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No.
108
November2001
■
第28回金沢医科大学神経科学セミナー
ハイテクリサーチセンター公開シンポジウム
第12回総合医学研究所秋季セミナー(予告)
■学事
第18回教育懇談会:大学院改組
第15回金沢医大医学教育に関するワークショップ
「金沢医科大学SP研究会」の発足
第29回解剖体合同追悼法要
平成13年度第1学年福祉体験実習
平成13年度父兄会
平成14年度入学試験説明会
新カリキュラムについての学生との懇談会
平成13年度オープンキャンパス
■学生のページ
学生支援センターを開設〈予告〉
第4回夏期語学・医学研修報告
米国バーモント大学医学部での夏期医学研修報告
医学部学生のメディカル・ホームステイ報告
第30回内灘祭・第26回看学祭
学生の表彰
■学術
第31回日本腎臓学会西部学術大会
第6回日本ダウン症フォーラム
皮膚科学学会賞受賞
■病院
医療安全管理の体制確保のための職員研修会
第22回関連病院会議
平成13年度医療監視
■管理・運営
診療報酬不当請求報道についての本学の見解
大学基準協会加盟判定審査受審へ
本学の省資源対策
■随想・報告
ハワイ大学PBLワークショップに参加して
ロンドン大学留学記
■《本学出版局新刊書》「良医を育てる」
■教室紹介
生理学Ⅰ、病理学Ⅰ、循環器内科学
内分泌内科学、整形外科学
□金沢医科大学創立30周年記念事業募金のお願い
□金沢医科大学学術振興基金募金のお願い
2
第28回 金沢医科大学神経科学セミナー
テーマ
脳幹・脊髄の神経学
―多発性硬化症を中心に―
第 28 回金沢医科大学神経科学セミナーが去る8月
に関連していること、そして現在アジア型MSに特異
24 日(金)、25日(土)の2日間、C41 講義室で開催され
な自己抗原の検索を行っていることを詳細に述べら
た。前年度を上回る 105名(学外 24 名、学内 81 名)の
れた。
参加者があり、近年にない盛況のうちに行われた。
北海道大学大学院医学研究科脳科学専攻神経病態
講師陣は現在第一線で多発性硬化症( M u l t i p l e
学講座の田代邦雄教授は「多発性硬化症の脳幹・脊
Sclerosis, MS)および脳幹・脊髄疾患に取り組んでお
髄病変の症候と画像」と題して講演された。まず自
られる先生方で、基礎的なことから臨床的なことま
験 62 例の詳細な検討から、MS の脳幹および脊髄病
で熱のこもった講演が続いた。また外国人講師とし
変の特徴的な症候が呈示された。このような脳幹・
てはMSの動物モデルとして用いられているタイラー
脊髄の症候について自験例の画像を中心に臨床と画
ウイルス(Theiler's virus, TV)研究の第一人者である
像の相関が詳細に示された。
シカゴ大学神経内科学講座のRaymond P. Roos教授を
シカゴ大学神経内科学講座のRaymond P. Roos 教
お招きした。参加者は熱心に聞き入り、活発な質疑
授には「Theiler's Murine Encephalomyelitis Virus-
応答が行われた。
Induced Demyelinating Disease: Relationship with
[第1日]
Multiple Sclerosis」というテーマで講演していただ
九州大学大学院医学研究院附属脳神経病研究施設
いた。T V 感染による脱髄は最も研究が進んでいる
神経内科の吉良潤一教授は「アジア型多発性硬化症
MS の動物モデルである。Roos 教授はTVの歴史、そ
と西洋型多発性硬化症の差異」と題して講演された。
の動物モデルとしての有用性に始まり、TV感染によ
吉良教授はアジア人種のMS にはアジア人種に特有な
る脱髄の特徴、発症メカニズムを自験データをもと
病型と欧米白人のMS と共通する病型の両者が混在し
に詳細に説明された。さらにウイルスの持続感染、
ている可能性を考え、自験例のデータからアジア型
脱髄には最近発見されたウイルス蛋白L* が何らかの
MS という病型を一疾患単位として提唱された。さら
役割を果たしているというup-dateな話題にまで言及
にその違いは異なる疾患感受性HLA クラスII 遺伝子
された。
九州大学大学院医学研究院附属
脳神経病研究施設神経内科
北海道大学大学院医学研究科脳
科学専攻神経病態学
吉良潤一教授
田代邦雄教授
シカゴ大学神経内科学 Raymond P. Roos教授
◎本セミナーの講演は、現在イントラネットを通じてビデオ・オンデ・マンド形式で学内に供用されています。
3
[第2日]
東京医科歯科大学医学部耳鼻咽喉科学講座の小松
本学微生物学講座の朝倉邦彦講師は「動物モデル
崎篤名誉教授は「脳幹病変に伴うめまいの神経耳科
を用いた多発性硬化症の治療法の開発」について講
学的鑑別」と題して講演された。脳幹障害の病巣局
演された。MS の治療法の開発の背景には優れた動物
在診断は MRI を中心とした画像診断により急速に進
歩した。神経耳科学的アプローチとして、眼振や異
モデルの存在がある。まずMSの動物モデルとして自
己免疫性モデル、ウイルス性モデル、中毒性モデル
が概説され、その中で前日にRoos教授から紹介のあ
常眼球運動、さらに聴性脳幹反応(ABR)などがあ
るが、脳幹内での鑑別診断的意義は眼球運動異常の
ったTV 感染による脱髄モデルおよびlysolecithinを用
検索がより有意義である。電気的眼球運動記録
いた脱髄モデルを使った治療法の開発について自験
(EOG)と異常眼球運動のビデオ記録を呈示し、具体
的に脳幹障害および小脳障害の鑑別診断を詳細に説
データとともに詳細に説明された。
静岡県立総合病院脳神経外科 の花北順哉部長は
明された。
「脊椎変性疾患に対する診断と治療の update」と題
最後に、再びシカゴ大学神経内科学講座のRoos 教
して講演された。脊椎変性疾患としては、頚部脊椎
授に「Theiler's Murine Encephalomyelitis Virus-
症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎後縦靭帯骨化症(頚
Induced Neuronal Disease: New Prospective on
Amyotrophic Lateral Sclerosis and Neuro-degen-
椎レベル)
、胸椎後縦靭帯骨化症、胸椎椎間板ヘルニ
ア、胸椎黄色靭帯骨化症(胸椎レベル)
、腰椎椎間板
eration」と題して講演していただいた。前述のTVの
ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症(腰椎
急性株は主に脊髄前角細胞に感染し細胞死を引き起
レベル)などが代表的な病態である。これらの代表
こす。この点に注目し、脊髄前角細胞が特異的に傷
的な脊椎変性疾患の診断および治療について、u p -
害される変性疾患の代表である筋萎縮性側索硬化症
のモデルとしてTV を応用しようとする試みである。
dateなデータを混じえて詳細に説明された。
福井医科大学医学部整形外科学講座の馬場久敏教
ある種の宿主細胞因子(神経細胞特異的RNA 結合蛋
授は「脊髄神経細胞の生存活性と軸索再生」と題し
白)とTV5'非翻訳領域の相互関係により、宿主細胞
て講演された。慢性に圧迫をうけた脊髄(頚部脊髄
の mRNAの転写が影響され、細胞死が引き起こされ
症や後縦靭帯骨化症)では機械的圧迫に加えて血流
るという新しい概念が提唱され、自験データを基に
詳細に説明された。
障害や様々な因子が細胞自体の生存活性を失活させ、
軸索変性も進行し臨床症状が発現すると思われる。
以上、アッという間に過ぎた2日間であった。当セ
動物モデルを使った自験データを基に、圧迫下にあ
ミナー及び各講演者のさらなる発展をお祈りして、
る脊髄そして軸索にいかなる変化が生じるのかを説
閉会となった。
明し、これに関連した脊髄グルコース代謝にも言及
(神経科学セミナー運営委員会 大原義朗記)
され、脊髄神経細胞の生存活性について詳細に説明
された。
本学微生物学
静岡県立総合病院脳神経外科
福井医科大学医学部整形外科学
朝倉邦彦講師
花北順哉部長
馬場久敏教授
東京医科歯科大学医学部耳鼻咽
喉科学 小松崎篤名誉教授
4
ハイテクリサーチセンター 公開シンポジウム
がんと遺伝子疾患
日時:平成13年10月13日(土)13:00∼16:40/場所:金沢医科大学病院C41講義室
プログラム
◇研究成果発表
プロジェクト1 13:10∼13:35
座長:岩淵邦芳
「多倍体化細胞形質転換の制がん医療への応用」
藤川孝三郎(金沢医大総合医学研究所基礎医科学研究部門教授)
プロジェクト2 13:35∼14:00
座長:野島孝之
「遺伝子導入法による細胞癌化の分子機構の解明および癌の遺伝子治への応用」
竹上 勉(金沢医大総合医学研究所熱帯医学研究部門教授)
プロジェクト3 14:00∼14:25
座長:木越俊和
「先天性代謝異常症の診断支援を目的とした全自動GC/MS装置の開発」
久原とみ子(金沢医大総合医学研究所人類遺伝学研究部門生化教授)
◇特別講演
特別講演1 14:25∼15:25
座長:竹上 勉
「神経親和性ウイルスと脳腫瘍」
長嶋 和郎(北海道大学大学院医学研究科分子細胞病理学教授)
特別講演2 15:40∼16:40
座長:西川克三
「転換期にあるがん医療」
豊島久真男(住友病院病院長、理化学研究所遺伝子多型研究センターセンター長、
大阪大学・東京大学名誉教授)
開会挨拶要約: ハイテクリサーチセンター長西川克三
公開シンポジウムの開催にあたって
平成8年に文部省は、私立大学における先端的な研
究基盤を強化する目的で、いくつかの大学を選定し
て、ハイテクリサーチセンターを設置することを決定
しました。本学では、当時の小田島粛夫学長(現理
事長)や故・村上暎二理事長のご尽力によりこれに
応募し、平成9年度にその拠点の一つとして選定さ
れ、総合医学研究所の所員を中心とした3件のプロジ
ェクトが5年計画で発足しました。今年はその最終年
度にあたり、総まとめとしてこのシンポジウムが企画
され、報告書作成も進められています。
本センターでは、初年度に事業費約3億 2,000 万円
投入して施設、装置、設備を基礎研究棟1階に整備
しました。その後、5年間に約 3,000 万円のポストド
クトラルフェローのための人件費と、約7,500万円の
豊島久真男先生に文化勲章
特別講演2を担当いただいた
豊島久真男先生には今年度の文
化勲章を受章され、1 1 月3日の
文化の日に皇居において勲章を
受けられました。
心からお慶び申し上げます。
(金沢医科大学)
特別講演1の 長嶋和郎教授
特別講演2の 豊島久真男名誉教授
◎本シンポジウムの講演は、現在本学ホームページを通じてビデオ・オンデ・マンド形式でインターネット上に供用されています。
5
藤川孝三郎教授(プロジェクト1)
竹上勉教授(プロジェクト2)
研究費が投入されました。これらの経費の約半分は
文部省からの補助金によっています。この研究プロ
ジェクトに参画した研究者は 27名で、1年毎の審査
により研究スタッフの更新をしたので、延べにする
と71 名になります。この他に、参画したポストドク
トラルフェローは5名で、延べにすると12名になりま
す。各プロジェクトはハイテクリサーチセンター運営
委員会の下に管理、運営されてきています。
本公開シンポジウムのタイトルは、研究プロジェ
クト3課題を総括し、さらに今後の展開を見据えて
「がんと遺伝子疾患」と題することになった。
前半のセッションでは、ハイテクリサーチセンター
研究プロジェクトの成果発表が行われた。
プロジェクト1「多倍体化細胞形質転換の制がん医
療への応用」について藤川孝三郎教授、プロジェクト
2「遺伝子導入法による細胞癌化の分子機構の解明お
よび癌の遺伝子治療への応用」について竹上勉教授、
プロジェクト3「先天性代謝異常症の診断支援を目的
とした全自動 GC/MS 装置の開発」
について久原とみ子教授から各々
の5カ年の成果が公表された。いず
れのプロジェクトも学内の多くの研
究者の協力で遂行されたものであ
り、成果にもそれらは反映され、
また学会、専門誌での発表も多数
あることが報告された。
特別講演には、長嶋和郎先生
(北海道大学大学院医学研究科分子
細胞病理学教授)及び豊島久真男
先生(住友病院病院長、東京大
久原とみ子教授(プロジェクト3)
学・大阪大学名誉教授)の両先生をお招きして、ウ
イルスと脳腫瘍及び癌治療の最前線について解説し
ていただいた。
特別講演1は、長嶋和郎先生による「神経親和性
ウイルスと脳腫瘍」についての講演で、進行性多巣
性白質脳症の起因となるJCウイルスの特性及び脳腫
瘍との関連について分子生物学的並びに病理学的デ
ータをまじえ、詳しい説明があった。
豊島久真男先生の特別講演2は、「転換期にあるが
ん医療」について細胞分子レベルから疫学的見地に
立っての話まで含み、さらには最新のがん治療にも触
れられ、参加者に分かりやすい講演であり、タバコを
吸いすぎになっている方々への多少の警告になったか
もしれない。
シンポジウムには182名の参加者があり、活発な質
疑応答が行われ、盛況のうちに幕を閉じた。プロジ
ェクト関係者のみならず、シンポジウム参加者もプ
ラスアルファとなるものを得て、これを将来に生か
すことが期待される。
(実行委員会竹上勉記)
6
<予 告>
第12回 総合医学研究所秋季セミナー
テーマ
― Water breather から Air breather へ ―
本学総合医学研究所の定例秋季セミナーは、毎年学内で
麻酔」で、また「透過性亢進型肺水腫と静水圧上昇型肺水
開催されるが、学外にも広く参加を呼びかけている。今年
腫」においては肺胞における水分調節の破綻とその機序に
のテーマは『肺の水分調節と疾患』である。今日、世界的
ついて発表される。このような肺障害を防御する機能も肺
な大気環境汚染が深刻な問題となっている。この影響を受
は持ち合わせており、
「能動的肺胞水分再吸収機序における
けやすい ecosensitive organ が肺である。一部の生物は進化
の過程で酸素濃度が低い水中から酸素濃度の高い陸上へと
β刺激薬の役割」では肺胞水分クリアランスの薬理学的な
機序について述べられる。
「急性肺損傷 −水分調節の意義
生活の場を移動させた。空気呼吸をする動物がガス交換を
−」においては臨床の場における水分調節の異常としての急
効率的に行う器官が肺である。ヒトはガス交換を行う臓器
性呼吸促迫症候群(ARDS )について解説される。
として、100平方メートルに及ぶ広大なガス交換面積を有す
特別講演においては東邦大学生理学有田秀穂教授より
る肺を発達させた。一個体で一億個にのぼる肺胞構造がそ
れである。この構造を維持するために直径500ミクロンにみ
「呼吸調節系の発達:胎児呼吸、肺呼吸、座禅の呼吸」の題
でヒトにおける呼吸調節系の 進化を胎児から成人までの成
たない小さい肺胞腔をドライにし、かつ虚脱しない安定な
長の過程に反映させて、また自律神経系と交感神経、副交
状態にすることが必要であった。肺胞腔は外界と直に接し、
感神経のそれぞれの関与によって行われる呼吸調節を「座禅
肺毛細血管との間はわずか3ミクロンの薄膜で境されてい
の呼吸」との関連で講演される。
る。喫煙、職業性暴露、細菌感染、大気環境汚染などの過
剰なストレスにより肺胞が障害をうけると水分調節の障害、
ヒトを含めて哺乳類の活動に必要な大量の酸素を摂取す
る器官として発達した肺はecosensitive organであり、肺癌
肺胞虚脱が生じ、ガス交換異常を伴う重篤な機能障害が発
も含めて今後地球規模で進行している大気環境汚染との関
生する。ガス交換を効率良く行うため全血流が肺胞を網状
係で肺を見つめ直すよい機会である。基礎から臨床に亘る
に取り巻く肺毛細血管を循環する。肺は発達した毛細血管
豊富な内容であり、基礎、臨床を問わず多くの医療関係者
網のため抵抗が少なく、肺循環は体循環に比し低圧系であ
る。感染により増加し活性化した好中球は容易に肺毛細血
の方々に有用な講演になることと確信している。是非とも
多くの方々に参加していただきたいと願っている。
管に鬱滞し、肺傷害を増強する。
(総合医学研究所副所長高橋敬治記)
セミナーでは肺の持つ循環系の特殊性について「肺循環と
プログラム
日 時:平成13年11月10日(土)
場 所:金沢医科大学病院4階C41講義室
13:10∼15:00 一般講演 座長 勝田省吾、今西愿、松井忍、蓮村靖
肺循環と麻酔
関 純彦(札幌医科大学医学部麻酔学)
透過性亢進型肺水腫と静水圧上昇型肺水腫
芝本 利重(金沢医科大学医学部生理学Ⅱ教授)
能動的肺胞水分再吸収機序におけるβ刺激薬の役割
佐久間 勉(金沢医科大学医学部呼吸器外科助教授)
急性肺損傷 −水分調節の意義−
栂 博久(金沢医科大学医学部呼吸器内科学助教授)
15:10∼16:20 特別講演 座長 高橋敬治
呼吸調節系の発達:胎児呼吸、肺呼吸、坐禅の呼吸
有田 秀穂(東邦大学医学部生理学第一教授)
7
学 事
第18回教育懇談会
テーマ
大学院改組について
平成 14年6月の文部科学省への申請に向けて大学
院改組準備委員会が発足したのを機会に8月1日(水)
午後5時から C41 講義室において、
「大学院改組」を
テーマに第18 回教育懇談会が竹越襄学長、教職員の
出席のもと開催された。懇談会では改組についての
これまでの経緯、本学大学院の実体・問題点、改組の
趣旨と必要性、申請に向けての今後の準備等が話し
合われた。
新しい大学院組織(案)では、
現在の5専攻(生理系、病理系、
社会医学系、内科系、外科系)を
廃止し、1専攻3専攻部門に再編
し、学問領域の融合と統合を図り、
総合医学的教育研究体制の確立と
高度専門医療人の育成・先端医学
研究の推進を目指している。
近年、科学技術と社会の急激な
発展に伴い医学・医療を取り巻く環
境は大きく変化しており、将来、 竹越襄学長
この変化は一層進むことが予想さ
れる。このことは医学教育研究お
よび医療に大きな影響を与えるも
のと考えられ、21 世紀を迎えた今
日、新しい時代における医学・医療
の在り方を展望し時代の要請に応
えられる大学を目指し改革を進め
ることが求められている。
本学大学院は昭和57年に開設さ
れ、今日まで卒後教育・研究の中
心として役割を果たし、多くの優
れた人材を育成してきた。しかし、
学問体系によって細分化された従
来の医学部講座制を基盤として構成されている現体
制では、急速に進展する科学や社会の要請の変化な
どに対応した医学・医療分野の学際・複合領域等に幅
広く応えることが困難になってきている。今回、本
学における医学教育研究の更なる推進を期すると共
に、急速に変化している医学・医療、社会ニーズに効
果的かつ効率的に応えるため、本学の大学院組織を
抜本的に再編することとなった。
学部教育、大学病院での診療および高等教育研究
拠点である大学院の充実によって本学の大学機能の
強化を図り、本学に求められている社会的使命に応
えようとするものである。
(大学院改組準備委員長 勝田省吾記)
勝田省吾委員長
8
第15 回金沢医科大学医学教育に関するワークショップ
テーマ
コア・カリキュラムの具現化
本年の「医学教育に関するワークショップ」は、8
月7日(水)、8日(木)の両日、能登ロイヤルホテル
において教員 2 7 名が参加して行われた。テーマは
「コア・カリキュラムの具現化」であった。参加教員
は次のように4つのグループに分かれて、それぞれの
サブテーマについて討論し、アイディアをまとめ、
各々のグループ案を呈示した。
グループ1 「教養と基礎の統合」
グループ2 「基礎と臨床の統合」
グループ3 「新カリキュラムにおける基礎と臨床
の統合および本学の独自性」
グループ4 「臨床実習の内容と評価」
第1日目は、竹越襄学長の挨拶に続いて、鈴木孝治
教務部長が最近の医学教育のすさまじいまでの変革
の状況を説明した。すなわちコア・カリキュラム、共
用試験、CCS など、現在文部科学省が強力に押し進
めている案に関して、タイム・スケジュールを含め、
かなり具体的に説明された。次に、大原義朗教務副
部長がこの2日間の討論の1つのきっかけをつくる意
味で、現在までコア・カリキュラム委員会がまとめ
たカリキュラム案を呈示した。その後各部屋に分散
し、この案を基に、グループ討論、途中経過報告、
夕食後のグループ討論を行い、懇親会と続いた。第2
日目は、グループ討論のあと、発表と全体討論を行
った。
1泊2日の熱心な討論の中で、かなり具体的なカリ
キュラム案が提示され、総合討論の場でかなりホッ
トな討論がなされた。これらの成果は報告書として、
後日詳しく公表される予定である。
(教務副部長大原義朗記)
9
「金沢医科大学SP研究会」
の発足
最近、研修医ばかりでなく、卒前医学教育におい
ても医療面接の重要性が強調され、また第4学年修了
時に行われる全国共用試験や医師国家試験にも医療
面接を含む実技試験が導入される予定となっていま
す。本学でも学生の授業や試験などでの SPの参加、
協力は必須のこととなって、その確保と育成が急務
となってきており、それに対応するために「金沢医
科大学SP 研究会」を設立することになりました。SP
については、本学病院の臨床研修ワークショップな
どですでにおなじみのことですが、学内外から広く
人材を集めるべく本会の発足となったわけです。
SP とは Simulated Patient(模擬患者)、または
Standardized Simulated Patient(標準的模擬患者)の
略で、患者さんの心理や立場を理解できるコミュニ
ケーション能力の高い医師を育成するための「医療
面接トレーニング」に必要な、患者役となるのがSP
です。このトレーニングは、SP を使って実際に問診
などの模擬医療面接を行うもので、面接後には医師
役の学生の態度や説明についての評価をSPから述べ
てもらい、良医育成に役立てようというものです。
現在予定されている診療能力の実技試験には、医
学生や研修医の臨床実技を客観的に評価するために、
OSCE( 客 観 的 臨 床 能 力 試 験 Objective Structured
Clinical Examination)がとり入れられています。今ま
では、知識を問うだけのペーパーテストで医師の能
力を評価してきましたが、実際の医療現場での医師
の臨床能力の評価としては満足のいくものではなか
記念講演の河合克子さん
ったわけで、この点で、OSCE は医師としての臨床能
力を正しく評価し、患者さんに満足されかつ正しい
医療の遂行者となる医師を育成するための試験とい
うことができます。このOSCE に具体的な方法として
医療面接が入っております。これにより、学生の実
技の弱点がわかり教育対策の充実、改善に資するこ
とができ、また評価する指導医自身の復習ともなり
ます。現在OSCEは、医学生のみならず、研修医や家
庭医の専門医試験にも応用されており、日本でも、
すでに医師国家試験への導入が予定され、さらに第4
学年修了後の診療参加型臨床実習(CCS, Clinical
Clerkship)に入る前に行われる共用試験にも組み込
まれることになっていることは先に述べたとおりで
す。
発足式は、平成 13 年 10 月 16 日(火)午後3時か
ら、病院別館7階会議室で開催されました。会員6名
と学外から3名の SP 希望者、それに学生を加えて約
30名の参加がありました。
はじめに竹越襄学長より挨拶があり、先輩の背中
を見て教わった患者への態度教育を科学的に行って
いくことは重要であるというお話をいただきました。
次に中新茂会長から、真摯な態度で臨む意気込みを
10
お話しいただきました。
記念講演は、大阪 S P 研究会の河合克子さんから
「S P 活動の経験」と題してご講演いただきました。
「医学生の真剣なまなざし」というパンフレットを用
意して下さり、SP の意義を説いて下さいました。河
合さんが専門家から注意するように言われたのは、
①想像を離れた役はしないこと、②自分の持ってい
る病気と全く重なるのはよくない、③親や親戚が苦
しんだ病気を扱うのはよくない、とのことでした。医
学に強い怨念を持った人は、怨念を学生にぶつけて
しまうことがあるので、SP としては不適切であると
のことです。やはり、学生とある程度の知り合いで
あることがSPには適当であるとのことでした。まず
一緒にやってゆくファシリテーターが良き協力者と
なるとのことのようでした。私達病院関係の職員が
うまく協力することが大切であるというわけです。
最後に、金沢大学医学部SP研究会への参加報告を、
会員の浜江紀美子さんからしていただきました。浜江
さん自身の看護婦としての体験をとおして、医療コミ
ュニケーションの重要性を説いて下さいました。
第13回
本学の建学の精神である良医の育成は、まさにこ
の医療コミュニケーションにあるのではないかと考
える次第です。金沢医科大学の学生のために、SPに
なって下さる会員の方々にこの紙面をお借りして厚
く感謝の意を表したいと存じます。うまく自立でき
るように、今後ともこの会の発展を見守っていきた
いと思います。
(総合診療科神田享勉記)
夏季解剖学研修
夏季解剖学研修は、本学学生と臨床系講座の教室
員を対象に、毎年7月中旬から8月中旬の約1ヶ月間
を利用し開催されている。昭和 63 年度から始まり、
今年で13回目を迎える。
学生の解剖学研修は、解剖学実習を終えた3∼6学
年の希望学生を対象に、臨床科目で学んだ知識をよ
り確実なものにするため、解剖学教室員の指導のも
とに自学自習方式で人体解剖研修を行っている。こ
の研修では多くの人体標本や模型も作られ、本人の
勉強はもとより、一般学生やコメディカル関係者の
教育にも広く活用されている。
また、臨床系教室員に対する研修には、午後8時ま
で解剖学実習室を解放しており、解剖学的知識の確
認、手術法のシミュレーションなどが行われている。
現在までに整形外科、脳神経外科、形成外科、胸部
心臓血管外科、小児外科、耳鼻咽喉科、リハビリテ
ーション科、救命救急科、放射線科、麻酔科、口腔
研修期間中に作られた標本の一部
科学科の参加があった。
本年度は、7月9日∼8月 11日に開催され、3学年
12名、4学年5名、5学年3名の学生と、臨床系5講座
を含め総数59名が参加した。特に各科の先生方から
参加学生に対し臨床的立場でのご助言をいただくな
ど、大変有意義な解剖学研修になっている。
(解剖学Ⅰ 東伸明記)
11
解剖学教室 墓参行事
第8回目の解剖学教室墓参行事が、盂蘭盆会の時
期にあわせ、平成 13 年8月 10 日(金)に行われた。
河北潟と北陸の山並みを見渡せる大学構内の東南端、
第29回
解剖体合同追悼法要
平成13年 10月20 日(土)午後2時から金沢東別院
本堂において、御遺族をはじめとして、天寿会会員、
本学教職員、学生等約 400名が参列して第 29 回解剖
体合同追悼法要が厳かに執り行われた。
この法要は、平成12年9月1日から平成 13年8月 31
日までの1年間に、 系統解剖のため御遺体を本学に
献体された方々と病院で病理解剖を受けられた方々
テニスコート横の開けた場所に、霊峰富士をイメー
ジした黒御影造りの納骨堂がある。最初は、昭和52
年に病院構内に接する林の中にこじんまりした納骨
堂が建立されたが、手狭なため昭和63年に今の形に
変わり、その後、内灘大橋建設工事に伴って平成10
年4月に現在の場所に移転された。
納骨堂には、毎年4月に学長をはじめ、副学長、教
務部長、解剖学教授及び教室員、それに解剖学実習
を終えた新3学年生が出席して納骨式が行われ、現
在、献体によって解剖学実習のために成願された
方々の606柱の御遺骨が納められている。
無償の崇高な篤志に支えられて、2300 有余に近い
有能な医師が育ったのを感謝して、今回も天寿会役
員や金沢市近辺の会員と教室員、事務職員とで納骨
堂を掃除し、御霊前に参拝してしばしの懇談と親睦
の時間をもつことができた。来年は、この墓参行事
の実施を広くPRし、学生や他の職員の参加をも期待
したい。
(解剖学Ⅰ 平井圭一記)
合計141 名の崇高な篤志に感謝し、御冥福をお祈りす
るために開催されたもので、毎年秋に開催される。
はじめに竹越襄学長から「医師の育成と医学の進
歩、発展のため御遺体を捧げ られた御本人並びに御
遺族の方々の尊い志に対し、深甚なる敬意と感謝の
念を捧 げたい」との追悼のことばがあり、続いて小
田島粛夫理事長から御礼の挨拶が述 べられた。
引き続き、141柱の御尊名が朗読され、読経の流れ
る中、参列者一人一人が 焼香し、故人の御冥福をお
祈りして法要を終了した。
(教学課田川俊範記)
12
平成13年度
第1学年 福祉体験実習
Early Clinical Exposure(早期臨床体験)
良医として必要なことは、人に対する限りない愛
情でありましょう。患者さんの訴える悩みに耳を傾
け、暖かい心を持って接することが大切です。その
ためには、人と人との対応が重要になってきます。
人と人との対応にはコミュニケーションが必要です。
コミュニケーションには言語的と非言語的の2種類が
あります。これら2種類のコミュニケーションを上手
に使って患者さんと心のこもった対応ができねばな
りません。言葉と態度による人と人とのコミュニケ
ーションの形成を体験学習を介して行うことを目的
に福祉体験実習は実施されています。
実習は7月 16日(月)から7月19 日(木)と8月20
日(月)から8月 24 日(金)の2回に分け、1学年全
員が実習に加わった。実習にご協力いただいたのは、
国立療養所医王病院(重症心身障害児、筋ジス患者
施設)、石川療育センター(重症心身障害児)、小松
療育園(肢体不自由児)および陽光園(身体障害者)
の県内4施設であります。
実習に先立ち、7月 13 日(金)に鈴木孝治教務部
長、川原弘消化器内科学助教授、引率していただく
一般教育の諸先生の参加のもと、福祉体験実習説明
会が開催され、実習の意義、実施要項、各施設の概
要、入所者に対する接し方、感染と予防についての
説明がなされ、さらに実習グループ毎の綿密な打ち
合わせも行われました。
この実習において重要なことは、障害を持つ入所
者の方々とのふれあいであります。施設の業務の主
旨や社会的な役割を理解し、また、社会福祉学の講
義で学んだ知識を活かしながら、実際を知り社会福
祉の問題点の一端に気付くことです。患者さんの立
場に立って考え、それを実行すること。相手が何を
欲しているのかを知るには体験を介した試行錯誤に
よる他に術はありません。また、患者さんの言いな
りになることは、訓練にとって迷惑になることも考
えねばなりません。TPOによっては“小さな親切大
きな迷惑”になることを実感できたのも本実習の成
果であります。
実習終了後に各施設の指導者からいただいたコメ
ントには“言葉が不明瞭な入所者の話を根気強く聞
いて、言葉を理解されておられました。また、目線
にあわされていました”
、
“積極的に楽しんで実習に
臨んでおられとてもよかった。ドクターになられ、障
害を持った方に接した時、センターのことを思い出
してもらえれば嬉しいです”といったポジティブな評
価もあれば“実習生と話する中で今回の実習への目
的、思い等がわかりましたが、それが実際に行動、
態度に表現されていなかったように思います”とい
うネガティブな評価もありました。
医学の道に一歩踏み出した入学直後の気持ちを呼
び覚まし、今後の大学生活に役立てて欲しいと願っ
ています。
終わりに、担当していただいた教員の皆様および
実習を快くお引き受けいただいた施設の皆様にお礼
申し上げます。
(第1学年主任田村暢煕記)
13
平成13年度
父兄会
本年度の父兄会は、平成 13 年7月 27 日(土)、29
日(日)の両日、別記の日程で大学内で行われた。
父兄会出席者数は表の如くで、昨年度と比較し増
加している。まず6学年説明会は教務部長から今年の
第94回国家試験の結果について説明があり、続いて
6学年主任、副主任から来年の国家試験対策について
説明があった。今年の国試は合格者 116 名、合格率
82.9%、新卒合格率 90.1%、既卒合格率 72.9%と過去
最高の成績であったが、全国平均ならびに順位からし
て決して安心できないこと、来年はさらに問題が難し
くなる可能性があることなど厳しい説明があった。
全体説明会は、学長、副学長、教務部長、同副部
長、学生部長、同副部長、各学年主任、同副主任、
指導教員が出席し、本学の教育方針、国試の問題、
新しいカリキュラムの概要、また学生部の取り組み
などについて説明があった。
懇親会での教員との交歓
懇親会は、例年ホテルで行われていたが、本年は
学生達が普段食事をしている場を見ていただく意味
ない理由、留年生対策の詳細、教育施設の見学、指
も含めて学生食堂で行われた。学長ほか関係者と御
導教員のより多くの参加、質疑応答時間の増加、不
父兄ならびに学生が学年ごとのテーブルに別れて和
参加者への資料配付など。これらの貴重なご意見を
やかに懇談が行われた。
考慮して今後さらに充実した父兄会にしていきたい
今回はじめて、父兄会についてのアンケート調査
と考えている。
を行ってみた。1学年から6学年の御父兄220 名の内、
今回御協力いただいた関係各位に深謝します。
回答をいただいた122 名(55.5%)の結果の概略は次
(教務部副部長 友田幸一記)
のようであった。
〈日程〉
まず全体説明会について63.9%の方が大学の方針・
7月28日(日)午後 6学年説明会
教育の現状が理解できたと回答している。6学年説明
全体説明会
会について96.8%の方が国試対策の方針・現状が理解
懇親会
できたと回答している。懇親会については参加して
7月28日(土)終日 個別面談会
良かったと回答した方は51.6%であった。また多くの
7月29日(日)終日 個別面談会
方が大学内で行われたのが良かっ
たとしている。個別面談会につい
表 平成13年度父兄会出席者数(平成12年度)
ては面談方法、時間、教員の対応
などそれぞれ90%以上の方が現状
区 分
1年
2年
3年
4年
5年
6年
合計(名)
で良いと回答している。最後にお
個別面談会 39 (28) 40 (39) 34 (28) 32 (27) 32 (18) 50 (46) 227 (186)
寄せいただいた貴重な御意見の中
6学年説明会
32 (33)
32 (33)
から重要な点をまとめると次のよ
全体説明会 25 (18) 22 (9) 8 (12) 8 (15) 13 (11) 32 (33) 108 (98)
うである。各学年ごとの教育の流
懇親会
21 (17) 19 (8)
9 (8)
8 (10) 6 (10) 19 (18)
82 (71)
れを解りやすくする、卒後定着し
14
高校の進路指導教諭等を対象として開催された。
出席者は受験生 69 名、父母等 82 名、教員 13 名の延
全国8ヶ所で開催
べ164名(前年157名)であった。
説明会では入試実施委員から「本学の概要」、
「教育方針」、「学生生活」、「平成 1 4 年度入試要項」
平成 1 4 年度金沢医科大学入学試験の説明会が例
等について詳細な説明が行われた。説明後の質疑
年のように全国8ヶ所(金沢、札幌、岡山、仙台、 応答では、平成 1 3 年度入試から実施された特別推
福岡、東京、名古屋、大阪)において、平成 13 年7
薦入試(AO 入試)に質問が集中し、参加者の関心
月 3 0 日から8月8日にわたって受験生やその家族、 の高さが窺われた。
参加した人たちからは「充実した教
育内容と設備、またすばらしい自然環
境に恵まれている貴学に是非入学出来
るようがんばります」、「貴学の卒業生
です。現在、実家で地域医療に携わっ
てます。子供が受験生となり、私の母
校へ入学させたく、説明会に参加しま
した」などの感想とともに、
「総論より、
各種の受験内容の説明や、入試結果分
析の説明などをもっと多くしてもらい
たかった」や「在学生の生活などを教
えてほしかった」などの意見も寄せら
れていた。 (入試センター 森茂樹記)
平成14年度
入学試験説明会
附属看護専門学校
高校生の一日体験入学
将来、看護婦(士)として看護業務に就くこと
を希望する石川県内の高校生を対象として、看護
専門学校の実際を見て、看護の仕事の素晴らしさ
を体験してもらい適切な進学指導に役立てるとい
う目的のもと、8月2日(木)、9日(木)の2回、
本学附属看護専門学校の一日体験入学を実施し、
合計122名の高校生が参加した。
午前9時 30 分、松原純一学校長の挨拶に始まり、
ビデオによる本校の紹介、本校教員による患者の
介助方法についての講義と実演が行われた。昼に
は本校在学生との昼食会がもたれ、先輩との歓談
を行った。午後は、本学病院の病棟で看護の実際
を体験実習し、看護部をはじめ各階の婦長や看護
婦、臨床指導者の懇切丁寧な協力と指導を得て、
無事に実習を終えることができた。
実習終了後学校に戻り、「看護学校一日体験入学
に参加して」のテーマで参加高校生全員が感想文
を書いて午後4時頃に終了した。
本校では平成3年から、看護の仕事を理解し、看
護職を希望する優秀な高校生の入学を期待して、
多数の高校生に参加してもらえるような「一日体
験入学」を行ってきている。
(入試センター 森茂樹記)
15
新カリキュラム についての
学生との懇談会
新カリキュラムの基本理念・概要の説明と現行カ
リキュラムの問題点や新カリキュラム案に対する意
見などニーズアセスメントを目的とした学生との懇
談会が、平成 13 年9月 18 日、28 日の2回、講義終了
後C41講義室で開催された。
平成14 年度入学生を対象とした新カリキュラムの
作成が現在急ピッチで行われている。IT技術や生命
科学の飛躍的な進歩のため、医学・医療を取り巻く
環境は激変している。これらに対応すべく文部科学
省、厚生労働省から提唱された「医学教育モデル・コ
ア・カリキュラム」、
「共用試験」、「医師国家試験出
題基準の変更」が本学カリキュラム改革の外圧として
働いているのは事実であるが、カリキュラム改革に
おいて最も重要なものはその実行者である学生の声
であろう。
9月 18日には1∼6年までの学生が参加してカリキ
ュラム全体に関して、28日には4、5年生が中心にな
り臨床実習カリキュラムに関して熱い討論が行われ
た。カリキュラム委員だけでなく、一般教養、基礎、
臨床系の教員も多数参加し、学生の辛辣な意見に耳
を傾けた。一般教養課程の意義、テュートリアルの
テーマ、基礎・臨床を通じた教育内容の統合性、臨
床実習内容の各講座による格差、評価法の問題など
本質をついた多くの意見を聞くことが出来た。この
ような懇談会は今後も予定されており、また、カリ
キュラム委員会への学生代表委員の参加も考慮され
ている。
今回の懇談会が、これまで受動的であった学生た
ちが、新カリキュラムを自分たちそして後輩たちが
良医になるための航路図と捕らえ、如何に学ぶかを
自ら考え、発信し、教員と力をあわせて実行してい
く第一歩になることを期待したい。
(コア・カリキュラム委員・病理学Ⅱ 上田善道記)
16
平成13年度金沢医科大学
オープンキャンパス
進学説明会
平成13 年度金沢医科大学オープンキャンパスは、8
月 26 日(日)と9月 24 日(月)の2回、本学キャン
パスを会場に開催された。
第1回目の8月 26日には107 名(受験生本人57 名、
父母50 名)
、第2回目の9月24 日には92名(受験生本
人 4 8 名、父母 4 4 名)の合わせて 1 9 9 名(昨年度は
163名)の参加があった。
オープンキャンパスは朝10 時に開会した。鈴木教
務部長から本学の教育の特色について説明が行われ
た後、参加者は約20 名ずつのグループに分かれ案内
役の在学生が付き添ってキャンパスツアーを行った。
今年度も麻酔学と解剖学Ⅱ講座の協力による、
「救急
蘇生法」の実習体験や「解剖学」の模擬講義が行わ
本学のオープンキャンパスは受験生の視線で大学
れ、専門的な事柄が平明に解説され参加者はその雰
を見てもらうことに重点をおいており、参加者の案
囲気に融けこんでいた。
内や説明などを小グループに分けて在学生が案内役
昼は学生食堂で参加者と在学生、教職員が一堂に
となる形で実施している。
会し、食事を取りながら和やかな雰囲気のなかで歓
毎回、約30 名の在学生の協力を得て実施されてお
談が行われた。この間も、在学生が歓談に加わって
り、参加者アンケートでも、
「積極的に話しかけてく
受験勉強のことや学生生活のことなど、
「大学案内」 れ、入試情報から部活、学校周辺情報など盛りだく
の冊子では分からない在学生の立場からの生の声が
さん聞かせてもらえて良かった」
「一般入試だけでな
人気を博していた。
くAO や推薦・編入で入学した学生もガイドにいて、
午後は多目的ホールでの入試説明会、個別入試相
少数派の自分としては大変心強かった」(受験生)、
談、マーサ大学との交換留学の写真展示や在学生の 「とても感じの良い学生たちで、話をよく聞いてくれ
教科書展示、また電子カルテ見学、臨床棟屋上から
て有意義だった」、「学生、教職員が仲よくアットホ
の大学周辺環境の見学も行われた。
ームな印象をうけた」
(父母)など受験生や父母から
短い時間ではあったが参加者は思い思いに本学を
好評を得た。
(入試センター村井幸美記)
理解し、15時には全てのプログラムを終了した。
救急蘇生法の実習体験
17
オープンキャンパスに協力した在学生たちのコメント
きたがわ
かつひで
北川 勝英(第1学年)
私は今回、お手伝いというかた
ちで初めて金沢医科大学オープン
キャンパスに参加しました。当日
は朝早くからとても多くの方々が
全国各地から出席されていて驚き
ました。今日、受験の偏差値重
視は見直されつつも、今だ偏差値
による横割りが大学を選ぶ基準として根強く残っており、
また受験生の一番の関心も大学にあるのではなく、受験に
あるということも事実であると思います。実際に受験生や
父兄の方から受ける質問も入試の内容や対策についてのも
のがとても多かったように思います。そのほか学生生活や
大学のカリキュラムについて聞かれる方も何人かおられま
した。とにかく、あれだけ多くの受験生が本学に興味を持
たれ、受験勉強で忙しい時間をさいて金沢まで来て下さっ
たことは、オープンキャンパスを手伝った我々としてはと
てもうれしいことでした。ぜひ、今回のオープンキャンパ
ス参加者の中から熱意のある医科大生が生まれてほしいと
思います。
うぶかた
まさよ
生方 聖代(第4学年)
私と金沢医科大学との出会い
は5年前の大学説明会及びオープ
ンキャンパスに参加したことから
始まります。入学後はオープンキ
ャンパスのお手伝いを毎年させて
いただいています。この中で特に
大きな変化が2つ挙げられます。
まず1つ目は受験生と共にその家族3∼4人が参加されてい
ることです。これは本学の開放されている雰囲気が家族で
参加しやすい要因だと考えられます。また2つ目は推薦・
AO入試を目指される受験生が年々増加していることです。
これは本学を第1志望としている人々が増えているというこ
とでとても良いことだと思います。私もオープンキャンパ
スに参加し、金沢医科大学を第1志望としました。教育熱心
な先生方、温かい先輩達、海や山に囲まれた大きな自然に
直接、接することができるので、参加することに大きな意
味と魅力があると思います。憧れていた金沢医科大学に入
学でき、今ではオープンキャンパスのお手伝いをさせてい
ただき、とても幸せですし、心から感謝しています。1人で
も多くの受験生とその家族に楽しんでもらえるよう、私も
頑張っていきたいと思います。
の
だ
かおり
野田 佳織(第5学年)
本学入学以来、5年間オープン
キャンパスのお手伝いをさせてい
ただきました。
参加の都度、受験生の方々か
ら大学内外の環境、住居の事、
生活面の事、等々の質問を受け
ました。なんとか本学へ入りたいという強い思いがひしひ
しと伝わってくる受験生や保護者の方々に接して、私が受
験生の時、オープンキャンパスに参加した時の親切な先輩
の事を思い出し、緊張をほぐし、納得されるまで説明する
よう心掛けました。学生生活の中でこのような経験が出来
ましたことを大変嬉しく思っております。
19
学生のページ
ハワイ大学での第4回夏期語学・医学研修報告
い そ は た
あをい
まつえ
五十畑 葵(第2学年)
筆者は前列左から2人目
金沢医科大学にハワイ大学での語学・医学研修があると
いうことが私が金沢医大を受験した一つの理由でもありま
した。私は家族と何度もハワイに旅行していたので、そん
な大好きなハワイで医学生となって勉強ができるのを大変
楽しみにしていました。
3週間のハワイでの研修を終えて、私が一番印象に残った
のはハワイ大学の医学生がスチューデントドクターとして
回診するのに一緒について回らせていただいたことです。彼
らは午前4時から病棟を訪れて、バイタルサインを取り、ま
るでドクターのような様子で患者さんに優しく接していま
した。彼らは病院での仕事に従事し、合間の時間に勉強を
し、学生のうちから寝る間もないような生活を送っていま
した。そんな姿を見て、私達日本人の医学生が持つ意識と
は全然違うということに驚き、とても強い刺激を受けまし
た。アメリカと日本の医学教育制度には確かに違いはある
けれど、同じ医師を志す者として、「こんな人達もいるん
だ!」と思い、自分の意志を再確認することができました。
英語を習得することは、私の医師像に近づくために、必
要なことの一つです。日常ほとんど英語を使わない私達に
とって流暢なまでに習得することは困難であると思います
が、ハワイでの3週間は英語に触れる良い機会であったと思
うし、これからの自分への良い動機付けになりました。ハ
ワイで感じたこと、思ったことを大切に、これからの自分
に役立てていきたいと思います。
期間:2001年7月30日∼8月18日
ゆ
き
こ
松江 悠紀子(第4学年)
7月 30日から8月 18 日までの約3週間、ハワイでの語学・
医学研修に参加した。
実は、海外旅行も寮生活も初めて、一緒に行くメンバーも
あまり面識がない人ばかりで出発前はとても不安だった。
ハワイでの最初の一週間はとにかく新しい環境に慣れるの
に必死だった。まずは気候。最初はひどい口渇に襲われて
自動販売機に飲み物を求めることの繰り返しだったが、水
を常に携帯することを覚え、むしろその乾いた気候が快適
だと感じるまでになっていた。また、寮の共用のシャワー
やトイレに馴染むのには随分と時間を要した。また、少し
でも自分が快適な寮生活をおくれるように色々工夫をした。
いかに普段から不自由ない生活をしていたのかを自覚させ
られた一方、失敗を繰り返しながらも友人たちに相談しな
がら、限られたものを使って生活することの面白さを知る
ことが出来た。
まもなく、同じプログラムに参加していた他の大学の人
たちとも仲良くなるようになった。そして、日本人の女の
子とルームメイトの韓国人の女の子が私に興味を持ってく
れたのをきっかけに、私は韓国の人たちとも仲良くなった。
筆者は前列右
20
学生のページ
前列左から東野茉莉さん、五十畑葵さん、2人おいて、野村武雅さん
後列左から大瀧祥子教授、池上由利子さん、G. Greene先生、三浦永美子さん、松江悠紀子さん、
荒井俊夫さん、Ms.Loryn Gum先生
たぶん滞在期間の後半の殆どは彼女らとの交流で費やされ
たと思う。こんなに楽しくて充実した時間が今までにあっ
ただろうか。英語の能力も彼女らとの会話で少しずつでは
あったが上達していたのが自覚できた。自分の言いたいこ
とを相手に伝えたいという欲求が英語を学ぶ上での何より
の原動力だった。
最後の1週間は第二の目的であった医学研修が主だった。
主に病院の見学、医学部の人たちとのPBL 体験、ハワイ大
学の医学カリキュラムについてのセッション、先生方の講
演会などがあった。Kuakini Medical Center ではまずDr.Miki
のお話を聞いた。主に内容はアメリカの保険制度について
や先生個人のお話だったが、本当に面白い話だった。そし
て院内の見学では本当にここが病院なのかと疑うほどきれ
いな病室を見せられた。しかし、この驚きはQueen's Medical
Centerへ行った時にさらに大きいのものとなる。QMCでは
高級ホテル並の病室を持っていたからだ。しかし、この国
では日本のように何週間、何ヶ月も入院することはないと
も聞いた。保険制度の違いで、とても長期入院などできな
いシステムになっている。近い将来、日本もある程度アメ
リカの制度に近づいていくのかもしれないが、アメリカで
も保険に関してさまざまな問題が起きている以上、日本は
それも踏まえてどう変わっていくべきなのか、いろいろ考
えさせられた研修だった。
3週間の研修は本当にあっという間だった。たった3週間
だったが、こんなに得るものが多いとは思ってもみなかっ
た。海外という違う環境で過ごしただけでなく、この短い
間にいろいろあってずい分多くの経験をしたし、たくさん
の友人もできた。友人の数だけ自分の視野も広がった。嫌
な思いをしたことも今では良い思い出に変わり、嫌な思い
をしたからこそお互いの理解が深められたこともあった。
皆さん、お疲れ様。そしてありがとう。この研修において、
お世話になった全ての皆様へ感謝の気持ちをこめて。
18
学生のページ
学生支援センターを開設します
平成14年度から
平成14 年度から学生支援センターを開設する運び
となりました。
開設の目的は、めざましい医学教育改革が進行し
ている中でこの変化に対応できない学生、医学生と
してのモチベーションの不足に悩む学生、対人関係
に悩む学生など、様々な問題を抱える学生を従来以
上に積極的に支援し、本学に入学した学生が誰ひと
りドロップアウトすることなく学業を成就させるこ
とにあります。具体的には、従来開設されていた学
生保健室、各相談室機能の強化・連携をはかりセン
ター化したものです。今春より、教務部、学生部が
協議を行ってその骨子が完成しています。支援セン
ターの概要は次のとおりです。
学生支援センターは「学生保健室」、
「課外活動支
援室」、「生活支援室」、「学業支援室」と事務部門で
組織されます。業務統括責任者としてセンター長を
置き、各室には業務を統括する室長を置きます。各
室の業務内容は以下のとおりです。
〈学生保健室〉
学生の健康保持、増進に関する業務に加え、新た
に精神面に関する相談・支援を行います。
〈課外活動支援室〉
従来の課外活動相談室を支援室と改称します。課
外活動全般に関する支援を行います。
〈生活支援室〉
従来の学生相談室と女子学生相談室を統合して生
活支援室と改称します。セクハラ防止、学生生活全
般に関する相談・支援、ストーカー対策、進路相談
などを指導教員、学年主任と連携を保ち支援体制を
確立します。
〈学業支援室〉
新たに開設しました。学年主任で構成され、生活支
援室と連携して勉学面からの学生の支援、指導教員へ
の支援にあたります。
〈事務部門〉
事務職のアドバイザーを設置して、各支援室の支
援受付業務を行います。
支援センターの開設には、学生の支援にあたるス
タッフとセンター開設に必要なスペースの確保が必
須です。関係各位のご支援、ご協力をお願いします。
(学生部長川上重彦記)
21
学生のページ
米国バーモント大学医学部での夏期医学研修報告
新鮮で貴重な夏休みの体験
おおの
米国の医学生の違いを見た
ふみよ
おおや
ひさはる
大野 文誉(4学年)
大屋 久晴(5学年)
私は今年の夏休みに病理の石川義麿先生と木田正俊先生
のご厚意、そして上田忠司先生のお力添えのもとに5学年生
の先輩方と一緒にアメリカ、バーモント州立大学医学部へ
行ってきました。主なプログラムは大学病院の見学ですが、
様々な面での日本とアメリカの違いに毎日がとても新鮮で
した。なかでも私が驚いたのは、外科の外来を見学させて
頂いた時に見た医師と患者の関係です。医師は日本人の私
から見れば演出過剰とも思えるほどのパフォーマンスで患
者に説明をし、患者はこれでもかというほどの自己主張を
していました。医師が患者より立場が上である関係は捨て
去られ、医療はサービス業であるというアメリカの臨床現
場を体感できたことは非常に為になったと思います。国民
性や医療制度の違い等の影響もあるのでしょうが、医師と
患者が対等な立場でお互いに話し合う光景は確かな信頼関
係が結ばれているように感じられました。また、ささやか
な雑談や笑いによって医師と患者の雰囲気をとても和やか
なものに変えられるのだということを知りました。
今回の体験は医療現場に限らず沢山の人々との触れ合い
がありコミュニケーションの大切さを改めて感じるもので
した。人と人との触れ合いは面白く、いつでも何かを与え
てくれます。これからも機会があればこのようなプログラ
ムに参加して沢山の人と出会い、その触れ合いを大切にし
たいと思います。
今回、7月 19 日から2週間、Fletcher Allen Health Care
(The University of Vermontの付属病院)で研修を受けて
きました。研修のことを思い起こすと、現在の自分を見つ
め直すきっかけになった良い経験が出来たと考えています。
英語も医学も決して修得できていない(むしろ、どちらも全
くわかっていない)僕がアメリカに渡って、日本の医学生と
してプログラムを受けたわけですが、米国の医療・医師の実
際を目の当たりにして“今の自分”に“?”を付けざるを
えなくなったのです。
まず、日本人としての自分。よく、外国の人に日本人の
印象を聞くとshy という言葉を使うように思います。日本の
国民が本当に恥ずかしがり屋さんの集まった民族なのか、
それとも単に日本人の英語能力が乏しいだけなのか僕には
わかりません(少なくとも自分は後者ですが)
。しかし 決
して日本人すべてが“沈黙は金”と考えているわけではな
いと思いますし、intelligence を持った日本人もたくさんい
ます。こういったshy という言葉に形容される日本人と米国
人の違いには、一つの原因としてcommunication abilityの違
いがあるのではないでしょうか。今回の研修で最も驚いた
ことは、米国医師の患者に対する接し方です。医療行為に
際し、患者との信頼関係は不可欠です。それ故、医師には
どんな価値観を持つ患者とも十分なcommunication をとれる
能力が求められます。米国医師は「患者さんの気持ちに共感
し、患者主体の医療を提供していきたい」という姿勢をより
明確にし、「患者の人生をサポートする医療を行っていくス
木田正俊先生を囲んで。左から大屋、大野、木田先生、玉城、
八幡、岩田
木田先生と一緒に病理標本を供覧
22
学生のページ
タンス」を言葉に表して患者に伝えていると感じました。
次に医学生としての自分。今回の研修は5学年生のBSL
を3分の1済ませた後の夏休みを利用して行きました。1学
期のBSLでは決してサボろうという気持ちはなく、自分な
りに一生懸命やってきたつもりです。しかし、病院での米
国医学生を垣間見て、また向こうの学生と話をする機会を
与えてもらったことでそのactivity の高さに自分が恥ずかし
くなりました。アメリカの医学生は医療チームの中で役割
が明確にされており、診断・治療の医師業務の中で 患者
に点滴を打つ、お産で子供を取り上げる等(勿論、レジデ
ントが隣についていますが)
、日本の医学生がbedside で行っ
ていることより、より医師の業務そのものに近いことを行
っていました。確かに米国ではClinical Clerkshipを受けるた
めに国家試験であるstep 1を受験し合格しなければならない
ので、社会的に医学生に許される医療行為の範囲は、現在
国家試験なしで病院に出られる日本のものと違って当然か
もしれません。しかし、米国医学生は自分が医療チームの
一員で常に何をしなければならないのかを考え、将来自分
の目指す医師像に沿って貪欲に経験を吸収しようとしてい
る姿勢があるように感じるのです。
最後に金沢医科大生としての自分。苦労して入ったはず
(?)の医学部。しかし入学後は“金沢医科大生としての自
分”をなんとなく受け入れられない自分がいました。渡米
前までの学生生活では、自分の頭が良くないことや単に怠
け者であることを棚に上げて、環境に対し不満をぶつけて
いたように思います。今それが完全になくなったと言えば
嘘になるのかもしれませんが、少なくとも渡米して思うこ
とは、整った環境の中でも今までの自分には自主性が欠け
ていたということです。せっかくCCSで学んでいるのだか
ら「患者さんともっと話して、communicationを取れる能力
を得たい。自分の目指す医師像を明確にし、自ら進んで学
ぼうという意思を養っていかなければならない」と思うので
す。
今回の研修が自分の今後を考える上で貴重な経験になっ
バーモント大学のキャンパス
たことは言うまでもありません。この機会を与えてくださ
った恩師である石川先生、上田先生、そして米国での受け
入れを快く承諾してくださった木田先生には感謝しても感
謝し切れません。有り難うございました。また、長期に渡
る異国での生活を支えてくれたのは何よりも共に生活を送
った医科大生の仲間です。本当に有り難う。
もし、またこのような留学の機会があるとするならば、後
輩の皆さんには進んで参加してもらいたいです。井の中の蛙
ではなく、外に出るとたくさんの発見ができると思います。
最高だったバーモント大学での夏休み体験
たまき ゆ き
こ
玉城裕妃子(第5学年)
今年の私の夏休みは、アメリカで過ごした最高の夏休み
でした。本当によく遊び、そして机の上ではできない勉強
をしてきました。
言うまでもなく、木田先生が用意してくださった数々の
プログラム(バーモント大学での病院見学、カンファレン
ス、剖検、病理学・細胞学ツァーetc)に参加させて頂いた
ことは、本当に楽しく「今日、朝起きて自分は幸せだ」と
思える毎日の連続でした。
しかし、
「何が今回の旅で1番良かった?」と聞かれると、
私は「木田先生にお逢いできたこと」と答えます。私は、
「一流の人」とはこんな人のことを言うのだと体で感じたよ
うに思います。日本人である木田先生が、言葉を含めてど
うしても拭い去ることのできない、見えない壁に対して、そ
れに臆することなく、しかも堂々と彼ら(アメリカ人医師
たち)と戦っているのをみて、胸が熱くなりました。そし
て木田先生が、アメリカの大学を卒業され、さらに医学部
に進学、レジデント、フェローを経て現在にたどり着くま
での、私の想像を絶する死に物狂いの努力を、明るく楽し
くそして優しいまなざしで話してくれたことを私は決して
23
学生のページ
忘れません。
異国の地で自分の実力のみで勝負している先生はかっこ
いい!(本当に「かっこいい!」
)先生の仕事に対する取り
組み方、先生の生き方・生き様をみて、本当の一流とはこ
ういうことをいうのだと思いました。
私の中で、今回のバーモント大学でのさまざまな経験は
まだ形にはできないけれど、何か大きなものを得たような
気がします。
「アメリカでの患者体験」
この夏、私は「アメリカで、患者として病院に行く」と
いう貴重な体験をしてきました。
日本を出発する前から、口腔内(右側の舌下)に粘液嚢
胞(Ranula)があったのですが、小指の爪ほどの大きさで、
特に気にも留めずアメリカに向かったのが事の始まりでし
た。
アメリカに着いて、私はさっそくハンバーガーの大きさ
に心踊り、マフィンのおいしさに心打たれ、満面の笑みで
毎日本当によく食べました(言うまでもなく、しばらくし
てすぐ日本食が恋しくなくなるのですが・・・)
。
そうこうしているうちに、4∼5日が経ち、口腔内にはっ
きりと違和感を覚えるようになりました。鏡を覗いてみる
と、なんと!拇指頭大まで成長しているではありません
か・・・「なんだこれは!?そして一体これからどうなっ
ていくのだろう。でもここは外国だし、もう少し我慢しよ
う。しかしさすがに食事が取りにくくなってきたぞ。
」と思
いながら、さらに5日が経過しました。その頃には、舌下の
右側から喉にかけて腫大し、水も飲みにくい状況になって
いました。そして私はとうとう我慢できずに、自分で粘液
嚢胞を潰してしまいました。しかしそれが感染の原因にな
り、翌日朝起きた時には、頚が腫れ喉も痛く、粘液嚢胞も
再び膨らみしかもさらに大きくなっていました。日本まで
なんとか持ち堪え、先生にも迷惑をかけたくなかったので
すが「もうダメだ!」と木田先生に泣きつきました。
腎の病理解剖の見学
Reikoさん(木田先生の奥さん)が付き添って下さり、私
はバーモント大学のFletcher Allen Health Care を受診しまし
た。受け付けを済ませると、広い診察室に通されました。
しかしそこにはdoctor はおらず、かわいいオサルの柄の手術
着のような服を着た看護婦さんが問診をとりにきました。
(この病院では、看護婦さんは日本のように決まった白衣な
どはなく、自分の気に入った動きやすい服装をしているそ
うです。
)看護婦さんの問診が始まって、私はつたない英語
でしどろもどろ返答していたのですが、看護婦さんの問診
に感心しました。無駄がなくスムーズで、恥ずかしながら
私がBSL のベットサイドで行なっている病歴聴取よりずっ
とレベルが高かったのです。マニュアル化されているのか
もしれませんが、一連の流れで効率よく問診をみごとにと
る看護婦さんには大変驚きました。
しばらく待っていると、とてつもなく高いテンションで、
一人の男性が入ってきました。
「こんにちは!! 初めまし
て!私は、○○○です。さて、今日は一体どうしたんだ
い?」
私 「
(白衣を着ていないけど、doctorみたい…)
。え∼と、
初めまして、玉城裕妃子です。え∼と、え∼と…」
(もちろ
んここまでで既に熱い握手は交わしている)
。
いきなりさわやかにとてつもなく高いテンションで入っ
てきた d o c t o r についていけず唖然としている私をみて、
Reikoさんが助けて下さり一連の事を説明してくれました。
そして、
「この子は日本の医学部の学生で今5年生なのよ」
と付けたしをされました。
Doctor はにやっと笑って、「じゃあ自分で診断してみる
か? 君はどう思う?」
私 「…。
」
(肝心な時に英語はでてこないものですね…)
Doctor「患者として来た時は、いろんなストレスもあって
冷静に診断できないよね。じゃあ診察を始めようか!」
Doctor は、診察をした後、口腔外科を受診した方が良い
が、予約がいっぱいで私が帰国するまでに間に合わないこ
と、感染を起こしているのでペニシリンを服用しなければ
Cytologyでお世話になったBarbara先生を囲んで
24
学生のページ
ならないこと、粘液嚢胞の内容物を少しでも減らすために
濃い食塩水を口に含むこと(浸透圧によって内容物を出す。
)
などを説明してくれました。始めに診察室に入ってから30
分ほどの満足のいく診察・説明を受けることができました。
Doctor の一連の診察は、日本でよく行なわれている診察
とは異なり、冗談を交え、一つのエンターテイメントのよ
うでとても驚きました。また、患者がいる診察室にDoctor
の方が入っていくということにもびっくりしました。よく
日本とアメリカの医療が比較され、それぞれの良い点と悪
い点があると思いますが、今回私は身をもってアメリカで
は患者中心の医療が行なわれていると思いました。自分が
患者として病気に対する不安とストレスを抱えて診察室に
座った時、今回の受診では全てが自分中心に動いていると
感じたからです。私は初めての経験で、日米の診察の仕方
の違いや言葉の壁に面食らったことが多かったので診察に
対して心地良さを感じる余裕はなかったのですが、そうい
った壁がなく、もしこのような状況での診察を日本で日本
語で受けたとすれば、とてもリラックスでき心地よい診察
ではないかと思いました。日本での医者と患者の関係・3分
診療など、なかなかすぐに変えられるものではないとは思
いますが、こういう経験を生かして少しでも患者中心の医
療になるように努力していきたいと強く思いました。
最後に、木田先生そして病院まで付き添って下さった
Reiko さん、本当にありがとうございました。この場をかり
て、お礼申し上げます。
学んだ「医師のあり方」
“I am worker,you are boss.”
いわた
ひとみ
岩田 人美(5学年)
衝撃的だった。その言葉(I am worker,you are boss.)が
僕の耳に飛び込んできたときは。
木田先生とFamily practiceでお世話になった Peterson 先生を囲ん
で(分院にて)
それを言ったのは、白人の医師であり、患者はアジア系
の初老の男性であった。その大柄な医師の言葉は優しく、
時に強い口調で、誠心誠意患者に話しかけていることが横
にいる僕たちにも伝わってきた。この男性には直腸癌があ
り、直腸診においてもすぐそれとわかる岩様硬をしていた。
日本においても、
“患者と同じ目線の医療”ということが言
われるようになってきているが、やはりそうではないことが
多いのが現実である。立場としては患者のほうがやはり弱
いことが多い。アメリカにおいては患者と医者の立場は対
等か、患者が上である。
その背景として根本的な医療制度の違いが挙げられる。
それぞれの家庭にはFamily Doctorつまり、かかりつけ医が
いて、患者はまずそこに行く。いきなり大病院にいっても
診察はしてもらえないのだ。Family Doctorも“この人なら”
、
という医者を患者側から選ぶ仕組みになっている。だから
こそ、そこには絶対的な信頼があり、患者主体の医療が存
在している。
そのことを表しているのが“I am worker,you are boss.”
という言葉なのだろう。医者は患者のために働くことは当
然であるが、患者のことをboss とまで言えることから、そ
れだけ患者の立場に立った医療を行っているということが
感じられた。治療を行うのは医者であるがそれを選択する
のはあくまで患者であり、そのためのinformed consent を十
分得る。そして、患者が理解と納得をし、満足がいく医療
(金銭面との兼合いもある)を提供する。その全ての過程に
おいて、患者は医者より下の立場にはいない。それがアメ
リカの医療だった。
外来を見学させてもらい、大まかな日本との違いをあげ
ると以下のようなことがあった。
医者と患者の椅子は同じものを使用しているか、患者の
ほうが良いものである。
医者は患者といるときにはカルテを書かない。診察が終
わってから、別室でカルテを書く。患者といるときは必ず
相手の目を見て話をしている。
木田先生のご自宅でバーベキュー
25
学生のページ
診察後は握手を交わし、言葉をかけるといったcommunicationを忘れない。
医療の中心はもちろん医者である。医師が十分な医学的
知識と技術を持っているからこそ、medication が成立する。
そのために医師になってからの勉強も欠かしていない。そ
れは日本においてもアメリカにおいても同様である。しか
し、対人間という関係においては、日本とアメリカの医師
患者関係を比較すると日本にはまだ発展途上の点があるよ
うに感じた。もっと、もっと“人間を診ている”という感
覚を念頭に置くような医療がこれからの時代は必要になっ
てくるだろうと感じた。
最後に、お世話になった木田先生とその家族の方々をは
じめとし、FAHC staffのみなさんや僕たちの留学を支えて
くださった先生方に心から感謝します。ありがとうござい
ました。
やはた ゆ り
こ
八幡悠里子(5学年)
このたび病理学石川義麿教授およびアメリカバーモント
大学病理学助教授でいらっしゃる木田正俊先生のご厚意に
より、2週間ほどアメリカの医療を学んでまいりました。病
理学教室のほか内科の外来などを見学致しましたが、医療
サービスの面でもあくまで患者さん本位に考えられていて、
プライバシーが保たれるようなシステムになっていること
が印象に残っています。さらに、各家庭のかかりつけ医と
して信頼できる医師にいつでも診てもらえるというFamily
Practiceがあることをも学びました。また学生の皆さんとも
お話をしましたが、非常に積極的で自分の意見をしっかり
持っていましたし、医学に対する情熱は私達も見習うべき
だと思いました。
短期間ではありましたが、自分の視野を広げるという意
味で貴重な体験をさせていただいたことに心から感謝致し
ております。ありがとうございました。
ニューヨークのWTCは、この1カ月後にテロで消滅してしまった
事の顛末:
バーモント大学医学部での夏期研修
病理学Ⅱ教授
石川 義麿
昨年の夏休みに私の部屋で勉強していた学生が突
然来なくなり、帰省したのだろうと思っていました。
新学期になって聴くと、旅行社の企画で語学研修の
募集があり、それに参加してロンドンでホームステ
イして来たが、それは東ヨーロッパ出身の家庭で英
語の研修にはならなかったと言うことでした。それ
を聴いたときに4学年まで本学に在籍し、当時混迷状
態であった本学を中退してアメリカへ渡り、大学お
よび医学部を卒業して医師免許を取り、現在バーモ
ント大学医学部で活躍中の木田正俊先生を思い出し、
彼なら引き受け人になってくれるだろうと思い付い
たのが事の起こりでした。
木田先生はオクラホマからバーモント大学へ単身
赴任したばかりでしたが、快くこれを引き受けて下
さり、思い付きにすぎなかった計画は語学研修から
医学部病院の見学へと日に日に具体化し、膨れ上り
ました。最初は参加を希望する学生の制限をどの様
にすればよいか心配しておりましたが、最終的に私
の実習グループを中心とした5名になり、木田先生も
意外な様子でしたが、手堅く小人数から経験を積み
ましょうということで、兎に角実現に一歩ずつ近づ
けて行きました。
いざ実行となると、学生を送り出すまでが大変で
した。夏休みは旅行シーズンでもあり、航空券は夏
休みのピークに近づくにつれて高額になるので、彼
等が受けるかもしれない随時試験と睨み合わせて可
能な限り早い出発が有利です。旅行業者は今までに
も夏休み中の学生の旅行日程が随時試験等で突然変
更され調整に泣く事が多かったのでしょう。見積り
を立てると言われながら放置され、航空券の手配に
行き違いがあったなど予期しないことがよくありま
した。難儀している私を見かねた解剖学Ⅰの上田忠
司先生が直接航空会社と交渉して助けてくれて、ど
うにか無事に送り出せる所まで漕ぎ着けました。
このような不慣れから送り出すのが精一杯で、研
修を快く引き受けて下さった木田先生には現地での
企画から実行に至るまでの全てを押しつけてしまい、
申し訳なく思っております。木田先生は学生に付き
っきりで交通手段に至るまで細やかに世話をして下
さいました。そのために彼らの滞在期間中の仕事が
滞ったのでしょう、未だ連絡が取れない状態ですが、
26
学生のページ
木田先生にこの紙面からも御礼を申させていただき
ます。
出発を前にして上田先生の忠告で彼等に冗談混じ
りで保険を勧めましたが、彼等が帰路立ち寄ったマ
ンハッタンでのテロの報道に接し、無事に出発でき
たばかりか何事もなく帰国できた事が不思議に思え
るほどのこの頃で、大それた事を軽率に企画するも
のではない事を身にしみて感じました。
木田先生はバイタリティーに満ちた方ですから、
半年もすれば再び活力が戻ることでしょう。学生達
のレベルも判って頂けたと思います。学生はレベル
や教育手段の差よりも目的意識の差の大きさを肌で
感じたようです。引き続いてこの企画を発展させて
いただければと願っている次第です。
金沢医科大学の学生達を迎えて
バーモント大学医学部 木田 正俊
金沢医科大学の石川義
麿先生から学生受け入れ
の打診があったのは今年の
1月初旬でした。以前オク
ラホマ大学にいた頃、岡山
大学医学部からの学生受
け入れの経験がありました
ので、今回も出来るだけ努
力してみようと準備にとり
かかりました。初期の段階
木田正俊先生
では、私の持っているコン
ピューターで日本語での電
子メールのやりとりが非常に困難でした。以前、岡
山大学と連絡を取り合った頃は主にファックスを利
用しましたので、日本との電子メールを使った本格
的な連絡は今回が初めてでした。また、私の職場の
コンピューターは病院内の英語でのメール用にセッ
トしてあり、英語以外の"外国語"用に使うには大変難
しい状態でした。わざわざ石川先生より小型のモバ
イル型の機種を送っていただき、少々手間はかかり
ますが、英語と日本語の変換を数段階に分けて行う
ことで解決することができました。また、たとえうま
く日本語の文を書いても、使うソフト次第で全く失
敗ということもしばしばありました。"文字化け"とい
う言葉もはじめて知り、同じ発音でも使う文字によ
って全く意味がちがってくる表意文字の面白さと難
しさを感じました。
渡米の時期が丁度こちらの夏期休暇期間と重なっ
てしまい、当初実習を予定していた科目のいくつか
を直前になって変更しなけれはならなかったりしま
したが、7月18日に五人の学生をバーリントンに迎え
る事が出来ました。私の子供達も両親の母国からの
学生に興味深々で、家族全員での出迎えとなりまし
た。学生達もバーリントンに着いたとたんにあまり
の普段着的な出迎えで少々面食らったのではないで
しょうか。
今回5人の学生が訪れたバーモント州はニューイン
グランド北西部にあります。バーリントン市は全米
で6番目に大きい湖と言われるChamplain湖の東岸に
位置しています。湖の対岸はニューヨーク州です。
バーモント州はその北端をカナダと接し、モントリ
オールまで車で約一時間半のところにあります。気
候は北海道と良く似ています。晩春、夏、初秋には
ハイキングを楽しむ人々がバーモントの山々をめざ
してやって来ます。秋の紅葉シーズンにはニューイ
ングランドの各州からはもとより米国全土から多く
の観光客がバーモントを訪れます。バーモントには
数多くのスキー場が点在し、冬にはスノーシューイ
ング、スノーボード、クロスカントリーやダウンヒル
スキーを楽しむことが出来ます。
バーモント大学医学部は1822 年にアメリカ第七番
目の医学部として発足し、医学教育の初期の段階か
ら広範囲にわたる臨床(特に、一般開業の臨床)を学生
に経験させる事で広く知られています。4年制で、各
学年93名の学生が学んでいます。毎年この93 名の定
員に対し約 5500 名の応募(競争率 59 倍)があります。
全教員数1661 名の内108名が基礎科学、1553 名が臨
床科学の担当です。臨床科学の内で 2 8 6 名が常勤、
1267名が実際に開業している非常勤教員です。
臨床実習の大半はバーモント州バーリントン市に
あるFletcher-Allen Health Care(FAHC)という医療
機関で行われます。F A H C には中心となる M e d i c a l
Center病院(562 床)と大規模な多専門科の外来、そ
して 14 の小規模な地域医療施設が含まれています。
バーリントン以外にもメイン州のMaine Medical
C e n t e r(5 9 8 床)やニューヨーク州の C h a m p l a i n
Valley Physicians Hospital(410床)でも実習が行われ
ます。学生達は医学部の学業と健康の保持とのバラ
ンスをうまくとるように心掛けています。大学には
水泳プール、アイススケートリンク、屋外及び屋内
テニスコート、陸上競技用トラック、ラケットボー
ルコート、バスケットボールコート等が完備してお
り、学生達はこれらの施設を自由に使うことが出来
27
学生のページ
ます。
れぞれ最適な医療を受けてもらえるかを話し会って
7月 18 日(水曜日)に到着後、学生達は今回はunderいる場に身をおくことも大切だと思い、無理を承知
graduateの一年生用の寮に入ることになりました。大
で学生達を同行しました。日本の英会話学校では到
学のキャンパス内で、病院のすぐ隣りにあります。地
底経験出来ないような生の会話に接し、いささか圧
理的条件は良いのですが、部屋が狭いのとエアコン
倒された感じでした。
が入っていないのが欠点でした。例年ならばたとえ
第2週にはFamily Practice の外来クリニックを訪れ
夏でもエアコンなしで大丈夫なのですが、今年の夏
たり、外科の外来や腫瘍学の入院患者の回診に加わ
は特別に暑く、寝苦しい夜を幾晩か過ごさなければ
ったりしてもらいました。言葉の不自由さもあり、な
ならなかったようです。また、エレベーターがないの
かなか自分を表現出来ないもどかしさなどもあった
で日本から到着の際大きなスーツケースを上の階ま
様ですが、医師と患者の関係がどの様なものである
で階段を使わなければなりませんでした。さすがにみ
かを実地に体験出来たのではないかと思います。
なさん若く元気で、一気に全部の荷物を運んでしま
こちらの医学部や医療システムを体験するだけで
いました。
なく、週末を利用してモントリオールを訪れたり、私
19 日(木曜日)午前中は入学受付担当の人からバ
の同僚が開いてくれたホームパーティーにでかけたり
ーモント大学の一般的な説明を受け、その後こちら
と忙しい毎日を過ごす学生達を見ていて一つ面白い
の医学部2年生の案内で医学部内のツアーを行いまし
ことに気が付きました。学生の何人かが持参した
た。午後は教養部を中心としたキャンパスのツアー “ケーシー”型の白衣はこちらではほとんど医師のあ
で学内の主要な建物を見学しました。
いだではみかけません。このタイプのユニフォームは
20日(金曜日)は前もって計画しておいたボスト
主にレントゲン技師や歯科の人達が着用しており、
ンのハーバード大学医学部を訪れました。バーリン
医科の学生はオーソドックスな襟付きの背広型の白
トンからボストンまでは約200 マイルの距離なのです
衣を使っています。こちらの多くの医学部では入学
が、ボストン近郊に着いた時丁度昼のラッシュに出
時か1学年の最初の学期を終了した際に“White Coat
くわし、すんでのところで約束の時間に遅れそうに
Ceremony”という式典が行われ、これから経験する
なりました。さいわい、八幡、玉城両学生の名ナビ
医学、医療のシンボルとして白衣を一人ずつ大学の
ゲーションで無事約束の場所にたどり着きました。 教授達から受け取ります。学生達の白衣は腰までの
バーモント大学とハーバード大学とは正式な交流は
長さのもの(short coat)で、研修医や正規の教授達
ないのですが、折角近くまで來た機会を利用しても
の着ている膝までの長さのlong coatとはことなって
らおうと私の独断で見学を予約しておいたものです。 います。私も医学生の頃はshort coatのポケット一杯
白大理石で造られた医学部本部とそれを取り囲む
にハンドブックやメモをつめこんで、早くlong coatを
数々の建物は、さすがに米国医学界の権威の一つと
着れる様になりたいと願ったものです。日本からの
して学生達の目には印象的に映ったものと思います。 学生達もFletcher-Allen Hospitalから記念にもらった
その教育内容もケーススタディー主体で、日本でも
病院のエンブレムの付いたlong coatを喜んでくれた
最近は採り入れられているようですが、これからの
と思います。
医学教育のひとつのタイプとして参考になったと思
2週間余りの滞在もほんとうにあっという間に過ぎ
います。日帰りでの訪問でしたのでボストンでの自
てしまいました。
由時間がほとんどなく、もう少し時間的に余裕のあ
バーリントン出発の日は私の都合により空港での
るものにした方がよかったと反省しています。
慌ただしい別れになってしまい甚だ残念に思ってい
週末にはバーリントン郊外の歴史博物館などを訪
ます。短期の準備期間と私の知人に限られた人選で
れました。
しか予定が立てられず、はたして充分な経験が出来
23 日から27 日の一週間は主に一般外科、消化器内
たのだろうかと心配です。5人の学生達がそれぞれほ
科、腫瘍学、泌尿器科などのカンファランスに出席
んのひとつでも何か心に残るものを見つけてくれた
し、こちらではどの様にして治療方針を検討、立案
ならば幸いです。
しているのかを経験してもらいました。これらのカン
最後に遅ればせながら、石川、上田両先生のご尽
ファレンスには私も病理医として毎回出席していま
力に深く感謝いたしております。
すので、会話を全て理解するのは無理とは思いまし
たが、臨床の先生方がいかにして患者一人一人にそ
29
学生のページ
学生と教員との懇談会
学生と教員との懇談会が、平成 13 年 10月10 日(水)17
時30分から学生食堂にて開催された。
本学ではこの懇談会を通じて、学生の希望、意見や学生
のニーズを知り適切な大学運営に反映させるべく配慮をし
て来ている。また、学生が積極的に大学運営に関わるとい
うことを通じて主体的に大学生活を送ることにより、学生
の社会的成熟度を増すことが大いに期待できるので、重要
なものととらえている。
大学側からの出席者は竹越襄学長をはじめとして、西川
克三副学長、山本達副学長、教務部教員、学生部教員、各
学年主任、副主任が、学生側からは、学友会代議員、執行
委員、各クラブ代表等約50名が出席し、カリキュラム、国
試対策、教員評価、クラブハウス等に関する問題点につい
て、活発なディスカッションが行われた。
今回の懇談会は、学生側からの話題提供に加えて、教員
サイドからも、学生代表のカリキュラム委員会への参加、
医学生としてのモラル、ルールの遵守、学園祭企画の充実
等の話題も提供され、最後に学友会執行委員長の第4学年
椎名伸行君から「各先生方からのご意見は、学友会代議員
会、キャプテン会議において検討し、改善すべき点は早急
に改善し、金沢医科大学がよりよい大学となるよう学生側
も最大限の努力をしたい」との発言がなされた。
懇談会終了後、軽食を取りながら和やかな雰囲気の中で、
教員と学生の語らいのひとときがもたれた。
(教学課山本健司記)
留学生情報
(教育学術交流センター)
1.留学生の往来
2001 年 9月 26 日 中国・中国医科大学第一臨床学院眼科学大学院修士課程在籍中の王春霞氏が眼科学
において研究を開始した。
10 月 10日 中国・ハルピン医科大学附属第二病院整形外科学医師韓剣鋒氏が総合医学研究所難
治疾患研究部門において研究を開始した。
2.留学生の紹介
オウ
シュンカ
王 春霞さん
1976年生、女性(中国)
中国・中国医科大学第一臨床学院眼
科学大学院修士課程在籍中/所属は
眼科学
研究テーマは「水晶体上皮細胞(眼組
織)に対する紫外線作用波長の検索」
カン
ケンホウ
韓 剣鋒さん
1968年生、男性(中国)
中国・ハルピン医科大学附属第二病
院整形外科学医師/所属は総合医学
研究所難治疾患研究部門
研究テーマは「心疾患における免疫
異常の研究ならびに病院見学」
28
学生のページ
医学部学生のメディカル・ホームステイ報告
かわぐち
まさみ
川口 真己(第4学年)
〈研 修 先〉大牟田共立病院
院長 緒方盛道 先生(昭和53年卒業)
〒836-0012 福岡県大牟田市明治町3-7-5
TEL 0944-53-5461 FAX 0944-56-5949
〈研修期間〉平成13年8月1日∼8月3日
8月1日から3日まで九州の大牟田共立病院で研修させて
いただきました。九州は今回が初めてでした。飛行機から
おり空港から出たとたん九州の熱気がすごかったのを思い
出します。
「おおさすが九州」と思いながら、指定された待
ち合わせ場所に急ぎました。そこは空港から高速バスで1
時間ちょっとの大牟田駅です。そこで、待つこと数分、大
牟田共立病院の保健士である山下さんが迎えてくれました。
大牟田共立病院はすぐ近くでした。この病院は住宅地の
まんなかにあり、内科、心療内科、循環器科、消化器科、
呼吸器科、リウマチ科、アレルギー科、リハビリテーショ
ン科が設置されていました。また、病院系列の訪問看護ス
テーションが近くにありました。そして、病院の中に入っ
た第一印象はきれいな病院だということでした。
まず、私は訪問診療について行きました。私は訪問診療
というくらいだから、注射や点滴などいわゆる医療が行わ
れると思っていました。しかし、一緒に行った医師と看護
婦は血圧を測り、あと、病院で行われた検査結果の話をし
て、あとは先日行われた祭りの話をしているだけで、治療
行為は一切行われませんでした。訪問診療の帰り道一緒に
行った医師は「こうやって話を聞くだけで患者さんは元気
になる」と言っていたのが印象的でした。私ははっとしま
した。訪問診療を受けるような慢性期の患者さんはあまり
改善が見られない治療法しかありません。それなら、患者
さんは痛い検査や治療よりも家を訪ねてもらい、そこで楽
しく話をすることのほうがよっぽど元気が出るのです。ま
た、胃の内視鏡の検査も見学させてもらいました。その医
師に「先生の専門科は何ですか」と聞いたら、返ってきた
返事は「なんでも」でした。地域密着型の病院の真髄を見
たような気がしました。大牟田共立病院はさらに痴呆患者
などに「抑制」をしていません。しかも、抑制をしなくな
ったのはなぜかと聞くと、自然にそうなったということで
した。私はこの答えに驚きました。多くの病院が抑制をや
めるために予算をかけ設備を整えスタッフを教育し、それ
でもやっと抑制を減らすだけでゼロにはなかなかできない
緒方院長とともに
ということを聞いたことがあります。大牟田共立病院が抑
制をしないのは医師も看護職員も患者さんの視点に立って
いるからだと思います。それもある一場面ではなく、病院
内にいる時常にそういう視点になっているからだと思いま
す。僕を案内してくれた山下さんは病院内にいる時に廊下
やエレベーターで患者さんにあった時に必ず声をかけてい
ました。そういうところにこの病院の良さがあると思いま
す。
私も常に患者さんの視点に立てるような医師になりたい
と思いました。
30
学生のページ
《テーマ
今年で第30回目を迎えた内灘祭は、メインテーマを「三
代目」と掲げ、去る9月 29 日(土)から10 月1日(月)ま
での3日間にわたって開催されました。三代目とは、
「三代
続けば末代続く」という言葉から、その心意気を持って取
り組もうというものです。
今年度の内灘祭は、昨年度と同様の企画を受け継ぎなが
ら、より内容を充実させ、学生が参加者と共に楽しめる企
画を中心に、内灘祭実行委員会と学生執行部の協力をもと
で準備が進められてきました。その実行委員が運営する本
部企画では、ゲーム大会、ビンゴ大会、花火等が催され、
毎年恒例となった各クラブ模擬店や、特設ステージ前の広
場(普段は駐車場)で行われたフリーマーケットも、例年
にもまして大盛況となり、活気ある内灘祭となりました。
また、今年は学生部からの特別企画として、本学名誉教
賑わうフリーマーケット(写真提供:1学年大久保裕子さん)
ゲーム大会
》
講演される本学名誉教授の青野允先生と土田英昭教授
授の青野允先生を招き、
「先輩が行った災害医療訓練」と題
した講演会が催されました。ここでは第12回目の内灘祭に
おいて実施された、本学教職員、学生、内灘町、津幡警察
署、その他近隣の関係機関が一体となって行われた災害医
療訓練についての内容を、青野先生自らが我々に伝えて下
さいました。参加した学生からは、過去に行われた企画の
凄さに驚き、来年度の内灘祭企画の参考にしたいといった
声や、学生だけでなく教職員や地域住民も広く参加できる
ような内灘祭にしていきたいといった意見が提出されまし
た。
そして、内灘祭を飾る花火は、9月30 日の20 時より、内
灘町住民や学生約300人が見守る中、本学グランドより打ち
上げられ、グランド横道路に設置された大型スクリーンの
映像、音響と見事に融和していました。この内灘祭のメイ
ンイベントともいえる企画に、参加者からは盛んな歓声や
絶賛の声が発せられました。
三代目の心意気の元で見事に成功した今年度の内灘祭を
踏まえ、来年度の内灘祭では、医学部としての本学の特色
をより生かした企画もぜひ取り入れて、内灘祭が更なる発
展をとげることを期待します。
(学報編集委員金子聖司記)
31
学生のページ
内灘祭を終えて
眠っている服や切手はありませんか?
はやし
内灘祭実行委員長 林
らんじ
蘭仁(第3学年)
みやもと
ようこ
宮本 陽子(第3学年)
今年で第 3 0 回を迎えた内灘祭
も、何だかんだあったが、それで
も無事終了した。当たり前だ。時
間は流れてる。祭りはいつか終わ
る。そんな当たり前のことを、み
んなはどう考えてるんだろう。実
際のところ、そんなことは考える
必要も無いことかも知れない。各々、自分の現実を生きる
のに精一杯? それはそうだと思う。でも、祭りがあった
ってことは、その祭りを実行することが現実だった人がい
たってことで、僕は、他者を理解・尊重することは、良医
としてだけではなく、人として大切なことだと思っている。
筆者は右端
だからみんなにも考えてみて欲しい。
冒頭で「祭りが終わるのは当たり前」って書いた。じゃ
あ、祭りが始まるのはどうだろう。実行委員をやるまでの
先ほど、無事に古着と使用済み切手を発送することがで
僕は、学校で学祭があるのは当たり前だと思っていた。実
きてほっとしています。皆様からの古着や使用済み切手が
行委員の存在を気にかけたことすらなかったし、どっかの
発展途上国の困っている人々に少しでも役立つことを祈り
誰かがやってんだろう位にしか思ってなかった。成り行き
ながらこの原稿を書いています。
とはいえ、3年間実行委員会に関わった今はちょっと違う。
我が国際医療交流会は、金沢医科大学と金沢大学医学部
学校に学祭があるのは当たり前で、実行委員は、どっかの
が合同で、フィリピンとタイの医学生とExchange Program
誰かがやってるんだと思う。それは変わらない。でも、当
(交換交流、大学、病院、地域医療センターの見学)を行な
たり前にあるはずの学祭を実行するには、いろんな手続き、
っています。
許可、そして多くの人々の協力が必要で、どっかの誰かさ
普段の活動は金沢大学医学部と合同で行なっていますが、
ん達を、形は違えど応援してくれる人達はたくさんいる。
内灘祭では金沢医科大学の『東洋医学研究会』と一緒の教
みんなに考えてみて欲しいけど、無関心でいる人を非難
室で医学展を開いています。例年パネルを用いた医学展を
する気はまったく無い。ただ、何の理解もなく、どっかの誰
行なってきましたが、今年度は何か新しいことを、という
かさん達がやった祭りを、自己満足だと決め付けるのはやめ
ことで「古着を発展途上国へ送ろう」という企画になりま
てくれ。
「じゃあ何?」って思うなら、やってみるといい。 した。チラシを作り文化会館、パン屋さんにおいていただ
考えることはすごく大切で、まずはそこからなんだと思うけ
き、また校内に貼りました。当日は金沢大学の部員も応援
ど、やってみないと解らないことってあると思う。絶対。
に駆けつけてくれ、約100kgもの古着が集まりました。また
原稿を書くにあたって、考えて欲しいから自分の意見は
発展途上国への送料にと合計6,635 円の募金もいただき、合
極力排除した。何か意見、質問等ありましたらどうぞ。い
計36名(うち学外から17 名)の協力を得ることが出来まし
つでもというわけにはいきませんが。
た。これらの古着は神戸の“日本救援衣料センター”を通
して発展途上国へ送られます。又、同時に使用済み古切手
も集め、
“大阪障害者労働センター・マツサクぐる∼ぷ”を
通してアジアの恵まれない子供たちの薬代へと変わります。
発展途上国への支援と聞くと大事のように感じますが、
実はちょっと箪笥の中を覗き、古着を送ったり、使用済み
切手を貯めて送ることで小さな支援となります。世界には
恵まれない人々や、内戦、紛争、テロなどにより一瞬にし
て幸せを奪われる人々が沢山います。このような人々に小
さな幸せを贈る協力が金沢医科大学から出来たら…送る私
たちも幸せです。
32
学生のページ
第26回附属看護専門学校祭
テーマ
キラリと輝く未来のNurse
平成 13年9月 29 日(土)午前9時半から、金沢医科大学
附属看護専門学校にて『キラリと輝く未来のNurse』をテー
マに第26回看学祭が行われた。
21世紀を迎えた今、どのような看護が必要とされている
のかを、老人や幼児への虐待事件など私たちに投げかけら
れている多くの問題を考えながら、それらを解決していけ
るようなNurseとはどうあるべきなのかを未来のNurse の一
人として考えてほしいと思い、このテーマに決めた。
天候にも恵まれ、多くの人が集まった。金沢医科大学病
学内での抹茶喫茶
院の患者さんも来てくださり、
楽しそうな笑顔を見せてくれ
た。看護学校の玄関には、未
来の N u r s e の手から星があふ
れ、新たな時代に輝く看護を
意味する看板が飾られた。同
じ玄関では献血が行われ、100
人以上の協力の下、今年の目
おおの み わ こ
標である20 リットルを見事に
大野美和子
達成した。看護学校内では看
護展示と抹茶喫茶、手話講座や映画上映などが行われた。
看護展示では、虐待をテーマに「幼児虐待・高齢者虐待」
について分かりやすくまとめられたレポート展示や、パワ
ーポイントを使った説明などが行われ、手話講座では自分
の名前や簡単な挨拶を手話でできるように実演が行われた。
食堂では音楽部による演奏が行われた。食堂前広場と調理
室前広場では各学年が模擬店を並べて賑わいを競っていた。
その中でも特に教員の出店した豚汁と炊き込み御飯が好評
だった。
夏休み前から準備し、何度も案を練り直し準備したかい
あって大成功を収めることができた。毎日の授業や実習の
疲れを忘れ楽しむことができたさわやかな秋の一日だった。
(看学祭実行委員長看護専門学校2年大野美和子記)
レポート展示
33
学生のページ
学生の表彰
課外活動の功績を讃える
賞状を持っている人たち:前列左から羽柴奈穂美、今野里美、岡島千怜、加藤文、安井綾子
後列左から松永尚治、岡村基弘 の皆さん
平成13 年10月3日(水)学長室において、今年度、課外
活動で優秀な成績を修めた学生の表彰が行われた。
対象者は、本年4月に開催された第44回北信越学生テニ
ストーナメント大会の男子ダブルスにおいて、第3位入賞の
第4学年岡村君、第2学年松永君、夏季休暇中に開催された
第53 回西日本医科学生総合体育大会の陸上競技部門円盤投
げにおいて、第3位入賞の第3学年羽柴さん、水泳競技部門
女子400メートル及び50メートル自由型において優勝の第5
学年岡島さん、200メートルフリーリレーで第3位入賞の第
5学年岡島さん、第4学年今野さん、第4学年安井さん、第
1学年加藤さんの計7名で、本学学生表彰規程に基づき、竹
越学長から表彰状及び副賞が手渡された。
(教学課山本健司記)
〈受賞者〉
○第44回北信越学生テニストーナメント大会
男子ダブルス 第3位
岡村 基弘(第4学年)(表彰並びに副賞2万円)
松永 尚治(第2学年)(表彰並びに副賞2万円)
○第53回西日本医科学生総合体育大会陸上競技部門
女子円盤投げ 第3位
羽柴奈穂美(第3学年)
(表彰並びに副賞3万円)
○第53回西日本医科学生総合体育大会水泳競技部門
女子400メートル自由型優勝
女子50メートル自由型 優勝
岡島 千怜(第5学年)(表彰並びに副賞7万円)
○第53回西日本医科学生総合体育大会水泳競技部門
女子200メートルフリーリレー 第3位
(泳者順:安井→今野→加藤→岡島)
竹越襄学長から表彰状を授与される岡島千怜さん
岡島 千怜(第5学年)
今野 里美(第4学年)
(表彰並びに副賞3万円)
安井 綾子(第4学年)
(表彰並びに副賞3万円)
加藤 文(第1学年)
(表彰並びに副賞3万円)
34
学 術
第31回
日本腎臓学会西部学術大会
大会長:腎臓内科学 石川 勲 教授
平成 13 年 10 月5日・6日に金沢市文化ホール、金
沢ニューグランドホテルで本学腎臓内科学石川勲教
授を大会長として第31 回日本腎臓学会西部学術大会
が開催されました。今回のメインテーマは「21世紀
石川勲大会長の挨拶
を迎えた腎疾患の臨床」で西日本の腎臓に関心があ
看護婦、その他のCo-medical Staffが 200 名、また
る医師等950名が金沢に参集しました。
患者さんから学び、患者さんに還元することをテ 「腎臓病と共に生きる」と題した市民公開講座には、
患者さんと腎疾患に関心のある一般の方々合わせて
ーマに構成され、一般演題が 2 4 6 題、特別講演は
500名が参加され、腎疾患の病態と治療についての分
Harvard Medical SchoolのNorman K Hollenberg教授に
かりやすい講演に聞き入っていました。
よ る 「 Risk factors in the pathogenesis of diabetic
折しも全国都市緑化いしかわフェアが開催されて
nephropathy : Environmental factors and genes contributing to risk」、大会長講演は「症例から学んだこと」、 いる金沢の地に、西日本の腎臓学会会員、患者さん、
一般市民の方々を合わせて1700名が集い盛会裡に学
教育講演は頻度の高い疾患について6題、シンポジウ
術大会は終了しました。
(腎臓内科学由利健久記)
ムは「21 世紀の腎不全対策」として、腎移植をいか
に定着させるかに重点がおかれていました。このシ
ンポジウムではStanford 大学John D Scandling教授の
「米国における腎不全対策と腎移植の現状−特に腎移
植における腎臓内科医の役割−」という講演があり
ました。ワークショップは「尿細管間質障害機序と
治療の展望」「薬物療法よりみた腎炎進展の予防」
「泌尿器疾患から腎不全への予防戦略」の3題、ケー
ススタディも3題、5つのランチョンセミナーと21世
紀最初の日本腎臓学会西部学術大会に相応しい講演
が、腎疾患のあらゆる分野について行われました。
10 月6日午後から石川県文教会館で開催された第
5回腎疾患患者の食事・生活指導講習会には栄養士、
35
北國がん基金助成金
がん発生のメカニズムや新しい治療法の開発、啓
発活動に取り組む個人やグループを助成している財
団法人北國がん研究振興財団が、このほど第15 回北
國がん基金の研究活動助成に6件、啓発活動助成に1
件を選定した。
本学からは、研究活動助成部門で第Ⅰ解剖学の平
井圭一教授、島田ひろき講師、島村英理子助手、小
山淳子非常勤講師らの共同研究が選ばれた。
贈呈式は平成13 年10 月11日(木)午後3時から金
沢市の北國新聞会館で行われ、平井教授に100 万円
の助成金が授与された。
平井教授らの対象となった研究は「がん細胞で特
異的に活性酸素を産生する新規抗がん物質の研究」
で、新規フラノナフトキノン誘導体が、がん細胞に
特異的に過剰発現した膜タンパク因子によって活性
酸素を生成し、がん細胞死を誘導することを明らか
にしたものである。この研究成果が今後、がんの化
学療法を発達させるうえで重要な役割を演じること
が期待され、ますますの研究の進展が望まれる。
(学報編集部)
助成金を受ける平井圭一教授
金沢医科大学遺伝子解析研究に関する
倫理審査委員会の発足について
本学におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究の適否等
について、倫理的、科学的観点から審査を行う遺伝
子解析研究に関する倫理審査委員会(委員長:廣瀬
源二郎神経内科学教授)が、平成 13 年6月1日付で
発足した。
ヒトゲノム研究は、先に政府が公表したミレニア
ム・プロジェクト(平成11 年12 月、内閣総理大臣決
定)において、新しい産業を生み出す大胆な技術革
新に取り組む研究課題のひとつとして掲げられてお
り、関係省庁において、研究を適正に行うためのガ
イドラインについて検討が進められてきた。このほ
ど、科学技術会議生命倫理委員会が取りまとめた
「ヒトゲノム研究に関する基本原則」と、文部科学
省、厚生労働省、経済産業省の三省共同により策定
された「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指
針」が公表され、本邦におけるヒトゲノム・遺伝子解
析研究については、これらを遵守することとなった。
本学でも、これら基本原則及び指針を踏まえ、ヒ
トゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理審査体制の整
備を行い、本年6月1日付で「金沢医科大学ヒトゲノ
ム・遺伝子解析研究に関する規程」及び「金沢医科大
学遺伝子解析研究に関する倫理審査委員会運営要項」
を制定した。この倫理審査委員会は、本学教授3名に
学外の有識者3名が加わり、6名の委員で構成される。
これにより、本学で実施される全てのヒトゲノム・
遺伝子解析研究は、倫理審査委員会の審査を経て、
学長の承認のもとに実施されることとなり、各研究
者には、これら基本原則、指針及び学内諸規程に沿
って遺伝子解析の研究を推進していただきたい。
(倫理審査委員長廣瀬源二郎記)
36
第6回
日本ダウン症フォーラム
2001 in 金沢
メディア情報部 山下和夫
(ダウン症フォーラム事務局長)
平成13 年10 月6日
(土)、7日(日)に
本学をメイン会場と
して「第6回日本ダ
ウン症フォーラム
2001in 金沢」が開催
されました。両日と
も天候に恵まれ、秋
晴れの清々しい日に
北は北海道、南は鹿
児島と全国から
1 , 3 0 0 名を超す参加
者があり、成功裏に
終了しました。この
ダウン症フォーラム
は毎年1回開催され、ダウン症者本人、家族、各領域
のダウン症に関する専門家(小児科医、産婦人科医、
療育の専門家、心理指導員、言語療法士、理学療法
士、作業療法士、障害児教育者、福祉関係者など)
が学際的に協力し、ダウン症児者たちの健やかな成
長や社会生活を支援することを目的としています。
初日は、デンマーク、台湾、日本の3ヶ国の演者に
よる国際シンポジウムから始まりました。デンマーク
人と結婚し現地でダウン症児「トアくん」を出産し
た日本人女性の「ちず・ポール」さんからはデンマ
ークの福祉について講演があり、障害児を出産する
と次の日には「トアくん」をサポートする専門家チ
ームが編成され、「ちずはちずの人生を生きなさい、
トアはトアの人生を生きるのだから。そして、トアの
人生が少しでも豊かになるように、ベストをつくし
て働くプロたちがいます」と告げられたそうです。日
本とは雲泥の差ですね。このプロたちを成り立たせ
ているのが所得税45 %、消費税25%を許容するデン
マークの国民性なのだそうです。その後、同じくデ
ンマークの音楽療法についてビデオ講演と福祉施設
の紹介や解説がありました。デンマークでは当たり
国際シンポジウムにて。ニルス・ポールさん、ちず・ポールさんとトアくん
前に、健常者が障害者を、また、障害者が健常者を
肴に冗談を言い合ったり、からかったりしているほ
ど健常者と障害者の間に隔たりがないそうです。台
湾からのシンポジストは金沢大学教育学部博士後期
課程に留学中の黄さんという女性でした。講演内容
は日本と台湾のダウン症児では台湾のダウン症児の
方が発語時期が早い、また発語数も多く、その母親
は命令、指示が多い。反対に日本の母親は湾曲な言
いまわしが多く、子供に同意を求めることが多いと
いう結論でした。
シンポジウム終了後、全国から集まった方々と飲
食をともにした交流会が開かれ、一年ぶりの再会に
花が咲き、みなさん時間を忘れるほど楽しまれてい
る様子にスタッフとして最高の喜びを感じました。
2日目は朝8時半から本部棟玄関で受付を開始する
と、マイカーやシャトルバスで続々と参加者が来場
し、ベビーカーを押して来られたお母さん方から「ボ
ランティアの手助けで階段の昇降など本当に助かり
ました」との言葉に、いろんな方のご支援でこのフ
ォーラムが運営されていることを再確認しました。フ
随所でみられるボランティアの活躍
37
熱気に溢れるシンポジウム会場
アとして参加され、今回赤ちゃん体操に参加された
方々との橋渡し役を果たされました。
シンポジウムや講演が長引き、昼食時間もずれ込
みましたが、スタッフが準備した学生食堂でのお抹
茶コーナーに県外からの参加者が集まり、美味しい
お茶とお菓子で一期一会の出会いを楽しんでおられ
ました。
午後からは体育館を会場に、ダウン症者とその支
援者による一芸披露コンサートが行われました。華
やかに飾り付けられた舞台に演者と会場が一体とな
り、拍手喝采のうちに2時間半のコンサートはあっと
いう間に過ぎ去りました。参加者は来年の再会を誓
い、三々五々帰路につかれました。
一年前、このダウン症フォーラムの準備を始めた
時、スタッフもいない、お金も無いという状況から、
今回成功裏にフォーラムを終了することができたの
は、50 名を超す本学教職員のご支援や医学生・看護
学生のボランティア、また他大学、専門学校の沢山
の学生ボランティアの方々のお蔭です。紙面をお借
りして感謝申し上げます。
最後に、本フォーラムに快く会場をご提供くださ
いました小田島粛夫理事長に深く感謝申し上げます。
(メディア情報部 山下和夫)
ォーラム参加者の構成上、家族連れが多く、また託
児の人数も100名余りと、ここでも本学を含む学生ボ
ランティアが活躍し、生身のダウン症児とのふれあ
いをとおして将来医療人として患者さんと接する参
考になったのではないかと思います。
日本ダウン症ネットワークの武部 啓理事長、ダウ
ン症フォーラムの朝本明弘実行委員長の挨拶後、シ
ンポジウムと講演が2会場同時進行で始まりました。
シンポジウムは「ダウン症と思春期」と題して、3名
の先生方の講演があり、医療、心理、社会的視点か
ら思春期のダウン症者の支援をいかにするか活発に
意見交換され、立ち見がでるほどの参加者で、会場
※ Peer counseling: ピア・カウンセリングの考え方は、同
からの質問や受け答えに、シンポジウムが予定より
じ背景を持つ人同士が、対等な立場で、話を聞き合うこと。
30分以上も延長されるほど熱気に溢れていました。
「助けることと助けられることは対等である」
。対等とい
今年6月から保育園で働き始めた 20 歳のダウン症
うことの具体化として、障害を持つ人の自立のための相談
者の女性のビデオ講演は、保育園で活き活きと働く
に障害者自身があたる。
様子をご自分で解説され、趣味のピアノ、英会話、
ミュージカル出演など青春を謳歌する姿に、若いダ
ウン症児の母親から溜息が出て、
「元気
と勇気が湧いてきた」と感想を伝えて
くれました。
別会場の教養棟では「ダウン症児の
赤ちゃん体操教室」が開かれ、まだ歩
けない24名のダウン症児を対象に体操
を実演指導し、ダウン症者本人や先輩
のダウン症児者の親によるピア・カウ
ンセリング※も行われました。この体操
教室は兵庫県立塚口病院の赤ちゃん体
操スタッフ11 名の手弁当によるボラン
ティアで企画運営され、参加者の親か
らは大変好評を得ました。また地元の
ダウン症者やその支援者による一芸披露コンサート
医療、療育関係者の方々もボランティ
38
皮膚科学 石崎 宏 教授
日本中国国際真菌学会 一等賞を受賞
共同発表者の金学珠教授と河崎昌子助手
第5回日本中国国際真菌学会と第2回アジア太平洋
医真菌学会の合同学会が2001 年8月 23 日∼ 25 日に
中国昆明市において開催された。
この学会の一般演題(展示発表)104題(欠番を含
む)の中から日本側2題、中国側2題の優秀発表が選
出され、皮膚科学教室石崎宏教授の展示が日本側の
皮膚科学 望月 隆 助教授
平成13年度 日本医真菌学会奨励賞受賞
第45 回日本医真菌
学会が東邦大学大橋
病院病理学教授直江
史郎会長のもと、平
成 13 年9月 26 日、27
日の2日間、東京の
都市センターホール
で開催された。
この学会は基礎か
ら臨床、あるいは抗
真菌剤の開発にわた
るまでの真菌症に関
する全ての領域を網
羅した専門学会で、会員数は約1000名である。この
学会では例年1∼2名の研究成果に対し、日本医真菌
学会奨励賞が授与されるが、本年度は本学皮膚科の
望月隆助教授の「核リボソーム D N A の n o n - t r a nscribed spacer領域の多型に基づく皮膚糸状菌の分子
一等賞に選ばれた。
受賞した発表は「中国におけるスポロトリクス・
シェンキィの自然界分離株について」という題目で
ある。これは、スポロトリコーシスという真菌症の原
因菌であるスポロトリクス・シェンキィを中国の金
学珠教授が枯葉や土壌から分離し、本学皮膚科学教
室において形態学的、分子生物学的、免疫学的性質
および病原性について検討した結果、これまでに調
べた限りの臨床分離株が分子生物学的に単一の種で
ある一方、自然界分離株は単一の種では無いという
事実を明らかにし、更に動物の体がフィルターの役
目をしているために臨床分離株が均一なものとなる
事を示したものである。
学会最終日のさ
よならパーティー
で、アジア太平洋
医真菌学会副会長
の王端礼教授から
賞状と副賞の金一
封が授与された。
疫学的研究」が受賞の対象になった。
内容は1980 年初頭までは本邦での存在が確認され
ていなかった白癬菌Arthroderma benhamiaeが、1996
年以降、相次いでペットやその飼い主の白癬病巣か
ら分離されているが、この本邦分離株の由来や感染
経路を、現在最も鋭敏な分子マーカーとされている
non-transcribed spacer (NTS)領 域 を 含 む ribosomal
DNA の制限酵素分析法で検討したものである。その
結果、本邦分離の8株は5つの分子型に分けられ、家
族内、あるいは同じ患者の別々の病巣から分離され
た菌株は同じ分子型を示す一方、他の株では分離地
域が同一でも菌株ごとに別個の分子型を示すことが
明らかになった。従ってこの方法によりA. benhamiae の菌株の識別が可能であった。また外国由来の基
準株と本邦分離株の分子型は異なっていた。以上よ
り、由来はなお明らかではないが日本には分子型の
異なる複数の菌株が移入されたと推察された。また
同じ分子型に含まれた株が広く国内に分布しており、
これはペット動物の移送に伴って本菌が蔓延した結
果と考えられた。今後この手法による研究を進める
ことで、真菌症の感染経路の解明は新しい局面を迎
えると期待される。
(皮膚科学河崎昌子記)
39
平成13年度学会開催一覧表(学会等開催補助金交付申請に基づく)
学 会 名
講座名
規模
開催 期 日
参加人数
(予定)
会
場
第18回太平洋外科系学会日本支部会
耳鼻咽喉科学
国際 H13年11月1日∼3日
日本海セトロジー研究会第12回大会
人文科学
全国 H13年6月15日∼17日
第31回日本腎臓学会西部学術大会
腎臓内科学
全国 H13年10月5日∼6日
第12回日本小児外科学会QOL研究会
小児外科学
全国 H13年10月6日
100 国立台湾大学
(台北市)
80 ホテル大佐渡
(新潟県佐渡市)
1000 金沢市文化ホール・
ニューグランドホテル
250 金沢市観光会館
第3回耳鼻咽喉科ナビゲーション研究会
耳鼻咽喉科学
全国 H13年11月24日
100 石川厚生年金会館
第36回日本脳炎ウイルス生態学研究会
第38回日本細菌学会中部支部総会
熱帯医学研究 全国 H13年5月10日∼11日
部門
血清学
地方 H13年10月25日∼26日
150 ホリディ・イン金沢
第37回中部日本小児科学会
小児科学
地方 H13年8月25日∼26日
400 金沢市文化ホール
第23回日本熱傷学会北陸地方会
形成外科学
北陸 H14年3月3日
150 金沢医科大学
第69回日本麻酔科学会北陸地方会
麻酔学
北陸 H13年9月2日
200 金沢医科大学
90 フローイント和倉
人物往来
□水島 豊教授/弘前大学老年科学講座/ 1974 年群馬大学医学部卒業/ 1974 年金沢大学医学部
第1内科/ 1976 年北海道大学医学部大学院/ 1980 年国立札幌病院・道ガンセンター消化器科/
1 9 8 2 年米国ロヨラ大学医学部病理学講座/ 1 9 8 3 年米国イリノイ大学医学部微生物・免疫学講
座/ 1984 年富山医科薬科大学第1内科助手/ 1995年同講師/ 1997 年 11月より現職/平成 13 年9
月14日大学院セミナーにおいて「統合医療について考える」と題して講演。/老年病学教室
□鄭 漢忠講師 /北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座/昭和 57 年北海道大学歯学部卒
業/平成 13 年9月 25 日大学院セミナーにおいて「歯科と摂食・嚥下障害」と題して講演。/口腔
科学教室
□村川雅洋教授 /福島県立医科大学麻酔科学/昭和 55 年京都大学医学部卒業/昭和 56 年大阪厚
生年金病院麻酔科/昭和 60年京都大学医学部附属病院手術部助手/平成5年京都大学医学部附属
病院集中治療部講師/平成9年 12 月より現職並びに附属病院集中治療部長/平成 13 年9月 21 日大
学院セミナーにおいて「肝移植術の周術期管理」と題して講演。/麻酔学教室
□稲葉 憲之教授 /獨協医科大学産科婦人科/昭和 47 年千葉大学医学部卒業/昭和 53 年放射線
医学総合研究所医員、千葉大学医学部助手(産科婦人科学講座)/昭和 54 年医学博士(千葉大
学医学部)/昭和 5 4 年∼ 5 6 年(postdoctoral fellowship)西独 B e h r i n g 研究所( M a r b u r g 大学、
Heidelberg 大学、Munich大学共同研究)/昭和 59 年千葉大学医学部講師(産科婦人科学講座)/
平成6年千葉大学医学部助教授(産科婦人科学講座)/平成7年獨協医科大学主任教授(産科婦
人科学講座)/平成 10 年総合周産期母子医療センター長(獨協医科大学)/平成 13 年大連医科
大学客員教授(平成 16 年まで)、ハルビン医科大学名誉教授(終生)/平成 13 年 10 月 19 日大学
院セミナーにおいて「子宮頚癌治療の現状について」と題して講演。/産科婦人科学教室
40
病 院
医療安全管理の体制確保のための職員研修会
テーマ: 「患者さんの安全のために」医療事故防止ここがポイント
−患者さんに納得感のある医療・看護を−
講 師: 中村 彰先生(石川県医師会理事 医事紛争対策部)
中村彰石川県医師会理事
本学病院の安全管理の体制確保のための職員研修
会が、8月30 日(木)午後5時 30 分から病院本館C41
講義室において、病院各部門の医療安全管理者(部
門リスクマネージャー)48 名、医師・看護婦・医療
技術者等 214 名、合計 262 名の出席のもと開催され
た。この研修会は、全病院的な見地からの安全管理
体制を図るための職員研修会として、本院の医療安
全対策委員会が主催して開催したものであり、本年
度第1回目の研修会である。
最初に、内田健三病院長から、研修会開催の趣旨
説明と、医療法の改正を受けて本院が取り組んでき
た医療安全管理体制の整備状況、インシデント情報
収集結果及びインシデントの代表事例について報告
がなされた。また、「本院のインシデント事例の収
集・周知状況については、各科の取り組みに差があ
るように見受けられるので是非おくれのないように
しほしい。今後とも、職員の一人一人が医療事故防
止のための具体的方策について十分周知して業務を
遂行してほしい」との依頼があった。
引き続き、医療安全対策委員会委員長の高島茂樹
診療部長の座長のもと、石川県医師会理事の中村
彰先生から、「『患者さんの安全のために』医療事故
防止ここがポイン
ト−患者さんに納
得感のある医療・
看護を−」と題し
た特別講演が行わ
れた。特別講演は、
参加した職員に直
接質問がなげかけ
られるなど対話形
式で進められた。
主な講演内容の要
約は次のとおりで
ある。
◇平成 1 1 年1月
に横浜市立大学医学部附属病院で起こった患者取り
違え事故が発生してから、患者さんに高度な技術で
医療を提供することが期待されている大学病院で医
療事故が頻発している。これは重篤な患者さん・高
度先進医療を必要とする患者さんが多いことや教
育・研修期間にある若いスタッフがいること、各医
局の独立性が高いため病院全体で事故防止の意思統
一がされにくいなど大学病院の特性に起因するため
であると考えられる。
◇事故防止対策を講ずる場合には、
「人間はミスを
犯すものである。事故は必ず起こるものである」と
いう前提に立って対策を考えることが必要である。
具体的な事故防止策としては、事故防止のためのシ
ステム構築、医療事故防止対策委員会の設置、事故
防止対策マニュアルの作成、職員研修・講演会の開
催、提出されたヒヤリ・ハット事例及びインシデント・
レポートの原因分析を行うことなどが大切である。
◇日常診療の心得として、常に患者さん本位の医
療を心掛け、患者さんとの信頼関係を確保し、イン
フォームド・コンセントを徹底することが重要であ
41
り、患者さんが望んでいるであろう情報を判断し、
提供しなければならない。
◇カルテは、事実を具体的かつ詳細に正しく書く
とともに主観的・感情的表現は避ける。また、看護
記録もカルテの一部との認識が必要である。
◇看護婦を対象とした医師に関するアンケート調
査では、カルテの文字や指示が読みにくい。医師と
話し合いする雰囲気でない。患者さんの診察や回診
が不十分である。質問したり意見を言うと怒るなど
の意見が多数を占めた。このようなことから、医師
は、患者さんとの間は言うに及ばず、看護婦等との
インフォームド・コンセントも不可欠で、相互の良
好な信頼関係を構築することが大切である。
◇医師からヒヤリ・ハットした事例の報告が集まり
にくいというインシデント・レポートの問題点があ
る。これは、報告がどう利用されるか分からない。自
分の失敗を明らかにする心理的抵抗、同僚や上司か
ら非難される。報告すると待遇に影響するのではな
いか不利益になるのではないか。また、同僚を密告
するようで嫌だなどという要因がある。これらの問題
を解決するには、インシデント報告の目的と懲罰や
人事管理に利用しないことを明確にするとともに、
インシデントはチーム全体でアクシデントに結びつか
なかった事例であるという考えを強調する必要があ
る。
◇診療録は、診療行為の事実に基づいて、遅滞な
く必要事項を十分記載しなければならない。電子カ
ルテを導入している病院の場合には、電子媒体に書
き込まれた情報が開示され、書き込んだ医師自身の
能力が同僚からチェック・評価される。従って、こ
のことを絶えず意識しながら業務を遂行すれば、電
子カルテを導入している病院の医療の質は間違いな
く向上する。
講演後は、職員から事前に寄せられた質問
事項に対する回答とともに講演内容に関する
質疑応答が行われた。この中では、どの程度
の検査や処置まで同意書の取得が必要なのか
との質問に対して、手術等の侵襲の大きい医
療を行う場合には、緊急事態で同意を得るこ
とができない場合を除いて、患者さんの同意
が必要であり、同意を得た場合には「同意書」
により確認を得ておかなければならない。ま
た、同意を得られない場合には、説明した内
容、患者さんが同意しなかった事実、その理
由等を診療録に記載することが重要である。
国立大学医学部附属病院の病理部の技官が検体を
取り違え、肺感染症患者を肺癌と診断し手術を施行
するという医療事故が発生し、この技官が業務上過
失障害で書類送検された。このケースにおける個人
と病院の責任の在り方に関する質問事項については、
病院の管理体制がずさんでない限り、刑法上は「個
人」がその責任を負うこととされている。
インシデントや医事紛争の判例を公開することは、
起きてしまった事例に対する対策を講じて、次の事
故発生を未然に防止するために非常に有用となると
考えられが、日本では、医療事故に関する統計がな
く、保険会社に依頼しても開示してくれないので、
日本医師会から関係機関に積極的に働きかけて欲し
いとの依頼について、日本医師会では医師賠償責任
に係るデータはあり、判例集もCD で配布している。
しかしながら、日本では広く一般に開示されていな
いようであるとの現状説明がなされた。
今回から職員研修会に対するアンケート調査を実
施した(出席者数 2 6 2 名のうち 7 6 名回答、回答率
29.0 %)
。アンケート結果では、具体例の説明が多く
大変分かり易い有意義な講演であった。医師と看護
婦の良好な信頼関係を構築し、チームとして患者さ
ん本位の医療を行うことを、常に心掛けて業務を遂
行したいとの感想が多数を占めた。また、次回の研
修会に関する意見では、再度、中村先生の講演を聴
きたい。実例を提示して原因分析から改善までの経
緯を詳細に解説するような研修会を企画してほしい
などの意見があった。今後は、これらの感想及び意
見を踏まえ、参加者全員が「患者さんの安全」につ
いて共通認識を持ち、業務を遂行することが出来る
ような研修会を開催していきたい。
(管理課 井上善博記)
42
第22回
関連病院会議
特別講演Ⅰ:ポジトロン断層法による腫瘍診断
東 光太郎先生(金沢医科大学放射線医学教授)
特別講演Ⅱ:総合診療科と地域連携
神田享勉先生(金沢医科大学総合診療科教授)
第 2 2 回関連病院会議が、平成 1 3 年8月3日(金)
ホテル日航金沢において開催された。
この会議は、病病・病診連携を深め、それぞれの
機能に応じて患者さんの紹介・逆紹介の推進を図り、
地域に密着した特定機能病院として、その使命と責
任をはたしつつ、より一層地域の発展・充実に貢献
することを目的として毎年開催されている。
今回は、64 関連病院から79名の病院長、事務長等
が出席され、本学からは、竹越襄学長、内田健三病
院長をはじめ、副院長臨床各科の教授、助教授等、
合計127 名が出席して、地域における医療連携の推進
などについて意見交換が行われた。
内田病院長の挨拶の後、特別講演として、東光太
郎放射線医学教授の「ポジトロン断層法による腫瘍
診断」と神田享勉総合診療科教授の「総合診療科と
地域連携」と題した講演が行われた。
引き続いて懇談会に入り、最初に竹越学長の挨拶
があり、その後、本学病院の現況報告として、内田
平成13年度
医療監視
平成 13 年8月 24 日(金)午前10 時から午後4時に
わたって、厚生労働省東海北陸厚生局、石川県福祉
部健康推進課、石川県石川中央保健福祉センター・
河北地域センターによって医療法第 2 5 条の第1項
(県知事の立ち入り検査)及び第2項(厚生労働大臣
の立ち入り検査)に基づく共同医療監視が行われた。
例年は県及び石川中央保健福祉センターによる医療
監視であったが、特定機能病院における医療事故多
発の状況を受けて、昨年度から厚生労働省と石川県
と合同で立ち入り検査が実施されている。
午前10時より、厚生労働省係官2名、石川県係官2
名、保健所係官7名の計 11 名が各担当毎に実地検査
八尾総合病院藤井久丈病院長の報告
病院長から患者紹介・逆紹介状況について、堤医療
情報部長から電子カルテと診療効率についての報告
が行われた。
また、今回の会議から新たな企画として、関連病
院の皆様からの様々なご意見やニュース等をお話し
していただくこととなり、最初に新メンバーとして参
加された八尾総合病院の藤井久丈病院長から「郊外
型総合病院の在り方」について、小松市民病院の亀
田健一病院長からは「開放型病床の現況」について
それぞれご報告をいただいた。
懇談会終了後の懇親会では、和やかな雰囲気の中
で各診療科領域の医師同士の活発な意見交換が行わ
れ、盛会裡に終了した。
(地域医療連携事務課上端雅則記)
に入り、事前に提出してあった資料に基づき、医療
従事者数、設備概要、管理帳票、業務委託、防災体
制、感染性廃棄物、放射線管理及び、医療安全管理
等の検査が行われ、引き続き、現場確認を兼ねて施
設見学が行われた。
午後4時より、河北地域センター菊池修一所長より
総評が行われ、薬剤師数が法定人員に達していない
ので適正な人員とするよう指摘があった。また、厚
生省係官から安全管理体制について、昨年度の指摘
事項は改善されているものの、各部門リスクマネー
ジャーによるインシデント事例の収集とその周知の
取り組み状況が、各部門でかなり温度差があるよう
なので、全職員に研修会での感想・意見に関するア
ンケートの集収を行い、また、欠席した職員に対し
てはビデオ等を活用して必ずフォローしていく旨の
指導がなされた。
(管理課岡本真一記)
43
管理・運営
診療報酬不当請求報道についての本学の見解
学校法人金沢医科大学理事長 小田島 粛夫
NHKは、平成13 年10月10 日、本学病院が6月の国の調査で医療費の不当な請求が発覚しないよう電
子カルテの内容を組織的に書き加えていたと報道しましたが、この報道は、電子カルテに理解が浅く、
その操作に未熟な医師の偏った証言をベースになされたものであり、また、本学病院が社会的に誤解
されかねないような内容となっていました。
本学病院では、すでに関係官庁およびマスコミ各社に対し、不正請求の事実がない旨、事情説明を
行っていますが、今回の報道が社会的に重大な影響を与えていることから、改めて本学の見解を二、三
述べさせていただき、関係各位のご理解をお願い致したいと思っております。
1. 本学病院の「電子カルテ」について ── 内容を改ざんすることは不可能です
本学病院の電子カルテは、平成7年12 月に開発を開始し、平成9年10 月にフルオーダーエントリーシ
ステムを稼動、同12月に電子カルテシステムを4診療科で稼動させ、平成12 年10 月から、全診療科の
診療録の電子媒体による保存すなわち「電子カルテ」を原本とすることに定めて運用してきました。
このシステムは、電子カルテ情報と全オーダー情報の連携処理を中核とするオンライン・リアルタ
イムシステムであり、平成11年4月 22 日付厚生省3局長連名通知「診療録等の電子媒体による保存に
ついて」に示されている、真正性、見読性、保存性の基準を厳格に満たし、かつ、プライバシー保護
の機能を十分に備えているものです。
電子カルテに入力された内容は、記載者が確定保存操作を行うと(確定操作をしなかった場合でも
48 時間を経過すると自動確定保存されます)
、記載者氏名、記載日時等の記録とともに確定保存され、
その後は、内容の抹消や加筆による変更、すなわち改ざんが一切できないシステムとなっています。
確定保存後に追加記載等が必要となった場合には、追記を行うことが可能です。その場合には、追
加記載した内容とともに追記した医師名、追記日時が全て記録されるので、
「医療費の不当な請求が発
覚しないように後から書き加える」といったことなどはできません。
本学が全国の医学校に先駆けて電子カルテシステムを開発導入した目的は、患者さんの診療情報を、
1患者1ファイルの原則で統合し、膨大な量の画像情報をはじめとする検査データ等を電子化すること
で、省スペース型蓄積を実現し、医師等の医療スタッフがこれらを迅速・正確に把握し共有し、医療
の質を向上させ、事故を防止し、さらに患者さんにも診療情報を端末画面で見てもらってインフォー
ムドコンセントに役立て、患者本位の開かれた医療サービスを実現し、また、新しい診療参加型臨床
実習による医学教育の方法を開拓するという意図に基づくものです。
2. 「カルテの自主点検」について ── 医師の教育のために行われています
本学病院は、医師を養成する教育研修機関であるとともに、同時に保険診療を取り扱う保険医療機
関として地域の医療を担当しております。
カルテには、日常行われる診療情報を遅滞なく記載すべきであります。しかし実際面では、カルテ
の記載はそれぞれの患者さんの診療時間中に全てを記載することはできず、診療終了後にも記載し、さ
らに症例検討会などによって当該患者さんの病状に関する各種の医学的情報を追加記載し治療に役立
てるなど、記載に関しては多岐にわたるのが実状です。このため、本学の電子カルテでは、前述のよう
に追加記載の日時、記載者名が入った形での追加記載が可能なシステムとしているのです。
本学病院では、400名近い医師が常勤しています。医師に教育研修の一環として診療録記載の指導を
常時行うとともに、保険診療に携わる保険医としての診療記録の適正化について配慮し、院内に設置
44
されている保険指導委員会を通じて、毎年期間を定めてカルテの記載内容を点検する自主点検を実施
しております。重要な記録の記載漏れを補完するのは医師の義務であるからです。記載内容に不十分
な点があった場合は、各診療科の診療科長はじめ医局長に指摘し、その後の記載について適正に行う
よう指導の徹底を図ってきております。また、教育研修病院であるとともに高度医療を行う特定機能
病院という性格から、毎年定期的に卒業直後の研修医と、各診療科の保険担当の医師に対し、厚生労
働省石川社会保険事務局の担当官と石川県医師会の保険担当理事(医師)を招聘しての講習会を開催
し、保険診療の実際や請求内容についての注意事項や留意点等を徹底するための教育プログラムも実
施し受講を義務付けております。
平成12 年10 月に全科一斉に紙カルテから電子カルテへ転換しましたが、医師たちのコンピューター
操作やシステムの習熟の関係で、転換後ある程度の期間は記載漏れが多い状況にありました。再訓練
を行う必要があり、本学病院保険指導委員会が全診療科を対象として診療録を充実させる教育研修・
保険診療上の適正記載を目的に、転換後初めての自主点検を計画し実施したものであります。
3.
「特定共同指導」について ── 保険診療の適正な運用のために行われています
報道では「国の調査」あるいは「保険指導」などの言葉が使われており、その役割の認識について
一部に誤解を生じているようなので、念のため説明いたします。6月に本学で行われたのは、厚生労
働省・石川社会保険事務局・石川県の3者による「特定共同指導」です。
この特定共同指導は、健康保険法及び老人保健法の規定に基づいて、医師等の卒後教育修練や高度
医療を提供する臨床研修指定病院、大学附属病院、特定機能病院等の保険医療機関に対して、保険診
療の適正な運用を図ることなどを目的に行われています(学報107号43頁)
。
国公私立を問わず全国の対象医療機関に対し順次行われており、本学病院では前回は昭和60 年に行
われ、北陸では金沢大学医学部附属病院、富山医科薬科大学附属病院、石川県立中央病院などでも今
回と同じような特定共同指導が行われました。
4. 新しい時代の医療を拓く電子カルテにご理解を
最後に、電子カルテシステムによる診療録の電子保存を実施したのは、国内の大学病院では本学病
院が最初でもあり、万全を期して開発を進めてきました。電子カルテで特定共同指導を受けたのも大
学病院では本学が最初であると思います。
本学の電子カルテシステムは、前述のように、
(1) おびただしい量の診療情報の迅速・正確な伝達と省スペースの蓄積が図られ、医療チーム内の高
度な情報共有とEBM (Evidence-Based Medicine) の導入などにより実現される医療の質的向上、
(2) オンライン・オーダリングによる患者さんの待ち時間短縮などによるサービスの向上、
(3) 必要に応じて、患者さんにも開示し内容を確認してもらってインフォームドコンセントを促進する
など、患者本位の開かれた医療の展開、
(4) 蓄積情報のデータベース化による、診療参加型臨床教育、研修、および臨床研究への支援、
(5) 地域における医療情報支援体制の確立による地域医療連携の推進、
などの多くの利点を考慮して導入を決定し、種々の面からチェックや評価を受けて実施に踏み切った
もので、開発中および導入後に国内の多くの研究開発者の訪問見学をいただき種々ご意見もいただき
ました。国のIT化政策が着々と進行する中で、今後ますます診療情報の電子化による医療連携のネ
ットワーク化が進むと思われますが、今回このような誤解を生むような事態が生じたことで、電子カル
テ化を計画中の医療機関などの皆様に水を差すような結果になることのないようにと懸念しておりま
す。
これからの電子カルテシステムの普及に向けてその芽を摘むことのないよう、温かい目で見守ってい
ただくようお願いし、引き続きご指導ご鞭撻の程をお願い申し上げる次第です。
(平成13年10月16日)
45
大学基準協会
加盟判定審査受審へ
自己点検・評価体制整う
去る平成 13 年7月 23日に開催された第 187 回常任
役員会及び平成 13 年8月 23 日に開催された第 624回
医学部教授会で大学基準協会へ加盟判定審査の申請
をすることが承認された。大学基準協会は、昭和22
年に結成された財団法人組織の第三者評価機関であ
る。同協会への加盟判定審査の申請は、大学評価を
受け、社会に対して広く大学の質が保証されるとい
う意味で意義がある。
加盟判定審査申請に向けて学内の自己点検・評価
体制も整備され、平成 13 年 10月9日には第1回金沢
医科大学評価運営委員会(委員長:竹越襄学長)が
開催された。今後、この運営委員会の下部に「基本
問題検討委員会」、「医学部評価委員会」、
「大学院評
価委員会」、
「大学病院評価委員会」、
「総合医学研究
所評価委員会」
、
「図書館・情報システム評価委員会」
、
「看護専門学校評価委員会」、「管理・運営評価委員
会」の8部門の評価委員会を組織し、本学の「理念・
目的・教育目標」、「教育研究内容」、「研究活動」、
「管理運営」などについて点検・評価を実施して申請
することとなる。
点検・評価作業には、提出資料なども膨大な量に
なり、多大な労力を要する。しかし、第三者評価を
実施し、その評価結果を大学の教育研究活動の改
善・改革に反映させることは、社会に対してその役
割を明確にすることになり、極めて大切なことであ
る。
従来から大学内で自主的に自己点検・評価が行わ
れ、冊子としてまとめて公表していたが、今回は、
大学基準協会の加盟判定審査を前提とした全学的な
点検・評価作業となる。今後、自律的でさらに充実
した自己点検・評価を継続的に行うことによって、
教職員が一体となり本学の理念・目的に則した「個
性が輝く」大学づくりを進めていくことが望まれる。
(企画調査室 坂田慎一記)
関連ニュース
内灘大橋開通
大学前の「医科大通り」を真直ぐ放水路を跨いで北に伸
ばす架橋工事が3年にわたる工期を経て完成し、平成13年
9月16日(日)に開通式が行われた。
石川県の資料によると、橋は長さ344m、有効幅員16.5m、
往復2車線と両側に各 3.5m の広い歩道が設けられ、高さ
54mの2本の主塔が橋桁をケーブルで吊る耐震設計の斜張
橋である。
橋の名称は「内灘大橋」であるが、内灘町が公募して決
めたニックネームは「サンセットブリッジ内灘」である。
橋周辺は公園として整備され、日本海への日没や北アルプ
スからの日の出の光景はまさに絶景である。
橋の開通で、金沢から能登方面に往復する特急バスは全
て本学病院前に停車して能登海浜自動車道の内灘ICから出
入することになり、患者さんの便も格段に改善されること
になった。また橋を渡った先の内灘町北部地区には約1000
戸を擁する白帆台ニュータウンの造成も県の事業として進
められている。
(総務課)
橋の北側から本学キャンパス方向をのぞむ
46
互
助
会
立山バス旅行
恒例の互助会夏のバス旅行「立山・室
堂散策」が7月 29日と8月5日の2回に分
けて実施された。参加者は、合計 156 名
であった。
私は、8月5日のツア−に参加した。当
日は、低い雲が立ち込める状態で、室堂
の天気が気になったが、
「山頂/晴れ」の
室堂から立山山頂をのぞむ
予報を信じて、立山を目指した。
りの混雑ぶりで、雄山神社でのお払いを断念し、簡
立山有料道路に入り美女平からはガスが立ち込め
単に昼食を済ませ、20分程休憩の後下山した。
「称名滝」は全く見えない状態で少し不安になった
下りは、岩を落とさないよう慎重に足場を確かめ
が、登るにつれガスも晴れてゆき、室堂駐車場に着
ながら降りた。人の数は相変わらずで、登りの人に
いたときは、どこまでも青い空が続く雲上の別世界
道を譲りながらの下山となった。それでも一の越に
であった。
は45 分程で到着。一の越からは、下りの楽さと道の
バスを降りた瞬間、爽やかな風が頬を打ち、澄ん
良さがプラスして、室堂バスターミナルまでは 40 分
だ空気が、心と体を浄化していく様に感じられた。
で到着。バスターミナルに入る前に「立山玉殿の湧
私は、仲間4人と雄山の山頂を目指した。しばらく
水」でのどを潤した。水は非常に冷たく飲んだ瞬間、
して雷鳥の親子に出会った。人間馴れしているのか
身体の中に一本筋が通った様な衝撃があり、あまり
警戒する様子も無く、カメラに収まっていた。室堂
のおいしさに、空いたペットボトルに詰めて持ち帰る
から一の越までは整備された歩道が続き、途中の雪
ことにした。
渓の上以外は歩き易く約1時間で一の越に到着。10
帰りのバスは予定どおり午後3時に大学へ向けて室
分程休憩後、山頂をめざして出発。ここからは、岩
堂を出発。再び、ガスの中を走り抜け、大学に到着し
場の連続で人の多さに思うように進めず山頂に到着
たのは予定時刻より13分早い午後6時 17分であった。
したのは、50 分後の正午過ぎであった。山頂からの
今回のバス旅行は、自然の醍醐味を十分に満喫し、
パノラマは、登りの疲れを一気に忘れさせてくれる
澄んだ空気とおいしい湧水で、心と身体のリフレッ
大絶景であった。また、登り切った達成感と充実感
シュが出来た1日であった。(人事厚生課岡山均記)
で思った以上に感動した。しかし、山頂は予想どお
頂上への道からみくりが
池、地獄谷をのぞむ
47
地球にやさしい本学の省資源対策
―光熱費10年の歩みから―
1997 年12 月の地球温暖化防止条約京都会議におい
て、我が国は2010 年の二酸化炭素排出量を1990 年水
準比の6%削減に合意(国際公約)しております。
これを受けて、いまあらゆる企業が省エネルギー・省
資源の推進のために組織を上げて取り組んでいます。
1999 年4月から施工の「改正省エネ法(エネルギー
の使用の合理化に関する法律)
」により本学は「第二
種エネルギー管理指定工場」として指定され、①エ
ネルギーの使用合理化を行う努力義務(エネルギー
消費原単位を年平均1%以上の低減を図る)、②エネ
ルギー管理員の選任・届出義務、③エネルギー使用
状況の記録義務等が課せられ、燃料や電気等の使用
の合理化に関する運用管理が求められることとなり
ました。
本学では、今年度末にコージェネ設備(ガスター
ビンエンジンを駆動して電力エネルギーを得るとと
もに、エンジンからの排熱を利用して蒸気や温水な
どの熱エネルギーも同時に得る設備)を駆使したエ
ネルギーセンターが竣工します。これを機にエネルギ
ーの有効活用を図るとともに、地球に優しい省資源
対策と信頼性の高い電源供給システムが構築され、
より一層の省エネ・省資源に貢献できるものと期待
されております。
図-1
本学におけるエネルギー消費実績は、グラフに示
す如く年々増加傾向にあります。
使用電力量(図1)は、3年周期で約5%の上昇を示
し、平成9年から毎年2∼6%の上昇を推移しており
ます。また、重油使用量(図2)は、記録的な猛暑があ
った平成6年度及び8年度を除き、ほぼ横這い状態を
推移しているものの、石油産出国の減産を背景とす
る原油価格の高騰が影響して、重油消費額の大幅な
増額を余儀なくされております。
今後、病院新棟の竣工により更にエネルギー消費
量の増加は必至の状況からして、一部のみの省エネ
活動に留まることなく、職員一人一人のライフスタ
イルをも見直し、省エネルギーに対する不断の取組
みを徹底されるようご協力願います。
(設備課 宮口和彦記)
省エネルギー対策にみなさんの協力を!
□ 冬季は上着を着用しよう・・・暖房温度20℃
□ 残業ゾーンを限定しよう
□ 暖房器具のエアーフィルターや照明器具と蛍光管を
定期的に清掃しよう
□ 使用していない部屋の空調や照明はこまめに止めよう
□ 昼休みは消灯しよう
□ 古くなった蛍光管は早めに交換しよう
□ 暖房時、部屋の扉は開け放しにしない
□ 終業前に熱源を停止して、余熱を使おう
□ 業務終了時はOA機器等の電源を必ず切ろう
図-2
使用電力量
(千kWh)
25,000
20,000
4,000
15,000
3,000
10,000
2,000
5000
1,000
0
H3
4
5
6
7
8
9
重油使用量
(千kL)
5,000
10
11 12年度
0
0
H3
4
5
6
7
8
10
11 12年度
0
7,000
3,000
14,000
6,000
21,000
9,000
28,000
12,000
(万円)
電気料金
9
(万円)
重油金額
48
病院増改築/新棟の特徴紹介シリーズ
〈その7〉
ジェネレーター導入による発電と買電との併用とする。
エネルギーサプライ ②
・北陸電力が停電となっても自前の発電機で電力供給が
可能となる。
コジェネ・システム 概要
(2) 熱エネルギー(蒸気)供給
・ボイラープラントを全面更新し、発電廃熱利用のボイ
ラーを付加する。
エネルギーシステムの概要
・煙突は老朽化のため新設し、旧煙突は撤去する。
新棟建設に伴い学内で使用するエネルギーが増大するの
・従来使用のC重油は NOx が環境基準に適合しないた
を経済的にまかなうため、コジェネレーション・システム
を導入した新しいエネルギーセンターとして構築する。
め、A重油に変更する。
○コジェネ・システムの導入により、通商産業省(現経済
(1) 電気エネルギー(電力)供給
産業省)関連の補助金の交付を受けている。
・北陸電力からの買電のみの方式であったものを、発電
【電力及び熱の供給施設一覧】
設備・機器種類
受電
受電用変圧器
現 状
施設更新後
5,000KVA×2台
5,000KVA×2台
既設使用
−
1,200KW ×3台
(燃料:特A重油)
新設
(常用/非常用兼用)
800KW×1台(非)
300KW×1台(非)
新設
336KW×1台(非)
300KW×1台(非)
既設使用
200KW×1台(非)
336KW×1台(非)
既設使用
4ton×3台
新設(蒸気回収用)
9.6ton×4台
(燃料:特A重油)
新設
2ton ×5台
新設
100KL×3槽
新設
CGSガスタービン
発電
ディーゼル発電器
(注)(非)は非常用専用
廃熱回収ボイラー
熱源
−
8.4ton ×2台
炉筒煙管ボイラー
12ton ×2台
貫流ボイラー
付帯
−
50KL×2槽
オイルタンク
備 考
【エネルギーフロー概略図】
〈導入前〉
(電気・買電)
北陸電力㈱
(受電・変圧)
→
(変圧)
特別高圧変電所
→
各棟電気室
→ (電気供給) → 学内各施設
(蒸気発生) ボイラー室 →
各棟機械室
→ (蒸気供給)
〈導入後〉
(電気・買電)
北陸電力㈱
(受電・変圧)
→
(変圧)
特別高圧変電所
→
(監視・制御)
各棟電気室
電気室
(発 電)
コジュネ室
(蒸気発生)
ボイラー室
→ (電気供給) → 学内各施設
→ (電気供給)
→ (蒸気供給)
(新エネルギーセンター)
49
【エネルギーセンター施設概要】
工 期:2000年12月1日∼2002年2月27日
構 造:鉄筋コンクリート造(RC造)地上3階
延床面積:1,866.23㎡(オイルポンプ室36㎡含む)
(施設整備推進室)
<病院新棟の特徴紹介シリーズ・バックナンバー>
①学報№102「臓器別診療態勢」(2000-May)
②学報№103「臨床教育スペース」
(2000-August)
③学報№ 104「バリアフリー、アメニティ、プライバシー」
(2000-November)
④学報№105「腎臓病センター」
(2000-January)
⑤学報№106「免震構造」(2000-May)
⑥学報№107「エネルギ−サプライ①コジェネ・システム導入の経緯」
(2000-August)
病院増改築工事の進捗状況
【病院新棟】
〔全工事出来高:平成13年8月31日現在5.0%〕
平成13年 6月 ∼
場所打ち杭打設、一時根切り、
スロープ及び擁壁解体
8月31日現在 場所打ち杭打設、二次根切り、
アースアンカー工事、
図書館横設備共同溝工事<継続中>
【エネルギーセンター】
〔建築工事出来高:平成13年8月31日現在28.0%〕
〔設備・コジェネ工事出来高:平成13年8月31日現在3.0%〕
平成13年 6月28日 ∼
場所打ち杭打設、設備共同溝部根切り
8月 1日 ∼
設備共同溝低盤配筋・コンクリート打設
煙突基礎配筋・コンクリート打設
8月31日現在 根切り工事、設備共同溝配筋<継続中>
【その他】
○LPG切替 新施設より供給開始
LPG配管系統切替:9月5日
(施設整備推進室)
(第3回報告 平成13年8月31日現在)
新棟場所打ち杭打設、2001/08/31現在
エネセン場所打ち杭打設工事、2001/08/31現在
50
随想・報告
ハワイ大学PBLワークショップに参加して
公衆衛生学講師
三 浦 克 之
2001年8月 19日から24日までハワイ大
学医学部によるPBL ワークショップに参
加した。今回本学からの参加は私1人で
あったが、日本の各医学部の基礎・臨床
の教員20 名弱が参加していた。個人的に
は、昨年米国留学中にNorthwestern 大学
の PBL を見学し、更に、本年4月からの
本学 PBLにチューターとして参加した経
験があったので、少し深いところを探っ
てみることを目的にしてみた。一つの大
きな課題は、私の担当分野である社会医
学系の内容(公衆衛生学、疫学、予防医
学、衛生行政、産業保健、環境保健など)
をPBL 形式の教育の中に組み込むことが
North ShoreへPicnic/ウミガメと泳いだ
できるのかを知ることであった。
(左からDr. Tam、私、Dr. Greene、Dr. Little)!
その答えは最初のPBLのデモンストレーシ
ョンですぐに見つかってきた。ごく一般的な
Health)が存在して公衆衛生修士・博士を養成してい
PBL のどのケースにおいても、チューター用ガイドに
るので、医学部における衛生・公衆衛生の教育は日
おけるpossible learning issues が、
「behavioral」
、
「pop本よりウエートが低い。例えば産業保健の内容は医
ulational」
、
「biological」
、
「clinical」の4つに分類され
学部ではあまり教育されていないとのことであった。
ており、前2者は本学のPBLケースにおいて欠けてい
本学のPBL に社会医学を組み込むにはそれぞれの
る部分である。ハワイ大学ではこの2者に関する
ケース作成に社会医学の専門家が関与する必要が感
learning issuesが後の2者に匹敵する重みを占めてい
じられた。これまでの本学のPBL ケースにおいては
た。
「populational」の部分はまさに衛生・公衆衛生学
疫学や予防医学の観点が抜け落ちていると感じられ
の分野であり、直面する問題点ごとの疫学、予防医
た。ケースの作成には臨床・基礎・社会医学の各専
学(危険因子、スクリーニング等)、医療システム、 門家がチームで対処すべきと考えて、Dr. Tamにハワ
行政施策、医療保険など様々な点があげられている。 イ大学での現状を聞いたが、実際には各専門家の意
ちなみに「behavioral」は医師患者関係や行動科学的
見を一致させることが困難なことが多く、PBL担当
な問題であり、やはり日本の医学教育で不足してい
教官のみで作成しているとのこと。PBLの難しい局
る部分であろう。この2者については国試ガイドライ
面を知った。一方で、医師ではない P B L 担当教官
ンでも重みが増している部分でもある。
(Dr. GreeneやDr. Tam)の医学・医療に関する知識の
お世話していただいたDr. Greeneに PBL における
深さには驚かされた。長いPBL の経験によるものだ
public health の教育について問うたところ、やはり十
ろうか。
分に可能だとの答えをもらった。しかし米国におい
疫学者として臨床疫学を基礎とする E B M(e v iては医学部の他に公衆衛生学部(School of Public
dence-based medicine)の教育に関心があったが(実
51
際 E B M に関しては公衆衛生学で細々と講義してい
る)
、今回optionalでDr. Kasuya によるPBL とEBMと
の関わりに関するセミナーがあり大変興味深く聞い
た。PBL ケースの中にもEBMの基礎が組み込まれて
いるが、2学年および3学年では全学生が参加する
EBM セミナーを集中して行い、医学部4年間にわた
り何らかの取り組みを行っていた。
PBL 後の試験のやり方の見学も大変興味深かった。
学生1人1人に個別で相当の時間をかけて試験するも
ので、教員側の大変な労力が必要だと思われた。し
かしながら、試験を受ける学生の側のmotivation の高
さが印象的であった。何としても医師になろうとい
う強い意志が感じられた。
4日目の午後、North ShoreへPicnicに出かけた時の
バスの中での参加者と交わした質疑で、教育に貢献
した教員が正当に評価されるのかという問題提起は
切実なものであった。Dr. Tamにも明確な答えはな
く、学内では学長・学部長などからの評価があるも
のの、他大学へのpromotion の際にはやはり研究業績
に重みが置かれることは日本とあまり変わらないよ
うであった。若い教員(研究者)に教育に力を注い
でもらうことの困難さは日米共通のものなのだろう。
本学からの参加者が私1人だったことで、逆に他大
学の若い教員や、加えて教授クラスの先生方と親し
く(馴れ馴れしく?)色々お話ができたことは収穫
であった。大学によってはPBLの導入に関して全く
議論されていないと思われるところもあり、大学か
らの派遣ではなく自費で自ら希望して参加している
教員もいて、その熱意には感服した。
ハワイへの渡航は今回が初めてであった。夏休み
でもあり観光地には日本人観光客があふれていたが、
ハワイ大学の日系のIzutsu副学部長に日本移民の歴史
を聞いたり、日系の教員や医学部生がアメリカ人と
して立派に活躍しているのを見て、ハワイの第一印
象が普通と違うものになった。
52
ロンドン大学留学記
公衆衛生学講師
森 河 裕 子
2000 年8月末から1年間ロンドン大学
に留学する機会にめぐまれました。大学
院を卒業してからいろんなことがあって
ずいぶん遅い留学になってしまいました
が、それなりに良い時期であったように
思います。ただ問題は3人の子供のこと
でした。英国では子供は12 歳まで一人で
外を歩かせてはいけないし、子供だけで
留守番させてもいけないというのです。
Child minderとよばれる子守りおばさん的
な人はいるそうですが、物騒な話もある
し実際どんな風なのかわかりません。結
局、私の親が孫のことを遠く離れた日本
で心配しているよりはいいからと、海外
家族と英国式庭園観光/ロンドンから車で2時間くらい
旅行がてら一緒に行ってくれることにな
りました(実はそのまま1年依存してし
やりたいと思っています)
。仕事と子育ての両立の困
まいました)
。
難さはいずこも同じで、研究室でもよく話題になっ
子供は全日制のロンドン日本人学校(児童数小中
ていました。イギリスは北欧やフランスなどに比べて
あわせて600 人くらい)に入れました。住居は日本人
保育環境が整っておらず、child minderや乳母を頼む
学校周辺にみつけたのですが、その周りには大きな
こともできますがかなり値段が高く、博士号をとっ
日本人村があって住み良い環境でした。私自身新し
い環境で苦労することが目に見えていましたので、 て数年後の若い研究者だと給料はほとんど残らない
と聞きました。そんな事情もあってか、研究者の中
家族にはできるだけ穏やかにすごしてもらいたいと願
には子供が生まれてからは週2日ほどだけ研究室に来
っての選択でした。向こうに行ってからしばらくし
ているパートタイマーの人もいました。ある程度子供
て、オペアという制度があることがわかりました。空
が大きくなったらまたフルタイムの研究に戻るつも
き部屋をただで提供する代わりに子守りなどを頼む
りだと言っていましたから、研究者の雇用形態もい
というもので、アジアやヨーロッパ大陸からの留学生
ろいろのようでした。
に依頼するのですが、頼む方は学生が学校に行く時
私が留学した研究室は、健康問題に関連する社会
間を保証し多少バイト代も払います。オペアを利用
経済的、社会心理学的要因を明らかにすることを主
している日本人と知り合いになりましたが、あたり
要な研究テーマとしています。過去に中川秀昭教授、
はずれもあるし気苦労もあるけれどなんとかやってい
るようでしたので、私も広告を出して募集しました。 衛生学の石崎昌夫先生が留学しています。Whitehall
研究という大きなコホート研究を20年近く維持して
1∼2日の間に8人もの応募があって、よさそうな人
おり、研究費も莫大で多くのスタッフを有し、貴重
もみつかったのですが、その後ごたごたといろんなこ
な研究成果を多数出しています。英国では死亡率や
とがあって、結局オペアは利用せずに終わりました
有病率などを指標とした国民全体の健康レベルが向
(でも、もう一度チャンスがあれば(?)この方式で
53
Whitehall研究を支えるスタッフ
上する一方、社会経済的階級間の健康格差が拡大し
てきています。喫煙率などの生活習慣にも明らかな
階級格差がみられます。こうした健康格差の是正は
労働党政権の保健医療政策の重点課題なわけですが、
その裏付となるデータを提供しているのがこの研究
グループです(私もこのWhitehall 研究のデータを用
いて研究したのですが、公務員という比較的安定し
た職種のはずなのに、階級間に大きな健康格差があ
って本当に驚きました)
。プロジェクトの研究者はほ
とんどが疫学者または心理学者、統計学者で、医師
は教授を含めて少数でした。研究を支えるスタッフ
には様々な職種の人がおり、プロジェクト全体の実
際を統括するプロジェクト・マネージャー、システ
ム・エンジニア、プログラマー、データーマネージャ
ー、看護婦、一般事務職とその下請けなどなど。人
種も様々。Whitehall 研究組織の中にもやはり歴然と
した階級があり、その頂点に立つのがProfessor Sir
Michael Marmotです。私は最初の数ヶ月は誰が何を
しているのかわからず、あの人は何をしているの?
あなたのバックグラウンドは何? などとしょっちゅ
う聞いていました。なんでもかんでも自分でやる日本
の方式しか知らない私には、全体像を理解するのは
とても難しいことでした。
今回の留学では英国の医療保健制度(NHS)や公
衆衛生活動についても勉強したいと思っていました。
英国の医療は日本のような保険制度ではなく国が税
収で賄っていて、NHSを利用する限り無料で医療や
予防的措置がうけられます。百聞は一見にしかずと
申しますが、幸いなことに家族全員たいした病気も
しなかったので医療は現実に体験できませんでした。
予防医学の方はちょっと体験しました。イギリスで
同僚と近くのすしバーでランチ/みんなお寿司が大好き
は最近の髄膜炎の流行から児童や若い人を対象に予
防接種が奨められていました。子供を連れて登録先
のGP(一般医)に行きましたら、外国人の私達にも
何のわけ隔てもなく無料で接種してくれました。つ
いでに私の健康診断もしてくれました。また、私宛
に子宮ガン検診のお勧めの丁寧な手紙がNHS から送
られてきましたので、近くの保健センターに行きま
したら、これもまた無料で、親切な応対で感心しま
した。受診者が少しでも抵抗なく受診できるように
と(特にイスラムの女性たちが)
、ほとんど女性医師
が担当するなどの配慮もなされていました。そこで
は家族計画にも力を入れており、カウンセリングと
同時に避妊薬や避妊具などが無料で提供されていま
した。
“所変われば品変わる”ですね。英国にはジョ
ン・スノウのコレラ対策をはじめとして輝かしい公
衆衛生の歴史があります。しかし、現在では集団を
対象とした公衆衛生活動は特定の対象(貧困地域な
ど)に行われており、一般的な予防医学的事柄は
NHS 制度のもとでGP が担っているようでした。日本
が力点をおいている健診も個人がそれぞれの意志で
GP などの医療機関で受けています。企業健診も有害
作業に従事している作業者を対象にした特殊健診は
ありますが、一般的なものはありません。個が確立
している国では個人の選択が重視されているのでし
ょう。それでいて子宮ガン検診の受診率は日本より
ずっと高いというのです。
英会話の勉強は多少していきましたが全くたりま
せんでした。自分のテーマについて共同研究者と話
し合うことは何とかなりましたが、あらゆる場面で
みんなと同じ土俵に乗る難しさを経験しました。で
も研究室では良い同僚に恵まれ、特に同室のユダヤ
54
ロンドン日本人学校終業時/お迎えの親たちの人だかり
人のスーザンが気楽な人で、ユダヤ人の文化、仕事
のこと、また恋話に至るまでいろいろ聞かせてくれ
て、よい耳のトレーニングになりました(気の利いた
返事ができなくて申し訳なかったですが)
。また、年
寄りと子供連れといったちょっとめずらしい家族構
成のおかげで多くの人と知り合い
になり、多くの人に助けられた1
年となりました。もっと長く居た
ら嫌なことも増えたのでしょう
が、1年くらいだといい思い出ば
かりです。知り合った人の国籍は
様々で、みなそれぞれのところで
自立と共存のために苦労しつつ日
常を送っていました。日本に戻っ
たとたんに世界が破滅にむかって
いるような事が次々とおきて胸が
痛みます。平和を心から望みま
す。
このような機会を与えてくだ
さった中川教授、そして精神的に
も物質的にも援助してくれた公衆衛生学教室、健康
管理センターなどの皆さんに心から感謝しています。
今、また本拠地に戻って現実生活に戻りました。今
後ともよろしくお願いいたします。
64
教室紹介
20
生理学Ⅰ教室
前列左から山田清美事務員、小野田法彦教授、須貝外喜夫助教授
後列左から村本進司技術員、安達洋教務員、杉谷道男講師
1972 年の本学開学と同時に当教室は発足し、大山
浩教授(現名誉教授)が感覚系、特に聴覚の研究で
活躍されましたが定年退職され、1992 年10 月より小
野田法彦教授が就任され現在に至っています。教室
スタッフは小野田教授を筆頭に、須貝外喜夫助教授、
杉谷道男講師、安達洋教務員、村本進司技能員、山
田清美事務員の6名で構成され、講義、実習、研究が
行われています。
教育面では、神経系を中心とした動物性機能の生
理学を担当しております。近年、神経系の分野にお
ける研究の進歩は目覚しく、膨大な情報量の中から、
学生諸子には、簡潔明瞭な講義や実習を行うことを
心がけて取り組んでいます。
研究面では、感覚中枢の情報処理機構の解明に取
り組んでおります。今21 世紀は「脳の世紀」とも言
われておりますが、私達教室員も一丸となり、脳研
究に一石を投ずることを夢に、研究を推進していま
す。現在は、小野田教授の指導の下に、主として嗅
覚中枢の情報処理機構の解明に取り組んでおります。
嗅覚中枢は、従来用いられている微小電極を脳に
刺入しても、他の感覚中枢で見られたような情報処
理に関する法則性を解明することが困難なため、研
究が遅れている分野であります。小野田教授は新し
く光学的計測法を導入し、嗅覚中枢における興奮を、
時間空間的に捉えることを試みました。この手法を
用いて、これまでに杉谷講師は梨状皮質を、須貝は
副嗅球を研究し成果を挙げております。また、この
光学計測法はハード、ソフト両面の最新の知識と技
術が要求されますが、安達、村本両氏の卓越した技
能による多大な助力は研究等の遂行には貴重な存在
であります。明朗闊達な山田秘書も当教室の教育・
研究を円滑に推し進めるにあたり重要な存在であり
ます。
最後に、嗅覚中枢の研究は神経科学の一分野であ
りますから、脳の研究において使われているあらゆ
る方法も同時に駆使しております。他の領域にも十
分対応できると確信しておりますので、興味のある
方々からの共同研究の申し込みを期待しております。
(生理学Ⅰ 須貝外喜夫記)
65
病理学Ⅰ教室
前列左から谷野幹夫助教授、田中卓二教授
後列左から太田隆英講師、長岡あゆみ事務員、前田雅代助手、甲野裕之講師
第Ⅰ病理学教室は開学以来、小田島粛夫名誉教授
(現本学理事長)が講座主任をされてきましたが、平
成9年 10月から、田中卓二教授が第2代講座主任に着
任され、現在に至っています。現在の教室スタッフ
は田中教授の他、谷野幹夫助教授、太田隆英講師、
前田雅代助手、長岡あゆみ事務員及び甲野裕之兼任
講師よりなっています。
田中教授の主研究課題は「がんの化学予防と炎症
関連発がん機構の解析」というもので、食物等に含
まれる発がん抑制物質の発見とその機構の解明、及
び炎症を背景とする発がんとその仕組みの解析にあ
り、他施設との共同研究も進めています。
田中教授の方針として、教室内の切磋琢磨と団結
は勿論のこと、第Ⅱ病理学教室や病院病理部との交
流も重視され、忘年会等も「3病理合同」で行われる
ようになっています。教育も3病理が協調して行われ
ていますが、この「協調の輪」は今後益々拡大し、
近い将来、診断、研究においても3病理合同で行われ
るようになるものと思われます。
「講座の壁の取り払
い」がよく唱えられる今日ですが、第Ⅰ病理はまさ
に時代を先取りしていると申せましょう。
学長を輩出した輝かしい伝統のある第Ⅰ病理学教
室、更なる伝統の達成に向け、教育、診断、研究へ
の真剣な取り組みに日夜邁進しているところであり
ます。
(第Ⅰ病理学 谷野幹夫記)
66
循環器内科学教室
前列左から北山道彦講師、金光政右助教授、松井忍教授、竹越襄教授、津川博一助教授、大久保信司助教授、梶波康二助教授
中列左から 田辺裕二郎医員、三浦順子大学院生、藤岡央研究医、保志場八千代医員、山形壽生講師、金山寿賀子講師、福田昭宏大
学院生、結城奈津子研修医、石田雅朗医員、上杉研医員、多田典弘医員、山下尚洋医員、赤尾浩慶医員、浅地孝能講師
後列左から 岡崎英明医員、佐竹主道医員、竹田健史助手、佐藤暢一医員
循環器内科学教室は、昭和 48年 10 月、故村上暎二教授
を初代教授として開設以来 28年目を迎える。開設当時は、
金沢大学第2内科より赴任された7名の先生により金沢医
科大学暫定病院(以前の浅ノ川総合病院)で診療が始め
られ、昭和 4 9 年9月に金沢医科大学病院が開院し本格的
な診療研究活動が開始された。昭和 53 年からは本学卒業
生が毎年数人ずつ入局し、平成 1 3 年7月までに当教室に
在籍した同門の医師数は 88 名となっている。村上暎二教
授は昭和 61年10 月より病院長、平成2年4月より本学理事
長となられ、金沢医科大学の発展に力を尽くされました
が、残念なことに平成 11 年6月4日逝去された。第2代目
教授は竹越襄教授で、昭和 60 年に同科教授となり、平成8
年より循環器内科学講座主任として現在にいたっている。
また竹越襄教授は平成 1 0年4月から金沢医科大学病院長
として、更に平成 1 1 年9月からは金沢医科大学学長とし
て教室のみならず、大学全体の運営にも力を注がれてい
る。現在教員のスタッフは、教授2名(併任1名)、助教
授4名、講師4名、助手5名、研究医 1 4 名、大学院生2名
だが、この内関連病院への出向者9名、他科研修中1名の
ため 21 名で学生教育、研究・診療にあたっている。大学
における教育活動は、極めて重要な仕事であり、当科で
は、教授を中心に教員全員で学生に対して講義、P B L 等
を行っている。特に循環器分野は、その教育するべき範
囲は膨大で、基礎的な内容から臨床的に役立つ内容や最
新の知見も組み合わせた一貫した教育を行っている。
2 1 世紀における最大の目標は、高血圧や動脈硬化など
生活習慣病を克服することであり、現在当科の外来は1日
平均110人に達し、そのほとんどが生活環境病と関係して
いる。また、保有ベッド数は 64 床を数え、入院診療も県
内諸医療機関からの紹介による重症例が多く、病院所有
のドクターカーの活用により年々救命率も増加している。
また当科における冠動脈造影は、年間 1200 例を数え、そ
して P O B A、ステントや D C A を中心としたcornary intervention数も年間 350例を数え、例数としては北陸3県では
最も多く、全国的にもトップクラスである。また近.年、
ローターブレーターの出現により、難治性狭窄に対して
も効力を発揮し、初期成功率が画期的に伸びている。ま
た、不整脈に対するペースメーカー植え込みも年間 50 例
以上行い、近年カテーテルアブレーションや埋込型除細
動器(ICD)埋めこみを行っている。心不全に関する臨床
的研究としては、急性重症心不全における日本循環器学
会のガイドライン作成の主たる役割を果たした。その他
遺伝子解析による種々の病態の解明や循環器に関する基
礎的な研究が行われ、臨床的研究と同様に国内外の主要
な学会や雑誌において毎年発表を行っている。
(循環器内科学 大久保信司記)
67
内分泌内科学教室
前列左から 木越俊和教授、内田健三教授、中野茂助教授
中列左から今泉範子助手、佐竹英恵大学院生、池田友美研修医、阿部宗医員、姫野万里子大学院生、中川淳助教授
後列左から津田真一大学院生、小西一典研究医、福田雅隆助手、畠山治彦講師、西澤誠講師、伊藤智彦助手
内分泌内科学教室が日置長夫助教授のもとで創設され、
森本真平名誉教授の主任時代を経て、早くも 28 年余りが
経過した。平成 1 3 年 1 0 月現在、当教室は内田健三教授
(講座主任)の指導のもとで木越俊和教授(特任)、中野茂
助教授、中川淳助教授、西沢誠講師、畠山治彦講師、伊
藤智彦助手、福田雅隆助手、今泉範子助手、以下5名の医
員および4名の大学院生が当教室に所属している。
内分泌内科が診療している外来および入院患者のうち
わけをみると、甲状腺疾患のように頚部X線軟線撮影、
超音波検査、CTスキャン、 MRI、核医学検査、生検像な
どの画像診断が主体となるような疾患や、糖尿病のよう
に患者との信頼関係なくしては治療困難となる疾患が主
である。糖尿病患者に対しては、教室員、看護婦および
栄養部のスタッフが院内の糖尿病教室に参加して患者の
糖尿病への関心を深めるように努力している。また外来
患者では高脂血症患者数が増加する傾向にあり、当教室
では高血圧症や虚血性心疾患も含めて生活習慣病にたい
する予防医学的立場から長期的視野をもって診療に従事
すべきものと考えている。患者との信頼関係を最も重視
する当教室の姿勢は派遣先の医療施設においても効果を
あげていると信じている。
当教室では、これまでに主に糖尿病、高血圧症および
甲状腺疾患を対象として基礎的および臨床的研究が行わ
れてきた。特に糖尿病に関しては「糖尿病性合併症の予
防と対策」および「糖尿病における動脈硬化の成因」が
臨床研究のメインテーマとなっている。内容的には、糖
尿病患者における副腎皮質機能異常、血圧日内変動異常、
ミトコンドリア遺伝子異常、血管内皮機能異常、インス
リン抵抗性と合併症、動脈硬化の進展に関する研究など
多岐にわたっている。糖尿病における血圧日内変動異常
の存在とその成因に関する研究では先駆的研究として世
界的に注目されている。さらに、糖尿病における各種の
遺伝子多型と種々の合併症との関連に関する研究では着
実にデータを集積中であり、そのうちの一部としてミト
コンドリア糖尿病に関する研究はすでに報告した。今後
さらに新しい成果が期待できるものと考えている。
基礎的研究としてはラットを用いた電気生理学的実験、
細胞培養を用いた細胞機能に関する実験および受容体や
酵素の特性に関する研究などが行われている。電気生理
学的実験ではラットを用いて、ひとつには門脈-肝-脳-膵
臓を介した経路によるインスリン分泌調節機構の発見と
その機序の解明が行なわれている。もうひとつは、副腎
皮質球状層細胞の機能にはたす細胞内情報伝達機構の役
割を調べる実験である。培養細胞を用いた研究では、分
子生物学的手技を用いてホルモン受容体および細胞内情
報伝達機構の特性を解明中であり、これらの成果は臨床
に還元されるものと信じている。
主任教授の指示に従って助教授および講師が直接後輩
の研究指導にあたり、各テーマの研究成果に対して学位
取得の準備がなされる。これらの基礎的および臨床的研
究成果の大半は一流英文雑誌に掲載され国際的に高い評
価を受けている。本教室では、若手医師が内分泌、代謝
疾患の臨床および研究に携わることを通して本学の理念
である「良医の育成」に寄与していると自負している。
(内分泌内科学木越俊和記)
68
整形外科学教室
前列左から安元定幸助手、西野暢講師、山口昌夫教授(リハビリテーション科)
、松本忠美教授、岡田正人助教授、
藤田拓也講師
中列左から奥田鉄人助手、高田成基研修医、杉森端三助手、前岡勇人助手、安田廣生大学院生、二見智子大学院生
後列左から河崎寛孝助手(リハビリテーション科)
、安田佳史大学院生、福井清数大学院生、市堰徹大学院生、
山田兼吾大学院生、細川栄隆大学院生、浅川仁研修医(リハビリテーション科)
、加藤久人助手
昭和 47 年4月の整形外科学教室の開設以来、東田
紀彦名誉教授、昭和52年着任の山崎安朗元学長によ
り運営されてきました。平成11 年4月から第3代講座
主任教授として金沢大学整形外科より松本忠美助教
授が就任され、明るく、家庭的で開かれた教室とし
て運営されています。これまで当教室に在籍した医
師は70名を越えています。
現在の教室のスタッフは松本忠美教授(講座主任)
、
岡田正人助教授、西野暢講師、藤田拓也講師、以下
助手4名、医員2名、研修医2名、大学院生 10名、海
外留学者1名で構成され、学生の教育、研究、診療に
当たっています。関連病院への出向者は7名です。
基礎研究として、山崎教授、東田教授により脊髄
損傷、脊髄電気生理、脊椎椎体間固定術、末梢神経
変性・再生、自家遊離骨膜軟骨再生の研究を行い、
平成 11 年4月からは松本教授指導のもとに大腿骨頭
壊死の病態解明、日本人の形態にあった新しい人工
股関節の開発研究、レーザー照射による骨梁増加の
研究、椎間板ヘルニアの遺伝子解析などを行ってい
ます。
臨床研究は多岐にわたっています。年間の手術件
数は約 650 件で、関節手術 250件、脊椎手術 150 件、
骨折手術150 件などが主な手術です。関節疾患は変形
性股関節症、大腿骨頭壊死、変形性膝関節症、膝半
月板・靭帯損傷などです。変形性股関節症は進行度
に合わせて寛骨臼回転骨切り術、大腿骨切り術から
人工股関節置換術まで行っています。大腿骨頭壊死
は大腿骨頭前方回転骨切り術、人工骨頭置換術、人
工関節置換術で治療を行っています。脊椎疾患は頚
椎・腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎
変性・分離辷り症、後縦靭帯骨化症、頚椎症性神経
根症・脊髄症、脊椎脱臼・骨折などです。保存的療
法からレーザー治療を含めた手術治療で幅広い治療
を行っています。外傷は四肢の骨折が多く、早期社
会復帰を目的として積極的に手術を行っています。
医局行事として、新人歓迎会、同門会、医局旅行、
海水浴、忘年会などを行い、その他ゴルフ大会、野
球大会、ボーリング大会、スキーツアーなどを企画
し、精神、肉体などをリフレッシュしながら、医局
全体が一致団結して、診療、教育および研究に取り
組んでいます。
(整形外科学岡田正人記)
69
大学院セミナー
Alveolar Epithelial Ion and Fluid
Transport Mechanisms
統合医療について考える
講 師 Micheal A Matthay (カリフォルニア大
講 師
学医学部教授)
水島 豊教授
(弘前大学医学部老年病学)
日 時 平成 13 年 7 月 31 日(火)17:00 ∼ 18:30
日 時
平成 13 年 9 月 14 日(金)17:30 ∼ 19:00
場 所 基礎棟セミナー室
場 所
病院4階C41講義室
担 当 呼吸器内科学 大谷信夫教授
担 当
老年病学 松本正幸教授
本セミナーではカリフォルニア大学サンフランシ
スコ校医学部の Matthay 教授のご講演をいただいた。
講演の要旨は以下の如くであった。
様々な肺疾患(急性呼吸窮迫症候群、肺水腫、誤
嚥性肺炎、虚血再潅流肺傷害、移植肺など)で肺胞
内に水分が貯留し、肺胞上皮細胞を介するガス交換
能は悪化する。とくに急性呼吸窮迫症候群は予後不
良であり、これまでの様々な治療試験では予後は改
善されなかった。近年 NIH の指導のもと Matthay 教
授らを中心にした米国の大規模試験でLow tidal volume ventilation が延命率を向上させ、有効な治療方法
であることが試験途中で確認され、新たに治療指針
(換気方法)として正式に提案されている。また、肺
胞水分再吸収機序の研究が進んでいる。特に肺胞上
皮細胞に存在する水チャンネルの研究が最近5年間
で飛躍的に進行し、いくつもの新たな知見が加えら
れた。
本講演要旨に関する日本での研究は米国に比しは
るかに遅れをとっており、教授の基礎から臨床に及
ぶ幅広い研究とその成果は参加者にとって有意義な
ものであった。また教授はゆっくりと簡明な英語で
話してくださり、よく理解できた講演であるととも
に Matthay 教授の教育者としての和やかな人柄が感
じられた講演であった。 (呼吸器内科学大谷信夫)
統合医療とは現代西洋
医学とそれ以外の医療
(代替医療: A l t e r n a t i v e
medicine)を組み合わせ
てこれまでの西洋医学で
は限界のあった進行癌な
どの難治性疾患を治療し
ていくものである。演者
の水島先生は長年、癌治
療に携わってこられた経験から西洋医学一辺倒の
医療の限界と代替医療の重要性と有効性について
認識されたという。
西洋医学のみを学んだ一般の医師は治癒の見込
みのない進行癌の患者に対し治療の面でもメンタ
ルな面でも真正面から向き合おうとしてこなかっ
たきらいがあり、患者と家族たちは主治医に相談
できずに独力で代替医療を求めていくという悲劇
的な状況があった。治療はできないまでも癒しは
できる。治療者として代替医療について理解する
ことは大変意義深い。
代替医療には漢方医療、健康食品、伝統医療な
ど実にさまざまな種類があり有効なものも数多く
ある。さらに全人的医療(Holistic medicine)のよ
うに精神的、霊的な癒しまでを含むものもある。
それらを熱心に推進している医療者は多いのだが
日本ではまだ十分に認知されているとはいえない。
その理由として有効性が証明されていないことや、
保険診療が適用されないために高額になってしま
うことがあり、こうした点を改善していく必要が
ある。
以上のような内容を具体例をまじえて講演され、
有意義なセミナーであった。
(老年病学 服部英幸記)
70
脳血管障害治療の将来的展望
講 師
肝移植術の周術期管理
篠原幸人先生教授
(東海大学医学部神経内科学)
講 師
村川雅洋先生(福島県立医科大学麻酔
日 時
平成 13 年 9 月 21 日(金)16:30 ∼ 18:00
場 所
基礎研究棟3階セミナー室
日 時
平成 13 年 9 月 21 日(金)18:00∼ 19:00
科学教授・附属病院集中治療部長)
担 当
神経内科学 廣瀬源二郎教授
場 所
病院4階C41講義室
担 当
麻酔学 土田英昭教授
篠原幸人教授(東海大
我が国の肝移植術は、脳
死患者からの臓器摘出がつ
学神経内科)は、脳血管
い最近まで許されなかった
障害研究の最先端をゆく
歴史的背景があるため、生
教室を率いて、幅広く研
体ドナーからの部分肝移植
究を展開しておられ、現
(living related donor liver
在日本神経学会の脳血管
transplantation LRDLT)を中
障害の治療指針作成委員
心に発展してきた。本邦に
長でもある。日頃、治療
おける L R D L T は現在まで
指針作成の目標を論じて
約 1 , 0 0 0 例が実施されてき
居られることから、今回
ているが、村川先生は前任地の京都大学医学部集
中治療部においてその約 1/4 に及ぶ患者の周術期管
は今後の治療法の開発を
理を担当し、多くの論文を発表されている。今回
含めた展望を大学院生に熱心に講義された。話題
が臨床的であったためセミナーの出席者も多く、 のセミナーでは、豊富な臨床データを術前、術後
および小児、成人例に分類し、周術期管理の問題
またその内容が身近な問題であったことから熱心
点を明解に提示いただいた。また、術前の多臓器
な聴衆が多く、講演後の質問も極めて活発であっ
障害の評価、術中から術後にかけての循環管理と
た。過去の治療法のclinical evidencesについても、
血液凝固系の補正、移植後早期の高血圧等につい
内科的全身療法である高血圧、高脂血症の管理を
て具体的に教示された。更に虚血後再潅流の病態
含めて詳細に探索され、EBM に基づいた治療法の
や低イオン化 Ca 血症の原因とその対策等、我々が
重要性も強調され、さらに今後の新しい治療法も
手術室で実際に苦慮している問題についても言及
されたばかりか、会場からの質問、移植肝の正確
randomized controlled trial(RCT)でなければならない
な評価法についても簡潔にお答えいただいた。
ことを講演の骨子とされた。tissue plasminogen acti平成 1 1 年 2 月、日本で臓器移植法案が成立後、
vator (tPA)の今後の治療も静脈投与のみならず、動
初めて脳死患者から臓器移植手術が実施され、以
脈局所療法をも考慮してtherapeutic windowsを配慮
後各地で臓器摘出が行われてはいる。しかしその
に入れたランダム化された比較試験の上でなされ
数は当初期待したほど増えていないばかりか、小
て始めて一般に普及しうる治療法となりうると説
児脳死患者の問題も依然として手つかずのままで
かれた。
(神経内科学 廣瀬源二郎記) ある。したがって日本においては、今後とも血縁
者からの LRDLT が末期肝不全患者に対する中心的
治療法と考えられる。また近年は、ドナー不足か
ら欧米でも LRDLT が行われるようになってきてい
る。平成 11 年4月、本院で北陸最初の LRDLT が施
行されたが、平成 1 3 年 1 0 月現在、本院での
LRDLT は 15 症例を重ねている。今回、国内第一人
者の先生をお呼びして講演を聞けたことは、スタ
ッフの励みと将来への指針となったことに間違い
はない。
(麻酔学 門田和気記)
71
歯科と摂食・嚥下障害
子宮頚癌治療の現状について
−重粒子線治療を含めて−
講 師
鄭 漢忠先生(北海道大学大学院歯学
講 師
研究科口腔病態学講座講師)
稲葉憲之先生
(獨協医科大学産科婦人科学講座教授)
日 時
平成 13 年 9 月 25 日(火)17:00 ∼ 18:30
日 時
平成 13 年 10 月 19 日(金)19:00∼ 20:00
場 所
基礎研究棟D31教室
場 所
病院本館4階C41講義室
担 当
口腔科学 瀬上夏樹教授
担 当
産科婦人科学 牧野田知教授
口腔、咽頭の重要な機能
である摂食、嚥下について
は、さまざまな局所疾患の
みならず、脳神経中枢の疾
病によってもしばしば障害
され、介護施設や一般病棟
における誤嚥性肺炎の惹起
など、とくに高齢者医療に
おける大きな課題となって
獨協医科大学産科婦
人科学講座教授、稲葉
憲之先生をお招きして
「子宮頚癌治療の現状に
ついて−重粒子線治療
を含めて−」と題して
講演をしていただいた。
子宮頚部・体部癌の
スクリーニング法、診
いる。
断、治療につき基礎を
本セミナーの御講演をいただいた鄭先生は、北
含めとても解りやすく解説された。現在行われてい
大歯学部において積極的に摂食、嚥下障害の診断
る子宮頚部・体部癌の各進行期における治療を示さ
と治療に取組み、現在、日本摂食嚥下学会の評議
れそれぞれの5年生存率を比較し、進行期にある癌
員を務めている。セミナーでは大学院生、臨床、 においては頚癌・体癌ともに成績が不良である結果
基礎講座の医師、歯科衛生士、看護婦など約 70 名
をお示しいただいた。子宮頚部癌は主に扁平上皮癌
の参加者を前に、局所解剖を背景とした咀嚼、嚥
であり放射線治療が効果を示す。しかし、進行癌に
下機能のメカニズム、複数の介護施設において自
対してはどの治療においても良好な成績が得られて
ら収集された 1 0 0 0 人を超える患者のデータ解析、 いないのが現状である。先生は標的領域に線量を集
摂食、嚥下障害のリハビリテーションにおけるチ
中でき正常組織への被爆の少ない照射のできる重粒
ームアプローチの重要性について述べられた。ま
子線による治療を研究され、従来の放射線療法・手
た、この中での歯科医師の役割として歯科医学が
術療法・化学療法では良好な結果が得られにくい進
携わる治療法、すなわち準備期、口腔期の機能訓
行期子宮頚部扁平上皮癌(Ⅳ期)において本治療を
練法と装具療法の詳細について解説された。
施行し、以前の治療と比較した結果、5年生存率に明
最後に、歯科医学における課題として、1. 咀嚼
らかな延長を認めているとの結果を示された。現在
(口腔機能)と嚥下、2. 準備期・口腔期の評価と訓
はよりピンポイントで腫瘍そのものに照射すること
練法、3. 義歯と摂食・嚥下障害、4. 口腔ケアの意
も可能になってきており副作用も軽減されてきてい
義、について問題提起され、今後のさらなる研究、 るので、今後は更に臨床応用が拡大され進行期の癌
発展の必要性を強調された。
治療の主軸となるであろうと思われる。
講演後には、診療現場において経験した疑問や
(産科婦人科学 富澤英樹記)
問題点などについて質疑応答がなされ、きわめて
意義深いセミナーとなった。
(口腔科学 瀬上夏樹記)
72
金沢医科大学出版局の新刊書
RV選書3
小田島 粛夫 著
良医を育てる
―ある私立医科大学の挑戦―
B6版232頁, 定価:本体560円
2001年9月発行 発売元:紀伊国屋書店
《読後感と推薦のことば》
金沢医科大学血液免疫内科学教授 菅井 進
今回、このように格調高い、信念の込められた本「良
医を育てる:ある私立医科大学の挑戦」が本学の理事長
によってRV選書3として出版されたことは、本学関係者
は言うにおよばず、医学生の教育やレジデントの指導に
あたる人達にとって、誠に喜ばしいことと思います。
本書には長年にわたる本学の教育に対する情熱と努力
の跡が凝縮された形で記されています。医学教育が激動
期を通って新時代に入った現在、本書は大変参考になる
ものであり時機を得たものと思います。とりわけ本学関
係者にとっては、本学の理事長によって書かれた本学30
年の歴史や変遷、その底に流れる考えを知り、現状を分
析し、将来を考えるための必読の書であるといえます。
本書には本学の教育の基本にかかわる考え方が明示され
ており、端的には表紙に示された親が子を教える教育と
いう形で示されました。本書は本学の教育のバイブルと
して今後長く生き続けるものであると思います。
私は教務部長として、当時の小田島学長より教育に関
するあらゆることを勉強させていただきました。親しく
教えを受けた者として個人的な印象を書きますが、私の
誤解や理解不足で間違ったことを記して、そのことが本
書の価値を下げることをおそれながら、そうならないこ
とを祈りつつ一文を書かせていただきます。私は以前よ
り小田島理事長の副学長時代や学長時代の考えを印刷物
で読んでそれなりに理解しているつもりでしたが、実際
に頻繁に先生に接してお話を聞くようになってはじめて
その意図されることが分かってきました。当初、厳しい
改革路線を示されるたびに、なぜそこまで先を案じて困
難な道を歩まれるのか不思議に思ったことがありました。
しかし、それが教育者としての哲学に裏打ちされたもの
であることが分かってきました。
第一部の「良医を考える」に書かれていることは、私
が教務部長として伺ってきた内容が多く、一つ一つ納得
しながら読ませていただきました。
プラトン、アリストテレスの時代から正解のない、本
当に難解な「教育」の原点とは何か、教育現場で教育の
基本理念をどのように適用して医師を育てるのかの2つ
の問題を学びました。小田島学長から「教育の原点は寺
子屋教育にある」、吉田松陰の「松下村塾にある」とい
うことを何度も聞かされましたが、これが理解できるま
でには3年を要したように思います。この本の表紙の絵
にある内容がまさに小田島教育の原点であり、本学の教
育の原点であると理解しています。生きた教育は教育現
場の状況(時代や場所、学生と教員など)によって変わ
るだろうし、変えなければならないと思いますが、その
底に時代を超えて存在する底流として本学の教育の原点
が示されたものと理解しております。
「教員と学生との信
頼関係」という言葉は繰り返し聞かされた言葉でした。
「学生を大学の通過者として見るのではなく、学生を大学
の重要な構成員として考えるように」ともよく言われま
した。教育技法の瑣末なことにとらわれず、スモールグ
ループ教育の原点を生かす教育を実現することが求めら
れました。このような小田島学長の長年の教育理念は、
現在華々しく登場し、上からも下からも期待されて医学
教育を席巻しつつあるPBL テュートリアル教育に見られ
るものと同一のものであります。
小田島先生のもとで教育の問題を話し合い、教えを受
けてから、教授会、入学式、卒業式などのお話を聞きま
すといつも心を揺さぶられる思いをし、腹の底にずしり
とくる思いが残りました。どこからこのような考えが出
て来るのか、学長にはブレインとなるような人達が付い
ているのではないかとさえ思いました。しかし、それは
学長が「人間性豊かな良医の育成」という目標をすえて
本学の内容をそれに近づけるよう、長年にわたって努力
73
してこられたことによるものであることを理解するにい
たりました。このような心に残るお話を本学の6年生に
もしていただきたいとお願いして実現しました。それは
私の学生時代に平沢興京大医学部長が教室に来られて一
生懸命に我々に話をして下さったことを思い返すからで
す。私たちのようにいいかげんな学生に学部のトップの
人がなぜそこまで熱心になられるのか不思議に思ってい
ました。はたして本学の6学年の何人が私と同じ気持ち
で小田島学長のお話を聞いたかは分かりませんが、たと
い小人数でも一生に残る思いをした学生がいるものと思
っています。
第二部の「金沢医科大学の挑戦」には私達が一員とし
て本学にずっといても知り得なかった内容が含まれ興味
津々でもありましたが、その困難の中で大学再建へ向け
た膨大な努力がなされていたことを知りました。大学が
二つに割れたかのような事態の中で、反発や無関心が私
を含めて当時の教員にあったと思います。その困難な状
況の中で小田島理事長が教務委員、副学長、学長として
大きな力を発揮してこられて現在があると思います。本
学のカリキュラムの歴史を調べてみて、昭和58年から小
田島先生が教務委員として、
「知識の詰め込み教育から、
思考力、問題解決能力の育成のため」の基礎医学におけ
るスモールグループ教育の導入を図られています。その
当時「教育の基本方針」が明確に打ち出され、カリキュ
ラムの理念として、1.人間形成、2.科学的思考の育
成、3.時間配分の適正化、4.教育の効率化が挙げら
れています。そしてスモールグループ教育導入の目的と
して、(1)教師と学生の人間関係の確立、(2)学習意欲の
向上、(3)自己学習能力の開発、 (4)教師による学生の学
力レベルの把握、(5)教師による生きた教育、としてまと
められています。このようにしてカリキュラムの改革や
大学機構の改革、研究の活性化などなどの大学改革が進
み、多くの人の支持を得るようになって大学が一つにま
とまってきたと思っています。
私がにわか勉強で理解したことが、本学では教育改革
の中で部分的ではありますが導入されていました。全面
導入に至らなかったのはこのような改革があまりに時代
に先行しすぎていたためと思われます。その当時の日本
のどこの医学部にもこの様な目標を掲げ、実行に移そう
としていた大学はなかったと思います。我々が「体験学
習」や「PBL」など教育の新しい方向性と思っていたこ
とが、本学で小田島先生の下で少しずつ実行に移されて
いたことを知り感動を覚えました。その後のカリキュラ
ムの変更についても、
「教育の原点は教える側と教えられ
る側との信頼関係にあり、これを失えば教育は成り立た
ない」とよく言われたのを思い起こします。
本書には今後本学が遭遇するであろう将来の困難が示
され、そのための改革の方向性がはっきり示されていま
す。学内が一致してその方向を具現化していかねば本学
の将来は無いと語られています。本学の学生、教員、職
員一人一人がしっかりしなければならないと改めて痛感
しております。
第三部「エッセイ、所感」は、第一部、二部の思索者、
改革者としての話とは少し趣を異にして、今まで知らな
かった先生の人となりを知る内容です。今まであまり聞
いたことがない話がのっており、暖かい先生の一面を髣
髴とさせる多方面の内容で、裃を脱がれた先生の人格に
触れることができました。その一文の中にある「若き日、
早や夢と過ぎ、わが友、皆世を去りて」とある一節など
では先生のロマンチスト振りがよく窺がわれます。
様々な社会規範の変化によって、今患者さんが医師を
選択する時代、患者さんが病院を選別する時代に直面し
て、改めて本書が多くの人に熟読される必要があると思
います。
《本学スタッフ新刊著書》
奈良勲、鎌倉矩子 シリ−ズ監修
《標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野》
全12巻
第12巻「老年学」
大内尉義、松本正幸分担執
筆(循環器疾患、p51-61)
医学書院
B5版、245頁
4,200円+税
2001年6月発行
本シリ−ズはこれまで個々の教師にゆだねられ、テキ
ストとして公開されていなかったものを、理学療法や作
業療法の学生を中心とした人々のために、ベテランの教
師により教科書シリ−ズとして企画出版されたものであ
る。
本書、第12巻「老年学」は理学療法、作業療法に将来
携わる人々のための教科書であるが、高齢者医療やリハ
ビリに携わる人々の多くの疑問に答えられる内容が盛り
込まれている。その内容は普遍的で、医学部学生、研修
医にも役立つと考えられる。本書がわが国における高齢
者医療の発展に役立つ書として推薦したい。
(老年病学松本正幸記)
74
金沢医科大学創立30周年記念事業募金のお願い
本学は平成 14年には創立 30周年を迎えることになります。これを記念して平成15 年秋を目標に次の金沢医科大
学創立30周年記念事業を計画いたしました。
1 病院新棟の建設
2 教育施設の整備充実
3 創立30周年記念行事(記念式典、講演会および30年史発行)
この病院新棟建設を主体とした創立 30周年記念事業には 200億円余りの費用が予測されており、皆様のご協力を
いただきたく下記のとおり募金を展開することになりました。絶大なご支援をお願い申し上げます。
趣意書
金沢医科大学は、昭和 47 年に日本海側でただ一つの私立医科大学として金沢市に隣接する内灘の地に開学しました。「良医を
育てる、知識と技術を極める、社会に貢献する」という建学の精神のもと、優れた教員を確保し、最先端の教育、研究、医療設
備を充実させ、次世代の医療の良き担い手の育成に努力してまいり、開学以来 29 年を経て約 2,400 名の卒業生を世に送り出しま
した。
本学が、来る平成 14 年には創立 30 周年を迎えるのにあたって、 21 世紀の社会が求める医育、医療に応えるために、教育・研
究施設のさらなる整備充実が必要となっており、また年月の経過に伴い、病院の建造物の老朽化も目立っております。さらに患
者さんの療養環境の改善、特定機能病院および教育病院として社会からの負託に応え得る診療機能と教育機能の改善が、現場か
らの強い要望として出されるようになりました。
約 10 年にわたる検討を経て、この度、病院新棟の建設と教育施設の整備充実を、創立 30 周年記念事業として計画いたしまし
た。病院新棟については、平成12年12月に着工し、平成15年の完成を予定しております。
これらの計画の実現には多額の資金を必要とします。本学では鋭意、自己資金の確保、経営の合理化などの努力を行っており
ますが、関係各位の格段のご支援を仰がねば、この計画を達成することは困難であります。
つきましては、経済情勢も大変厳しき折から誠に恐縮に存じますが、医学、医療の果たすべき役割、私学教育の育成という観
点から、何卒これらの趣旨をご理解いただき、格別のご協力を賜りたく心からお願い申し上げます。
学校法人 金沢医科大学
理事長 小田島
学 長 竹
越
粛夫
襄
募集要項 寄付金の性格により手続上、個人対象の場合と法人対象の場合に区別されております。
1. 金 額
2. 募集期間
3. 申込方法
4. 税制上の特典
特定公益増進法人寄付金(個人対象)
10億円
受配者指定寄付金(法人対象)
7億5000万円
平成13年7月1日∼平成15年6月30日
個人用、法人用、それぞれの寄付申込書の所定の欄に必要事項をご記入の上、教育研究事業推
進室へご提出願います。
特定公益増進法人寄付金制度と受配者指定寄付金制度により、税制面での優遇があります。
詳細については、金沢医科大学教育研究事業推進室へお問い合わせください。
TEL 076(286)2211
内線 2720∼2724
FAX 076(286)8214
創立30周年記念事業募金寄付者ご芳名(敬称略)
〈個 人〉
山縣 重之(宮崎県)
立花 肇(北海道)
田中 弘吉(福岡県)
水沼 孝義(大分県)
〈法 人〉
カサマツ明希㈱ ㈲アカシア商会
大渕 宏道(秋田県)
朝日 晋(滋賀県)
齋藤 紀雄(三重県)
大山 充徳(群馬県)
千葉 博信(青森県)
相原 令子(福島県)
畑 嘉也(三重県)
上畠 泰(北海道)
池田 正一(神奈川県)
篠田 廣(愛知県)
沼田 知明(青森県)
後藤 鹿島(群馬県)
北邦医薬㈱ ㈱井上誠昌堂
セントラルメディカル㈱ 村中医療器㈱
75
金沢医科大学学術振興基金募金のお願い
金沢医科大学学術振興基金募集趣意書
本学は、日本海側では初めての私立医科大学として、昭和 47 年に設立され、倫理に徹した人間性豊かな良医を育成すること、医
学の深奥をきわめ優れた医療技術を開拓すること、人類社会の医療と福祉に貢献することを建学の精神として掲げて着実に歩み続
けてまいりました。
大学、特に医科大学は国の内外を問わず日進月歩の医学・医療をリードする大切な役割を担っていることは皆様充分にご承知の
ことであります。本学でも最高の教育・研究設備に加えて、先進医療機器の充実に意を尽くすとともに、基礎・臨床医学講座並び
に総合医学研究所の各部門において、医学の進歩に貢献できる人材の育成と研究の推進に日夜努力いたしております。
教育面では、教育スタッフとしてすぐれた人材を配し、学生の教育に専念しており、昭和 53 年に第1回の卒業生が誕生して以来、
数多くの医師を世に送り出し、それぞれ国内国外の医学・医療の最先端で活躍しております。
研究面では、平成元年には従来の人類遺伝学研究所、熱帯医学研究所及び共同研究室を母体とし、難病治療など医療の先端的な
分野の開拓を目的とした総合医学研究所を設置し、臓器置換・難治疾患・癌・人類遺伝学・熱帯医学・基礎医学・共同研究の各部
門を中心にプロジェクト研究の推進を図っております。また、国際舞台においても躍進を続けており、欧米の一流大学や研究所と
の研究員の交流、海外からの研究員・留学生の受け入れなどを通じて国際レベルの学術環境の整備にも意を尽くしております。
診療面では、金沢医科大学病院は日本海側随一の規模を誇るまでに成長し、最新の医療機器を整備し、医学教育のみならず、文
字どおり地域医療の基幹病院として順調に発展し、地域社会の要請に応えるべく最新レベルの医療サービスを提供することにも十
分な配慮をしてまいりました。
また、国際医療協力隊の派遣、世界各地域の種々の難病に対する国際医療協力に早くから取り組み、わが国の医科大学の中ではトッ
プクラスの実績を持っております。
しかしながら、この様な積極的な教育、学術及び医療活動を維持継続してゆくためには巨額の資金が必要で、学納金、国庫補助
金、附属病院の医療収入などの収入のみでは健全な経営は不可能であり、教育、研究、診療活動を萎縮させる恐れがあります。
このために、本学では文部省の許可を得て学術振興基金の募集を行っており、広く本学教職員、卒業生、学生の父兄をはじめ、
民間企業、篤志家の多くの皆様のご支援をお願い申し上げる次第であります。
日進月歩の医学の進歩に即応した最新の教育、研究及び診療環境を維持するにとどまらず、未来に向けてさらなる貢献と飛躍を
目指して、全学を挙げて努力いたし、社会的使命を果たし得たいと念願しております。
本趣旨にご理解、ご賛同を頂き、ご協力を賜りますれば誠に幸甚に存じます。
金沢医科大学理事長 小田島 粛夫
募集要項
1. 目 標 額
2. 寄付方法
10億円
寄付申込書等を本学教育研究事業推進室に
ご請求ください。
TEL 0 7 6(2 8 6)2 2 1 1 内線2 7 2 0 ∼ 2 7 2 4
FAX 0 7 6(2 8 6)8 2 1 4
3. そ の 他
折返し、寄付方法、税務に関することなど
をご連絡致します。
本学は、平成10 年9月1日付で文部大臣よ
り特定公益増進法人であることの証明を
受けております。
金沢医科大学学術振興基金への過去1年間の寄付者ご芳名(敬称略)
医療法人社団 新井病院(北海道) 高野 雅巳(北海道)
㈲八田物産(石川県)
㈱アクト(石川県)
米地 稔(宮城県)
小金井利信(東京都)
松田 芳郎(石川県)
中川 克宣(長野県)
島田 杉作(秋田県)
医療法人社団健松会(宮崎県) 医療法人 こまくさ会(長野県) 花田 紘一(福岡県)
医療法人玉水会(鹿児島県)永友 知澄(鹿児島県)
㈱アドマック(石川県)
石澤 清(山形県)
岩 修三(大阪府)
鈴木登喜子(宮城県)
中川 平義(滋賀県)
中根 英晴(三重県)
成瀬 孟(千葉県)
森下 昭三(高知県)
山中 啓明(北海道)
高田 弘(石川県)
大橋 冱子(富山県)
唐沢 善徳(長野県)
佐藤 一巳(福島県)
由木 邦夫(栃木県)
医療法人社団一水会安富診療所(兵庫県)
升谷 一宏(石川県)
松田 輝夫(大阪府)
三治 秀哉(石川県)
柴田 英徳(長崎県)
小田 政行(岐阜県)
小林 慶子(兵庫県)
櫻井 泉(富山県)
久村 正也(北海道)
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http://www.kanazawa-med.ac.jp/
金沢医科大学のホームページです
本学では、多くの分野でインターネットが利用されています。Webや Mail はもとより、文献
検索、地域の医療機関や全国の同窓生との連携、各種事業の公示に利用されているほか、学内
イントラネットも拡充されています。教育・研究・医療の分野で大いに活用されることを期
待します。
(広報委員会)
金沢医科大学専用個別郵便番号は
〒 920-0293
本学へ差し出される郵便物にこの番号が記載してあれば、住所記載がなくても配達されます。
☆ 職員宿舎の郵便番号 は「石川県河北郡内灘町字大学」地区の番号〒 9 2 0 - 0 2 6 5 です。
表紙写真
金沢医科大学報 第108号
新橋開通 中谷 渉
いかだいどおり
内灘大橋の開通によって、大学前の医科大通りは
能登方面への主要な交通路となり交通量も数倍に
増加した。ダブルA字型の特徴ある大橋の造形美
は金沢市中心部や J R 北陸線の車窓からも望見で
き、金沢の貴重な景観形成財の一つとなった。こ
の夜間のライトアップは交通安全面での寄与も大
きい。
ただ一つ大橋かけて月の秋 中村汀女
(中村汀女、1900-1988、女流俳人の第一人者、高浜虚子に師事、
「ホトトギス」同人、「風花」を創刊主宰、熊本市名誉市民)
平成13年11月1日発行
発行者 金沢医科大学理事長 小田島 粛 夫
編 集 金沢医科大学概要・学報編集委員会
山下公一 西川克三 廣瀬源二郎
平井圭一 川上重彦 伊川廣道
木越俊和 朝井悦夫 谷口 豊 相野田紀子 太田隆英 國府克己
坂井輝夫 木村晴夫 小平俊行
森 茂樹 佐野泰彦 北野 勝
中谷 渉 林 新弥 加富喜芳
中嶋秀夫 中川美枝子 金子聖司
奥田桃子
発行所 金沢医科大学出版局
〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1−1
TEL 0 7 6 ( 2 8 6 ) 2 2 1 1
印刷 能登印刷株式会社