2009年1月発行 - 東京大学分子細胞生物学研究所

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東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌
1月号(第40号)2009.1
IMCB
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University
of Tokyo
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目 次
新年のご挨拶(宮島篤所長)……………………………………… 1
業務改善総長賞……………………………………………………… 19
研究分野の紹介(RNA機能研究分野)……………………… 1∼5
国際会議に出席してみて……………………………………… 19∼20
受賞者紹介…………………………………………………………… 6
訃報(鶴尾先生)…………………………………………………… 21
転出のご挨拶(宮地弘幸) ………………………………………… 6
分生研ホームカミングディを開催…………………………… 22∼23
分生研シンポジウム(泊幸秀) …………………………………… 7
農学部と合同で自衛消防訓練を実施……………………………… 24
所内発表会……………………………………………………… 8∼12
動物慰霊祭…………………………………………………………… 24
留学生手記(金承燮)……………………………………………… 13
お店探訪……………………………………………………………… 25
ドクターへの道(加々美綾乃)…………………………………… 14
知ってネット………………………………………………………… 25
海外ウォッチング(五月女宜裕)………………………………… 15
編集後記……………………………………………………………… 25
OBの手記(河野淳)………………………………………………… 16
研究紹介(三村久敏、那須亮)…………………………………… 26
研究室名物行事(高野和儀)……………………………………… 17
研究最前線(核内情報研究分野、情報伝達研究分野、
事務部 業務紹介…………………………………………………… 18
生体超高分子研究分野、細胞形成研究分野) … 27∼28
新年のご挨拶 分子細胞生物学研究所 所長 宮島 篤
新年あけましておめでとうございます。
分生研は1993年に応微研の改組により誕生してからすでに15年が過ぎます。この間に、当研究所は微生物の
研究からマウス、ショウジョウバエ、シロイヌナズナなどのモデル生物を使った基礎生命科学の研究所へと大
きく転換いたしました。その結果、研究分野も多岐に渡り、タンパク質の原子構造解析、染色体分配、シグナ
ル伝達、遺伝子発現など細胞における基本的な分子機構、内分泌系、脳神経系、血液、肝臓などの生命機能の
形成機構、癌の発生機構、さらに創薬研究など様々な分野で多くの成果を上げてきました。
研究分野の変化だけでなく、研究所の体制も大きく変化しました。とりわけ2004年の国立大学の法人化を経
て、大学が大きく変わるとともに分生研においても、従来以上に人事や安全などにおける管理体制の整備・強化が求められるように
なりました。しかし、そのための職員や予算が別枠でつくわけではありません。むしろ運営費交付金の削減が毎年続いており、運営
費交付金だけでは研究所の運営は不可能であり、外部資金の獲得が最大の関心事となってきています。その結果、研究費が取れる実
用的な研究へと研究の流れ自体も大きく変化しており、基礎研究の継続的な発展が困難になりつつあります。さらに昨今の金融問題
が追い打ちをかけており、本年の研究環境は一層厳しさを増すものと思われます。この逆風に立ち向かうべく、研究所員の皆様にお
かれましては、新年に際して決意を新たに研究に取り組んでいただくとともに分生研の発展に一層のご尽力をお願いいたします。 法人化後の東大を常に前向きな姿勢と強力なリーダシップで率いてこられた小宮山総長は本年3月で任期を終えられます。小宮山
総長の下に様々な改革が行われ、法人化により東大は勢いを失うこともなくたくましく成長してきました。濱田次期総長の下、この
逆風にもめげす東大がますます発展することを願うばかりです。分生研におきましても、4月からは秋山教授を所長とする新体制に
移行します。引き続き、分生研のさらなる発展のために皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。
研究分野紹介 若手フロンティア研究プログラムRNA機能研究分野
はじめに
タンパク質をコードしない21-24塩基程度の「小さなRNA(small RNA)」が、植物と動物の遺伝子発現
の制御に大きな役割を演じていることが明らかになったのは、つい最近のことです。microRNA(miRNA)
2
図1
図2
図3
3
は、長いステムループ構造を持つ前駆体としてゲノムにコードされ、進化的に保存されたsmall RNAであ
り、発生のタイミングや形態形成、アポトーシス・細胞増殖や癌化、稔性など、非常に重要な生物学的機
能を緻密に制御していることが知られています。これまで動物、植物、ウィルス等において9,000個ちか
くのmiRNAが報告されていますが、ヒトだけでも2,000個程度は存在し、遺伝子全体の1/3以上を制御して
いると予測されています。これに対して、small interfering RNA(siRNA)は、主にウィルス感染やトラ
ンスフェクションなど、外因性の長い二本鎖RNAから作られるsmall RNAであり、ウィルスなどの遺伝
的侵略者から細胞を防御する機能を果たしていると考えられています。また最近では、Piwi-intereacting
RNA(piRNA)、endogenous siRNA(endo-siRNA)、trans-acting siRNA(tasiRNA)、natural-antisense
siRNA(natsiRNA)、21-U RNA等、様々な機能を持つ多くのクラスのsmall RNAが発見されています。
small RNAは、医薬応用の観点からも注目を集めています。たとえば、siRNAは、疾患に関与する遺伝子
が分かりさえすれば、その発現を効率的また特異的に抑制できるという利点を持つため、がんや加齢黄班変
性症等の内因性疾患や、RSウィルスや肝炎ウィルス等のウィルス性疾患をはじめ、様々な疾患に対する医
薬応用が精力的に研究されており、すでに治験段階にあるものも数多く存在します。また、がん等の疾患と
miRNAとの関連性も近年強く指摘されており、これまで疾患の主役であると考えられてきたタンパク質では
なく、それらタンパク質の発現を緻密にコントロールするmiRNAこそが、疾患の「真の支配者」であるとい
う新概念も生まれています。実際、miRNAの働きを適切に制御することによって、臨床応用を目指す動きが
近年急速に高まっています。
そのような状況にもかかわらず、「small RNAが実際にどのようなメカニズムで働くのか」ということに対
する我々の理解は、驚くほど進んでいないと言えます。その大きな理由は、それ自身が触媒作用をもつタン
パク質やリボザイム等とは根本的に異なり、small RNAは、複数の相互作用因子を含むエフェクター複合体
として初めて機能を発揮するからです。また、そのエフェクター複合体の形成も、多くのステップを経る複
雑なものであり、解析を難しくしています。私たちの研究室では、まさにそのエフェクター複合体に着目し、
その形成過程や作用機序を丹念に解析することで、不明な点が多く残されているsmall RNAのメカニズムを
分子レベルで解明することを目指しています。
small RNAの振り分け機構
siRNAとmiRNAは、その由来こそ違いますが、共にRISC(RNA-induced silencing complex)と呼ばれる、
複数のタンパク質と一本鎖のsmall RNAから成るエフェクター複合体を通して、特異的な標的遺伝子の発現
抑制を行います。RISCを通して、miRNAは通常不完全に相補的な結合部位を複数個持つターゲットmRNA
の翻訳抑制を引き起こすのに対し、siRNAは相補性の高い結合部位を一つでも持つターゲットmRNAの切断・
分解を引き起こします(図1)。RISCの中で中心的役割を果たすのは、Argonauteと呼ばれるタンパク質
です。私たちが主な実験材料として用いているショウジョウバエには、Argonaute1(Ago1)、Argonaute2
(Ago2)という二種類のArgonauteが存在しますが、一般にmiRNAはAgo1を含むRISCに、siRNAはAgo2を
含むRISCに取り込まれます(図1)。
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ショウジョウバエでは、miRNAとsiRNAは、それぞれDicer- 1、Dicer- 2という別々の酵素によって生成
されるため(図1)、それぞれの生合成経路とArgonauteへ取り込まれる経路は連動していると、もともと
考えられてきました。しかし、私たちは、マサチューセッツ州立大学Phillip Zamore研究室との共同研究に
より、miRNAとsiRNAは、それらの生合成経路とは独立して、能動的にそれぞれのArgonauteに振り分けら
れているということを明らかにしました。この時重要になるのが、miRNAとsiRNAの生合成過程における
small RNA二本鎖中間体、すなわちDicerによる切断を受けた直後のmiRNA/miRNA*二本鎖とsiRNA二本鎖
という中間体の構造です。私たちは、様々な生化学的実験を通して、small RNA二本鎖の中心付近にミスマッ
チが存在する場合はAgo1に、そうでない場合はAgo2に振り分けられているということを見いだしました(図
2)。この際、私たちが以前定義したRISC-loading complex (RLC, Ago2を含むRISCにsmall RNAを「積み
込む」働きをしている複合体で、RISC形成の上流に位置する)が、結合強度の差を利用して、ミスマッチの
位置を見分ける役割を果たします。統計的に見ると、天然に存在するmiRNA/miRNA*二本鎖には、中心部分
にミスマッチが存在することが多く、RLCはsiRNA様のものを積極的にAgo2に送り込み、miRNA様のもの
を排除する「門番」の役割を果たしていると言えます(図2)。同時に、天然に存在するmiRNAの中には、
Ago1だけでなくAgo2にも取り込まれるものが存在するという予測が立てられましたが、実際、そのような
ものが数多く報告されています。
miRNAによる翻訳抑制のしくみ
miRNAが標的mRNAの翻訳を抑制するしくみに関しては、数多くの報告がなされてきましたが、1.cap
構造認識段階での阻害 2.cap構造認識後の後期翻訳開始段階での阻害 3.翻訳伸長段階での阻害 4.poly
の短縮とmRNAの不安定化 5.P-body(mRNAの分解と貯蔵を司る細胞質顆粒)への移行 等、
様々な仮説が提唱されており、混乱を極めています。前述の通り、ショウジョウバエでは、miRNAはその中
間体の構造に従って、Ago1とAgo2の間に分配されます。私たちは、miRNAが取り込まれるArgonauteの種
類によって、その翻訳抑制作用が異なるのではないか、という仮説を立てました。ショウジョウバエの「small
RNA振り分け機構」を利用すれば、その生合成を考慮しなくとも、ミスマッチの位置をデザインすることで、
Ago1-RISCとAgo2-RISCを、ほぼ排他的に形成させることが可能となります。私たちは、独自に開発したin
vitro系を使うことで、Ago1とAgo2による作用を個別に評価し、それらの翻訳抑制の様式を丹念に調べまし
た。その結果、1.Ago1は標的mRNAのpoly
を分解するが、Ago2はしない 2.Ago1は(poly
分解と独
立して)cap認識後の段階を阻害するが、Ago2はcapを認識するeIF 4EとeIF 4Gとの相互作用を特異的に阻害
する3. Ago1の働きにはP-body構成要素であるGW182が必要であるが、Ago2には必要ではない という様
に、Ago1とAgo2の働きには大きな違いがあるということが明らかになりました(図3)。よって、これま
での矛盾した結果の少なくとも一部は、別々のArgonauteの活性を混同して評価していたためであると考え
られます。
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さいごに
私たちの研究室では、これまで紹介した研究以外にも、miRNAがどのような過程を通してRISCに取り込
まれるかという研究や、変異解析を通してArgonauteタンパク質そのものが持つ多機能性の本質に迫ろうと
いう研究、またmiRNAの標的を生化学的に同定しようとする研究などが進行中です。今後も、small RNA研
究の中でも最も基礎的な部分であるメカニズムの解明に焦点を当て、未知の世界を切り開いてゆければと考
えております。
日々の研究を進めていくに当たり、高次構造研究分野からはショウジョウバエのエサバイアルを日常的に
分与していただいております。また分生研内の様々な研究室には、試薬や機器をお借りしたり有意義なディ
スカッションをしていただいたりと、大変お世話になっています。事務部の方々にも、右も左も分からなかっ
た研究室立ち上げ当初から今日に至るまで、様々な形で親切にサポートしていただいております。この場を
お借りして感謝申し上げますとともに、今後ともご指導の程どうぞよろしくお願いいたします。
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受賞者紹介
核内情報研究分野 加藤 茂明教授がつぎの賞を受賞されました。
心よりお祝い申し上げます。
賞 名:財団法人 持田記念医学薬学振興財団 持田記念学術賞
受 賞 日:平成20年10月17日
受賞課題名:脂溶性ステロイドホルモン類の作用機構に関する研究
賞 名:社団法人 日本生化学会 柿内三郎記念賞
加藤茂明 教授
受 賞 日:平成20年10月27日
受賞課題名:核内受容体転写共役因子複合体群の生化学的解析
転出のご挨拶
生体有機化学研究分野 准教授 宮地 弘幸
10月より岡山大学大学院医歯薬総合研究科有機医薬品開発学講座教授として転出いた
しました。本務は大学院後期課程ですが、学部および大学院前期課程の所属名は自分で
決めてよろしいということで 創生医薬化学分野 と致しました。新しい所属において
も創薬の基礎研究を底支えする分子医薬化学研究を続けております。岡山は穏やかな土
地のようで良いところですが、縁もゆかりもない土地で、研究室を運営する(さらに単
身赴任)という、これまで以上に大きな責任を負わなければならないわけで、改めて身
の引き締まる思いの毎日です。
1996年から生体有機化学の橋本先生に公私ともにお世話になっており、その縁もあって、2004年4月に分
生研生体有機化学研究分野助教授(当時)に着任致しまして4年半の間分生研で過ごさせていただきました。
企業から転出した目から見ますと、設備面・環境面(安全性という観点)ともにとても満足いくものではあ
りませんでしたが、諸先生方、学生さんの 熱き目 がぎらぎらしているのは印象的でした。創薬は異分野
共同のまさに総合学問であり、多種類のバックグラウンドを背景に集まる分生研で学ぶことは非常に多かっ
たように思います。研究はもちろんですが、研究費の扱い方、事務処理、学生指導等、今の研究室運営を行
う上で必要不可欠な経験だったと思います。橋本先生には本当に感謝の気持ちで一杯です。また、分生研の
他の生物系研究室のレベルの高さも大変刺激になりました。各研究室が独立ではあるものの、相互に切磋琢
磨して現在のそして未来の分生研があるのだなと思ったしだいです。
橋本先生ならびに諸先生方、生体有機化学研究分野の皆さん、そして事務方の皆さんに感謝するとともに、
今後は生体有機化学研究分野で学んだことと分生研で得た人脈を武器にして、新天地で頑張っていきます。
みなさま長い間どうもありがとうございました。そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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第13回分生研シンポジウム
“Biology of small RNAs”
若手フロンティア研究プログラムRNA機能研究分野 泊 幸秀
2008年11月6日東京大学安田講堂にて、(財)応
Reuven Agami(The Nether-
用微生物学研究奨励会・(独)科学技術振興機構
lands Cancer Institute, Nether-
との共催により、恒例の分生研シンポジウムが
lands)
開催されました。今回は、2006年ノーベル医学
“Cancerous miRNAs and reg
生理学賞受賞者であるCraig Mello教授をはじ
ulatory RNA binding proteins”
め、現在最も注目を集めている分野の一つであ
る「小さなRNA」研究の第一人者を国内外より
加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所)
招待し、最新の研究成果を発表いただきました。
“Hormonal control of miRNA processing”
当日は、学生・研究者を含め約500名の方々にご
参加ただき、またすべての演者が論文未発表の
シンポジウム終了後は、山上会館にて懇親会
データーを含む講演を行い、質疑応答において
を行い、演者と参加者との間でさらなる交流が
も大変活発な議論が行われました。
行われました。和やかな雰囲気の中、大学院生
の皆さんが、演者の先生方と熱心にディスカッ
Craig C. Mello(University of
ションを行う姿が多く見受けられました。
Massachusetts, USA)
“RNAi:From Mystery to
最後に、この場をお借りし、協賛いただいた
Mechanism(and back)”
以下の各企業の皆様に厚く御礼申し上げます。
㈱日本公文教育研究会,ナカライテスク㈱,
アプライドバイオシステムズジャパン㈱,㈱藤
塩見 美喜子(慶應義塾大学医学部)
本理科,岩井化学薬品㈱,㈱ラボ,サミットメ
“RNA silencing in Drosophila germlines”
ディカル㈲
Phillip D. Zamore(University
of Massachusetts, USA)
“Small RNAs and genomic
defense”
泊 幸秀(東京大学分子細胞生物学研究所)
“Assembly and function of RNAi complexes”
8
2008年度分生研所内発表会・懇親会
染色体動態研究分野 塚原 達也
去る11月13日(木)に2008年度分生研所内発
表会・懇親会が開催されました。今年度は染色
体動態研究分野が幹事を務めさせていただきま
した。開催にあたりましては応微研奨励会をは
じめ、多くの方々のご協力をいただきましたこ
とに、染色体動態研究分野一同心より御礼申し
上げます。この場をお借りして、会の報告をさ
せていただきます。
物の分離と系統分類」
生体有機化学研究分野 三澤 隆史
(修士課程2年)
「1’
-Acetoxychavicol acetate(ACA)をリー
ド化合物とした新規細胞増殖抑制剤の創製
研究」
若手フロンティア細胞形態研究分野
高野 和義(博士研究員)
「Syndapin-Ⅱ新規ドメインは細胞膜陥入と
突出に関わる」
機能形成研究分野 宮岡 佑一郞
(博士課程3年)
「Delta-like protein(Dlk)の結合分子探索と
その機能解析」
高次構造研究分野 竹内 聡(修士課程2年)
「シ ョ ウ ジ ョ ウ バ エLexAエ ン ハ ン サ ー ト
ラップ系統の作成とLexA発現パターンの画
像データベースの構築」
所内発表会の開催は今年で10回目を迎え、総
合研究棟2階会議室を会場に10時10分から17時
50分まで行われました。昨年同様、19研究分野
の代表者による研究成果の発表と、審査員をは
じめ聴衆の方々との間で活発な質疑応答が行わ
れ、研究分野の垣根を越えて幅広い議論がなさ
れました。以下に発表者のご紹介をさせていた
だきます。
――発表者(発表順・敬称略)――
高次機能研究分野 小野寺 千晶
(修士課程2年)
「細胞死阻害因子FLIPLリードスルー変異体
FLIPL+46の遺伝学的解析」
形態形成研究分野 小木曽 由梨
(博士課程2年)
「パターン形成におけるモルフォゲン濃度勾
配の定量的解析」
分子情報研究分野 山角 祐介(博士課程3年)
「TGFβシグナルの下流におけるD8の意義」
細胞形成研究分野 奥田 傑(博士研究員)
「in vivo 光架橋法によるLol因子間の相互作
用解析」
情報伝達研究分野 岡崎 朋彦(博士課程1年)
「ASKファミリーを介した抗ウィルス応答:
IFN産生と細胞死誘導 の解析」
分子遺伝研究分野 高師 義幸(博士課程3年)
「シロイヌナズナにおけるReplication Protein
A70の機能解析」
発生分化構造研究分野 坂本 真紀
(博士課程1年)
「ヒストン-DNA間およびヒストン-ヒストン間
相互作用における機能残基の網羅的解析」
バイオリソーシス研究分野
福永 幸代(博士課程3年)
「無脊椎動物・海藻等からの新規系統群微生
染色体動態研究分野 山岸 有哉
(博士課程1年)
「シュゴシンSgo1のセントロメア局在はヘ
9
テロクロマチンタンパク質Swi6/HP1との相
互作用に依存する」
創生研究分野 二島 渉(博士課程4年)
「二面角遷移に基づくタンパク質立体構造変
化の解析手法」
放射光連携機構生命科学部門構造生物学研究室
佐藤 裕介(博士課程2年)
「脱ユビキチン化酵素AMSH-LPの機能・構
造解析」
細胞機能研究分野 宮城 敦子(博士課程3年)
「タデ科植物におけるメタボローム解析の評
価」
生体超高分子研究分野 畠山 理広
(博士課程1年)
は奨励会より盾が、また副賞としてマッサージ
器やエアベッドなどのリラクゼーショングッズ
が贈られました。おめでとうございます。
優秀賞
第1位 岩崎 信太郎
若手フロンティアRNA機能研究分野
博士課程1年
第2位 奥田 傑
細胞形成研究分野 博士研究員
第3位 山岸 有哉
染色体動態研究分野 博士課程1年
審査員特別賞
竹内 聡
高次構造研究分野 修士課程2年
山角 祐介
分子情報研究分野 博士課程3年
「酵 母 の ア ミ ノ 酸 応 答 に 関 わ る 新 規 因 子
ALY1 、ALY2 の機能解析」
核内情報研究分野Min-Young Youn
(博士課程2年)
「Multinuclear expression of ERα in
mature osteoclasts」
若手フロンティアRNA機能研究分野
岩崎 信太郎(博士課程1年)
「ショウジョウバエArgonaute1及びArgonaute2
による翻訳抑制機構」
発表形式は、プロジェクターによる発表15分、
質疑応答5分で行っていただきました。審査に
関しては、各研究室2名ずつの審査員を選出し
ていただき、1発表者に対して10名(1セッショ
ンのみ9名)が審査を担当致しました。審査基
準は従来通り、①発表内容②プレゼンテーショ
ン③質疑応答④応用性及び将来性、の4項目と
し、それぞれ5段階の評価を行っていただきま
した。このうち①∼③の合計点を優秀賞の選定
に、④を審査員特別賞の選定に用いました(審
査員の人数がセッション毎に異なりましたので、
セッション毎に審査員一人当たりの平均点を算
出し、各賞の該当者を決定致しました)
。また、
昨年と同様審査員特別賞は優秀賞受賞者を除外
して選定致しました。
審査の結果、2008年度所内発表会入賞者は以
下のように決定致しました(敬称略)
。入賞者に
優秀賞 第1位
「ショウジョウバエArgonaute1およびArgonaute2に
よる翻訳抑制機構」
若手フロンティア研究プログラム RNA機能
分野 泊研究室 岩崎信太郎(博士課程1年)
まず初めに、このような
栄誉ある賞をいただきあり
がとうございました 。大変
光栄に思っております。こ
の賞を頂けたことは、僕自
身はもちろんのこと、でき
て間もない泊研究室自体に
とっても大きな自信になり
ました。なにより、発表を聞いてくださった方々
に、
「おもしろかった」
「良かった」と言って頂
けたことが、
正に研究者冥利に尽きる思いでした。
私は「ショウジョウバエにおけるsmall RNA
による翻訳抑制機構」について解析した結果を
発表させていただきました。もっとも知られて
い るsmall RNAの 一 つ にmiRNAが あ り ま す。
miRNAは内在的に存在するsmall RNAで、その
配列と部分相補的な配列をもつmRNAの翻訳を
抑制するということが知られています。miRNA
によって発生のタイミング、形態形成、アポトー
シス、細胞増殖、稔性など非常に重要な生物学
的機能を制御していることが知られている他、
10
癌を含めた疾患との関連性も指摘されています。
しかしながらそのmiRNAによる「翻訳抑制」の
メカニズムについてはこれまで相互に矛盾する
さまざまな仮説が提唱されており、明確な結論
は得られていませんでした。small RNAはそれ
ぞれArgonaute(Ago)と呼ばれるタンパク質に
取り込まれ機能するのですが、これまでの研究
では生物種に数個存在するAgoの作用機序の違
いについては研究されていませんでした。そこ
で私は「それぞれのAgoごとに翻訳抑制の作用
機序が異なっているのではないか」という仮説
を立て研究を始めました。今回の発表ではショ
ウジョウバエがもつ2種類のAgo(Ago1および
Ago2)それぞれが翻訳抑制を引き起こすことが
でき、その作用機序に明確な違いがあるという
ことを述べさせていただきました。
私の実験系は全てショウジョウバエの胚抽出
液を用いたin vitro系で行っています。この実験
を始めてつくづく思うのは、実験は「系」が命
である、ということです。当たり前のことかも
しれませんが、
「その実験によってどこまで物事
を議論できるか」というのはひとえにその実験
「系」が「どこまで現象を再現できているか」
にかかっています。今回私はsmall RNAによる
「翻訳の抑制」 と い う 現 象 を 再 現 で き、 かつ
間でどのように相互作用し
て基質を輸送しているかを
発表させていただきました。
グラム陰性細菌の外膜リ
ポ蛋白質は、生育に必須な
5つのLol因子によって外膜
へと輸送されます。内膜上
で前駆体から成熟体に変換
された後、成熟体となった外膜リポ蛋白質は、
内膜に存在するABCトランスポーターLolCDE
複合体によって認識され、ATPの加水分解エネ
ルギーを利用してLolAと1:1の水溶性複合体
を形成し、内膜から遊離します。LolAとの複合
体となった外膜リポ蛋白質はペリプラズム空間
を横断した後、外膜に局在するリポ蛋白質受容
体LolBへと受け渡され、外膜に組み込まれます。
各Lol因子の作動機構は、変異体の機能解析や結
晶構造解析により詳細に解明されていますが、
Lol因子間の相互作用の詳細については解析が困
難で、これまでほとんど解明されていませんで
した。本研究では、比較的新しい手法である
in vivo 光架橋法を導入して、各因子間の相互作
用部位を明らかにすることにより、リポ蛋白質
の輸送はLol因子が持つキャビティ構造を利用
し、キャビティの口を重ね合わせるようにして
Ago1とAgo2の効果を切り分けられる実験系を
立てることに成功しました。そのことによって
行なわれるといったモデルを提唱しました。
現在の分生研において研究対象としている研
実に多くの結果を明確に示すことができました。
そのことに感動すると共に、実験「系」の大切
究室が(少)ない大腸菌を対象とした研究が、皆
に理解され、評価されたことを非常にうれしく
思います。例年、異分野の私にもわかりやすく、
内容的にも非常にレベルの高い発表をすると
さというのを再認識させられました。
所内発表会の運営をしていただいた染色体動
態研究分野の皆様ならびに審査員の皆様、お忙
しいところありがとうございました。皆様のご
尽力があってこそ滞りなく所内発表会が執り行
われたことと思います。何度も発表練習を見て
いただいた泊研の皆さん大変お世話になりまし
た。今後もこの賞の名に恥じぬよう、日々研究
に精進したいと思います。
優秀賞 第2位
「In vivo 光架橋法によるLol因子間の相互作用解析」
いった印象を持っていた渡邊研のメンバーに、
発表後にわかりやすかったと言われたことや、
審査員メンバーの一人であった泊先生に、しっ
かりとした生化学の研究で個人的に好きな研究
だと声をかけてもらったことは、今後研究を続
けていくにあたり、自信になり、また励みにも
なりました。本当にありがとうございました。
また、日々の研究生活において、熱心に指導し
てくださっている徳田先生や協力的な研究室の
メンバー、今回私の発表を審査してくださった
細胞形成研究分野 奥田 傑(博士研究員)
審査員の方々、忙しい中、わざわざ発表を聴き
に来てくださった方々に感謝いたします。分生
研は様々な分野の研究室が存在しており、その
今回の所内発表会では、大腸菌の内膜から外
膜へのリポ蛋白質の輸送を担うLol因子が、因子
ような人たちに、いかにわかりやすく自分の研
究を伝えるかを考えることはよい勉強になり、
11
所内発表会は非常に有意義なものであると、あ
らためて実感いたしました。
最後になりましたが、今回このような有意義
な会の運営を担当してくださった渡邊研の皆様
と、支援してくださった応微研奨励会の皆様に
厚くお礼申し上げます。
優秀賞 第3位
「シュゴシンSgo1のセントロメア局在はヘテロクロ
マチンタンパク質Swi6/HP1との相互作用に依存す
トで保存されているということも併せて示すこ
とができました。
結果として優秀賞をいただいたことは非常に
光栄ですが、審査員や聴衆の方にプレゼンテー
ションに関して高い評価をいただいたこと、そし
て、特にお隣の後藤研究室の皆様の強力なサポー
トもあって、席が足りないほど多くの方に発表を
聞いていただけたことが何よりありがたく、うれ
しいことでした。この場を借りて感謝申し上げま
す。それから、第3位の副賞として羊の湯たん
染色体動態研究分野 山岸有哉(博士課程1年)
ぽをいただきました。この羊には「ドリー」と名
付け愛用させていただきます。独り寂しく寒い
冬の夜もドリーのおかげでぽかぽかです。
はじめに、今回研究成果
審査員特別賞
る」
を発表する機会をいただい
たことを関係者の皆様に感
謝申し上げます。研究成果
を口頭発表するのは修論発
表を除けば初めてであり、
またマイクを握ってお話し
するのもカラオケボックス
を除けば初めてで、当日は非常に緊張すると思っ
ていましたが、幸い当研究室が幹事研究室だっ
たことで、直前まで座長の仕事などを行ってい
たこともあってか、発表時は適度にリラックス
することができました。
今回私は「シュゴシンSgo1のセントロメア局
在はヘテロクロマチンタンパク質Swi6/HP1との
相互作用に依存する」という演題でお話しさせ
ていただきました。シュゴシンSgo1は減数第一
分裂時に姉妹染色体間のセントロメアでの接着
を保護する因子として、当研究室において分裂
酵母を用いて同定された、真核生物に広く保存
されたタンパク質です。Sgo1の機能を失った細
胞では、減数第一分裂後に姉妹染色体がばらば
らになってしまい、減数第二分裂時の染色体分
配が完全にランダムになってしまいます。Sgo1
がセントロメアに局在することは、その機能に
必須ですが、どのようにしてSgo1がセントロメ
アに局在するのかについては分かっていません
でした。今回の研究では、この点について解析
をすすめ、Sgo1はヘテロクロマチンタンパク質
Swi6/HP1と直接結合することにより、セントロ
メアへと局在するという機構を明らかにするこ
とができました。またこの機構が分裂酵母とヒ
「ショウジョウバエLexAエンハンサートラップ系統
の作成とLexA発現パターンの画像データベースの
構築」
高次構造研究分野 竹内 聡(修士課程2年)
ショウジョウバエでは特
定の神経細胞群で任意の遺
伝子を発現させられる発現
誘導スイッチ,GAL4/UAS
系統が多くの実験に利用さ
れてきました。近年GAL4/
UAS系統とは独立した新し
い発現誘導スイッチの
LexA/lexAop系統が構築されましたが、発現誘
導が可能な『特定の細胞群』のパターンが非常
に限られており、LexA/lexAop系統が本来持ち
合わせているポテンシャルを充分に発揮出来て
いないというのが現状でした。今回私が発表さ
せていただいた「LexAエンハンサートラップ系
統の作成」はLexA/lexAop系統で遺伝子の発現
誘導が可能な『特定の細胞群』のパターンをト
ランスポゾンを利用して増やし、そのポテンシャ
ルを引き出すというのが目的です。しかし、た
だ単にパターンを増やすだけでは『作業』とし
ての色合いが強く、いかにして『作業』から『研
究』に発展させるかが自分の中で大きな課題で
した。残念ながらその課題はまだ自分の中で解
決しておらず、現在も『必要な作業』に膨大な
時間を割かれるなかで模索している最中ですが、
今回の受賞という結果からLexA/lexAop系統の
12
持っているポテンシャルだけは伝えることが出
来たのではないかと思います。今回の発表や、
していただいた様々な質問を通して『いかに自
分が分かった気になっていたか』を思い知らさ
れました。残された時間は非常に限られていま
すが、今回の経験を活かして一瞬、一瞬を大切
にしながらこれからも精進していきたいと思い
ます。
審査員特別賞
う評価を頂くことができ、驚くとともに大変光
栄に思っています。今回の結果に驕らず、賞品
の寝袋を寝床にして日々の研究に精進していこ
うと思います。
最後になりましたが、所内発表会の幹事研究
室である染色体動態の方々、本研究を進める上
でご指導下さった秋山先生、日々のミーティン
グで非常に有意義な議論をして頂いたD8グルー
プのみなさま、発表練習に付き合って頂いた分
子情報研究分野の方々に感謝いたします。また、
今年度の所内発表会にお
肝細胞の単離実験で多大なご協力をいただいた
機能形成研究分野の谷水先生、塚原(河村)さん、
肝切除の実験でお世話になりました鬼塚さんに
この場を借りてお礼申し上げます。
********************************************************************
いて、私は新規タンパク質D
8がTGFβシグナルの下流で
担っている機能について発
表させていただきました。D
所内発表会終了後には、農学部食堂にて懇親
会が開催されました。約200名の皆様にご参加い
ただき、2時間あまりにわたって盛大に行われ
ました。宮島所長による乾杯の後、歓談の時間
8は当研究室で同定されたタ
を挟み発表会入賞者の表彰も行われ、様々な研
ンパク質で、先行研究によ
りアポトーシス誘導に関与
していることがわかっていました。TGFβがア
究分野の間での交流がなされていました。
会を終えて省みまして、前回幹事研究分野の
方々の助言の他、皆様のご協力のおかげで滞り
ポトーシスを誘導することと、TGFβの添加に
よ っ てD8 の 発 現 が 上 昇 す る こ と か ら、D8 が
なく所内発表会を開催できましたことに幹事一
同安堵しております。今回幹事としてこの発表
TGFβによって誘導されるアポトーシスを仲介
していると予想されました。実際に本研究によっ
て、D8は確かにTGFβによって誘導されるアポ
会に参加して強く感じましたのは、分生研にお
ける研究の幅広さ・奥深さでした。分生研での
研究は多岐にわたっており、普段は耳にしない
トーシスに重要でありことがわかり、さらにD8
の下流でアポトーシス促進因子であるBmfが働
ような内容の発表もありましたが、どれも非常
に興味深く刺激的で、自分も負けずに研究に励
いていることが明らかとなりました。本研究に
より、未解明な部分の多いTGFβによるアポトー
シス誘導機構の解明に一石を投じることができ
まねばと感じました。このような刺激を受け、
自らの研究にフィードバックする機会としても、
所内発表会は大いに意義深いものと思います。
たのではないかと考えています。今後はこの機
構が生体内でどのような生理的意味を持つか解
析していきたいと考えています。
発表では、審査員の方々が異分野の方という
ことで、背景を知らない人でも研究に興味を持っ
最後になりましたが、今回の会を執り行うに
あたり多大なるご協力をいただきました各研究
分野の連絡係・審査員・発表者の皆様、そして
参加していただいた全ての皆様、格別なるご尽
力をいただきました(財)応微研奨励会事務局
ていただけるよう、研究内容を正確に述べるこ
とよりもプレゼンテーションの流れとわかりや
すさを強く意識しました。本番では緊張から早
長の山口千秋様、ならびに宮島所長にこの場を
借りて厚く御礼申し上げます。最後に、発表会
入賞者の受賞の言葉を添えさせていただき、幹
口になってしまいかなり時間が余ってしまいま
したが、複数の方々からわかりやすかったとい
事からの報告とさせていただきます。
「TGFβシグナルの下流におけるD8の意義」
分子情報研究分野 山角 祐介(博士課程3年)
う言葉をいただき、自分の思い描いていた発表
をある程度は行うことができたのかなと満足し
ています。それだけでなく、この度特別賞とい
13
留学生手記
高次機能研究分野 修士課程1年 金 承燮(Kim
Seungseob)
分生研に入って初めて迎えた冬。まだ1年の経っ
さないように頑張っている自分の姿があった。
てない自分にこの留学生手記に文章を載せる機会が
それでも周りの友達が色々話しをかくてくれたお
あって5年間の留学生活やまだ早い9ヶ月間の分生
陰で、2年生の頃からは自然にコミュニケーション
研での生活を振り返ってみることができた。そして、
ができるようになった。今もたまには分からないま
この機会にして、他の留学生の手記を初めて読んで
ま会話していたり、笑ったりするときもあるが、4
みたりもして色んな留学生の方のことを知ることも
5年前に比べればそんなことはほとんどなく、みん
できた。
なと一緒にその場を楽しめるようになってきた。
最初、この手記で昨年4月に分生研に入って慣れ
それでも最初にここにきた4月は、分生研という
ないことばかりで色々大変でしたと書くつもりだっ
ところは慣れない空間だったが、内藤先生や先輩方
たが、他の留学生の手記を読んでみて、そんなこと
を含めた研究室メンバー全員が優しく話しをかけて
を書くことができなかった。留学生とはいえ、学部
くれたりして、すぐに研究室の雰囲気に慣れること
生活を東京でやってきた上にその間に色々な友達も
ができた。また、分生研のM 1同士でよく集まり、
できたため、日本語や東京での生活、しかも日本人
飲んだりする機会も多く、研究室の中にとどまらず
との付き合いも今思えば、自分が初めて来日した5
分生研の中に友達ができた。こうやって前期のうち
年前に比べれて全てが円満になっていたためだっ
は色んな方々のお陰で、分生研に慣れることができ、
た。
今は楽しい分生研での生活を過ごすことができるよ
2003年、高校を卒業して半年後に日本に来たとき
うになった。
には、日本語を話すことも、聞くことも、書くこと
最近、よく他国で慣れてきて、生きているなと自
もほとんど不可能だった。その後、半年間の日本語
分で思ったりしたこともあったけど、こうやって振
コースを受け、日本語の先生の言葉が漸く理解でき
り返ってみると、今日本で楽しく勉強や日常生活を
るようになって学部に入ったが、普通の日本人が話
続けられているのは今まで自分を後押ししてくれて
す日本語は日本語の先生の言葉とはまったく別の言
きた方々がたくさんいたからだったということがよ
語にしか聞こえなかった。みんな何を話しているの
くわかった。日本にきて知り合った人々、そして今
かも分からず、何で笑ってるかも分からないまま、
年、ここの分生研に入ってから知り合った人々、み
大体みんな笑っているタイミングに合わせて自分も
んなが自分を今まで支えてくれていた。この場を借
笑ってみたりして。。。なんとかその場の雰囲気を乱
りて、みんなに感謝の気持ちを伝えたい。
14
ドクターへの道
加々美綾乃(染色体動態研究分野)
今号の分生研ニュースは渡邉研からの寄稿が多いで
いうと分類を覚えたりひたすらスケッチしたりと、い
すが、このコーナーも渡邊研より私が書かせていただ
まいち私の興味をそそらなかったのですが、ある教育
きます。
実習生の授業の中で「一見同じに見えるが異なる性質
思い返すと私が学者とか研究者になりたいと最初に
を持つ様々な動植物を形作っているのは遺伝子であり
思ったのは小学校高学年の頃で、恐ろしい事に、小学
DNAという分子(!!)の塩基配列である」と知った
校の卒業文集に「将来の夢:考古学者になりたい」と
時は衝撃でした。そしてそんな衝撃(快感)に再び出
書いた記憶があります。なぜ考古学者かというのは当
会えるのではないかと大学に入ったら生物系に進もう
時の自分の興味が考古学だったからだと推測されます
と決意したのでした。
が、こんなところにも「気になったらとことんやらな
とまあ、このような感じで今に至る私ですが、現在
いと気がすまない」という自分の性格がかいま見られ、
は研究の世界の厳しさを身をもって感じつつ、最初に
改めて驚かされます。
DNAに出会ったときのような衝撃(快感)に再び出会
そんな小学生だった私が一方でどうして自然科学の
う事ができるのは果てしなく先なのではないか(出会
分野に興味を持つようになったかというと、
(もっと)
えないのではないか…)と思う事も多々ありますが、
小さい頃からの家庭環境にあったのではないかと思い
千里の道も一歩から、少しでも近づくために日々奮闘、
ます。まず第一に幼少時は祖母の横でN○Kの教育番組
匍匐前進しているところです。
ばかり見ていたせいか、幼稚園にして「足の下にはチ
今回このような形で自分の歩み(?)を改めて振り
ソウ(地層)があります。
」と突然口走り母親を唖然と
返って、様々な所に今の自分を作り上げた土台を感じ、
させたり(母親談)、
、と、その頃に自然の中には見え
ここに至るまでの周囲の人々の支えを感じ、感謝した
ない所に様々なヒミツがあるのだという事を知りまし
り笑ったり苦笑したり驚いたり…でした。この場を借
た。そして第二に、理科の教員であった父親の行動(突
りてそんな皆さんへお礼を言いたいと思います。そう
然、廃棄処分の顕微鏡を家に持ち帰ってきたり、家族
いえば、昨今東大では理系進学を志す女子高生を増や
で山に登れば高山における植生分布についての講義…
そうという動きが見られますが、
(分生研にも)ドクター
を聞く子供は一番年上の私だけ…)
。第三に(そんな父
進学を志す女子学生が増えるといいですね。
親の影響か)家に子供向けや一般人向けの科学雑誌が
常時あったこと、そしてそのような本に影響された私
や兄弟のしょうもない実験(?)や遊びにつきあって
くれた祖母や母親、の存在でしょうか。大学受験の際
に父と似たような進路を選択している自分に「これは
父親に仕組まれたのではないか?」と疑問を感じた事
もありましたが、最後は「好きなようにしなさい」と
いう両親(特に母親)のありがたい言葉のまま、自分
の興味の赴くまま、今に至ります。
(幸いな事に「女の
子なのに」と理系進学や東大進学に難色を示された事
は一度もありませんでしたし、女子校だったので「女
の子=文系」的な固定観念もなく友達も皆好き勝手な分
野に進学していきました。
)
このように知らず知らずのうちに自然科学分野へ興
味を持ち進んで行った私ですが、最初から生物に興味
があったわけではなく、当初は一般向け科学雑誌のカ
ラーページを飾る様々な銀河の美しい写真に魅せられ
て、天文学を志そうと考えていました。が、しかし、
高校2年生の春の頃だったでしょうか、天文学の背景
には見るのも恐ろしい偏微分の数式が並んでいるのを
知り、「こりゃだめだ」と思った矢先にであったのが細
胞生物学であり分子生物学でした。それまでは生物と
写真:修士修了式の日も振り袖で実験…嘘です。
15
海外ウォッチング
Yale University,Department of Chemistry,Andrew D. Hamilton Laboratory
五月女 宜裕
この度、
「海外ウォッチング」
のような一同の喝采に喜びを感じたとともに、イギリ
を執筆させて頂きます五月女
スへ引越?!と一抹の不安を覚えた衝撃的な事件でも
と申します。私は、修士課程
あります。そんな毎日多忙なHamilton先生ですが、人
(2001∼2003)を活性分子創生
分野で、
博士課程 (2003∼2006)
を 生 体 有 機 化 学 研 究 分 野 で、
計五年間、分生研に在籍して
柄も素晴らしく、また研究に真摯な先生です。尊敬す
る先生と研究を行うことのできる喜びを感じています。
研究テーマを頂いた際に渡されたgrant proposal読んだ
際の感動は今でも忘れられません。予備的実験の段階
でこれほどまで緻密に研究計画を書けるものなのかと、
おりました。その後、薬学研究科柴崎正勝研究室にて二
originalityやgeneralityといった言葉の深さを感じるこ
年間助教を勤めた後、現在、日本学術振興会海外特別研
とができました。Hamilton研では現在α-へリックスや
究員として研究留学の機会を得ることができ、2008年4
β-ストランドミミックの開発研究に多くの力が注ぎ込
月からYale大学にて研究を行っています。
まれています。この研究では、数百オングストローム
Yale大学はアメリカの大学としては三番目に古い、
にも及ぶタンパク質表層を、いかに低分子を用いてミ
アメリカ東部の名門大学群アイビー・リーグに所属す
ミックするかが鍵となります。そのため、分子をデザ
る八大学のうちの一校です。Yale大学のあるニューヘ
インするためのコンピューターモデリング、有機合成
イブン市は、ニューヨークより北東へ二時間ほどのコ
化学、タンパク質との相互作用を解析するためのアッ
ネチカット州南部に位置しています。古い大学街の景
セイ等、幅広い分野の議論が研究室内では行われてい
観は、2008年に公開された「インディ・ジョーンズ/ク
ます。この際、異なる文化背景に基づく様々な価値観
リスタル・スカルの王国」の撮影に使われた程です。
のぶつかり合いが日常的に起こります。こうしたなか
春から秋( 4月中旬∼10月下旬)にかけてのシーズン
で新しいアイデアの芽を得たり、自らの固定観念を反
は気候が温和で、緑があふれるそのきれいな街並は、
省する機会が数多くありました。自分の考えをきちん
歩いているだけで心が浄化されます。11月を過ぎると、
と言葉にして率直に相手に伝え、かつ相手の意見に耳
長い冬の始まりです。夕方4時半には、日が落ち、氷
を傾けることはアメリカでの生活において大変重要で
点下の世界です。また、治安がそれほどよくないこと
す。そういった会話のあり方は、帰国した際にも一研
もあり、街の中心downtown以外には、夜間外を歩く人
究者としての人間形成に貴重な財産になるだろうと感
はあまり見かけられなくなります。
じています。
博士課程以降、日本では多点認識概念を基盤に、触
最後になりましたが、留学の助成を賜っています日
媒的不斉反応の開発を主に行ってきました。この多点
本学術振興会に深謝いたします。また、Yale大学へ留
認識触媒は複数の基質(求核剤と求電子剤)活性化部
学をお考えの方は、ぜひ御一報下さればと思います。
位を有しており、近接効果によって、温和な条件下、
医薬品合成に重要な炭素−炭素結合反応を促進させる
ことができます。つまり、低分子/低分子の相互作用を
制御することで、新たな機能をデザインする方法論の
開発を行ってきたわけです。これらを基盤に、低分子/
タンパク質相互作用研究に自分の研究を展開したいと
考え、Hamilton研の門を叩きました。
Hamilton研は13人のポスドク、6人の学生、国際色
豊 か な メ ン バ ー で 構 成 さ れ て い ま す。Hamilton先 生
は、2008年10月 ま でYale Provostを 勤 め ら れ、 翌2009
年10月からはイギリスOxford大学のvice canceller(学
長)に就任なさることが決まっております。実は、こ
のニュースは私が渡米して2ヶ月後に聞かされ、映画
16
OBの手記
農研機構果樹研究所 元細胞機能研究分野 河野 淳
分生研を離れてほぼ3年になります。分生研には修
究内容はどのあたりだろう、と考えながら研究を進め
士、博士を通して5年間お世話になりました。入った
ています。
当初は分生研本館にあった研究室(細胞機能研究分野)
さて、私が細々と行っている研究は、ブドウの病害
も、私の在籍途中で総合研究棟に引っ越しました(大
抵抗性の品種間差異に関する研究になります。果樹は
変でした)。それでも今、分生研として思い出すのは本
総じて病虫害に弱く、果樹生産においては相当量の薬
館の方です。長く本館で研究したというだけでなく、
剤散布が行われています。しかし、病害に弱い品種では、
私にとって初めて本格的に研究をしたところであった
薬剤散布のタイミングを誤ると病害で甚大な損害を被
というのが大きいと思います。空気の澄んだ冬には、
る、というリスクがあります。また、消費者のニーズや、
本館の屋上から富士山が小さく見えたのを覚えていま
環境負荷低減という視点から、減農薬が求められる時
す。
代です。そのため、病気にかかりにくい品種を育成す
分生研時代はシロイヌナズナを用いて細胞周期の研
る、ということが以前にも増して大きな育種目標となっ
究を分子レベルで行っておりましたが、今は農業・食
ています。私はブドウ黒とう病という病害に絞って研
品産業技術総合研究機構(略して農研機構)果樹研究
究を進め、簡便かつ安定的な黒とう病菌分生子の単離
所というところで果樹(ブドウとカキ)の育種に関す
法を開発する(現在論文投稿中)と共に、分生子接種
る仕事をしています。農研機構は農水省所管の独立行
葉に生じた病斑径により品種間差異を明らかにできる
政法人の研究機関であり、私は公務員試験を経て採用
のではないかと考えて研究を進めています。育種の側
されました。育種に関する仕事といってもいろいろで
面からは、育成した実生群から病害抵抗性系統を選抜
すが、私の所属するチームで行っているのは、古代よ
することが目標となります。ただこうした「調査」と
り連綿と続く「交雑育種」です。交配計画を立て、交
いう側面の強い仕事だけでなく、病害抵抗性を構成す
配を行い、果実形質を評価し、新品種候補となる系統
る要因は何であるのか、その実体について遺伝子ある
を総合的に選抜する、というのが主な流れです。育種
いは情報伝達物質というレベルで少しでも明らかにで
での最終目標は「新品種」になりますが、素晴らしい
きれば、「研究」として価値のある仕事となるのではな
品種ができた場合の現実に与えるインパクトは非常に
いかと思っています。そして、その研究結果を基盤と
大きいです。当研究所が以前(といっても数十年前で
することにより、「どの品種を親にして交配すれば良い
すが)に作出した品種にリンゴの「ふじ」
、
ナシの「幸水」、
のか(あるいはダメなのか)」、
「どのように抵抗性系統
「豊水」があります。いずれも日本各地で生産、販売が
を選抜すればより正確かつ効率的なのか」という育種
なされており、「ふじ」に至っては世界各国で生産され
上の問いに、より合理的な答えが得られるようになる
ています。偉大な新品種が現実の産業に与える影響は
と考えています。
非常に大きいです。
最後になりますが、分生研の皆様の今後のますます
育種という仕事の性質上、以前は、一年中畑に出て
のご活躍を祈念いたしております。
ひたすら果樹の世話をする、というのが仕事のスタイ
ルだったようですが、現在は論文という形での成果が
強く求められています。圃場管理の職員がいるとはい
え、端的に言って育種の仕事は大変で、その上に研究
を行うのは楽ではありません。しかし、高々3年では
あるものの育種に携わったことで、「農業」と「研究」
に関する考え方は大きく変わり、視野も広がり、この
組織において自分の為すべき研究がどのようなものな
のか、イメージが掴めたと思います。私の所属する農
研機構は大学とは異なる組織であり、最終的には現場
への応用を見据えた成果を生み出さねばなりません。
今も、研究として面白く、かつ実際の問題に即した研
17
研究室名物行事
細胞形態研究分野 特任研究員 高野和儀
はじめまして。若手フロンティア研究プログラム末
麗に保つのに重要です。また、末次先生は全般に関わ
次研究室の高野です。宜しくお願い申し上げます。研
りますが、特に流しの掃除をして頂いています。シン
究室は現在、末次先生、秘書の浜田さん、研究員の堀
クは水垢がつくので、本当は使用の都度、拭いておけ
越さんと私の4人がいます。出来たばかりの研究室で
ば良いのですが。末次先生、いつもすみません。自宅
すので名物行事といえるものがあるか分かりませんが、
でも念入りに掃除してみると自分自身も気持ち良いも
きっと研究室で繰り返し行われることは未来の名物行
のです。
事になると思われます。
当研究室では昼ご飯は自作弁当か買って来たものを
もともとは生命科学総合研究棟4Fに研究室がありま
持参して、本館一階のラウンジで頂いております。そ
したが、本館1Fに引越してからは、研究室が広くなっ
のおかげで12時40分から13時40分くらいの間の不定期
たので掃除にはだいたい30分くらいはかかります。そ
な30分程を当研究室の貸し切り状態にしてしまい、多
の甲斐あって、研究室は引越してきた時と同様に綺麗
くの方々にご迷惑を御掛けしていることと思います。
に保てているので、掃除は大事だと痛感しております。
この場を借りて御詫び申し上げます。また、快く席を
掃除機をかけるだけでなく水拭きしなければとれない
譲って下さる方々に御礼申し上げます。研究と切り離
床の汚れがあるのですが、普段床をしっかり見ること
された話はお昼の時間に話すことが多いようで、大部
はなかったので、毎週の掃除がなかったら気付かない
分は昨日の晩飯の話や、それぞれの家庭の話などで、
かもしれません。これらの床の汚れは長い目でみると、
なかなか皆さんネタもちです。私は口下手+田舎者の
床のシミになって取れないということになるので、床
ため面白い話はできないので質問に答えてばかりいま
の水拭きと掃除機がけを行います。私はモップ隊とし
すが、一番多い質問は弁当の中身についてです。私は
て、1Fの研究室を水拭きすることがこの掃除での使命
嫁に弁当を持たされており、お昼に頂いています。毎
であると勝手に考えています。廊下の窓から掃除の様
日ほとんど変わらないメニューですが、揚げ物の中身
子が見えますので、興味のある方は是非モップ隊に入
が毎日変化します。質問は、この揚げ物の中身が今日
隊して頂きたいと思いますが、大変なので手伝って欲
は何であったか、ということです。大きく変わらない
しいと思うのが本音ですが。モップで磨きつつ、主に
ものに少しの変化をつけてあることが、奥ゆかしいの
浜田さんによる掃除機隊によって埃が吸われます。ど
かもしれません。お弁当がない日は農学部前の朝日堂
こから入って来たのか分からない虫も綺麗にしている
パン屋もお勧めです。一週間のうち研究室メンバーで
といつの間にか滅多に見かけなくなりました。埃が入っ
数回はこのパン屋の売り上げに貢献しています。私は
て来ないよう、下履きと上履きを分けてあることも綺
揚げ物が好きなので、エビかつやトンカツが挟んであ
るパンがお勧めですが、他も美味しいと思います。
研究室に来た時や、外出して戻った時には必ず手を
肘までを洗います。これは研究室員が全員気を付けて
いるところです。研究室に入り研究をする前に身を清
めること、これは研究への姿勢だと思っています。また、
寒くなり風邪が流行る頃かと思いますので、手洗いや
うがいなどは研究室だけでなく自宅でも実践すべきな
のでしょうね。
ここで思いつく名物行事が少ないため、紙面を持て
余してしまった事を御許し下さい。研究室の歴史を重
ねていくにつれ、研究室の習慣が確立されていくと思
いますので、皆様どうか当研究室を暖かく見守って頂
写真:お掃除1号機(左)と二号機(右)
一号機は床専用。二号機は机の上や機器のフィルター
などに活躍する。二号機の弱点は充電式なので使用で
きる時間が短い。
けますようお願い申し上げます。
18
事務部 業務紹介
事務長
貝 田 綾 子
かいだ あやこ
1.事務の統括
2.事 務 職 員 に と っ て 希 望 の
きっかけとなる明るく活力
のある事務部。
☎ 27801
係長
金 岡 有里子
磯 山 勉
かねおか ゆりこ
いそやま つとむ
1.旅費、郵便、出勤簿・休
暇簿関係
2.野菜の栽培に挑戦!
☎ 27813
1.知財等を担当。
2.昨 年 は ジ ェ ッ ト 戦 闘 機
で6Gを体験。さて今年
は?
☎ 27812
主任
主任
野 口 由 紀
小 倉 聡 司
のぐち ゆき
おぐら さとし
1.短時間職員の採用・給与
等を担当しております。
2.よろしくお願いします。
☎ 27813
1.給与・人事・共済・兼業
に関する業務。
2.博文約礼
☎ 27802
市 原 美 香
いちはら みか
1.助成金、MTA、広報
2.Do for others.
☎ 27803
チームリーダー
永 嶋 智 明
ながしま さとあき
1. チームの統括を担当。
☎ 27885
今 田 由美子
こんた ゆみこ
1.謝金、RI、職員の研修等
の担当です。
2.宜しくお願いします。
☎ 27803
米 畑 宏 美
よねはた ひろみ
1.科研&寄附金
2.迂闊早口・挙動不審 orz
で も 真 摯 な 気 持 で お 仕
事中
☎ 27806
印 藤 朝 子
いんどう ともこ
1.大学運営費を担当
2.休 日 は 草 加 の 松 並 木 を
ウォーキングしています。
☎ 27892
主任
古 田 幸 司
ふるた こうじ
1.運営費・施設管理・物品
管理等担当。
2.気軽にお声掛けください。
☎ 27892,27809
係長
西 永 岩 文
にしなが いわふみ
1.大学運営費、予算・決算
2.何でもおまかせ下さい!
☎ 27805
※1.
は担当業務、2.はひと言
係長
新 井 千恵子
あらい ちえこ
1.科研費&寄附金
2.遠距離通勤で頑張ってい
る二児の母
☎ 27806
大 島 大 輔
チームリーダー
おおしま だいすけ
石 川 紀世三
1.受託・共同研究、
GCOE等。
2.昼 は 御 殿 下 で バ ス ケ ッ
ト!!
☎ 27804
いしかわ きよみ
係長
村 上 靖 朋
むらかみ やすとも
1.受 託 研 究、 共 同 研 究、
GCOEの受入
2.朝聞道。夕死可矣。
☎ 27804
1.経理全般に関する事務処
理の指揮・伝票監査をし
ています。
☎ 27811
19
業務改善プロジェクト推進本部長賞を受賞して
平成20年12月19日(金)
、安田講堂において、東京大学業務改善プロジェクト推進本部が主催する「業務改
善総長賞」の授賞式が開催され、分生研事務職員若手メンバーが提案した「事務部若手職員による業務改善
の企画・立案と逐行への取組み」が、2008年度『業務改善プロジェクト推進本部長賞』を受賞しました。
この賞は、本学の業務改善に関する具体的な提案を幅広く教職員から募集し、今後の業務運営において合
理化・効率化等に資することを目的として設置されたもので、最も優れた業務改善の取組を行った場合には
「総長賞」が与えられます。
授賞式当日は、小宮山総長の講話に引続き各受賞者によるプレゼンテーションが行われました。安田講堂
の壇上に上がる事は、長い職員生活の中でも中々、経験できるもので
はありませんので、若手一同とても貴重な経験をする事ができました。
この一年を振り返ると、業務改善に向けて事務職員一同、日々邁進
してまいりました。取組んだ主な改善内容として、研究室訪問キャラ
バン・事務部ポータルサイト等があります。書面等で通知するだけで
はなく、直接担当者が研究室に出向き業務に関する説明を行ったり、
研究室からの相談を受けその回答等をポータルサイトに掲載すること
で、今まで以上に研究室の方と情報の共有化を図る事ができたと思っ
ております。
結果、
『業務改善プロジェクト推進本部長賞』という形で評価して
いただけたことは、とても嬉しく光栄なことだと思います。
【改善は一日してならず】です。
改善は、日々の気付きと工夫が非常に重要であると改めて感じる事
ができました。この受賞をきっかけにさらに我々若手メンバーは精進
を重ねる所存であります。
これからも皆様のご理解とご協力を仰ぎながら活動を続けてまいり
たいと思っております。今後ともよろしくお願い申し上げます。
― 国際会議に出席してみて ―
染色体動態研究分野 渡邊研究室
博士課程3年 丹野 悠司
会議名称:E M B O W o r k s h o p C h r o m o s o m e
Segregation
開 催 地:Archachon, France
開催期間:2008年9月27日∼ 10月2日
発表演題:Phosphorylation of Sgo2 by Aurora B
promotes MCAK localization(ポスター
発表)
この度、EMBOワークショップ・第2回染色体分
配研究会議に参加するにあたり、財団法人応用微生
物学研究奨励会より格別な御援助を賜りましたこと
を心より感謝申し上げます。本会議は、幅広い生物
種における染色体分配の分子機構をテーマとする世
界中の研究者が一堂に会する国際会議で、今回はフ
ランスのアルカションという、ボルドーから車で1
時間ほど走ったところにある海沿いのきれいな町で
行われました。学会会場の前には広く砂浜が広がり、
それに面して多くのレストランやカフェが並び、た
くさんの観光客で賑わっていました。
私は、上記の演題でポスター発表を行ってまいり
ました。ポスターセッションの時間帯は6日間ある
学会の後半であったにも関わらず、学会の初日から
掲示されていたポスターの前では、休憩時間を利用
して活発な議論が行われていました。私も、昼食や
コーヒーブレークの際に会話をした方々に興味を
持って頂き、ポスターを眺めながら議論して頂くこ
とができました。議論の中で多くの方々に面白いと
言って頂けたこと、今後行うべき実験や取り入れる
べき実験手法などに関する多くの有用なコメントを
頂けたことは、大きな収穫となりました。口頭発表
20
のセッションには染色体分配の研究分野における第
一線の研究者の顔ぶれが並び、未公表の興味深い実
験データが次々と発表されていました。時差ボケを
忘れるほどに興奮するセッションが連続する中で、
この分野の進展の速さ、競争の激しさを改めて実感
し、自分もその中できちんと結果を残せるように頑
張っていこうと思いました。また、私の宿泊してい
たホテルには他にも10人ほど学会参加者が滞在して
おり、毎朝、居合わせた人で食事を一緒に取りなが
ら話をする機会がありました。その際には、ヒト、
酵母、カエル、線虫といった様々な研究材料を扱う、
PI、ポスドク、学生が集まり、研究や暮らしに関し
て学会会場とは違う雰囲気でざっくばらんに話をす
ることができました。私が今回最も強く刺激を受け
たのは、これから独立して研究室を主催する、ある
いはしようとしている何人かのポスドク研究者の持
つ雰囲気と意識でした。彼らの議論のレベルの高さ
や、質問の鋭さ、そして研究の世界の厳しさを体現
するかのごとく滲み出ている「もう後がない感」に
直に触れることができたのはとても貴重な経験とな
りました。レベルの高い研究者ほど、より自分に厳
しくしながらも、より研究を楽しんでいる印象を受
けました。同じ分野で研究している私自身も、彼ら
と同等に渡り合える段階に進むべく、これまで以上
に日々の研究生活を大切にしようと思う所存です。
最後に、本学会に参加する貴重な機会を与えて下
さいました財団法人応用微生物学研究奨励会と関係
者の皆様に、改めまして厚く御礼申し上げます。
分子情報研究分野 林 寛敦
機会を得るなど有意義な時を過ごすことができまし
た。当然のことながら、英語力のなさは滞在期間中、
発表に限らず随所で感じられ、普段の生活での英語
能力研鑽の必要性を痛感させられました。また、外
国の研究者は非常に自己主張が強い、
(よく言えば
データのプレゼン能力が高く、
)今後自分自身が世界
を相手に研究を続けていく上で、臆せずにはっきりと
言い切ることの重要性
も認識させられました。
今回の経験を今後の
研究人生に生かせるよ
う、日々研究に勤しみ
たいと思います。
このような貴重な経
験をする機会を与えて
くださった応用微生物
学研究奨励会、ならび
に関係者の方々に再度
深 く 感 謝 い た し ま す。
ありがとうございまし
た。
会議名称:Neuroscience2008
開 催 地:アメリカ合衆国 ワシントン D. C.
開催期間:2008年11月14日∼ 19日
発表演題:A novel RhoGAP protein, PX-RICS,
regulates the neurite extension
and is involved in NMDA signaling(ポ
スター発表)
この度、財団法人微生物学研究奨励会からのご援
助により、Neuroscience2008に参加する機会を頂き
ましたことを深く御礼申し上げます。
当学会はSociety for Neuroscienceによって毎年開
催されており、世界中から神経科学全般に携わる研
究者が一同に集まる、参加者人数は約25,000人にも
達する非常に大きな学会であります。本年度はワシ
ントンD.C.のConvention Centerにて開催されまし
た。その人数が示すとおり、そこで発表される研究
テーマは多種多彩であり、膨大なポスター発表, オー
ラルセッションがありますので、どのような研究
テーマでの発表が多いかを観察することで、神経科
学界における今年度の、あるいはこれからのトレン
ドを知ることが可能です。私の雑感では、iPS細胞
誕生の気運を受けて、Neural Stem Cellの分化に関
する研究、一般的な細胞生物研究でも最近注目され
ている局所的なRNA代謝、蛋白質合成に関しての
研究の多さが目に付いたような気がします。
私は、記憶や学習に重要とされるNMDA受容体シ
グナル伝達経路に関わる新たな分子の発見とその機
能解析についての発表を行わせていただきました。
自分自身、初の国際学会であり緊張しましたが、同
じ分子に関して我々とは若干異なった角度から研究
しているアメリカの研究グループの方と討論をする
21
訃報
有名ですが、特に、抗癌剤多剤耐性を示す癌細胞の細
胞膜にP糖蛋白質が発現し抗癌剤を細胞外に排出する
ポンプとして機能していること、P糖蛋白質を阻害す
ることにより多剤耐性を克服できることを世界で初め
て証明したこと、さらに抗癌剤耐性克服薬の開発研究
に多大な貢献をしたこと、等は国際的に高く評価され
ています。これらの研究業績により、高松宮妃癌研究
基金学術賞、(財) 癌研究会学術賞、日本薬学会賞、日
本癌学会吉田富三賞、紫綬褒章等を受賞されました。
先生は、平成11年度から平成16年度まで、文部科学
省科学研究費補助金特定領域研究『癌研究の総合的推
進に関する研究』の代表を努められ、日本の癌研究全
体の推進に大きな貢献をされました。平成15年7月に
鶴尾隆 名誉教授
日本学術会議会員に就任され、生物系薬学研究連絡委
員会委員長、がん研究専門委員会委員長を務められま
鶴尾隆先生は、病気療養中の処2008年12月16日ご逝
去されました。享年65歳でした。
した。また、日米がん研究協力事業(日本学術振興会)
治療部門コーディネーター、文部科学省学術審議会専
門委員、文部科学省科学技術・学術審議会科学技術振
先生は、昭和18年7月11日香川県にお生まれになり、
同42年3月東京大学薬学部を卒業、同47年3月東京大
学大学院薬学系研究科博士課程を修了され、薬学博士
の学位を授与されました。同年5月東京大学薬学部文
部技官に採用となり、同49年5月東京大学薬学部助手、
同年12月米国セントルイス大学・分子ウィルス学研究
所研究員、昭和51年4月米国カリフォルニア大学・分
子生物学研究所研究員、昭和52年4月財団法人癌研究
会・癌化学療法センター研究員、昭和58年10月同主任
研究員、昭和61年7月同基礎研究部長を経て、平成元
年5月東京大学教授(応用微生物研究所)に就任され、
平成5年4月改組により東京大学教授(分子細胞生物
学研究所)に配置換えとなり、平成18年3月東京大学
を定年退官されました。この間平成11年4月から平成
15年3月まで東京大学分子細胞生物学研究所長を併任
され、大学と研究所の管理運営にご尽力されました。
東京大学を退官後、平成18年4月財団法人癌研究会癌
化学療法センター所長に就任され、亡くなる直前まで
癌研究と後進の指導にあたってこられました。
先生のご研究は、癌化学療法及び癌分子標的治療研
究における数多くのパイオニア的研究業績が世界的に
興調整費審査委員、厚生労働省中央薬事審議会委員等
の公職を歴任され、日本の学術振興に貢献されました。
学会活動におきましては、日本癌学会会長、日本癌転
移学会会長、日本癌学会理事、日本薬学会評議員、日本
生化学会評議員、癌分子標的治療研究会会長等の要職
を歴任され、国際癌化学療法シンポジウム(International
Symposium on Cancer Chemotherapy)の代表世話人を
長年にわたり務められ、学会の発展に貢献されました。
また、日本癌学会学術雑誌Cancer Science編集長、米国
癌 学 会Cancer Research(Associate editor)、Oncology
Research(Asian editor)、Cancer Chemotherapy and
Pharmacology、Japanese Journal of Clinical Oncology、
Biological & Pharmaceutical Bulletin、Journal of
Experimental Therapeutics & Oncology、Apoptosis等、
学術雑誌の編集委員を努められ、国際的な学術振興に
も多大な貢献をされました。
先生は、周りを暖かく包みこんでしまう包容力のあ
る笑顔と実行力で、癌研究の分野において絶大なリー
ダーシップを発揮されてきました。先生のにこやかな
生前の面影を偲びつつ、謹んでご冥福をお祈り申し上
げます。
22
分生研ホームカミングディを開催
11月15日土曜日午後2時から、総合研究棟2階の会
議室において分生研ホームカミングディが開催されま
した。今年は昨年と大きく趣向を変えて、講演と講演
後の研究室ツアーの二本立てとしました。そして講演
の合間には、コーヒーとお菓子のサービス、御酒(う
さき)の試飲の時間を設けました。ご来場者の方々に
分生研という ホーム でリラックスして楽しんで頂こ
うというものです。
午後2時、宮島篤所長のご挨拶から始まりました。ご
来場戴いたお客様は徐々に増え、総勢46名となりまし
た。高校生から名誉教授までと幅広くお集まりで、メ
モを熱心に取る方が多数いらっしゃいました。講演の
トップは、秋山徹教授による「細胞が癌化する仕組み
について」です。
先日亡くなられたジャーナリスト筑紫哲也氏を導入
に、基本的にはがんは細胞が持つ遺伝子の異常による
ものであって、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、修復遺
伝子が異常になると、発がんへの引金がひかれるとい
うお話をされました。具体的なデータを用いられ、ご
来場者のアンケートによると特に医薬関連の要職にあ
るOB・OGから、ご好評をいただきました。
つぎに橋本祐一教授に「新しい くすりの作り方」
をご講演いただきました。
内容は選択毒性に依存した創薬から、新しい作用を
基盤とした創薬のお話です。例えば妊娠中の女性が服
用すると奇形を発症することで知られるサリドマイド
は、一方でがん細胞の毛細血管の成長を阻害する作用
を持つことから、多発性骨髄腫などのがん治療薬とし
て有効です。厚労省が先月、製造販売を認可したことは、
皆様もご記憶に新しいと思います。橋本先生のご講演
も医薬関連の方々に好評であり、アンケートの今後聞
きたい講演として「新しい薬の作り方」を所望される
方もおりました。
ここで、20分間のコーヒーブレイクと御酒(うさき)
の試飲タイムです。
会場には生体超高分子研究分野豊島研究室、核内情
報研究分野、染色体動態研究分野渡邊研究室からご提
供頂いたパネル展示と、バイオリソーシス研究分野か
らお借りした御酒(うさき)に関する展示があり、こ
れらを見学されながら、お客様はコーヒーや御酒(う
さき)を楽しまれました。
後半のトップバッターは、樋口麻衣子助教による「分
生研での研究生活」です。導入部では研究室での年間
行事をお話され、研究生活の一端をご紹介いただきま
した。その後、ご自身の研究成果をお話いただきまし
たことから、研究者を目指す方々に取っては、貴重な
お話だったのではないでしょうか。
23
つぎは藤木亮次研究員による「細胞の個性はどのよ
うに決まるのか?∼遺伝子の発現のしくみを追い求め
て∼」
です。藤木先生にはご自身の修士課程時代に遡り、
これまでの研究生活と研究テーマについてお話をいた
だきました。これから研究者を志す方々にとって、目
標となるご講演だったと思います。
トリを務められたのは、大学院生の山岸有哉さんで
した。演題は「分生研での大学院生活」です。研究室
での日常の出来事、年間行事をお話された後、ご自身
の研究テーマについて講演されました。これから当所
を目指す大学院生にとっては、とても参考になるお話
だったと思います。
講演はこれで終了し、午後5時から研究室ツアーが
始まりました。ツアーには10人のお客様が参加されま
した。初めに創生研究分野に伺い、北尾彰朗准教授に
研究室の概略をご説明いただきました。その後、研究
室のPCにて細胞のモデル画像を拝見しました。
普段、関係者以外の立入りできない場所であるため、
参加者はとても興味深く先生のお話に聞入り、画像に
見入っていました。
つぎに、核内情報研究分野に伺いました。
ご案内いただいたのは、武山健一講師です。
核内情報の研究テーマの概略をお話いただいたあと、
研究室をご案内いただきました。
ここでは研究成果をはじめ、研究生活の楽しさと辛
さ、成果発表までの道のりなど、研究を通じて得られ
る多くの内容のご紹介がありました。また実験現場の
見学では、多くの参加者は研究内容から推測する現場
の雰囲気は予想外のようで、研究に興味をもたれた様
子でした。
最後は、形態形成分野の八杉徹雄助教に研究室をご
案内いただきました。
クイズを出して頂いたり、実際に顕微鏡を覗いても
らい、ショウジョウバエをご覧いただいたりと、参加
者にとっては単なる見学ではなく、体験する見学ツアー
となったようです。
これにて、ホームカミングディは終了いたしました。
昨年に比べ多くの方にご来場いただくことが出来た
ため、研究活動を外部の方々に知って頂く機会が広がっ
たのではないかと考えております。引続きこのような
アウトリーチ活動を推進したく、皆様のご支援・ご協
力を賜りますようにお願い申し上げます。
また当日のアンケートによれば、学生(高校生を含む)
の層では、研究者を志した動機や、研究者に必要な経歴・
専門性に関する体験談も講演のテーマとして、希望さ
れていました。研究や成果の内容の講演とともに、加
えていきたいテーマと考えております。
最後に、休日にも関わらずホームカミングディへご
来場頂きましたお客様、ご講演、ご案内・ご説明をく
ださいました皆様に心より御礼申し上げます。
24
農学部と合同で自衛消防訓練を実施
平成20年10月31日(金)の12時15分から1時間にわた
り、農学部と合同で自衛消防訓練が実施された。
分生研においては、本館2階廊下から出火したとの想
定で、火災報知器の作動、小型消火器による模擬消火
訓練、消防署及び警備係への模擬通報訓練、避難の館
内放送及び各階からの避難訓練を行った。
その後、本郷消防署の梯子車による避難訓練、農学
部自衛消防隊による放水訓練を見学の後、農学部グラ
ンドにて本郷消防署の指導により粉末消火器による消
火訓練をした。当日、風向きによって放射された粉末
が見学者を覆うこともあったが、このことにより、
「もし実際に屋内で消火器を使用した場合、多く
の粉末が部屋に充満し視界不良になる」との教示が本郷消防署からあった。消火器の取扱いについて
心構えができ、実地訓練者、見学者とも大変良い体験になったと思われる。
最後に本郷消防署より、防災・防火に対する心構えなどの講評があり、約400名(うち分生研は約80名)
が参加した訓練は無事終了した。
分子細胞生物学研究所「動物慰霊祭」
高次機能研究分野 内藤幹彦
第11回「東京大学分子細胞生物学研究所実験動物慰
霊祭」は平成20年10月21日
(火)午前11時より、農学部
附属動物医療センター奥の動物慰霊碑前において執り
行われた。当日は秋晴れの空の下83名の参列者があり、
宮島所長の挨拶、内藤動物実験委員長から一年間の動
物実験概要の報告に続いて、教職員・学生等参列者に
よる焼香がしめやかにおこなわれた。
分生研では研究所本館地下のSPFマウス実験施設及
びウサギ飼育室、本館玄関前の新動物舎、そして生命
科学総合研究棟地下の実験動物施設を利用して、多く
の教職員・学生等が遺伝子改変マウスの作製及びその解析、神経系や造血系の初代培養細胞の分離、
タンパク質の精製、抗体の作製などの目的で実験動物を使用している。その数は過去一年間にマウス
約15,000匹、ラット2匹、ウサギ8羽にも上り、これらの動物実験で得られた新しい知見は学会や学
術論文に発表され、それぞれの専門分野において高く評価されている。
ここに分生研の研究活動のために尊い命を捧げてくれた動物たちの御霊に感謝と追悼の意を表します。
分生研における動物実験は今後ますます盛んに行われるようになるものと思われるが、
「動物の
愛護及び管理に関する法律」(平成17年改正)、
「研究機関等における動物実験等の実施に関する基
本指針」(平成18年)を遵守し、動物実験等に関する基本理念である3R
(Replacement, Reduction,
Refinement)を尊重して、必要最小限の動物を用いて最大限の研究成果が挙げられるよう、関係する
皆様方のなお一層の努力をお願いしたいと思います。
25
お店探訪
−ARLEQUIN(アルルカン)−
皇太子妃雅子様 想い出の店
財務会計チーム 新井千恵子
本郷三丁目の交差点にほど近いところにある、ご夫婦で営む素敵なお
店をご存じですか?店内に入ると目を引くのがケーキ?!いや、猫の置
物や猫の本をはじめ、ハイセンスな絵や版画が飾られていてなんとも落
ち着いた雰囲気の所です。自然素材を使い添加物を一切使っていないお
料理やスイーツの数々に驚愕します。奥様がお料理を作り、旦那様が接
客を担当していて何とも微笑ましい限りです。席は20席弱と少ないので、
ランチタイムは空き待ちの列ができることもしばしばですので、分生研
から行かれる場合には時間に余裕をもって行かれると良いかと思います。
お食事メニューでお勧めは、ダブルプレートと言う、カレーとビーフシチューが一度に味わえるものです。色々
食べたい時にはこれしかないって言う感じです。甘いもの好きな方は、ケーキも召し上がって下さい。どれ
も美味しく、種類も豊富で何を食べようか迷ってしまうのではないでしょうか。空き待ちができない方には、
テイクアウトメニューもあります。お店で食べるより、リーズナブルですので、ぜひお試しあれ。一度行けば、
雅子様がお気に入りだったのがきっとわかると思います。
▶住 所:東京都文京区本郷4-1-5
石渡ビル1F
▶電話番号:03-3815-3140
▶最寄り駅:東京メトロ 丸の内線
本郷三丁目駅
▶営業時間:11:00-21:00
▶定 休 日:土、日、祝日
▶H P:http://www.arurukan-hongo.com
○平成20年9月30日付
〈辞職〉
宮地 弘幸 准教授(生体有機化学研究分野)
○平成20年12月31日付
〈辞職〉
石北 央 助 教(生体超高分子研究分野)
○平成21年1月1日付
〈採用〉
石黒啓一郎 助 教(染色体動態研究分野)
■教職員の異動等について
つぎのとおり異動等がありましたのでお知らせします。
編 集 後 記
○平成21年2月1日付
〈採用〉
杉田 和幸 准教授(生体有機化学研究分野)
はじめまして、本号から編集委員を務めさせて頂きます市原
と申します。編集業務を通じて、各研究分野の研究活動へ理解
を深めて行きたいと考えております。新米編集委員ですので、
宮地先生の後任として、分生研ニュース編集委員を仰せつかりま
ご迷惑をおかけすることも多々あることと存じますが、都度ご
した。至らぬ点も多々ありますが、どうぞよろしくお願い致します。
指導頂けますようにお願い申し上げます。
昨年7月に赴任する以前から分生研ニュースを拝読する機会はあり
(事務部 市原 美香)
ました。所外にとって「分生研の顔」である分生研ニュースの編集
をお手伝いする立場にかなり緊張しています。折角の機会ですので、
分生研ニュース第40号
各研究室の方々と研究内容、そして「お店探訪」を通じておいしい
2009年1月号
店を憶えたいと思います。
(生体有機化学研究分野 石川稔)
発行 東京大学分子細胞生物学研究所
編集 分生研ニュース編集委員会(小川治夫、宮地弘幸、成田新一郎、
川崎善博、三浦義治、石川稔、市原美香)
お問い合わせ先 編集委員長 小川治夫
電話 03―5841―1916
電子メール [email protected]
26
H+輸送性ピロホスファターゼの結晶構造解析
放射光連携研究機構 三村 久敏 (助教)
H+輸 送 性 ピ ロ ホ ス フ ァ タ ー
ゼ(H+ PPase) は 膜 蛋 白 質 で あ
り、P型、F型、V型ATPaseとは
異なるイオンポンプグループを形
成する。H+ PPaseはプロトンポ
ンプとして機能し、ピロリン酸
(PPi)を分解してH+を能動輸送す
る。H+ PPaseは植物に普遍的に
存在し、原生生物、真正細菌や古
細菌の一部に分布している。H+
PPaseの生理学的機能は大きく分けて二つある。一つは、膜
を隔てたH+勾配の形成による二次輸送体へのH+駆動力の供
給である。もう一つは、核酸や蛋白質の合成、脂肪酸のβ酸
化といった細胞代謝の副産物として生じるPPiの分解除去で
ある。一方、分子構造はというと、16本の膜貫通ヘリックス
を含む分子量8万の単一ポリペプチドが(図1)
、ホモ二量
体を形成し、これまでに立体構造が明らかにされた膜蛋白質
との間に構造の類似性は見出されない。また、H+ PPaseの
分解基質はATPに比べて単純なPPiであることから、ユニー
クなメカニズムの存在が予想される。そこで、H+ PPaseの
卵巣がん幹細胞の腫瘍形成能に関与する転写
ネットワークの解析
分子情報研究分野 那須 亮(助教)
がん組織には未分化性を維持し
ているがん幹細胞とそれ以外の分
化した腫瘍細胞が存在し、そのご
く一部のがん幹細胞のみが強い造
腫瘍能を有することが明らかと
なっている。さらにがん幹細胞は
抗癌剤や放射線に対して耐性を有
し、癌の再発や転移の元凶となっ
ていると考えられている。がん幹
細胞の未分化性と造腫瘍能には強
い相関関係があることが知られており、がん幹細胞の未分化
状態の維持に必要な遺伝子を同定することは、がん幹細胞を
標的とした治療法の開発に直結すると考えられている。最も
研究が進んでいる幹細胞であるES細胞においては、その未
分化状態を維持するのに必要な転写因子群が多数同定されて
おり、我々も特に転写因子・転写制御因子に着目して研究を
進めている。実際に癌細胞の増殖は、がん遺伝子産物である
転写因子c-Junやその転写制御因子Fbl10等によって制御され
ており、腫瘍形成に関与する転写ネットワークの重要性が示
唆されている (Koyama-Nasu et al ., Nat . Cell Biol ., 9, 10741080, 2007)。
日本国における卵巣がんの罹患率は近年増加傾向にある。
さらに、卵巣がんは早期診断が難しく、婦人科がんの中でも
作動機構の解明を目
的 に、X線 結 晶 解 析
による立体構造の決
定を目指して研究を
スタートした。一般
に膜蛋白質の結晶化
は難しいと言われ
る。 実 際、 植 物 組
織 か ら 精 製 し たH+
PPaseを そ の ま ま の
状態で結晶化する試
みは成功していな
い。そのため、二つ
の 工 夫 を 凝 ら し た。
第一に、抗体断片の
利用である。膜蛋白
質の結晶形成では膜から飛び出た親水性部分間の相互作用
が重要となる。抗体断片を結合させることでH+ PPaseの親
水性領域を増大させた。第二に、脂質の添加である。これ
はカルシウムポンプの結晶化で確立された方法であり、H+
PPaseの結晶は脂質を加えることで初めて作製可能となった
(図2)
。現在のところ、得られている結晶は改良を要し、す
ぐに解析を始められる段階にはないが、数年の間には構造決
定を行い、H+ PPaseの作動機構に迫りたいと考えている。
死亡率が高いことが知られている。我々は卵巣がん幹細胞を
手術検体より濃縮し、無血清培地を用いて未分化状態を維
持したまま培養することに成功した。この卵巣がん幹細胞
は、血清添加により人為的に分化させることができる。した
がって、未分化状態を維持しているがん幹細胞と分化した腫
瘍細胞のmRNAの発現を比較することにより、未分化状態
の維持に重要な遺伝子を同定することが可能となる。特に現
在行っているマイクロアレイ法は、mRNAを網羅的に解析
できる有効な方法であると考えられる。CD133は種々の臓器
におけるがん幹細胞の表面抗原マーカーとして多数報告され
ている。実際にCD133は未分化な卵巣がん幹細胞で発現が高
く、血清による分化後に著しく減少することを見出した。こ
のCD133の増減を指標としたRNAiライブラリーによるスク
リーニングは、卵巣がん幹細胞の未分化状態の維持に必要な
転写因子・転写制御因子を同定する直接的な方法である。以
上の手法を用いて、卵巣がん幹細胞の腫瘍形成能に関与する
転写ネットワークを明らかにしていきたいと考えている。
27
DNAメチル化制御を介した活性型ビタ
ミンD合成酵素CYP27B1発現制御機構
の解析
金美善、近藤剛史、高田伊知郎、大竹史明、加藤茂明(核内
情報研究分野)
核 内 レ セ プ タ ー 型 転 写 因 子 で あ る ビ タ ミ ンD受 容 体
(VDR)は活性型ビタミンDである1α,25(OH) 2D3をリガン
ドとして標的遺伝子の発現の制御を行い、皮膚や骨、副甲状
腺や腎臓等で機能する事が知られている。1α,25(OH) 2D3は
1α水酸化酵素(CYP27B1)によって合成されるが、興味深
い事にCYP27B 1の発現はVDRによって抑制的に制御される
存的な誘導と、CYP27B1誘導ホルモンであるPTH依存的な
メチル化DNA低下が観察された。更にこのメチル化DNA低
下はMBD4が機能する事を見出した。更にMBD4はPTH依存
的に活性化されるPKCによってリン酸化されメチル化DNA
除去反応を引き起こす事、MBD4ノックアウトマウスにお
いてPTH依存的なCYP27B1の発現誘導が観察されず、腎臓
CYP27B1プロモーター上におけるPTH依存的なメチル化
DNAの低下も観察されなかった。
以上の結果から、今回1α,25(OH) 2D3 依存的なCYP27B1
発現の抑制・PTH依存的なCYP27B1発現の誘導の分子機構
としてDNAメチル化反応が鍵となる事を見出した(図)。
この様な遺伝子発現調節機構は他にも存在すると考えられ、
今後の研究の発展が期待出来る。
事で、1α,25(OH) 2D3 量が調節されている。我々はVDR依
存的なCYP27B 1発現の抑制に関わる転写因子としてVDRと
相互作用するVDIRを同定したが、VDIRと相互作用する転写
共役因子群、更には1α,25(OH)2D3再合成の為のCYP27B1発
現再誘導の分子機構に関しては不明であった。そこで我々は
VDIRの相互作用因子群を生化学的な手法用いて精製・同定
を行った。その結果DNAメチル化酵素Dnmt1,3bを同定した。
そこでCYP27B1プロモーター上におけるメチル化DNA(メ
チルシトシン)の誘導を検討したところ、1α,25(OH) 2D3依
スキャフォールド分子PAKによるAktの
選択的機能制御
キャフォールド分子」であることを見出した(Higuchi et al.,
Nat. Cell Biol., 2008)
。しかもPAKは、活性型Racと結合し構
造変化を起こしてはじめてPDK1ならびにAktと結合するた
め、Racを活性化するシグナルに依存してAktを活性化する。
樋口麻衣子、大西啓介、後藤由季子 (情報伝達研究分野)
そして興味深いことに、PAKはAktの基質全てのリン酸化を
促進するのではなく、一部の基質のみのリン酸化を促進する
Aktは、細胞の増殖・生存・運動など、様々な機能を持つ
キナーゼである。細胞運動性を制御する際、Aktは低分子
量GTPase Rac/Cdc42の下流で活性化し、細胞運動性を上昇
という結果を得た。さらに、PAKがAktの持つ様々な機能の
うち、細胞運動・浸潤性に関わる一部の機能を選択的に制御
している可能性を示唆する結果を得た。これまで、Aktがど
させることが我々の以前の研究から明らかになっていたが、
のようにして様々な機能をコンテクストにより使い分けてい
Rac/Cdc42の下流でどのようにAktが活性化されるのか、そ
るのか、というメカニズムはほとんどわかっていなかったが、
のメカニズムは不明であった。今回我々は、Racの下流で活
今回我々はそのメカニズムの1つを明らかにした。
性化するエフェクター分子の中で、PAKというキナーゼに
注目し、PAKがAktの活性化に関わる可能性について検討を
Higuchi, M.*, Onishi, K.* et al., Nat. Cell Biol., 10(11):1356-
行った。RNA干渉法を用いてPAKをノックダウンすると、
64(2008)
活性型Rac過剰発現あるいは増殖因子刺激依存的なAktの活
性化が抑制され、また、PAKを細胞に発現するとAktのリン
酸化が上昇することがわかった。このとき面白いことに、キ
ナーゼ不活性型PAKを発現した場合にもAktが強く活性化さ
れることがわかり、PAKはキナーゼ活性非依存的にAktを活
性化することが示唆された。そこで、PAKによるAktの活
性化メカニズムについて検討したところ、PAKはAktと結
合してAktの膜移行を促進するとともに、Aktの活性化因子
PDK 1とも同時に結合してAktの活性化効率を促進する「ス
(*Both authors contributed equally to this work.)
28
活性化型mTOR変異体の単離
プローチした。酵母の遺伝学的トリックを用いて単離した
mTOR変異体は、実際に高いキナーゼ活性を示した。これを
大根陽一郎、高原照直、畠山理広、松崎朋子、野田亮、水島
導入した細胞は、アミノ酸飢餓条件下でも、mTORC1基質
昇、前田達哉(生体超高分子研究分野)
S 6Kと4E-BP1のリン酸化レベルの低下、細胞サイズの縮小、
J. Biol. Chem. 283:31861-31870(2008)
オートファジーの誘導という3つの飢餓応答が阻害されてい
た。これは、mTORの活性が栄養/飢餓応答をinstructiveに
免疫抑制剤ラパマイシンの標的分子として見出された
制御していることを示している。
TORキナーゼは、真核生物に広く保存されたシグナル伝達
オンコジーン産物の例を引くまでもなく、活性化型シグナ
因子である。哺乳類TOR(mTOR)はmTORC1とmTORC2
ル伝達因子変異体は経路の解析に強力なツールとなるもので
という機能の異なる2つの複合体として存在し、ラパマイシ
ある。この変異体が細胞と個体を用いたmTOR研究において
ンはこのうちmTORC1の活性のみを阻害する。細胞をラパ
大いに役に立つことを期待している。
マイシン処理するか、もしくはmTORC1構成因子をノック
ダウンすると、アミノ酸栄養飢餓にさらされた場合と似た挙
動を示すため、mTORC1は細胞が栄養状態を検知し代謝と
成長とを適切に調節する上で中心的な役割を担っていると考
えられている。しかし、アミノ酸栄養によってmTORC1の
機能がどのように制御されているかについて明らかになって
いない現状では、mTORC1は栄養/飢餓応答の制御におい
て単にpermissiveな役割を果たすのみで、応答をinstructive
に誘導するのは別の経路であるという可能性も(少なくとも
形式的には)否定できない。
本研究ではmTORの活性化型変異体を単離し、これによ
り人為的にmTORC1を活性化することによりこの問題にア
リポ蛋白質輸送の分子機構
ATPに対する親和性が上
昇し、ATPの結合、分解
徳田 元(細胞形成研究分野)
が構造変化を引き起こし
Taniguchi, N., and Tokuda, H. J. Biol. Chem. 283, 8538-8544
最終的にLolAにリポ蛋白
(2008).
質が受け渡される。この
Oguchi, Y., Takeda, K., Watanabe, S., Yokota, N., Miki, K.,
とき、LolAの疎水性キャ
and Tokuda, H. J. Biol. Chem. 283, 25414-25420(2008).
ビティは開くと推測され
Watanabe, S., Oguchi, Y., Takeda, K., Miki, K., and Tokuda, H.
ていたが、リポ蛋白質を
J. Biol. Chem. 283, 25421-25427(2008).
結合したLolAに対する蛍
光 物 質bis-ANSに よ っ て
我々の研究室では、リポ蛋白質を選別して外膜に輸送する
その開閉を証明した。
Lolシステムを発見し、その機構解明を試みてきた。大腸菌
S-S結 合 に よ っ て 疎 水
には少なくとも80種類以上の外膜特異的リポ蛋白質があり、
性キャビティの開閉を
その内最も多いLppは、一匹の大腸菌あたり約106分子存在す
制 御 で き るLolA変 異 体
ると考えられている。一方、これを輸送するLol因子は300∼
I93C/F140Cを作製したと
400分子存在するに過ぎない。内膜から外膜に効率よく多数
ころ、これを発現する大
のリポ蛋白質分子を運ぶ機構を詳細に調べるため、輸送中間
腸菌は還元剤が生育に必
体と考えられるリポ蛋白質を結合したLol因子を分離精製し、
須となった。さらに、長さの異なる架橋剤を用いてCys間を
in vitroで解析した。
化学架橋することにより、疎水性キャビティが十分大きく開
輸 送 反 応 の 第 一 段 階 は 内 膜 のABCト ラ ン ス ポ ー タ ー
くことがLolAの機能に必須であることを証明した。
LolCDE複合体が触媒する。リポ蛋白質結合型のLolCDEを分
離し、図のような機構を提唱した。リポ蛋白質の結合により、