会員コーナー 【環境対策】 自然循環方式水処理システム 鈴木 輝彦 鉄建建設株式会社 放流 流入 1.はじめに 自然循環方式水処理システムは、木炭を始めとする天 セラミック複合木炭 接触ろ材 然素材を材料とするろ材を基本として配置し、自然に水 中に生息する微生物の働きにより汚濁有機物を分解する 散気管 生物処理の接触酸化浄化技術である。薬剤等は一切使用 せず浄化を行うため、環境に優しく安全である。自然循 環方式水処理システムは、(図−1)に示すように3つ のシステムからなる。 セラミック複合木炭 接触ろ材 (マリモボ−ル) 自然循環方式水処理システム 河川浄化の場合 (BOD 、アンモニア 性窒素 NH 4 - N を除 去する場合) ・BOD ≦3mg /ι以下まで浄化 ・アンモニア性窒素 NH 4 - N を 90 ∼ 100% 除去 BOD、窒素、リンを除去する場合 (水路浄化、池の浄化、3次処理等) ・BOD ≦5mg/ι以下まで浄化 ・全窒素 T - N 40% 程度、全リン T - P 50% 程度除去 畜産排水処理の場合 ・凝集沈澱処理技術と BOD 、窒素、リ ン を 除去 する 場合 の 浄化技術 を 組 み 合わせて適用 (図−1)自然循環方式水処理システムの適用分類 (図−2)河川浄化の場合のろ材配置 (2)浄化能力 処理量 10∼50,000m3/日 (実績最大処理量 大柏川浄化施設36,000m3/日) SS 90%以上除去 アンモニア性窒素 95%以上除去 滞留時間 3∼4時間 BOD 3mg/ι以下 3.BOD、窒素、リンを除去する場合 (1)ろ材配置 BODと併せて、全てではないが、窒素(T−N:40% 程度)、リン(T−P:50%程度)が除去できる。 2.河川浄化の場合 一般的に(図−2)に示すように、プラスチック接触 ろ材とセラミック複合木炭の配置とする。 短時間に多量に浄化処理する場合で、BOD除去を主 とし、滞留時間は3.5時間程度である。なお、セラミッ 放流 幅 2.5m 減 菌 槽 減菌器 ニトロライト 複セ 接 返 合ラ 触 送 木ミ ろ ポ 炭ッ 材 ン ク プ リン除去装置 ホスカット 流入 長さ 16.2 m ニトロライト リ ン セ 除 複 去 合ラ ミ 資 木 ッ 材 炭 ク ホスカット 木 散気管 質 ろ 材 接 触 ろ 材 接 触 ろ 材 貯 留 槽 3.7m ニトロライト (1)ろ材配置 ク複合木炭は、杉材などの間伐材を木炭化し、粘土(バ インダ−)と混合して再焼成したものであり、BODの 除去に付加してアンモニア性窒素が除去できる付加価値 セラミック複合木炭 木質ろ材 接触ろ材 (マリモボ−ル) を有している。 (図−3)窒素、リン除去のろ材配置例 41 汚濁原水は、 (図−3)のろ材配置例では、 汚泥貯留槽:汚泥を貯留 貯留槽 →接触ろ材槽 →接触ろ材槽 →木質ろ材槽 沈澱槽:浮遊物質の沈降 →リン除去資材槽 →セラミック複合木炭槽 →接触ろ 脱色・脱臭槽:脱色、脱臭 材槽 →セラミック複合木炭槽 →返送ポンプ槽 →減 硝化槽:アンモニア性窒素の硝化 菌槽 清水槽:大腸菌等の除去 BOD、COD除去槽:BOD、COD除去 脱窒槽:硝酸、亜硝酸態窒素の除去 を通過して処理し、放流する。なお、使用するろ材とろ 減菌槽:大腸菌等の除去 材配置は現地の水質特性に併せて決定する。 脱リン槽:リンの除去 本システムではエアレ−ションを使用するため施設内 に散気管を配管してあるが、散気管はエアレ−ションの 他、メンテナンスでろ材の目詰まりを解消するとき、瞬 間曝気(逆洗浄)に使用する。 5.自然循環方式水処理システムの各ろ材の 働き (1)接触ろ材(写真−1参照) (2)浄化能力 主にBODおよびSSの 処理量 8∼3,000m3/日 (実績最大処理量 我孫子市中峠水路浄化施設2,400m3/ 除去を行う。再生プラ スチック接触ろ材(マ リモボ−ル)は、流入 日) 滞留時間 10∼15時間 水の髪の毛等の雑物を BOD 5mg/ι以下程度まで浄化 絡ませてろ材表面に微 SS 90%以上除去 生物の付着を促し、微 総リンT−P 50%以上除去 生物が有機物を取り込 総窒素T−N 40%以上除去 み分解するために配置 するろ材(主にSSを除 4.畜産排水処理の場合 (写真−1)接触ろ材 (マリモボール) 去)である。再生プラ スチックABS樹脂をリ 畜産農場の豚895頭の例で、し尿液は凝集沈澱処理等 サイクル利用したものでφ100mmのボ−ル状の表面に の固液分離後、浄化施設で処理する。この場合の浄化施 は繊維長 1∼1.5mmの吸水性アクリル繊維を電気植毛加 設の概要は以下のとおりである。 工し、さらに表面の多数の小孔により、内部(中空)と ・畜舎洗浄排水 通水性を持たせてある。 肥育豚895頭×4.5(ι/頭・日)=4,028(ι/日) ・溶け込み糞量 (2)セラミック複合木炭(写真−2参照) 最大糞量 1,093(kg/日)×1/3 = 364(kg/日) 木炭と粘土との複合 ・日汚水量 = 最大尿量+最大糞量+畜舎洗浄水 体であり、混合により = 2,387(kg/日)+ 364(kg/日)+ 4,028(ι/日) 粒子間に二次的に細孔 = 6,779(ι/日) が形成される。このた 冬場において積雪等により特に気温の低下が著しい地 め木炭が本来有する微 域では、処理槽内の微生物活性に少なからず影響が考え 細孔に加えて微生物の られる。このため処理対象計画汚水量は1.2倍見込んで マイクロハビタットと 3 8m /日とした。施設概要は以下のとおりである。 して有効な幅広い細孔 分布(写真−3参照) (写真−2) セラミック複合木炭 が確保される。また、 吸着能力にも優れてい るため水中の残留塩素、 硫化水素ガス、アンモ ニアガスなどの除去効 果が期待できる。 (図−4)養豚場排水処理施設のろ材配置例 (写真−3)木炭の微細孔性 状と微生物付着状況 42︱ARIC情報№86ー2007 ■会員コーナー (3)マイクロハビタット用木炭槽(写真−4参照) 無機素材で強固に結 合され、強アルカリ、 木炭とキト酸の複合 体であり、木炭の多孔 強酸以外の通常条件で 性は微生物にとって良 使用する。なお、最近 好な住みかを提供す はリン除去資材の替わ る。また、キト酸は海 りに鉄材を使用して鉄 老や蟹の甲羅に含まれ イオンとリン酸イオン る成分で、有機物を凝 を結合することによ 集させる働きがある。 り、不溶塩として除去 COD、BODの除去およ (写真−4) マイクロハビタット用木炭 (写真−7)リン除去装置 を行う方法を採用して びLAS(陰イオン界面 いる。千葉県土木部大津川浄化機能調査では、実際にリ 活性剤)を除去する。 ン除去資材としてリン除去装置(写真−7参照)を使用 した。 (4)木質ろ材(写真−5参照) (6)水処理材 木質ろ材(シイタケ ニトロライト(写真−8参照)は木質ろ材および木炭 のホダ木などの腐朽材 で炭素系有機物とも言 の上部にろ材の浮き上 う)は、嫌気状態にお がり防止を兼ねて配置 いて有機物をエネルギ するゼオライト系鉱物 ー源として脱窒菌が で強い吸着性を持つ水 H N O 3 (硝酸)を分解 する。 (写真−5)木質ろ材 (炭素系有機物) 処理用ろ材である。陽 イ オ ン 交 換 容 量 150meq/100gの大きな C 6H 12O 6(糖)+4HNO 3(硝酸)→2N 2(窒素ガス)+ イオン交換性を持ち、 6H2O(水)+6CO2(炭酸ガス) アンモニアを吸着除去 (写真−8)ニトロライト するとともに、炭素系 pH(水素イオン濃度)5.5以下、水温10℃以下では脱 窒反応は遅くなる。pH6以上では反応が速くなるため生 成ガスの大部分はN2(窒素ガス)になる。 有機物の浮き上がりを 抑える。ホスカット (写真−9参照)は、 この反応にあやからなかったHNO3(硝酸)は還元さ 鉱物系無機質の水処理 れてNH3(アンモニア)となる。残りの硝酸体窒素は微 用接触ろ材である。木 生物自身の細胞膜構成のC/N比が約10倍になるように 炭槽の上部に設置し、 水中の窒素を積極的に取り込むので水中の窒素濃度は低 木炭の浮き上がりを押 下する。 さえ、かつ処理水への (写真−9)ホスカット 貯留槽∼接触ろ材槽までの過程で、窒素は減少する環 空気の取り込みによってCOD、BODの除去、有機体窒 境になるが、木質ろ材はC/N比が大きいため、微生物 素の無機化およびアンモニア性窒素の硝化を助長する。 が窒素を取り込み易い状況を作り出し、脱窒素の手助け 以上に、自然循環方式水処理システムで使用する各種 を行う。 のろ材について述べたが、次にBODの除去性能の向上 (5)リン除去資材(写真−6参照) とアンモニア性窒素の除去を図った浄化技術に関する実 リン除去資材槽では 証実験(鶴見川浄化実験)の概要と大柏川浄化施設(処 弱曝気を行う。有機態 理量36,000m3/日)や岡崎ゴルフ倶楽部浄化施設、茨城 リンは曝気を行うこと 県高浜地区生活排水路浄化施設などいくつかの施工事例 によりリン酸態リンま について紹介する。 で酸化される。リン除 去資材は、汚濁水中の 6.BODとアンモニア性窒素を除去する河川 浄化技術(鶴見川浄化実験) リンの除去を行い、リ ン酸吸収係数は3,000mg /100g以上である。 (写真−6)リン除去資材 技術開発の目的は、浄化機能を向上させるとともに、 43 水生生物に悪影響を与えると言われているアンモニア性 窒素の除去である。プラスチック接触ろ材と新たに開発 したセラミック複合木炭を組み合わせて、浄化機能を検 証した。 (1)実験概要 実験施設(写真−10 参照)は、 (図−5)に 示すろ材配置とした。 実験では浄化機能の 比較を行うため、セラ (写真−11)木炭層の浄化状況 (上部には木炭の浮き上がり防止のためホスカットを敷設 エアレーション稼働中) ミック複合木炭とマイ クロハビタット用木炭 (写真−10)鶴見川実験施設 の系列の浄化機能、物 性(強度、摩耗度など)、および処理コストについて調 査した。 ど遜色がなかった。 平成13年9月から11月にかけては、原水の汚濁は BOD 5mg/ι程度で比較的水質は良好な状態であったが、 6.4m 12月に入り汚濁は急激に増加し、BODは 10mg/ι以上と 1.0ι/sec 接触酸化ろ材 SS除去 マイクロハビタット用特殊木炭 OR セラミック複合木炭 ホスカット 脱臭・脱色用 放流 特殊木炭 2.3m 接触化ろ材 なり、平成14年3月には最大23mg/ιとなっていた。そ の後、平成14年6月頃から再び前年と同様にBOD 5mg/ ι程度に減少した。また、SSは、平成14年3月∼5月 にかけて汚濁が増加したが、他の時期は平均して 0.5ι/sec セラミック複合木炭 脱臭・脱色用 特殊木炭 マイクロハビタット用 0.5ι/sec 特殊木炭 脱臭・脱色用 特殊木炭 1.8m ホスカット 0.7m 1.6m 流入 BOD、COD除去 脱臭・脱色 (図−5)ろ材配置 SS7.5mg/ι程度であった。 アンモニア性窒素NH4-Nについては、年間を通じて十 分に除去されていたが、硝酸性窒素NO3-Nは、浄化施設 を通過後、逆に増加する傾向を示した。これは、アンモ ニア性窒素NH 4 -Nの分解が十分進んだ結果生じたもの で、木質ろ材における脱窒菌の働きにより分解されたこ 実験期間:平成13年8月∼14年8月まで約1年 実験場所:横浜市都筑区川向町川向ポンプ場裏 鶴見川左岸フィ−ルド 実験管理:(財)河川環境管理財団 実験施設:幅 1.80m×長さ6.398m ×高さ 2.19m(ろ槽部深さ 1.60m) 流量:2系統合計 約87m3/日(1系統43m3/日) 滞留時間 3.6時間 実験施設の浄化目標値(2系列とも) ・流入水質 BOD 9.5mg/ι → 目標水質BOD 3mg/ι とを示すものである。その他、透視度は50cmから 100cm∼200cmまで改善されていた。 臭気度に対しては若干の改善は見られたが、色度につ いてはほとんど変化が見られなかった。大腸菌群数は、 浄化目標が1,000MPN/100mι以下であるが、実験開始 当初はかなりバラツキがあったものの、平均2,500MPN/ 100mι程度で目標を達成できなかった。 この原因は、本システムだけでどの程度まで除去が可 能か把握するため、減菌装置を取り付けなかったことに よる。 以下(BOD容積負荷 0.114kg-BOD/m3) 流入水 処理水(マイクロハヒ ゙タット) 処理水(セラミック 木炭) 目標値 ・大腸菌群数 流入水質 3.9×10 4 MPN/100mι → 1000MPN/100mι以下 ・アンモニア性窒素 流入水質 3.16mg/ι → 0.5mg/ι 以下 25 20 BOD(m g/ l) ・透視度 流入水質 29.1cm → 50 cm以上 BOD 15 10 5 (2)実験結果 実験期間を通じて、2系統、すなわちセラミック複合 木炭とマイクロハビタット用木炭の浄化能力は、ほとん 44︱ARIC情報№86ー2007 9月 19 日 9月 29 日 1 0月 9 日 1 0月 1 9日 1 0月 2 9日 1 1月 8 日 1 1月 1 8日 1 1月 2 8日 1 2月 8 日 1 2月 1 8日 1 2月 2 8日 1月 7日 1月 17 日 1月 27 日 2月 6日 2月 16 日 2月 26 日 3月 8日 3月 18 日 3月 28 日 4月 7日 4月 17 日 4月 27 日 5月 7日 5月 17 日 5月 27 日 6月 6日 6月 16 日 6月 26 日 7月 6日 7月 16 日 7月 26 日 8月 5日 8月 15 日 0 測定日 (図−6)鶴見川浄化水質 BOD 流入水 処理水(マイクロハヒ ゙タット) 処理水(セラミック 木炭) 目標値 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 アンモニア性窒素NH4-Nは、生物に対して毒性があり、 NH4-N 水産用水基準では0.2 mg/ιを河川水の望ましい値とさ れている。また、浄水処理では0.3 mg/ι以下があげら れている。鶴見川では平均3.16mg/ιで、ピークには約 7mg/ιと高濃度になる場合もある。このような場合に 対しても、本技術は年間を通じて水質を安定的に改善す 9月 1 9 日 9月 2 9 日 1 0 月 9日 1 0月 1 9日 1 0月 2 9日 1 1 月 8日 1 1月 1 8日 1 1月 2 8日 1 2 月 8日 1 2月 1 8日 1 2月 2 8日 1 月 7日 1月 1 7 日 1月 2 7 日 2 月 6日 2月 1 6 日 2月 2 6 日 3 月 8日 3月 1 8 日 3月 2 8 日 4 月 7日 4月 1 7 日 4月 2 7 日 5 月 7日 5月 1 7 日 5月 2 7 日 6 月 6日 6月 1 6 日 6月 2 6 日 7 月 6日 7月 1 6 日 7月 2 6 日 8 月 5日 8月 1 5 日 NH4-N(mg/l) ■会員コーナー る技術としてあげられる。 測定日 7.河川浄化施設の例 (図−7)鶴見川浄化水質 NH4-N (1)大柏川浄化施設 大柏川は、千葉県市川市内を流れ、下流域では真間川 透視度 に合流する一級河川であり、上流部は下水道整備が遅れ、 河川水質は平均BOD35mg/ιと汚濁し、河川環境を著し 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 く害していた。このため、千葉県が水質改善の取り組み として大柏川浄化施設を設置したものである。 9月 1 9 日 9月 2 9 日 10月 9日 1 0月 1 9 日 1 0月 2 9 日 11月 8日 1 1月 1 8 日 1 1月 2 8 日 12月 8日 1 2月 1 8 日 1 2月 2 8 日 1月 7日 1月 1 7 日 1月 2 7 日 2月 6日 2月 1 6 日 2月 2 6 日 3月 8日 3月 1 8 日 3月 2 8 日 4月 7日 4月 1 7 日 4月 2 7 日 5月 7日 5月 1 7 日 5月 2 7 日 6月 6日 6月 1 6 日 6月 2 6 日 7月 6日 7月 1 6 日 7月 2 6 日 8月 5日 8月 1 5 日 透 視 度 (c m ) 流入水 処理水(マイクロハヒ ゙タット) 処理水(セラミック 木炭) 目標値 (表−2)大柏川浄化施設の仕様 測定日 系統 (図−8)鶴見川浄化水質 透視度 ふん便性大腸菌群数は、原水に対してバラツキはある もののかなり除去されたが、さらに除去するためには大 浄化施設の規模 処理水量 処理前水質 BOD( mg/ι) 処理後水質 BOD( mg/ι) 除去率( %) 滞留時間(hr) 自然循環方式 プラスチッ ひも状集合 ク形成体材 体懸架方式 (系列1) ( 系列2) (系列3) RC 長さ 58.8m×幅 29.8m×深さ 8.2m 6 槽 3 36,000m /日(1 系統 12,000m3/ 日) 35 mg/ι 35 mg/ι 35 mg/ι 10 mg/ι≦ 10 mg/ι≦ 10 mg/ι≦ 70%≧ 3.45 hr 70%≧ 3.14hr 70%≧ 3.11hr 腸菌と同様に除菌装置を設置すれば対応できる。なお、 鶴見川は都市部を流れる河川であり、生活系雑排水によ る下水放流が60%を占めるため、主にBODと下水に含 取水は、本川に設置された可動堰の上流側から平常時 まれるアンモニア性窒素(水生生物に悪影響を与えると の河川流量の全量を大柏川浄化施設に取り込み、浄化処 言われている)による汚濁処理が課題としてあげられて 理後、可動堰の下流側に放流する構造となっている。処 いる。したがって、自然循環方式水処理システムは、一 理量は36,000m3/日で、6レ−ンの浄化槽で構成し、そ 般的な河川浄化の他に、下水放流の多い都市河川の水質 れぞれ2レーンづつに対し、3系列の浄化方式が適用さ 浄化や下水処理施設の老朽化などに対する補助施設とし れている。 て活用できると考えられる。 アンモニア性窒素は、冬場が多くなる傾向があるが、 平成6年度の大柏川浄化実験では水温10℃程度でプラス チックろ材で1∼2mg/ι/hrの硝化速度が確認されてい る。鶴見川浄化実験では4.56 mg/ι/hrの硝化速度であり、 セラミック複合木炭を使用することで約3倍の硝化性能 を有することが確認された。 (表−1)ろ材の硝化速度 ろ材 セラミック複合木炭 プラスチックろ材 滞留時間 (hr) 1.4 3.97 BOD負荷 (kg/m3/ 日) 0.039 0.105∼ 0.184 曝気風量 ( ι/min) 270 240∼ 480 硝化速度 (mg/ιhr) 4.56 1.11∼ 1.91 (図−9)大柏川浄化施設の施設配置の概要 45 (2)高浜地区生活排水路浄化施設 (写真−14)は、霞ヶ浦の水質悪化に伴い「霞ヶ浦 水の路クリ−ンナップ事業」により、流入河川の汚濁負 荷を効率的に削減することを目的とする茨城県石岡市高 浜地区生活排水路浄化施設である。処理量は、570m3/日 で対象人口は約250世帯(860人)である。 (写真−12)完成後の大柏川浄化施設(地中埋設) (H14施工、H18.4通水) 8.BODと窒素、リンを除去する場合の例 (1)岡崎ゴルフ倶楽部浄化施設 岡崎ゴルフ倶楽部では、窒素、リンを除去する浄化施 設として、クラブハウスから排出する厨房雑排水、トイ レ水および風呂の水を浄化して、散水等に有効利用を図 っている(写真−13参照) 。処理量は80m3/日である。 (写真−14)石岡市高浜地区生活排水路浄化施設 (H9.7) (表−4)石岡市高浜地区生活排水路浄化施設 浄化目標水質 BOD(mg/ι) T- N(mg/ι) T- P(mg/ι) SS(mg/ι) LAS(mg/ι) 原水水質 71 13 2 21 11 浄化目標値 7 6.5 1 2.1 2.2 (3)大津川浄化機能調査施設 手賀沼及び周辺河川 は都市化の進展に伴い (写真−13)岡崎ゴルフ倶楽部浄化施設 (H13.6施工) 水質が悪化し、千葉県 土木部が汚濁の改善の 取組みのため大津川で 浄化機能調査(H12.4 (表−3)岡崎ゴルフ倶楽部の浄化目標水質 BOD (mg/ι) 総窒素 T−P (mg/ι) 総リン T−N (mg/ι) 浄化前の水質 28.3 1.02 4.96 浄化後の水質 5 以下 0.5以下 3 以下 ∼H13.3)を実施した ものである。 (写真−15) 千葉県大津川浄化機能調査施設 (処理量50m3/日) 46︱ARIC情報№86ー2007 ■会員コーナー 調査結果より流 9.まとめ 入 汚 濁 水 の 自然循環方式水処理システムの施工実績は既に40件を BOD20∼110mg/ 超えており、いずれの施設も優れた浄化機能を発揮して ιを5mg/ι以下、 BOD、SSの除去 率90∼95%、総 いる。接触酸化方式の浄化技術で木炭を使用することに 流入水(原水) よりBODの除去性能が向上し、併せてアンモニア性窒 素が除去できることや木質ろ材や脱リン装置を使用する 窒素T−N除去率 ことにより全てではないが、窒素、リンが除去できるこ 40∼50%、総リ ンT−P除去率50 ∼60%の結果を 得た。 放流水(処理水) (写真−16) 大津川浄化機能調査の処理水 となどが、他の接触酸化方式の浄化技術に対して有利で ある。また、生物処理のため、凝集技術と比べて生態系 に安全である。 冬季にはBOD アンモニア性窒素の除去は、今後、要求管理項目にな は最大で110 mg/ ると考えられるが、本技術はBOD除去の浄化技術で間 ιに達する場合もあったが年間を通じて安定的に浄化機 に合うので、他の浄化技術に比べて合理的である。また、 能を発揮した。 河川に面した公園等の拠点整備でジャブジャブ池などの 水質改善に適用できる。今後も、メンテナンス等の簡易 化、浄化コスト縮減などを課題として開発を進め、普及 を図ってゆく予定である。 参考資料 1)河川浄化施設の硝化性能に関するパイロットプラン ト実験(土木学会環境工学研究論文集・第40巻・ 2003) 2)間伐材を利用するセラミック複合木炭と再生プラス チック接触ろ材による水質浄化(土木学会第40回環 境工学フォ−ラム講演集;2003) 3)新水処理技術「四万十川方式」を利用した河川水質 改善の概念と実施(UNEP-IETCニュ−スレタ− 1997.8) 4)鶴見川水質浄化実験実験報告書(財)河川環境管理 財団2003.3 47
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