2族元素・アルカリ土類金属に関する問題 完全攻略チャート①

2族元素・アルカリ土類金属に関する問題 完全攻略チャート①
2族元素とアルカリ土類金属に関する問題
1
周期表の2族に属する元素には,ベリリウムBe,マグネシウムMg,
カルシウムCa,ストロンチウムSr,バリウムBa,ラジウムRaが
あり,BeとMgを除く元素をアルカリ土類金属とよぶ。
2族の原子は,2個の最外殻電子をもち(図1,表1参照),
2個の電子を放出して2価の陽イオンになりやすい。
問題のタイプは,主にⅠ∼Ⅷまでの8つのタイプがある。
★2族元素・アルカリ土類金属の覚え方のポイント★
2
2
Be
3
Mg
Ca
4
5
Sr
6
Ba
製法
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
アルカリ土類金属
※第7周期は省略
図1Ca原子の電子配置図 表1 2族元素の電子配置
K
① 何といってもCa!Caの単体(チャート①参照),酸化物
(チャート②参照),水酸化物(チャート③参照),炭酸塩
(チャート③参照)その他の化合物(チャート④参照)と
鍾乳洞のメカニズム(チャート④参照)を整理して覚える。
② 2族元素とアルカリ土類金属の相違点をおさえる。
Ⅰ.単体に関する問題タイプ
3
1
Be 2
12Mg 2
L M N O P
2
8 2
Ca 2
2
38Sr
2
56Ba
8 8 2
8 18 8 2
8 18 18 8
4
Ca
20
2
融解塩電解とは,融解塩の電気分解のことで,イオン結合性の化合物を
加熱し,融解液(液体)の状態にして電気分解することである。
2族元素の単体は,アルカリ金属の単体同様に自然界には存在せず,融解塩電解によって得られる。
性質
2族元素は,アルカリ金属と同様に,典型金属元素に属する。
金属元素には,典型金属元素(アルカリ金属,アルカリ土類金属等)と遷移金属元素(Cu,Ag等)の2種類
がある。典型金属元素と遷移金属元素との類似点と相違点を比較して覚える。
★☆★ 類似点 ★☆★
① 電気や熱をよく導く。 ② 展性・延性に富む。 ③金属光沢をもつ。
★☆★ 相違点 ★☆★
① 比較的軟らかい ② 軽い。 ③ 融点が低い。
小
■ 密度
2族元素の単体は,アルカリ金属と同様に周期表の下にある元素ほど,密度は大きくなる。
密度の大きさは, Be <Mg <Ca<Sr<Ba の順となる。
大
■ 融点
2族元素の単体は,アルカリ金属と同様に周期表の下にある元素ほど,融点が低くなる。
Point !
高
融点の高さは, Be>Mg >Ca>Sr>Ba の順となる。
2族元素の単体は,同周期のアルカリ金属と比較すると,核の正電荷が1つ大きく,最外殻の
電子をより強く引きつけるので,原子半径は小さくなる。また,1原子あたりの自由電子の数
も多いので,金属結合の強さは,アルカリ金属より強くなり,密度・融点・硬さ共に大きくなる。
低
Be
Mg
Ca
Sr
Ba
Be
Mg
Ca
Sr
Ba
BeとMg,アルカリ土類金属の単体の水との反応
アルカリ土類金属は,アルカリ金属と同様に,常温で水と反応し,水素を発生して水酸化物になる。
例
カルシウムは水と反応して.水酸化カルシウムになり,水素を発生する。
Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2
BeとMgは,常温の水とは反応しないが,Mgは熱水とは反応する。 マグ(Mg)カップに熱水と覚える!
Mg + 2H2O → Mg(OH)2 + H2
http://fastliver.com/ Manabu Sato(C) 2013
2族元素・アルカリ土類金属に関する問題 完全攻略チャート②
炎色反応
アルカリ土類金属は,アルカリ金属と同様に炎色反応を示す。炎色反応とは,アルカリ金属やアルカリ
土類金属などの塩を炎の中に入れると各金属元素特有の色を呈する反応で,各イオンの色は次の
表のようになる。
アルカリ土類金属
アルカリ金属
Ca
Sr
Ba
Li
Na
K
Cu
橙色
紅色
黄緑色
赤色
黄色
赤紫色
青緑色
こっちも覚える!
Ⅱ.酸化物に関する問題タイプ
2族元素の酸化物は,酸化マグネシウムMgOと酸化カルシウムCaO(白色)の性質を一般的な性質と
一緒におさえる。
アルカリ土類金属の酸化物の性質
① 金属元素の酸化物を塩基性酸化物というので,アルカリ土類金属の酸化物は塩基性酸化物となる。
塩基性酸化物は,水と反応すると水酸化物が生成するので,アルカリ土類金属の酸化物は,水と反応
して水酸化物となり,その水溶液は強い塩基性を示す。※2族元素のMgの水溶液は弱塩基性。
例
酸化カルシウムは,水と反応して水酸化カルシウムになる。このとき,多量の熱を発するため,
発熱剤や乾燥剤として用いられている。これは,アンモニア・ソーダ法の副反応⑤でもある。
CaO + H2O → Ca(OH)2
アンモニアソーダ法
主反応①:NaCl + H2O + NH3 + CO2 → NaHCO3 + NH4Cl
主反応②: 2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2
副反応③:Ca(OH)2 + 2NH4Cl → CaCl2 + 2NH3 + 2H2O
副反応④:CaCO3 → CaO + CO2
副反応⑤:CaO + H2O → Ca(OH)2
全体の反応式:2NaCl + CaCO3 → CaCl2 + Na2CO3
② 塩基性酸化物は,酸と反応して塩と水が生成するので,アルカリ土類金属の酸化物は,水と反応
して塩と水が生成する。
例 酸化カルシウムは,塩酸と反応して塩化カルシウムと水が生成する。
CaO + 2HCl → CaCl2 + H2O
③ アルカリ土類金属の酸化物は,二酸化炭素を吸収し,炭酸塩を生成する。
酸化カルシウムは,二酸化炭素を吸収し,炭酸カルシウムが生成する。
CaO + CO2 → CaCO3
O2
H 2O
金属元素の単体
塩基性酸化物
水酸化物(塩基)
O2
H 2O
非金属元素の単体
酸性酸化物
オキソ酸(酸)
例
酸化カルシウムの製法と反応
酸化カルシウムCaOは生石灰ともよばれ,白色の固体で,発熱剤や乾燥剤として用いられる。
製法は,炭酸カルシウムCaCO3 を焼くことによって得られる。
CaCO3 → CaO + CO2 これは,アンモニア・ソーダ法の副反応④でもある。
反 応
酸化カルシウムにコークスCを混ぜて電気炉で強熱すると,炭化カルシウムCaC2が生成する。
CaO + 3C → CaC2 + CO
酸化マグネシウムの性質
酸化マグネシウムMgOの融点は高く,るつぼや耐火レンガなどに用いられる。
反 応
酸化マグネシウムは,水と反応して水酸化マグネシウムになる。
MgO + H2O → Mg(OH)2
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2族元素・アルカリ土類金属に関する問題 完全攻略チャート③
Ⅲ.水酸化物に関する問題タイプ
2族元素の水酸化物は,水酸化カルシウムCa(OH)2についておさえればよい!
水酸化カルシウムCa(OH)2の性質
① 水酸化カルシウムは,消石灰ともよばれ,その飽和水溶液は石灰水とよばれる。
② 水に少し溶け,その水溶液は強塩基性を示す。
アルカリ金属,アルカリ土類金属の水酸化物は
強塩基性である。
③ 加熱すると分解して,酸化カルシウムになる。
例:NaOH,KOH,Ca(OH)2
Ca(OH)2 → CaO + H2O
④ 二酸化炭素を吸収して,炭酸塩である炭酸カルシウムが白色沈殿する。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
炭酸カルシウムに,さらに二酸化炭素を吸収させると,炭酸カルシウムの沈殿が溶解する。
−
2+
→ Ca(HCO3)2……①
Ca(HCO3)2 は,電離してCa , 2HCO3 となっている!
CaCO3 + H2O + CO2 →
この水溶液を加熱すると,①式の逆反応が起こって,再び,炭酸カルシウムが白色沈殿する。
⑤ 塩素を吸収し,さらし粉を生成する。
漆喰とは,Ca(OH)2を主成分とし海藻から
とったノリや水などを加えて練ったもので,
Ca(OH)2 + Cl2 → CaCl(ClO)・H2O
空気中のCO2を吸収してCaCO3となって
※さらし粉は,酸化剤,漂白剤,殺菌剤として広く用いられている。 固まる性質を利用している。
⑥ 漆喰(しっくい)などの建築材料や酸性土壌の改良剤として用いられている。
Ⅳ.炭酸水素塩・炭酸塩に関する問題タイプ
アルカリ土類金属の炭酸塩は,炭酸カルシウムCaCO3の性質を一般的な性質と一緒におさえる。
炭酸水素塩は,炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2水溶液の熱分解だけおさえればよい。
炭酸カルシウムCaCO3の性質
石灰岩は,大昔の珊瑚や貝の死骸が堆積したもの。
① 炭酸カルシウムCaCO3(白色)は,石灰石,大理石,卵や貝殻の主成分であり,セメントやガラスの原料,
歯磨き粉やチョークなどに利用されている。
② 加熱すると,分解して,酸化カルシウムCaOが生成し,二酸化炭素が発生する。
これは,アンモニア・ソーダ法の副反応④(チャート②参照)でもある。
CaCO3 → CaO + CO2
一般的性質
アルカリ土類金属の炭酸塩を加熱すると,酸化物が生成し,二酸化炭素が発生する。
③ 酸を加えると,塩が生成し,二酸化炭素が発生する。
例
炭酸カルシウムに塩酸を加えると,二酸化炭素が生成する。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
一般的性質
弱酸の遊離反応
アルカリ土類金属の炭酸塩に酸を加えると,塩が生成し,二酸化炭素が発生する。
炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2の性質
炭酸水素カルシウムは水溶液中にのみ存在し,固体として取り出すことはできない。炭酸水素カルシ
ウムの水溶液を加熱すると,分解して炭酸カルシウムCaCO3が生成し,二酸化炭素が発生する。
Ca(HCO3)2 → CaCO3 + H2O + CO2 Point !
比較
Naは,炭酸水素塩しか熱分解しない。
Caは,水酸化物,炭酸塩,炭酸水素塩のすべてが熱分解する。
NaOH → × , Ca(OH)2 → CaO3 + H2O
Na2CO3 → × , CaCO3 → CaO + CO2
2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O, Ca(HCO3)2 → CaCO3 + CO2 + H2O
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2族元素・アルカリ土類金属に関する問題 完全攻略チャート④
Ⅴ.硫酸塩に関する問題タイプ
硫酸カルシウム
硫酸カルシウムCaSO4は,天然には硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2Oとして産出する。
硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2Oは,セッコウとよばれ,約120℃∼140℃まで加熱すると
1
水和水の一部がとれて CaSO4・ H2O となる。これを焼きセッコウという。
2
焼きセッコウに水を加えて練ると体積を増しながら硬化し,再びセッコウにもどる。
水和物のH2Oが水素結合を形成して硫酸イオン
1
3
CaSO4・2H2O → CaSO4・ H2O +
H 2O
などのイオンをつなぎとめるため
2
2
焼きセッコウは,上記の性質から,建築材料や塑像,医療用ギプスなどに用いられる。
→
硫酸バリウム
水酸化バリウム水溶液に希硫酸を加えると,硫酸バリウムBaSO4が白色沈殿する。
Ba(OH)2 + H2SO4 → BaSO4 + 2H2O
硫酸バリウムBaSO4は,安定で,胃液によっても溶解せず,X線をよく遮蔽することから
X線撮影の造影剤として用いられる。※「バリウムを飲む」と言うが,バリウムBaは冷水と反応して,
水素を発生するので飲むと危険である。飲むのはBaではなくてBaSO4!
Ⅵ.その他のカルシウムの化合物に関する問題タイプ
カルシウム化合物を主成分とする鉱物には,石灰石CaCO3,セッコウCaSO4・2H2O,ホタル石CaF2がある。
ホタル石(CaF2)
ホタル石に濃硫酸を加えて加熱すると,硫酸塩を生じ,フッ化水素HFが発生する。
CaF2 + H2SO4 → CaSO4 + 2HF
炭化カルシウム(カルシウムカーバイド)の製法
酸化カルシウムCaOにコークスCを混ぜて電気炉で強熱すると炭化カルシウムCaC2が生成する。
CaO + 3C → CaC2 + CO
アセチレンの製法(炭化カルシウムと水との反応)
炭化カルシウムCaC2は水と反応し,アセチレンC2H2が生成する。
CaC2 + 2H2O → Ca(OH)2 + C2H2
塩化カルシウム
塩化カルシウムCaCl2の固体は中性で吸湿性,潮解性があり,中性の乾燥剤として利用される。
Ⅶ.鍾乳洞に関する問題タイプ
石灰岩CaCO3からなる地層を考えてみる。この石灰岩にCO2が溶け込んだ地下水がしみわたって
くると,次の反応が起こり,CaCO3が溶け,鍾乳洞(洞窟)が作られる。
CaCO3 + H2O + CO2 → Ca(HCO3)2
鍾乳洞が作られる(穴があく)反応
これは固体ではなく,水に溶けたイオンの状態で存在!
石灰岩(CaCO3)
また,鍾乳洞内では,Ca(HCO3)2を含んだ水が,石灰岩の割れ目から流れ
落ち,ゆっくり滴り落ちる際に空気中へ水分が蒸発すると同時にCO2も放出
するので,上式の逆反応が起こり,CaCO3が析出する。
Ca(HCO3)2
鍾乳石
析出したCaCO3のうち,鍾乳洞の天井からつららのように伸びたものを
(CaCO3)
鍾乳石(しょうにゅうせき),地面からたけのこのように伸びたものを
石筍(せきじゅん)という。
Ca(HCO3)2 → CaCO3 + H2O + CO2
石筍(CaCO3)
鍾乳洞
鍾乳石や石筍が作られる反応
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2族元素・アルカリ土類金属に関する問題 完全攻略チャート⑤
Ⅷ.Be,MgとCa,Sr,Ba(アルカリ土類金属)の相違点に関する問題タイプ
Be,MgとCa,Sr,Ba(アルカリ土類金属)の相違点
2族元素のうち,Be,MgとCa,Sr,Ba,Raは,多くの点で性質が異なるため,Ca,Sr,Ba,Raをアルカリ
土類金属元素と呼びBe,Mgと区別している。この相違点がよく出題されるので下記4つを覚える。
※Raについて出題されることは,まずないので省略。
Ca
Sr
Ba
① Ca,Sr,Baは,炎色反応を示すが,Be,Mgは,示さない。
橙色
紅色
黄緑色
② Ca,Sr,Baは,常温の水と反応する(水酸化物になる。)が,
Be,Mgは,反応しない。(Mgは,熱水とは反応する。)
③ Ca,Sr,Baの水酸化物は,水に溶ける(その水溶液は強塩基性)が,
Be,Mgは水に溶けにくい。
④ Ca,Sr,Baの硫酸塩は水に溶けにくいが,Be,Mgは,水によく溶ける。
Be,MgとCa,Sr,Ba(アルカリ土類金属)の化合物の水溶性
水酸化物
硫酸塩
炭酸塩
Be
白色沈殿
溶ける。
溶ける。
Mg
白色沈殿
溶ける。
白色沈殿
Ca
溶ける。
白色沈殿
白色沈殿
Sr
溶ける。
白色沈殿
白色沈殿
Ba
溶ける。
白色沈殿
白色沈殿
まとめ
Point !
比較
熱分解
CO2との反応
水溶性
用途
Point !
比較
NaOH
Ca(OH)2
加熱しても,熱分解はしない。
加熱すると分解する。
二酸化炭素を吸収し,炭酸塩を生成する。
熱分解
CaCO3
加熱すると分解する。
酸との反応
水に溶け,水溶液は強い塩基性を示す。
紙やセッケンなどの製造
Na2CO3
容易に熱分解しない。
酸と反応し,二酸化炭素を発生する。
水溶性 水に溶け,水溶液は強い塩基性を示す。
漆喰などの建築材料や
酸性土壌の改良剤など
用途
ガラスやセッケンなどの製造
水に溶けにくい。
セメント,ガラスの原料,
歯磨き粉やチョークなど。
Caに関する反応イメージ図
Ca
H 2O
CaO
生石灰
カルシウムカーバイド
O2
C
CaC2
H 2O
C 2H 2
加熱 H2O
CaCl(ClO)・H2O
さらし粉
Ca(OH)2
Cl2
消石灰
加熱
CO2
CaCO3
石灰石
H2SO4
CaSO4・2H2O
加熱
セッコウ
H 2O
1
CaSO4・ H2O
2
焼きセッコウ
加熱 H2O,CO2
Ca(HCO3)2
http://fastliver.com/ Manabu Sato(C) 2013