はパン売り場を抜けた細長い
店の一番奥にある(パンフレットより)
。
36
【11】 Metzgerei und Gourmet Service BUMB
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
精肉店・食品・そう菜
Textorstraße 9, 60594 Frankfurt am Main
+49 (0) 69 - 61 43 13 / 069 - 60 31 794/+49 (0) 69 - 62 03 67
[email protected]
http://www.metzgereibumb.de / http://www.bumbjunior.de
月-金 7:30~18:30 土 8:00~14:00
ブティックや飲食店の多いフランクフルト市街で有数の人気エリアである
Sachsenhausen にある。
顧客層
一般向け。
備考
元々はレストラン経営から派生した惣菜を充実させたフランクフルトで初め
ての精肉店として、精肉・惣菜部門ともに質の良い商品が評判の老舗。ケータ
リング部門として 15 年前に独立した Bump Junior はビジネス街高層ビルに専
用のイベント会場、ジャパンタワー地下にカフェを持つが、本店はアットホー
ムな町のお肉屋さん。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
シメンタール牛
―
ヒレ、ランプ
ヒレ
68.00/kg
ランプ
57.50/kg
58.50/kg
アンガス牛
アメリカ
ヒレ
仔牛
―
ヒレ、ロース
ヒレ
5.40/100g
ロース 4.55/100g
※普通の牛肉は 22~28€/kg で販売。
【WAGYU の取り扱い状況・展望】
WAGYU の取り扱いはしていない。
【調査メモ】
店長は不在で店員に話を聞いた。
37
【12】 Iimori Patisserie / Restaurant
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
日本料理店 · カフェ · 料理学校
Braubachstraße 24, 60311 Frankfurt an Main
+49 (0)69 569 999 66/+49 (0)69 977 682 45
[email protected]
http://www.iimori.de
月-金 9:00~21:00 土日 10:00~21:00
フランクフルト旧市街の観光名所である Dom/Römer から通りを一本隔てた恵
まれた位置。同じ並びには多数のギャラリーがあり、地元民や観光客で賑わう
ショッピング街まで数分。
顧客層
一般。
備考
1 階がカフェとケーキ屋、2 階がレストランになっており、パリのサロン風の
内装で、和食、ケータリング、イベント会場を提供する。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
―
ドイツ、アイルランド
脂身の多い箇所
1 人前 50/100-200g
※枝豆、刺身、寿司などを合わせた「しゃぶしゃぶコース」価格。肉の量は目分量。
【和牛の取り扱い状況・展望】
(2015 年 10 月)現在 WAGYU の取り扱いはしていないが、興味を持っている客も多いし、店側とし
ても単価を高く設定できるのですぐにでも取り扱いたい。メトロ社などにはオーストラリア産・アイ
ルランド産が揃っているので可能。できれば今と同じコース内容で、50€から 65€に上げたい。元々現
地にある低価格の「しゃぶしゃぶモドキ」に対抗するには高すぎる値段設定だったが、WAGYU であ
れば客は納得するだろう。
日本産和牛は、かっこいいイメージがあるのでぜひ使ってみたい。デリバリーの問題で、注文に応じ
て仕入れられるような形態があればいいと思う(少量注文では難しい)
。
ドイツ産 WAGYU も機会があれば注文してみたいと思う。
【調査メモ】
2015 年 1 月のフランクフルトでの日本産和牛セミナーの会場になったレストラン社長の飯盛氏にイ
ンタビューに応じてもらった。
「しゃぶしゃぶ 50€が高いと言われるので、和牛にして 65€で提供したい」
日本でもどこの肉かわからないものが白湯や赤いスープで中国風なものを「しゃぶしゃぶ」として食
べ放題で提供されているが、フランクフルトでも同じ状況である。それしか知らないドイツ人にきちん
としたものをという思いで提供しているが、中国人の食べ放題(19€)などと比べるとどうしても値段
が張ってしまう。そこで、和牛であればそこそこの値段(コースで 65€)でもドイツ人には安く感じら
れるので、使おうと思いついた。一度日本産和牛はハンバーグで出したが客には有難みがわからない。
普通の肉との違いが出ないのだ。やはりしゃぶしゃぶが一番適している。特に料理の手間がかからない
ので、その分値段を上げることもできる。
仕入れとドイツ国内の霜降りの需要について
WAGYU は METRO に入っているので仕入れはすぐでも問題ない。アイルランド産かオーストラリア
産。が日本産和牛はかっこいいから使いたい。注文に応じてすぐ出せるところがあればいいのだが。し
ゃぶしゃぶなのでスライサーを使うため、冷凍でも構わない。ドイツ産 WAGYU にも興味がある。
フランスの METRO で牛肉を探していたら、ドイツ原産の霜降りのいい肉が出ている。ドイツには出
ないのに。
(ドイツ人は赤みが好きだから霜降りは輸出してしまうのではないか。ドイツ人も赤身のヒレ
が人気で、サーロインよりもリブロースが好きだそうだが)脂に抵抗があるのか。
近年の肉ブームもまだアメリカの追随であり、WAGYU までは到達していない
去年くらいからアメリカンスタイルの BBQ が人気で、グルメ雑誌やテレビ・男性向け雑誌で特集が組
まれている。今年の夏にはテレビでグリルマスター選手権が開催された。欧州一のベジタリアン国ドイ
ツで、様々な店にグリルグッズが置いてある。以前はそんなことは考えられなかった。アメリカ式の脂
38
の多い肉を求め始めている。また熟成肉もブーム。肉にはとにかく新鮮さを求めるドイツ人は4,5年
前までは知らなかったのだが、
アメリカで流行っているとして人気上昇中。
ステーキハウスも多くなり、
高級感のある熟成肉が人気。米国のように WAGYU までにはまだ到達していない。
」
※2015 年 1 月撮影
【13】 Heninger
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
顧客層
備考
精肉店・そう菜・ケータリング
Neue Kräme 31, 60311 Frankfurt am Main
+49 (0)69 28 45 77/+49 (0)69 91 39 71 63
[email protected]
http://www.metzgerei-heininger.de
月-金 6:30~18:30 土 8:30~18:00
地元民や観光客で賑わうフランクフルト中心旧市街の歩行者天国にある。
個人客
創業 100 年を超える家族経営の老舗で現在は 4 代目。そう菜に力を入れる気取
らない店内には 40 席の広いインビスがあり、気軽に立ち寄ることができる。
特製フランクフルターソーセージの他、熟成牛や BBQ 用ソーセージなどを扱
う。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
4.20/100g
シメンタール熟成
―
サーロイン
5.40/100g
シメンタール熟成
―
ロース
※クリスマスやイースターなどの特別な機会でも売り場にあるものが売れるので、特別により高い肉を
仕入れることはない。
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
価格が高すぎるので扱わない。1 年半前に一度扱ったことがあるが、この店では客にとって値段が高す
ぎて販売を止めた。
【調査メモ】
店長は不在だったが、店員に何を質問しても気さくに答えてくれた。庶民的な外観で、価格もそれほど
高くない。
39
【14】 Metzgerei Hoos
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
精肉店・そう菜・ケータリング
Berger Str. 56, 60316 Frankfurt am Main
+49 (0)69 433442/+49 (0)69 4970128
[email protected]
http://www.feinkost-hoos.de
月-金 7:30~18:30 土 8:00~16:00
フランクフルト市内でも人気の住宅街で、個性的な店が多く並ぶ Berger 通り
にある。地下鉄 Merianplatz 駅のすぐそば。
顧客層
個人客
備考
フランクフルトで 30 年以上続く家族経営の店。現在は 2 代目。奇を衒わない
商品を手ごろな価格で提供する。本店以外に市内外に 2 店舗、1 軒は工場に併
設。日替りメニューには伝統的ドイツ料理が並ぶ。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
5.48/100g
仔牛
―
ヒレ
―
―
ヒレ、
ヒレ
4.28/100g
アントルコート
アントル 3.48/100g
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
産地
部位
価格(ユーロ)
頻度
14.80/100g
―
―
―
※Kobe Rind の名で表示されている。
【調査メモ】
今回の調査の目的の一つである過去の和牛セミナー参加者への追加調査先リストの店であり、現地まで
赴く日程が組めるほぼ唯一の精肉店であったが、2015 年 1 月のフランクフルトセミナーに参加した店
長の Hoos 氏は不在で話が聞けなかった。
40
陳列台で部位毎に細かく表示された価格の中に「Kobe Rind」の文字が見える(左下隅)
。
伝統的な内装に惣菜(右)だが、近年の BBQ ブームにも対応して BBQ 用の肉の一覧(左)がショーケ
ースに立っている。
【15】 Metzgerei & Feinkost Ebert
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
精肉店・そう菜
Große Eschenheimer Straße 5, 60313 Frankfurt am Main
+49 (0)69 13 38 71 0/+49 (0)69 28 58 25
[email protected]
http://www.ebert-feinkost.de
月-金 8:00~19:00
フランクフルト市の中心地、歩行者天国のすぐそばにあり、複数の地下鉄が乗
り入れる Hauptwache 駅からもアクセスが良い。
顧客層
個人客
備考
1908 年の創業以来同じ場所にある本店の他、近くに販売店とスープ専門店の 2
店舗を抱える家族経営の老舗。肉製品以外のジャムや調味料など自家製品の
他、欧州各地の肉製品・乳製品・ワインなども幅広く充実。シャロレー牛、シ
ュヴェービッシュ・ハル豚を扱う。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
シャロレー種(放牧) ドイツ(アイフェル) ヒレ、ランプ
ヒレ 7.90/100g
ランプ 5.05/100g
仔牛
ドイツ(アイフェル) ロース、ランプ、
ロース 5.05/100g
シン
ランプ 4.80/100g
シン
4.15/100g
41
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
なし
【調査メモ】
100 年を超える歴史への誇りがある。店で一番高いのは、シャロレー種のヒレ肉(79€/kg)
。
【16】 Sushimoto(鮨元)
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
日本料理店
Konrad-Adenauer-Str. 7, 60313 Frankfurt am Main
(Westin Grand Hotel 内)
+49 (0)69 1310057/+49 (0)69 21657790
[email protected]
http://www.sushimoto.eu
火-土 12:00~14:30 火-日 18:00~21:30
メッセ開催日以外は月曜休み
【店舗概要】
立地条件
ショッピングの中心地歩行者天国の外れ、Konstablerwache 駅から近い Westin
Grand Hotel 内にある。
顧客層
個人客
備考
1989 年の開店以来、日本産米をはじめ厳選素材で作られた鮨の他、鉄板焼き
や天ぷらなどの和食メニューを提供する。地元での評価は高く、日本人に限ら
ず多くのグルメファンや常連客が通う。日本産和牛の鉄板焼きコースが売り。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格
―
―
ヒレ
特選コース
95€
グルメコース 65€
―
―
ヒレ
鉄板焼きコース 45€
―
―
ヒレ
焼肉定食
19€
42
※特選・グルメコースは刺身、鮨、魚介の鉄板焼きを含むディナー価格(メニューより)
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
産地
部位 価格(ユーロ)
頻度
日本(宮崎) ―
鉄板焼き単品
85€/200g
―
特選・グルメコースの鉄板焼きを日本産和牛に変更 40€/1人前
備考
日本産和牛を仕入れているが、毎日仕入れるわけではない。
【調査メモ】
ホール店員(日系人)に和牛の産地を訪ねると「日本の神戸牛です」というので、本当に日本産かと確
認すると「わかりません」という答えが返ってきた。鉄板焼きの担当者なら詳しい産地を把握している
とのことだったが、その日は仕入れ担当者が不在だったので、店長に確認してみた。
「おそらく宮崎牛だ
ろう」とのことだった。仕入は金曜日のみ。
(左)特選メニューの一部。追加料金 40€で牛ヒレを日本産和牛に変更可能。
(右)焼肉定食。
【17】 Schlösser
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
精肉店・そう菜・ケータリング
Oststraße 154, 40210 Düsseldorf
+49 (0)211 36 27 87/+49 (0)211 35 92 47
月-金 7:00~18:30 土 7:00~13:00
デュッセルドルフ中央駅から徒歩 10 分、目貫き通りのケーアレーからも徒歩
5 分の場所に位置しており、老舗の醸造所や高級ホテルなどが並ぶ、人通りの
多い Ost 通りに面している。
顧客層
レストラン、個人客
備考
創業 110 年を超える老舗。NRW 州の品質コンテスト過去に全国一位の 48 個
のメダルを獲得している加工品は、地元民に愛されている。清潔で明るい本店
の奥に本格的な製造工場を持ち、デュッセルドルフ市内の百貨店に専用ブース
がある。手ごろな値段で提供する日替わりの昼食用メニューに限らずそう菜コ
ーナーも人気。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
未経産牛
ドイツ(NRW)
ヒレ、サーロイン、
ヒレ
47.90/kg
サーロイン 34.00/kg
40.90/kg
仔牛
ドイツ(NRW)
ヒレ
43
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
値段が高すぎるし、他の牛でも高品質だし顧客は満足する。日本産和牛になると最低 3 倍の値段にな
ってしまう。ドイツには今年初めて入ってきたということはよく知っている。和牛には興味があるの
で、パンフレットを一度良く読んで対応したいと思うが、今のところ店に置く予定はない。
【調査メモ】
数日間通って最終日にやっと社長に会えて話ができた。店内奥の工場を案内してもらった。
店の玄関の隣の通路からすぐに工場に入ることができる。惣菜準備室、カッティング室、カット前の冷
蔵貯蔵室、燻製用機器を設置した加工室などを備えた本格的な製造所があり、ここから店頭まで通路一
本の距離である。街中にこれだけの規模で工場を持つのは珍しい。
【18】 Schmalzried
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
精肉店
Oststraße 76, 40210 Düsseldorf
+49 (0)221 35 95 39/+49 (0)221 35 69 15
[email protected]
http://www.metzgerei-schmalzried.de
月-金 9:00~20:00 土 9:00~16:00
44
【店舗概要】
立地条件
デュッセルドルフの中心地にほど近い Ost 通りに面し、日航ホテルや日本関連
の店が集まる Immermann 通りのすぐ近くに位置し、日本人コミュニティから
アクセスがしやすい。
顧客層
個人客
備考
1950 年創業。加工製品の他に、牛豚のしゃぶしゃぶやすき焼き、焼肉やとん
かつ用の肉を置いているのが特徴。そう菜にも力を入れる。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
5.20/100g
―
ドイツ
ヒレ
3.30/100g
未経産牛
ドイツ
サーロイン
4.80/100g
―
アメリカ
アントルコート
3.30/100g
―
ドイツ
しゃぶしゃぶ用
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
産地
部位
価格(ユーロ)
頻度
―
―
―
―
備考
日本人の顧客から日本産和牛について聞かれることはあるが、価格の点で今までは提供を考えてこな
かったが、興味はあるので来年からは考えたいと思っている。
【調査メモ】
店長に話を聞いた。店内には、スライサーを設置。しゃぶしゃぶ用肉を生で提供するのは市内ではここ
だけ。売り上げ全体で牛豚の割合は半々だが、牛肉はほぼしゃぶしゃぶで出ており、その 7 割が日本人
とのことである。
生肉部門のショーケースでは、ドイツ語よりも日本語の方が大きく提示されている。
45
【19】 Kagaya GmbH
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
営業日・営業時間
【店舗概要】
立地条件
日本料理店
Charlottenstr. 60, 40210 Düsseldorf
+49 (0) 211-83025019/+49 (0)221 367 908 79
月-土 12:00~14:30/18:00~22:00
日本食レストランが連立する Immermann 界隈からは少し離れるが、中心街の
近くにあり、通勤途中や昼休憩に寄るのに便利な場所。
顧客層
個人客
備考
とんかつ、おろしハンバーグ、餃子など、家庭的な和食を気軽な値段で提供す
る。常連の日本人や地元のドイツ人がふらりと立ち寄る。
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
―
ドイツ
ロース
12.00/1 食
―
ドイツ
タン
10.80/1 食
※1 週間で 10 食ほど出る。
【日本産和牛および WAGYU の取り扱い状況・展望】
4 年前に市内の和食レストラン「弁慶」で鉄板焼きの仕入れを担当していたときにはオランダ産のもの
を扱った(同じ和食では市内のミシュランレストラン「Nagaya」でも同様とのこと※)
。供給も価格
も問題だが、何より店で提供したいメニューはドイツ産でも事足りるので、今後取り扱いは考えてい
ない。
※2015 年 11 月現在、Nagaya のメニューではオリジナル神戸産和牛が提供されている。
【調査メモ】
調理担当の竹内氏に話を聞いた。以前の勤務先「弁慶」では、オランダ産 WAGYU の扱いあり。客の反
応は、味がある(濃い)
、柔らかい、油が多いのでさっぱりしたものがほしくなる(サラダ、大根などで
フォローする)
、
(ドイツのステーキに比べて)厚いが少ない(日本では 120g、ドイツでは 130-140g)
、
という評価があった。
ドイツでの一般的ステーキは厚さがなく大きい。特にヒレのみが好まれ、
「弁慶」では当初は仕入れてい
たサーロインの扱いをやめ、ヒレだけを入れている。ドイツ産の普通の牛ではロース他扱いあり。
日本産といえば、KOBE ブランドという認識が強い。日本産和牛を売る際の課題としては、供給、価格
があげられるが、他の牛でも十分に事足りるという点もある。
「弁慶」では、客にはアイルランド産が人
気だった。問い合わせも多く、客の反応も良かった。
46
【20】 Heinz Jansen
【店舗情報】
業種
精肉店・そう菜・ケータリング
Welserstraße 10a, 51149 Köln
住所
電話番号/Fax 番号
+49 (0)220 3 310 41/+49 (0)220 30 19 67
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
月-金 9:00~18:00 土 8:00~12:00
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
リムーザン
―
ヒレ
シメンタール
―
―
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
産地
部位
価格(ユーロ)
―
―
35/kg~
備考
注文による発送のみ。
価格(ユーロ)
50/kg
40/kg
頻度
不定期
【21】 Willi Odenkirchen
【店舗情報】
業種
精肉店
Gottesweg 110, 50939 Köln
住所
電話番号/Fax 番号
+49 (0)221 41 54 69/+49 (0)221 44 43 01
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
月-金 7:00~18:30 土 7:00~13:00
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
―
ドイツ(アイフェル) ヒレ
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
なし
価格(ユーロ)
50/kg
【22】 Scholl
【店舗情報】
業種
精肉店
Bodestraße 1, 51061 Köln
住所
電話番号/Fax 番号
+49 (0)221 64 32 22/+49 (0)221 64 18 27
営業日・営業時間
火-金 8:00~13:00/15:00~18:30 土 7:30~13:00
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
20.80/kg
放牧牛
ドイツ(アイフェル) 胸
32~46/kg
ヒレ
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
なし
47
【23】 Klöpfer
【店舗情報】
業種
住所
電話番号/Fax 番号
メールアドレス
HP アドレス
営業日・営業時間
精肉店
Duisburger Straße 84, 40479 Düsseldorf
+49 (0)211 493 19 25/+49 (0)211 49 08 87
月 9:00~13:00/15:00~18:30
火-金 8:00~13:00/15:00~18:30 土 7:30~13:00
【牛肉の取り扱い状況】
種類
産地
部位
価格(ユーロ)
49.90/kg
未経産牛
ドイツ(アイフェル) ヒレ
35.50/kg
―
【日本産和牛の取り扱い状況・展望】
なし
【24】Aldi Süd(本社)
【店舗情報】
業種
スーパー
Burgstraße 37, 45476 Mülheim an der Ruhr
住所
電話番号/Fax 番号
+49 (0) 208 9927-0/+49 (0) 208 9927-2529
[email protected]
メールアドレス
https://www.aldi-sued.de
HP アドレス
営業日・営業時間
―
【店舗概要】
―
【WAGYU の取り扱い状況・展望】
イギリスの Aldi で WAGYU を取り扱っていると聞いたが、そちらでも扱っているのか、という質
問に対し、現在 WAGYU の取り扱いはないとの回答。
【25】METRO(本社)
【店舗情報】
業種
スーパー
Otto-Hahn-Straße 15, 50997 Köln
住所
電話番号/Fax 番号
+49 (0) 0211-17607090/+49 (0) 211-17607099
[email protected]
メールアドレス
http://www.metro.de/standorte/koeln
HP アドレス
営業日・営業時間
月-金 7:00~22:00 土 7:00~20:00
【店舗概要】
―
【和牛の取り扱い状況・展望】
(取り扱い高級牛肉について・日本産以外の WAGYU の取り扱いについて・日本産和牛の取り扱
いについての質問に対し)担当者不在でお答えできないとの回答。
※HP によれば、2015 年現在 Metro 社ではステーキハウスやアメリカンダイナーを対象にして、日本産
和牛を含む次の牛肉を扱う。
(アルゼンチン牛、アルゼンチン産水牛、米国牛、バイソン、日本産和牛、アイリッシュ・アンガス牛、
シャロレー牛、シメンタール牛、仔牛)
48
精肉店・レストラン調査を終えて
・BBQ や熟成肉の流行により、肉そのものの品質を重視する高級傾向が高まっている。
・スーパー、百貨店では WAGYU の取り扱いは見られない。
・精肉店では、注文に応じて仕入れるところもある。聞いたことがないという店もあった。
・高級品のみ置くような専門店では外国産 WAGYU あるいは日本産和牛を置いている。
・小売店よりもまずはレストラン、ケータリング業では WAGYU の需要は高まっている。
普段の食事よりも、大規模な記念イベントなどの機会には費用を惜しまないという傾向が
あるので、特にケータリングでの需要が見込まれる。
・日本料理店ではすでに日本産を扱っている店の他、オランダ産 WAGYU を置いている
店もあるということである。今後 WAGYU そのものも扱いが増えていく傾向にあるとみ
られる。
・一般の消費者も製品の出所を聞きたがる傾向が高まっている。
・ドイツで高級牛肉といえば、ドイツ産(地元産)の放牧牛(NRW 州では特に州内国立
公園アイフェル産)
、未経産牛、有機栽培の飼料で飼育された牛、他にアイルランド産の
牛、アルゼンチン産アンガス、豪州産 WAGYU、米国プレミア牛、などである。特に老舗
では、付き合いの長い地元の生産者などドイツ産、地元産を重視する傾向にある。
・日本料理店の普及によって、しゃぶしゃぶなど日本産和牛に適した料理は知名度を得て
いるので、和牛そのもの、あるいは見合った値段を受け入れる下地はあると思われる。
・見本市来場者より指摘があった、ドイツ語ならではの問題であるが、オーストラリア産
WAGYU には「AUS KOBE」という表記が用いられている。この「AUS」とはもちろ
んオーストラリアをさすが、同時にドイツ語の「~産」
(英語でいう「from」
)を意味する。
ドイツ人はこの「AUS KOBE」を読んで、
「神戸産」と理解してしまう。もし KOBE を
Kobe と表記すれば「AUS Kobe」になるが、商標登録済。
・ドイツ産 WAGYU の数も年々増えていることから、国内全体における WAGYU の普及
も見込まれる。国内法により、日本と同程度の肥育が難しい(動物愛護の観点から)ので、
肉質等級は日本のレベルに達することができない。
取材対象の選出方法の問題点
・良質の企業を選出しようという狙いで、Feinkost500 選中心にリスト化したが、このよ
うな肉屋の多くは契約農家と取引している傾向があった。また、品質を重視する分ドイツ
産や地元産の肉である点を重視するなど、輸入肉を頼る傾向にないようだった。
・今回デュッセルドルフ近郊が調査対象だったが、ミュンヘン、フランクフルトセミナー
の案内先は NRW 州を避けていたので、実質今回の現地調査の対象域外であった。
→まだ小売店の個人客よりは、レストランやイベントでのケータリングでの需要が大きい
ので、大型スーパーや百貨店を含め、今後はそちらを対象にした方が統計が取れるだろう。
49
第4章 WAGYU 生産農家(Wagyu-Muensterland)の生産実態
調査日時 :2015 年 10 月 13 日 10.00-13.00
調査場所 :ホルトマン農場
(ノルトライン=ヴェストファーレン州ミュンスター近郊アルバハテン)
調査内容 :1.農場経営(規模、内容、体制)
2.受精卵から製品化までの流れ
3.ドイツ WAGYU 事情(需要、種、限界)
4.WAGYU 繁殖牛の欧州初のオークション(European Wagyu Gala)
5.WAGYU 生産にかける思いと展望
6.日本の和牛生産状況についての質問
調査対象者:
WAGYU ミュンスターラント
プリズマゲン・WWS 独
(メラニー・ホルトマン氏、ラインハルト・ (フーベルトゥス・ディールス氏、ビルギ
ホルトマン氏)
ッタ・ブレントルップ氏)
Melanie & Reinhard Holtmann
WWS Germany / PrismaGen Germany
Adresse Ventrup 60, 48163 Münster, Germany
Eisenbahnstr. 1, 48341 Altenberge
Telefon +49 (0) 2536 - 6710
Telefon +49 (0)2505 - 939220
Telefax +49 (0) 2536 - 6701
Telefax +49 (0)2505 – 9392222
E-mail [email protected]
E-mail [email protected]
URL
URL
http://www.wagyu-muensterland.de
50
http://www.prismagen.de
4.1 ホルトマン農場の経営概要(内容、規模、体制)
ホルトマン農場(Hof Holtmann)は、ドイツ北西部ミュンスター近郊の農業地域に位
置し、16 世紀から家族経営を続けている。経営者のメラニー&ラインハルト・ホルトマン
夫妻は、
牛・豚の飼育と飼料用を中心とする耕種部門に主軸を置き、
100ha 近い土地の 95%
を耕作地として飼料を生産する。
2009 年より、
「地元産」
「100%純血種」を売りにした WAGYU 生産に携わる。
4.1.1.経営規模
ホルトマン農場の WAGYU 飼養頭数は、自己保有牛の 80 頭のほか、ほかの農家や業者
からの預託牛、プリズマゲン(WWS)の牛が 20 頭ほど、合計 100 頭になる。2015 年9
月のオークションで 20 頭ほどが売れたので、調査時は肥育用も合わせて 80 頭であった。
このうち雌は 40 頭で、全て繁殖用である。雄は 40 頭で原則肥育用であるが、1割は繁殖
用で供している。ドイツ全体では繁殖用雌牛が 400 頭くらいいるので、つまり1割はこの
農場にいるということになる。
ドイツ全体で WAGYU を扱う業者は 80 あるが、まだ始めたばかりの生産者も多く、や
っと受精卵(胚)を買い付けたところで牛本体を所有していない者も多いという。ドイツ
全体で WAGYU の頭数は 800 頭だが、100 頭規模を飼育しているのは、南と北ドイツに
1つずつとホルトマン農場の3件しかなく、他の生産者は数頭規模とのことである。
80 の WAGYU 生産者のうち自前の牛舎で世話しているのは5農家だけである。金をか
けて立派な WAGYU 用牛舎を建てることもできるが、それでも畑がなければ飼料が作れ
ない、飼養管理方法を分かっていない農家もあり、ホルトマン農場に3年間預託する場合
もあるという。
他にもアマチュアのコックなどが、将来、食肉用に WAGYU を自分で持ちたいが、農
地がないので、最初に子牛を 2000~3000 ユーロで購入し、1日当たりの預託料を取り決
めて飼育を依頼することもある。3年後にと畜・処理して枝肉で引き渡すという預託肥育
もやっているとのことである。これらを含む常時飼養は 10~20 頭になる。
年間の販売頭数は、生体で 20 頭、肉用で5頭(クリスマスに2~3頭、イースターに
1~2頭)である。2016 年はオークションのイベントがあったので、肉用として1~10
月までに9頭をと畜している。まだ販売を始めたばかりなので、少しずつ増やしている段
階にある。雌はこれまで1頭もと畜していないという。
4.1.2.経営内容
ホルトマン農場では繁殖肥育一貫経営を行っている。と畜し、精肉の販売も行っている
ので、つまり精子から食卓までを一貫で扱っていることになる。WAGYU のほかに、豚
1200 頭(イベリコ種を含む)
、肉牛 180 頭(フレックフィー種 100 頭、WAGYU80 頭)
であるが、WAGYU の飼養管理に一番時間をかけているという。
飼育に関しては、ホルスタイン種に WAGYU を種付けした交雑種を生産する農家もあ
るが、ホルトマン農場では血統書付きの 100%WAGYU しか扱わない。交雑種は WAGYU
51
のような黒毛の牛が生まれるものの、肉質はホルスタインに近くなり、特によい肉ではな
い。胚を買い付け、農場において遺伝子検査で確認している。
現在は、優れた点を持っている島根、気高、但馬の3系統の交配を試みている。他には
褐毛の飼育も始めている。
4.1.3.作業分担
経営主(夫)が飼育を担当し、妻が牛肉の製品化を担当している。毎年入れ替わるが、
研修生が2人(見習い・インターン各1人)いて、夫と3人で牛の世話を担当している。
ほかに夫の母が小さい子牛の世話でミルクや子牛用のミューズリーを与えたり、下痢など
で電解液を与えたりなどの世話をする。妻と小さな子ども2人が牛を撫でる役である。
現在の研修生は2人とも近所に住んでいるが、できれば住み込みの方が望ましい。夜に
警報がなることもあるので、すぐに駆けつけられるし、牛たちの配置換え、と畜場に行く
場合などだが、その場合は夜まで働くこともあるためだ。なお、研修生は毎年入れ替わる。
研修には全部で3年かかるが、毎年違う場所で訓練することになっている。豚と牛と農業
で研修期間に全部見たことになる。
受精や飼養管理など技術的なことには、友人のフーベルトゥス・ディールス(遺伝子の
専門家で獣医)がサポートする。彼が2週間に1回アメリカへ渡航し、そこで純血の
WAGYU の胚を持っている会社で優れた胚を探してストローに入れて飛行機で持って帰
ってくる。それをこの農場の雌牛に移植する。ほかに1時間ほど離れたところの獣医で胚
移植の専門家がいて、移植や精液の採取を手伝ってもらう。移植の7日後にまた来て成功
かどうかを確認する。それを他の WAGYU 農家に売るのだ。
4.1.4.技術支援体制
繁殖技術は、プリズマゲン PrismaGen/WWS Germany が行っている。同社はミュンス
ター近郊にある総勢 28 人のジェネティック系企業で、ドイツ、オーストリア、ルクセン
ブルクにおいて、ホルスタイン、ジャージーなどの乳牛を中心に扱っている。
STGenetics(米)
、Semenzoo(伊)
、Viking Genetics(デンマーク、スウェーデン、フ
ィンランド)の代表も兼ね、スペインやオランダに農場を持っている。デンマーク、イタ
リア、アメリカと定期的な取引があり、WAGYU に関しては精液、受精卵から飼育牛まで
を全般的に扱う。WWS の正式名称は World Wide Sires, Ltd(米国)である。なお、代表
者はHubertus Diers 氏であり、
調査時に支配人のBirgitta Brentrup氏が同席してくれた。
プリズマゲン社の種牛のカタログの中に WAGYU の精子がある。
米国から輸入するか、
あるいはこの農場で採取したものだ。下にストロー一本分の価格表を掲載した。
同社では「うちでは普通の精液と、価格は少し高くなるが性選別精液を扱う」
(B. ブレ
ントルップ氏)
、
「この農場では雌の繁殖が目標なので、シゲシゲタニとタヤスで、両方と
(H. ディ
も雌用を扱う。このシゲシゲタニは米国生まれだが、その父親は日本産まれだ」
ールス)としている。
52
表 PrismaGen 精液カタログ(2015 年 8 月現在)
ドナー名
血統書番号 血統
キヨシ 409 FB14093
204386 キタグニJR×サンジロウ2501×TFイトミチ1/2
ヒーロー 5658 FB11978
201739 YCB イトウ・アイノ×TFキツハナ×TFテルタニ2409
イトモリタカ FB14234
201933 イトモリタカ72703×サンジロウ×イトミチ1/2
シゲシゲタニ 542 FB14299
202015 シゲシゲタニ×ミチフク×ムサシ03K
タヤス 533 FB13499
202016 ヒラシゲタヤス×タカザクラ×タンシゲ
サンジロウ 514 FB14298 新
202146 サンジロウ×イトシゲナミ×MJBムサシ
ルーショー 74Z (赤毛) FB14720
201934 ルーショー×シゲマル×ビッグアル
ジュード― 79 (赤毛) FB14725
202004 ジュード―100×ビッグアル×シゲマル
性選別精液: シゲシゲタニ 542(雌)55 ユーロ
系統
50%タジマ、50%シマネ
85%シマネ、15%タジマ
40%ケダカ、35%シマネ、25%タジマ
ほぼ100%タジマ
50%タジマ、50%ケダカ
100%タジマ
赤毛
赤毛
シゲシゲタニ(雄)35 ユーロ
特徴
価格※
完璧な血統
25
異系交配種、母性
35
外観、スタミナ、AA7
75
脂肪交雑、安産
29
外観、優れた脂肪交雑
29
脂肪交雑、血統
29
増体に優れる
49
血統
55
タヤス(雌)55 ユーロ
4.2 農場の施設と飼養実態
■雌牛の牛舎
繁殖用雌の牛舎には、ホルスタイン1頭、WAGYU(黒毛)7頭(5歳、1歳半、3ヵ
月齢など)
、WAGYU(褐毛)2頭(5ヵ月齢)
、放牧地にホルスタイン雌牛を1頭飼養し
ていた。5歳の WAGYU(黒毛)は米国から輸入した WAGYU の胚と精液から初めて生
まれたものである。ほとんどは受精卵・受精胚採取用で、他の農家で受精させて、子牛の
形でこの農場に戻されるという。敷料は麦稈を敷き詰め、飼料は小麦や干し草を与えらて
いる。
53
■去勢牛の牛舎
若い去勢牛。まず精子を取り出して遺伝子検査をし、繁殖に適さなければ、肥育用に仕
向ける。
■飼料の調製施設
飼料にはホールトウモロコシの種子を用いている。写真にある飼料の9割は豚用で、1
割が最終肥育用である(WAGYU 以外の肥育品種も含む)
。最初は放牧でゆっくり育て、仕上
げの段階で力を入れる。飼料は基本的に自作の1ha の土地でとれる作物を使用している。
種子、ワラ、タンパク質、ビールかす、牧草のサイレージを混ぜた TMR(混合飼料)を自前
のミキサーで調製して使用している。
■開放牛舎
牛舎の手前が繁殖用雄牛、奥が肥育用去勢牛(10~15 ヵ月齢)である。出荷月齢は、
クリスマス用途で 30 ヵ月齢、生体で約 750kg になる。繁殖用雌牛は、9月のオークショ
ンで競り落とされたものも預かっている。
給水は胃に優しいよう、ぬるま湯で提供している。背中掻き、遊び用タイヤ、寝転がっ
て背中をマッサージする器具、音楽を流す装置も設置されている。牛たちは静かな「サイ
モン&ガーファンクル」のようなバラードやベートーベンやモーツァルトを好むという。
除角は子牛のうちに行う。牛たちの気立ては穏やかだが、研修生を受け入れているので逃
げたりするときには角があっては危ないからだ。
54
■パドック
声をかけると牛たちは走って近づいてくる。電牧の内側の大きな箱は餌箱で、中にはワ
ラが入っている。広いパドックへの牛の出入りは自由であるが。以前はここにも WAGYU
(黒毛)の雌牛がいたが、先日のオークションにかけられてリトアニアへ売られたそうだ。
遺伝子テストの結果が良く、たくさんの子牛を生産した優秀な牛だった。それ以外の繁殖
は人工授精で米国産の精子で行っている。1頭のホルスタインには米国の胚を移植してい
る。常に米国かオーストラリアの胚を移植して繁殖させる繰り返しだそうだ。
4.3 受精卵入手から製品化までの流れ
4.3.1.人工授精~誕生~仕分け
採卵用雌牛に人工授精し7日後に受精卵(胚)を採取する。この人工授精用精液は2週
間ごとに米国などから入手するもの、あるいはこの農場で採精した精液を用いる。ここの
ドナーとなる雌牛は全て米国あるいはオーストラリアから輸入した受精卵(胚)を移植し
て生ませた牛だという。
「この繰り返しで増やしてきた。日本の受精卵も欲しいが無理だ
ろう」とホルトマン氏。
採取した受精卵を移植し、分娩まで仮の母体(仮腹)になるレシピエントは2頭のホル
スタイン。受胎率は 70~75%と高い。
「うちの農場には受精卵移植専門の獣医がついてい
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るので高いのだろう。牧牛による自然交配だともっと確率が高くなるはずだ」と自慢する。
子牛は6ヵ月間母牛と過ごすようにしている。早期離乳に比べ子牛は健康に育つため。
その後に除角する。6ヵ月で子牛が乳離れしたら、1~2ヵ月間を置いて胚移植による妊
娠を試みる。
血統を確認するため2種類の検査を行っている。1つは日本発の SCD テスト
(stearoyl-CoA desaturase:SCD 遺伝子の DNA 型判定テスト)で、ヨーロッパでは
GeneSeek(NeoGen Corporation 傘下)という会社がやっている。2つ目は、Pfizer
GeneSTAR というテストだ。検査結果が良くなければ、繁殖用にならない雄牛は鈍性の去
勢(ナイフによる睾丸摘出でなく糸で縛る方法)を施す。肥育用に仕向け、肉として出荷
することになる。
4.3.2.飼料の内容
肥育用飼料のうちタンパク質を含むビールかすは、近隣のビール醸造所から購入するほ
か、ミュンスターの大きな飼料会社からミネラル分などの他の濃厚飼料をタンパク質と混
ぜて持ってきてもらう。タンパク質原料以外の小麦、ライ小麦、大麦、とうもろこし、牧
草は自家生産で、自分たちでサイレージにする。
ミュンスターの Pinkus Müller という BIO(オーガニック)の醸造所で、醸造過程で出
たビール粕を飼料用に仕入れ、ミキサー車でうちの穀物類と牧草サイレージと一緒に混ぜ
て、牛に与えている。ビール粕といってもアルコールフリーである。たまに普通に流通し
ている Krombacher ビールなどを混ぜる WAGYU 農家もいるが、動物にアルコールを与
えるのはドイツでは禁止されているので違法になる。ビール粕は食品残渣飼料なのでアル
コールは含まず、飼料にして構わないのだ。
ホルトマン農場では日本と同じように子牛の段階は牧草を多給、肥育後期の最終年のみ
小麦やとうもろこしなどの濃厚飼料を与える。出荷も生後 28~30 ヵ月齢と日本と同じ。
4.3.3.と畜・枝肉の分割、商品化と販売
30 ヵ月齢の生体重は平均 750kg で、と畜は農場の牛舎内で行う「自家と畜」である。
ストレスを与えないようにホルトマン氏が餌で誘導し、なでている間に食肉店と畜作業員
が来て打額したら牛は倒れ、それを運び出す。その後はフックに吊り、喉を切り、下の血
受けの桶の上で放血させる。その状態でと畜場に運ぶ約 20 分間に放血死となる。これは
輸送中のストレス回避のためという。
と畜場ではと畜検査員の獣医師(女性)が待機していて、腎臓や他の臓器の状態をチェ
ックし問題がなければ EU の印をもらう。枝肉にしてそのまま2~4週間ほど畜場の冷蔵
室で吊るして熟成させる。
枝肉の分割・抜骨、整形、商品化は M. ホルトマン氏の担当。ど畜場で朝 8 時から夜 8
時までだいたい 12 時間で商品化の作業を行う。事前予約のみ受け付けており、サーロイ
ンを塊で1kg とか、ステーキ肉で厚さ2cm といった客の要望に沿って M. ホルトマン氏
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が切り分けて、真空パックにする。分割し真空包装し商品は農場に持ち帰り、冷蔵室に保
管しておく。それから客に電話連絡して、近場なら取りに来てもらうか、あるいは遠方や
フランスやスペインなどの外国ならばここから直接発送する――というシステム。
予約は1年前から受け付けていて、客がクリスマスに品物を受け取るときに一緒に翌年
用の注文書が入ってくるという。1月、2月にはヒレやサーロインといった高級部位が売
り切れ状態になり、4月、5月にはモモやカタなどが売り切れ、秋に受け付ける最後の注
文ではもうひき肉や煮込み用の部位しか残っていないという。下の写真は商品例で、左が
サーロインステーキ2枚入り、中央が骨付きリブロース。
(写真)主にリブロースとサーロインを1kg 当たり 170 ユーロで販売。
常時販売しているわけではなく、主な販売時期はクリスマスとイースターである。その
時期は家族で集まる特別な機会であり、良い肉にお金を出す用意があるからだ。ただし、
2015 年はオークションを行ったために調査時の 10 月段階ですでに5頭を余計にと畜した
状態であったという。
農場の近隣住民以外、さらにはフランスやスペインなどの顧客へは発砲スチロールの箱
に冷蔵パックして発送している。24 時間冷蔵の箱で何 kg まで冷蔵可という規則もきちん
と決まっている。夜 8 時に UPS の警備付の ExperssServer の冷蔵便で発送すれば、ドイ
ツやフランス、スペインまでは翌朝 11 時までには到着する。
送料は保険込で 30 ユーロだが、アメリカ宛てだと翌日よりも後の到着になるそうだ。
4.4 なぜドイツで WAGYU を飼うのか
ホルトマン夫妻にドイツで 100%純血の WAGYU を生産する理由を聞いた。
4.4.1.WAGYU の需要が高まっている
われわれが WAGYU に興味を持ち始めた当時、ヨーロッパではアニマルウェルフェア
の新しい方法の可能性の議論があった。食に特別なものを求める消費者のこだわりも高ま
っていた。日本産和牛や神戸ビーフというのは伝説的な扱いをされていて、その需要にマ
ッチした牛肉だった。だが、和牛を好んでも実態を知らない人も多かった。
ドイツでは牛にマッサージをしたり、ビールを飲ませたりといった類の神話が好まれる
という。牛に音楽を聴いたり、ぬるま湯を飲んだりというのは畜産では特別なことなので
見学にくるという。そうすることで、買い手は特別な値段を払う気になるのだそうだ。
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現在、ドイツでは、WAGYU の需要が高まっている。ホルトマンさんは、本来はミュン
スターの農場で WAGYU 肉の生産だけをするつもりだったが、WWS の Hubertus と協力
し、遺伝子レベルでも販売をしようということになった。そして、2015 年9月のオーク
ション(後述)でも明らかになったように、ヨーロッパでの WAGYU 需要は着実に高ま
っている。多くの国からたくさんの参加者が集まったのだ。
WAGYU の需要があるほかの国でもそうだが、ドイツではステーキのほかに BBQ や高
級ハンバーガーがとても流行っているし、三つ星・二つ星付レストランでも特別な食材を
欲しているので、そういった需要を WAGYU なら満たせる。
ホルトマン農場の客には、日本と取引のある会社が多い。会社や商売をしている先の日
本で神戸牛を食べる機会があって、その後でドイツにもあるのかと気づいてやって来る。
それで実際に食べてみて、日本産和牛の味と同じだと言う。だから、遺伝子から飼料まで
きっとうちのやり方は正しいと思っている。客がそういうのだから間違いないと考えた。
需要先としては、地元ミュンスターの日本食などのレストランにもコンタクトを取って売
り込んだりしているところだ。具体的にはミュンスター近郊の「Party Service Hauwe(精
肉店)
」や「Restaurant Ackermann(レストラン)
」に卸しているという。
4.4.2.純血種の WAGYU を求めて
現在、インターネットでも米国産やオーストラリア産の KOBE(AUS KOBE)の購入
が可能な時代になったが、ホルトマン氏は「いずれも WAGYU ではない」と語る。
「AUS
KOBE といっても、AUSTRALIA の KOBE ビーフと名乗っているだけで、本物の神戸産
ではない。しかし、ドイツ人消費者はあたかも神戸から直接輸入したものと誤認してしま
うだろう。
」一番の問題として「米国産やオーストラリア産のものは交配種が多いこと」
と力説した。
「そのことを明記する義務も存在しないのも問題」とも付け加えた。
ホルトマン氏は、
「血統書が一番重要」と語る。同農場で飼養するのは交雑種ではなく、
各種検査にも合格している純血種(WAGYU 同士の掛け合わせ品種)である。ドイツの協
会が 100%を証している。WWS のカタログにあるように、交雑種は安い。WAGYU は高
すぎるので、みなホルスタインを掛け合わせようと試みる。うちでもアンガスと掛け合わ
せてやってみたところ、肉質は少し良くなったが、100%には程遠い状況にあったという。
うちの客は 100%の WAGYU を望み、交配種は望まない。インターネットで入手できる
WAGYU の 99%は米国産やオーストラリア産の交雑種であり、残りの1%が純血種の掛
け合わせだそうだ。
「わが農場にはよくオランダやオーストラリアから電話で生体の売り込みがある。しか
し、100%の純血種であるということを示す血統書を求めても売込業者は提示することが
できない。そういう営業は断っている。
」とホルトマン氏。主に米国シアトルの Crescent
Harbor Ranch の牛を買っているとのことである。同農場のオーナーである Ralph Valdez
氏と WWS の Diers 氏を通じて密にコンタクトを取っている。彼はアメリカ WAGYU 協
会の会長で元々は日本向けの魚を扱う業者だったが、過去に日本から米国向けに輸出され
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た WAGYU の精液も扱うようになった。当時のその種を更新しながら守っており、ホル
トマン氏の牛もそこから導入するものが多いのだそうだ。
「Valdez 氏は、当時(1990 年代)日本から米国に渡った最初の和牛のうち数十頭を入
手することができた数少ない1人である。現在、アメリカ全体で数千の WAGYU 生産者
がいるが、ほとんどが交雑種である。アメリカのレストランはみな和牛を欲しがっている
が、4件の農家のみが、純血種同士を掛け合わせた WAGYU を飼育しており、彼の農場
はそのうちの一つである。
」とホルトマン氏。
先日シュトゥットガルトの同業者と話した。:欧州では信じられないくらい大量のオース
トラリア産 WAGYU が出回っているが、なぜ日本から遠く離れたオーストラリア産でな
ければならないのか。それでも採算が合うからなのだろうが、それならここでもできる、
オーストラリアである必要はない。つまり、ここで WAGYU を生産したら、みんなここ
まで来て見学して冷蔵室の肉も見て、ああ自分の牛はここで生産されたのだなと納得でき
て、ネット購入よりも全然良い、ということで一致した。たとえば、クリスマス用の肉に
なる前の生体から自分で見ることができ、自分が撫でた牛がステーキになるわけだ。
そこで、これは純血種かと聞かれても、私なら血統書を見せ、祖父母の「日本産牛」ま
で証明できる。でもオーストラリアの WAGYU であれば、それが本物なのかどうか確か
めることはできない。
ほかには、親せきで戻し交配を試みている農家があるが、精子は 70 ユーロと安くはな
いので普通の牛に WAGYU の精子で受精させ、生まれた子牛の精子で同じように繰り返
し、6-7代後には 90%の WAGYU ができる。血統書はできないが、価格を少し抑えら
れるということもやっている。
うちでは、日本並みの霜降り等級(BMS)11 とか 12 は無理だ。ドイツではありえない。
日本では BMS12 が最高級ということだが、同業者の一人が三ツ星レストランで食べてみ
たら、これはヨーロッパ人の舌にはちょっと脂っこすぎると言っていた。うちのこれまで
の最高評価は BMS10 だ。ドイツ人にはこれで十分だ。その上、日本では最終の仕上げの
肥育は小さな部屋に入れて食べさせるそうだが、これはドイツではアニマルウェルフェア
の観点から禁止されている。今後も BMS12 は出現しないだろう。
4.5 欧州初の繁殖牛のオークション(European Wagyu Gala)
4.5.1.オークションの概要
目
的:生産者向けのヨーロッパ初の繁殖用純血種 WAGYU の競りと消費者向けの
WAGYU アピール
開催日程:2015 年9月 11 日・12 日(次回は 2016 年9月9日・10 日開催予定)
開 催 地:ミュンスター・アルバハテン・ホルトマン農場
主 催 者:WAGYU ミュンスターラント・プリズマゲン
参 加 国:スウェーデン、英国、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ハン
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ガリー、スペイン、オーストリア、スイス、スロヴァキア、フランス、米国、
ギリシャ、イラン、リトアニア他
参 加 者:2000 人(生産者 150 人)
売上価格:・平均価格 1 万 4500 ユーロ
・雌 27 頭、雄7頭(ともに生後7ヵ月~3年)中、雌 24 頭、雄6頭が競り
落とされる※
・雌の最終価格:平均 14000 ユーロ(最高価格:カタログ No3妊娠中の2歳
牛※で 27500 ユーロでリトアニアの生産者へ)
・雄の最終価格:平均 5000 ユーロ(最高価格 10000 ユーロ※、最低価格 3500
ユーロ(生後2ヵ月)※)
・その他:胚(3つで 2300 ユーロ)※
※Westfälische Nachrichten 紙の記事(2015 年9月 14 日)”Rinderauktion „European
Wagyu Gala“ zieht internationales Publikum nach Albachten. 27 500 Euro für eine
tragende Kuh”を参照。
4.5.2.成果(R. ホルトマン氏の評価)
ホルトマン氏は、ドイツ WAGYU 協会と連携し、2015 年9月にオークションを開催し
た。ドイツの牛のオークション史上、最高価格が付いたことから、大成功だったといえる。
たとえば通常、アンガス種の競りでは1頭平均 2000~3000 ユーロ(27~40 万円)であ
るものが、同オークションにおける WAGYU は平均 1 万 4000 ユーロ(190 万円)
、最高
で2万 7500 ユーロ(380 万円)の値がついた。高い価格であるが、ドイツ全土で 800 頭
しかいないのだから、
「当然の価格だと思う」
(ホルトマン氏)
。
このオークションは WAGYU を売るだけではなく、消費者に向けて WAGYU をアピー
ルをする場でもあったため、宣伝効果も大きかった。競りへの参加者は生産者が中心だが、
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消費者へのアピールとして、ミュンスターの Mövenpick ホテルのコックやテレビで活躍
する有名シェフを招き、BBQ などのイベントも併催した。また、レセプションでは5品
のオリジナルコース料理で 300 人分を提供し、クラフトビール専門店のビールソムリエや
ワインソムリエも呼び、WAGYU の可能性をさまざまに提示した。
「農業と美食の融合」
というのがうちのモットーであるが、特に WAGYU を食べたければ必ずしも自分で飼育
する必要がないというアピールでもあった。
今回は有名コックが高級部位を用いた料理ショーを行ったが、非常に反応が良く、みな
楽しんでいた。また、さまざまな部位を用いたメニューをいろいろ用意したのは、ドイツ
人が普段は重視しない煮込み用部位など、ヒレ、サーロイン、リブロースなどのステーキ
用以外の部位でも、WAGYU の味ならどの部位でもおいしいということを知って欲しかっ
たからだ。アメリカではすでに WAGYU ならより多くの部位がミディアムステーキに向
くと知られているし、ドイツ人の好むバーガー用にはブリスケットなども合うという。
4.6 R. ホルトマン、M. ホルトマン夫妻の WAGYU 生産にかける思いと展望
4.6.1.WAGYU との出会いと活動
ホルトマン農場は、ドイツにあるごく普通の農家に過ぎなかった。しかし、数年前に放
映されたテレビ番組で「ドバイのお金持ちが世界一高級な日本産和牛のステーキを食べる
という短いニュースを見て、大変興味を持った」という。ホルトマン氏自身、自ら牛を飼
育しているので、世界一高級とはどういうことかと大変気になり、
「夜通しで和牛や神戸
牛の情報を集め、すっかり虜になってしまった」のだそうだ。また、当時、ヨーロッパで
議論されていた動物愛護や消費者の高級志向に合致するとも判断したとのことだ。
日本産和牛や神戸ビーフというのはとかく神話扱いをされがちである。私は消費者に向
けて、見た目、香り、味、これらが揃っているのは和牛だけだという点を強調するように
している。和牛に興味があっても、よく知らない人もいる。私たちは幸運にもドイツで
WAGYU を育てる最初の農家の一つだったため、メディアでよく注目され、テレビもよく
取材に来た。そしてそれを介してまた人に知られるようになった。
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なお、もともとは WAGYU の生産(肥育)のみをするつもりだったが、WWS と話し合
い、遺伝子レベルでも販売をしようということになり、それが先日の競りにつながったの
だという。特に「農業と美食の融合」を目指す、というのがこの農場の標語になっている。
ドイツにおける WAGYU の啓蒙活動だと思っている。WAGYU であれば、ヒレ、サーロ
イン以外のどの部位でも素晴らしいということを知ってもらいたい。バーガー用にはブリ
スケットもよい。しかし、焼肉用途や煮込み用途の部位があるが、ドイツ人には重要視さ
れていない。そこで、WAGYU の味ならどの部位でもおいしいということを知って欲しい
と活動している。
「正しくカットし、利用すれば、どの部位でもおいしい」のだと。
農場では、経営主が飼育を担当、奥さんがと畜から切り分け、販売までを担当している
が、ステーキ以外でも WAGYU を使ったいろいろなおいしい料理ができるようにと小さ
な料理本も出版したのだという。日本で和牛はステーキ以外に、しゃぶしゃぶ、すき焼き、
焼き肉などさまざまな料理に使われるが、そういう料理はドイツにはない。このため、地
元ミュンスターの和食店に日本産和牛の料理方法を教えてもらったりもしている。
4.6.2.WAGYU 生産農家としての未来
ホルトマンが言うには、
「今後、当農場が将来 WAGYU 専門農場になるのか、それとも
他の家畜の飼育も続けていくのかはいまのところ分からない。ただし、競りを終えて思っ
たのは、私たちの活動がヨーロッパ中で注目されているという事実である。ドイツの牛の
競り史上、平均価格がここまで上がったものはなかったことであり、多くの者が遠くから
ここまで競りを見に来てくれた。とても関心が高いことがわかった。私たちは他の業者に
先んじており、おそらくはかなり良い位置にいるし、この先もその地位を保ちたいと考え
る。WWS とも協力して、生体や精子の販売を始めており、常に先頭に立っていきたい」
とのことだ。さらに、国際的に認められる血統書を作ることも必要と考えている。今後も、
WAGYU への関心や需要はヨーロッパではもっと高まっていくだろう。そのときに、私た
ちが中心でいたいと思っている。競りのおかげで今は確実に中心にいるはずだ。興味深い
遺伝子を提供したいし、重要な人々との結びつきも大事にしていきたい。
現在は WAGYU に関わる労働時間が多い。豚 1200 頭、牛 180 頭(うち WAGYU80 頭)
の中で、WAGYU の飼養に一番時間を要しているが、それが革新というもので、宣伝に時
間を使ったり仕事量が増えるのは当たり前だ。当初計画から7年が経過したが、取り組み
当初に自分の考えを説明したとき、多くの同業者に上手くいくわけがない、費用がかかり
すぎると馬鹿にされたものだ。先日の競りで努力が報われたとはっきりわかった。
将来、豚が減って WAGYU が増えるかもしれない。豚はそれほど手がかからないが、
WAGYU にはすごく時間を要する。なぜならクリスマス用の牛肉を買いに来る客全員に農
場を案内しているからだ。800kg の牛をつぶせば 470kg の肉になるが、客は1kg のミン
チ肉を買うのでさえ、1時間のツアーをしていく。農場の様子、牛を撫でて、マッサージ
の様子、飼料の中身などを全部見て、自分の肉を持って帰る。けれども、繰り返すことに
より、次々と客がやってくることになる。昨年もクリスマスの前3週間はずっと農場を案
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内する毎日であった。
ドイツではホルスタイン種の競りはどこでもある。そこそこの品質の牛をそこそこの価
格で購入するが、現在はたとえばヨーロッパでは有名な German Master Sale のような競
りでは、1頭6~9万ユーロクラスの特別なホルスタインが出る。日本の和牛でも、一般
クラスの和牛の競りと別に特別な和牛の競りというのがあると思うが、先日の競りでの平
均1万 4000 ユーロというのは、かなり良い値が付いたものであると思う。
4.7 終わりに
4.7.1.ドイツにおける WAGYU 生産とホルトマン農場
ドイツにおける WAGYU 生産者は、2006 年の純血種同士の掛け合わせ牛の誕生および
2008 年の「ドイツ WAGYU 協会」設立以降、わずかながらも年々頭数を増やし、2015
年には 80 会員となっている。ドイツ全体での繁殖牛頭数は雄雌合わせて 124 頭、肥育牛
を合わせると5年前の 600 頭から 800 頭に増加した。しかしながら、100 頭規模の大規模
経営は限られており、ドイツ全体では5件ほどしかない。
調査先のホルトマン農場は、初期段階から WAGYU 飼育に携わってきた数少ない大規
模農場であり、雌雄それぞれ 40 頭ずつの計 80 頭以上を常時飼育している。雌牛は全て繁
殖用(胚採取用)として、雄牛は1割の繁殖用(精液採取用)以外は全て去勢し、肥育用
として飼育されている。農場には、雌牛用牛舎(屋内)
、去勢牛用牛舎(屋外)
、肥育用牛
舎(屋外)および1ha の放牧地を備える。ドイツ全土からは、自前の耕作地や農場自体
を持たない WAGYU 生産者やコックなどがホルトマン農場に預託もしており、常時 20 頭
ほどが外部の牛となる。
ホルトマン農場では、
「地元産」と「純血種」を重視し、食にこだわるドイツの消費者
へのアピールポイントとしている。精液および胚は、アメリカから輸入し、農場で種付け
を行った後で受精卵として取り出して他の農家の牛たちに移植し、仔牛の形で農場へ戻し
ている。技術支援は近隣のジェネティック企業 PrismaGen および受精卵移植専門の獣医
が行う。飼料はホルトマン農場の耕作地で生産された穀物および牧草を用いた混合飼料で、
ビールかすのみを近隣の醸造所から買い付ける。受精から肥育までの生体は、経営者のラ
インハルト・ホルトマンおよび PrismaGen のフーベルトゥス・ディールスが担当する。
と畜は、クリスマスおよびイースターのみに行われ、肉としての出荷は合計で年間5頭
ほどになる。今後は徐々に増えると期待しているという。と畜から分割、商品化までは、
経営主(メラニー・ホルトマン氏)が担当する。と畜は WAGYU の牛舎で行い、近隣の
カット場まで運び、2~4週間熟成保管する。出荷直前にカット場で、1年前からの事前
注文による部位を客の要望に合わせて分割し、パッキングまで行う。農場まで来られない
遠方の客には警備付の UPS サービスで送付する。分割から送付までは厳重に管理する。
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4.7.2.ドイツの消費者に向けて
ドイツにおける WAGYU の需要は、動物愛護の観点および消費者の高級志向という近
年の思潮に合致している。しかしながらまだ消費者の間では「マッサージ」や「ビール」
といった「神話」が一人歩きしている。また高い肉ならば「ヒレ」や「サーロイン」とい
た高級志向一辺倒という傾向が強く見られる。
「農業と美食の融合」というモットーを掲げるホルトマン夫妻は、実際には部位を問わな
い WAGYU の持つ特別な味、香りを広めたいと考えている。そのために、生産者向けの
競りを一般消費者に開放する際にさまざまな形態の調理法で WAGYU を提供したり、地
元の精肉店やレストランへ売り込みを行ったり、ドイツでは一般的ではないステーキ・
BBQ・バーガー以外の料理の本を出版するなど、WAGYU の食べ方も合わせて紹介する
活動を行っている。
また、ホルトマンは、WAGYU 業界のさきがけ的な存在として、繁殖用牛の飼育・販売
を広げて、ドイツ全土に WAGYU を普及させたいという希望を持つ。現在ヨーロッパに
入っているオーストラリア産 WAGYU にはない「純血種」
、
「地元産」というポイントを
売りにして、オークションやドイツ WAGYU 協会が主催する各種見本市に出展し、
「ドイ
ツ産 WAGYU」を広報宣伝している。
4.7.3.日本産との競合の可能性
ホルトマン農場が掲げる「地元産」というモットーは、地元の食材が安全で安心だとす
る食肉製品にこだわりを持つ消費者の動向と一致している。このため、WAGYU であろう
となかろうと「日本産」というアピールポイントは、こういった消費者には影響を与えな
いと思われる。
次に、ドイツの法律上、最終肥育期間において、閉鎖空間で飼育することはアニマルウ
ェルフェアに反するため禁止されている。アニマルウェルフェアを気にする消費者にとっ
ては、日本における肥育の実態が歓迎できない消費者層がいる一方で、霜降り度合いを気
にする消費者にとっては、日本産和牛ならではの「世界最高の肉」の格付けをアピールし
て差別化を図ることが可能といえよう。また、
「100%(Fullblood)
」を掲げるホルトマン
氏は数回にわたって日本産和牛の精液や胚を所望していることからも、日本からの生体お
よび精液・胚の輸出が解禁されない限り、
「日本産」はブランド力を持つものと思われる。
しかしながら、現在では「WAGYU 未開拓市場」と言えるドイツにおいては、やはり
「WAGYU」という名が一人歩きしており、そこに「日本産」や「オーストラリア産」の
違いを見極めることのできる目は養われていないように思われる。その上、ドイツ人が重
視する高級部位は希少で高価格であり、まだ特別な機会以外で一般的に食べられるような
段階ではない。同じ「WAGYU」であれば、価格帯の低いものが選択される可能性がある。
流通量が少なく、また価格面でもネット通販の 99%を占めるといわれる米国産、オースト
ラリア産に比べると高価な和牛のマーケティング戦略は必要である。
今後しばらくして、現在、ホルトマンたちが計画するようなドイツ産 WAGYU の普及
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啓もうに伴って小売や飲食店などで一般の消費者がより WAGYU を手に取りやすくなる
環境ができれば、その時点で「最高級ブランド」としての「日本産和牛」アピールを展開
する機会もあるのかもしれない。
(写真)左から工藤(調査者)
、メラニー&ラインハルト・ホルトマン夫妻、ブレントルップ氏、ディ
ールス氏(WWS Germany)
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