スーパーボールの弾性力について

スーパーボールの弾性力について
動機
私たちは幼いころスーパーボールでよく遊んだが、そのときに抱いた「どうしてスーパーボールっ
てこんなに弾むのだろう」という疑問を解消するため、この機会に調べてみようと思った。
ゴムの性質
大きく伸び縮みする、柔らかい、よく弾むというゴムの基本性能は分子運動性にある。
ゴム分子は力が加わっていないとき、図のように曲がりくねった形態をしている。
−CH2−CH2−の結合が回転するためゴムは伸び、また、元の形に戻ろうとするために縮む。
ゴムの製造
① ラテックス(ゴムの樹を傷つけると分泌される白い乳液のことである。)に酢酸などの酸を加え
る。
② かき混ぜると徐々に凝固する。
③ 水洗するとゴムのかたまりが得られる。
なんでゴムができるの?
ラテックスは普段たんぱく質によって−の電気を帯びており、水中で互いに反発しあっている。しか
し酸を加えると水中に+の電気を帯びた H+が加わるので、−のラテックスと+の H+が結合し、ラ
テックスの電気が+−ゼロとなるため、ラテックス同士がくっつきはじめる。その結果ゴムのかたまり
が生成されると考えられている。
スーパーボールの作成
①クエン酸を純水で2倍に希釈した水溶液10gとラテックスを混ぜる。
②次の2つの道具を使って球状に成型してみた。
Ⅰ.ガチャガチャ
Ⅱ.ピンポン玉
Ⅰ.ガチャガチャ
市販のガチャガチャに溶液を入れ、すぐにふたをし、上下左右に振る。これは遠心力を利用するこ
とによって、きれいな球状にするためである。結果、きれいな球状になった。
しかし、数日経ってからそのボールを見ると、ボールの形が変形してしまった。これは、乾燥しボー
ルの中の水分が抜けて、原型をとどめることができなくなったからである。そのため、ガチャガチャを
用いた作成方法は断念した。
Ⅱ.ピンポン玉
ガチャガチャでの反省をいかして、次に水分を抜きながら成型できる方法を考えた。そこでひらめ
いたのが、ピンポン玉を使った方法である。ピンポン玉を2つに分け、その型にあわせてゴムを親指
で押すことによって、水分を抜きながら成型した。
このようにきれいな球状のスーパーボールを作ることができた。ひとつのスーパーボールを作るた
めに1時間近くかかったが、この方法で実験を進めることにした。
実験内容
<目的>
スーパーボールをつくるときに使用する薬品の種類や濃度を変えて、スーパーボールの弾み方
に変化があるかを調べる。
<方法>
① スーパーボールの作成
ラテックスに酸(クエン酸 or 酢酸)を加えて、球状に成型する。
② スーパーボールを弾ませる
1.5mの高さから自由落下させて、弾んだ高さを計測する。
<結果>
縦軸…弾んだ高さ(cm) 横軸…希釈した割合(倍)
110
105
100
クエン酸
酢酸
95
90
85
2
3
4
5
6
酢酸とクエン酸では酢酸で作成したボールのほうが高く弾んだ。
また、希釈した割合が大きいほど、ボールはよく弾むことがわかった。
考察
実験の結果から酸が弱い、つまり H+が少ないほうがよく弾むということがわかった。
☆クエン酸はなぜ弾みにくい?☆
クエン酸の場合、H+が多いため、−の電気を帯びているラテックスと急激に反応する。そのため、
分子同士がうまく絡み合わないゴムのかたまりができてしまう。よって弾性力の弱いスーパーボール
ができる。
☆酢酸はなぜ弾みやすい?☆
酢酸の場合、H+が少ないため、−の電気を帯びているラテックスとゆっくり反応する。そのため、
分子同士がうまく絡み合ったゴムのかたまりができる。
分子同士の絡み合いがしっかりするということは、ボールが弾む際により元の形に戻ろうとする力が
強いということだから、よく弾んだのではないかと考えた。
*ちなみに、市販で売られているスーパーボールで同じ実験をしたところ、平均で 115cm 近く弾み、
私たちが作ったスーパーボールよりもよく弾んだ。
感想
この実験をするにあたり、当初考えていたよりもボールを作るところで時間がかかってしまった。しか
し、この実験を通してゴムに関する基礎知識を学ぶことができ、原子間の結合などを考えながら考
察することができたのでよかった。もし、機会があれば、スーパーボールがよく弾む酸の希釈の割
合を見つけだして、その割合でスーパーボールを作ってみたいと思う。