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echnical News 0090108
微量物の構造詳細解析能力がアップしました
これまで10mg以下の微量物の構造情報を得るためには、顕微FT-IR,顕微LR,TOF-SIMS,熱分解(反応熱分解)
GC/MSを用いての分析に限られてきました。しかし、これらの手法では、ポリマー中の全構成モノマー成分の定性やその
組成比を明らかにすることは困難でした。近年導入したNMR用MAS(Magic Angle Spinning)プローブは、従来のものと比
較して、少ない試料量で測定が可能であり、約500μ g(数100μ m3)の微量物についてもNMRスペクトルが得られるため、
微量物の構造解析に威力を発揮します。
ガラス基板上付着物の分析
付着物の顕微FT-IR測定結果
MASプローブ試料管
1731.9
C=O
0.20
5mmφ用
1159.6
C-O
2000
1500
1000
852.8
試料溶液
(40μ L)
771.0
960.4
1026.8
1116.1
1252.9
1448.2
3000
1379.8
2959.3
0.00
4000
2933.1
C-H
MAS用
試料溶液
(700μ L)
0.10
2873.8
Absorbance
アクリル系ポリマー
( cm
-1
)
図1 付着物のFT-IRスペクトル
図2 NMR試料管の比較(左5mmφ 用,右:MAS用)
ピンセットで採取した付着物(数100μ m)の顕微FT-IR測定を
行いました。その結果、付着物はアクリル系ポリマーであるこ
とがわかりました〔図1〕。しかし、構成モノマー成分までの詳細
組成は把握できないため、MASプローブを用いたNMR分析を
行うこととしました。
MASプローブ用試料管の必要試料液量は約
40μ L(5mmφ 用:汎用,約700μ L) であるため
〔図2〕、微量物でもNMR測定が可能となります。
MASプローブを用いた付着物のNMR測定結果
CH
C
CH2
O
C
O
solvent
CH2
C
CH2
CH2
X
EA
H3C
CH2
CH
O
O
CH2
CH3
CH
CH2
CH2
C
O
O
CH2
CH2
CH
CH3
CH
O
O
O
CH2
CH2
CH2
X
H3C
CH2
CH2
EA : BA : EHA
= 16 : 28 : 56 (wt%)
CH
C
O
CH
CH2
CH3
CH2
CH3
CH2
C
CH2
Y
BA
CH2
O
EA
CH2
CH3
CH
O
solvent
CH2
CH2
Y
CH2
BA
CH3
Z
EHA
Z
EHA
PPM
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
PPM
190
180
170
図3 付着物 (約500μ g)の1H NMR測定結果
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
図4 付着物 (約500μ g)の13C NMR測定結果
MASプローブを用いることで、これまで量的な制約で得ることができなかったNMRスペクトルが得られました。その結
果、付着物であるアクリル系ポリマーの構成モノマー成分は、アクリル酸エチル(EA),アクリル酸ブチル(BA),アクリ
ル酸-2-エチルヘキシル(EHA)であることが明らかとなり、さらに、組成比はEA:BA:EHA = 16:28:56(wt%)と求まりま
した〔図3,4〕。なお、 1H NMRのみであれば、今回の試料よりも微量な数10μ gの試料量でも測定が可能です。
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