バブル崩壊に巻き込まれないために ―コピペというバブルの物語― 同一、またはほとんど同様の状況が再現すると――それはほんの数年のうちに来ることも あるのだが――、それは、新しい世代の人からは、金融および経済界における輝かしい革 新的な発見であるとして大喝采を受ける。こうした新しい世代の人というものは、おおむ ね若い人たちであり、常に極度の自信に充ちた人たちである。人間の仕事の諸分野のうち でも金融の世界くらい、歴史というものがひどく無視されるものはほとんどない。過去の 経験は、それが記憶に残っているとしても、現在の素晴らしい驚異を正しく評価するだけ の洞察力に欠けた人の無知な逃げ口上に過ぎないとして斥けられてしまう。 (ガルブレイス 『バブルの物語』) この文章はバブルについて学ぶときの古典的名著、ガルブレイスが記した「バブルの物語」 という本からの引用です。これは読んでわかる通り「金融」の話をしていますが、ここで この箇所を紹介した理由は、この「金融」を「ビジネス」と置き換えて読んでもらうと、 あるいは「ネットビジネス」と置き換えて読んでもらうと、全くそのまま当てはまると感 じるからです。僕なりの言葉で言い換えてみます。 「ビジネスにおいて過去に儲かった手法が現代において再現されると、過去を知らない若 い世代はそれを革新的発見であると大歓迎を持って迎え入れる。ビジネスほど歴史という 過去の経験が無視される分野もない。過去のバブル崩壊の物語は、誰かから話には聞いて いたとしても、 「今回は違う」 「今乗り遅れたらもったいない」 「この波に乗らないなんてバ カだ」という合言葉とともに、一笑に付してしまうのだ。 」 いかがでしょうか。まさに、金融やビジネスは当然として、ネットビジネス界の最近をよ く言い表していると思わないでしょうか。 新田君との対談を聞いてくれた方もいるかもしれませんが、そこで僕は「コピペ」という バブルの歴史について、簡単にお話しいたしました。聞いていない方もいるかもしれない ので、ここでも改めておさらいしておきたいと思います。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 1 事の発端は僕がまだ22歳か23歳の頃だったと思いますが、この「コピペ」なるイノベ ーションが(あろうことか僕の目の前で!)開発され、ほどなくしてネットビジネス全体 で話題を呼びました。着想からあっという間に商材化され、ネットビジネスをやっている 誰もが 「誰でもコピペで稼げる!」「これからはコピペの時代だ!」「1日5分で500万円稼げ るのにやらないなんてバカだ!」 と叫びながら、コピペ商法に参入していきました。実際に、最初の半年くらいは、それな りの人が稼げました。30万円でリストを買ってきて、月に300万円売り上げるなんて ことは普通にあり、それでまたリストを買って、という形で倍々ゲームを繰り広げていっ たのです。おそらく、一人あたりがコピペ用に持っているリストは、100万単位になっ ていた時期だと思います。個人がスパム業者みたいな規模にまで膨れ上がっていたのです。 まさに、一大バブルの形成です。 誰もかれもがこの商法に手を出し、特に新規参入する人は8割がたこの手法で「起業」し たものでした。当時は「アフィリエイトはコピペで行うもの」という不文律があったとい っても過言ではないほどの、ブームになりました。 「サイトアフィリ?バカじゃないの、そんな何万ページもしこしこサイト作って、小銭稼 いでさ。コピペで情報商材ドーンとアフィリすれば、費用対効果1000%になって返っ てくるんだぜ?小学生の算数ができればどっちをやるべきか、すぐわかるでしょ。1日5 分、これ最強。」 といった感じです。もちろん、ドーンとアフィリしてドーンと返ってくるのは束の間の儚 い夢で、最後にはドーンとそのツケが返ってきます(そう考えると「儚い」っていい字で すね。「人」が見る「夢」なんてものは所詮儚いものなんですねえ)。 経済学には、収穫逓減という難しい漢字を使う簡単な意味の用語があります。要するに 「同じことをやる人が増えてくると、あるいは同じことをやる規模が大きくなってくると、 だんだん割に合わなくなっていくこと」 です。この現象が、コピペ商法にも(当然)訪れました。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 2 最初は30万円で300万円稼げていたのが、次にリストを買った時は、30万円使って 150万円しか稼げなくなっていた。だから倍の60万円を使って、300万円稼ぐこと になった。まだまだ割はいいから、また60万円使ってリストを買った。すると、今度は また150万円しか稼げなくなっていた。だから倍の120万円使って300万円稼ぐこ とにした。次は120万円で150万円しか稼げなくなり、いよいよみんなこの手法の限 界に気づき始め・・・ という感じです。もちろんこんなに数字は単純ではありませんが、構造的にはこういうこ とが起こっていたのです。そしてみんなが限界に気づいたころ、それはまさに限界であり 「手遅れ」でした。もはやコピペは1000人に1人くらいしか稼げない市場となってい たのです。バブルが「崩壊」した瞬間でした。 「コピペ」で稼いでいた多くの人たちは、1980年代の日本のように「このバブルは終 わらない」と感じていたらしく、あるいは「自分だけは稼ぎ続けられる」と勘違いしてい たらしく、随分と派手な生活をしていたようです。高い家に住み、高い時計を買い、ひど い場合はフェラーリを何台も買ったり、クルーザーを買ったりしていました。僕が聞いて 思わず笑ってしまったのは、キャバ嬢に騙されているとも知らずに億ションを買ってしま ったという人の話です。話の真偽は分かりませんが、それだけ「浮かれていた」のだとい うことは何となくお分かりいただけるかと思います。 バブルが崩壊し、当時文字通り「バブリーな」生活を送っていた人たちがどうなったか、 知りたいでしょうか?彼らが進んだ道は3つしかありません。 1. ニート 2. 薄給サラリーマン 3. バカ相手のにわか詐欺ビジネス のいずれかです。この中でも、2番カテゴリーに入れた人は本当に恵まれています。もと もとバカで、何のとりえもない人たちが偶然あぶく銭を手にしただけだったので、そもそ も「まともに仕事をする」ことができないのです。なのに拾ってくれる神様がいたのだか ら、それはもう素晴らしく恵まれているとしか言いようがない。 ほとんどの人は1番カテゴリー、いわゆる3K 労働者になったり、ネットで相変わらずあ ぶく銭探しをしたり、そういう生活になっています。3番カテゴリーの人も少しではあり ますが、存在していますね。主には、初心者が見ても引くくらいのバカを集めて、セミナ ーとかやっています。月収は20万円くらいはあるようです。マルチもここに含みます。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 3 ああ諸行無常。 これは、全く過去のものでもないし、他人事でもないということを、忘れないでほしいと 思います。冒頭のガルブレイスの言葉を思い出してください。「新しい世代は、本質的に過 去を知らず、知っていても気にならず、結局同じバブルとその崩壊を経験する」のです。 今、ネットビジネスで目立っている人たちというのは、新しい世代です。彼らの誰が本物 で誰が偽物なのか、近いうちに歴史が教えてくれるでしょう。果たして2013年、どれ だけの人が残るのか。しかし、歴史の審判を待つ前に、僕らも自分自身でそれを「見極め る目」を持たなければいけないと僕は思います。その崩壊に巻き込まれるのは御免ですか ら。ですから、そのための指針を、全てのバブルに通ずる根本的な原理を、ここで教えま す。バブルというのは、始まりも、終わりも、ちゃんと「目に見える」のです。知識があ り、冷静な人には、全てが見えている。 まず、バブルというのは、一体どういうときに起こるのでしょうか?言い換えれば、どう いう要素を持っていれば、バブル的だと言えるのでしょうか?それは、100年以上に及 ぶ「バブルの研究」がほぼすべて明らかにしていますが、ここでは極めて重要なものを3 つに絞ってお話しします。その3つとは 1.強欲がはびこる 2.楽観主義が支配的になる 3.レバレッジがかかる の3つです。この3つが満たされた時、バブルは起こります。この3つが満たされている ものを、バブルと言います。ですから、ネットビジネスというのは、本質的に「バブル的」 なのです。これらをコントロールして「まともな」ビジネスを行うためには、当然鍛えら れた「精神」が必要になります。僕がレポートに書いた discipline ですね。それが欠けてい ると、ついつい浮かれてキャバ嬢に億ション買っちゃう羽目になる。これは「常軌を逸し たバカ」だからやってしまうのではなく、僕ら全員が、やる可能性があることなのです。 1の強欲については、特に説明はいらないかと思いますが、単なる「欲」との区別はつけ ておいてください。と言ってもどこまでが「欲」でどこからが「強欲」なのかは曖昧でと てもわかりにくいですから、僕自身は「他者の利益になるのかどうか」ということを常に 前面において考えることにしています。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 4 「自分の利益」だけをひたすら追い求めると、それはいつしか強欲になっていくと思うの です。しかし「他者の利益」を常に前面において、それが満たされる範囲で自分の利益を 考えるようにすると、ちょうどいいバランスが取れる。僕自身はそう感じています。他者 の利益がひたすら増大することは当然いいことですから、こういうバランスにしている限 りにおいてのみ、利益の追求は善となり得る可能性を秘めていると思うのです。 自分の利益を前面に置くことの最大の問題は、その状態で利益を追求すると、他者の利益 が置き去りにされ、どんどんと乖離していくことです。 だから、僕は「利益追求はほどほどにしなさい、中庸が肝心です」という仙人の説教をす ることはほとんどなくて、いつも「他者の利益を前面に置きなさい、それが可能な範囲で、 利益を追求しなさい」と言うのです。これはかっこいいことを言いたいからでも、耳触り のいい言葉を言いたいからでも、道徳的に優れた人だと思われたいからでもなんでもなく て、単に「それが起業家として、最も本領を発揮できる方法である」と感じているからで す。 これは、現状取り得るスタンスの中では、最も万能薬に近いと思っています。利益追求を 否定もしない。しかしバブルも生み出しにくい。利益が追及されたところで、多くの人が その利益を享受できる。社会に貢献しながら、それでいて自分の理想も形になっていく。 ここにこそ、僕は「自分で自分を雇用することの最大の意義」があると思うのです。 2の楽観主義については、これは単純に「無知」から起こります。「欲」は誰もが持ってい るものなのでそれ自体は問題ではないのですが、そこに「無知」が加わると化学変化を起 こし、「楽観主義」が生まれてくるのです。 楽観主義というのは、「まあ、うまく行くでしょ、うへへ」というものですが、それが少し 変化すると「1日5分、コピペだけで月収100万円稼ぐ方法もあるに違いない」という ものを生み出したり、「このブームは一生続くんじゃないか、あるいは一生じゃなくてもあ と何年かは続くんじゃないか」というものを生み出したり、「自分は稼げなくなっても、き っとまた何かすれば稼げるに違いない」というものを生み出したりします。 これらすべて楽観主義の子供みたいなものです。しかし冷静に現実を見てみれば、これら はたちどころに否定されてしまいます。「そんな方法は(少なくとも1年以上続くものとし ては)歴史上確認されていない」し、同様に「何年も続くものはもはやブームとは呼ばな い」し、それらに巻き込まれた人たちが進んだ道はもう教えました。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 5 それが、現実なのです。 ガルブレイスを読むくらいの脳ミソがある人は、バブルの意味や原理を知っていますから、 こんなこと言われるまでもなくわかっています。だから、ネットで激しく稼いでいるらし い人たちを見ても、まさか「もしかしたら俺も・・・」などと「楽観的」にはならない。 でも、そういう知識のない「無知」な人たちが度を越えて楽観的になり、バブルを引き起 こし、自分で起こしたバブルに巻き込まれ飲み込まれ藻屑になっていくのです。 バブルについては、是非以下のこともセットで覚えておいてください。今度はバブルの「終 わり」を見抜くために重要だからです。 「損をするのは、逃げ遅れた人だけ」 だということです。今、バブルの先頭を走っている人たち、バブルを大きくしてあぶく銭 を吸い上げている人たちは、バブルが崩壊する前に逃げることができる可能性があります。 「必死で」お金を吸い上げようとしているのも、吸い上げられるうちに吸い上げられるだ け吸い上げておいて、あとはドロン、という戦略(?)を取ることも視野に入れているか らでしょう。 実際、僕よりも前からネットビジネスをやっていて、いまだにそれなりの影響力がある人 というのは、そういう人達です(さすがにドロンしたわけではないと思いますが。ドロン した人はもう「見えなくなっている」ので)。バブルの先頭を走り、一抜けた人たち。 バブルの先頭というのは、実はバブルを起こしているわけではなくて、バブルの目となっ ているだけですから、本人たちは意外と現実に気が付いているものなのです。自分の後ろ で起こっているバブルが見えているから、ヤバくなったら一番に逃げることができる。そ の人たちが逃げるのをきっかけに、バブルが崩壊すると言ってもいいかもしれません。そ れをきっかけにして「クレジット・クランチ」が起こるからです。膨れすぎたバブルが、 一気に収縮に向かう。 先ほども言いましたが、バブル崩壊には必ず予兆があります。ネットビジネスみたいに原 始的なバブルが起こる場面では、それはほぼ確実に目に見える形で起こります。それは何 か。 「先頭がいなくなること」 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 6 です。今目立っている人が、何らかの理由でいなくなるのがきっかけとなる可能性が一番 高いと思います。実際、第一次ネットビジネスバブルが崩壊した時は、その通りになりま した。 当時、そのバブルの先頭に立っていた人たちが「いなくなる」理由として流行ったものの いくつかを記憶しておくことは、歴史が繰り返されるこの世界において、無駄ではないで しょう。主なものは、 「引退します」 「一線を退き(会長になり)、後進を育てます」 「新しく○○というビジネスにチャレンジします」 などなどです。こうなってくるとあとはクレジット・クランチが待っているのみとなりま す。というのも、バブルの頭が取れるので、あとは風船の頭に穴が開いたように崩壊する しかないからです。 バブルが「バブル(=泡)」と呼ばれるのは、本当に稼いでいるのはごく一部で、あとは虚 像が膨れ上がっているというだけという事実によります。ネットビジネスバブルというの はその構造が極めて原始的なので、 「一部の目立っている人だけが稼いでいて、それ以外は “そういう空気がある”だけにとどまる」のです。平たく言ってしまえば、実際は5人し か稼げていないのに、それが100人に見えているのがネットビジネスバブルなのだ、と。 だからその5人がいなくなれば当然稼げる人も不在になり、泡はポンとはじけ、崩壊する、 と。 彼らが「引退する」言い訳はいろいろあるのですが、要は彼らはその方法で稼げなくなっ てきた実感があるからそういうことを言って逃げるわけです。そのために、可能な時に吸 い上げるだけ吸い上げて、逃げる準備を整えておきます。ある有名な上場企業の社長が、 毎月プライベートジェットで10億円単位の現金を某国に持ち出していたのは一部では有 名な話で、仮に自分たちが起こしているバブルがはじけても、自分は痛くもかゆくもない、 ということなのですね。 バブルは、必ず「引っ張って行く人」「大きくする人(=カモ)」「崩壊させる人」がいます。 大事なのは、最初と最後は大体同じ人であるということです。先頭を走っていた人が「ご めん、もうむりぽ」となった時に、崩壊が起こる。金融危機を起こしてなお何百億円もの ボーナスをもらい続けた人が一部いるのと同じで、崩壊で困るのはその他大部分の人々だ けなのです。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 7 当時のコピペバブルでも悲惨な目にあったのは、それらに乗っかって、強欲と楽観主義で 「実際にバブルを起こしていた」無知な人たちです。割を食うのは、いつもそういう人達 です。うまく逃げた人たちは「大御所」として普通に生きています。もちろん、バブルを 起こしているのが必ずしも悪い人であるわけではないのですが。 1990年頃にバブルが崩壊した時も、その直前に土地や家を買った人だけが莫大な損を しました。歴史上起こった全てのバブル、チューリップからリーマンショック、そしてコ ピペバブルまで、すべてそうです。 「最後の人」がいつもババを引くようにできている。だ からソロスは 「波の向きが変わるまでは、その波に乗っているのがいつも正しい」 と言ったのです。一般にこれは「トレンドに乗ることの正しさ」を言っていると考えられ ているようですが、彼の発言で大事なのは結論部ではなく、条件部の方です。波の向きが 変わるタイミングと、その方向が分からないのなら決して乗るんじゃない、という(裏の) メッセージが込められています。その程度のメッセージも読めない人たちが、いつの時代 もカモにされていく。 こういう「心理的状態」に加えて、レバレッジがかかるようになると、事態は完全にコン トロールできなくなります。ネットビジネスの最大の特徴はそのレバレッジにあると言わ れますね。それは全く正しい理解だと思いますが、しかし同時に、そのレバレッジはバブ ルを生むものなのだという理解もしておく必要があるでしょう。 1クリックで数万人にメッセージが届けられる、それも無料で、という現実は、極めて大 きな影響力を持っていると言えます。これはまさにレバレッジのなせるわざでして、きち んとコントロールしないと知らず知らずのうちにバブルに巻き込まれてしまうかもしれな い。もちろんコントロールしろと言っても「メルマガは一人1000部まで!」とかいう 遠足のおやつ的な話ではなくて、その心構えの方の話ですが。 「一つ確かなことは、ある時点で多数の愚かな人々が、多額の危険な資金を持っているこ とだ。 (中略)はっきりしない原因から、そうした人々の資金が著しく増え、誰かがそれを どんどん使うのを待つようになる。いわゆる「過剰」状態である。そしてそれを使う人が 現れると、「投機」が発生する。資金は使い尽くされ、「恐慌」が勃発する。」(W.バジョッ ト 「エドワード・ギボンについてのエッセイ」) Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 8 これもまさに、ネットビジネスの世界をよく表していると思いませんか。「はっきりしない 原因から」が個人的にはツボで、そうなんだよなあ、と。なんであるのかわからない、出 所不明のお金が、そこにあったりするんだよなあ、などと思ったりするのです。 そしてそういうお金が動き出し、それに群がる「カモ」が増殖しだし、バブルが起こって、 システム的な限界が来た時に、崩壊し、恐慌になる。何百年も変わらない、普遍的な、し かし陳腐な物語です。 こういう時期には、「詐欺」が横行するというのも一つの特徴ですね。強欲で「まあきっと うまくいくさ」という楽観主義者がはびこっているのだから、それをカモにしようとする 人が現れるのも当然です。詐欺は、 「目立っている人の陰で、後ろで、こっそりと」行われ るものだということもお伝えしておきたいと思います。 さて、第一次コピペブームが崩壊した後、ネットビジネスは少し元気がなくなりました。 まさに恐慌が起こったのです。だから、僕の世代というのは空白の世代と言われていて、 ぽっかりスタープレイヤーが抜けている。なぜなら、「恐慌」を目の当たりにしてしまって 誰も参入してこなかったからです。先頭の方々が揃って「引退」し、 「もうネットでは稼げ ない」と一番言われたのもその時期です。各 ASP の取扱額は減り、「そろそろ潰れるらし い」「そろそろ査察が入るらしい」などという噂が絶えず流れていました。実際になくなっ た ASP もいくつかあります。 しかし、歴史は繰り返し、バブルは繰り返す。今また、一段階発展した第二次コピペブー ムがきています。今は、僕の世代を飛ばして、新田君たちの世代が時代を引っ張っていっ ています。まさに、「新しい世代」です。ガルブレイスが言った、「新しい世代」にそれは 「革新的発見」として歓迎され、ブームになっているのです。僕らが考えなければいけな いのはそれをどうするかとかではありません。 いつ崩壊するのかということと、それまでに自分たちのビジネスをしっかり構築しておく ということです。 繰り返しになりますが、バブルの崩壊には、必ず予兆があります。ネットビジネスにおい ては特に――なぜかこれまで誰も語ってきませんでしたが――非常にわかりやすい予兆が あるのです。僕らは今年、そういう「予兆」をしっかりと横目で見つつ、ああ、カウント ダウンが始まったなと思いつつ、自分を磨き、自分の確固たるビジネスを築かなければな りません。バブルが崩壊しようが何だろうが関係のない、本当のビジネスを。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. All Rights Reserved. 9 なぜ僕のビジネスがいつも「安定している」のか、あるいは多くの人たちと異なり「億を 稼ぐ」などということを「目標にすらしなくていい」のかということの意味を、是非考え てほしいと思います。そんなもの、ビジネスにおいては「関係がない」からです。「当たり 前」の現象を、どうしてわざわざ目標にする必要があるのか、と。ビジネスというのはそ ういうもの。今回のセミナーでは、そのロジックのすべてをお話しするつもりですから、 それまでにしっかりと「自分の心と頭」を地ならししておいてほしいと思います。 僕は確かに、 「地下に潜った」などと言われるくらいネットビジネスの動向やブームとは無 関係にビジネスを行ってきました。おかげで誰よりも安定してビジネスが行えていますし、 僕の場合は「ビジネス=創作&表現活動」なので、自分が作りたいものを作る機会を与え てもらえているという言い方もできますが、しかしこういう事実も知っておいてください。 「波に乗れば儲かったはずの数億円をふいにしている」 と。 ソロスが言うように、波の転換点が明確にわかっているのであれば、波に乗ることは(お 金を稼ぐという意味においては)正しいのです。しかし僕は、それを拒否しました。お金 を稼ぐことそれ自体に興味がほぼないということもありますし、そういう「起業家として、 また教育者として正しくない」ことをしたくなかったということもありますし、そんなく だらない事にかまけているよりも時代に関係なく自分がやりたいことができる環境を整え ておくことの方が重大で、それこそが「投資」だと確信していたからでもありますが、そ の代償は控えめに見積もっても数億円に上ります。「機会損失のリスク」を取ったのです。 この覚悟があるのかどうかです。Discipline というのは、この覚悟を持てるかどうかなので す。その時その時で目の前にぶら下がる美味しそうなニンジンにつられてフラフラしてい る人というのは、時代に影響されないビジネスなど作れません。目の前に置いてある数億 円を、眉一つ動かさずに「私には必要ありません」と突き返せるのかどうか。「一般人が嫌 がるようなリスクを取るのが起業家である」と言うのならば、 「しょーもない波に乗らないというリスクをも取れるのが真の起業家」 なのだということを、最後にお伝えして、この短いレポートを終わりにしたいと思います。 今年一年、共に頑張って参りましょう。 Copyright©2013 Takenobu Kisaka. 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