特許マップを活用した特許出願戦略

レポート
技術企画部 知的財産担当
主任 今野 徹
Intellectual Property
特許マップを活用した特許出願戦略
XML データベース TX1® の完全特許武装化
■ 安心な商品の提供に重要な特許出願戦略
当社では, 特許出願を積極的に進め, 技術を特許権
で保護することにより, 品質はもとより権利面でも安心して
ご利用いただける商品をお客様に提供しています。 その
ためには, 商品の特許マップを整備し, 他社との特許力
の差異や出願分野の偏りを把握することが重要です。 そ
して, 把握した情報をベースに, 商品がまんべんなく特
許武装されるよう出願戦略を立てるのです。
■ 膨大な特許情報をビジュアル化する
“特許マップ”
特許マップとは, 膨大な特許情報を利用目的に応じて
加工や分析をし, ビジュアル化したものですが, その利
用目的によって様々な種類があります。 例えば, ある商
品について技術開発のトレンドを把握したいのであれば,
その分野の特許をすべて抽出し, これを出願人すなわち
権利者によって分類することで, 各社の開発戦略を分析
します。
解決しようと
する課題
解決する
ための技術
処理の高速性
技術 A
特許 XXXXXXX
(高性能,
速度時間短縮)
機能の実現
(回避, 改善)
このように, 特許出願の件数や変化をみることで, 技
術開発の将来動向を予測することができ, 更には, 商品
の技術要素ごとにどのような特許が存在しているかを調べ
れば, 商品の設計に役立てることもでき, 特許活動のみ
ならず商品開発計画にも活用することができます。
■ XML データベース TX1 における特許マップの活用
本号の特集で紹介している XML データベース TX1 は
比較的新しい分野の商品であるため, 関連する当社及び
他社の日本特許出願を検索しても 100 件程度しか抽出さ
れません。 しかし, 検索した特許情報を単に眺めても何
も見えてきません。 そこで, 当社が開発した特許自動分
類ツール ぱっとブンルイ ® を使って二軸の特許マップを
作成し, ビジュアル化します。
例えば, 特許が “解決しようとする課題” と “解決する
ための技術” を二つの軸とするマップに, 当社及び他社
が出願した特許をマッピングします。 なお, 特許が “解
性能の向上性 ユーザ作業の効率化 データの信頼性
(効率化, 並列化,
同時性)
(作業支援, 容易さ,
利便性,操作性,
自動化, 円滑性)
特許 XXXXXXX
重要課題
重要課題 特許 XXXXXXX
注力技術
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
技術 B
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
技術 C
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
技術 D
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
(保証, 信頼度,
安全性)
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
優位性あり!
特許 XXXXXXX
:
技術 L
技術 M
特許 XXXXXXX
注力技術
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
優位性あり!
特許 XXXXXXX
図 1. XML データベース TX1 の特許マップ (イメージ)
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
特許 XXXXXXX
ひと目で特許出願傾向が把握できます。 注力技術 “技術 B” が重要課題 “処理の高速性” において,注力技術 “技
術 M” が重要課題 “ユーザ作業の効率化” において優位性があることがわかります。
知的財産まめ知識
当社では, こうして作
成 さ れ た XML デ ー タ
ベースの特許マップを
ベースに, TX1 の商品
価値を充実させる特許出
願戦略を立て, 開発計
画にのっとって特許権を
確保しています。
特許法 ・ 商標法の改正 : 特許 ・ 商標関係料金が引き下げに
特許権を維持するためには, 毎年 「特許料」 を特
許庁に納付する必要があります。 しかも特許登録の初
年度から徐々に高くなり, 10 年目以降は最高額となり
ます。
表 1. 料金引き下げ前後における費用比較 (試算)
10年間維持する場合の特許料
特許権
20年間維持する場合の特許料
10年間の設定登録料
商標権
5年ごとの更新登録料
20
決 し よ う と す る 課 題” の
抽 出 も, 検 索 し た 特 許
情報から ぱっとブンルイ
を用いて行います。
これにより, XML デー
タベース技術全体の特
許出願傾向がひと目で
把握でき, かつ, 優位
性のある領域が見えるよ
うになります (図 1)。
「東芝ソリューション テクニカルニュース」 2008年夏季号 Vol.14
< 改正前 >
< 改正後 >
49万円 ⇒ 44万円
< 改正前 >
< 改正後 >
168万円 ⇒ 134万円
< 改正前 >
13万円 ⇒
< 改正後 >
7万円
(更新登録料も引き下げ)
また, 商標権については, 最初の 10 年間の 「設
定登録料」 と, その後は 5 年ごとに 「更新登録料」
を納付する必要があります。
これらの料金は, 諸外国と比較して高額であり, 権
利者にとって負担が重いという指摘がされてきました。
そこで, 2008 年 4 月, 特許法 ・ 商標法が改正され,
特許は平均 12%, 商標は平均 43%の引き下げとな
りました。 これにより, 権利を, 従来に比べて少ない
負担で維持 ・ 保有することができるようになります。
【参考文献】
[1] 特許庁. “特許法等の一部を改正する法律案について-閣議決
定のお知らせ-”. プレスリリース. 2008年 2月 1日, (オンライン),
入手先
<http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/puresu/press
_tokkyohoutou_kaiei_200201.htm>, (参照 2008-5-30)