映像音響システムが巨大企業を接続

ウェスタンリファイニング
映像音響システムが巨大企業を接続
ROGER MAYCOCK, PRO AV MAGAZINE, SEPTEMBER 2005
石油精製会社が自動 AV システムを設置、社
内の会議を離れた場所で働く従業員に向けて放
送しはじめた。
課題 : 225 ヘクタールの敷地にいる社員に向けて
会議を放送するため、リーズナブルで完全に自動
化された AV システムを設置
解決法 : スピーチを感知して動き自動的にデフォ
ルトに戻るカメラを使い既存のネットワークインフ
ラを使ってすべての社内会議を放送
テキサス州エルパソにあるウェスタンリファイニングの石油精製施設
毎日 10 万バレルを超す石油を精製するウェスタンリファイニングはテキサス州エルパソに本社を置くが、道路を挟んで大き
な石油精製施設を 2 つ構えている。この 225 ヘクタールの敷地にはおよそ 350 人の従業員がおり、日常的に行われる会議に
主要なメンバーを集めるという任務は過酷な労働だった。解決法を見出そうと躍起になった経営陣は同社の情報技術担当マ
ネージャー、ブレーク・ラーセンを呼びこの問題を委ねた。彼はこう語っている。
「問題は毎日行われる大規模なミーティングを会社中に放送できるようにすることでした。その会議に参加しているかのよう
に、皆がその進行を見たり聴いたりできるようにすることが重要だと考えていたからです。経営陣は当初 CCTV で放送しようと
考えていましたが、システム構築のコストが高かったので私は他の方法を必死になって探していました」
山積みになった面倒な課題を前にラーセンが求めていたのは、システムを操作する音声映像技術者をフルタイムで雇わずに
すむよう完全に自動化したシステムだった。ラーセンは AV システムの設計施工業者数社から見積を取ったが、その中で採用
されたのは地元テキサス州エルパソのハウエル・エレクトロニクスが提案した既存のネットワークインフラを活用したパッケージ
だった。
システム設計
4 万 5 千ドルをかけて昨年完成したこのシステムで設計を担当したハウエル・エレクトロニクスのスティーブ・ウォルトマ
ンと彼のチームは、声に反応して自動的にホームポジションに戻るカメラなどのシステムを採用した。この中で BIAMP の
AudiaFLEX が持つデジタルオーディオプロセシングとロジック制御機能を活用している。出席者のエリアを複数のゾーンに分け
るためにガンマイクが設置され、司会者席のテーブルにはグーズネックの単一指向性マイクが 5 本置かれた。
マイクが拾った音声信号は AudiaFLEX のロジックコントロールを通じてカメラを動作させ、サミングされた映像と音声がそこ
から同社の Windows TM ベースのメディアエンコーダーとサーバに向かい、リアルタイムで LAN を使って分配されたり記録され
たりする。会社中のさまざまな場所にいる人たちは標準の Windows TM メディアプレイヤーを使って、イエローページコンファレ
ンスルームでの会議を見たり聞いたりできるのだ。
システムの基本
Electro-Voice のスピーカー Sx100 が 25 本と QSC のパワーアンプ ISA シリーズが設置されているものの、これはもっぱら
録音済みの素材を SONY の DVD/VTR コンビデッキ SLV-D500P で再生するときに使われている。 部屋の前方にはパネリスト用のテーブルがあり、中央の司会者席には Audio-Technica のグーズネックマイク ES915 が卓上
ウェスタンリファイニング
スタンド AT8615 にマウントされて並んでいる。さらに司会者席には特注のコント
ロールステーションが真鍮製のコネクタープレートとベースパネルでしっかりと取
り付けられている。このコントロールステーションには 5 本目の Audio-Technica
ES915、LAN で中継する映像を映し出す 7 インチの液晶ディスプレイ、さらに
On-Air と Off-Air の自照式押しボタンが付いている。司会者はほぼ毎日替わる
ので、このシステムでは使いやすさが重視された。
出席者の発言をカバーするのは Audio-Technica のコンデンサーマイク
AT835b が 7 本で、天井からショックマウント AT8415 と Atlas のマイクブーム
MS12C で取り付けられている。このマイクで室内がグリッド状に 7 つのゾーンに
分けられていて、AudiaFLEX が操作するカメラが各エリアをカバーできるよう固
定されている。これで中継を見る人たちは発言者のクローズアップを見られるの
だ。同様に司会者の前にあるマイクで操作されるカメラは部屋
の前方をねらっている。
司会者用テーブルの上の壁には Pelco の金具 CM1750 で
Honeywell の高解像度カラーカメラ ACC484TP が 6 台設置さ
れていて、それぞれにコンピューター制御の自動フォーカスレン
ズ CG-TG1020513 が付いている。このセキュリティグレードの
カメラは出席者のさまざまなショットを狙っていて、マイクのゾー
ンに対応している。後ろの壁にもさらに 2 台のカメラが付いてい
る。1 台が司会者やパネリストを狙っていると他のカメラは経営
陣を映し出している、といった具合だ。カメラからの信号は直
接 Pelco の 20ch シーケンシャルスイッチャー VA6220 に送られ、
アラーム入力に自動で反応するよう設計されている。このスイッ
チャーにはアラームモードがあり、ドライコンタクトクロージャで
特定のカメラを呼び出せるようになっている。
AudiaFLEX はマイクがアクティブになる度に感知する内部ロ
ジックにしたがって、このドライコンタクトクロージャに制御信号
を送っている。この機能によって素早くそして自動で、司会者や
パネリストと出席者の映像を切り替えることができるのだ。
AudiaFLEX からの音声出力と Pelco VA6220 の映像出力は
サミングされて Ocean Matrix の映像音声分配器 OMX-7001 に
送られる。ここから信号が送られる先は、IP ブロードキャストの
インターフェース、WindowsTM のメディアエンコーダーだ。
イエローページコンファレンスルームの反対側には Winsted
のコンソール K8574 があり、BIAMP の AudiaFLEX、Pelco の
スイッチャー、SONY のコンビデッキ、QSC のパワーアンプが
DELL のパソコン 2 台とともに収容されている。リアルタイムの、
あるいは保存してある映像を見るために Ademco の 10 インチカ
ラーモニター AMC-10 も設置されている。
システムコンソールはまた、Extron のメディアプレゼンテー
ションスイッチャー MPS112 を経由してプロジェクターや CG を
放送するための入力を提供し、書画カメラやビデオカメラ、コン
ビデッキなどソースの出力も接続している。室内にはプレゼン
外部からのノイズを排除する
ウェスタンリファイニングの事例では、BIAMP の
AudiaFLEX デジタルオーディオプラットフォームはシ
グナルプロセシングだけではなく、アクティブになっ
たマイクにしたがってカメラを選択するようドライコン
タクトクロージャを操作してもいる。
AudiaFLEX のロジックプログラムは異なる位置に
付けられた 9 台のカメラを選択し、室内の様子や出
席者を映し出すために使われている。司会者席を
狙っているカメラが優先権を持っていて、マイクが音
声を拾うとそのマイクに対応したカメラが出席者を映
し出す。つまり AudiaFLEX は発言が重なったときだ
け少し注意すればいい。
「この設備でいちばん難しかったのは、158 平方メー
トルの会議室でマイクのカバーエリアだけを使って感
知のによる情報だけで制御するという、カメラの向き
をシステム化してしまう手法でした。そのためにはこ
のシステムが外部からのノイズを拾わないものとし
て動作させなければなりませんでした」とウォルトマ
ンは語る。
この問題と戦うため、ウォルトマンは AudiaFLEX
の制御機能を使ってまず基本的な音響システムを設
計し、主だった操作方法を設定した。次にパラメト
リックフィルター、オートマチックミキサー、ロジック
機能、そしてコンプレッサー / リミッターといったプロ
セシングを使い、さらにロジックゲートでタイミング
を合わせた。スピーチに反応して動作し始めるカメ
ラの制御システムは室内の拡声と統合された。最終
的なチューニングは実際に会議を放送している最中
に行ったという。
ウェスタンリファイニング
テーション用に InFocus のプロジェクター LP900 と DaLite の 120 インチスクリーン Model C が装備されている。
司会者用テーブルと Winsted のコンソールを結ぶたった
1 本のケーブルで司会者用テーブル上にある 5 本のマイ
クからの信号を送り、同時に司会者へのビデオ信号が送
られているので、放送される AV 信号をモニターするこ
とができるのだ。
経済的なマルチメディアソリューション
社内の会議を放送するために映像音声の信号が
Windows TM のメディアエンコーダーに送られているが、
ここでは Windows 2003TM サーバと WindowsTM メディア
調整室に設置された AudiaFLEX などの機器
サービスによってマルチキャスト放送と同時にエンコード
した信号を保存してもいる。標準的な WindowsTM のツールやアプリケーションを使ったことで特別なソフトウェアやハードウェア
がなくても社員が会議を見ることができる。このシステムが削減したもう 1 つコストだ。フルバンドワイズのバージョンはおよそ
2MB/S を誇る社内の LAN でマルチキャスト放送されているが、もう 1 つ圧縮されたファイルも作られている。このローバンドワ
イズのファイルは主に現場などからインターネットや VPN を使って見ている社員のためのものだ。
このシステム最大のメリットは、ゆとりを持って効率的に多くの人とコミュニケーションができる点だ。ラーセンはこう語ってい
る。
「この設備は私たちにとってかなりリーズナブルな解決法になりました。スティーブ・ウォルトマンとハウエル・エレクトロニクス
がこのソリューションを見たとき、私は自分が経営陣の一人になったかのように喜んだものです。コストが CCTV の半分だった
んですよ」