国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 5.1 労働法令 調査中 5.2 労働基準関係法 −労働契約 従業員と雇用者を結ぶ契約である。従業員はその労働の対価として、雇用者から給 与を受け取る。このような契約の存在によって、双方に相互的な権利・義務が発生 し、一定数の規則を遵守する義務が課される。ここで注意すべきは、書面の存在が 不要なことである (いくつかの場合を除く)。しかしながら書面の存在は、契約の 範囲を明確にし、紛争のリスクを制限するという限りで保証を与える。いずれにせ よ、法律は雇用者に、雇用に際していくつかの項目が記載された書面を提出し、賃 金支払い明細書 (こちらにも義務付けられた記載事項がある)の交付を義務付けて いる。 労働契約の法的定義は存在しないが、それでも、判例によっていくつかの項目が与 えられている。裁判官にとっては、人が収入のために、給与と引換えに他者の管理 下で働くときから契約が存在する。この定義より、労働手当て、給与、立場の従属 の要素が前面に置かれる。労働契約によって明らかにされた労働者の身分は基本的 なものであって、企業における一定の権利を守り、認めさせるものである。つまり、 少なくとも SMIC に等しい給与の受取り、保健衛生に関する保護、有給休暇の取 得、労働時間を制限する措置の恩恵に浴することなどである。 パートタイム労働・短期雇用・臨時業務・若年者と失業者のための特別雇用は、書 面を要する契約が義務付けられている。 自宅で従業員を雇う個人は、サービス小切手 (給与と社会保険料の支払いを簡素化 した方法)を、勤務報酬の支払いのために用いることができる。したがって雇用者 は、給与支払明細書の発行を免除される。加えて、2003 年 7 月 2 日付け法律の枠 組みにより、最小規模の企業は TEE (Titre Emploi Entreprise:企業雇用券)を利 用することができ、労働契約と給与支払いの代わりにできる。 法律ではあらゆる契約と同様に、労働契約が効力を発するためには、下記の規則を 遵守しなければならない。 ・ 契約の目的は善良の風俗に反するものであってはならず、公の秩序を尊重しな ければならない。 ・ 当事者は契約締結能力を享有しなければならない (未成年者は、その法定代理 人の許可を要する)。 ・ 当事者の合意は、暴力あるいは詐欺の結果としてはなされない。 ・ EU の指令により、被雇用者に対する書面による契約の提出が、雇用から 2 カ 月以内に課される。 当事者の義務として、雇用者と被雇用者が労働契約に署名したとき、以下の義務を 負う。 ・ 雇用者から被雇用者へ 定められた給与を支払い、役職に応じた仕事を与え、労働にかかわる法的・協 約的規則を遵守する。 1 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 ・ 被雇用者から雇用者へ 雇用者の監督と命令の下で勤務し、内部規則と保安指示を遵守する。 期間の定めがない 期間の定めがある CDI フルタイム CDD パートタイム フルタイム 図 5‑1 派遣または 臨時雇用契約 パートタイム 労働契約の類型 ・ CDD (Contrat de Travail à Durée Déterminée:有期限雇用契約) 企業の通常の継続的業務にかかわるポストを目的としても結果としても、与え ることはできない。期間は 9 カ月 (1 回の更新は可能)を超えてはならない。た だし、以下の例外を除く。 (1) 季節労働に対する 8 カ月 (2) 緊急の作業あるいは CDI (Contrat de Travail à Durée Indéterminée:無 期限雇用契約)で募集している労働者を待つ間の 9 カ月 (3) 仕事の一時的増加による慣例的臨時雇用に対する 18 カ月 (4) 輸出の例外的需要がある場合の消失が予定されているポストに対する 24 カ月 雇用者はすべての場合において、給与の合計支給額の 6%に相当する不安定雇用手 当ておよび有給休暇手当てを支払わなければならない。 ・ 派遣労働契約 (派遣会社との 3 者契約) 契約条項は CDD と関連を持ち、同じ規則に従う。相違点は労働日数 5 日当た り 1 日の割合で (最高 10 日)、契約期間が延長あるいは短縮されうることであ る。労働者は、有給休暇相殺補償金と 10%の不安定雇用手当てを享受する。 −労働時間 労働時間の規制は、労働時間削減に関連してオブリ諸法により修正された。これ らの法律自体は、2003 年 1 月 17 日付フィヨン法による修正を受けた。 全労働者に共通の諸規則は、以下に展開される。しかしながら、フィヨン法以降、 職種あるいは企業それ自体の内部において多くの措置が修正可能である。 従業員数にかかわらず、あらゆる企業において法定労働時間は週 35 時間に設定さ れた。これは、時間外労働を開始するための基準となる時間である。しかし、実 際の労働時間は、必ずしも法定労働時間に適っている必要はない。協約と集団協 定によって、より少ない労働時間を設定することができる。また、実際の労働時 間は補償を受ける権利が与えられる時間を上回ることもできる。 2 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 表 5‑1 労働者 法定労働時間 1 日当たりの労働時間の上限 1 週当たりの労働時間の上限 18 歳以上 臨時超過勤務の場合、48 時間、あるい 10 時間 6 時間の連続勤務を超えた場合、少 は連続する 12 週間について 44 時間 なくとも 20 分間の休憩が認められ (県労働局の許可により特例が可能) なければならない。 18 歳未満 35 時間 7 時間 連続勤務時間は最高 4 時間 30 分で、 少なくとも 30 分間の休憩が認めら れなければならない。 ・ 超過勤務時間 (労働法典第 L212-5 条) 時給の増額あるいは補償に対する権利を付与する。超過時間の控除と増額は、 賃金支払い明細書に表示されなければならない。 超過時間の増額の合計は業種の協定によって設定される。増額の割合は 10%を 下回ってはならない。協定がない場合、最初の 8 時間に対しては 25%、以降は 50%の増額である。1 年当たりの超過時間割当ては、業種の拡大協定によって、 ない場合はデクレによって設定される (従業員 1 人当たり 1 年間に 180 時間の 法定超過勤務時間)。 いずれにせよ、労働協約あるいは拡大集団協定、または、企業協約あるいは協 定の適用に際し、超過勤務時間に対する支払いと増額は、 「代替代償休日」に代 えることができる。 新年度 (9 月)の始めに、35 時間法のそのほかの修正を巡って、労働相と組合の 会合が予定された。 3 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 −休暇 ・ 祝祭日 表 5‑2 労働法典第 L222‑1 条に指定されている法定祝祭日 祝祭日 日 付 元旦 1月1日 メーデー 5月1日 第 2 次大戦終戦記念日 5月8日 革命記念日 7 月 14 日 聖母被昇天祭 8 月 15 日 万聖節 11 月 1 日 第 1 次大戦終戦記念日 11 月 11 日 クリスマス 12 月 25 日 五旬祭の月曜日 移動祝祭日 復活祭の月曜日 移動祝祭日 キリスト昇天祭 移動祝祭日 5 月 1 日のみ必然的にすべての労働者に対する祝日となる (あらゆる人が休業 し、支払いを受ける日)。 法定祝祭日には、職業あるいは地方の祝祭日を加えることができる。 祝祭日と休業日に対する支払いは、少なくとも勤続 3 カ月で、祝祭日 (いかな る条件も存しない 5 月 1 日を除く)前後の 2 カ月間に 200 時間の勤務があるす べての従業員に対して義務付けられている。 ・ 有給休暇 すべての労働者は、参照年度中 (6 月 1 日〜翌年 5 月 31 日)少なくとも 1 カ月 間の実質的労働期間従業していた場合、年ごとに雇用者から支払われる有給休 暇に対する権利を持つ。しかしながら、業種協定あるいは企業協定によって異 なる参照期間を設定できる。また、有給休暇金庫が設立されている職種では、 参照年度は 4 月 1 日〜翌年 3 月 31 日となる。 これらの職種では、有給休暇は雇用者からではなく、有給休暇金庫から支払わ れる。 病気の期間とストライキは、法律上、労働時間と同等の扱いを受けない (労働 協約の取決めと条項が反対する場合を除く)。 労働者は、参照年度中、実際に働いた月ごとに 2.5 日、あるいは 1 年につき全 体で 5 週間、就業日 (日曜日以外の毎日)を休日にする権利がある。労働時間の 調整という枠組みで署名された多くの協定により、過重労働を埋め合せるため の、追加の休暇取得が可能になった (特に管理職の大部分に対して)。 ・ 母性・父性・養子縁組休暇 賃労働に従事する妊娠した女性は、妊娠の際、一定の特別な措置を受けられる。 4 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 いくつかの場合、これらの措置は養子縁組にも適用される。一方父親は、諸々 の条件下で父性休暇を取ることができる。 以下は妊娠した女性を保護する措置である。 (1) 雇用者は、雇用の拒否・使用期間中の労働契約解消・配置転換の言い渡し に関して、女性の妊娠を考慮に入れてはならない。 (2) 状況が要求する場合、妊娠した従業員は一時的にほかの仕事に配属可能と なる。 (3) 診察のために、給与の損失なく欠勤する許可を得る権利がある。 (4) 補償された母性休暇を得る権利があり、その間労働契約は一時停止となる。 (5) 妊娠が明白な女性は、通常課される契約解除予告を遵守することなく辞職 することができる。 (6) 妊娠の全期間を通じて、また、出産 (あるいは養子縁組)後に、当該従業 員が妊娠と無関係な重大な過失を犯した場合、あるいは雇用者が労働契約 を維持することが不可能となった場合、雇用者は当該従業員を解雇できる。 (7) 母性休暇・養子縁組休暇の全期間を通じて、解雇することはできない。 母性・養子縁組休暇は、第 1・2 子については 16 週間 (出産前に 6 週間、出産 後に 10 週間)、第 3 子については、26 週間となり、複数子出産の場合には、出 産前休暇が (6 週間の代わりに)10 週間となる。 第 1 子または複数子誕生の際、賃労働者である父親は、最高で連続 11 日間 (複 数子出産の場合には 18 日間)の父性休暇の権利がある。休暇取得のために父親 は、遅くとも休暇開始日の 1 カ月前には、雇用者に対し、受領証を備えた書留 によって通知しなければならない。この期間中、労働契約は一時停止されるが、 権利開始の条件を満たせば、SS (Sécurité Sociale:社会保障)から休業補償手当 てが支払われる。 −労働福祉 ・ 産業医制度 すべての労働者が「職場における保健衛生サービス」 (労働法典第 L241-1 条以 降)の下に指定された産業医制度を利用できなければならない。企業の規模に応 じて、これらのサービスは企業内にあるか、複数の企業に共通して存在する。1 人または複数の産業医がそこで予防活動を行い、従業員の保健衛生の保護に配 慮する。産業医の任務は実際に、雇用者・従業員・従業員代表に対して生活と 企業での労働における環境改善 (ポストの割当て、危険と災害の防止など)に関 する助言を行うことである。産業医は義務付けられている健康診断、特に採用 時検診を行い、従業員に提示されたポストに対する医学的見地からの適性を保 証する。この検診は定期的に少なくとも年 1 回実施される。 −性別・人種別・年齢別雇用規制 2001 年 12 月 16 日付法および 2002 年 1 月 17 日付法により既存の措置が強化され た。 ・ 労働法典第 L123-1 条 職業の平等は、あらゆる差別の禁止によって明確となる。 (1) 求人そのほかあらゆる形態の広告に、求められる候補者の性別や家族状況 を記載したりさせたりしてはならない。 5 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 (2) 性別や家族状況を理由として、雇用・配置転換・解雇・労働契約更新の拒 否をしてはならない。 (3) いかなる措置も、特に給与・教育・配置・格付け・等級付け・昇進に関し て、性別を考慮してなされることはできない。 同等あるいは等価の仕事に対する男女間の給与原則も、第 L-140-2 および 3 条 に明示されている。 毎年、雇用者は、企業委員会に男女の雇用・育成条件の比較状況に関するレポ ートを書面で提出しなければならない。つまり、雇用者は毎年、職業上の平等 とそれを可能にする措置にかかわる目標を巡って、代表的組合と交渉しなけれ ばならない。業種のレベルでは、当該交渉は 3 年ごとに行わなければならない。 障害を抱える労働者に対する優遇措置が数多く存在する。職業への参入を容易 にすることを目指すものと、特別手当ての取得を保証する狙いがある。 ・ 障害を持つ人の雇用義務 (1) 身体的・精神的能力の不十分さと制限によって雇用を獲得・維持する機会 が実際に限られたすべての人々を、障害を持った労働者とみなす。この「障 害を持った」という身分は、COTOREP (Commission Techniques d’ Orientation et de Reclassement Professionnelle:障害者職業指導社会復 帰専門委員会)によって認定されている。 (2) 1987 年以降、従業員 20 人未満のあらゆる民間企業および公共企業は、パ ートタイム・フルタイムを問わず、障害があるかそれと同等の労働者を 6%雇用しなければならない。 (3) AGEFIPH (Association de Gestion du Fonds pour l’Insertion Professionnelle des Personnes Handicapées:障害者雇用促進基金運営協 会)の支援 国は企業における障害を持つ労働者の雇用を促進するため、さまざまな財 政的支援を与えている (例えば環境整備費用・ポスト調整費用の部分負担 など)。 2004 年 1 月末、障害のある人を担当する閣外大臣マリー=テレーズ・ボワソー は、1975 年 6 月 30 日付法を改革した「障害を持つ人の権利と機会の平等・参 加・市民権のための」法案を提出した。当案件を国家の優先課題としたジャッ ク・シラクの意向に従って、本文は、障害のある人をより社会に浸透させるこ とを目指している。この条文は、祝日を 1 日削減することによって生じる 8 億 5,000 万ユーロを財源として、2005 年に発効することになっている。これは、 尊厳のある自律的生活の諸条件を保障することを目指して、「補償すべき権利」 を定めている。 政府は加えて、最高でも 5 年以内の期限で、障害のある人を年齢に応じて区別 するすべての措置を廃止することを約束している。 6 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 5.3 労働組合関係法令 −組合 労働者の権利向上に強力に貢献し、特に改正 35 時間制の協約締結に際して、経済 社会生活において、改めて重要な位置を占めている。 ・ 労働法典第 L411-1 条 職業組合は、その身分によって対象となる人々の、集団的・個人的な権利およ び物質的・精神的利益の追求と擁護を専らの目的とする。したがって、組合は、 労働者 (当該職業の労働者 1 人あるいはその総体)の権利と利益を擁護する。単 純に政治的な活動は禁止されている。 組合の自由は、年齢・性別・国籍にかかわらず、労働者自らが選択した組合へ の加入 (あるいは不加入)の自由および組合設立の自由を言明する。 ・ 代表的組合 代表的組合のみが法人格を持つ。 実人員・ (特に雇用者に対する)独立性・徴収される組合費・実績・歴史の長さ・ 戦時中の愛国的態度との関連により、1 つの組合のみが代表として認められる。 1996 年のアレテによると、次の諸組織が国家レベルの代表である。 表 5‑3 国家レベルの代表的組合 創立年 組合名 1895 年 CGT 1919 年 CFTC (Confédération Française des Travailleurs C+hrétiens:フランス・キリスト教労働者同盟) 1964 年 CFDT (Confédération Française du Travail:フランス民 主主義労働総同盟) 1948 年 FO (Force Ouvrière:労働者の力) 1944 年 CGE-CGC (Confédération Française de l’Encadrement, Confédération générale des cadres:フランス職制-管理職 総同盟) 代表的組合は、法人格を享受することにより、集団的利益を擁護するため、あ るいは労働者を代表するために、出廷することができる。また、動産・不動産 の取得や契約の締結も可能である。 組合の資金は、組合員負担・国家助成金・地方援助・活動収入・組合所有財産 に由来する。 法律が定めた 3 つの明確な制度により、企業において従業員を代表することが 可能となる。つまり、企業内組合支部、企業委員会、従業員代表委員の各制度 は十分に特別な任務を負っており、それぞれに固有の財源が付されている。 (1) 企業 職業選挙に候補者を擁立することができ、企業委員会に代表者を選出し、 組合支部を設立し、組合代表委員を指名する。つまり、労働協約と企業協 定の推敲と締結に関与する。 7 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 (2) 職種 労働協約の交渉に参加し、その拡大を要求できる。 (3) 国家レベル 助成金を受け、国内業種間協定の交渉と署名に参加し、さまざまな国家組 織に席を占める。 −組合支部 同一の組合に加入する企業の従業員の集合体である。その設立には、実際にいかな る条件も要しない。 また、雇用者に対して、企業の全従業員の物質的・精神的利害関係を代表する役割 を果たす。しかしながら、企業における役割は、選ばれた代表者の役割と混同され ない。組合支部は、労働と雇用の条件を改善するために、企業の従業員を集団的に 組織する使命があるためである。 組合代表委員は、雇用者に対して、組合と組合支部を代表する。各代表的組合は、 従業員数が最低 50 人の企業に、また、いくつかの条件で小規模企業に、組合代表 委員を 1 人指名する。そのほかの従業員を代表する者と同様に、組合代表委員は、 代表活動時間・出張の自由・解雇に対する保護の恩恵に浴する。 職業選挙 (2 年ごとに名簿式 2 回投票で行われる)によって、企業内に従業員代表委 員と CE (Comité d' Entreprise:企業内委員会)のメンバーが置かれる。 選挙人と被選挙人の必要条件は、以下のとおりである。 ・ 選挙人 (1) 当該企業の従業員 (2) 16 歳以上 (3) 最低 3 年の勤続年数 (4) 市民権を剥奪されていない ・ 被選挙人 (1) 少なくとも 1 年前から当該企業で中断することなく働いている (2) 18 歳以上 (3) 雇用者と血縁関係がない (4) 組合の任務を剥奪されていない −従業員代表委員 従業員数が 11 人以上となった場合、雇用者は、従業員代表委員の設置と選挙を組 織しなければならない。代表委員は、従業員の総体 (常勤従業員と臨時従業員)を 代表し、企業における労働規則の適用に注意を払う。 ・ 役割 (5) 雇用者に、給与・労働法典の適用などにかかわる従業員の個人的・集団的 権利要求を提示する。 (6) いくつかの労働条件や決定 (特に集団解雇)に関する相談を受ける。 (7) 労働条件改善のための提案をする。 (8) 法の適用にかかわるあらゆる苦情と批判を労働監督官に委ねることがで きる。 (9) CE に委員会の能力に関する従業員の提案と批判を伝える。 (10) 委員会がない場合、代表委員がその任務を請け合う。 8 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 −CE 1945 年に創設され、ますますその重要性を増している。30,000 近くの CE が、従 業員 50 人以上の企業の 4 分の 3、つまり従業員の 30%にかかわる部分に振り分け られている。CE は従業員の集団的利害関係を表明する使命を負う。この機能を果 たすために、企業の全般的な歩みにかかわる決定について、情報を与えられ、相談 を受けなければならない。いくつかの場合に対して、法律は単なる情報伝達のみを 想定している。別の場合には、法が予めの相談手続きを整理している。これは経済 的事由による、従業員 10 人以上のあらゆる解雇計画に対する場合である。他方、 法律によって CE に警告権を付与することができる (例えば、CDD や臨時契約の 手段に訴えることの濫用がある場合)。CE は労働監督官に委ねることができる。 −ストライキ権 長い間違法であったが、ストライキはそれでも、より良い労働条件の獲得を求めて 定期的に行われた。1946 年、前憲法の序文が、既にストライキ権に対して公の自 由という性格を認めていた。 労働法はストライキを明確に定義していない。一方、破毀院はストライキを「専門 職同業団体の特定の要求を達成させるための、集団的かつ合議による従業員の労働 停止」と規定している。 ストライキの間、労働契約は一時停止となるだけである。従業員は、解雇されず、 制裁も受けない (ストライキ権の尊重)。ただし、従業員の重大な過失 (暴力・労働 の自由に対する妨害など)がある場合を除く。労働者はストライキが終了次第、仕 事を再開する。 ・ ストライキ権の制限 いくつかの職業においてはストライキ権が規制されている。 (1) ある種の公務員 (共和国治安機動隊・軍人など)については禁止 (2) 最低限のサービスを保証する義務がある職業 (報道関係)については制限 (3) 予告義務 ストライキ権は規約 (公務員)あるいは労働協約 (バス運転手など)によっ て想定された最小期限までに予告してからでなければ遂行されることは できない。 ストライキは企業の解体を招かず、ストライキを行う者がほかの従業員の労働 を妨げなければ合法である。しかし、企業の生産活動妨害を目的としたり、従 業員が重大な過失を犯すといった、所有権の侵害がある場合には違法となる。 非合法ストライキは、解雇の深刻な理由となりうる。 9 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 5.4 労働保険関係法 −SS ・ 社会保障機関 非常に複雑であり、強制加入の 530 以上の体制と 1,000 以上の地方組織がある。 社会保障 農業制度 一般制度 非賃労働非農業制 特別制度 社会保障の主要 な基礎制度 ・賃労働者 ・在宅労働者 ・学生 ・外交員 など ・農業労働者 ・農業開拓者 ・商業労働者 ・手工業労働者 ・自由業者 図 5‑2 表 5‑4 ・公務員 ・フランス国有鉄 道・フランス電 力・パリ交通公団 職員 ・公証人 ・司祭・牧師 SS 社会保証一般体制の行政機関 行政機関 機関名 国家レベル ・CNAMTS (Caisse Nationale d’Assurance Maladie des Travailleurs Salariés:全国賃労働者疾病保険金庫) ・CNAVTS (Caisse Nationale d’Assurance Vieillesse des Travailleurs Salariés:全国賃労働者老齢保険金庫) ・CNAF (Caisse National d’Allocations Familiales:全国家族手当て 金庫) ・ACOSS (Agence Centrale des Organismes de Sécurité Sociale: 社会保障機関中央資金管理事務所) 地方・地域レベル ・CRAM (Caisse Régionale d’Assurance Maladie:地方疾病保険金庫) ・URSSAF (Union de Recouvrement des Recouvrements de SS et d’Allocations Familiales:社会保障・家族手当て保険料徴収組合連合) 社会保障法典第 311-2 条は、以下を明確にする。 すべての人は、年齢・国籍、肩書きにかかわらず、また、仕事場・雇用者の人数・ 給与額にかかわらず、強制的に SS に加入する。 ・ 加入、登録 (1) 労働者は、雇用者の要求によって最初の就職時に登録され、登録番号が付 10 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 与される (生涯同一)。 (2) 雇用者は、起業後、いくつかの過程を経て URSSAF に加入する。こうし て、企業事業所登録番号が交付される。 事業主負担額の支払い URSSAF 雇用者 保険料の天引き 従業員保険料の支払い 振替え 社会保障金 従業員 図 5‑3 SS の資金の流れ SS は、従業員と雇用者の強制負担によって資金が調達される。雇用者は、保険料 の総額を支払う責任を持つ。 ・ 現物給付 SS による保健衛生費用の補償は、保険加入者とその権利所有者 (扶養児童、配 偶者、医療保険義務体制に未加入の内縁者)を利する。補償は SS の料金基盤に 基づいてなされる。被保険者は参照年度に 1,200 時間または、四半期に対して 120 時間、あるいは前月に 60 時間の勤務か、少なくとも最低時給の 2,030 倍に 等しい報酬の保険料と同額の負担を証明しなければならない。現物給付の権利 取得に必要な条件を満たさなくなった者は、それでも 4 年間はその恩恵を受け ることができる。これは、「権利継続」と呼ばれるものである。 失業者は現物給付と休業補償手当てに対する権利を所有する。補償されなくな った場合、4 年間の権利継続が可能である。社会参入・社会復帰の研修中であ る若年者と失業者ならびに RMI 受給者、TRACE (Trajet à l’ ACcès à l’ Emploi:雇用への道のり)プログラムの受益者も等しく現物給付の権利がある。 ・ 休業補償手当て 医師の診断による労働の中断に際して、SS から支払われる金銭給付である。手 当ての受給には、登録および勤務期間の条件 (四半期中 200 時間の勤務、また は最近 6 カ月間に少なくとも最低時給の 1,015 倍に相当する保険料の支払い) を満たさなければならない。 6 カ月を超える勤務停止に対しては、労働者は少なくとも 12 カ月の SS 加入期 間があり、休業に先立つ 1 年間の勤務時間が最低 800 時間で、最初の 3 カ月は 200 時間であることを証明しなければならない。疾病あるいは妊娠・出産の場 合、休業補償手当ては、SS の上限 (1 カ月当たり 2,432 ユーロ)を考慮して、勤 務停止直前の給与を基に計算される。休業補償手当ては、SS 年額上限の 720 分の 1 を下回ってはならず、6 カ月の勤務停止後の 7.80 ユーロを下回ってもな らない。社会一般税と社会負債返済税の天引きは、休業補償手当てに関して行 われる。 11 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 ・ CMU (Couverture Mutuelle Universelle:普遍的医療給付) 1999 年 7 月 27 日付法により創設された。これは基礎的 CMU と補足的 CMU の 2 段階からなる。CMU の権利を得るためには、3 カ月以上前から継続してフ ランスに居住していなければならない。しかしながら、この期限は、家族手当 てまたは RMI 受給者には適用されない。これは、保護という名目で受け入れら れた、あるいは難民としての身分を要求した、亡命者や難民を妨げるものでも ない。したがって受給者は、SS の一般制度に加入しているのであり、保健衛生 費支出の補償に対する権利を (不時の権利所有者も同様に)有する。しかし、資 産が一定の上限を超える者に関しては、少額の負担金を支払わなければならな い。 補足的 CMU は、通常は被保険者の負担として残る費用をカバーするために、 低所得者層に無償の補足的保護 (そして特に第三者支払い制度)を提供するこ とからなる。その権利は 1 年間であるが、条件が満たされたままであれば更新 可能である。 −失業保険 やむを得ず職を奪われた労働者は、場合に応じて、労使代表によって管理された失 業保険の一般制度 (従業員と雇用者の負担金により出資)、または連帯制度 (国家と 公務員の 1%負担により出資)に属する補償収入の権利がある。連帯制度は、失業保 険手当てを受けられないか、受けられなくなった者にあてられる。これは、失業保 険と同様、UNEDIC (Union Nationale pour l'Emploi dans l'Industrie et le Commerce:全国商工業雇用協会連合)と ASSEDIC (Associations pour l’Emploi dans l’Industrie et le Commerce:商工業雇用協会)によって運営される。 失業保険として適用されうる措置は、労使代表 (組合と雇用者の組織)によって交 渉・署名される。次いで、公権力によって承認された協約に由来する。現行の協約 は、2001 年と 2002 年末にいくつかの修正対象となった。 状況にかかわらず、労働者は最初に求職者として ASSEDIC に登録しなければな らない。 ・ 失業保険体制 職を奪われた労働者は、条件を満たせば、補償期間中 ARE (Allocation d’ Aide au Retour à l’ Emploi:雇用復帰支援手当て)から一定額の支払いを受ける権利 がある。 ARE の恩恵を受けるためには次の条件を満たす必要がある (1) 解雇・CDD の満了・「正当」とみなされる辞職による、やむを得ない職の 喪失 (2) 雇用契約終了に先立つ 22・24・36 カ月間に 182 日 (910 時間)・426 日 (2,123 時間)・821 日の保険加入期間の証明 (3) ASSEDIC への求職者登録 (4) 実際の・恒常的な求職 ARE の総額は、以前の給与額に応じる。また、補償の支払い期間は、年齢と保 険加入期間による。したがって、支払い期間はそれに応じて 7〜42 カ月の幅が ある。 ARE の支払いは、当事者が給与を受け取るか、そうでない職業活動を見つけた 12 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 とき・年金の権利を所有しうることを条件として、60 歳に達したとき・フラン スの領土に居住することをやめたときは、直ちに中断される。 ・ 補償の終了 失業補償の権利が終了するときに、連帯制度の手当てを受けられない場合 (資 金の条件以外の理由で)、ARE の一定部分総額の 27 倍に等しい請負額援助を受 けることを要求できる。 −年金 すべての労働者は、支払った老齢保険金の代償として、60 歳から SS 一般制度の 年金に対する権利を所有できる (14〜16 歳で働き始めた者は除く)。この基礎年金 に加えて補足年金が、管理職に対して ARRCO (Association des Régimes de Retraite Complémentaire:補足退職年金制度連合)または AGIRC (Association Générale des Institutions de Retraites des Cadres:管理職退職年金制度総連合) から支払われる。 以下の詳細な措置は、民間部門の労働者に適用できる。一方、公務員・公共部門の 係員・職人などは、別の措置に依存する。 分配による強制加入制度に由来する年金は、任意の資本化による年金制度によって、 補完することができる。 ・ 年金の権利取得 (1) 一般制度に対して 1 四半期のみ年金の支払いを受けられる。1 四半期を有効にするためには、 少なくとも最低時給の 200 倍に相当する給与に関して保険金を支払って いなければならない。 (2) 補足制度に対して 年金は労働者が所有する点数によって決定される。 いずれにせよ 2003 年の年金改革以降、年金の計算に考慮される参照期間は増 加し (改革以前は 150 四半期に設定)、2004 年 1 月 1 日以降、2008 年に 160 四半期に設定することを狙って、1 年当たり 2 四半期となっている。2004 年以 降、60 歳を超えても働き続ける被保険者 (かつ権利開始に必要な加入四半期間 が既にある者)によって有効とされた四半期は、0.75% (あるいは年 3%)の年金 増額の権利を開始する。雇用者が強制的に退職させることは、従業員が 65 歳 に達している場合にしかできなくなる。 −疾病保険 疾病あるいは妊娠・出産の場合、また、一定の条件を満たせば、SS によってすべ ての労働者は、保健衛生にかかった費用の払戻し (現物給付)と、労働の停止によ って生じた収入の損失を部分的に補償する、休業補償手当ての支払い (金銭給付) が保証されている。 以下に記述する規則は、SS の一般制度に加入している労働者に適用される。 特別な規則は、いくつかの職業 (VRP:外交員、在宅労働者、季節労働者など)と、 公務員のように特別制度に加入している労働者に適用される。 疾病・労働災害による短期欠勤は、労働契約の中断とならない。労働契約は、一時 停止されるだけである。一方、雇用者は、疾病や障害による欠勤の反復・延長によ って、企業の機能が混乱したり、雇用者が決定的な配置転換の必要に迫られたりす 13 国名:フランス (調査大項目 5:労働及び職業能力開発関係法令) 作成年月日:2004 年 8 月 31 日 る場合には、従業員を解雇することができる。 5.5 職業能力開発法令、法規、条例 調査中 【参考文献】 1. Code du Travail et de http://www.legifrance.fr/ la Sécurité 14 Social Visualisable sur Website,
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