大人の化学クラブ実施報告

大阪市立科学館研究報告 20, 161 - 164 (2010)
大人の化学クラブ 2009 実施報告
*
小野 昌弘
概 要
2009年 11月 ~12月 期 においての成 人 を対 象 とした、「大 人 の化 学 クラブ」を実 施 した。今 回 は、香 り
に関 する実 験 と、金 のメッキに関 する実 験 を行 った。本 稿 では、その内 容 について報 告 する。
第 2 回「金(属 )の化 学」
1 . はじめに
1997年 以 降 、ほぼも毎 年 のように行 ってきた、成 人
を 対 象 と す る 化 学 実 験 教 室 を 本 年 も 実 施 した 。2008
3 . 実習 内 容
第 1 回「香りの化 学」
年 にリニューアルした展 示 場 「身 近 に化 学 」とのつなが
実 験 内 容 は、簡 単 な エ ステ ル合 成 で ある サリチル
りを持 たせながら、講 義 、実 験 、展 示 場 資 料 の確 認 と
いう 流 れ が でき 、現 在 は、参 加 者 に より 詳 しい 化 学 の
知 識 獲 得 していただける流 れが組み立 てられている。
そのような中 、今 回 は、「香 り」に関 する実 験 と「金
属」に関する実 験を取り上 げ、実 習を行った。
図 2 . 天然香料 を 取 り 分 ける
図 1 . 実験 のようす
2 . 事業 概 要
・実 施 日:2009 年 11月 23 日 、12 月 12日
・実 施 時 間:午後 2 時~4 時
・対 象 者:18 歳 以 上
・参 加 者 人 数:18 名
・参 加 費:2,000 円
図 3 . 展示場 での解説
での 解説
・実 験テーマ 第 1 回「香りの化 学」
展示 「 自然 が 作 るにおい」
るにおい 」 前 にて
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大阪市立科学館 学芸課
[email protected]
酸 メチルと酢 酸 イソアミルの合 成 を行 った。作 り方 につ
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小野 昌弘
いては、別 掲 するテキストに譲 る。独 特 の香 りを持 つ反
(2002) ら が 、簡 易 な 実 験 方 法 と して 開 発 した もの で あ
応 前 の液 体 を、化 学 反 応 を起 こすことで、反 応 前 とは
る。
違う匂 いを確 認 して、新 しい生 成 物 ができたことを確 認
ヨウ素 溶 液 の濃 度 が濃 いところが若 干 危 険 といえる
した。また、天 然 に存 在 する白 檀 、桂 皮 、龍 脳 といった
が、取 り扱 う量 も少 なく、通 常 の実 験 の注 意 事 項 を 守
香 料 を使 用 し、におい袋 を作 成 した。その後 、展 示 場
れば、特 に問 題 はない。また、メッキ中 に少 量 のヨウ素
に出 て、天 然 香 料 、人 工 香 料 、フレーバーについての
が発 生 するが、換 気 に注 意 すればこれも大 きな問 題 に
展 示を見 学 した。
なるようなことはないと思われる。
通 常 の金 メッキでは、シアンを使うため非 常 に危 険 性
第 2 回「金(属)の化 学」
が高 く、きちんとした設 備 がないメッキをすることは難 し
金を取り上 げ、金 及 び金 属 一 般 の解 説を行 い、金 メ
ッキの実 験 を行 った。実 験 方 法 については、別 紙 テキ
い。今 回 のメッキ方 法 はシアンを使う方 法 に比 べると危
険 性は非 常に少 ない優れた方 法 であ。
ストに譲 るが、簡 単 に紹 介 すると、金 箔 をヨウ素 溶 液 に
メッキをした場 合 、きれいに金 色 にメッキされずに、黒
溶かし、乾 電 池を用いて電 気 メッキさせる方 法 である。
ずんでくる場 合 もある。この場 合 は、炭 酸 水 素 ナトリウ
ムの粉 末 を使 って磨 き上 げるときれいに金 メッキされた
部 分が現れる。
今 回 の実 験 では、いずれもニッケルメッキされたクリッ
プや書 類 整 理 用 のリングをメッキさせた。図 では、分 か
らないが、金 メッキしたクリップとリングの写 真 を以 下 に
掲 載する。
図 4 . 金 メッキしている
メッキ している様子
している 様子
単 1 電池 を 用 いて、
いて 、 クリップを
クリップ を 金 メッキしている
メッキ している。
している 。
実 験 では、クリップなどを数 個 金 メッキして、持 ち帰 り
のお土 産とした。メッキ実 験 が終 了 した後は、展 示 場 3
階 の「身 近 に化 学 」における「金 属 とその利 用 」の展 示
内にある、金 の展 示を中 心 に解 説を行った。
4 . 考察
まず、第 1 回 目 のエステルの合 成 実 験は、これまで
も何 度 か行 っている、非 常 に簡 易 な実 験 方 法 である。
扱 う試 薬 の量 も少 なく、コスト的 にも、廃 液 処 理 にかけ
る労 力 も少 ないうえ、におい変 化 をきちんと確 認 できる
という点 も問 題 なく行 える。そのため、本 大 人 の化 学 ク
ラブでは、定 番 ともなっている実 験 方 法 である。今 後 は、
さらに違 う種 類 のエステル合 成 も行 い、レパートリーを
図 5 . クリップ(
クリップ ( 上 ) 。 全 て 金 メッキ済
メッキ 済 み 。
増やしていきたい。
リング(
リング ( 下 ) 。 本 図 では分
では 分 かりにくいが、
かりにくいが 、 左 は 金 メッ
また 、匂 い 袋 の 製 作 に つ い て は、こ の 化 学 ク ラ ブ 実
キ 前 のもの。
のもの 。 右 は 、 金 メッキ後
メッキ 後 のもの。
のもの 。
施 前 に行 った教 員 研 修 などと同 じ内 容 である。詳 細 は、
そちらに譲る。本 誌 ●ページ。
金 メッキを終 了 した後 は、1 回 目 の実 験 同 様 、展 示
第 2 回 目の金 メッキの実 験 も非 常に簡 易 な方 法で金
場 の資 料 を利 用 して解 説 を行 った。金 を素 材 として使
メッキが行 える実 験 である。もともとは、中 尾 (1993)が、
用 している大 判 、小 判 類 、金 糸 、金 貨 などについて見
金の再利用などを目的に開発した方法を、高木
学 し、その特 性を紹 介 した。
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大人の化学クラブ 2009 実施報告
なお、今 回 使 用したテキスト添 付するが、第 1 回 目の
「香りを作 る」実 験 については、ほぼ教 員 研 修 等 のテキ
ストと同 様 であるため割 愛し、第 2 回 目 の「金(属 )の化
学」のテキストのみ掲 載する。
5 . 参考文 献
・香 料の物 質 工 学 湖 上 国 雄 (1995)
・高 木 春 光 化 学と教 育
50 巻 698 (2002)
・電 子 移 動の化 学―電 気 化 学 入 門 渡 辺 正
(1996)
・入 門「新 めっき技 術」斎 藤 囲 他 (2007)
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