2-(1)-1 小菅水再生センター高速凝集沈殿装置性能評価調査 計画調整部 技術開発課 河野里名 1 はじめに 平成13年、雤の日に合流式下水道から公共用水域に放流されたオイルボールがお台場 に 漂 着 し た こ と が 社 会 的 な 問 題 と し て 取 り 上 げ ら れ た 。こ れ を 契 機 と し て 、下 水 道 局 で は 、 「合流改善クイックプラン」を策定し、雤水を一時的に貯めおく貯留池等の整備対策に取 り組むことになったが、貯留池等の設置には多大な費用が必要なことや用地の尐ない水再 生センターでの整備が難しいこと等の課題があった。このため、合流改善事業を早期に進 めるにはこれらの課題を解決できる新たな対策が求められていた。 こ う し た 状 況 を 受 け て 技 術 開 発 課 で は 、平 成 13 年 度 か ら 降 雤 時 に 効 率 的 に 水 処 理 が で き る高速凝集沈殿設備(以下、本装置)の共同研究を民間企業と始めた。大島ポンプ所に設 置 し た パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト で の 除 去 率 は 、SS91% 、BOD76%( 平 均 値 )と ど ち ら も 良 好 で あ った。さらに、省スペースでありながら大量の下水を処理できること、既存の第一沈殿池 の改造で設置可能なため建設費の抑制が図れるなど、本設備の性能は局の合流改善事業を 進める上で効果的であることが明確になった。このことから、当局は本装置を導入するこ とによって放流水質改善効果大きいと試算された小菅水再生センター(以下、小菅)への 導入を決定した。 本 装 置 は 平 成 15 年 7 月 の 建 設 を 始 め 、 17 年 3 月 に 稼 動 を 開 始 し た 。 初 期 ト ラ ブ ル 等 も あ っ た が 、 平 成 18 年 度 末 に は 安 定 し た 自 動 運 転 が 可 能 に な っ て い る 。 そこで今回、設計時に想定していた機能が確保されているかの性能確認と、稼動後の運 転や維持管理などから分かってきた本設備の利点と課題をまとめた。なお、この評価は現 場 を 中 心 と し た 高 速 凝 集 沈 殿 設 備 評 価 PT に よ り 行 っ た 。 2 技術概要 2.1 設備概要 小 菅 導 入 装 置 の 処 理 フ ロ ー を 図 -1 に 示 す 。 本 装 置 の 処 理 工 程 は 、ス ク リ ー ン 部 、急 速 攪 拌 槽( 無 機 凝 集 剤 添 加 )、注 入 攪 拌 槽( マ イ ク ロ サ ン ド 添 加 )フ ロ ッ ク 形 成 槽( 高 分 子 凝 集 剤 添 加 )、傾 斜 板 付 き 沈 殿 池 、マ イ ク ロ サ ン ド関連設備(循環ポンプ、回収装置)薬品投入設備(無機凝集剤貯留槽、高分子凝集剤溶 解 槽 、) そ の 他 の 付 随 設 備 か ら 構 成 さ れ る 。 各構成の働きは以下のとおりである。 ① 濁度計・・・・ 原水の濁度を計測し、凝集剤添加率を制御する。 ② ス ク リ ー ン ・ ・ 原 水 中 の 大 き な 夾 雑 物 を 目 巾 Φ 6m m の ス ク リ ー ン で 除 去 す る 。 ③ 稼 動 堰 ・ ・ ・ ・ 装 置 へ の 流 入 水 量 を 100m 3 /分 に な る よ う 堰 高 を コ ン ト ロ ー ル す る 。 ④ 急 速 攪 拌 槽 ・ ・ 無 機 凝 集 剤 ( PAC) を 添 加 し て 、 浮 遊 し て い る SS を 凝 集 さ せ る 。 ⑤ 注入攪拌槽・・沈降汚泥の核とするためにマイクロサンドを添加しする。 1 ⑥ フ ロ ッ ク 形 成 槽・高 分 子 凝 集 剤 添 加 後 、攪 拌 速 度 を 弱 め て 、フ ロ ッ ク の 形 成 を 促 す 。 高 分 子 凝 集 剤 に よ り 流 入 SS と サ ン ド の 結 び つ き が 強 ま る 。 ( 図 -2 ) ⑦ 沈殿池・・・・・生成した凝集汚泥を沈殿させる。傾斜板を設けたことで、効率的 に泥を集められる。かき寄せた汚泥は循環ポンプで引き抜き、上澄 みは処理水となる。 ⑧ マイクロサンド関連設備 ・回収装置 沈殿槽からの引抜き汚泥を排出汚泥とマイクロサンドに分離する装置。 液 体 サ イ ク ロ ン 方 式 を 採 用 し 、 設 定 値 ( 概 ね 100μ m ) の 以 上 の 粒 径 を マ イ ク ロ サ ン ド 、 そ れ 以 下 を 流 入 SS 分 と す る 。 ・供 給 装 置 槽 内 の サ ン ド 量 が 適 正 量 を 下 回 ら な い よ う に す る 装 置 。フ ロ ッ ク 形 成 槽 内汚泥濃度計の値が設定値を下回ると、供給装置内のサンド全量 ( 600kg) が 自 動 投 入 さ れ る 。( 小 菅 で は 現 在 自 動 投 入 機 能 は 使 用 し て い ない) ⑨ 薬品投入設備 無 機 凝 集 剤 薬 品 タ ン ク ・ ・ 容 量 12m 3 無 機 凝 集 剤 ( PAC) を 保 管 す る 。 高 分 子 凝 集 剤 溶 解 タ ン ク ・ 有 効 容 量 12m 3 粉 体 の 凝 集 剤 を 溶 解 す る 。 溶解した凝集剤は2週間程度しか保存ができないため、 2週間に1回古い凝集剤の廃棄作業と新しい試薬の溶解 作業を行う。 ⑩ その他付随設備・各種ポンプ、攪拌器、沈砂回収装置など 図 -1 装置模式図 2.2 除 去 対 象 物 質 本 装 置 は SS、 BOD の 処 理 を 主 眼 に お い て い る 。 さ ら に 、 凝 集 剤 に PAC を 使 用 し て い る こ とから、りんが副次的に処理される。 2 2.3 マイクロサンドの役割 マ イ ク ロ サ ン ド は 石 英( SiO 2 )分 を 80% 以 上 と 指 定 し た 白 い 砂 で 、比 重 が 大 き く 沈 み や すい性質を持つ。主要な銘柄には東北珪砂や山形珪砂があり、ガラスの原料や鋳物砂・水 道水の濾過材などとして用いられている。 マ イ ク ロ サ ン ド は 、図 -2 の よ う に 汚 泥 凝 集 時 の 核 と な り 、凝 集 汚 泥 の 比 重 を 増 加 さ せ て 沈 降 速 度 を 高 め る こ と で 、流 入 水 中 の SS 分 を 効 果 的 か つ 高 速 に 除 去 す る 役 割 を 担 っ て い る 。 マイクロサンドは循環利用が可能なため、正常稼動時は損失分を投入すればよいが、分 離 装 置 の 分 岐 粒 径 よ り も 小 さ な サ ン ド は 系 外 に 排 出 さ れ る た め 、図 -3 に 示 す よ う に 分 離 装 置分岐位置以下の粒径がほとんどない号数のマイクロサンドを 装置に導入する。 回収装置分岐位置 含有割合(%) 20 高15 分子凝集剤 10 5 0 0 200 400 600 800 粒径(μ m) 図 -2 2.4 マイクロサンドの吸着イメージ 図 -3 マイクロサンドの粒径分布 凝集剤 ア ク テ ィ で 使 用 す る 凝 集 剤 の 性 状 を 表 -1 に 示 す 。 無 機 凝 集 剤 は 、PAC10% 溶 液 を 原 液 の ま ま 投 入 し て い る 。強 ア ニ オ ン 系 の 高 分 子 凝 集 剤 は 粉 末 を 0.2% 濃 度 に 溶 解 し て か ら 添 加 す る 。 2つの凝集剤は装置の稼動と同時に自動添加され、さらに流入系に設置した濁度計で流 入 水 質 の 変 化 を 計 測 し て 制 御 す る こ と で 、凝 集 剤 使 用 量 の 削 減 を 図 っ て い る 。(凝 集 剤 の 添 加 濃 度 は 表 -5 参 照 ) 表 -1 本 装 置 で使 用 する薬 品 について 品名 無機凝集剤 PAC 性状(購入時) 液体 高分子凝集剤 ポリアクリルアミド 粉末 3 強アニオン系 投入濃度 10% 稼動時原液を自動注入 0.2% 注入溶液は2週間に1度調製 稼動時の注入は自動 小菅水再生センターにおける合流改善施設の運用方法 3 添加方法 小 菅 で 合 流 改 善 施 設 と し て 用 い ら れ て い る 西 系 第 一 沈 殿 池 は 5~ 7 号 池 の 3 池 あ り 、1 池 が そ れ ぞ れ 4 水 路 に 分 か れ 合 計 12 水 路 あ る 。そ の う ち 7 号 池 の 1 水 路 に 本 装 置 が 導 入 さ れ 、 残 り の 11 水 路 は 雤 水 沈 殿 池 と し て 使 用 し て い る 。 降 雤 時 は 、 は じ め に 雤 水 沈 殿 池 へ の 貯 留 が 始 ま り 、( 図 5 左 )、 雤 水 沈 殿 池 が 満 水 に な る と 雤 水 沈 殿 池 か ら の 簡 易 放 流 が 始 ま り 、そ れ と 同 時 に 本 装 置 が 稼 動 す る 。 ( 図 5 右 )そ の 後 は雤水沈殿池と本装置の両方から放流が行われる。 本 装 置 は 稼 動 後 堰 高 で 常 時 100m 3 /分 流 入 す る よ う に 設 定 さ れ て お り 、残 り が 雤 水 沈 殿 池 に送水される。なお、本装置の滞留時間は10分となっている。 西系処理施設 本設備 雨水 沈殿池 図 -4 小菅西系水処理施設 貯留中 簡易放流・アクティ稼動中 流入水 流入水 5号池 6号池 ア 本 ク 装 7号池 テ 置 ィ 濁度計 5号池 6号池 ア 本 ク 装 7号池 テ 置 ィ ※稼動中は色付き、稼動していないものは白地 3/分 動 流入水 量 に応 じて変 最大500 500m m 最大 稼動堰 3/分 100m 100 稼m 動時 は常 に 100m 3 /分 放 流 図 -5 小菅合流改善施設 4 4 性能評価 4.1 性 能 評 価 項 目 と 評 価 方 法 性能評価は 8 項目について実施した。設計時の基準値がある4項目は、設計値を満たし ているか否かを確認する。それ以外の評価は高級処理や簡易処理との比較により本装置の 特性を評価した。 4.1.1 設 計 性 能 に 関 す る 評 価 設 計 書 に 記 載 さ れ て い る 本 装 置 の 性 能 は 表 -2 の 4 項 目 で あ る 。 表 -2 性 能 評 価 項 目 及 び方 法 項目 条件 確認方法 処理水量 100m3/分を常に満たす 日報にて確認 SS除去率 90% 流入・処理の分析を行い除去率を求める BOD除去率 75% 流入・処理の分析を行い除去率を求める サンド回収率 99.9%以上 排出泥にサンドが含まれないことを確認 (1)処理水量 処 理 水 量 が 100m 3 /分 を 満 た し て い る か を 稼 動 時 の 運 転 デ ー タ で あ る 処 理 水 量 計 測 値 か ら 確認する。 ( 2 ) 除 去 率 ( SS・ BOD) 合流改善装置の性能評価は通常汚濁総量を用いている、今回もそれに準 じて稼動時間全 体のコンポジット試料を作成し、流入水・処理水それぞれの汚濁負荷量から除去率を求め た。 (3)マイクロサンドの回収率 マイクロサンドの回収率は、沈殿槽引き抜き汚泥と循環汚泥の砂量(g)を測定し、両 者の差から求め、設計値と比較して評価した。 なお、砂分の分析は下水試験法に示された汚泥中の砂分の分析に準拠した。 4.1.2 設 計 性 能 以 外 の 評 価 (1)凝集剤の添加制御 設計値を満たす除去率を得るには、2つの凝集剤が設定値どおり注入されていることが 重要になる。そこで、添加量を決める濁度計の精度確認を行った。 (2)全りん除去率 PAC の 添 加 に よ り 副 次 的 に 処 理 さ れ る 全 り ん の 分 析 を SS・ BOD と 同 様 の 手 法 で 行 い 、 除 去率等について評価した。 (3)放流負荷量低減効果 本調査から得られた除去率から、本施設稼動による汚濁負荷低減効果を 雤水沈殿池との 比較により考察した。 (4)省スペース性 本装置と簡易処理を行う雤水沈殿池の設置面積について、各降雤時の処理水量と除去汚 5 濁量を考慮した比較・検討を行った。 (5)ランニングコスト 本 装 置 稼 動 に よ る 、 水 処 理 コ ス ト (薬 品 費 +電 気 代 )か ら 、 項 目 別 の 費 用 比 率 を 検 討 し た 。 また、経常的に損失するサンドの補充費用を試算し、ランニングコストを試算した 。 なお、小菅への導入は、既存施設の改造によることから、土木構造物を含めたイニシャ ルコストについて今回は評価をしていない。 4.2 性能評価結果 4.2.1 性能評価対象降雨状況 (1)調査日の状況 水 試 料 の 調 査 は 平 成 19 年 9 月 ~ 12 月 に か け て 4 回 の 降 雤 で 実 施 し た 。表 -3 に 調 査 を 行 った日の降雤等の状況を示す。 表 -3 調査日 調 査 日 の状 況 降雨量 最大強 降雨時 (mm) 度(mm) 間 無降雨 日数 本装置 本装置 雨水沈殿 稼働時間 処理水量 池放流量 (分) (m3) (m3) RUN1 10月19日 12.5 9.0 4時間 11 155 15,000 28,000 RUN2 10月26日 12.5 2.5 5時間 7 151 14,800 19,700 RUN3 12月13日 8.0 2.5 7時間 31 156 15,400 10,800 RUN4 12月23日 17.0 3.0 13時間 9 497 49,800 39,500 今回の調査回ごとの特徴葉以下のとおりである。 RUN1 は 強 度 の 強 い 雤 ( 夕 立 ) RUN2 は 弱 い 雤 RUN3 は 無 降 雤 日 数 が 1 ヶ 月 と 長 い RUN4 は 稼 動 時 間 が 8 時 間 と 長 い 流入水質(降雤強度、無降雤期間)と稼動時間は処理水質に与える影響が大きいと考え られ、今回 4 回の調査ではこの 2 つの変動要因を抑えている。 (2)採取方法 試料は自動採水器で採水を行った。採水試料は3種類、流入水、処理水、西系雤水沈殿 池 放 流 水 で 、採 水 間 隔 は 10 分 で 最 大 240 分 採 取 可 能 で あ る 。稼 動 時 間 の 長 い RUN4 は 全 て の 試 料 を 採 取 で き な か っ た た め 、 240 分 以 降 は 240 分 の 水 質 が そ の 後 も 継 続 し た と し て 計 算を行っている。 4.2.2 設 計 性 能 に 関 す る 評 価 (1)処理水量 Run4 の 時 の 処 理 水 量 状 況 を 図 -6 に 示 す 。 他 の Run に つ い て も 同 様 に 稼 動 中 は 安 定 し た 処 理 水 量 に な っ て お り 、10~ 12 月 に お け る 稼 動 時 の 平 均 処 理 水 量 は 100m 3 /分 で 、設 計 値 の 6 処理水量を満たしていた。 水 量 (m3/分 ) 1 10 1 05 1 00 95 90 0 50 10 0 1 50 2 00 2 50 3 00 3 50 4 00 4 50 稼 動 経 過 時 間 (分 ) 図 -6 本 装 置 稼 動 時 の 水 量 変 化 (点 線 は 設 定 水 量 ) ( 2 ) 除 去 率 ( SS・ BOD) 1)SS除去率 各 Run に お け る SS 濃 度 は 流 入 100~ 180mg/L( 平 均 146mg/L)で 、処 理 水 は 4~ 17mg/L ( 平 均 10mg/L)で 、簡 易 処 理 水 の 水 質 と し て は き わ め て 良 好 で あ っ た 。除 去 率( 負 荷 量 換 算 )の 平 均 は 95% と な り 、設 計 性 能 90% を 満 た し て い た 。4 回 の 調 査 で の 除 去 率 の 範 囲 は 89~ 97% で 降 雤 強 度 や 無 降 雤 日 数 に よ る 水 質 の 変 化 の 影 響 を 受 け ず い ず れ も 高 い 数 値 が 得 ら れ た 。 こ の こ と か ら 、 本 装 置 は SS の 処 理 に 適 し た 性 能 を 有 す る と 評 価 で き る 。 表 -4 回数 採水区分 SS 分 析 結 果 濃度 負荷量 (mg/L) (kg) 180 2702 流入水 処理水 17 流入水 170 RUN2 処理水 7 流入水 100 RUN3 処理水 12 流入水 134 RUN4 処理水 4 流入水 146 平均値 ※1 処理水 10 ※1:汚濁負荷は4回の調査の合計 RUN1 240 2508 99 1537 174 6672 184 13418 695 除去率 91% 96% 89% 97% 95% 2)BOD除去率 各 Run に お け る BOD 濃 度 は 流 入 81~ 114mg/L( 平 均 98mg/L)で 、処 理 水 は 7~ 32mg/L( 平 均 18mg/L)で 、負 荷 量 換 算 の 除 去 率 は Run1、2 は 90% 以 上 で あ っ た が RUN3 は 68% と 低 く なっており、すべての降雤において安定した除去率とはなっていなかった。 7 表 -5 回数 採水区分 BOD 分 析 結 果 濃度 負荷量 (mg/L) (kg) 100 1501 除去率 流入水 処理水 10 141 流入水 81 1195 RUN2 処理水 7 99 流入水 95 1460 RUN3 処理水 32 463 流入水 114 5676 RUN4 処理水 21 1015 流入水 98 9832 平均値 ※1 処理水 18 1717 ※1:汚濁負荷は4回の調査の合計 RUN1 91% 92% 68% 82% 83% RUN3 に お け る BOD 除 去 率 低 下 の 要 因 と し て 、溶 存 態 BOD 割 合 の 違 い が 考 え ら れ た 。今 回 の 分 析 結 果 か ら 溶 存 態 の 量 を BOD/SS 比 率 で 推 定 し BOD 除 去 率 と BOD/SS 比 率 の 関 係 を 求 め た 。 結 果 を 図 -7 に 示 す 。 溶 存 態 の 割 合 が 高 い ( BOD/SS 比 率 が 低 い ) と 考 え ら れ る 流 入 水 ほ ど BOD 除 去 率 が 低 く 、 流 入 水 中 の 溶 存 態 が BOD 除 去 率 に 影 響 を 与 え て い る こ と が 確 認 さ れた。 B O D/ S S 比 率 1 .4 1 .2 1 .0 0 .8 0 .6 0 .4 y = - 1 .5 8 6 4 x + 2 .0 0 9 3 R2 = 0 .8 2 3 4 0 .2 0 .0 0% 図 -7 50% 100% B OD除 去 率 150% BOD/SS 比 率 と BOD 除 去 率 の関 係 3)サンド回収率 ・砂分の結果 引き抜き汚泥と系外排出汚泥の分析からサンド回収率を求めた。 沈 殿 槽 引 き 抜 き 汚 泥 は 試 料 1 L 中 に 2~ 13g( 分 析 回 数 4 回 )の 砂 分 が 含 ま れ た が 、マ イ 8 ク ロ サ ン ド 分 離 機 通 過 後 の 系 外 排 出 汚 泥 に は 0.0009~ 0.0033g の 砂 分 し か 含 ま れ な か っ た 。 砂 分 回 収 率 は 99.96~ 99.99% で 、 い ず れ も 設 計 値 99.9% 以 上 を 満 た し て い た 。 表-6 稼動開始からの経 過時間(時間) 採取日 9月5日 12月13日 砂分分析結果 引き抜き汚泥砂分 系外排出汚泥砂分 (g) (g) 砂分回収率(g) 0 5.7 0.0011 99.98% 2 12.9 0.0010 99.99% 0 2.4 0.0009 99.96% 2 7.6 0.0033 99.96% ・粒径分布 砂分の分離性能を確認するため、各成分の粒径分布を測定した。引抜き汚泥中の砂分は 流 入 SS 分 に よ る 粒 径 10~ 100μ と マ イ ク ロ サ ン ド に よ る 400μ m 前 後 の 粒 径 が 混 在 し て い る。しかし、系外排出汚泥中にはマイクロサンドに該当する範囲の粒径はほとんどなく、 分離装置が正常に稼動していることが確認された。 15 ■:稼動開始直後 ▲:稼動開始2時間後 12 含有割合(%) 12 含有割合(%) 15 ■:稼動開始直後 ▲:稼動開始2時間後 9 6 3 9 6 3 0 1 10 100 粒径(μ m) 図 -8 1000 引 き抜 き汚 泥 の砂 分 0 1 10 100 粒径(μ m) 1000 図 -9 系 外 排 出 汚 泥 の砂 分 4.2.3 設 計 性 能 以 外 の 評 価 (1)凝集剤添加特性 1)濁度計指示値 現場濁度計指示値と採取した試料の分析結果との比較より現場濁度計の精度を確認した。 図 -1 0 に Run1 に お け る 手 分 析 に よ る 測 定 結 果 と 現 場 設 置 計 器 の 変 化 を 示 す 。こ れ よ り 両者の度数はほとんど差がなく、現場濁度計は制御に十分な精度であったことがわかる。 200 実測 計器 度数(度) 150 100 50 0 22:52 23:22 23:52 0:22 時間 9 0:52 1:22 図 -10 実 測 と計 器 値 の濁 度 の変 化 2)凝集剤注入率と設定値 表 -7 に 凝 集 剤 の 添 加 率 と そ れ ぞ れ の 添 加 率 に 該 当 す る 調 査 時 の 濁 度 の 割 合( % )を 示 す 。 調 査 期 間 で は 500 度 以 上 の 汚 れ の 激 し い 水 の 流 入 は な か っ た 。こ れ は 3 、合 流 改 善 施 設 の 運用方法のとおり小菅では汚れの激しい初期雤水は貯留に回るためと考えられる。 今 回 の 調 査 で の 流 入 水 の 91% は 濁 度 50~ 200 度 の 範 囲 で あ っ た 。ほ と ん ど の 流 入 水 の 濁 度 が こ の 範 囲 に な る の は 、こ の 領 域 の 濁 度 は SS に 換 算 す る と 約 30~ 520mg/L で 、対 象 範 囲 が広いためである。 表 -7 流 入 濁 度 範 囲 濁度の存在比 凝集剤注入率 無機凝集剤 高分子凝集 (mg/L) 剤(mg/L) 流入水濁 度範囲 (%) 0~50 7 3 0.6 50~200 91 5 0.8 200~500 2 7.5 1.4 500以上 0 10 2 (2)全りん除去率 本 装 置 で は 、凝 集 剤 に PAC を 使 用 し て い る た め 、SS 性 り ん と 溶 解 性 り ん の 除 去 が 行 え る 。 溶解性りんは通常の簡易処理ではほとんど除去されないので、りん除去特性は本装置 の特 徴といえる。 本 調 査 で の 処 理 水 の 全 り ん 濃 度 は 平 均 0.2mg/L で 、 晴 天 時 の 小 菅 の 高 級 処 理 水 濃 度 と ほ ぼ同等の低い濃度であった。除去率も高く安定しており、全りんの除去効果の高さが 改め て確認された。 表 -8 全 りん除 去 率 調査日 回数 濃度 (mg/L) 汚濁量(kg) 除去率 2.6 39.0 92.8% 0.2 2.8 2.5 36.9 10月26日 RUN2 98.1% ND 0.7 ※ 2.5 38.4 12月19日 RUN3 92.5% 0.2 2.9 2.5 38.1 平均値 94% 0.2 2.1 ※RUN2の処理水は定量下限値以下であったため、下限値 の半分にあたる0.05を用いて汚濁量を計算 ※RUN4は未測定 10月19日 RUN1 10 (3)放流負荷量の低減効果 本装置と雤水沈殿池の放流負荷量を比較した。処理水量は本装置の年間推定処理水量 210 万 m 3 /年 ( 平 成 1 8 年 度 9 ヶ 月 間 稼 動 実 績 か ら の 年 間 推 計 値 ) と し た 。 公 共 用 水 域 へ 放 流 さ れ る SS 量 は 本 装 置 19 ト ン に 対 し て 雤 水 沈 殿 池 放 流 水 144 ト ン で 、 本 装 置 の 除 去 効 果 の 高 さ が 明 確 に な っ た 。BOD、全 り ん に お い て も 放 流 負 荷 量 は 雤 水 沈 殿 池放流水よりも尐なく、排出先の水質保全に大きく貢献されていることが証明された。 表 -9 本 装 置 と雨 水 沈 殿 池 処 理 の年 間 負 荷 量 の違 い(トン /年 ) SS BOD 全りん 本設備放流負荷量 19 27 0.2 雨水沈殿池放流負荷量 144 102 4.1 放流負荷低減量 125 75 3.9 (4)設置面積 本 装 置 の 設 置 面 積 は 、処 理 装 置 本 体 は 350m 2 、薬 品 槽 な ど 付 随 施 設 を 含 め る と 453m 2 で 、 付 帯 施 設 の 面 積 が 多 く な っ て い る 。 雤 水 沈 殿 池 の 敷 地 面 積 は 1438m 2 で あ る 。 そ れ ぞ れ の 施 設 が 敷 地 1m 2 で 処 理 で き る 水 量 は 、 本 装 置 20.0 m 3 /m 2 ( 装 置 本 体 )、 雤 水 沈 殿 池 11.3 m 3 /m 2 で 、 本 装 置 は 同 一 設 置 面 積 の 雤 水 沈 殿 池 設 備 と 比 べ て 、 2 倍 近 い 水 を 処 理 することができる。 (5)処理コスト 1)薬品費及び電力費 本装置稼動時の処理コストを求めた。試算はコストに占める割合が高い薬品費と電気代 か ら 求 め た 。 金 額 は Run3 を 除 く 3 回 の 調 査 の 平 均 で あ る 。 高速凝集設備処理コスト(電気代及び薬品費用) 2776 円 /1000m 3 稼動時実質処理費用 内訳 電気代 209 円 ( 総 額 に 占 め る 割 合 : 7 % ) 無機凝集剤 1921 円 ( 〃 : 69% ) 高 分 子 凝 集 剤 645 円 ( 〃 : 23% ) (参考) 小菅高級処理電気代 1765 円 /1000m 3 小菅簡易処理電気代 24 円 /1000m 3 本 装 置 を 用 い て 1000m 3 の 処 理 を 行 っ た 際 の 処 理 コ ス ト は 2776 円 で 、 そ の う ち 70% が 無 11 機 凝 集 剤 の 費 用 で あ っ た 。小 菅 の 高 級 処 理 水 電 気 代 1765 円 と 比 べ る と 本 装 置 の 金 額 は 1000 円高く、本装置の処理費用は非常に高いことがわかる。 2)マイクロサンド補充費用 マ イ ク ロ サ ン ド 回 収 率 は 99.97% で あ る こ と か ら 系 外 に 流 出 す る マ イ ク ロ サ ン ド 量 は 0.03% と な る 。 年 間 処 理 水 量 210 万 m 3 、 槽 内 の 循 環 サ ン ド 濃 度 を 3000mg/L と し て 計 算 す る と 、 下 記 の と お り 処 理 水 量 1000m 3 あ た り の 投 入 費 用 は 40 円 で 、 薬 品 費 と く ら べ る とマイクロサンドの補充費用は尐ない。 ・ マ イ ク ロ サ ン ド 損 失 分 の 補 充 ( 年 間 想 定 350 時 間 稼 動 ) 年間損失量 1890kg 投入費用 85,000 円 処 理 水 量 1000m 3 あ た り の 投 入 費 用 5 40 円 性能評価まとめ 高速凝集沈殿装置の性能調査をおこなった結果、以下のことが明確となった。 ① 装 置 へ の 処 理 水 量 100m 3 /分 は 確 保 さ れ て い た 。 ② SS は 流 入 濃 度 に 影 響 を 受 け ず 目 標 除 去 率 90% の 性 能 を 有 し て お り 、 本 装 置 が SS の処理に適していることが証明された。 ③ BOD は 概 ね 目 標 除 去 率 75% を 満 た す 処 理 は 可 能 だ が 、溶 存 BOD の 割 合 が 高 い 流 入 水 では除去率が低下する傾向がある。 ④ 流 入 濁 度 の 変 動 は 尐 な く 、 薬 品 注 入 率 は 概 ね 無 機 凝 集 剤 5mg/L、 高 分 子 凝 集 剤 0.8mg/L で あ っ た 。 ⑤ 全 り ん は 常 に 除 去 率 が 高 く 、処 理 水 の り ん 濃 度 は 小 菅 の 高 級 処 理 水 と ほ ぼ 同 等 で あ る。 ⑥ 本 装 置 の 稼 動 に よ る 年 間 SS 放 流 負 荷 量 は 19kg で 簡 易 放 流 144kg と 比 べ て 明 ら か に 尐なく、本装置を用いることで公共用水域への放流負荷を 大きく軽減できる。 ⑦ サ ン ド 回 収 装 置 の 回 収 率 は 99.9% 以 上 で あ り 、 回 収 装 置 の 性 能 は 良 好 で あ っ た 。 ⑧ 装 置 設 置 単 位 面 積 あ た り の 処 理 水 量 は 、西 系 沈 殿 池 放 流 水 よ り も 本 装 置 の 方 が 高 く 、 スケールメリットが証明された。 ⑨ 本 装 置 の 処 理 費 用 ( 電 気 代 + 薬 品 費 ) は 平 均 2776 円 で 、 高 級 処 理 水 以 上 の 費 用 が かかっていた。 謝辞 本 調 査 に お い て は 、高 速 凝 集 沈 殿 施 設 PT メ ン バ ー を は じ め 、多 く の 小 菅 水 再 生 セ ン ターの皆様のご協力をいただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。 12
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