特集 選択できる小集団レクリエーション・アクティビティの進め方 進化する 「京都式えらべるデイサービス」のチカラ 施設長 特別養護老人ホーム天橋の郷 北條千恵子 社会福祉法人北星会 天橋の郷通所介護事業所 管理者 ほうじょう・ちえこ●介護老人保健施設副施設長を経て,2005年より現職。特別養護老人ホームでユニットケアを実施 する中で,併設のデイサービスにおいても同様に小グループ化(ユニット化)することにより,個別ケア・ユニバーサルデ ザインのデイサービスを目指している。介護員養成研修において, 「レクリエーション体験学習」の講座を担当し,デイ サービスにおけるレクリエーションのあり方について小グループ化を提案している。 ちょっと気負ったタイトルになってしまった 入らない「困った老人群」を生み出すことになる が,施設ケアが従来型からユニット型がスタン だろう。 ダードになったように,デイサービスも集団処遇 デイサービスに通うようになったといえども, から個別処遇のサービスが当たり前になったら, 利用者は今まで普通に社会生活を営んでいた自立 利用者の在宅生活を支えるのにもっと有益なサー した大人である。介護を受ける立場になったり, ビスになるのではないかという願いを込めて,あ 認知症を患ったりしてサービスを利用せざるを得 えて批判を承知でつけてみた。 なくなったわけであるが,幼稚園児でもないし, デイサービスと団塊の世代 いくら物忘れが激しいといえど,丁寧に説明して もらえれば理解できないわけではない。近い将 全国的にもデイサービス事業が規模の大小を問 来,確実にデイサービスの利用者になるであろう わず花盛りであるが,多種多様な内容の居宅サー 私自身の老後の生活をイメージした時,自分が行 ビスがつくり出される中にあって,今一度,デイ きたいと思うデイサービスの原型が,現在の当デ サービスの本来の目的やあり方について再考して イサービスの発想の原点であった。 いかなければならない時期にきているのではない だろうか。まして近い将来には,団塊の世代とい われる大量利用者層が控えている。従来からのや 「京都式えらべるデイサービス」 との出合い り方では,淘汰されていくところも出てくるかも 「天橋の郷」は,2005年5月に完全個室のユニッ しれない。 トケアを実施する特別養護老人ホームとして開所 特にデイサービスで提供されているレクリエー し,当時は定員20人(現在45人)のデイサービス ション活動は集団的・画一的,利用者はお風呂も を併設した。本体がユニットケアだから,デイ 食事もすべて職員の声かけや指示を待ち,職員主 サービスも同様に小規模単位でサービスを提供す 導で流れていくスケジュールでは,確実に団塊の べきではないかという素朴な発想で,利用者を小 世代は背を向けるのではないだろうか。人の手を グループに分け,職員は利用者の傍らでじっくり 借りなければ,排泄も入浴もままならない身体に 話を聞きながら(寄り添うケア?) ,おのおのの なったとしても,我が身の不自由さを嘆きつつ, 希望や好みを聞き取り(個別ケア?) ,利用者や たぶんデイサービスに行くのを拒否してしまう。 家族はどのようなデイサービスを望んでいるか, 施設にとっても家族にとっても,いわゆる指示の あるいはデイサービスはどうあるべきか,模索と 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 13 実践を繰り返していた。 ビスの日を心待ちにし,介護を受ける立場になっ その当時目指したデイサービスは, 「自分も一 たとしても, 「在宅で頑張る」という本人の心と 利用者としてプライドが保てて,大人の個人とし 体に働きかける援助ができること。ここにデイ て扱われる」というものであった。したがって, サービスが目指す目的・目標があり,存在理由が 入浴介助・排泄介助は原則同性介助,レクリエー あると思う。 ションは利用者がしたいことができ,子どもっぽ いことは一切せず,大人として自主性が認められ, 楽しく生き生きできる時空間であることを目指し 「京都式えらべるデイサービス」 の画期的手法 た。一見,わがままとも思われるかもしれないが, デイサービスの本来の目的を達するために「京 普通の社会に生きてきた人間として当たり前の要 都式えらべるデイサービス」の考え方・手法が, 求であると思うし,ケアに対する考え方の根幹は この6年間の当事業所での実践を通して,大変有 今も変わっていない。 効であったと実感している。京都府のホームペー 折しも,2006年度に介護保険制度の大幅な見直 ジに実施マニュアルなどが掲載され,その考え しが行われた。これまでの「量」の確保から「質」 方,目的,手法などが詳しく説明してあるので, を重視するサービスが求められ,介護中心から予 従来のデイサービスに飽き足らなさを感じている 防重視型システムに転換するというものであっ 人は,ぜひ一見していただきたい。 た。この流れの中で,京都府が全国に先駆けて, 「京都式えらべるデイサービス」とは,簡単に 介護予防を視野に入れた新たなデイサービスのモ 言うと「レクリエーション選択方式・小グループ デル事業として導入したのが「通所介護カフェテ 活動型デイサービス」である。目的は「利用者が リアプラン」,現在の「京都式えらべるデイサー 楽しみ,やりがいを感じられるデイサービス」の ビス」事業であった。 提供である。その手法は,利用者を少人数(最大 デイサービスのグループケア,個別ケアを目指 10人程度)に固定し,多彩多様なレクリエーショ し,模索していた当デイサービスは,小グループ ンメニューを提供することにより,利用者は自ら 活動を主体とした個別ケアを目指すこの新しい形 グループを選択し,継続して活動を行う。小グ のデイサービスの考え方,方法論に賛同し,実施 ループ活動が,楽しくてやりがい・生きがいを感 モデル施設として自ら手を挙げるに至った。 じられるならば,利用者は意欲的,自主的に行動 デイサービスの原点は どこにあるか し,楽しみを継続することができる。 では,これまでのデイサービスのレクリエー ション活動とどこが違うのか。決定的な違いは, デイサービスの本来の目的は何であるか,今一 集団的・画一的なプログラムは行わないこと。ま 度確認したい。言うまでもなく,デイサービスは た,その場・その時限りの一時的な楽しみの享受 在宅支援サービスである。家族の介護負担軽減も にとどめず,楽しさが継続し,次につながる“楽 大きな要素であるが,あくまでも利用者本人を第 しさ”を持続させるものでなくてはならないこ 一義に考え,デイサービスでの活動や人間関係が と。この2点である。 「えらべる」という意味は, 本人にとって楽しく喜びとなり,在宅生活が生き メニュー選択できるということだけでなく,利用 生きと豊かになるきっかけにならなければならな 者が意欲的,主体的に行動することができること い。「今日楽しかった」にとどまらず,デイサー も意味する。職員はその楽しさ・面白さが継続・ 14 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 [表1]天橋の郷デイサービスの一日 利用者のお迎え&バイタルチェック 8:30∼9:30 9:30∼10:00 はじまりの会(全員で) あいさつ プログラムの説明 京都式えらべるデイサービス:小グループ活動(入浴サービス実施) 午前 介護予防グループ (要支援1∼2)(運動器機能向上) 10:00∼11:30 【活動時間】 90分 地域交流ホール,屋外で実施 活動(個別機能訓練)内容 遊友くらぶ(要介護1∼5) (小グループ個別機能訓練) 【運動】 テレビボウリング&ゴルフなど ニュースポーツ(スナッグゴルフ,ペタボードなど) 活動(個別機能訓練)内容 歌唱クラブ(要介護1∼5) (小グループ個別機能訓練) 【歌唱】 口腔体操,歌遊び,歌体操,音楽療法,回想療法など 活動(個別機能訓練)内容 さくら工房(要介護1∼5) (小グループ個別機能訓練) 【ものづくり】 各種創作,園芸など 縫い物,編み物,工芸など 11:30∼12:00 昼食準備 12:00∼13:00 昼食&お休み,自由時間 13:00∼13:40 喫茶タイム 「イージー・ウォーク」 (足首の屈伸運動)実施 午後 13:40∼15:00 【活動時間】 80分 介護枠を外した小グループ活動(入浴サービス実施) 遊友くらぶ テレビゲーム,軽運動,カラオケなど テーブルゲーム,歌唱など さくら工房 編み物,縫い物,各種創作,園芸など おやつ&休憩,自由時間 15:00∼15:50 15:50∼16:30 おわりの会(全員で) 16:30∼17:30 持続するような工夫や仕掛け,企画を考え,その 人のやりがい・生きがいにつながっていくようサ ポートするのが役割となる。 レクリエーションは 人間らしさの再創造 体操,頭の体操,歌,誕生会 利用者の送り はならないと思う。 目指すはディズニーランド! 何度も行きたい「仕掛け」がある デイサービスの一日のスケジュールである「午 前入浴,午後レクリエーション」という定番は, 「天 では,改めてレクリエーションとは何か考えて 橋の郷」にはない。小グループ活動では,利用者 みたい。 「ホモ・ルーデンス」という言葉をご存 との日常的な会話によるコミュニケーションが大 じだろうか。オランダの文化史家ホイジンガが, 前提となる。当デイサービスは会話の機会を増や ホモ・サピエンス(=知恵ある人)をもじって, すために, 「入浴方法もユニットケア方式で,一 人間を「遊ぶべき存在」として名づけた造語であ 日中一人ひとりに提供する」 「利用者と一緒に食 る。人間の特徴を遊ぶ行為の中に見いだそうとす 事をする」といったことを体制的に実施している。 る考え方で,人間は遊んでいる時が一番生き生き 「京都式えらべるデイサービス」のモデル事業 としていて,その人らしいのである。 から6年間,いろいろな取り組みやレクリエー 社会に生きる人々の幸福を考えることは,社会 ションメニューを試行錯誤しながら実施し,利用 福祉の課題である。すべての人がより良く,より 者の反応や意見を聞きながら展開してきたので, 楽しく生きるために,人生を楽しむ権利があり, モデル事業当初とメニューはかなり変化している 「集団」として見るのではなく,一人ひとり異なっ が,現在,当デイサービスで実施している内容や た好みや人生を持つ「個人」として,その人の望 方法を具体的に紹介しよう。 む生き方を実現することを支える,という視点で 表1のように,午前中は介護予防グループを含 デイサービスのレクリエーションもとらえなくて む4つのグループ,午後からは2つのグループに 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 15 [資料1]介護予防グループの年間計画とプログラム(2012年度) 年間計画 プログラム内容 ① 「今日のお話」 活動 ② 「ストレッチ&筋力トレーニング」 内容 ③ 「各曜日の取り組み」 ① 「ストレッチ」 「筋力トレーニング(スクワット,足あげ) 」 活動 ② 「今日のお話(最近の話題など) 」お話&傾聴ケア 内容 ③ 「各曜日ごとの取り組み」 ④「イージーウォーク」 ︻前半︼ ストレッチ 筋トレ 活動 【前半】10:00∼10:30 【休憩】20分 時間 【後半】10:50∼11:30 3カ月に 一度の体力測定 活動 2012年4月1日∼2013年3月31日 期間 【活動方針】 家でもできる簡単なプログラムで進めていく。 無理なく楽しんでエクササイズできるような環境づくり に努める。 間違ったやり方で廃用症候群などを引き起こさないよう 丁寧かつゆっくりと行っていく。 【約20分休憩】 コーヒータイム 利用者同士の会話 トイレタイム 職員との会話 お話&傾聴 【目的】 まずは「楽しさ」を前提に置き,継続してできるような ものを提供し,曜日ごとの取り組みで個人のやりがいを 見つけてもらい,ADLだけでなくQOLの向上を目指す。 ︻後半︼ 各曜日ごとの 取り組み その他 各曜日でドライブ&外食ツアー 曜日を通してスポーツ大会 脳トレーニング 活動詳細 各曜日の 取り組み内容 活動詳細 月曜 地域交流会:たんぽぽ保育園 に「手作り影絵劇」を披露 火曜 裏日本シリーズ:テレビ野球 大会 水曜 地域交流会:栗老連との秋の スポーツ大会 木曜 園芸:野菜や花作り 金曜 裏日本シリーズ:テレビ野球 大会 ︻休憩︼ 初回のみ身長測定 体重測定 握力 ファンクショナルリーチ 片足立ち いすの立ち座り 6m歩行 座位ステップ 長座前屈 【活動方針】 個人のやりがいをグループ活動の中で見つけてもらえる ような活動を提供する。 利用者様が何でも言えるような環境づくりに努める。 [写真1]介護予防グループの活動 運動器機能向上 ニュースポーツのペタボード 大別される。それぞれのグループは,活動内容や される(資料1,写真1) 。 構成員によりもっと細分化して小グループ活動を ◎遊友くらぶ(運動グループ) 行っている。 「遊友くらぶ」は,原則として運動系である(写 ◎介護予防グループ 真2) 。ゲームやスポーツを夢中になって楽しむ それぞれの具体的な活動として, 「介護予防グ ことにより,身体的にも精神的にも機能訓練や機 ループ」では,転倒予防体操やストレッチ,筋肉 能回復の効果が望める(資料2) 。ゲーム機器は トレーニングなどから始まり,まずは「楽しさ」 テレビに接続してバーチャル体験ができる。現在 を前提に継続してできる内容に利用者の提案や希 はボウリング,ゴルフ,野球が主流であり,利用 望を取り入れ,曜日ごとに特徴的な取り組みがな 者は実際にプレーしているように集中して楽しん 16 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 [写真2]遊友くらぶ(運動グループ) 手首のわずかな動きだけでも楽しめるボウリング スナッグゴルフのボールでビリヤード でいる。職員にとっても,利用者に 毎回どんなレクリエーションを提供 しようかと用意する必要がないの で,職員の負担はかなり少ないと思 われる。5〜6人の小グループでの 活動のメリットがここに発揮され [資料2]遊友くらぶ(運動グループ)の年間計画(2012年度) 活動 2012年4月1日∼2013年3月31日(3カ月ごとの見直しあり) 期間 ①ゲームの前にストレッチ・転倒予防体操を行う ②テレビボウリング・テレビゴルフで上下肢の運動を行うと共に,グ 活動 ループの楽しみも味わってもらう 内容 ③ペタボードで上肢の運動を行うと共に,グループで協力してゲームを 進める楽しみを味わってもらう ④利用者同士の絆を深め,仲間意識を持ち,楽しみのある活動を行う ストレッチ・転倒予防体操を行い,テレビボウリングでゲームを行う。 上肢の運動,また集中してゲームしてもらう一時を提供する。 記録を付け,上位20人を掲示板に貼り出すことで,意欲向上を図る。 3カ月ごとに個人成績を貼り出す。 3カ月ごとは賞状のみ。 る。これぐらいの人数なら順番も早 く回ってくるし,ほかの人の応援を ボウリング する余裕も出てくる。ボウリングで もゴルフでも,利用者同士がアドバ イスし合う光景をよく見受ける。 要するに,小グループなら利用者 持って自主的・継続的な活動に取り ながらにパーフェクトを出した人の 写真が飾られ(写真3) ,月間ベス トスコア者の名前も貼り出されてい 位者やスプリットを出した人には賞 状や景品を授与する。同様のことが ゴルフでも言える。プレーをするこ とにより,知らず知らずのうちに上 肢・下肢の運動をしている。グルー ストレッチ・転倒予防体操を行い,個人または2チームに分かれ ゲームを行う。 運動グループの中でも2つに分かれ活動しているが,ペタボード の1週間は,グループの中でもコミュニケーションを図ってもら えるよう,明るく楽しい和みの場を提供する。 点数制にして個人,またはグループの成績を掲示していく。 また,大会が行えるようになったら開催する。 慣れたら職員が新たなルールを作る。 ストレッチ・転倒予防体操を行い,テレビゴルフゲームを行う。 上肢,下肢の運動を行いながらゴルフの楽しみを味わってもらう。 (下肢はできる人だけ) 人数の関係で個人プレーができないことが多いので,チームで協 力してゲームを進めていく中で,コミュニケーションを図る。 ゴルフ る。ボウリング大会も企画され,上 活動詳細 ルームの一角には,ボウリング場さ ペタボード 組める。そこに職員は楽しめる工夫 ボウリングの一例であるが,デイ 「全利用者対象」 …賞状,景品あり。 7∼9月 ひまわり杯 1月 新春ボウリング大会 ☆3カ月ごとの成績を5位,スプリットも最多回数貼り出す。 できたら,景品もものづくりグループで製作した物を提供する。 またスプリットを出した人も表彰する。 パーフェクトも掲示する。 身体状況に合わせたサポートをしながらゲームを進めていく。 は楽しみややりがいを感じ,意欲を や仕組みを考えればよいわけである。 「運動グループ対象者」 …賞状,景品あり。 7月2週間限定 あさがお杯 11月 もみじ杯 「運動グループ対象者」 …賞状,景品あり。 8月 あさがお杯 11月 もみじ杯 優勝チームに表彰と景品を贈る。 ホールインワンした人は個人で表彰する。 ゴルフを楽しんでもらうと共に,ゴルフを通じコミュニケーショ ンを図る。 身体状況に合わせたサポートをしながらゲームを進めていく。 また体調の変化なども観察する。 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 17 [写真3]ボウリング場の雰囲気でパーフェクトを 出した人の写真が貼り出されている の心にも響き,いつもは控えめな人でも,その時 代を生きた証として饒舌な語り部となり,また当 時の町並みや移り変わり,人々の暮らしに詳しい 物知り博士となる。認知症の有無,年齢,男女の 別なく,音楽は昔輝いていた時間を取り戻し,一 人ひとりが主体性を発揮できるすばらしいツール である。リズムに合わせた手足の運動,口を開け て大きな声を出すことは口腔機能だけでなく,心 肺機能も活性化させる。 ◎さくら工房(ものづくりグループ) プ同士でスコアを競い合うことにより,チームの 「さくら工房」は,手芸や工作,園芸の活動が 仲間意識が生まれ,利用者同士のコミュニケー 主である。利用者の要望や季節的な取り組みによ ションも良くなる。無論,ホールインワンが出れ り,かなり個人の趣味,要望が反映されて,メ ば個人表彰される。 ニューは極めて多彩である(資料4) 。手芸はエ 利用者にやる気を起こさせる仕掛けを数多く用 コクラフトのかご作りやモチーフつなぎのひざ掛 意するのが,職員の役割になる。たとえ片麻痺で け,マフラー,パッチワーク,アクセサリー作り あろうと車いすでしか移動できなくても,一人ひ などがある(写真4,P.21) 。利用者が先生とな とりが同等に競技に参加できるよう,障害に応じ り,職員が教えてもらう側になっている。編み物 た対応を工夫するのも職員の役割である。ゴルフ では2本針をする人,かぎ針をする人,片手編み コンペを企画したり,野球も裏日本シリーズなる 機から奇麗な色のマフラーを作り出す人とさまざ グループ対抗戦は大変な盛り上がりを見せ,利用 まである。おのおの自分のしたいことを一人で集 者は真剣そのものでゲームに集中している。恐ら 中している人,仲間と昔話をしながら手と口を楽 く普段は3分とじっとしていられない認知症の人 しそうに動かしている人などがいて,個人作業で の徘徊も,ここではほとんど見られない。 あったり,共同作業になったりもする。 テレビゲームに並行して,ニュースポーツもい ものづくりはものを作ることだけを目的としな くつか取り入れてきた。例えば,ゴルフと同じ い。材料選択に始まり,どのように作成するかの ルールで手軽に楽しめるスナッグゴルフやカーリ 説明,確認,そしてできたものをどう使うかまで ングに似たペタボード,ビリヤードなどである。 利用者と話し合う。例えば,施設内の催しでデイ グループで協力してゲームを進める楽しみを味わ サービスのコーナーに出品するとか,保育所との え,利用者には大変好評である。これらは屋外, 交流に使うとか,収穫した野菜なら昼食の一品に 屋内どちらでもでき,地域の老人会や保育園児と する,などである。ものづくりは,販売に耐え得 の交流においてまさに,いつでもどこでも誰でも, るほどの商品価値のあるものを制作すること,こ それぞれが大活躍できる楽しいスポーツである。 れが原則となっている。 ◎歌唱グループ 「歌唱グループ」では,歌体操,音楽療法,回 想療法などのさまざまな手法を取り入れている (資料3)。一世を風靡した民謡や歌謡曲などは誰 18 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 「京都式えらべるデイサービス」 の成果 「京都式えらべるデイサービス」の最大の効果 [資料3]歌唱グループの年間計画とプログラム(2012年度) 年間計画 活動 2012年4月1日∼2013年3月31日 期間 (3カ月ごとの見直しあり) プログラム ※曜日で変更あり 活動 【前半】10:00∼10:40 【休憩】20分 時間 【後半】11:00∼11:30 歌体操 ︻前半︼ 歌体操&うたあそび ① 「口腔ケア」 「転倒予防」 「認知症予防」を取り入れた歌体操 ①「口腔ケア」 「転倒予防」 「認知症予防」を取り 活動 ② 「音楽療法」を取り入れたリズム「うたあそび」 入れた歌体操 活動 内容 ③ 「回想療法」を取り入れた「お話&傾聴」ケア 内容 ② 「音楽療法」を取り入れたリズム「うたあそび」 ③ 「回想療法」を取り入れた「お話&傾聴」ケア 利用者の出席点呼 名前を呼び, 「ハーイ!」と元気よく答えてもらう。 「口腔体操」 「ゆび歌体操」 「しあわせ歌体操」 テキストを利用者に手伝ってもらい配り,それを 「頭の回転体操」 「転倒予防体操」その他,各 見ながら「口腔体操」「3&4拍子体操」「ゆび歌 種の創作歌体操の実施 体操」 「しあわせ歌体操」「頭の回転体操」「転倒予 いずれもリズム感あふれる演出を基に,分 防体操」その他,各種の創作歌体操を実施する。 かりやすく簡単な組み合わせで認知症の利 【活動方針】 用者にも対応できるように工夫し提供する。 できなくても細かいことは言わずに「共生」の考 常に工夫して歌体操を通してグループの活 えを重視して,常に笑顔のある会話につながる「あ 性化を図り,積極的な会話につなげる。 そび心」を持ちながら実施する。 「3&4 拍 子」を「グ ー・チ ョ キ・パ ー・ 褒め言葉を交えながら「ポジティブ」な個別の対 etc」などでリズムを出しながら歌を歌い, 応も行う。 「指の運動」や「足の運動」をする。 【約20分休憩】 常に言葉がけをしながら,歌う歌の内容や コーヒータイム トイレタイム その時代背景などを回想し,音楽を通して 自由時間 お話&傾聴 コミュニケーション第一のグループ活動を 利用者同士の会話 職員との会話 行う。 今日のニュース 介護度に左右されない, 「ハンディのある人」 歌唱集を使った「うたあそび」および「早口言葉」 にも明るく楽しい和みの場を提供できる「ポ 【目的】 ジティブなグループ活動」を展開する。 歌が上手になるのではなく,音楽を通してコミュ 最低3カ月間はプログラムを変えずに歌体 ニケーションすることを目的とする。 操やいろいろな軽体操を繰り返し実施し, 「リズムを刻みながら」 「手足の体操」をしながら 「うたあそび」を通じて利用者が家でも簡 歌うことで, 「脳」に「心地よい」刺激を与える。 単に続けて楽しめるような「ラジオ体操」 【活動方針】 的な内容で実行する。 「3&4 拍 子」を「グ ー・チ ョ キ・パ ー・etc」な 四季の風景や時代背景が浮かんでくる歌を どでリズムを出しながら歌を歌い, 「指の運動」や 「お話&傾聴」から選び,グループで「お 「足の運動」をする。 話&回想」できる「認知症対応」の内容で 常に言葉かけをしながら,歌う歌の内容やその時 活動する。 代背景などを回想し,音楽を通してコミュニケー 利用者同士の会話を重視し,明るい和みの ション第一のグループ活動を行う。 場をつくる。 利用者同士の会話を重視し,明るい和みの場をつ 「来るもの拒まず」の精神で,誰でも入れ くる。 最後は「のびのび・グーパー体操」で終わる。 るグループ作りを実行する。 ︻休憩︼ トイレ& コーヒー 活動詳細 音楽療法&回想療法 活動詳細 ︻後半︼ うたあそび&傾聴、会話 その他 は,一定期間,グループ活動の利用者と職員を固 いるか,これから何をするのかがはっきり分かっ 定し,活動場所も固定することにより,利用者は ているので,方向を間違えることなく,しっかり 確信を持って主体的に行動できるようになること とした足取りで自分のグループに戻っていく。自 である。朝,送迎車に乗る時から今日はどこで誰 分が次に何をしなくてはならないか,戻るべきと と何をするのか,利用者は知っている。お風呂は ころも知っているので,迷いも不安もなく,転倒 職員が一人ずつ声かけをして,随時入浴してもら することもほとんどない。 う。整容を済ませて出てくると,風呂場の前に設 そうすると,職員の役割も明確になる。職員は 置してあるお茶コーナーに座って,自分でお茶を グループの固定化でかなり観察力がつく。それに 汲んでゆっくりと体を整えてから,自分のグルー より利用者の出すサインを素早く察知し,行動を プのところに帰っていくシステムが定着してい 予測することができる。これが利用者の安心感に る。グループを自ら選ぶということにより,帰属 つながり,互いの信頼が生まれる。これもグルー 意識が強くなる。自分がどのグループに所属して プ固定のメリットである。 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 19 20 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 活動詳細 園芸活動 創作活動 試作品作成中 試作品作成中 試作品作成中 ①モザイクアート(貼り絵) 家庭に身近な材料の卵の殻を用いて,貼り絵に挑戦。 個人ではなかなか作り上げられない作品を,共同・協力して取り組 み,個々では感じられなかった達成感,連帯感を感じてもらう。 天橋の郷玄関ホールの掲示板に展示目的でタテ100cm×ヨコ170cm サイズを予定。 残存能力に合った作業を担当してもらい,色塗り・貼りを行う。 地域の文化祭や展示の機会があれば出展を 予定。(題材は検討中) 一人一作品ではなく,普段顔を合わせることのない別の曜日グループ と連携し,つながりのある作品を作る。 ADLに合わせて作業工程を分担し,個々の得意分野を生かした工程を 担当する。 分担作業にすることにより,前後の工程の計画を立てたり,自分の役 割を持ったりすることで,グループの一員である意欲(自覚)を持っ てもらう。 ※各季節の種や苗は利用者と相談し決める。または一緒に買い物へ行く。 一年を通じて季節に応じた植物を栽培し,施設内やテーブルなどに飾 ることで季節感を感じてもらう。そして,栽培の楽しみを持ってもら う。 地植えは除草作業が困難なため,室内で活動が可能なプランターで 行い,車いすの人などにも積極的に参加してもらう。 屋外の花壇一区画を利用し,季節に応じた植物を種または苗から栽 培する。 デイサービスのテーブルに飾るほか,ハーブなども栽培し,ハーブ の入ったお菓子作りやハーブティー作りにも取り組む。 活動内容 園芸活動および創作活動 ものづくりの過程を通じて,充実感・達成感を感じてもらうと共に,共同 活動主旨 作業による連帯感や協調性が生まれるような,ふれあいを目的とし,楽し く参加できる活動とする。 活動期間 2012年4月∼2013年3月31日 [資料4]さくら工房(ものづくりグループ)の年間計画(2012年度) また,手が不自由などの理由で卵の殻で貼り絵に挑戦するのが困難 な人は,カラー紙粘土を丸めて貼るという工程のモザイクアートに 挑戦してもらう。 季節ごとの題材を用いて季節感を感じてもらい,天橋の郷玄関ホー ※下記写真は満開の桜をイメージした試作品。 ルを彩る。 イメージ写真 ③編み物(膝掛け) 昔編み物をしていた人も多く,認知症のある人でも針と糸を渡すと 自然に手が動き,小さな作品をつなぎ合わせる膝掛けを作ることで, 長時間の作業が続かない人でも参加してもらえる。膝掛けが完成後, 意欲的であればこたつカバーにも挑戦してもらう。 イメージ写真 ②ペーパークラフト 3年目に入るペーパークラフトで,今までは小さなかご程度の作品 を作っていたが,利用者からの要望で「何か今までと違うものが作 りたい」との声があり,かばんのような少し大きなものを作成予定。 1カ月に1作品と作業日数のかかる作品だが,丁寧に作り込み販売 を目的とする。 また, ③の編み物道具を個々に管理できるよう,道具箱や運動グルー プから依頼があれば景品用のかごも予定。 イメージ写真 活動詳細 創作活動 [写真4]さくら工房(ものづくりグループ) 手作りかごに野の花を飾って おしゃれなアクセサリー ものづくり展示コーナー 大きな集団では仲間意識はなかなか生まれない デイサービスにおいても,介護保険制度の基本 が,小グループなら友達になれることが多い。こ 理念である「個別ケア」 「自立支援」が,極めて こでは利用者同士が実に仲が良い。誰かが休むと 確実に実践できることを重ねて述べておきたい。 安否を気遣う会話が聞こえる。残存機能は身体機 従来のやり方を変えることは,なかなか難し 能だけではない。他者を思いやる気持ち,仲間と い。京都というと古く伝統的なイメージである 助け合う心の動きなど,人として十分に生き生き が,反面,革新的な新しい試みにも果敢に挑戦し, と機能している。 改革していこうとする気概があるのも京都気質で 小グループの中であれば,職員は個別援助が可 ある。これから迎える新しい時代の大きな変革の 能であり,一人ひとりの利用者の内面まで見える 流れの中で, 「京都式えらべるデイサービス」の こともある。利用者の発言や行動を最大限に引き 提案する「デイサービスにおける個別ケア」が, 出すために職員の力量が問われるが,できないと 全国どこでも行われることを願ってやまない。 思っていたことが工夫してできるようになるうれ しさ,利用者の意欲を引き出した喜び,一体感を 持って活動をする楽しさを共に実感することによ り,職員自身も自信を持って利用者に向かうこと ができる。利用者も職員も明るい表情がうかがえ るのは,このような共通の体験を重ねていくから かもしれない。職員の適切なサポートと環境設定 参考文献 1)京都府ホームページ:京都式えらべるデイサービス推進 事業─新たなデイサービスのあり方を求めて─ http://www.pref.kyoto.jp/kaigo/1184899027033.html (2012年8月閲覧) 2)福祉士養成講座編集委員会編:新版介護福祉士養成講座⑥ レクリエーション活動援助法,中央法規出版,2003. 3)京都府ホームページ:介護予防サービスに係る参加・継 続推進事業に関する調査研究報告書―新たなデイサービス のあり方を求めて http://www.pref.kyoto.jp/kaigo/13800008.html(2012年 9 月 閲覧) があれば,利用者,職員ともに大きな可能性を見 いだすことができる。 前述したように,モデル事業当初から見るとレ クレーション内容もグループ編成も異なり,取り 組み方も変わってきている。この手法を実践する ことにより職員のモチベーションは確実に高まり, 利用者の心と体に明らかな行動変容を目の当たり にした時,「京都式えらべるデイサービス」のチ カラを実感した。 通所介護 &リハ 2012 vol.10_no.3 21
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