1 東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌 1月号(第51号)2014. 1 IMCB Institute of Molecular and Cellular Biosciences University of Tokyo The University of Tokyo 研究分野紹介(発生・再生研究分野) … ……………………… 1~3 目 次 国際会議に出席してみて……………………………………… 16~17 研究最前線……………………………………………………… 4~5 所内レクリエーション報告…………………………………………… 17 受賞者紹介…………………………………………………………… 6 平成25年度動物慰霊祭… …………………………………………… 18 着任のご挨拶………………………………………………………… 6 平成25年度総合防災訓練を実施… ………………………………… 18 第18回分生研シンポジウム… ……………………………………… 7 研究紹介………………………………………………………… 19~21 2013年度分生研所内発表会… ………………………………… 8~10 平成25年度高校生のためのオープンキャンパス開催… ………… 21 留学生手記…………………………………………………………… 11 転出のご挨拶…………………………………………………… 22~23 ドクターへの道……………………………………………………… 12 お店探訪………………………………………………………………… 24 研究室名物行事……………………………………………………… 13 知ってネット…………………………………………………………… 24 海外ウォッチング…………………………………………………… 14 編集後記………………………………………………………………… 24 OBの手記… …………………………………………………………… 15 研究分野紹介 発生・再生研究分野 発生・再生研究分野 教授 宮島 篤 当研究分野は分子細胞生物学研究所が応用微生物研究所の改組により誕生した際に新設されました。その後、 研究所の改組に伴い名称を変更して現在の研究分野となりました。現在、私たちは主に肝臓の発生・再生の機 構およびiPS細胞からの肝組織および膵島の形成などの研究を行っています。 肝臓の発生・分化 当研究分野の発足当時、私たちは血液・免疫系に作用するサイトカインの研究と血液の発生の研究を行って おりました。胎児期の肝臓が主要な造血組織であることから肝臓に興味をもち、10数年前に肝臓の発生・分化 の研究を始めましたが、肝臓の分子細胞生物学的研究は血液・免疫系の研究に比べて著しく遅れていると感じ ました。例えば、肝臓には実質細胞である肝細胞以外にも、胆管や肝臓特有の血管系である類洞を構成する様々 な細胞が存在しますが、肝臓学では肝細胞以外をまとめて非実質細胞という表現が使われておりました。この 状況は、造血幹細胞から各系譜の成熟細胞に至る様々な分化段階の細胞を細胞膜タンパク質の発現を指標に同 定・分離して解析を行っている血液・免疫学とは大きな違いでした。そこで私たちは、血液学的な細胞解析法 を肝臓研究に適応するために、まず肝臓を構成する各種の細胞に発現する細胞膜タンパク質を同定し、それら に対するモノクローナル抗体を作製し、細胞膜タンパク質の発現を指標に肝臓の構成細胞をセルソーターで分 離して培養するシステムの構築を行いました。これは大変労力のかかる研究ですが、かなり長い時間をかけて 各種細胞の分離と培養系を開発してきました。 肝幹細胞は肝臓における上皮系細胞である肝細胞と胆管上皮細胞に分化する能力をもった増殖性の細胞と考 えられていました。胎児期の肝幹細胞とみなされている肝芽細胞は、前腸上皮細胞から心臓由来のFGFおよ び横中隔間充織由来のBMPの作用により発生して、内皮細胞の助けを借りて増殖し肝芽を形成しますが、肝 2 幹細胞については不明でした。私たち は、初期の肝芽に発現する細胞膜タン パ ク 質 と し てDelta-like homolog(Dlk) とEpithelial cell adhesion molecule (EpCAM)を同定し、セルソーターによ る細胞分画と培養により、DlkとEpCAM を発現する細胞集団にin vitroでクローナ ルに増殖して肝細胞と胆管上皮細胞へと 分化する能力をもつ細胞が存在すること を明らかにしました。また、マウス胎仔 肝臓の培養系を構築して、肝細胞や胆管 への分化機構、造血器官としての機能解 析、肝臓特異的な血管系である類洞の構 成細胞の分離と培養による分化の研究な ども行いました。その中で、肝臓の表面 図1 肝構成細胞の細胞膜抗原を指標とする分離と培養 を覆う中皮細胞の肝臓の形成に対する興 味深い重要な役割が明らかになりましたので、簡単に紹介します。臓器の表面を覆う中皮組織は臓器表面の保 護や臓器間の癒着防止機能などが想定されていましたが、その詳細は十分に理解されてはいませんでした。細 胞膜タンパク質の発現を指標に分離した胎生期の肝中皮細胞の遺伝子発現解析から、この時期の中皮細胞は肝 細胞の増殖因子を強く発現していることがわかりました。さらに、胎生期の未分化肝細胞と中皮細胞との共培 養系や中皮細胞の発達に必須の因子であるWT1欠損マウスを使った解析から、肝中皮細胞は単に肝臓の表面 を覆って保護しているだけなく、肝臓の形成に積極的に関与していることが明らかになりました。 肝臓の再生 肝臓は哺乳類においては例外的に高い再生能力を持つ臓器です。マウスやラットでは、肝臓の70%を切除し ても一週間程度で元の重量と機能を回復します。ギリシャ神話にプロメテウスの肝臓がハゲタカについばまれ ては再生するという逸話がありますが、肝臓の高い再生能力は古くから知られていました。1931年には、ラッ トの肝臓の一部を切除することで肝再生を誘導する実験モデルが報告され、肝再生メカニズムに関する研究も 盛んに行われてきました。これまでの研究から、肝重量の大部分を占める肝細胞が分裂してその数を増やすこ とで肝再生を担うと考えられてきましたが、それを直接検証した研究はほとんどありませんでした。 私たちはマウスの肝臓の肝細胞をランダムにβ-Galで遺伝的に標識し、β-Gal陽性細胞の分裂をモニターす るシステムを構築し、70%の部分肝切除後の肝細胞の平均分裂回数を0.7回と推定しました。この結果は、残 存肝細胞が増殖して修復するという従来のモデルから推定される平均1.6回の分裂とは大きく異なります。一 方、imaging cytometerに よ り 肝 細 胞 の サイズを測定したところ、肝切除後には 肝細胞は約1.5倍に肥大化していました。 しかも、この細胞肥大化はDNA合成が誘 導される前に起こること、切除する肝重 量を70%から30%にまで減らすと肝細胞 は分裂せず、肥大のみによって肝臓が再 生することが分かりました。つまり、部 分肝切除により肝細胞はまず肥大し、そ れで肝臓の修復が不十分な場合に細胞分 裂に進むと考えられます。これらの結果 は、長年受け入れられてきた肝再生モデ ルに大幅な修正が必要であること示すも のです。さらに、肝再生においては、肝 細胞の大部分はS期に入るにもかかわら 図2 部分肝切除からの肝再生 3 ず、M期には入りにくく、結果として肝細胞の倍数性が増加すること、また成体肝臓には2つの核を持つ肝細 胞が多く存在しますが、肝再生後にはこの2核の細胞の割合が有為に減少することなど、肝再生において肝細 胞が特殊な細胞分裂を行うことが示されました。 肝再生と肝前駆細胞 肝毒素や胆管の結紮による肝障害では門脈周囲に胆管様構造が増えることが知られており、偽胆管増生とか 細胆管反応ともいわれています。このとき増殖する細胞が肝前駆細胞(liver progenitor cell, LPC)であり肝 再生に寄与すると考えられていましたが、その実体は不明でした。私たちは、DDCという薬剤でこの細胆管 反応を誘導してその細胞に発現する膜タンパク質としてEpCAMとTROP2を同定しました。EpCAM陽性細胞 を分離して培養すると、clonalに増殖して肝細胞と胆管上皮細胞への分化能を備えたLPCが存在することが示 されました。 LPCの出現に関わる支持細胞として、私たちは門脈周囲に存在するThy1陽性細胞を同定し、それがFGF7を 発現することを示しました。そして、その受容体であるFGFR2bがLPCに発現することから、FGF7がLPCの出 現に作用する可能性が示唆されました。そこで、FGF7欠損マウスを解析し、LPCの出現にはFGF7が必須であ ること、さらにFGF7を肝細胞で誘導的に発現 するトランスジェニックマウスの作製により、 FGF7を発現するだけでLPCが出現することを 明らかにしました。また、LPCの出現は肝障害 の緩和に寄与することも示しました。 正常肝臓の胆管はEpCAMを発現しており、 分離したEpCAM陽性細胞集団にはin vitroで 増殖して肝細胞と胆管細胞への分化能を備え た細胞が存在することから、LPCは胆管に由来 する可能性が示唆されました。一方、最近の 細胞系譜解析から、LPCが肝細胞由来であるこ とを示唆する結果も報告されておりますので、 現在LPCの起源は混沌としており、議論がある ところです。私たちは独自の実験系を構築し てこの問題を検討中です。 iPS細胞からの肝臓組織および膵島形成 図3 肝臓は代謝や解毒の中心臓器ですので、創薬研究には機能的肝細胞が必要です。高機能の肝細胞は入手困難 ですので、ESやiPS細胞から肝細胞を造り出す試みは世界中で盛んに行われています。しかし、成熟肝細胞を 作ることはできていません。そもそも肝臓から分離した機能的な肝細胞は培養により急速に機能を失うことか ら、肝細胞単独で高い機能発現を期待するのは困難であると思われます。そこで、私たちはiPS細胞から肝細 胞のみならず肝臓の類洞内皮細胞など肝非実質細胞も分化誘導して、それらを組み合わせて高機能性肝組織を 構築することを目指しています。 膵島はインスリン産生細胞やグルカゴン産生細胞などからなる膵臓内の内分泌組織です。インスリン依存性 糖尿病の究極的な治療法として膵島移植がありますが、ドナー不足から一般的な治療法とはなっていません。 そこで、インスリン産生細胞をESやiPS細胞から作る試みが世界中で活発に行われていますが、少数のインス リン産生細胞が作られるだけで実用化には至っていません。私たちは、マウス胎児の膵臓組織の細胞培養系に てインスリン産生細胞やグルカゴン産生細胞を含む膵島様の3次元構造が形成されることを見いだし、それを 高血糖マウスに移植することで血糖値を正常化することを示しました。このように、in vitroでも膵島構造を 作ることが可能であることが明らかになりましたので、この培養系をマウスiPS細胞からの膵臓系細胞への分 化誘導系と組み合わせることで、機能的な膵島の形成に成功しました。さらに、これをヒトiPS細胞に応用し て機能的な膵島を作ることにも成功しました。この培養系を基盤として大量の膵島を作り実用化につなぐ研究 を、文部科学省の再生医療実現拠点ネットワークの「iPS細胞を基盤とする次世代型膵島移植療法の開発拠点」 として学内外の多くの研究者と共に行っています。 4 植物におけるmicroRNAを介した翻訳抑制 機構 条件が明らかとなったことにより、これまで謎であった、植 物のmicroRNAが制御する遺伝子の全体像が明らかになる可 能性がある。 岩川弘宙・泊幸秀(RNA機能研究分野) Molecular Cell, 52, 591‒601, 2013 低 分 子 の 非 コ ー ドRNAで あ るmicroRNAはArgonaute (AGO)タンパク質とRNA induced silencing complex(RISC) を形成し、相補的な配列をもつmRNAの発現を負に制御す る。植物のmicroRNAは標的を切断すると共に翻訳を抑制す ることが知られていたが、どのようにして標的の翻訳を抑制 するのかという詳細な分子機構はこれまで明らかとされてい なかった。 我々は植物培養細胞に由来する試験管内系を用いること により、シロイヌナズナAGO1-RISC(AtAGO1-RISC)がも つサイレンシング機能を生化学的に切り分けることに成功し た。その結果、AtAGO1-RISCは動物のRISCとは異なり、標 的mRNAのpoly (A)鎖を分解することなく翻訳の開始段階を 抑制することが明らかとなった。興味深いことに、AtAGO1RISCがタンパク質コード領域に結合した場合、翻訳開始を抑 制するだけではなく、翻訳伸長、つまりリボソームの進行を 物理的に阻害することが明らかとなった。 次にどのようなmRNAがmicroRNAによる翻訳抑制を受け るかを調べた。すると、microRNAとほぼ完全に相補的な配 列を持つmRNAの翻訳は強く抑制されたが、動物のように microRNAの一部だけが相補的な配列を持つmRNAの翻訳は 全く抑制されなかった。このように、標的mRNAを認識する Na+結合状態のナトリウムポンプの結晶 構造 金井隆太§、小川治夫§、Bente Vilsen*、Flemming Cornelius*、 豊島近(膜蛋白質解析研究分野、*Department of Biomedicine, Aarhus University, Denmark) (§同等貢献) である。サイトIIIは膜貫通へリックスM5cの傾きを調節して、 加水分解反応を担うPドメインの動きを制御している。 従って、 適切な大きさを持つイオン、すなわちK+ではなく、Na+のサ イトIIIへの結合がM5cの傾きを正しく制御し、加水分解反応 を導いていることが分かった。このようにナトリウムポンプ はNa+の選択的、効率的な輸送のために驚くべき緻密な仕組 みを持っていることが明らかになった。 Nature , 502, 201-206(2013) ナトリウムポンプはP型ATPaseに属し、全ての動物細胞 に発現するイオンポンプ蛋白質である。ナトリウムポンプは ATP1分子当たり3個のNa+を細胞内から細胞外へ、2個のK+ を細胞外から細胞内へ能動輸送し、神経興奮や心臓の拍動等 の生命活動の基盤を作り出す重要な膜蛋白質である。我々は 2009年にK+と結合した状態のナトリウムポンプの構造を決定 したが、今回新たにNa+と結合した状態の構造を2.8Å分解能 で決定することに成功した。 その結果、ナトリウムポンプはNa+のイオン選択性と効率 的な輸送のために、2つの大きな特徴を持つことが分かった。 1つは3個のNa+と段階的、共役的に結合することである。す なわち、3つのNa+結合部位(サイトI-III)うち、最初の結合 部位(サイトIII)にNa+が結合すると次の結合部位(サイトI) さらに次の結合部位(サ が形成され、 そこにNa+が結合すると、 イトII)が形成される、という仕組みである。こうして形成さ れたNa+結合部位は空間的に狭く、またサイトIとIIのNa+の間 の距離は3.4Åでとても近い。K+やCa2+ではこのような構造的 制約をクリアできない。もう1つの大きな特徴として、サイ トIIIへのNa+の結合がATP加水分解反応を制御していること 図の説明 ナトリウムポンプのNa+結合状態の結晶構造とそのNa+結合 部位 (a)Na+結合状態のナトリウムポンプの構造。ナトリウムポ ンプはαサブユニット、βサブユニット、FXYD蛋白質から なる複合体である。3カ所のNa+結合部位はαサブユニット の膜貫通領域内に存在する。 (b, c)Na+結合部位の構造で、 膜に対して垂直に細胞質側から見た図。接触可能な表面を青 いネットで示し、結合したNa+をピンクで、仮想的に当ては めたK+を黄緑で示した。Na+は空間的に当てはまるが、K+で はネットからはみ出して収まらないことが分かる。 5 タンパク質が形成する複合体立体構造を 予測する ある程度可能でしたが、タンパク質-タンパク質複合体のよ 竹村和浩、大森聡、郭皓、Raghunadha Reddy Burri、北尾 由エネルギー計算法を応用して、タンパク質が形成する複合 彰朗(計算分子機能研究分野) J. Chem. Phys ., 137, 215105(2012) Chem. Phys. Lett. , 559, 94-98(2013) . Proteins , 81 (6) , 1005-1016(2013) . うに結合する分子が巨大な場合、従来法では計算不可能でし た。そこで我々は、京大の松林伸幸先生が開発した溶媒和自 体の結合自由エネルギーを高速で評価する方法を開発しまし た。この方法を用いると、タンパク質-低分子複合体だけで なく、タンパク質-タンパク質複合体の候補からも、正解に 近い立体構造を選び出せることを示しました。また、この前 段階として、サンプリングで生成した数万~ 100万の候補構 あるタンパク質の立体構造が既に解かれているとき、その 造を数百構造程度まで絞り込む手法を開発しました。ここま タンパク質が他の分子と形成する複合体の立体構造を予測す で絞り込めば、前述のエネルギー計算法で、正解に近い構造 る問題をドッキング問題といいます。ドッキング問題は、複 を選び出せます。 合体の立体構造の候補を多数生成するサンプリングの段階 これらの計算は、答えがわかっているベンチマークセット と、候補を評価して尤もらしいものを選び出すスコアリング に対するものでしたが、現在は未知の具体的な問題や、計算 の段階とに分けて考えることができます。最近では、複合体 法の更なる検証を進めています。 を形成する際にタンパク質の立体構造が大きく変わらない場 合に限れば、正解に近い立体構造を含んだ数千から数万程度 からなる候補群を容易に生成できるようになってきました。 つまり、現在ではスコアリングの段階がドッキング問題な主 なネックとなっています。 正確なスコアリングを行うためには、従来のように精度に 問題のある簡便な評価法を用いるのではなく、複合体の周り にある水などの影響を原子レベルのモデルで考慮した上で、 結合エネルギーを正確に評価する必要があります。このよう な精度の高い計算は、タンパク質-低分子複合体の場合には NotchリガンドDll1は細胞分裂時に非対称 に継承され、成体脳の神経幹細胞の維持 に関わる 川口大地、古舘昌平、河合宏紀、穂積勝人、後藤由季子(情報 伝達研究分野) Nature Communications , 4: 1880. doi: 10.1038/ncomms 2895(2013). 哺乳類の成体の脳には少なくとも二カ所(脳室下帯と海馬) において神経幹細胞が存在し、一生に渡りニューロン新生を 行っている。しかし、どのようなメカニズムにより成体神経 幹細胞が長期間維持されているのかについては不明な点が 多い。造血系などの成体組織幹細胞は、その周囲に存 在する幹細胞ニッチからの微小環境因子(分泌因子や 細胞膜上の因子など)によって維持されていることが わかってきた。しかし、成体神経幹細胞の維持を担う ニッチ細胞の実体は明らかではない。これまでの研究 から、成体神経幹細胞におけるNotchの活性化が成体 神経幹細胞の長期維持に重要であることが示唆されて いた。膜タンパク質Notchは周囲の細胞が膜上に提示 するリガンドによって活性化するため、Notchリガン ド発現細胞がニッチ細胞として機能する可能性を考え た。そこで、脳室下帯におけるNotchリガンドDll1の発現を 調べたところ、Dll1発現細胞が成体神経幹細胞に隣接して存 在することがわかった。次に、 Dll1を成体脳においてコンディ ショナルノックアウトした結果、脳室下帯におけるNotch活 性の減少と成体神経幹細胞数の顕著な減少がみられ、Dll1発 現細胞こそが成体神経幹細胞の維持を担うニッチ細胞である ことが強く示唆された。さらに興味深いことに、Dll1が神経 幹細胞の細胞分裂時に一方の娘細胞にのみ非対称に分配され ることを発見し、Dll1を継承した娘細胞が分化すること、一 方でDll1を継承しなかった娘細胞は未分化維持されることを 明らかにした。これらの結果から、成体神経幹細胞は分裂時 にDll1を非対称に分配し、Dll1を継承した娘細胞がもう一方 の娘細胞の未分化維持を担うニッチ細胞になるというモデル を提唱した(図) 。 6 受賞者紹介 受 賞 者 名:深谷 雄志(RNA機能研究分野 博士課程3年) 賞 名:第15回日本RNA学会年会 青葉賞 受 賞 日:平成25年8月5日 受賞課題名: 「microRNAはeIF4Aの解離を促進することで翻訳を阻害する」 着任のご挨拶 生体有機化学研究分野 講師 藤井晋也 2013年12月1日付で、生体有機化学研究分野(橋本祐一教授)に講師とし て着任いたしました藤井晋也と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 私は、2013年11月まで、東京医科歯科大学の生体材料工学研究所に助教と して勤務しておりました。またそれ以前は製薬企業の研究所、および私立大 学の薬学部に務めておりました。ミッションの異なる様々な環境で研究する 機会を頂けたこと、また今回新たに分生研という素晴らしい環境で研究活動 を行えることになりましたこと、ご指導いただいた先生方や共同研究者の 方々、共に実験研究を行ってきた学生の皆様に感謝いたします。私はこれまで、有機化学を基 盤とした創薬化学研究、ケミカルバイオロジー研究に従事してきました。特に、核内受容体の 機能を調節する低分子化合物や新規キナーゼ阻害剤等の創製を行い、医薬品リード化合物の開 発を目指してきました。これからは、今まで同様に化学に軸足を置きつつも、分生研および研 究室のミッションを自覚し、生物学研究に貢献できる方法論や分子ツールの開発、新規メカニ ズムを有する医薬リード化合物の創製に挑戦してまいりたいと思います。浅学の身で至らぬ点 が多々あるとは存じますが、研究所および研究室の発展に少しでも貢献できるように精進して まいりますので、ご指導ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。 7 第18回分生研シンポジウム 担当 ゲノム情報解析研究分野 中川優里 平成25年11月29日に東京大学弥生講堂にて、公益 財団法人応用微生物学・分子細胞生物学研究奨励 会との共催により、独立行政法人 科学技術振興機 構/戦略的創造研究推進事業(CREST)のご支援の もと、恒例の分生研シンポジウムが開催されまし た。今回は、ゲノム情報解析研究分野・白髭研究室 が当番となり、 『SMC(Structural Maintenance of Chromosomes)proteins from molecule to disease』 というテーマにて、この分野の最前線で活躍されて いる国内外の研究者に最新の研究成果を発表してい ただきました。会場には、朝早くからの開催にもか かわらず、予想を上回る100名を超える参加をいた だき、このシンポジウムのために誠心誠意準備して きたことが報われたようで、主催者側として参加の 皆さまには大変感謝しております。また、どのご講 演も活気のあるディスカッションが行われ、座長を 引き受けてくださった先生方、ご講演していただい た先生方にあらためて厚く御礼申し上げます。 私自身、不行き届きのところも多々あったと存じ ますが、ご協力いただいた方々の御陰様で無事にシ ンポジウムおよび懇親会を終えることができまし た。この場を借りて心から御礼申し上げます。最後 に、今後益々分生研が発展することを祈念して御礼 の言葉とさせていただきます。 以下、 「演題名」(所属)講演者名 「Functional dissection of condensin I by using recombinant subunits」(Riken, JP)Dr. Tatsuya Hirano/ 「Structural studies of condensins」 (KAIST, KR)Dr. Byung-Ha Oh/「Condensin resolves interference between mitotic gene transcription and chromosome segregation」 (IMCB, JP)Dr. Takashi Sutani/ 「Human Disorders of Cohesin」(CHOP, US)Dr. Matt Deardorff/ 「Mechanism of Transcriptional Dysregulation in Cornelia de Lange syndrome: Novel insight from Novel Gene Identification」(IMCB, JP) Dr. Kosuke Izumi/「The major mechanism of chromosomal instability in cancer cells」(IMCB, JP)Dr. Yoshinori Watanabe/「The landscape of somatic mutations in Down syndrome-related myeloid disorders」(Kyoto Univ., JP)Dr. Seishi Ogawa/「Cohesin regulates synapse formation and higher brain function in mice」(Osaka Univ., JP)Dr. Toshihide Yamashita/「The Scc2 (NIPBL)/Scc4(Mau2)complex acts in sister chromatid cohesion and transcriptional regulation by controlling nucleosome positioning」(Cancer Research UK, UK)Dr. Lidia Lopez-Serra/ 「Biochemical reconstitution of topological DNA binding by the cohesin ring」(Cancer Research UK, UK)Dr. Frank Uhlmann/「Regulation of cohesin dynamics in entry into mitosis」(Nagoya University, JP)Dr. Tomoko Nishiyama/ 「Cohesin’s ATPase activity couples cohesin loading onto DNA with cohesion establishment」 (IMP, AT)Dr. Jan Michael Peters/ 「Coupling of cohesin acetylation to the process of DNA replication in Xenopus egg extracts」 (Osaka Univ., JP)Dr. Tatsuro Takahashi/ 「Cohesin and DNA topology control the chromosomal localization of the Smc5/6 complex」 (Karolinska Inst., SE)Dr. Camilla Sjogren/ 「Human syndromes and SMC Complexes」 (UMCU, NL)Dr. G.W.van Haaften/「Smc5/6-mediated regulation of replication progression contributes to mitotic chromosome assembly」(Cancer Inst., JP) Dr. Toru Hirota/(敬称略) 会場内の様子 農正門前に設置した立看板 講演の模様 ポスター 8 2013年度分生研所内発表会 去る12月9日(月)に、2013年度分生研所内発表会・懇親会が 開催されました。今年度は、生体有機化学研究分野が幹事を務め させていただきました。開催にあたり、事務の方々をはじめ、多 くの方々のご協力をいただきました。生体有機化学研究分野を代 表して、厚く御礼申し上げます。また、幹事という大役を任され、 うろたえていた自分を助けてくれ、仕事を快く手伝ってくれた生 体有機のメンバーに感謝致します。 この場をお借りして、本年度の所内発表会のご報告をさせてい ただきます。 本年で15回目を迎えました所内発表会は、分生研本館102会議室 にて、10時から17時まで行われました。14研究分野の代表者の方 による研究成果の発表と、審査委員を始めとする多くの方々との 活発な討論が行われ、研究分野を超えた幅広い議論が行われ、参 加者の方々にとっては貴重な経験になったと思います。以下に本 年度の所内発表会における発表者とその題目を御紹介させていた 生体有機化学研究分野 沼館慧剛 脳神経回路研究分野 矢野 朋子 (修士課程2年) 「キイロショウジョウバエにおける体性感覚中枢の構造と機能 の解析」 膜蛋白質解析研究分野 前田グループ 石井 友喜 (修士課程2年) 「TOR経路の新規制御機構の探索」 発表形式は、プロジェクターによる発表15分、質疑応答5分で 行っていただきました。審査形式は、各研究分野から2名ずつの 審査員を選出していただき、1発表者に対して8名が審査を担当 しました。審査基準は、従来通り、①発表内容②プレゼンテーショ ン③質疑応答④応用性及び将来性の4項目とし、それぞれ5段階 の評価を行っていただきました。このうち①、②、③の合計点を 優秀賞の選定に、④を審査員特別賞の選定に用いました。 審査の結果、以下の方々が2013年度所内発表会優秀賞および審 だきます(敬称略)。 査員特別賞を受賞されました(敬称略)。おめでとうございます。 染色体動態研究分野 明楽 隆志 (博士課程3年) 一箱をそれぞれ贈呈させていただきました。また、将来性の高い 「分裂期における染色体配列のメカニズム」 分子情報研究分野 鴨志田 祐己 (博士課程3年) 「新規RNA結合タンパク質D8による寿命・代謝制御機構の解明」 神経生物学研究分野 上岡 雄太郎 (修士課程2年) 「CREBを用いた記憶に関わる新規神経の探索」 発生再生研究分野 佐藤 郁 (博士課程3年) 「オンコスタチンMによる骨髄造血環境の制御機構の解明」 RNA機能研究分野 深谷 雄志 (博士課程3年) 「microRNAによる遺伝子発現制御の解析」 病態発生制御研究分野 青島 圭祐 (博士課程3年) 「マウス受精卵前核期リプログラミングの解析」 計算分子機能研究分野 山守 優 (博士課程3年) 「MuSTAR MD: Multi-scale Sampling using Temperature Accelerated and Replica exchange Molecular Dynamics」 ゲノム情報解析研究分野 坂田 豊典 (博士課程1年) 「コンデンシンⅠによる転写制御を介したヒト分裂期染色体構 造の制御機構」 心循環器再生研究分野 平林 かずみ (修士課程2年) 「心筋から生み出されるペースメーカー細胞の運命決定メカニ ズム」 生体有機化学研究分野 境 太希 (修士課程2年) 「膠芽腫幹細胞を標的とした新規sirtuin2阻害剤の創製研究」 細胞形態研究分野 北又 学 (博士課程1年) 「脂質膜結合に関与するアンキリンリピートタンパク質の同定」 蛋白質複合体解析研究分野 陳 鑑行 (博士課程2年) 「Purification and Crystallization of Exocyst Subunit Sec10」 入賞者には、キンドルペーパー、ラクーアペアチケット、みかん 研究をなさった審査員特別賞の受賞者の方には、日本酒を送らせ ていただきました。 優秀賞 第1位 明楽 隆志 染色体動態研究分野 博士課程3年 第2位 深谷 雄志 RNA機能研究分野 博士課程3年 第3位 青島 圭祐 病態発生制御研究分野 博士課程3年 第3位 矢野 朋子 脳神経回路研究分野 修士課程2年 特別賞 鴨志田 祐己 分子情報研究分野 博士課程3年 境 太希 生体有機化学研究分野 修士課程2年 優秀賞 第1位 「分裂期における染色体配列のメカニズム」 染色体動態研究分野 明楽 隆志(博士課程3年) 諸君、 私は所内発表会が好きだ。 諸君、 私は所内発表会が好きだ。 諸君、私は所内発表会が大好 きだ。 発表準備が好きだ。リハーサ ルが好きだ。発表本番の緊張感 が好きだ。懇親会が好きだ。優 秀賞発表が大好きだ。 総合研究棟で、IML棟で、生命科学総合研究棟Bで、本館で、 この分生研で行われるあらゆる所内発表会が大好きだ。 朝一番の発表のために聴衆がどんどん集まってくるのが好きだ。 プロジェクタとの接続トラブルは肝が冷える。座長の挨拶に続いて、 いよいよ発表が始まると心が踊る。極めつけのデータを示したスラ イドで、会場から軽いため息を上げさせられたら最高だ。 9 審査員の方々が、点数を書き込んでいる時間が好きだ。ライバル にありがとうございます。自分の発表 だと勝手に決めつけた相手の素晴らしい発表を聞くのが大好きだ。 内容はやや不足しているかな、とも思 …と、今年度分生で話題になりました講演をパロディにしてし いましたが、たくさんのご質問を発表 まいました。不快感を覚えた方がいらっしゃいましたら申し訳あ 時やその後にいただいたり、審査員の りません。 皆様からも貴重なご意見ご質問を頂き 今回、1位を獲れ、こんな調子に乗った文章が書けるのも、日 ました。私の発表を興味を持って聴い 頃からディスカッションし、発表練習にも何度もお付き合い下さ てくださったことを皆様方に深く感謝 いました渡邊研の皆さんと奥さんのおかげです。 致します。 最後に、幹事を務められた生体有機化学研究分野の皆様、審査 私は北海道大学より指導委託制度を 員及び発表を聞いて下さった皆様にお礼申し上げます。ありがと 利用しまして、本研究所において研究 うございました。 をさせていただいています。その期間 も平成26年1月末までとなっており、現時点で残りの期間はわずか 優秀賞 第2位 「microRNAによる遺伝子発現制御の解析」 RNA機能研究分野 深谷 雄志(博士課程3年) 1ヶ月半しかありません。その中でこうした所内の発表会におきま して評価していただいたことはとても嬉しいことですし、今まで自 分のしてきたことに対して改めて自信を持つことが出来ました。 さて、第三位の商品はみかんでした。しかも4kgとかなりの量。 今回はこのような賞を頂き大変 一人では食べきれないのでラボに置いておきましたが一週間でき 光栄に思います。実は去年も発表 れいさっぱりなくなりました。普段不足がちなビタミンCを大量 の機会を頂いたのですが、厚かま に摂取して、無事に年末を乗り切ることができそうです。ところ しくも今年も参加させて頂き感謝 で、皆様食生活は気にされているとは思いますが、私はほとんど いたします。今回私は、microRNA 気にしていなくてほぼ毎日ラボでレトルトカレーをレンジで温め と呼ばれる小分子RNAが遺伝子発 て食べるという生活です。僕だけでなく他の数名のラボメンバー 現を制御する仕組みについて発表 もレンジでカレーを食べるので、レンジ内はカレーのニオイが充 を行いました。 満してしまっています。そんな折に大量のみかんが手に入ったと これまでに、microRNAが発生や分化、形態形成といった高次 なると、アレを試してみない手はありません。ご存知の方もいる な生命現象、および癌をはじめとする疾患に深く関わることが明 かもしれませんが、みかんの皮をレンジでチンするとレンジ内の らかとなっています。このことから、microRNAの働きを適切に ニオイを取ることができます。幹事の方々はきっとここまで予想 制御することで臨床応用を目指そうとする動きも近年急速に高ま してみかんを賞品に選んでくださったのでしょう。この細やかな りつつあります。しかしその一方で、microRNAが遺伝子発現を 心配りには脱帽致しました。 抑制する仕組みそのものの理解は遅れています。その最大の理由 長くなりましたが、このような学生が主体となって企画・運営 として、microRNAは異なる複数の経路を介して遺伝子発現を抑 する研究発表会という機会はとても面白いものだと思います。他 制しており、それらが互いに影響を及ぼしあうために、従来の解 の研究分野の学生の皆様が今何をやっていて、今どこまで進んで 析手法では実験結果を正確に解釈することが困難であったことが いるのか、互いの状況や進捗を知ることで、知識を得るだけでな 挙げられます。そこで私は、細胞抽出液を用いた試験管内反応系 く、お互いに切磋琢磨していけるのではないでしょうか。非常に を構築し、microRNAの各抑制経路を特異的かつ定量的に解析可 勉強になり、そして楽しい発表会でした。幹事の皆様方、本当に 能な新たな実験系を確立しました。詳細な生化学的解析の結果、 ありがとうございます。そしてお疲れ様でした。また来年も盛況 これまで未解明であったmicroRNAによるタンパク質合成阻害の な発表会が開催されますことを願っております。 分子機構を解き明かすことに成功しました。スライド作製に関し ては、データの量を必要最小限に留めて、実験から導かれた結論 が伝わりやすいように工夫をしました。また、視覚的に理解しや 優秀賞 第3位 「キイロショウジョウバエにおける体性感覚中枢の構造と機能の すいようにと模式図を多く取り入れました。 解析」 本発表会を開催するにあたって、幹事を務められた生体有機化 脳神経回路研究分野 矢野 朋子(修士課程2年) 学研究分野の皆様、審査員として参加された各研究分野の皆様に は心から感謝いたします。またお忙しい中、発表にわざわざ足を 所内発表会が終わってから、心ここにあらずという数日間を過 運んでくたさった皆様にも感謝申し上げます。会場からは非常に ごしています。というのも、ま 鋭い質問を頂き、自らの研究を顧みる上でも大変良い機会となり さか自分が3位に選ばれるとは ました。研究を発展させ更なる成果が得られるよう、今後も一所 思ってもいなかったですし、大 懸命実験に取り組みます。疲れたときには、賞品として頂いたス 勢の前で盛大に表彰されるとい パラクーアのチケットでリフレッシュしに行こうと思います。 う経験が今までになかったので、 最後に、本研究を進めるにあたって、泊さんにはいつも親身に 本当に自分が表彰されたのか… ご指導を頂き感謝します。研究室のメンバーは実験の相談や、ディ と、しばらく実感が湧かなかっ スカッションにいつも付き合ってくれます、ありがとうございま たからです。審査員の方々のコ す。研究を陰なから支えてくれている武田さん、清川さん、田代 メントもすぐ読むことができな さんにもこの場を借りて感謝いたします。 かったほどです。その審査員の 皆様からは、たくさんのお褒め 優秀賞 第3位 「マウス受精卵前核期リプログラミングの解析」 病態発生制御研究分野 青島 圭祐(博士課程3年) の言葉を頂戴しました。本当にありがとうございます。だれにで も理解していただけるような発表をすることが目標だったので、 とても嬉しかったです。今回このような立派な賞を頂くことがで きたのも、研究室の先生をはじめ、先輩方、技術職員の方々、家 この度は分生研所内発表会にて第三位という評価を頂き、本当 族の支えがあったからです。ありがとうございました。私は、自 10 分の体がどうして思い通りに動くのか、と思ったことがきっかけ でも光栄なのですが、特別賞まで頂き、 で、脳・神経に興味を持ち、その仕組みを解明するために現在の 感無量であります。 研究を行っています。脳では、神経細胞同士が連絡して回路を形 今回私は、「膠芽腫幹細胞を標的と 成し生物の行動を制御しています。つまり、どのような機能を担っ したsirtuin2阻害剤の創製研究」とい た神経が、どのように次の神経とつながっているのかということ う題目で発表させていただきました。 を全て明らかにすれば、生物の行動がどのように(どのような経 膠芽腫(グリオブラストーマ)は脳腫 路で)脳で制御されるのかということを知ることができます。哺 瘍の一種であり、非常に予後不良であ 乳類の脳は大きく、その神経細胞数も膨大なので、研究をするな る事が知られています。この予後不良 ら昆虫だ!と思い、脳における神経の網羅的解析が進んでいるキ の原因に” 膠芽腫幹細胞” というもの イロショウジョウバエを選びました。ヒトの脳とハエの脳では形 の存在が挙げられ、この幹細胞は現在 も、神経細胞数も大きく異なりますが、その動作原理には共通の の治療に対して耐性を示す事が知られています。この悪の根源と 仕組みがあるはずです。実際、キイロショウジョウバエでは現在 も呼ぶべき膠芽腫幹細胞を殲滅できる治療薬を開発できれば、5 私が取り組んでいる体性感覚以外の感覚については研究が進んで 年生存率10%以下という現在の状況を改善できる可能性がありま いて、ヒトの脳との類似点も多く見つかっています。私はまだま す。そのような中、分生研分子情報研究分野での研究において、 だ分からないことも多く、大変な日々を過ごしていますが、今回 sirtuin2というタンパク質が膠芽腫幹細胞の生存、増殖において重 頂いた賞を励みに、1日でも早く良い結果を示すことができるよ 要であるという知見が得られました。私はこの知見より、膠芽腫 うに、勉強も実験も頑張りたいと思います。また、今回の発表会 治療の未来を担う新規膠芽腫治療薬の開発を目指し、有機小分子 では他の研究室の方々の発表を聞くことができて、とても良い刺 によるsirtuin2阻害剤の創製研究に着手しました。そして、その研 激になりました。本当にありがとうございました。最後になりま 究成果について今回報告させていただきました。 したが、運営をしてくださった生体有機化学研究分野の皆様、私 私の普段の仕事は有機合成により、デザインした化合物を合成 の発表を聞いてくださった皆様に感謝申し上げます。 するのが主です。デザインし、合成した化合物が狙い通りの活性 を示したときが一番うれしい瞬間です。化合物を合成し、活性を 特別賞 「新規RNA結合タンパク質D8による寿命・代謝制御機構の解明」 分子情報研究分野 鴨志田 祐己(博士課程3年) 評価し、その結果をフィードバックし、再度デザイン、合成し、 活性評価の繰り返しで化合物の活性を高めていき、その化合物が 治療薬となりうる可能性をどんどん広げていきます。そのサイク ルを繰り返し、現在では研究開始当初に合成した化合物よりも100 分子情報研究分野所属、博士3年の鴨志田祐己と申します。こ 倍以上活性の高い化合物を創製する事ができています。自分が創 の度、分生研所内発表会の特別賞をい 製した化合物がいつか新規膠芽腫治療薬となり、病気に苦しむ患 ただくことが出来まして、大変光栄に 者の命を助ける事ができるのを夢見て、日々研究に励んでいます。 思っております。この賞を励みに、よ 今回の発表で色々な分野の方に発表を聞いていただき、様々な り一層研究に精進していきたいと考え 質問、コメントを頂く事ができました。分野が異なると、異なる ております。 観点を持つのだなと感じるとともに、もっと広い視野を持って研 私は、現在機能未知なRNA結合タ 究を進めていかなければという気持ちになりました。最後になり ンパク質D8が代謝・寿命制御に対し ますが、今回の発表会の運営、日々の研究をサポートしてくださっ て与える影響の検討とその分子機構の ている生体有機化学研究分野の皆様、審査員の皆様、今回の研究 解明を目指して研究をしております。 を遂行するにあたり御協力頂いた分生研の共同研究先の皆様に、 D8欠損マウスが寿命延長の表現型を この場を借りて心より御礼申し上げます。 呈していることをきっかけとして、D8欠損マウスは抗肥満・糖尿 病の表現系を呈することを示唆するデータを得ることができまし 所内発表会終了後には、農学部食堂にて懇親会が開催されまし た。今後は、その分子機構を明らかにし、抗肥満・糖尿病治療薬 た。約120名の皆様にご参加いただき、2時間あまりにわたって盛 の新規標的として、D8を提唱したいと考えております。 大に行われました。秋山所長による乾杯のあと、歓談の時間を挟み 実は、私は以前、旧核内情報研究分野に所属しており、そこで 入賞者の表彰も行われ、さまざまな研究分野の間で交流がなされま 丁度2年前の分生研所内発表会の幹事を務めさせていただいてお した。 りました。その時は、まさか2年後に自分が分子情報研究分野の 今回の所内発表会を振り返ってみて、前回幹事である膜蛋白質 代表として、所内発表会で発表させていただくことになるとは夢 解析研究分野前田グループの石井様や各研究分野の連絡係、演者 にも思っておりませんでした。分子情報研究分野に移籍し、今の の皆様、事務部総務チーム大久保様のご協力のおかげで大きなト 研究を始めてからおよそ1年半ですが、比較的スムーズに研究室 ラブルもなく所内発表会を開催できました。幹事一同心より感謝 に溶け込み、研究に従事できたのは、秋山先生をはじめとした分 しております。 子情報研究分野の皆様の温かいご配慮のおかげです。この場をお 発表会を通して、分生研の研究テーマの多様さを実感しました。 借りして、感謝の念を捧げさせていただきます。 私は、生物学の知識があまりないのですが、どの演者の発表も分 最後に、素晴らしい発表の場を与えてくださった、秋山先生、 かりやすく、非常に有意義な時間を過ごすことができました。多 ならびに今年度分生研所内発表会幹事の皆様に対する感謝を持ち 様な分野の知識、専門外の分野の知識に触れることで得た知識や まして、私からの一言とさせていただきます。 考え方は、今後の自分の研究にも少なからず生かせると信じて 日々の研究に励みたいと思います。 特別賞 「膠芽腫幹細胞を標的とした新規sirtuin2阻害剤の創製研究」 生体有機化学研究分野 境 太希(修士課程2年) 最後となりましたが、今回の発表会を執り行うにあたり、多く のご協力を頂きました各研究分野の発表者・審査員・連絡係の皆 様、分生研事務の皆様、そして生体有機化学研究分野のメンバー への感謝の念を持ちまして、分生研所内発表会の報告とさせてい まず始めに、このような素晴らしい発表の機会を与えてくださっ た、分生研の皆様に感謝申し上げます。発表させていただけるだけ ただきます。 11 留学生手記 Jihye Kim, D4, Chromosome dynamics, (most right bottom in the picture) 4 years ago, I came to Japan for my Ph.D. degree. Studying abroad was one of my dreams for a long time because I wanted to test myself in foreign environment. During my master course, I manipulated egg cell (oocyte) to generate cloned animal in Korea. I was indeed enchanted with oocytes in that period. Oocyte is a very large single cell, from which every life is grown up. Meiosis is a special type of cell division to generate oocyte and sperm. Inaccurate chromosome segregation during meiosis cause aneuploid embryos and thus miscarriages, genetic disorders or even infertility. Despite the importance of mammalian meiosis, our current understanding is very limited. That's why I decided to study meiosis in the Watanabe lab. Japan was always special to me since I was attracted by Japanese literature when I was high school student (I am a huge fan of Murakami Haruki!). At the beginning of studying in Japan, I was excited to communicate by my self-studying Japanese. I learned many Japanese words from “odoru daisousasen (踊る大捜査線)”when I lived in Korea. For example, Genba (げんば), Taiho (た いほ), Hannin (はんにん) and Meshi (めし). By the way, first day in the Watanabe lab, I learned two Japanese words : “Hasami (はさ み)”from A-さん and “Shindoi (し んどい)”from B-さん. Iʼ ve never heard these words from television drama. Especially, “Shindoi”was a symbol word that I can realize where I am. Right, I am living in “Shindoi” Watanabe lab. But professor Watanabe always said “厳しいのは研究の世界でうちの ラボではない。 ” When I made decision for coming to Japan, I was afraid of numerous reasons. As I expected, living in foreign country was never easy. However, our lab is a great place to do science with many talented colleagues. I am truly thankful for this great opportunity to learn doing Science. Above all, I could learn so much about myself. Therefore, I highly recommend other students to go abroad and see the other world. One day, Professor Watanabe sent an email to all lab members to introduce an essay. It was 「6つのC」written by 本庶先生. I would like to introduce the final sentence of the essay that I got deep impression.「私は教室の若い人に優れた研究 者になるための6つの「C」を説いている。すなわ ち、好奇心 (curiosity) を大切にして、勇気 (courage) を持って困難な問題に挑戦すること (challenge)。 必 ず で き る と い う 確 信 (confidence)を 持 っ て、 全 精力を集中 (concentration) し、そして諦めずに継 続すること (continuation)。その中でも最も重要な のは、好きなことに挑戦し続けること (curiosity, challenge, continuation) の3「C」で あ る。 こ れ が 凡人でも優れた独創的と言われる研究を仕上げる ための要素であると私は考える。」I hope that the experience of studying in Japan will encourage my other curiosity and it will also contribute toward the challenge in the future. 12 ドクターへの道 吉川真由 RNA機能研究分野 博士後期課程3年 思い起こせば、修士課程を過ごした京都大学の研 究室に初めて行ったのは、修論発表の日でした。キ ラキラした修士の先輩方の発表に興奮する私に、 「かっこ良かったでしょ?吉川さんも二年後はあん な風になるんだよ」と、当時ポスドクだった先輩が かけて下さった言葉が今も深く心に残っています。 高校時代、奈良の私立高校に進学した私は、受験 勉強しかしない高校生でした。しかしながら京都大 学に入学し、様々なバックグラウンドを持った学生 と触れ、衝撃を受け、価値観の多様性、世界の広さ にようやく気づき始めました。そして圧倒的に足り ない自分の「人間力」を鍛えたく、アルバイトで稼 いだ資金を投じては、休講期間を利用して世界中を 旅する生活を送っていました。勿論、サイエンスに も興味があり、授業こそ真面目に出席していました が、当時の私の心を捕えて離さなかったのは、「次 は一体どんな国を旅するか」ということでした。学 部四年生ではシドニー大学への交換留学を行い、帰 国後「せめて理系なのだから修士号くらいは」とす すんだ研究室で、やっと研究、研究者、研究生活と いうものを理解し始めました。 研究では、生化学アッセイひとつとっても、たっ た一つの結果を得る為にコンストラクトの作成に始 まり、様々な条件検討を経るという途方も無い試行 錯誤の繰り返しです。これほどまでに長い長い時間 をかけて何かを手に入れる経験をしたことが無かっ た私は、忍耐強く挑み続ける事の厳しさと手に入れ た時の感動を、身を以て体験しました。私は要領が 悪く、周りが次々とデータを出している(ように見 える)状況の中、なかなか上手くいかないもどかし さと悔しさから、人知れずトイレで涙を流した日々 は数えきれません。そしてやっと、修士二年生の秋 も深まった頃に少しずつデータが出始め、修士論文 の提出の一日前まで実験データを更新していた事 を、今もほろ苦く思い出します。 博士課程はsmall RNAのはたらくメカニズムを研 究したいという思いから、現在の泊研究室に移りま した。実はこちらの研究室に決めたのは、修士二 年生の春に研究室訪問をした際、当時博士課程の 学生であったPieterが「This is the best laboratory in the world!」と言っていた事が最大の理由です。 その言葉は今でも真実であったと思います。泊研で は一人ひとりの学生に独立したテーマが与えられる ので、研究の「最初から最後」までを一人の学生が 責任を持って主導します。そして「良い研究をした い」と思う思いを共有する人達が集まっているた め、いつでも真摯に議論ができる状況にあることは 非常に幸せなことです。また、懐の深いボスのも と、研究だけでなく、本音で悩みを打ち明ける事を 通して自分の人生についてもじっくりと考察する ことも許されました。泊研で過ごす中、学部生時 代に各国を旅した経験が再び私の心の中で目を覚 まし、南アフリカで数ヶ月間のリサーチインター ンシップを行うに至りました。これは東京大学の Global Leadership Programとインターン先である KwaZulu-Natal Research Institute for Tuberculosis and HIV (K-RITH) の支援、そして泊研の皆様の理 解のもと実現しました。K-RITHはHIVと結核の改 善に向けた基礎・応用研究および教育活動を行う機 関です。南アフリカでは慣れない車の運転をはじめ、 現地について三日後に次世代シークエンサーを動か すことを要求された時は驚きましたが、何事も背水 の陣で取り組めば何とかなることを学びました。設 備やリソースが不十分である中で一定期間に成果を 出すことを求められたため、実践的な課題解決スキ ルを身につけることができました。そして、自分の 仕事の成果がダイレクトに人の生活や命に関わるこ とに大きなやりがいを感じ、博士課程修了後の進路 選択に非常に大きな影響を与える経験となりました。 振り返ってみれば、紆余曲折を経て今に至ります。 しかしながら無駄だった瞬間は一つも無く、学部、 修士課程、博士課程、インターンシップ等での様々 な方々との出会いを通して今の自分がある事に心か ら感謝しています。修士の頃、ポスドクの先輩の言 葉に強い衝撃を受けてから、もう五年が経とうとし ています。当時目を細めて眺めていたキラキラの修 論発表はとっくに終え、博士の本審査を迎えようと しています。今でもあの頃目指していた存在は遥か 前方に見える感覚がありますが、これからもずっと、 二年前には眩しくて直視できなかった存在に近づけ るよう、一度きりの人生を精一杯生きていきたいと 思います。 13 研究室名物行事 発生・再生研究分野(宮島研究室)博士課程1年 木庭 乾 宮島研究室のラボ名物行事についてご紹介させて たホットケーキタワーなど、何を作るかはその年の いただきます。宮島研の毎年恒例のラボ行事と言え 幹事のセンスによってさまざまですが、とにかく迫 ば、春の花見、夏のラボ旅行、年末の忘年会、冬の 力を重視した何かしらが作製されることになりま スキー旅行等々数多く…というほどではありません す。筆者が幹事の年にはバケツプリンを作製しまし が、いくつか挙げられます。(もしかすると、他研 た。ゼリーに比べてはるかに柔らかいプリンを、バ 究室の方がたからすれば新人歓迎会でのダンスが最 ケツサイズでも美しいフォルムに保つのに苦労しま も有名かもしれません…)が、今回はその中でも毎 したが、事前の条件検討などの努力の甲斐があって、 年7月下旬に行われる、 「新人発表お疲れ会」につ 何とか無事に完成させることが出来ました。(写真) いてご紹介いたします。 味はともかく、見た目は大満足なデザートを毎年作 宮島研究室に4月から入ってきた新人さんは、ま り、おなか一杯になるまでたらふく食べて皆で笑い ず何よりも先に新人歓迎会の準備に取り掛かりま あう、そんな会になっています。 す。新人さん同士でたどたどしくコミュニケーショ 少し大げさな物言いもいたしましたが、この「新 ンをとりつつ、何とか新人歓迎会を終える頃、徐々 人発表お疲れ会」はラボ全員で新人さんの頑張りを に各人の研究テーマが定まり本格的に実験が動きだ 労い、和気あいあいと楽しむことで互いを知り、よ す、 というのが宮島研の例年の流れになっています。 り親睦を深めることができる良い機会となっていま そこから数か月間研究に打ち込んだ新人さん達は、 す。新人さんにとっても、その後宮島研でさらに頑 6月から7月にかけ順番に、毎週行われているゼミ 張っていくための活力になっていることでしょう。 にて、初めてのプログレスレポートをすることにな さて、次はどんなデザートが作られることやら…。 ります。初プログレスは、自分がどのようなことを これから研究していくのかラボの皆に伝える重要な 場であると共に、自身の知識や話術、度胸を一度に 試される、新人さんにとっては結構ハードな試練の 場となっています。新人さん達は、初プログレスが 近づくにつれ実験を詰め込み、周辺知識をつけるべ く論文を読み漁り、精一杯良い発表にしようと奮闘 することになります。 前置きが長くなりましたが、今回ご紹介する「新 人発表お疲れ会」は、そんな試練を乗り越えた新人 さんたちを労う目的で開催される、ラボ飲み会です。 例年最後の新人さんのプログレス発表が終わった日 に開催されるこの会では、たこ焼きやお好み焼き、 あんかけ焼きそばなど、いつも以上に腕によりをか けた料理をM2の学生が中心となって作ります。学 生はもちろん、宮島先生をはじめスタッフの方々も ほぼ全員が参加し、宮島先生による乾杯をかわきり に、お酒を飲み、料理を食べ、新人さん達を口々に 労います。 そしてさらに、メインイベントとしてビッ クなデザートをサプライズで作り、皆で食べるとい うのが毎年恒例となっています。フルーツたっぷり のバケツゼリーや、大量の生クリームを塗りたくっ 14 海外ウォッチング サンフランシスコ・Gladstone 研究所 宮岡佑一郎 (元 発生・再生研究分野 助教) 私は2004年から2011年まで宮島研究室に在籍し、現 在はSan FranciscoにあるGladstone研究所で研究をして います。当研究所はUCSFと密接に提携していますが、 財政面を含めUCSFとは独立した研究機関で、心疾患、 神経疾患、ウイルス性疾患を研究する3つの部門から なります。私は心疾患部門のBruce Conklin博士の研究 室に在籍しています。Bruceは文化的にはアメリカ人で 日本語は理解できませんが、遺伝学的には日本人のハー フであるため、よく日本のことを話します。彼は非常 にオープンで陽気で、カリフォルニアの研究者らしい と言えると思います。逆に彼のようなPIに多く接する ことで、こちらで長くPIをされていた宮島先生は、や はりカリフォルニア気質の研究者だったのだというこ とも実感しました。 山中伸弥先生はこの心疾患部門でポスドク時代を過 ごされ、現在は研究室を主宰されています。一昨年の ノーベル賞では、研究所全体で祝賀会が開かれる中、 自分は学会で出張中という悲劇も味わいました。その 他にも素晴らしい日本人研究者が多数輩出されており、 一番身近な例では分生研の竹内ご夫妻が私達の隣の研 究室に在籍されていたので、その伝説を伝え聞くこと ができます。私も諸先輩方に続くことを目指します。 私は現在TALENなどのゲノム編集技術を駆使して、 ヒトiPS細胞に変異を効率的に導入しヒト疾患モデルを 作製・解析する研究を行っています。ゲノム編集技術 は近年爆発的に発展を遂げており、今まで無縁だった competitionというものに初めて晒されています。私は まだ競合の流れのやや端に立っているのですが、その 競合の濁流の中心で躍動する超がつくほど優秀な人達 を間近で見られるのも留学の利点の1つだと思います。 しかし、限られた資源(研究費、ポスト、研究誌の紙面) を得るためには少なくとも間接的には彼らとの競争の 中で生き残る必要がありますので、私なりの何かを今 探しています。 そもそも、私自身は何を研究していきたいのか、と いうことについてこれまでで一番深く考えています。 私の理想の女性像はかなり早い段階で固まってあまり 変化しないのに対し、追究する研究テーマはこれまで ずっとあやふやなままで、 「何を研究するかわかってい ないのに研究者になりたいというのは本末転倒ではな いか」という自省の念を常々持っていました。しかし、 留学を機に自分が今研究していること、これまで研究 してきたこと、これから面白くなりそうなことなど、 様々な要素を並べて真剣に考えるうちに、やっと今後 の研究テーマが少しずつ見えてきました(また変わる と格好悪いのでここでは書きません) 。このように自分 自身を見つめ直せたのが留学の最大の利点なのかもし れません。もちろん、留学していなくても同様のこと を考えるでしょうが、私の場合は留学し追い詰められ た状況でより真剣に考えられたような気がします。 私の留学は家族の協力に支えられています。長男は 英語を全く理解できない状況でいきなり現地の幼稚園 に放り込まれたのにも関わらず、毎日楽しいと言って 通っていました。現在彼は現地の小学校に通い、最近 幼稚園に通い始めた次男とともに、着々とアメリカ人 になりつつあります。誰もが感じることでしょうが、 子供の適応力には驚かされます。私も見習いたいもの です。子供2人(と私?)の世話をしながら米国弁理 士資格試験をあっさりパスした妻にも相変わらず感心 させられます。そして最近長女の出産に、3人目の子 にして初めて立ち会うことができました。これをもっ て、うちはめでたく生産終了となりました。あとは私 がよい研究をするだけです。 分生研のみなさんのご研究は私が祈るまでもなくご 発展されると思いますので、私は自分の研究の発展を 祈っています。またみなさんにお会いできることを楽 しみにしています。 15 OBの手記 金沢大学 医薬保健研究域 脳・肝インターフェースメディシン研究センター 教授 佐藤 純 分生研ニュースにOBの手記を書かせて頂くことになりま ポストに就けるかどうか、という時に採用する側の欲し した、金沢大学 脳・肝インターフェースメディシン研究セ がっている人物像に合っているかどうか、という点も非常 ンターの佐藤と申します。私は2002年から2008年の約6年 に重要です。実は私の場合はこの人物像、という点からし 間にわたって現在の神経生物学研究分野、当時の形態形 ても本来は外れていたのですが(本当は自閉症の研究者が 成研究分野(つまり多羽田研)で助手・助教を務めさせて 期待されていた) 、運良く採択して頂くことになりました。 頂きましたが、金沢大学フロンティアサイエンス機構のテ というわけで、ポジションを得るためには業績、研究費、テー ニュアトラックを経て2012年から現在のテニュア職に就い マ、相性など様々な要因が絡み合いますが、最後に運が必 ております。早いもので、金沢に来てからあと少しで6年 要ということなのかも知れません。公募に出しまくっても 経とうとしているところです。若手研究者の方々にとって 全然声が掛からない、ということもあるかも知れませんが、 将来のキャリアパスは一大関心事だと思いますので、私の そんな中でも実験を進めてより魅力的な申請書を書き、運 経験を何かの参考にして頂ければと思います。 が巡ってくるのを待っていれば良いことがあるかもしれま 私が分生研に来た頃から助手には任期が付いていました せん。 ので、まとまった仕事をしたらなんとかして次の行き先を ここでほとんど字数制限になってしまいましたが、実際 決めなければならない、という暗黙の了解があったように には金沢に行ってからも想定外の事態が連発し、正直よく 思います。そして私自身の心境としても、自分の裁量で研 まあこうやってテニュアのポジションをもらえたものだと思 究プロジェクトを推進する立場、つまり独立したPIとして います。 金沢に行ってからの体験談の方がよりエキサイティ 研究したいという気持ちを以前から持っていました。そう ングで面白いと思いますが、スペースの問題もありますし、 いうわけで、2006年頃からいろいろな公募に応募して、次 そもそも公の場に出すことはできないので、もし興味があ の行き先を探していました。ですが、それほど華々しい業 ればお酒の席にでも直接私に聞いて下さい。飲み代をお 績があったわけでもなく大きなグラントを持っていたわけ ごってあげられるかどうかはその時の懐具合によりますの でもなかったので、基本的にはどこに出しても面接にも呼 で、あまり期待しないように。 ばれないという状態が続いていました。 「独立する」という時にはどのようなテーマで研究したい か、という点も非常に重要です。私の場合はショウジョウ バエ視覚系の発生を調べている過程で、視覚中枢のメダラ 神経節が転写因子の発現によって同心円状に区画化されて いるということを見つけていました。ハエの視覚中枢は層 構造・カラム構造など構造的な特徴を示し、かつ神経回路 の機能という面でも非常に重要だと考えられていましたが、 近代的な研究はほとんど進んでいませんでした。ですから、 同心円ゾーンを手掛かりにした視覚中枢の研究であれば独 立した研究室で推進するのにふさわしいテーマだろうと考 えたのです。ありがたいことに、視覚中枢を中心テーマと して独立することに関して、多羽田先生からは了承して頂 くことができました。当時多羽田研の方向性が嗅覚学習に 向かっていたことも幸運だったと思います。そういうわけ で、テーマ的には悪くなかったと思うのですが、私が公募 に出し始めたころは、予備データはほとんど無かったので、 当時の申請書は正直あまり良く書けていなかった思います。 最終的には金沢大学フロンティアサイエンス機構のテニュ アトラック准教授に採択されたわけですが、この時の申請 書が一番まとまりがあったと思います。 16 ― 国際会議に出席してみて ― 分子情報研究分野 博士課程3年(当時) 越前佳奈恵 会 議 名:第9回日米癌合同会議 開 催 地:アメリカ合衆国 ハワイ州 開催期間:2013年2月21日~25日 発表演題:SIRT2,a promising molecular target for glioblastoma therapy 本学会では、基礎研究に加えて、臨床応用を目的とした研究の発 表も有り、最新の癌研究の話題について幅広く勉強させて頂くこと が出来ました。ncRNA、癌と微小環境、癌とエピジェネティクス など、癌研究の最新の話題となっている領域に関わる最先端の研究 者の方々のお話を直接伺うことが出来、大変刺激を受けました。 診断技術の開発に関しては、原発巣から浸潤により血管内に浸潤 し、血液中を循環するcirculating cancer cellのフェノタイプと悪性 度の相関の研究や、BEAMingという技術により1分子のDNAから 特殊なPCR法によって増幅を行いマーカーとなる遺伝子のDNA断 片を増幅し変異を検知することによって、血液中を循環するDNA から大腸癌の再発を初期の段階で診断するという方法など、より患 者様に負担の少ない方法での画期的な診断方法の開発が進んでいる ということがとても印象的でした。また、本研究で用いているグリ オブラストーマに関しては、MRIの画像から特殊なアルゴリズムに よって浸潤フェーズと増殖フェーズにある細胞を割り出し、腫瘍を タイプ分けし、このうち浸潤タイプに分類された患者様には実際に IDH1の変異が亢進しているため、治療方針を決める際、ひとつの 指標とすることが出来るという報告が有りました。 本学会では特に、癌組織の不均一性をテーマにした研究課題が多 く、従来の癌細胞のみに着目した研究だけでは説明しきれない様々 な現象について勉強することが出来ました。特に、腫瘍組織を構成 する癌細胞とそれ以外の細胞や生理活性物質、例えば繊維芽細胞や 免疫細胞、炎症細胞、細胞外マトリクスなどとの相互作用が癌の悪 性化や転移などに重要な役割を果たすということが話題になってい ました。これらの細胞が作り出す低酸素や低pHなどの特殊な微小 環境によって、腫瘍組織内にある癌細胞自身の多様性、例えば非常 に高い腫瘍形成能を持つ癌幹細胞や、同一腫瘍組織内でも異なる変 膜蛋白質解析研究分野(前田グループ) 特任研究員 谷川 美頼 会 議 名:26th International Conference on Yeast Genetics and Molecular Biology 開 催 地:ドイツ、フランクフルト 開催期間:2013年8月29日~9月3日 発表演題:Identification of the yeast calpain-like protease Rim13 cleavage site in the alkaline responsive transcriptional factor Rim101.(ポスター発表) 酵母の大規模な国際学会は、主に北米で開催されるものと、 ヨーロッパで開催されるものがそれぞれ隔年で行われています。 今回私は、そのうちヨーロッパメインで開催されるInternational conference on yeast genetics and molecular biologyに参加しまし た。会議はフランクフルトの市街地に位置するフランクフルト大学 (国内ではゲーテ大学と呼ぶそうです)で開かれ、参加者はゆうに 500人を超える、想像していたよりも大規模な学会でした。参加者 の8割以上がヨーロッパ圏からで、私どものように酵母を真核生物 のモデルとして扱う研究だけでなく、バイオエタノールを始めとし た応用研究も数多く発表されており、正に酵母研究の今を体感する ことができました。 さて、私は酵母のカルパインファミリーに属するシステインプロ 異を持った癌細胞クラスターが存在するようになることなど、興味 深く勉強させていただきました。 今後の治療・診断技術の開発には、患者様の負担を軽減しかつ効 果的に腫瘍組織の増大を抑制できるもしくは、確実な診断が出来る ということが重要になってくるのではないかと思います。特に、治 療においては、癌細胞を殺すという従来の戦略ではなく、癌細胞を 生かしたまま悪性化させない、より患者様にダメージの少ない治療 法を開発していくという流れがあり、その際、実際に患者様の腫瘍 組織内で起きている現象の解明が必須です。そのためにも、癌細胞 を含めた腫瘍組織の各ニッチで起きている細かい現象の解明及び、 これらの現象に関わる因子に関する研究が非常に重要になってくる のではないかと感じました。 本研究で用いているグリオブラストーマについても血管新生、癌 細胞とマイクログリアとの相互作用、正常組織への浸潤など微小環 境関連の研究が進んでいます。今回得た知識を活かし、今後も研究 に邁進していきたいと思います。 テアーゼについてポスター発表を行いました。反省点はやはり英語 です。私のあまりにむちゃくちゃな英語に怪訝な顔をされること数 限りなく……。さらに、ヨーロッパでの学会ですので、英語が母国 語でない参加者の方が多く、なまりのある英語を理解するのに苦労 しました。しかし、国外の研究者とのディスカッションはエキサイ ティングで、改めてサイエンスを職業にすることの楽しさを存分に 味わうことができました。また、現在進行中のプロジェクトに関し ても、たくさんの情報を得ることができ、とても有意義な時間とな りました。 この学会の特徴は、中日の午後に遠足があることです。ドイツで 開かれた今回はライン川クルーズで、とてもとてもすばらしかった そうです(私は体調を崩してしまったために参加せず、ホテルで寝 ておりました)。こういったイベントが開催されるのも、風光明美 なヨーロッパの学会ならではでしょうか。 帰国して2週間以上が過ぎましたが、私が学会に参加するたびに 思うことは、研究は楽しい、みんなに負けないようにがんばろう! です。今回も新たなモチベーションを土産に研究室に戻り、日々の 実験に勤しんでいます。 最後になりましたが、このたび学会に参加するにあたり、公益財 団法人・応用微生物学・分子細胞生物学研究奨励会より多大なるご 援助を賜りましたこと、心より深く感謝いたします。 17 先端的教育研究プログラム(情報伝達研究分野) 助教 小野口真広 会 議 名:C old Spring Harbor Meeting 2013 “Mechanisms of Eukaryotic Transcription” 開 催 地:Cold Spring Harbor Laboratory 開催期間:2013年8月27日~31日 発表演題:A long noncoding RNA derived from an enhancer region regulates Neurogenin1 gene expression(Poster) 行い、分野の最先端の動向や問題点などについても情報が得られる など、非常に有意義な時間を過ごすことができました。トップレベ ルの研究者が一堂に会し討論が行われるなかで、研究のトレンドを 肌で感じるようなとても貴重な経験であったと思います。このよう な機会を与えて頂いたことに改めて感謝申し上げます。この経験を 生かしより良い研究ができるよう邁進していきたいと思います。 この度のCold Spring Harbor Meetingに参加するにあたり、応用 微生物学・分子細胞生物学研究奨励会からの援助を賜り、心より感 謝致します。 本会議で私は、エンハンサー領域から発現する新しいタイプの long noncoding RNA(lncRNA)の作用機序について、最新の研究 成果を発表しました。エンハンサーによる遺伝子の転写制御はこれ まで非常によく研究されてきているにもかかわらず、まだ十分に理 解されていない部分が多く有り、ごく最近の論文でも新しい発見が 次々と報告されています。中でもエンハンサー領域からの転写とそ の制御については大変注目度が高く、今回の発表でも多くの研究者 の方に足を止めて頂き、活発な議論を行うことができました。講演 では、合宿形式で朝から晩までセッションがあり、転写制御の分野 でリードする多くの著名な研究者の興味深い発表を聞くことができ ました。本研究分野での最新のトレンドや新しい方向性の模索など 様々な内容の発表があり、自分の研究との関連について新たな考 察を広げることができたのは大きな収穫でした。また、ランチや Banquetなど参加者同士が交流できる時間が豊富にあり、新たに人 間関係を広げることができたことも本会議に出席した大きな成果の 1つであると思います。Cold Spring Harbor Laboratoryは立地環 境もすばらしく、自由で活発な討論を行う雰囲気が非常に良かった です。ポスター発表以外の場でも研究や科学について幅広い討論を 所内レクリエーション報告 分生研親睦会ボウリング大会担当 発生・再生研究分野 西條(及川)栄子 去る11月1日(金)午後6時より、東京ドームボウリングセンターにて、分生研ボウリング大会が開催されました。今年度 は、28名の方々にご参加いただきました。6レーンで予約しましたので、昨年同様、1レーンに5人程度入り、2時間で2,3 ゲーム投げるというタイトなスケジュールでしたが、ご参加の皆様が5分前行動をしてくださったおかげで、時間通りに開始・ 終了することができました。 成績は、2ゲームでの合計点を元に、男女別の1位から3位、およびブービー賞を決定いたしました。 男子1位 境 太希(生体有機化学) 2位 坪内 一彦(事務部) 3位 友重 秀介(生体有機化学) 女子1位 稲垣奈都子(発生・再生) 2位 植田 清実(事務部) 3位 齋藤 香織(ゲノム情報解析) ブービー賞 須山 藍子(事務部) (敬称略) 今年は、レーン分けを各研究分野でシャッフルさせ ていただきましたが、どうだったでしょうか。個人的 には、植田事務長と同じレーンでご一緒させていただ き、ボールの投げ方からワーキングマザーとしてのご 経験など様々なお話しができて、楽しくて時間が足り ないくらいでした。幹事を務めて頂きました分子情報 の武田さん(予約から賞品までほぼ全ての大会準備を してくださいました)、事務部総務チームの須山さん、 および参加者の皆様に感謝いたします。ありがとうご ざいました。 18 平成25年度動物慰霊祭 動物実験委員長 田中 稔 東京大学分子細胞生物学研究所(分生研)では毎年、研究活動に 尊い命を捧げてくれた動物達の御霊に感謝と追悼の意を表すため、 実験動物慰霊祭を行なっています。今回で15回目となる慰霊祭は、 平成25年10月9日(水)午後1時より農学部附属動物医療センター 奥の動物慰霊碑前において執り行われました。前日には台風が関 東地方に接近しており開催が危ぶまれましたが、当日は秋空の下、 119名の参列者があり、各人が動物達に対して祈りを捧げました。 動物実験委員長より一年間の動物実験概要の報告があり、その後、 一分間の黙祷と焼香がしめやかにおこなわれました。 分生研では多くの教職員・学生等が遺伝子改変マウスの作製やそ の解析、タンパク質の精製、抗体の作製などの目的で実験動物を 飼育しており、様々な生命現象や疾患等のメカニズムの解明に取 組んでいます。これらの動物実験から得られた新しい知見は学会や学術論文に発表され、それぞれの専門分野におい て高く評価されています。 「動物の愛護及び管理に関する法律」や「研究機関等における動物実験等の実施に関する 基本指針」を遵守することは勿論ですが、動物実験等に関する基本理念である3R( 「Refinement;苦痛を与えない」 「Replacement;代替え法の考案/導入」 「Reduction;使用動物の削減努力」)を心に留め、研究者各人が最小限の犠 牲で最大限の成果をあげられるように日々、努力と工夫をしていただくようお願い致します。また、これらの成果は 犠牲になってくれた動物達があってのことであると再認識し、動物達への感謝の意を忘れぬように研究を進めていた だきたく思います。 平成25年度総合防災訓練を実施 農学部グラウンドに避難する参加者 平成25年11月19日(火)の12時05分から約1時間にわたり、農学部と合同で総合防災訓練が実施されました。今回 は大震災が発生し全員が建物から避難するという想定で訓練を開始しました。 12時15分に本館及び生命科学総合研究棟に震災の発生と避難の館内放送が行われた後、建物内の全員が整然と避難 を開始し、一時避難場所である本館前に参加者187人が速やかに避難完了することができました。 その後、最終集合場所である農学部グラウンド移動し、本郷消防署からの防災・防火に対する心構えなどの講評後、 訓練は無事終了しました。 19 セントロメア特異的なリン酸化を介した 還元分配の制御メカニズム 一方向性制御に関わるPlo1の基質の特定を考えています。 先端的研究教育プログラム(染色体動態研究分野) 助教 石黒伸茂 減数分裂の最大の特徴とも言える第一分裂での姉妹染色分 体ペアの同一極への分配(還元分配)には、姉妹動原体の一 方向性および、シュゴシン(Sgo1)-PP2Aによるセントロメ ア接着の保護が重要であることが知られています。以前、渡 邊研究室で分裂酵母の遺伝学的スクリーニングを用いて発見 されたセントロメアタンパク質Moa1は、姉妹動原体の一方 向性を担う因子として同定されていましたが、セントロメア 接着の保護にも影響していることが分かってきました。同時 に、Moa1はキナーゼPlo1(ヒトのPlk1ホモログ)のリクルー ターであり、Plo1が前述した制御に関する実行因子であるこ とも明らかになってきています。したがって、Plo1の減数分 裂における基質を特定することが、還元分配の更なる分子メ カニズムの解明につながると考えられます。 私たちは、Plo1の基質の一つとして減数分裂特異的接着因 子であるRec8を同定しました。Rec8の非リン酸化型変異体 では、Sgo1-PP2Aのセントロメアへの局在が正常であるにも かかわらず、セントロメア接着の保護が失われました(図1 中央) 。一方、Rec8のリン酸化模倣型変異体では、セントロ メアのみならず染色体腕部の接着までもが保護され、結果と して減数第一分裂の染色体分配が大きく阻害されるような現 象が見られました(図1右)。この表現型は、sgo1 遺伝子の 破壊によって抑圧されることが分かりました。以上の結果か ら、Sgo1-PP2Aが、セントロメアでPlo1によって特異的にリ ン酸化を受けたRec8だけを保護する機構があることが明ら かになりました(図2)。今後の課題として、姉妹動原体の CREBレポーターを利用した記憶細胞のマッ ピング 神経生物学研究分野 助教 山崎大介 遺伝学的ツールを利用した解析を中心 に、記憶に必要な因子も記憶に必要な神経 も数多く同定されてきています。ハード ディスクが磁化パターンを記憶情報として 蓄え、読み出しができるのと同じように、 我々の脳でも生体分子が働いて記憶情報を 形成し、蓄積し、読み出しができているわ けですが、その記憶情報の本質は未だに未 知であり、多くの神経科学者がこの解明を 目指しています。そのためには記憶に必須 であると同定された分子が記憶過程でどの細胞でどのように 機能しているのかを一つ一つ調べていく必要があり、私たち もその仕事に取り組んでいます。ショウジョウバエにある匂 いと電気ショックを同時に与えると、その匂いを避けるよう になります。このときに形成される嗅覚忌避記憶は匂いの情 報と電気ショックの情報が出会う「キノコ体」で蓄積されて いると考えられます。キノコ体の全ての細胞に匂いと電気 ショックの情報が入力されるわけではなく、両方の情報が同 時に入力する細胞はキノコ体のごく一部であると考えられて います。その細胞を見つけるための手がかりとして私たちが 着目しているのが転写因子CREBです。CREBはcAMP/PKA シグナルの下流に位置し、CREB活性を阻害すると長期記憶 形成に障害が起こることが示されてきました。また、CREB 活性を強制的に亢進した細胞は記憶のコードに利用されやす くなることが近年になって示されたため、内在性のCREB活 性をモニターするハエを作製すれば記憶をコードする細胞 図1 Rec8のリン酸化残基の変異体の減数第一分裂におけ る一番染色体セントロメアの動態 図2 Moa1-Plo1によるセントロメア特異的な Rec8のリン酸化制御と接着保護のモデル を同定できるかもしれないとの仮説のもと、CREBのレポー ターフライを作製しました。このレポーターのシグナルは cAMPレベルの上昇によって亢進し、CREB活性を阻害する と抑制されるため、作製したハエはCREBレポーターとして 機能しうることが確認できました。レポーターによってラベ ルされる細胞は広範囲にわたるのですが、特にキノコ体に注 目すると記憶形成された個体ではシグナル強度の高い細胞が 増えることがわかりました(図参照) 。現在当研究室では神 経回路のレベルにおける記憶学習の理解を目指して多様なレ ポーターを作製し、キノコ体を中心とするレポーター陽性細 胞の記憶学習における機能解析を進めています。 図 記憶形成によるレポーターシグナルの上昇 レポーター遺伝子を持ったハエを忌避記憶のパラダイム によって長期記憶形成させ、2時間後のレポーターシグ ナルをコントロールの個体と比較したもの。キノコ体の 細胞体領域を白く囲ってある。 20 減数分裂期に関わる新規染色体タンパク質の 同定および機能解析 先導的研究教育プログラム(染色体動態研究分野) 助教 森本晃弘 減数分裂期においては、相同染色体の対合や、相同組替え、 還元・均等分裂を経て、1倍体の精子や卵子が形成されます。 減数分裂期におけるエラーは、先天性疾患のダウン症や早期 流産等につながると考えられており、これら減数分裂期の染 色体動態の制御機構を正確に理解することは、生物学的観点 から極めて重要な課題です。しかし減数分裂期の染色体動態 を制御する分子機構については多くが未解明のままです。そ こで、私たちは減数分裂期特異的に発現するタンパク質が、 この時期の染色体動態に重要な役割を担っているのではない かと考え、減数分裂期に特異的に発現する新規染色体タンパ ク質の探索・同定を行うことにしました。 減数分裂期に特異的に発現する遺伝子を同定するために、 マウスの精巣および卵巣からTotal RNAを抽出し、RNAsequencingを行いました。その結果、両性の生殖細胞で発現 している機能未知の遺伝子を多数同定しました。次に、これ らの遺伝子にGFP(Green Fluorescent Protein)の遺伝子を つなぎ、マウスの精母細胞に一過的に発現させ、減数分裂期 における局在を解析しました。これらのスクリーニングを通 じて、減数分裂前期のテロメアや染色体軸上に局在する新規 染色体タンパク質(MSP: meiosis specific protein)を複数同 定することに成功しています(図)。私達は、これらの新規 植物RNAサイレンシング機構の研究 先導的研究教育プログラム(RNA機能研究分野) 助教 岩川弘宙 こ の 十 年 でmicroRNA(miRNA) や siRNAを含む小分子RNAが生物の遺伝子 発現制御に重要な役割を果たすことがわ かってきました。小分子RNAはArgonaute (AGO) と 呼 ば れ る タ ン パ ク 質 と、RNA induced silencing complex(RISC) を 形 成し、相補的な配列を持つ標的遺伝子を負 に制御します。モデル植物であるシロイヌ ナズナは10種類のAGOホモログを持ちますが、それぞれが 異なる種類の小分子RNAを取り込み、異なる機能を発揮し ます。植物AGOはどのようにしてパートナーとなる小分子 RNAを見分けているのか?植物が独自に持つサイレンシン グ機構の詳細はどうなっているのか?ということに興味を 持ち日々研究を行っています。私たちはこれまでに一種類 のmiRNAとのみRISC形成するAGOホモログが、miRNAが もつ複数の構造や配列的特徴を詳しく検査することにより、 パートナーとなるmiRNAを見つけ出すことを明らかにしま した(Endo et al., EMBO Rep. 2013)(図1)。この特殊な RISCは長鎖非コードRNAと相互作用することにより二次的 な小分子RNAを生み出すという機能をもっていますが、そ の分子機構はいまだに明らかになっていません。現在、この 経路を試験管内で再現できる実験系を構築しているところ 染色体タンパク質の機能解析を通じて、減数分裂期における 染色体動態の分子機構を、新しい観点でよりシンプルに理解 できるよう努めていきたいと考えています。 引用文献:Morimoto et al., J.C.B. , 2012 図 テロメアに局在する新規タンパク質MSP1、および染色 体軸上に局在する新規タンパク質MSP2のマウス精母細 胞での局在例。 です。この他にも植物RISCによる翻訳抑制機構(Iwakawa and Tomari, Mol Cell 2013) (研究最前線に詳細を載せてい ます) (図2)や核内ではたらくRISCの研究も行っています。 これまで、遺伝学を中心として作られた植物RNAサイレン シング機構のモデル図に、生化学的知見を書き加え、新しい モデルを提案していきたいとおもいます。 図1 AGO7 selects miR390 through multiple checkpoints during RISC assembly 図2 Plant RISC blocks movement of ribosome 21 Wntシグナル関連因子の高次脳機能における 役割と精神疾患の分子機構の解明 先導的研究教育プログラム(分子情報研究分野) 助教 松浦 憲 近年、精神疾患を患う患者数は増加の一 途で、日本でも医療政策基本方針において、 従来の4大疾病(がん、脳卒中、心臓病、 糖尿病)に精神疾患を新たに加えるなど、 精神疾患研究の重要性に対する認識は世界 的に高まってきています。しかしながら、 同一家族の同じ遺伝子変異でも異なる精神 疾患に罹患する事があるなど、精神疾患は 複雑で、その発症機構は良く分かっていないものが大部分で す。一方で、自閉症患者の70%は知的障害を伴い、30%はて んかんを併発します。逆に知的発達障害の代表的遺伝性疾患 である脆弱X症候群では20-30%が自閉症を、10-20%がてん かんを併発します。このことは、異なる病態の精神疾患が共 通の分子機構を基盤としている可能性を示唆しているとも考 えられます。 私達の研究室ではAPC やβ-cateninなど、Wntシグナルの 主要な調節因子に結合するタンパク質のスクリーニングか ら、脳神経系で多量に発現し、神経機能において重要な働き が考えられる因子を複数同定しています。さらに、これら因 子の生理的な機能を解明する目的でノックアウトマウスを作 製しました。これらのマウスの多くは見た目上健康で運動機 能や寿命も野生型と変わりませんでした。しかしながら詳細 な解析を行うと、ある一系統は著しい学習障害、てんかん感 受性亢進、自閉症様の社会性異常(図)を示し、さらに多 動性や驚愕反応の増大など、注意欠陥多動性障害(ADHD) や統合失調症等の症状とも類似していました。以上の結果か ら、当該因子が高次脳機能における必須の重要因子である事 が判明しています。現在は、当該因子の分子メカニズムに 迫るべく、ノックアウトマウスをコントロールとしたCo-IP MS解析による網羅的解析から得られた、脳内生理的結合因 子の解析を行っています。今後は、さらに分子メカニズムの モデル構築とその証明を進めていきたいと考えています。 図 三室社会性試験:試 験マウスの行動パターンをヒート マップで表現している。 平成25年度高校生のためのオープンキャンパス開催 平成25年8月8日(木)に本郷キャンパスで開かれた東京大学オープンキャンパス2013の一環とし て、当所では “膜タンパク質を通して生命の神秘を理解する” と題し、講演及び研究室見学を実施し ました。 講演は午後1時30分より生命科学研究棟B301会議室において開催され、最先端の生命科学研究の一 端に触れてみたいという熱意にあふれた約70名の高校生が参 加しました。 小川治夫准教授の講演「膜タンパク質の形とその機能」か らスタートし、続いて田中稔准教授よる「彩られた細胞達に よる共演『肝臓ができるまで』 」と約1時間の講演が行われま した。 その後、約30名が参加し、高難度蛋白質生産研究分野の研 究室及び細胞形態研究分野の研究室見学を実施しました。見 慣れない実験機器等に目をまるくしながらも、先生方の説明 に熱心に耳を傾ける高校生達の姿が見られました。 22 転出のご挨拶 細胞形態研究分野 助教 伊藤弓弦 こ の 度、 フ ラ ン ス・ ス ト ラ ス ブ ー ル に あ るInstitut de Génétique et de Biologie Moléculaire et Cellulaire(IGBMC)という研究所に移り、ポスドクとしてリボソーム の結晶構造解析を行っています。IGBMCは名前だけでなく、その立ち位置も分生研と よく似ており、フランスで最高クラスの研究業績を上げている研究所です。私がフラン スで感じたことは、やはり科学の中心は欧米であるということ。論文になる前の情報が 早く回ってくるため、その分野の動向を把握しやすいことです。一方で、日本での勤勉 さや仕事の丁寧さを再認識しております。ストラスブールを含むアルザス地方は中世ま でドイツ圏にあり、17世紀以降フランスとドイツの間で領有権が行き来した歴史があり ます。そのため住民はフランス語を話し、比較的小柄で、アフリカ・アラブ系移民が多く、お馴染みのフラ ンス料理も楽しめるなどフランスらしい面がありながら、地名や建物、伝統料理、時々耳にするアルザス語 (ドイツ語の一方言)など、ドイツの印象を強く感じる不思議な街です。世界遺産にも指定されている美しい 街ですので、欧州にお越しの際には是非立ち寄られてはいかがでしょうか。私は学位取得後3年ほど分生研 に在籍し、研究だけでなく数多くのことを学びました。分生研の皆様、特に末次先生をはじめ、細胞形態研 究室の方々には大変お世話になりました。それに見合う貢献が十分でなかったことは心残りですが、今後の 研究に打ち込むことでそれを補えると信じております。最後に皆様の益々のご活躍を祈念して、転出の挨拶 と致します。 情報伝達研究分野 教授 後藤由季子 分生研の皆様、これまで長い間本当にお世話になり有り難うございました。初めてラ ボを持ち、ここまで何とかやって来られましたのも分生研のアクティブで親切な仲間や 先輩の先生方(特に秋山先生、宮島先生、多羽田先生、渡邊先生、白髭先生)が助けて くださったからです。現在まさに引っ越しの作業をしながらこの原稿を書いていますが、 未だにこの愛しい分生研を去ることに現実感がありません。 思えば、ボストンでポスドクをしていたときに秋山先生に声をかけていただいてから、 はや15年余りになります。当時は自分でPIが勤まるものなのか疑問に思っておりました が、思い切って帰国してラボを始めて本当に良かったです。はじめは小さいラボでした が、宮島先生が交渉して助手のポストを本部から獲得して下さったり、どこのラボでも気軽に研究の相談をし てもらえましたし、機器や試薬類もたくさん貸して下さって、若手がこれほど支えてもらえる環境はなかなか 無いのではないかと感謝しております。特に、お隣の渡邊先生ならびに渡邊研の方達は親戚付き合いと言って 良いほど仲良くしてくださって本当に有り難うございました。スキー合宿やソフトボールetc様々なイベント を一緒に楽しむのはもちろん、サイエンスの上でも常に刺激を受けて私のラボにとってとても大きな存在でし た。分生研は、 渡邊先生はじめ皆さんの「より本質的で高いレベルのサイエンスを追求する」姿勢が基軸になっ ている、世界に誇れる素晴らしい研究所です。ここに居られたこと、皆さんと交流して少しでも自分を成長さ せようと必死に努力して来たこと、は私の人生の財産と思っております。 学部教育を行いたいと思っておりましたところに、この程薬学部からお誘いがあり異動することとなりまし たが、分生研に対する感謝と愛着は今後もずっと変わりません。私が至らぬためご迷惑をたくさんかけてしま いましたが、今後ともご指導いただけましたら幸いです。皆様の益々のご発展を祈念致します。 23 生体有機化学研究分野 助教 松本洋太郎 平成25年10月1日付けで、帝京大学薬学部薬化学研究室に講師として赴任いたしまし た。分生研では生体有機化学研究分野・橋本祐一先生のもとで平成23年7月から2年余 りの間、創薬化学研究に取り組ませて頂きました。思いとしては橋本研や学生さんに十 分貢献できていなかったことばかりが思い出されますが、そんな未熟で至らない私の面 倒を見ていただきまして、今回快く送り出してくださった橋本先生には大変お世話にな り、深く感謝しております。また、研究室スタッフの石川准教授、三澤助教、定年退官 された小林先生、そして橋本真梨子さんには私が赴任してから終始お世話になりました。 日々の職務のこと、研究のことでご面倒ご迷惑をお掛けしました。そして食事や飲みに 声をかけてくださり、たくさんお話しをさせていただき、研究室にすぐに溶けこむことができたことをとても 感謝しております。 学生さんへのメッセージですが、学生さんはみな根性と自主性があって、人格も良く協調性もあるので素晴 らしいと思いました。橋本先生を中心として、皆さんの人柄や人間性が研究室の雰囲気を反映しているのだと 思います。実験やリサーチ、 コロキウムも高いレベルでやっているので、 研究室として一つの理想だと思います。 学生さんにはこの生体有機の文化歴史伝統を是非誇りに持っていただいて、これからの後輩にも継承していっ て欲しいと思います。あと、色々なイベントで卒業生がたくさん遊びに来てくれる研究室でした。卒業生の多 くが生体有機を愛していて誇りを持っているということだと思います。 ということで、生体有機での思い出もたくさんでき、非常に恵まれていました。人生の貴重な財産となりま した。在籍中には生体有機のスタッフや学生・卒業生をはじめ、分生研に所属する他の研究室や事務の方々 に大変お世話になりました。この場をお借りして篤く御礼申し上げます。 現勤務先の帝京大学薬学部は薬剤師教育に力を入れており、研究を行う環境としては分生研には及びませ んが、今後は分生研での経験を活かして新たな気持で研究と教育を頑張っていきたいと思っております。今 後ともどうぞ変わらずご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。末筆ながら分生研のま すますのご発展を心よりお祈り申し上げます。 情報伝達研究分野 助教 岸 雄介 2013年11月より大学院生時代から8年半も在籍した分生研情報伝達研究分野から、東 京大学大学院薬学系研究科分子生物学教室に異動いたしました。 分生研は生物学研究を一から学んだ場所でした。後藤研究室の先輩、同僚たちをはじ めとして、同期の仲間たち、その他の研究室の方々と日々触れ合う中で研究の進め方か らそれに対する考え方、意識の持ち方などを教わりました。分生研はすばらしい研究者 が集まった研究所で、ここで研究を始めて自分の基礎を作ることができたことはとても 幸せでした。 分生研は研究をするためだけの場所ではなく、日々の生活でもお世話になりました。 特に大学院生時代の同期たちとの飲み会やディスカッションがあってこそ、公私ともに大変なことがたくさん あった大学院時代を乗り切ることができました。ソフトボール大会や分生研野球部、隣の渡邊研究室のメン バーとの日々のジョギングなどのスポーツで体力維持、気分転換をすることができました。研究だけでなく、 この8年半のほとんど全てが分生研に依存していたんだなぁ、と改めてその存在の大きさを感じています。 異動先の薬学系研究科は大学内でも分生研とは最も遠い位置にあり、また研究科の本部ということもあり分 生研とは違うことがたくさんあることをすでに感じています。しかし、分生研で学んだことを活かしてさらに 自分の研究を発展させていきたいと考えています。 分生研の皆様、特に渡邊研究室の皆様には大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。 遠いとはいえ同じ大学内ですし、これからも様々な場面でお世話になると思います。今後ともどうぞよろしく お願いいたします。 24 ◦お 店 探 訪◦ 我流担々麺 竹子(本郷店) ゲノム情報解析研究分野 中戸隆一郎 ラーメンには目が無いという方は分生研にも多いと思いますが私は実は担々麺が好きで、今回は担々麺のお店をご紹介した いと思います。 本郷通りをお茶の水駅方面に進んで行った通りの南側にあります。「我流担々麺」という潔い名前のこのお店、店の前に大き なのぼりが立っているのでご存知の方も多いと思います。いくつか店舗があるようなのですが、私はもっぱら本郷店です。店 員の方(外国人ぽい)の「いらっしゃいまし」「ありがとました」など若干 舌足らずな台詞にほっこりします。定休日がなく、23時過ぎまで開いてい るところが大変助かります。一人でも気軽に入れる一方、友人や同僚とビー ルで宴会している方もよく見かけます。 メニューは800円~ 1,000円とやや高いのですが、百円引き券を毎回くれ るので実質百円引きになります。白ご飯とゆで卵が無料なのでお得。麺の 太さとスープの辛さも選べます。おすすめはパイコウ酸辣麺(サンラーメ ン) 。酸味がきいた程良い辛さのスープにパイコウ(豚の中華風天ぷら)が よく合います。辛いもの好きな方には「辛い坦々麺」を。ほっぺたが落ち るという程でもないのですが、何故だか癖になる美味さです。最近つけ麺 も始めたようなので、つけ麺派の方でも。 弥生キャンパスからはやや遠いですがお近くをお通りの際には是非。 営業時間:11:00 ~ 23:00 定 休 日:無休 電話番号:03-5684-0256 住 所:東京都文京区本郷2-26-9 片岡ビル 1F ○平成25年8月14日付 〈退 職〉伊藤 弓弦 助教(細胞形態研究分野) ○平成25年9月30日付 〈配置換〉後藤由季子 教授(情報伝達研究分野) :薬学系研究科へ 〈退 職〉松本洋太郎 助教(生体有機化学研究分野) 〈任期満了退職〉川尻小登江(総務チーム職員) 教職員の異動等について 以下のとおり異動等がありましたのでお知らせします。 ○平成25年6月30日付 〈異 動〉戸田 浩子 財務会計チーム係長 :工学系研究科へ ○平成25年7月1日付 〈異 動〉山口 貴弘 財務会計チーム係長 :工学系研究科より 編 集 後 記 今号より編集委員として参加させていただくことになりました。 よろしくお願いいたします。お忙しい中、原稿執筆にご協力いただ いた先生方には改めてお礼申し上げたいと思います。本号でも掲載 されている分生研ボーリング大会では、毎年賞品を逃しているので、 来年は賞品をゲットして自分の名前を載せたいと思っています。誰 か一緒に練習に行きませんか? (発生・再生研究分野 榎本豊) 編集委員として今回で3度目の参加になりますが、慣れてきた頃 にありがちな不手際などもあり少々慌てました。 年末のお忙しい中快く執筆に協力していただきどうもありがとう ございました。 (RNA機能研究分野 三嶋雄一郎) ○平成25年10月1日付 〈採 用〉清水 容子 総務チーム職員 ○平成25年10月31日付 〈配置換〉岸 雄介 助教(情報伝達研究分野) :薬学系研究科へ ○平成25年12月1日付 〈採 用〉藤井 晋也 講師(生体有機化学研究分野) 分生研ニュースは全国の大学や研究所等に送付していますが、 毎号御礼のメールやFAXをいただいています。「興味深く拝見しま した」「次号も楽しみにしています」等々。分生研ニュースの読者 の多さとその人気を改めて実感します。 今号もお忙しいところ、執筆にご協力いただきありがとうござ いました。 (事務部 大久保幸子) 分生研ニュース第51号 2014年1月号 発行 東京大学分子細胞生物学研究所 編集 分生研ニュース編集委員会(小川治夫、廣井誠、榎本豊、三嶋 雄一郎、中戸隆一郎、大久保幸子) お問い合わせ先 編集委員長 小川治夫 電話 03―5841―7803 電子メール [email protected]
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