家 庭 ・ 地 域

「信頼される学校を目指して」
―
家庭・地域との連携による心豊かな児童生徒の育成と教頭の役割
―
豊明市教頭会
1
はじめに
豊明市教頭会では,昨年度より,
「保護者・地域から信頼される学校を目指して」とい
う研究主題のもと,家庭や地域との連携について研究に取り組んできた。
「学校・家庭・
地域の連携強化による学校教育活動の充実と教頭のかかわり」をサブテーマとして,各
学校で進められている連携にかかわる取り組みを見直し,それぞれが抱えている課題を
明確にして,課題解決に向けて実践的に研究を進めた。学校が取り組んでいる内容は多
岐にわたり,情報を共有するという点では有益であったが,それぞれの課題を解決する
ことについて協働的な研究として成果を上げるまでには至らなかった。
本年度は「心豊かな児童生徒の育成」にかかわる取り組みに視点をしぼり,家庭や地
域との連携について研究を進めることとした。そして,研究を実践的に進める中で教頭
の役割を考え,連携に関する取り組みを充実させることで,家庭・地域から「信頼され
る学校」を目指していきたいと考える。
2
研究のねらい
家庭や地域から信頼される学校とは,児童生徒が成長していく姿が見られる学校であ
る。そのためには,授業や学級経営等の質の向上を目指していくことが大切である。そ
して,心豊かな児童生徒を育成するために,家庭や地域との連携を充実させることで,
確かな信頼関係を築かなければならない。また,一つ一つの取り組みの中で,情報の発
信や受信をしっかり行うとともに,家庭や地域の方々からよせられた声に対して,柔軟
かつ誠実に対応できる学校づくりに努めたいと考える。
情報発信
教育活動の公開
学校運営の状況についての
信頼される学校
児童生徒の成長が
見える学校
教育活動の質の向上に
取り組む学校
家庭や地域の人々の声に
誠実に対応できる学校
情報提供
自己評価結果の公表
連携の推進
家 庭
・
地 域
家庭や地域の人々の思い・願い
学校評価アンケート等
支援・協力
地域の教育力
情報受信
-1-
3
研究の方法
○ 市内小中学校における家庭・地域と連携して行われる取り組みの状況を調査する。
○ 市内小中学校における連携推進の取り組みに関して,家庭との連携,地域との連携
に分類し,研究部会を組織する。
○ 各校の取り組みに関しては,マネジメントサイクルを生かした実践を行い,グルー
プワークによる研修を行う。
○ 各校の取り組みに関して,信頼される学校を目指すための教頭の役割やかかわり方
を明らかにする。
4 研究の内容
(1)各校の取り組み状況の調査
市内小中学校における児童生徒の健全育成のための家庭・地域との連携に関する調
査を5月に実施した。該当する取り組みにおける概要・課題・問題点・本年度の改善
計画等を集約した。(p13 資料1参照)
(2)研究の組織
昨年度の反省をもとに,研究が協働的に進められるよう,連携の対象である家庭と
地域に分け部会を設定し,下図のように組織して研究を進めた。
【沓掛小】
「通学団担当者懇談会の取り組み」
【双峰小】
「あいさつ運動の取り組み」
家庭連携部会
豊
明
市
教
頭
会
研
究
推
進
委
員
会
【三崎小】
「三崎水辺公園美化活動の取り組み」
【舘
小】
「1年生親子会食の取り組み」
【栄
中】
「PTAリサイクル活動の取り組み」
【沓掛中】
「校内俳句コンクールの取り組み」
【豊明小】
「地区懇談会の取り組み」
【栄
地域連携部会
小】
「児童の安全・安心のための情報交換会」
【中央小】
「地域行事を支援する取り組み」
【大宮小】
「校区地域連携推進委員会の取り組み」
【唐竹小】
「学校評議員と児童・職員との協働的活動」
【豊明中】
「地域行事への中学生ボランティア参加」
(3)グループワークによる研修
各校の考察や改善について,課題の分析をしたり,他校の教頭がアドバイスしたり
することでよりよい実践ができるように,グループワークによる研修を進めた。
ア 家庭連携部会の取り組み
教育基本法の第13条に「学校,家庭及び地域住民が,それぞれの役割と責任を自覚
するとともに,相互の連携及び協力に努める」とある。学校教育を推進していくに当
たり,保護者の意識及び実践力を高めていくことが何より大きな力となり,
「信頼され
-2-
る学校」づくりにつながっていく。そのためには,保護者が学校の取り組みを理解し,
それぞれの教育活動の重要性を認識した上で,実践力を高めていく場の設定が必要で
ある。
家庭連携部会では,学校と家庭との連携を深め,家庭の教育力を高めることがより
よい学校運営につながると考え,次の2点を柱として研修を進めた。
A
B
学校が主となった家庭との連携のあり方
「あいさつ運動」の充実に向けて(双峰小)
学校と家庭との連携で支える「登下校の安全」(沓掛小)
「三崎水辺公園美化活動」を通した心豊かな児童の育成(三崎小)
保護者の意識を学校に向けさせる「1年生親子給食」(舘小)
PTA活動を通した家庭との連携のあり方
家庭との連携を意識した「PTAリサイクル活動」(栄中)
「校内俳句コンクール」に向けた保護者の支援について(沓掛中)
部会では、各校の実践内容の発表をもとに、学校と家庭との連携における「他校の
参考となる実践の共有」と「効果的な実践に結びつく教頭の働き掛け」の2つを主な
視点として、意見交換を重ねた。各校の取組については,資料2(p17~27)に掲載
した。
イ 地域連携部会の取り組み
地域社会は,児童が様々な人々や集団,多様な文化に触れ,体験的に活動しながら
人格を形成していく場として大変重要である。心豊かな児童生徒の育成においては,
地域社会が担っている役割はとても大きい。
それぞれの校区にはその地域で育まれてきた独特の伝統や風習があり,その地域の
特性を的確に把握した上で,地域社会と協力しながら連携を推進していく必要がある。
そのためには,地域の教育や文化を共に創り育てるという意識をもち,確かな協力体
制を築かなければならない。地域連携部会では,地域との協力体制を築き上げていく
上で,活動を行う主体が地域であるか,学校であるかを意識して研修を進めた。
A
B
地域での活動を主体とする連携のあり方
「地区懇談会を活用した道徳教育の推進」(豊明小)
「地域行事への中学生ボランティア参加」(豊明中)
「地域の悩みを学校現場で解消する取り組み」(中央小)
学校での活動を主体とする連携のあり方
「児童の健全育成を目指す地域連携推進委員会の取り組み」(大宮小)
「学校評議員と児童・職員との協働活動に向けた取り組み」(唐竹小)
「教職員を巻き込んだ児童の安全・安心のための情報交換会」(栄小)
研修の中では、地域連携を進める上で「児童生徒の参加」が、教職員や保護者の意
欲的な参加のキーポイントになるということが確認できた。また、各校が抱える課題
に対してもお互いにアドバイスし合うなど、大変有意義な場となった。各校の取組に
ついては,資料3(p29~39)に掲載した。
-3-
(4)家庭との連携に関する実践例
「明るい学校づくり」を目指して
- わが家からはじめよう「あいさつ運動」のカードを活用して -
豊明市立双峰小学校
◇
取り組みのねらい
本校は,目指す学校像として「楽しい学校,明るい学校,美しい学校」を掲げている。
その実現に向けての一つの手だてとして,元気のよいあいさつ習慣の定着を目指してき
た。そこで,本校に赴任して,朝,校門で横断旗を持った交通当番の保護者(2名ずつ:
交代制)とともに,登校してくる児童にあいさつを行った。しかし,中・低学年の一部に
あいさつを返す児童はいたものの全体にあまりあいさつがなく,素通りしていく児童も
尐なくなかった。毎日あいさつをするよう呼び掛けたが,あまり変わらなかった。ただ,
児童会主催の学期1回のあいさつ運動の期間には,あいさつをする子は増えた。しかし,
運動期間後,しばらくすると元に戻る状況であった。また,どの保護者も児童のあいさ
つが尐ないことは気に掛けていた。
こうした状況を学校も保護者も改善したいという思いはあることは明らかである。そ
こで,学校と家庭が連携するきっかけとなり,継続していく柱となる活動を設定してい
くことで,児童がこれまで以上に進んであいさつができるようにしたいと考えた。教頭
として,学校と家庭がそれぞれの場で,それぞれの役割が果たせる「あいさつ運動」の
充実に向けて,以下のような具体策を講ずることとした。
◇
取り組みの計画
ア 児童会のあいさつ運動
児童を変えるには,まず学校から新たな取り組みを起こすことが必要である。そう
しなければ,保護者の協力は得られない。そこで,児童会担当者に,あいさつの定着
を図るために,あいさつ運動の回数や実施方法を工夫していくことを提言する。
イ PTA役員・部長・委員との連携
あいさつ運動を盛り上げる手だてとして,児童だけでなくPTA役員・部長・委員(合
計31名)にも,あいさつ運動期間中の都合のつく日に,通用門でのあいさつに参加協力
を依頼する。
ウ 全家庭への呼び掛け
あいさつ運動をPTA役員等だけでなく全家庭に広げるために,あいさつ運動の呼
び掛けカードを作成して,各家庭であいさつの状況を記録していくようにする。
◇
実践の内容
ア 児童会のあいさつ運動
児童会によるあいさつ運動は,各学期に1回ずつ行われていた。児童会担当者は,
あいさつのさらなる定着を図るために,運動を学期1回から毎月1回実施することに
した。また,6名の児童会役員が,あいさつ運動期間中に2か所の昇降口に立って呼
び掛けても人数が尐ないため,学級委員や指定した上学年の学年児童を増員して呼び
掛けを行った。
イ PTA役員・部長・委員との連携
-4-
あいさつ運動を広げていくためにはや
はり家庭との協力が不可欠である。そこ
で,PTA役員・部長・委員(合計31名)
にも,あいさつ運動期間中の都合のつく
日に,通用門でのあいさつを依頼した。
あいさつ運動の5日間で延べ50名程の参
加協力があり,登校する児童にあいさつ
を呼び掛けた。
ウ 全家庭への呼び掛け
昨年度,あいさつ運動がPTA役員等
だけでなく全家庭に広がることを目的に,
「わが家から始めよう『あいさつ運動』」 【PTA役員等によるあいさつ運動】
という依頼文を作成した。できるだけカ
ットを入れて見やすく,メッセージが分
かりやすいものにしようと考えた。カッ
トについては,卒業生の保護者を通じて
男子,女子の笑顔のイラストを描いてい
ただき,出来上がった依頼分を全家庭に
配付した。ただ,呼び掛けの文書配付だ
けで終わったためか,後日何人かの保護
者に家庭での取り組みを尋ねたところ,
特に変わったことはないといった反応が
多く,依頼文だけではあまり成果は望め
ないと感じた。
そこで,今年度は「わが家から始めよ
う『あいさつ運動』」のカードを作成し,
1週間の取り組みを親子で確認し合う記
入方式に改善した。項目は,家庭での基
本的なあいさつである「おはよう」
「いっ
てきます」「ただいま」「おやすみ」の4
つとした。まず,PTA役員会でその旨
を提案し,その後の委員会で全委員の了
承を得ることができた。そしてあいさつ
【『あいさつ運動』カード】
運動に合わせてカードを配付し,各家庭
に取り組みを依頼した。後日,PTA新聞に取り組みについての成果を記事としてま
とめて掲載した。
◇
成果と考察
児童によるあいさつ運動にPTA役員が参加したことによって,登校時のあいさつは
これまでのあいさつ運動時よりも良くなった。お母さんたちがまとまってあいさつを呼
び掛けることで,自然とあいさつする人数も増え,声の大きさも大きくなり,成果が上
がった。
また,あいさつ運動後には,児童はまた元に戻ってしまうことが多かったが,以前に
比べて小声ながらもあいさつを返す児童が増えた。
-5-
<カードに書かれていた保護者の感想>
・ はじめ声が小さかったですが,だんだんしっかりできました。
・ 期間が過ぎてもあいさつができるといいね。大きな声で元気よく言えたら,
自分も相手も気持ちがいいものです。
・ これからも元気なあいさつが身に付くように,家族で取り組みます。
各家庭で取り組まれた「あいさつカード」の集計結果は,下の表のようにになった。
おはよう
88%
7 %
5 %
行ってきます
92 %
5 %
3 %
ただいま
おやすみ
元気よくできた
88%
90%
声が小さかった
5 %
5 %
できなかった
7 %
5 %
(回収率:74%)
全家庭の約4分の3が,かなり取り組めたことは成果である。また,そのカードの下
欄に保護者からの感想が数多く書かれていた。
<あいさつ運動に協力したPTA役員等の声>
・ 低学年の子は,大きな声であいさつする子が多く,笑顔でしてくれる子もい
てとてもほほえましく思えました。ただ,恥ずかしそうに小さな声であいさつ
する子がいて,少し高学年に多かったように感じました。
・ 学校や地域の中でも気持ちのよいあいさつができるように,大人が気長に働
き掛けていこうと改めて思いました。
取り組みは1週間であったが,各家庭であいさつの呼び掛けが起き,よくできた家庭
では子どもを褒め,できなかった家庭では家族で取り組むきっかけになったことは,意
義深いと考える。
◇
取り組みの改善に向けて
家庭からあいさつを始める「わが家から始めよう『あいさつ運動』」は,今回,自分の
家庭の状況をチェックするような取り組みに改善したことにより,児童と保護者が確認
し合うきっかけになり,各家庭の意識を高めた。しかし,カードの回収率は74%で,取
り組み状況の分からない不明な家庭が約4分の1あった。次回はより多くの協力を得ら
れるように児童,保護者に働き掛けていきたい。
また,児童のあいさつは,こちらからの呼び掛けで返されることが多く,進んで言え
る児童はまだ尐ない。今後も学校と家庭が協力し合う取り組みを継続していくことが必
要である。
あいさつに関して,7月の学校評価アンケートの自由記述の欄に,「こちら(保護者)
があいさつしないとあいさつをしない教師がいる」という指摘を受けた。
「信頼される学
校」づくりのためには,運動を進める教師がしっかりと率先垂範していくことが大切で
あり,その姿勢を示していくことが,信頼へとつながっていく。直ぐに全教職員にその
旨を伝え,児童へのあいさつの指導だけでなく教師自らが日々実践していくように声を
掛けた。また,9月の授業参観の際にも,再度全教職員にあいさつの意識を高めるよう
呼び掛けを行った。今後も,日々の指導の積み重ねを教頭自ら実践するだけでなく,全
教職員に意識化,呼び掛けを行っていき,学校の活性化とともに保護者からの信頼もさ
-6-
らに高めていきたい。
(5)地域との連携に関する実践例
「地域社会との連携による道徳教育の推進」に向けて
- PTA活動を生かした「地区懇談会」の取り組みを通して -
豊明市立豊明小学校
◇
取り組みのねらい
道徳教育は,学校,家庭,地域の三者がそれぞれの役割を果たすことによって,その
充実を一層図ることができる。子どもたちの道徳性は,学校や家庭,地域社会を含めた
全ての環境の中で,様々なかかわりから育まれるものであり,道徳的実践の指導の面で
は家庭や地域社会の果たす役割は大きい。社会の急激な変化により,価値観の多様化が
一層進んでいると言われる現在,道徳教育の充実を図るためには三者の連携がますます
重要になってくる。そして,互いの共通理解により「三者が同じ方向を向く」というこ
とで,その指導の効果を高めることができると考えた。そこで,本校がPTA活動とし
て行っている「地区懇談会」を利用して,三者の連携による道徳教育の推進に取り組む
こととした。
昨年度までは,子どもの安全・安心にかかわる内容を中心として「地区懇談会」を進
め,危険箇所の改善や安全ボランティアの発足などの成果が得られた。懇談の中では,
子どもたちの安全だけでなく,基本的な生活習慣や公共心・公徳心などについても話題
となり,今後の取り組みの課題となっていた。また,本年度の教育目標における重点努
力目標に道徳教育の充実を掲げ,学校全体で取り組む体制を整えた。学校と家庭,地域
が情報を共有する懇談会から,三者が同じ方向を向き,共に子どもを育てる懇談会とな
るよう働き掛けていきたい。
◇
取り組みの計画
ア PTA役員会・委員会,現職教育での提案
5月の職員会議で本年度の現職教育について提案が行われた際に,
「地区懇談会」で
の取り組みについて教職員に周知する。また,6月のPTA役員会及び委員会で「地
区懇談会」のねらい・内容・運営・係分担等について提案する。
イ 大脇区,坂部区,前後区との連絡調整
7月上旬に,それぞれの区で中心となるPTA役員が区長と連絡をとり,
「地区懇談
会」への参加依頼および協力のお願いをしながら,日時・会場の決定を行う。日時に
ついては,夏期休業中で地域行事に迷惑を掛けないように配慮する。
地域の参加者は区長,区の役員,町内会長,区内在住の市議会議員,区在住の民生
児童委員,区在住の学校評議員,安全ボランティア等とする。また,PTA及び学校
の参加者は,PTA会長,副会長,PTA地区員,一般会員,校長,教頭とする。
ウ 「地区懇談会」案内文の発送
地域の方々への発送は,学校で住所等を把握している方に対しては郵送で,それ以
外の方は区の諸会議の際に直接配付をPTA役員でお願いする。
エ 運営に関する打合せ
「地区懇談会」で利用する資料を作成し,PTA役員・委員と運営に関する打合せ
を行う。
-7-
◇
実践の内容
ア 懇談会の内容
① あいさつ(PTA会長,校長,地区代表より)
② PTA活動概要の報告,学校の教育目標・現状等の報告
・ 資料として学校要覧やPTAが作成したハザードマップを用意する。
③ 懇談
・ 子どもの地域での様子,地域から家庭への要望,家庭から地域への要望,地
域と家庭の連携について,情報交換等について懇談する。
・ 資料として,PTAが作成した校区のハザードマップ,学校要覧,学校が教
える道徳の内容(基本的な生活習慣などについて,低・中・高学年別に目指す
児童像を例示したプリント)を配付する。
・ 話しやすい雰囲気にするために,町内会ごとに分けて懇談を行う。
④ 懇談内容のまとめと終わりのあいさつ
・ 小グループに分けて懇談したところは,それぞれのグループで話題となった
ことを発表する。
・ PTAより,参加していただいた地域の方々へお礼の言葉を述べ,これから
のさらなる協力体制の確立についてお願いする。
イ 各地区の懇談会の様子
前後区
○ 日時,会場 8月5日(金)18:00~ 前後会館
○ 参加者数
22名
○ 懇談の主な内容 (地…地域の方々,保…保護者)
・ 登下校時には,大人から子どもに進
んであいさつをすることで,あいさつ
のできる子どもが育つと思う。元気の
ないあいさつをする子やあいさつで
きない子もいるが,子どもにも様々な
事情があり,その場だけの一時的な様
子で子どもを評価してはいけないと
思う。(地)
・ 親は子育てを通して成長する。小学
生の親は,親としてまだまだ発展途上
である。PTAの活動は親が親として
のあり方を学ぶ場として,とても大切
【前後区懇談会の様子】
であると感じた。(保)
・ あいさつだけでなく,交通モラルや公共心など大人が見本とならなくてはならな
い。子どもは大人の鏡である。(地)
・ 学校へ出向くことで,
「地域の人」として子どもたちに顔を覚えてもらうことが大
切である。学校の授業や行事に参加すると子どもたちとの交流が深まる。(地)
・ 問題がないから意識が高まらないと思うが,問題が起きてからでは遅いので,地
域と家庭が協力できる場を大切にしていきたい。(保,地)
大脇区
○ 日時,会場
○ 参加者数
8月27日(土)19:00~
34名
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大脇コミュニティーセンター
○ 懇談の主な内容
・ カーブミラーの設置や深い側溝に蓋を
設置するなど,地域の働き掛けで危険箇
所の改善が進められているが,まだまだ
子どもたちには注意をさせたい場所がた
くさんある。(保)
・ この地域で歩いている人は地元の人な
ので,顔を合わせたときは,もう少しあ
いさつができるようにさせたい。
(保,地)
・ 子どもたちは「530運動」や「夏の
盆踊り」など地域の行事には積極的に参
加している。今年の盆踊りは子どもたち
【大脇区懇談会の様子】
の活躍で大変盛り上がった。(地)
・ 子どもたちは公園の物は大切に使っているが,東地区には唯一の公園であるので,
もう少し整備を進めてほしい。(保,地)
坂部区
○ 日時,会場 8月28日(日)19:00~ 坂部区公民館
○ 参加者数 28名
○ 懇談の主な内容
・ グラウンドゴルフなどのレクリエーシ
ョンスポーツを地区の行事として行うこ
とで,世代間交流を図りたい。(地)
・ 地域の方々との交流はもちろん,保護
者同士の交流も深まり良かった。(保)
・ 地域の行事としての清掃活動や文化祭
など親子で積極的に参加するようにした
い。また,防災についても訓練を通して
関心を深めてほしい。(保,地)
【坂部区懇談会の様子】
◇
成果と考察
ア 成果
○ 「地区懇談会」は,学校が家庭や地域の方々の思いや願いを直接聞くことのでき
る場の一つである。学校で教えている内容がどのように実践されているのかを知る
ことで,学校の取り組みを見直すよい機会となった。
○ 地域教材の発掘や活用に対して協力を得ることができた。今後,学校の道徳教育
と地域の青尐年健全育成が連携を深めるために,教頭が連絡・調整を図ることとな
った。
○ 参加した保護者が,この懇談会を「子育てを学ぶ機会」ととらえ,今後のPTA
活動の活力とすることができた。
○ 学校が把握していない地域の組織や行事・取り組みなど,PTAの地区委員を通
じて情報を提供していただけるようになった。
イ 考察
○ 懇談の資料として作成した「学校で教える道徳の内容」については,内容が多す
ぎるために説明に時間を要した。懇談で話題とするためには,かかわりの深い内容
-9-
に絞って説明し,話題として活用しやすいも
のにしなければならない。
○ 学校が教えている道徳の内容については,
保護者だけでなく地域の方々にも日頃から
情報発信していく必要がある。
○ 地域行事などについての情報収集力が不
足している。道徳教育の実践の場として地域
の奉仕活動や交流活動の情報についてよく
理解し,道徳の授業や学級活動などで関連を
もたせて指導を進めたい。
【地域で清掃活動を行う児童の様子】
◇
取り組みの改善に向けて
ア 児童の成長が地域の方々に見える学校を目指して
道徳の授業の公開は,保護者だけでなく地域の方々にも行っていきたい。これまで,
地域の方々に対して学校公開を行っていた内容は,運動会や学習発表会などの大きな
学校行事だけである。今後は,学校一日公開などの授業の様子が分かる行事について
も,地域の方々に案内文を出していくこととした。学校での日々の様子を幅広く公開
することで,地区懇談会をより充実したものにすることができると考える。
地域の方々へ学校公開を行うに当たり,その窓口となるのは教頭の役割である。地
域での回覧には,時期により時間が掛かることもあるので,PTA地区委員に依頼し
て個別に案内を配付するなど,効率的な情報発信を心掛けていきたい。また,地域の
方々は学校の施設に不慣れであるため,分かりやすい配置図や案内表示などにおいて
きめ細かい配慮に心掛けたい。
イ 教育活動の質の向上に向けて
学校で指導した内容が,家庭や地域の生活の中でどの様に実践されているか,逆に
家庭や地域での生活が学校生活にどの様に生かされているか。教職員がこのことをし
っかり把握すれば,家庭や地域社会に対する意識が高まり,道徳教育における学校全
体の取り組みが活性化して,教育活動の質の向上につながると考える。
地域社会での子どもたちの様子,子どもたちがかかわっている地域行事など,道徳
の授業で生かすことのできる情報を収集し,その情報を整理して教職員に知らせるこ
とができるのは教頭である。さらに,道徳教育推進教師を中心として組織的に道徳教
育の充実を図るなど,教職員の活動を支援することは,教頭の大切な役目である。
ウ 地域の方々の声に誠実に対応できる学校を目指して
地区懇談会を実施することで,学校に対する地域の方々の思いや願いを知ることが
できる。その中には学校に対する要望もある。それらに対して返答をするだけではな
く,行動で応えていくことが大切である。また,その対応はできるだけ速やかに行わ
なければならない。学校が取り組んでいることは成果として直ぐに現れないこともあ
るので,取り組みの進捗状況を知らせるなど,誠実な対応をしていきたいと考える。
5 研究のまとめ
(1)「信頼される学校」を目指して
ア 開かれた学校づくりを積極的に進める
児童生徒の成長が見える学校として,開かれた学校づくりに努めることが重要で
- 10 -
あることは言うまでもない。教頭として自分の学校が家庭や地域に対して,積極的
に情報発信を行っているかどうか,日頃から見つめ直そうとする姿勢が大切である。
授業公開や学校行事では,単に公開
するのではなく,家庭や地域の方々が
参加しようと意欲をもてるように工夫
する必要がある。児童生徒とともに活
動する場面を設定したり,家庭や地域
の教育力を積極的に取り入れたりする
ことで交流の場面を増やすことができ
る。学校と「共に子どもを育てる意識」
が家庭や地域の方々に芽生えると同時
に,子どもたちは大人に守られ,支え
られていると実感し,自らを高めよう
という意識が高まるのである。
【地域の方から学ぶ児童の様子】
また,学年通信や学校通信の見直しも
しっかりと行っていきたい。教科の内容や行事の内容は記載されることが多いが,
子どもたちの心を育てるための道徳や人権教育などの記事はあまり見られない。教
頭として起案された文書を見るときには,このような点についても配慮し,支援を
行っていきたい。
イ 教育の今日的課題に家庭や地域とともに取り組む
資料2にある沓掛中学校の取り組みは,今日的な課題である「言語活動の充実」
について,家庭と連携した取り組みである。教育の今日的課題に対する学校の姿勢
を,家庭や地域の方々に知っていただくことは,教育活動の質の向上に取り組む学
校として,家庭や地域の方々から評価されると考える。
教頭は学校が抱えている課題を的確に把握し,課題解決のためのしっかりとした
ビジョンをもたなければならない。そして,課題解決のために,研修等を利用して
指導助言・支援を行い,教職員の資質を向上させ,学校教育活動の質の向上に取り
組みたい。
ウ 家庭や地域からの情報を学校組織の活性化に生かす
家庭や地域の方々の声に誠実に対応できる学校であるためには,学校組織をどの
ように活性化させるかが重要である。家庭や地域の方々とかかわることが多い教頭
は,家庭や地域の方々から得た情報を教職員に知らせるとともに,協力体制を築く
ための働き掛けを行い,教職員の意識の高揚を図らなければならない。
例えば,道徳教育の全体計画の作成についてである。各学校の道徳教育の全体計
画には家庭や地域の願い・実態について記されている。家庭や地域にかかわる様々
な情報を得やすいのは,渉外の窓口となる教頭である。積極的な情報受信に心掛け,
その情報を生かす工夫が求められる。家庭や地域の方々の参加や協力の内容及び時
期等,具体的な計画が立てられるように道徳教育推進教師に働き掛けながら,全教
師で創意工夫して全体計画の作成にあたりたい。
(2)今後の課題
○ PTAや地域の行事などに対して教職員の関心を高める工夫
○ 地域の教育力を積極的に活用するための工夫
○ 「信頼される学校」を検証するための学校評価の見直し
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○ グループワークによる研修の充実
○ 学校・家庭・地域の三者がそれぞれの機能を融合的に発揮する連携のあり方
6
おわりに
「信頼される学校」とは,子どもたちの成長が見える学校,教育活動の質の向上に取
り組む学校,家庭や地域の方々の願いや思いに誠実に対応できる学校である。このこと
を具現化するためには,的確な情報提供と情報収集をしっかりと行い,学校教育活動を
見直して,改善に向け,組織的・継続的に取り組まなければならない。各校の取り組み
の真価を発揮させるために大切なことは,教頭として全ての教職員に家庭や地域との連
携推進の意義を周知させると共に,家庭や地域の願いや思いを知らせ,家庭や地域の力
を生かす教育活動の展開を支援することである。
学校は,地域の教育・文化の拠点としての役割を担っている。これからの学校教育は,
地域に開かれた教育を積極的に展開し,家庭,地域社会と連携を密にして,次代を担う
心豊かな児童を育成していかなければならない。豊明市教頭会として今後もこの主題に
関して継続して取り組み,教頭として視野の広い企画能力,組織経営能力,指導力を高
め合う研究を目指していきたいと考える。
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