特許情報検索ソフト 「JP-NET」活用による特許マップ作成基本レシピ

特許情報検索ソフト
「JP-NET」活用による特許マップ作成基本レシピ
はじめに
1-1)特許マップ作成の効用・効果;特許マップ作成者の研究や出願特許に
係る情報を体系的あるいは局部的に把握することにより、自己の今後の研究や
特許出願を戦略的に行うための指標・指針として活用できる。
1-2)必要な作業量・作業時間;特許マップ作成の目的や範囲などにより、
必要な入手情報量とデータ解析量が決まり、それに応じて必要な作業量・作業
時間が決まる。初心者を想定した場合の、おおよその目安を示すと、
A)特許マップ作成に取り掛る前の調査方針・進め方の検討期間;1時間~4
時間
B)データ出力・集計期間;半日~5日
C)データ加工・解析;半日~14日
D)調査まとめと今後の課題設定;半日~2日
となる。
※出願件数動向や出願人別集計だけの簡易的な特許マップ作成であれば、
1.5日~2日程度の作業量・作業時間で可能。解析対象件数が2,000件
以上の場合で、多面的な特許マップ作成を行う場合には、約3週間程度の作業
量・作業時間となる(勿論、特許マップ作成の経験があれば作業時間は短縮可
能となる)。
特許マップ作成基本レシピ
1) 調査方針・進め方の検討;調査目的、目的を達成するための最適な調
査方法・分析方法、そのために必要な準備事項などの検討
2) 「F-ターム」検索;特許マップ作成を円滑に行うためには、各技術分
野毎に種々の技術観点から細かく区分され構成されている「F-ターム」を
活用するのが有効である。特許マップ作成のための調査に活用する「F-タ
ーム」を検索する方法としては、調査前の状況によって異なるので、幾つか
のケースを下記に示す。
① 特許マップ作成者が自らの出願特許を有している場合;既出願の公開特
許に記載されているテーマコードより関連するF-タームの選択が自
動的に出来る。
② 特許マップ作成者の研究に近い研究を行っている他の研究者の既出願
の公開特許番号を知っている場合;①と同様にその公開特許に記載され
ているテーマコードより関連するF-タームの選択が自動的に出来る。
③ 特許マップ作成者の研究に近い研究を行っている他の研究者は知って
いるが、その研究者の既出願の公開特許が分からない場合;JP-NE
Tの特許検索(検索式入力欄の、発明者又は考案者の検索項目に他の研
究者名、出願人の検査項目に所属大学名を入れて検索を行う)にて、該
当する公開特許の有無を調べる。該当する公開特許が見つかった場合は、
①と同様にその公開特許に記載されているテーマコードより関連する
F-タームの選択が自動的に出来る。該当する公開特許が見つからない
場合には、④以降の方法によってF-ターム検索を行う。
④ 特許マップ作成者の研究内容を表すキーワードを設定し、そのキーワー
ドを用いて、JP-NETの特許検索の検索式入力のキーワード検索
(クレームの語句や全文の語句)を利用して、該当する公開特許一覧を
出して、特許マップ作成者の研究に近い既出願の公開特許を選ぶ。①と
同様にその選択された公開特許に記載されているテーマコードより関
連するF-タームの選択が自動的に出来る。
⑤ 特許マップ作成者の研究内容を表すキーワードを設定し、そのキーワー
ドを用いて、IPDL【(独)工業所有権情報・研修館の電子図書館;
http://www5.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl】の特許・実用新案検索
⇒ パ テ ン ト マ ッ プ ガ イ ダ ン ス ( P M G S ;
http://www5.ipdl.inpit.go.jp/pmgs1/pmgs1/pmgs)のキーワード
検索に入力し、照会画面を「F-タームリスト」を選択し、検索を行う
ことにより、該当するF-タームを直接的に抽出できる。
3) 解析条件(調査対象ドメイン)の設定;上記のIPDLのパテントマップ
ガイダンスの照会の区分のF-ターム照会欄に2)によって選択されたF-
タームを入力し、
「F-タームリスト」を選択し、検索することにより、選択
されたF-タームの「F-タームリスト」を入手する。次に、
「JP-NET」
の検索式入力・検索実行により調査対象ドメインの設定を行う。
「JP-NE
T」は、検索後のヒット件数が、2,000件以下であれば、検索結果一覧
が表示でき、その後の集計や情報加工が容易になるので、出来れば検索後の
ヒット件数が2,000件以下になるように調査対象ドメインを設定するこ
とが賢明である。選択されたF-タームを用いた調査対象ドメインの設定方
法には、幾つかのオプションが挙げられる。
①選択されたF-タームの「F-タームリスト」の中で、観点区分の内容
が特許マップ作成者の研究内容に近い区分を幾つか選択しておき、「JP
-NET」の検索式入力の検索項目の「F-ターム」欄に上記区分のF-
ターム番号を適宜入力し、調査対象ドメインの大きさを把握し、確定する。
※この方法は、選択されたF-タームの調査対象ドメイン内でのドメイン
サイズの調整を行うことに相当する。
②「JP-NET」の検索式入力の検索項目の「F-ターム」欄に選択され
たF-タームを入力し、語句区分(クレームの語句や全文の語句など)欄
に研究内容を表すキーワードを適宜入力し、演算子「AND」設定で検索
を行い、調査対象ドメインの大きさを把握し、確定する。
※この方法は、選択されたF-タームの調査対象ドメインとキーワードによ
る他のドメインの重なりによりドメインサイズの調整を行うことに相当
する。
4) 出力形態の検討;解析する母集団情報として、どのようなものを出力する
かを検討する。例えば、出願人別公報件数リスト、出願人別公報一覧表並びに
公報抄録など。
5) 調査計画の立案;特許マップ作成と分析の出来上がりイメージの検討と確
認を、どのような情報を用いて、どのような加工処理を行い、どのような資料
を作成(グラフ化による可視化など)をすれば目的達成に有効であるかを検討
し、可能かどうかの判断等を加えて調査計画の立案を行う。
6) 調査実行と特許マップ(資料)の作成;調査計画に従って、調査実行と特
許マップの構成資料の作成を行う。特許マップの構成資料の代表的なものを
下記に示す。
6-1)集計結果の全体分析
① 出願件数全体の年度推移;年度ごとの公開特許件数を把握でき、公開特
許件数のピーク時期や最近の傾向(増加する傾向、減少する傾向、横ば
い傾向など)が分かる。
② 出願人別公開件数;出力データとして、出願人別公報件数が多い順にリ
スト化されたものが得られるので、各出願人の総件数の多い・少ない、
どの出願人がどの程度の特許件数を出願しているかが分かる。
③ IPC・F1・Fターム統計;当該IPC・F1・Fタームを含んだ公
報の件数や全体に占める割合などから、集計結果の内訳(技術要素など)
の概略の把握が出来る。
6-2)集計結果の個別分析
① 対象とする出願人の公開特許件数の年度推移;対象とする出願人を選択
し年度ごとの出願件数のグラフ化が出来る(JP-NETでは、出願人
の選択を最大20ケまでのチェックマーカー付与により出来、自動的に
年度ごとの出願件数のグラフ化が可能である)。対象とする出願人の公開
特許件数の推移により、注力時期の把握や、出願人間の比較が出来る。
② 技術分布マップ;技術分野別の出願件数、技術分野別の選択した出願人
の出願件数などが把握でき、技術分野間の比較や出願人間の比較が出来
る(未着手な技術分野やニッチな技術分野の把握などが可能)。
③ 対象とする出願人の公開特許データ解析;単独出願件数、共同出願件数、
各公開特許の概要(公報抄録)、共同出願相手機関名などが分かり、注力
している研究内容や研究連携の状況などの分析が出来る。
7) 調査まとめ;今回の調査で得られた結果を整理し、調査前に設定した目的
と対比させて、総括を行う。目的に合致した結果が得られた場合には、調査
は完了となる。不満足な結果の場合には、原因となる因子や課題を挙げて解
決の可能性を検討し、次の調査活動に繋げる。
おわりに
作成された特許マップ並びに調査まとめを基にして、本調査によって得られた
成果の「今後の活用の可能性」と「研究課題の狙い(研究戦略)」、
「特許出願の
計画(特許戦略)」を特許マップ作成者自身で先ず考察を行い、立案する。考察
内容と計画案を第三者に説明し、意見・アドバイス等をもらい内容の妥当性の
検証を行うのが望ましい。
参考資料
1)「JP-NETご利用案内資料」;日本パテントデータサービス(株)
2)「検索の考え方と検索報告書の作成」
(http://www.inpit.go.jp/content/1000526526.pdf);
(独)工業所有権情報・研修館
3)「先行技術文献調査実務(第三版)」
(http://www.inpit.go.jp/content/100030465.pdf);
(独)工業所有権情報・研修館
4)
「国際特許分類、F1、Fタームの概要とそれらを用いた先行技術調査(平
成25年度)」
(http://www.inpit.go.jp/content/1000545488.pdf);
(独)工業所有権情報・研修館