性能向上、価格低下にはもう一段の技術革新-日本のリチウムイオン電池

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 11 月 18 日
性能向上、価格低下にはもう一段の技術革新
-日本のリチウムイオン電池、安全性が強み-
日本経済研究センター
2015 年 10 月 19 日(月)に第 22 回会合を開き、電気自動車や再生可能エネルギー普
及のカギを握る蓄電池について技術やビジネスとしての現状と将来の可能性について
議論した。世界をリードしていたリチウムイオン電池は産業としては新興国からの急
速な追い上げに直面している。技術的には安全性などで優位を保っているが、幅広い
普及には、もう一段の技術革新が必要だ。議論の要旨は下記の通り。
1. リチウムイオン電池の世界シェアをみると、小型電子機器用電源としてスタート
した 2000 年頃は 100%日本製だったが、現在では 34%程度まで低下した。09 年
ごろに自動車用のリチウムイオン電池も登場し、当初はシェア 100%であったが、
現在は 70%になっている。韓国や中国などの追い上げが厳しい。エレクトロニ
クス分野ではインテルのようなコアとなる製品を持つ以外に生き残る道はない。
2. 再生可能エネルギー普及のために蓄電池が各家庭などに普及するには、1ユニッ
トあたりの 20 ㌔㍗時(kWh)当たり 60 万円以下にならないと難しい。発電用だ
と今は、この倍程度だろう。現時点で石油火力によるバックアップの方が安くな
る。もう一段のコストダウンの技術革新が必要になるだろう。
3. 韓国のLGは自動車用の蓄電池を kW 当たりの単価を 10 万円から3万円に引き下
げてシェアを取ろうとしていたが、日本メーカーも技術革新を伴いながら追随し
た。現在は2~3万円となっている。これを家庭用電池に置き換えると 20 kWh
当たり 60 万円以下となり、売れそうという試算がある。火力発電のバックアッ
プ用で考えると、まだ kW 当たり3倍程度の 180 万円くらいのコストがかかる。
4. 風力発電のバックアップといった大型蓄電池はリチウムイオン電池ばかりでな
く大型での使用が有利なレドックス・フロー電池などが利用される可能性が大き
い。小型化できない弱点があるが、寿命も長くなるなどメリットがある。用途に
よって電池は使い分けられるのだろう。
5. 電気自動車(EV)は自動運転に向いている。タクシーのように行きたい場所に
自動運転でいってくれるとなると、「全部EV車で良い」となる。EVはコスト
面でいえば、初期投資は高くても維持費用は安い。コマツが建設機械で提供して
いるようなICT(情報通信技術)で機器の状況を把握し、保守サービスまで提
供することも可能になる。ICTと組み合わせたサービスは、垂直統合的な自動
車ビジネスの分業化を引き起こすかもしれない。
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日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル
「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル」メンバー
座長
岩田一政
日本経済研究センター理事長
座長代理
鈴木達治郞
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授・核兵器
廃絶研究センター長
有識者
山地憲治
地球環境産業技術研究機構
植田和弘
京都大学大学院経済学研究科教授
橘川武郞
東京理科大学大学院教授
増田寛也
野村総合研究所顧問(元総務相・前岩手県知事)
伊丹敬之
東京理科大学大学院教授
竹内純子
国際環境経済研究所
小山
日本エネルギー経済研究所
堅
小西雅子
理事・研究所長
理事・主席研究員
常務理事・首席研究員
世界自然保護基金(WWF)ジャパン
気候変動・エネルギープロジェクトリーダー
枝廣淳子
環境ジャーナリスト
平田仁子
気候ネットワーク理事
日本経済団体連合会
経済団体
経済同友会
エレクトロニクス、エネルギー、化学、住宅、自動車関連、金融機関、
会員企業
商社、食品、IT、建設機械、エンジニアリング、建設、運輸・通信、
不動産など当センター会員企業 22 社
日本経済研究センター特任研究員/慶應義塾大学大学院
アドバイザー
小林光
事務局
小林辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
高地圭輔
日本経済研究センター主任研究員
特任教授・元環境事務次官
当ラウンドテーブルは、月1回のペースで開催、忌憚ない意見交換を促すため非公
開を原則とするチャタムハウスルール 1* で運営しています。
本稿の問い合わせは、研究本部(TEL:03-6256-7730)まで
※本稿の無断転載を禁じます。詳細は総務・事業本部までご照会ください。
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Chatham House Rule。英王立国際問題研究所に源を発する、会議参加者の行為規範である。
チャタムハウスルールを適用する旨の宣言の下に運営される会議においては、当該会議で得ら
れた情報を利用できるが、その情報の発言者やその他の参加者の身元および所属に関して秘匿
する(明示的にも黙示的にも明かにしない)義務を負うというルール。
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