Title Sixteen X-chromosomal STRs in two octaplex PCRs in

Title
Author(s)
Journal
URL
Sixteen X-chromosomal STRs in two octaplex PCRs in
Japanese population and development of 15-locus
multiplex PCR system
中村, 安孝
歯科学報, 111(5): 524-525
http://hdl.handle.net/10130/2625
Right
Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
524
歯科学報
氏
名(本
Vol.111,No.5(2011)
なか
むら
やす
たか
籍)
中
村
安
孝
学
位
の
種
類
博
士(歯
学
位
記
番
号
第 1855 号(甲第1121号)
(千葉県)
学)
学 位 授 与 の 日 付
平成22年3月31日
学 位 授 与 の 要 件
学位規則第4条第1項該当
学
Sixteen X-chromosomal STRs in two octaplex PCRs in Japanese
位
論
文
題
目
population and development of 15-locus multiplex PCR system
掲
載
雑
誌
名
International Journal of Legal Medicine 第124巻 5号 405∼414頁
2010年
論
文
審
査
委
員
(主査)
水口
(副査)
東
俊文教授
柴原
孝彦教授
論
1.研 究
目
文
内
容
清教授
の
要
石原
和幸教授
旨
的
近年,X染色体 STR 多型に関する研究が,集団遺伝学や法医学分野で広がってきている。X染色体 STR
多型は,父子鑑定における女の子供,母子鑑定における男の子供の鑑定などのケースで特に有用である。実際
例への応用に当たっては,日本人における多型頻度を知る必要があり,さらに,少ない回数で多くの情報を得
ることができれば,より理想的である。そこで本研究では,多くの X-STR 座位の multiplex PCR 法を確立す
ることと,集団遺伝学,法医学的応用のため,日本人における X-STR の多型情報を得ることを目的とした。
2.研
究
方
法
試料は血縁関係のない339人の男性および173人の女性の日本人から得た DNA を用いた。提供者からはイン
フォームドコンセントを得ており,本研究は本学倫理委員会の承認を得ている。多型検査はX染色体上の16種
類 の STR 座 位 の 検 出 を 試 み た。こ れ ら の STR は,DXS7424-GATA172D05-HPRTB-DXS8377(group1)
,
GATA31E08-DXS9895-DXS7423-DXS981(group2),DXS6803-DXS6789-DXS6800-DXS6809(group3),DXS
7133-DXS7132-DXS101-DXS6807(group4)
の4群に分類した。PCR に際しては DXS981,6789,6800につい
ては新しいプライマーを作製し,その他は既報のプライマー配列を用いた。Multiplex PCR は各グループごと
の 4-plex PCR,group1+2,group3+4のそれぞれの 8-plex PCR,および 15-plex PCR を行った。PCR
産物の大きさは ABI 310 Genetic Analyzerを用いて GeneScanで決定し,Genotyper ver. 2.5で解析した。塩
基配列決定は ABI PRISM 3100 automated sequencerを用いた。STRデータは PowerStatsV12,GENE POP
にて統計解析を行った。
3.成績および結論
X-STR の検査対象座位として,X染色体全体に亙って分布し,他の集団データがある座位を選択した。
Multiplex PCR 法を作り上げるに当たり,各 STR 座位の型判定を他の報告の結果と比較するため common
allele の塩基配列を決定した。
16座位の同時増幅ではいくつかの過剰バンドが出現し,増幅条件の変更では消し去れなかったところから,
すべての座位の結果を得るため,8-plex PCR を試みた。その結果 group1+2,group3+4の組合せで,す
べての型が判定可能となった。そこでこのシステムで512人の型を判定した。16座位の集団データの統計解析
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歯科学報
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結果では,今回選択した STR 座位のうち DXS6800 と DXS7133 が多少多型性が低かったが,その他の座位の
多型性は高く,総合した識別力は女性が0.
999999999999997,男性が0.
9999999992となり極めて高い数値を示
した。座位間の連鎖については本当の連鎖不平衡は見出されなかったが,さらに検討の余地があるため,近接
する座位のハプロタイプデータを示した。
一度の PCR でより多くの情報を得るため,16座位の同時増幅の確立を目指した。16-plex PCRでは group2
の VICラベルで6本の過剰バンドが出現し,group3の NEDラベルで多くて3本の過剰バンドが増幅され,
これらは他の座位の正確な型判定を妨げた。泳動像を改善するため,その由来を検索した。その結果これらの
バンドはいずれも DXS9895と DXS6800または DXS9895と DXS101に起因して出現するもので,DXS6800プラ
イマーはそれ自身で9番染色体由来の過剰バンドを増幅し,DXS9895と DXS6800の Forwardプライマー同士
も13番染色体由来の過剰バンドを増幅し,DXS6800の Reverseプライマーも別の過剰バンドの増幅に関連して
いることがわかった。DXS6800はプライマー位置を変更することで,1本の過剰バンドを消したが,特に
DXS9895のプライマーは類似配列が極めて多いところから,すべてのバンドを今回の multiplex PCRの条件下
で消すことは不可能と判断した。しかし DXS9895を除けば 15-plex PCRでは明瞭に型判定が可能であった。
これは現状で最も多くの X-STRを検査できるシステムで,充分な識別力を持ち,法医学への応用価値が極め
て高いと考えられた。
4.結
論
X-STR はX染色体検査でなければ解決できないケースがあり,同時に多座位を検査できるシステムが期待
されてきた。本研究における16座位を2度の PCR で検査する方法,および15座位を一度で検査できるシステ
ムは,日本人において非常に多型的で,微量な資料やスクリーニングのために有用で,実際面での利用価値は
非常に高い。
論
文
審
査
の
要
旨
高度に変性した生物学的資料からの DNA 多型による個人識別において,歯を資料とした検査は最終手段に
なるが,変性資料は回収 DNA 量が少なく,少ない検査で有用な多くの情報を得る方法が必要になる。1対1
の比較または親子関係の資料による比較は常染色体 STR 多型で事足りる場合が多い。しかし血縁が兄弟より
遠くなった場合はミトコンドリア DNA やY染色体多型を併用するが,その中でX染色体多型のみしか有効な
補助手段がない場合がある。このような際に,少ない回数の検査で有用な情報が得られる方法は確立されてい
ない。そこで本研究はこのような場合に多くの情報が得られる検査法を作り上げ,日本人に応用した場合の有
用性を提示した。
本審査委員会では,本論文内容に付いて,本研究結果の実際面への応用の有用性については共通して評価で
きるとの意見が出たが,論文内容に付いては,1)結果説明の順序,2)データ比較結果の示し方,3)研究
の強調する部分や,追加したほうが良いと思われるデータ,4)方法と結果の境界,5)文章表現の意
味,6)提示する文献の量,7)検査ターゲットの STR は遺伝子内に存在するのか否か,8)図をきれいに
するなどの提言や質問と共に,それぞれの内容についての質疑が行われ,概ね妥当な回答が得られた。
以上より本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値する
ものと判定した。
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