外交防衛委員会 議事録

(2005/07/21 08:00 登録)
平成十七年七月十四日(木曜日)
午前十時開会
(中略)
○委員長(林芳正君) 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題と
し、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○白眞勲君 ライス国務長官による総理表敬、官房長官との会談及び日米
外相会談が行われましたけれども、それと絡んで、昨日、ニューヨークで、国
連安保理事改革をめぐる国連総会の審議でアメリカが四か国の枠組み決
議案に反対することを明言したというニュースが飛び込んできたんですけれ
ども、このライス長官との日本での会談において、町村外務大臣は、その件
についてライス長官から何か反対するぞということを言われたんでしょうか。
○国務大臣(町村信孝君) この安保理改革あるいは国連改革全体につい
てはこれまで何度かライス長官と話をしてまいりました。
アメリカの方はずっと、まず第一に主張している点は、国連改革全体を進
めることが大切であると。安保理がその一環であることはもとよりだけれども、
同時に、例えば、今、国連に人権委員会というのがありますけれども、それ
を人権理事会というような形に格上げをして、より強力な、世界じゅうの人権
状況を改善する、そういう機関にしたいとか、あるいは平和構築委員会とい
ったようなものをつくったらどうかと、これはいずれも累次のレポート、ハイレ
ベルのレポートであるとか、あるいは国連事務総長のレポートにも入ってい
るところですけれども、そういう改革。あるいは、国連の事務局というものが
大変肥大化して硬直化してきている、この改革、合理化が必要ではないか
と。
様々なそういう改革の一環としての安保理改革という位置付けで、安保理
改革だけが先にどんどん走っていくという姿はアメリカとしてはとても、例え
ば対議会説明が付かないんですと。米議会においては大変国連批判が強
い。今も何か予算が一本人質になっているというような説明をしておりました。
そういうアプローチからすると、この時期の決議案の採択というのは、いず
れの決議案の採択も時期尚早ではないかと。もっと全体がバランスよく、例
えば九月に入ってから全体の一環の中でこの安保理改革について意思決
定をするのがいいのではないかというようなことがまず一つあります。
それから、もう一つの主張は、日本が常任理事国になることについてはか
ねてより賛成をしているけれども、常任理事国の数が増え過ぎたりあるいは
非常任理事国の数が増え過ぎたりして、今十五か国あるものが二十五とか
二十六とかいうことでは効率的な安保理の意思決定ができなくなるではな
いかと。明確にどの数とは言っているわけじゃございませんが、まあ二十以
下といったような感じであるならば納得し得る安保理改革であるというような
ことを私に対しては言っておりまして、それはかねてよりアメリカの主張でご
ざいました。
その辺を今回G4決議というものに絞って態度表明をするということになっ
たものですから、十二日の日にケリ国務省上級顧問が、端的に言えば、G4
決議に反対するという態度表明をしたんだろうと思います。
○白眞勲君 そうしますと、この日本の今のG4の一員としての安保理常任
理事国入りというものについては極めて難しくなったんではないかというよう
な報道もあるわけなんですけれども、大臣としての御見解はいかがでしょう
か。
○国務大臣(町村信孝君) 今、私どもとしては、まず枠組み決議というもの
を三分の二以上の賛成で通すということ。それから第二段階として、これが
通った上で、第二段階として、国ごとにそれではどの国が適切であると判断
するか、これも国ごとに投票して三分の二以上の賛成と。それらをまとめて、
例えば常任理事国の国は憲章上明記されておりますから、憲章改正という
第三段階の作業に入ってまいります。
もちろん、その際には、安保理以外のこと、例えば敵国条項を削るとか、こ
ういったような中身も憲章改正事項として出てくる。ほかにも、さっき言った
人権の問題等々出てくるかもしれません、これは分かりません。
そうしたものについて、その第三段階になって初めて常任理事国の賛成と
いうものが必須要件になってまいります。三分の二であると同時に、その三
分の二の中には現在の常任理事国五か国が入っていなければいけないと
いうことになるわけでありますから、その段階に至るまでアメリカが徹頭徹尾
反対するかどうか。実際に選ばれる常任理事国の数がどうなるか、他の憲
章改正事項あるいは他の国連改革事項がどうなるかということによって、ト
ータルの判断が、アメリカならアメリカ、それぞれの常任理事国がなされる
んであろうと、憲章改正という姿になった時点でですね、そのように私は思っ
ておりますから、今の時点では、とにかく数で三分の二以上になるかどうか
ということについて今全力を挙げ、特にアフリカとの関係が大変重要である
ということで、アフリカとの調整ができるかどうか、これから今週、来週掛け
て最大限の努力をしていきたいと、かように考えているところであります。
○白眞勲君 それと同時に、韓国が今回重大な提案として、北朝鮮の問題
なんですけれども、核開発の完全放棄に同意すれば二百万キロワットの電
力を直接送電し提供するという重大な提案というのを発表したわけですけれ
ども、これと対比しまして、昨日の細田官房長官の発言としては、核の廃棄、
検証を前提として行わなければ意味がないと。つまり、細田長官は検証、廃
棄ということ、それから韓国側は同意という、廃棄の同意ですよね、という微
妙にニュアンスが違うんですけれども、どうしてこう違うんでしょうかね。
○国務大臣(町村信孝君) 今この時点で話しているのは、少々それぞれの
国々の考え方なり、またある種アバウトな表現がこの時点ではいろいろ出て
くるのはやむを得ないんだろうと、こう思います。
今後、まず今日ですか、韓国、今日は十四日、今日ですね、今日、韓国に
おいて日米韓の政府代表が集まって議論をいたします。そこでどういう対処
方針にするのか、また、実際に今後北朝鮮と話合いの中でそこをどう詰め
ていくのかという問題が出てくるのであって、今そこで、検証という言葉があ
るのかないのかというところで、余り違いがあるではないかというようなこと
をここで今取り上げてもさほど意味がないことだと。
ただ、約束、口約束をするだけで、それが実行が伴わない、第三者的な検
証も行われないというようなものでいいのかといえば、それはやっぱりまず
いんだろうと私は考えております。
○白眞勲君 この件につきましては、昨日、大臣が外務委員会において、
前もって相談もあったと、韓国側から、そういうお話もあったわけですけれど
も、相談があったんならば、当然この辺りについての詰めというのもあった
んじゃないのかなというふうに私は感じるんですけれども、なかったんでしょ
うか。
○国務大臣(町村信孝君) ですから、余り実務者の話合いをする前からそ
こをぎりぎりぎりぎり日米で、日韓間で詰めてみてもそれはしようがないわけ
ですよ。そこは実際、協議に臨む前の打合せであり、協議に入った後の打
合せでありという部分にゆだねていただきませんと、すべて白先生のように
頭脳明晰な方が事前にぴしゃっと詰め切った形で物事がすべて運ぶという
わけにはこれはいかないと思います。
○白眞勲君 今大臣の方から核廃棄については非常に厳しくやっていかな
きゃいかぬというお話があったわけですけれども、この場合、当然これは高
濃縮ウラン計画も含めた形ということで理解してよろしゅうございますか。
○国務大臣(町村信孝君) 私どもはそういう理解でおります。
○白眞勲君 北朝鮮は日本について、日本だけは六者会合の再開に寄与
したことがないというようなことも言っているわけでして、これについてどうこ
う一々コメントする必要は私もないというふうには思っているわけなんですけ
れども、恐らく拉致問題というものを意識しながらこういう発言も北朝鮮では
あったんではないのかなというふうに私は真意を何か考えているわけなん
ですけれども。
以前から大臣は拉致問題も含め六者会合で取り上げるということを発言さ
れていますけれども、当然今回取り上げるつもりでいらっしゃるわけですよ
ね。
○国務大臣(町村信孝君) 六者の中で日本以外の国々は主として核という
ものに関心が、重点があると。それは当然のことだろうと思います。ただ、日
本の立場からすると、当然、核があり、かつそれが運搬されるミサイルという、
運搬手段というものについて当然関心を持つことは日本の立場からすれば
特に当然だろうと、こう思いますし、またこれは日朝間、人権問題といえばも
う少し普遍的な問題になりますけれども、日朝間でいうならば、人権問題の
最たる事例でありますところの拉致問題も当然それは取り上げると。今まで
の六者協議でもその問題を提起しております。実際、六者協議の中で行わ
れるであろうバイの日朝間の話合い、先方、応ずるように私どもは説得する
わけでありますけれども、その場で拉致問題も取り上げていきたいと考えて
おります。
○白眞勲君 その際に、めぐみさんの遺骨が偽物であったということについ
て言及されるおつもりでしょうか。抗議されるおつもりでしょうか。
○国務大臣(町村信孝君) 昨年の十二月の偽遺骨という以降から、現実
に日朝間の少なくとも公式的な接触がほとんど行われ得てないという実情
にかんがみれば、その原因となったことについて話合いが持たれるのは当
然だろうと思いますが、同時に拉致の問題全体、そして日朝間をどうするの
かという広がりを持った話合いができればいいなと、こう思っております。
○白眞勲君 今回、ライス長官には、この拉致問題を六者会合で取り上げ
るということはお話しされましたでしょうか。
○国務大臣(町村信孝君) 当然、日本のこの六者協議に臨む基本的スタ
ンスということで、今申し上げたことを含めて話してありますので、日本として
は核だけではなくてミサイルの問題、拉致の問題、大変重要な関心事項とし
てこの六者協議で引き続き話合いが行われるべきであるというふうに私ども
はライスさんには言い、ライスさんも日本の拉致、日本政府の、あるいは日
本国のこの拉致問題に関する取組について十分理解をし、支持するという
発言もあったところであります。
○白眞勲君 それとまた別なんですけれども、BSEにつきましてお話があっ
たということなんですけれども、大臣は科学的知見に基づいて本件の早期
解決に向け引き続き努力をしたいという旨の発言をされたというんですけれ
ども、この場合の解決というのは何を意味しているんでしょうか。
○国務大臣(町村信孝君) 今、プリオン専門委員会ですか、食品安全委員
会の下のプリオン専門調査会というんですか、ちょっと言葉はあれですが、
専門家の方々が議論をしておられるわけでありまして、そこで出てくる答え
が正に解決案だろうと、こう思っております。
○白眞勲君 そうしますと、輸入再開ということでの解決ということはないで
すね。
○国務大臣(町村信孝君) 輸入再開が可能であるかどうかという諮問をさ
れたと私は聞いておりますから、その答えが正に日本の答えということにな
るわけであります。
○白眞勲君 続きまして、在日米軍基地につきましてちょっとお聞きしたいと
思うんですけれども、まずその位置付けについて御説明願います。
○政府参考人(河相周夫君) 在日米軍基地、これは安保条約六条に基づ
きまして、日本の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全
の維持に寄与するために米軍は施設・区域を使用することができると、そう
いう位置付けで存在をしているわけでございます。
○白眞勲君 そうしますと、前回、外務省の方で、アメリカ海軍ディエゴガル
シア基地については、この基地は在日米海軍が組織上その管理下に置か
れているというふうに答弁されているわけなんですけれども、極東の範囲外
にある基地が入っているとすると、これは安保条約違反ではないんでしょう
か。
○政府参考人(河相周夫君) 必ずしも御質問の趣旨、私、正確に理解して
いるかどうかあれでございますけれども、先般の委員会で御説明したとおり、
在日米軍基地というものが安保条約に基づいて、そして日米地位協定の適
用を受ける基地であるという位置付けでいうんであれば、ディエゴガルシア
は在日米軍基地には該当しないということでございます。
○白眞勲君 在日米海軍基地にディエゴガルシアが入っていないのにアメ
リカ、在日米軍のその管理下にあるならば、これは安保条約違反の場所だ
ということになりますよね。
○政府参考人(河相周夫君) 在日米海軍はいろいろな管理の任務を負っ
ておるわけでございます。基本的には日本にある在日米海軍の種々の基地
の管理に当たっているところでございますけれども、その中での一部として、
その一部というか任務の中にディエゴガルシアが管理上その隷下に置かれ
ているという事実はございますけれども、それをもって安保条約違反だとい
うことには該当しないというふうに理解しております。
○白眞勲君 ちょっと意味がよく分からないんですけれども、もう一回聞きま
す。
日米安保条約で定められている極東の平和と安全の維持に寄与する在
日米軍が極東とは関係のないディエゴガルシアを在日米海軍の管理下に
置かれているというのは、じゃどういう意味なんでしょうか。
○政府参考人(河相周夫君) 米軍の中の組織、その予算等々のシステム
というものがどういうことになっているかというのをここで、必ずしも私、詳細
を把握しているわけではございませんけれども、在日米海軍司令部がその
管理に当たっているという事実が仮にあったとしても、在日米海軍司令部が
極東、我が国の平和、それから極東の平和と安定に寄与しているという実
態においては何ら変わったことはないというふうに理解しております。
○白眞勲君 では、ディエゴガルシアが極東の平和と安全にどのように寄与
しているんでしょうか。
○政府参考人(河相周夫君) ディエゴガルシアの基地そのものが、私が先
回からここで御説明しているとおり、ディエゴガルシアが極東の範囲の中に
入っているというふうに私は理解をしておりません。また、ディエゴガルシア
の基地そのものが極東の、我が国の平和、また極東の平和と安定に寄与し
ているということではないと理解しております。
○白眞勲君 そうしますと、いつからディエゴガルシアが機構上、在日米海
軍の下になったんでしょうか。
○政府参考人(河相周夫君) ちょっと現在手持ちの資料の下でいつからと
いうところは、私、つまびらかにしておりませんけれども、現在、機構上、現
時点において米軍の機構の下でディエゴガルシアの基地、そこを管理して
いる部隊がアメリカの管理手続の下では在日米海軍の隷下にあるというの
が事実でございます。
○白眞勲君 そうすると、ディエゴガルシアというのはアジア太平洋地域に
おける平和と安定には寄与しているというふうに見ていいんでしょうか。
○政府参考人(河相周夫君) 先般から御質問のありますアジア太平洋地
域の定義とこの地理的範囲というのは、必ずしも、その性格上、厳密なもの
があるわけではございません。その中においてディエゴガルシアというのが
アジア太平洋地域の平和、安定というものに寄与しているかどうか、一概に
今ここですぐ断定的に答弁することは差し控えたいと思います。
○白眞勲君 つまり、安保条約というのは、安保条約の中に在日米海軍と
いうのは入っているわけですよね、もう一回聞きますけれども。
○政府参考人(河相周夫君) 在日米海軍は安保条約に基づいて存在をし、
日米地位協定の適用を受けているということでございます。
○白眞勲君 今おっしゃったように、安保条約で在日米海軍は存在するの
に、その安保条約でディエゴガルシア基地が入っていないというのはどうし
ても分からないんですけれども、私には。つまり、在日米海軍は日米安保条
約に基づいて存在するにもかかわらず、そのディエゴガルシア基地は在日
米海軍のその隷下にあると、支配下にあるということはどういうことなんです
かということを聞いているんです。安保条約から逸脱しているんじゃないで
すか、ディエゴガルシア基地だけは。
○政府参考人(河相周夫君) 先ほどから御説明しているとおり、ディエゴガ
ルシアにある米軍の組織というものが安保条約の下にある、若しくは日米
地位協定の適用を受けている存在ではないという意味においては在日米海
軍の、若しくは在日米軍の一部を成しているものではないということでござ
います。ただ、片や日本にいる在日米海軍司令部が米軍の管理上その下
に、その隷下に、組織的にはディエゴガルシアの基地部隊が隷下に存在を
するということでございます。
○白眞勲君 何か御発言されていて矛盾していると思いませんか。私は非
常に矛盾を感じるんですね。その位置付けの中では在日アメリカ海軍の中
に入っているけれども、入っていないというような言い方をされているわけな
んですね。
もう一度その辺ちょっと御説明願いたいんですね。つまり、その安保条約
の中で在日アメリカ海軍は存在するわけですよね。その中でディエゴガルシ
アはその安保条約からは逸脱しているということは今おっしゃっているわけ
じゃないですか。そうしますと、その安保条約とディエゴガルシア基地という
のは、ディエゴガルシア基地自体が安保条約違反になるというのが普通の
解釈なんだと思うんですけれどもね。
○政府参考人(河相周夫君) 繰り返しの答弁になりまして申し訳ございま
せんけれども、ディエゴガルシアの基地が日米安保条約に基づいて存在す
るということではございません。片一方で、在日米海軍司令部というものは
日米安保条約に基づいて存在しているものである。そして、その下で偶々そ
の在日米軍司令部がディエゴガルシアの予算等々の管理の責任を有して
いるということでございます。
○白眞勲君 これもう一度ちょっと、私ももう一回、答弁を精査しました後で
もう一回聞きたいというふうに思っております。どうしても納得いきません。
続きまして、防衛庁長官にお伺いしたいんですけれども、先日の私の代表
質問におきまして大臣は、米国へ提供された武器の第三国移転、ミサイル
の共同開発において我が国の事前同意がなく行われないよう、国際約束に
より担保されることとなります、また、米国政府により第三国移転の要請が
あった場合には、当該供与の趣旨及び武器輸出三原則等を踏まえて、その
可否について慎重に検討することとなりますと答弁されておりますが、これ
は要するに武器を第三国に売るということもあり得るということでございます
ね。
○国務大臣(大野功統君) 今回の武器輸出三原則の緩和につきましては、
白先生御存じのとおり、現在アメリカと日本でやっておりますミサイル防衛の
共同技術研究がやがて開発段階に入る、生産段階に入る、これを予期して
やっているわけでございます。したがいまして、ミサイル防衛のみ、そしてア
メリカに対する、アメリカとの関係に関するもののみ、こういう構成でござい
ます。
当然のことながら、交換公文等でその辺ははっきりしていきたい。アメリカ
へ提供された武器の第三国移転につきましては、やはり事前に日本の同意
を取り付ける、このことをはっきりさせておきたいし、仮に実際に現実的にそ
ういう問題が起こってアメリカから要請があった場合には武器輸出三原則の
精神にのっとり慎重に検討することになろうと、こういうことを申し上げたわ
けでございまして、結論を申しますと、そういうことでありますから、場合によ
っちゃそこに第三国供与ということがあり得る可能性がある、こういうことで
ございます。
○白眞勲君 非常に、要するに武器輸出三原則が、今回そういった面では
このミサイル供与に関してはあり得ると、第三国輸出が、ということを今明白
に答弁されたということでいいですね。
○国務大臣(大野功統君) 慎重に慎重を重ねてと、このところは十分御記
憶にとどめおきいただきたいと思います。
○白眞勲君 続きまして、八千億円から一兆円も掛かるという弾道ミサイル
防衛システムについて、何とか少しでも安くならないのかなと私も思って、ま
あ恐らくここにいる委員の皆さんもそういうふうにみんな思っているとは思う
んですけれども。
前回の私、あの代表質問でも申し上げたんですけれども、いわゆるオフセ
ット取引などもまあ今回積極的に導入すべきであるというふうに私は思って
いるんですが、今日は経済産業省の参考人の方もいらっしゃっていると思い
ますが、このオフセット取引の概要と世界の趨勢について御説明願いたいと
思います。
○政府参考人(柴生田敦夫君) お答え申し上げます。
オフセット取引とは、武器等の輸出の際に相手国政府又は企業に対して
経済的な補償を約束するものでございます。具体的には、相手国企業に対
して共同生産への参加、ライセンス生産、下請生産、技術移転、それから工
業製品、農産品等の反対売買、国際投資を約束とするというような、こういう
ような内容になります。
オフセット取引のねらいといたしましては、装備品の取得に必要な外貨の
削減や同盟国の工業レベルの向上ということが挙げられます。
それで、公開統計が入手できますアメリカ商務省の報告によりますと、米
国企業はオフセット関連として一九九三年から二〇〇三年までの間に三十
六か国の間で七百九億ドルの輸出を行い、これに伴うオフセット契約が輸
出契約の七三・八%に当たります五百七億ドルであったということを届け出
ているところでございます。
オフセット取引上位五か国を挙げますと、イギリス五十億ドル、フィンランド
約三十二億ドル、イスラエル約三十億ドル、オランダ約十七億ドル、韓国約
十六億ドルとなってございます。
また、米軍資料によりますと、トルコへのF16 の販売に関連して、ロッキー
ド・マーチン社が数十億ドルのオフセット取引として航空機産業とその基盤
の創出を行ったという例がございますし、また、FA18 のスペインへの販売に
関連しまして、マクダネル・ダグラス社がスペイン製の鉄製品、化学製品等
を米国で販売することなどに合意したという例がございます。
以上でございます。
○白眞勲君 非常に分かりやすく御説明ありがとうございました。
これがアメリカの商務省が出した報告書なんですけれども、これ見ますと、
今も御説明ありましたように、相当多くの数の国々がこういうオフセット取引
をして、少しでもいわゆる価格の低減について努力をしているということが
分かるんですけれども、どうでしょうか、大野長官、これ日本では全然行わ
れてないわけですから、是非、国民の血税を一滴も無駄にしないという観点
から、こういう取引というのも積極的に導入してみたらどうかなというふうに
思うんですが、長官の御意見をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(大野功統君) 白先生の御指摘、正に血税を使って防衛装備
品を調達する、このときは必ず価格をできる限り安くして購入しろ、調達しろ
と。こういう意味じゃ大変、私は今、注意深く聞いていたところでございます。
そういう意味で、今、日本では何をやっているか、防衛庁何をやっているか
といいますと、例えば、一昨年の九月からでございますが、総合取得改革委
員会というのを設置いたしております。その中で、研究開発から調達、補給、
すべてを一つのライフサイクルととらえて、そしてなるべく安い価格で調達し
ていこう、こういうことで抜本的な改革を今試みているところでございます。
そういう意味で、例えばミサイル防衛についてどうか、こういう問題で考え
てみますと、我々、アメリカとの間で常に協議を行っております。例えば、ア
メリカのミサイル防衛庁長官との協議、あるいは事務レベルでの定期協議、
いろんな協議を通じまして価格低減ということで要請を行ってきております。
御指摘のオフセット取引どうか。大変難しい問題があろうかと思います。白
先生がおっしゃったとおり、今、日本ではやっておりません。例えば、予算執
行上の問題として歳入歳出を一緒にやっていいのかとか、場合によっちゃ
第三国への武器の輸出というような考え方にもかかわってくるのかなとか、
いろんな問題があります。
我々としては、大変大事な価格低減という基本的な理念、これを大切にし
ながら、法令上どこまでできるんだろうか、これは是非とも検討してみなきゃ
いけない、このように思うわけでございますけれども、現状においては非常
に厳しい、こういうことは十分御理解をいただきたいと思います。
いずれにしましても、我々としては、ライフサイクル全体にわたるプロジェク
トマネジメントをやっていかなきゃいけない、そして短期集中的な調達の実
施をやって価格低減には現在十分努めていこう、こういうことで、一つの、先
生の御指摘は一つの御示唆として聞かせていただきました。
○白眞勲君 正におっしゃるとおりでして、日本の場合には武器輸出三原則
等の問題等もありますので、なかなかこれをすぐに適用することは難しいか
もしれませんけれども、やはり日本独自のアイデアを、またいろいろ頭をひ
ねっていただきまして、今、町村大臣からは、白先生はうんちゃらかんちゃら
という話もありましたけれども、防衛庁の皆さん非常に優秀な方々が多うご
ざいますので、もちろん外務省もですけれども、是非よく検討していただきた
いというふうに思っております。何か研究会みたいなものを立ち上げてもい
いんじゃないかなというふうには思っております。
もう一つお聞きしたいんですけれども、また別の問題で、PAC3が弾道ミ
サイルに当たらなかった場合、このミサイルってどうなるんでしょうか、地上
に落下するんでしょうか。
○政府参考人(飯原一樹君) PAC3が当たらなかった場合には、少量の、
PAC3の中に、火薬と申し上げた方が分かりやすいと思いますが、それによ
りまして、そのまますとんと地上に落ちるということがないように、何というか、
自ら破壊をするという機能が中に組み込まれておりますが、その限りにおき
まして破片が地上に落下することはあり得ます。
○白眞勲君 そうしますと、想定される被害というのはどれぐらいになります
か。
○政府参考人(飯原一樹君) これは、イラクのときもあったと言われていま
すが、そのまま裸の形で迎撃ミサイルなりなんなりが落ちますと、これは大
きな被害を生じたという例もあると報道されておりますが、それにつきまして
は極めて小さな破片に破壊をするというような形のシステムになっておりま
すので、全くどんな場合にも一切被害が生じませんということを申し上げら
れる、まあ、物体が落ちてくるわけでございますので、いろんな万が一のケ
ースを積み上げますとそうは言い切れないわけでございますが、まず通常
のケースであればそのような大きな被害は生じないであろうというふうに考
えております。
○白眞勲君 せんだって、参考人質疑におきまして三菱重工業の方が、ミ
サイルが破壊、要するに当たらなかった場合ですね、弾道ミサイルに、甚大
な被害が生じる可能性があるということをお話しされました。それに比べると
何か被害が、何か余りないようなことをおっしゃっているんですけれども、何
でこう違うんですかね。
○政府参考人(飯原一樹君) 済みません、その参考人のおっしゃったこと
の趣旨、ちょっと私、直接御趣旨を確認できないんですが、まあ、二つ。
一つは、当たらなかったらば、正に飛来するミサイルは当初の、向こう側に
とってみれば破裂をすると。場合によっては、核弾頭が破裂をするという場
合ですと、これは甚大な被害が生じます。他方、さっき申し上げましたように、
撃ったPAC3自体が地上にそのまま落ちるということはありませんが、そう
いう場合も考えられるし、撃ち損ねたミサイルが落ちてくるということもありま
す。どの辺りを言われたのか、ちょっと私、直接確認しておりません。
○白眞勲君 是非一度確認していただきたいというふうに思うんですけれど
も、私の理解では、いわゆるPAC3自体が、弾道ミサイルに命中しなかった
場合にそのPAC3が落っこってきて大きな被害を生じる可能性があるという
内容だったというふうに記憶しております。是非一度御確認願いたいなとい
うふうに思うんですけれども。
要するに何を言いたいかといいますと、PAC3というのは今までも、日本
全国あまねく、郵便局じゃないですよ、あまねくミサイルが置いてあるわけじ
ゃありませんから、当然それは人口集中地域、非常に重要な地域に置いて
あるわけですね。そこで、もしミサイルが発射された場合に、逆に大きな被
害が生じる可能性があるというのも念頭に置く場合もあるんだろうなという
ふうに思うんですけれども、その場合、やはり私は、シビリアンコントロール
という観点から、国会への事後報告だけではなくて承認というものも必要で
はないんだろうかというふうに考えているわけなんですね。
国民の生命、財産を守るという観点から考えると、やはりどのような観点で
あれ、そういうシステムの不具合も含めて大きな問題が生じる可能性がある
んではないかなというふうに思うんですけれども、その際の責任の所在とい
うのをしっかり見定めなければならないのかなと思うんですが、その点につ
いて、長官、いかがでございますか。
○政府参考人(飯原一樹君) まず、技術的な点だけ。
当たらなかったという場合にはいろんなケースがあると思います。例えば、
情報入手に失敗をしたと、それで撃つタイミングが遅れたとか、それから、迎
撃するミサイルがたまたま、メカニカルフェーリアの可能性をゼロにはできま
せんから、が生じてしまったとか、あるいはたまに不適切な操作があった可
能性もあります。逆に、飛来するミサイルが当方が予想を超えたような回避
能力を持っていたと。いろんなケースがございますが、いずれにいたしまし
てもそれは、武器を使用してその結果がどうなったかということを含めまして、
今回の法律案では国会に事後に御報告をするということになっております。
○白眞勲君 前回も私の質問で、やはりシステムのバグの可能性は否定で
きないということもあるわけでして、やはりいろいろな部分が想定されるとい
うことは考えられるわけなんですね。
そういう中で、やはり私は、その際の責任の所在というのはどこかにやは
りきちっとさせなければいけないというふうに私は思うわけなんですけれども、
長官はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(大野功統君) この責任の所在、まず、現場の部隊というのは
何ら判断をいたしません。マニュアルに応じて確認をして発射する。そういう
意味で、発射とかそういう意味での責任はありません。すべて内閣で決めた、
そして防衛庁長官が指示するやり方でやっていく、こういうことでありますか
ら、私は、責任の所在というのは防衛庁長官であり内閣である。
その責任は何だ。これは度々私、申し上げているんでありますけれども、
我が国に飛来するミサイル、これは撃ち落とさなけりゃ我が国の国民の生
命、財産に重大な甚大な危害を与えるわけですから、これはとにかく撃ち落
とさなきゃいけない。それこそ正にマストであります。このマストをやらなけれ
ば、そこに正に責任があるわけでございまして、国会との関係でいえば、し
かしながら、そういうことをやったということをいち早く報告する。
報告する意味は、やはりそういう行為がその時点以降において防衛出動
につながっていく可能性もある。そういう意味では報告をしておかなきゃいけ
ないし、もちろん国民保護、これはもう国民の皆様の生命、財産を保護する
わけですから、国民保護という観点からもきちっと早く報告しなきゃいけない。
こういう意味で、私は、報告をする、こういう責任はあると思っております。
○白眞勲君 是非、本当は私は報告だけではなくて承認というものもきちっ
と必要ではないかなというふうに思いますので、もう一度考えていただきた
いと思うんですけれども、それと同時に、今回の統合運用の件につきまして
も、やはり見直し規定、これは、小さな会社でも、やはり何らかの人事構成
が変わると、当然それは何かいろいろな不具合というのは、予想されない不
具合というのは生じるものであるというのが当たり前だと思います。長官は
ベストだベストだと、何度も何度もお話しされております。長官がベストだと
思ってもベストじゃない場合もあるかもしれないわけです。あるいは、防衛庁
の皆さんがベストだと思ってもベストじゃない場合もあるかもしれない。
これは一般的に、例えば防衛庁長官も、結婚する際には奥さんがベストだ
と思って選択をされて、ずっと、やはり今もベストだと思っていらっしゃると思
います。でも、人によっては見直しという考え方もある人もいるかもしれない。
そういうことを考えると、やはり見直し規定というのをやっぱり付けてもいい
んじゃないかなというふうに思うんですけれども、長官、いかがでございます
か。ちょっと簡単に答弁願います。
○国務大臣(大野功統君) 私は、結婚する前に女房をベストと思って、今
でもベストと思って、見直し規定は置いておりません。ただ、ミサイル防衛と
は違います。ミサイル防衛は、ミサイル防衛は、ミサイル防衛とか統合運用、
こういう問題とは違います。
統合運用につきましては、これはもう今の歴史的な流れその他を考えれ
ば、これはもう当然の方向であり、私は、今国際安全保障環境がこういうふ
うに多様化している、それを統合的に、一つ一つの自衛隊がやるのではなく
て、陸海空三自衛隊が統合して共同してやっていく、これが今のやり方であ
って、今考えているやり方というのは、部隊運用の実績あるいは部内におけ
る十分な検討を踏まえてつくり上げたものであり、今私はベストな選択だと
思っております。ベストであるからこそ、見直されることを前提とした見直し
規定は置く必要はない。
しかしながら、しかしながら、やはり見直し規定がないからといって今後一
切見直しをしない、こういう意味ではないと思っております。ただ、我々はこ
の目的に向かって一生懸命進んでいく、これが大事なことだと思っています。
○白眞勲君 郵政民営化でも見直し規定、今回つくったんですよね。そうす
ると、郵政民営化はベストじゃないということなんでしょうか。
○国務大臣(大野功統君) 時代に応じていろいろ時代背景が変わっていき
ます。そういうことを考えてやる場合と、それから、もちろん、我々が考えて
いる現状でいろんな歴史を踏まえてつくり上げてきたこの統合運用体制、統
幕長の下にやっていく。
しかし、誤解がないように申し上げたいのは、統幕長が全部仕切るんじゃ
ありません。統幕長は軍事的、専門的な見地から長官を補佐するわけであ
ります。長官が指揮命令するわけ、内閣総理大臣が運用を指揮する、特に
防衛出動の場合ですね。そういう意味で、このベストな方向に向かって努力
してみようじゃありませんか。それを私は言いたいですね。
○白眞勲君 是非、やはり見直しを付けたっていいじゃないかというのが私
の考え方です。是非その部分で考えていただきたいというふうに思いまして、
私の質問を終わります。
以上です。
(以下、省略)