つばめの話(実話)

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八王子市立東浅川小学校
第 14 号平成 25 年 3 月 22 日
校長 堀田 直樹
校長
堀田 直樹
つばめの話(実話)
私はその方々に、つばめが宙づりになっていて、
夕方、愛犬を連れて近所を散歩していたときのこ
苦しそうにしている状況を伝えました。すると、そ
とです。何の気なしに、視線を上げると、通信線に
の方々は、家に戻って長い棒を持って来たり、近所
コウモリが留まっていました。コウモリですから、
の方にお願いして脚立を借りて持って来たりしてく
宙づりのように逆さに留まっていました。そのコウ
ださいました。そうこうしているうちに、地域の警
モリが留まっている通信線から少し離れた通信線の
察官の方も駆けつけてくださいました。警察官の方
上にも、小型の黒っぽい鳥がたくさん留まっていま
が脚立に乗って、
長い棒で通信線を揺すってみても、
した。20羽ぐらいだったでしょうか。
つばめの足は通信線から外れません。辺りはだんだ
私は歩みを進め、コウモリに近付いていきました。 ん暗くなってきました。
人間と犬が近付いてくるのですから、コウモリは飛
どうしたものかと思案していると、近所の方が高
び立って逃げてしまうかと思いましたが、意に反し
枝切りばさみを持ってこられました。
「このはさみの
て、
コウモリはそのままの姿勢を崩しませんでした。 先を使って、2本の通信線を広げられたら、きっと
目を凝らしてコウモリをよく見てみると、それはコ
足が外れるかもしれない。
」と、おっしゃいました。
ウモリではありませんでした。つばめです。つばめ
わずかな可能性にかけて、高枝切りばさみを使って
が足を通信線に絡ませて宙づりになっていたのです。 救助を試みることにしました。通信線に傷をつけな
つばめは宙づりのまま動かないので、まだ生きてい
いように慎重に通信の間にはさみの先を入れ、少し
るのか心配でしたが、さらに近付くと突然、羽をば
ずつはさみの先を開きはじめる
たばたさせて、絡まった足
と、なんと、つばめの足が通信
を外そうとしました。しか
線から外れ、と同時につばめは
し、足は通信線(単線では
落下しそうになりながらも羽を
なく、複数の通信線がよっ
広げ、空高く飛び立ちました。
てある)から外れませんで
すると、不思議なことに、通
した。
信線に留まっていた鳥たちも、つばめと一斉に同じ
私は宙づりになっているつばめを見上げ、
「何とか 方角へ飛び立ちました。
通信線に留まっていた鳥は、
して助けてあげなければ」と思ったのですが、名案
が浮かんできません。私がつばめを見上げている様
子が気になったのか、同じように犬を連れて散歩を
している方や近所の方が心配して集まってきました。
すべてつばめだったのです。仲間を心配し、周りか
ら見守っていたのかもしれません。その光景を見て
いた人たちからは、自然と拍手が起こりました。み
んな、とてもにこやかな表情をされていました。
今回の行動は、間違った行動であったかもしれません。本来は、電話会社に連絡をして、つばめの救出
をお願いすればよかったのだと思います。でも、集まった方々の善意や優しさに触れることができ、
「人間
って良いものだ。
」と改めて感じられたエピソードでしたので、紹介いたしました。
子供たちに伝えたいことは、
「君たちの周りには、頼りになる大人が必ずいます。辛いとき、困ったとき
は、必ず相談してみてください。きっと、力になってくれるはずです。
」ということです。
保護者、地域の皆様には、今年度も本校教育活動へのご支援とご協力を賜りまして、ありがとうござい
ました。心より感謝申し上げます。
子供たちのさらなる成長に向け、次年度も、どうかよろしくお願いいたします。