持続社会構築環境リーダー・マイスター育成

持続社会構築環境リーダー・マイスター育成
実施予定期間:平成 21 年度~平成 25 年度
総括責任者:佐伯 浩(北海道大学・総長)
Ⅰ.概要
北海道大学の大学院共通教育システムと大学間地域連
携プログラムを融合し、海外サテライトを活用したアジ
ア・アフリカの持続社会構築環境人材育成拠点を造る。環
境リーダー育成は国内拠点で実施し、俯瞰的視野の醸成と
知識習得を図る。環境マイスター(国際リーダー)育成は、
海外サテライトで地域社会と連携し実際に地域政策の立
案に参画することで実践力を養う。特に ODA の立案や実施
ができる人材育成を重視する。留学生に 1 年間のスカラー
シップ、海外拠点教員を招聘し教育に参画させる。学位習
得コース(学位記とディプロマ)と認定証コース(デプロ
マ授与のみ)の 2 種を提供し、社会人等も受講可能とする。
1.機関の現状
本学はアジア地域に大学間交流協定校 21 校を有し、
「国
際南極大学コンソーシアム」や「アジア環境大学院ネット
ワーク(ProSPER.Net)」、
「環オホーツク海環境研究ネット
ワーク」、
「新興感染症グローバル・サーベイランス・ネッ
トワーク」を通してアジア地域での研究、教育連携を深め
て来た。また、JICA との包括連携協定の下、アジアやア
フリカ地域の環境保全に関る研修や、アフリカにおける
HIV 感染症予防に関する研究も積極的に展開している。ま
た、インドネシアの泥炭森林保全、スリランカ保健医療制
度、中国の産廃管理人材育成事業に関っている。加えて、
持続的な社会の構築に向けて、国際協力強化のための「持
続可能な開発」国際戦略本部事業、全学的なサステイナビ
リティ学教育システムの構築のためサステイナビリティ
学教育研究センターを立ち上げて、英語併用の教育プログ
ラムの提供を開始し、海外留学生とともに日本人学生が学
ぶ先進的なサステイナビリティ学教育カリキュラムの開
発を行っている。今後も全学的に国際的な持続的開発教育、
研究に取り組んでいく。
2.計画構想の内容
北海道大学で整備した全学連携によるサステイナビリ
テ ィ 学 教 育 シ ス テ ム ( HUIGS: Hokkaido University
Inter-department Graduate study in Sustainability)
と、北海道の大学間地域連携プログラムに環境科学院の大
学院カリキュラムを融合し、海外サテライトを高等教育パ
ートナーとした新しいアジア・アフリカの持続社会構築人
材育成拠点を形成する。
環境リーダー育成プログラムは日本国内(北海道大学中
心)で実施し、持続的な社会を構築するために必要な俯瞰
的視野の醸成と必要な知識習得(環境学理、技術、政策、
倫理、リーダーシップ論、多様な文化)を図るためのカリ
キュラムを提供する。環境マイスター育成プログラムは主
に海外サテライトで教員、自治体職員、NGO、地域社会と
の連携の下で実施し、地域政策の立案に参画しながら、提
言をまとめ実践する能力を養う。特に、高度環境管理専門
家として海外専門家と共同し、科学的根拠に基づいた新た
な ODA 等のプログラムの立案や実施をすることの出来る
人材の育成を図る。
本育成プログラムでは短期、長期育成プログラムの両方
に該当するプログラムを提供する。短期コース(環境リー
ダー育成コース)は1~2年間の履修を基本として、既存
の修士課程学生対象のサステイナビリティ学専修コース
科目群(農学院、水産科学院、工学研究科、環境科学院、
公共政策学教育部、医学研究科、情報科学研究科、文学研
究科、サステイナビリティ学教育研究センターが76科目
を提供している)、環境科学院科目群に、北海道大学の連
携大学(帯広畜産大学、酪農学園大学等)のコースに加え
て、新たにアジア・アフリカ各国の地理・文化・言語・伝
統・地域知等の地域学講義、環境リーダーシップ論に JICA
職員による ODA 論の3科目を加えた育成プログラムで構
成される副専攻コースを構築する。長期コース(環境マイ
スター育成コース、博士課程相当)では、海外サテライト
拠点(海外の大学院博士課程相当の教育コースを持つ大学
等)に北海道大学教員が海外サテライト拠点教員と共同で
博士課程コースを開設し、北大との単位互換制度を確立す
る。これにより、海外拠点に長期滞在中も北大(環境リー
ダー育成拠点)の教育を受けていることが担保できる体制
を取ることが可能となる。特に海外拠点では地域コミュニ
テイ、自治体職員、現地 JICA 事務所専門員、現地環境 NGO
等の連携を図り、各自の専門分野の習得に加えて、ファシ
リーテーション能力、組織力、現地の文化、伝統、言語の
熟知を図り、その地域の解決すべき問題を地域の文脈のな
かで考え、地域の専門家や、住民と共同で取り組める ODA
案件の発掘と提案、実行計画の立案、実行までも行える人
材の育成を目指す。
海外留学生には 1 年間のスカラーシップ提供、海外拠点
からの教員には 3 ヶ月短期招聘を実施し、在日期間中は環
境リーダー教育に参画する。コースは学位習得コース(学
位記とディプロマ)と認定証コース(ディプロマ授与のみ)
の 2 種を提供し、大学院生以外も受講可能とする。
3.3 年目における具体的な目標
3 年目までは環境リーダーコース 12 名を毎年受け入れ、
総受入数は全コースで 24 名を目指す。修了者 2 名の中か
ら、環境マイスターコースへの参加学生を選抜することと
する。但し、環境マイスターコースへの参加学生は、基本
的に環境リーダー修了者から選抜することとするが、環境
リーダーコース修了者と同等の学力と実務経験を有して
いると判定できる場合は、環境リーダーを取得せずとも、
環境マイスターコースへの進学を認めることとする。
4.実施期間終了時における具体的な目標
5 年間の合計で 60 名
(内訳:環境リーダーコース 44 名、
環境マイスターコース 16 名)を受け入れる。修了者数合
計は少なくとも 24 名を目指す。
環境リーダーコース修了者は、自然科学と人文・社会科
学を基盤とした幅広い環境科学の知識を身につけるとと
もに、環境問題の解決手段となる技術的方法を幅広く修得
し、具体的な環境問題に対処するための能力を取得する。
また、文化的あるいは政治・経済的背景の異なる諸国間で、
現地の関係者、住民と共同して環境問題の解決を図るのに
必要なコミュニケーション能力、組織力(オーガニゼーシ
ョン力)、ファシリテーション力の基礎を身につける。
環境マイスターコース修了者には 1 年間のインターン
シップの提供をする。そのため本育成期間中に国内外の政
府機関、民間団体、JICA 研究所や現地オフィス、企業等
置プログラムなどの獲得により継続する。海外拠点での長
期コースの維持には相当の滞在費等のコストが毎年継続
的に発生する。この資金の確保のため、JICA、UNU、UNESCO
等と共同で環境人材育成が可能な ODA 事業等の立上げに
尽力する。
の受け入れ先を確保することに努力する。GCOE や他の国
際協力事業の一環として修了者の継続的活動の担保を図
る。
5.実施期間終了後の取組
教育プログラムについては運営委員会とともに継続さ
せる。特任教員はプログラム編成とともに役目を終える。
国内拠点の維持にはサステイナビリティ学教育研究セン
ターの一般運営財源を活用するとともに、総長運用定員教
員を 1 名、本拠点のために確保する。留学生に対する経済
的支援は「21 世紀東アジア青少年大交流計画」等の国に
よる支援施策等の外部資金獲得、学内の留学生支援プログ
ラムや北大フロンティア基金の活用、国費留学生の優先配
6.期待される波及効果
アジア・アフリカ支援は国際社会における先進国として
の日本の責務であり、困難な問題解決に携わる過程で、学
生には最先端研究に触れる機会や学際的環境で学習する
機会が与えられる。そして、レベルの高い環境リーダーを
育成することにより、途上国研究者のボトムアップを図る
事ができる。
7.実施体制
「持続社会構築環境リーダー・マイスター育成」実施体制
北海道大学総長
国際交流支援室
北大拠点コーディネーター
サステイナビリティ
学教育研究センター
運営委員会
海外サテライト拠点群
コーディネーター
CENSUS/
HUIGSコース群
環境科学、技術、環境政策
社会システム、国際環境法
金融、環境ガバナンス等
サステイナビリティ学
教育研究センター
教育プログラム専門
委員会
北大拠点コース群
StraSS
マネージメント委員会
環境リーダーシップ論、環境倫理
環境政策、地域知・文化・言語
フィールド研修
海外拠点コース群
オーガニゼーション・ファシリテーション
地域知、文化、伝統、習慣、言語
PBLコース、ODA企画
北大各
大学院
氏名
佐伯
浩
佐々木
隆生
パランカラヤ大学(連
携協定締結済み
(現地コーディネー
ター:Sulmin Grimi
教授)
アフリカサテライト
国際水環境工学研究所(2iE)
(交渉中)
中国サテライト
浙江大学(交渉中)
環境マイスター育成
環境リーダー育成
JICA
インドネシアサテライト
*CENSUS:北海道大学サステイナビリティ学教育研究センター
*HUIGS:北海道大学大学院連携サステイナビリティ学教育プログラム
所属部局・職名
提案課題における役割
北海道大学・総長
総括責任者
北海道大学公共政策連携大学院・特任教授
副統括
講師・技術指導・カリキュラム作成・学内教
育プログラム連携
講師・技術指導・カリキュラム作成・海外拠
点連携
講師・技術指導・カリキュラム作成・海外拠
点連携
講師・技術指導・カリキュラム作成・海外拠
点連携
講師・技術指導・カリキュラム作成
池田
元美
北海道大学環境科学院・教授
大崎
満
北海道大学大学院農学研究院・教授
齋藤
誠一
北海道大学大学院水産科学研究院・教授
船水
尚行
北海道大学大学院工学研究科・教授
嶋津
克明
北海道大学大学院環境科学院・教授
田中
俊逸
北海道大学大学院環境科学院・教授
講師・技術指導・カリキュラム作成
蔵田
伸雄
北海道大学大学院文学研究科・教授
講師・技術指導・カリキュラム作成
田中
教幸
北海道大学サステイナビリティ学教育研究 講師・技術指導・カリキュラム作成・海外拠
センター・教授
点連携
北海道大学サステイナビリティ学教育研究 講師・技術指導・カリキュラム作成
センター・准教授
フリカ地域の他の大学との協定締結も試みる。さらに、
JICA 海外事務所や海外の政府系研究機関などに赴き、
辻 宣行
8.各年度の計画と実績
a.平成 21 年度
(1)計画
(a)留学生支援措置の構築として、インドネシア、中
国、アフリカからの留学生を RA として雇用し、海外
拠点校における教育プログラムの情報収集や本プロ
ジェクト履修条件の翻訳業務などを担当させる。
(b)環境リーダー育成コースデザインの一環として、
フィールド研修を試験的に行う。また、来年度からの
学生募集に先立ち、博士研究員及び事務官を 1 名ずつ
雇用する。平成 22 年 1 月末を目処に、来年度より雇
用予定の専任教官の公募を行う。環境リーダー専修科
目群および環境マイスター専修科目群の選定を行う。
(c)環境マイスター育成海外サテライト整備として、
以下の企画を予定する。11 月に国際シンポジウム「持
続的アジア社会構築に向けた日中の総合的大学間協
力」を開催し、中国拠点校との連携を図る。また、同
月に国際シンポジウム「アジア・アフリカ開発援助と
北海道大学」を開催し、JICA およびインドネシア拠
点校との連携強化を図り、かつアフリカ拠点校の探索
を試みる。また、後者のシンポジウムにインドネシア
パランカラヤ大学所属の海外拠点担当教官を招聘し、
教育に関する協力協定を締結する。中国浙江大学など
に赴き、北海道大学との教育に関する共同協定の締結
を試みる。インドネシアに赴き、JICA 海外事務所や
政府系研究機関などとの連携を深め、環境マイスター
受け入れの可能性を探る。
b.平成 22 年度
(1)計画
(a)前期の間に環境リーダーの募集と選定を行う。
(b)後期より環境リーダー専修科目群(環境倫理学、
環境政策論、環境リーダーシップ論、地域知・文化・
言語論、及びフィールド研修)を実施する。
(c)前期の間に環境マイスターの募集と選定を行う。
(d)後期より環境マイスター専修科目群(オーガニゼ
ーション、ファシリテーション、地域知・文化・伝統・
習慣・言語、ODA 企画、及び PBL)を実施する。また、
環境マイスターを TA として雇用し、環境リーダーの
育成に尽力させる。
(e)留学生支援措置の構築として、インドネシア、中
国、アフリカからの留学生を RA として雇用し、海外
拠点校における教育プログラムの情報収集や本プロ
ジェクト履修条件の翻訳業務や、既存の拠点校との連
絡を担当させる。
(f)環境リーダー育成コースデザインとして、年度初
等から特任教授 1 名、特任准教授 1 名、特任助教 3
名、博士研究員 1 名、および事務官 1 名を新たに雇用
する。パランカラヤ大学によるフィールド実習の企画
立案および試験的実施を行う。また、環境マイスター
専修科目群の選定を行う。
(g)環境マイスター育成海外サテライト整備の準備と
して、ブルキナファソ国際水環境工学研究所との教育
に関する共同協定の締結を試みる。また、アジア・ア
環境マイスター受け入れの可能性を探る。
c.平成 23 年度
(1)計画
(a)前期のあいだに環境リーダー2 期生の募集と選定
を行う。
(b)後期より環境リーダー専修科目群の提供を開始す
る。パランカラヤ大学によるインドネシアでのフィー
ルド実習を実施する。
(c)前期の間に環境マイスター2 期生の募集と選定を
行う。
(d)後期より環境マイスター専修科目群を実施する。
また、環境マイスターを TA として雇用し、環境リー
ダーの育成にあたらせる。
(c)留学生支援措置の構築として、インドネシア、中
国、アフリカからの留学生を RA として雇用し、海外
拠点校における教育プログラムに関する情報収集、お
よび本プログラムの宣伝や、拠点大学との連絡などを
担当させる。
(d)環境マイスター育成海外サテライト整備の準備と
して、アジア・アフリカ地域の他の大学との協定締結
を試みる。引き続き、既存研究プロジェクトを介して、
JICA 海外事務所や政府系研究機関などとの連携を深
める。
d.平成 24 年度
(1)計画
(a)前期のあいだに環境リーダー3 期生の募集と選定
を行う。
(b)後期より環境リーダー専修科目群の提供を開始す
る。また、海外拠点校によるフィールド実習を実施す
る。
(c)前期のあいだに環境マイスター3 期生の募集と選
定を行う。
(d)後期より環境マイスター専修科目群の提供を開始
する。また、環境マイスターを TA として雇用し、環
境リーダーの育成にあたらせる。
(e)留学生支援措置の構築として、インドネシア、中
国、アフリカからの留学生を RA として雇用し、海外
拠点校における教育プログラムに関する情報収集、お
よび本プログラムの宣伝や、拠点大学との連絡などを
担当させる。
(f)環境マイスター育成海外サテライト整備の準備と
して、アジア・アフリカ地域の他の大学との協定締結
を試みる。引き続き、既存研究プロジェクトを介して、
JICA 海外事務所や政府系研究機関などとの連携を深
める。
e.平成 25 年度
(1)計画
(a)前期の間に環境リーダー4 期生の募集と選定を行
う。
(b)後期より環境リーダー専修科目群の提供を開始す
る。また、海外拠点校によるフィールド実習を実施す
る。
(c)前期の間に環境マイスター4 期生の募集と選定を
行う。
(d)後期より環境マイスター専修科目群の提供を開始
する。また、環境マイスターを TA として雇用し、環
境リーダーの育成にあたらせる。環境マイスター1 期
生のうち修了した学生をポスドクとして雇用し、海外
サテライトに派遣する。
(e)留学生支援措置の構築として、インドネシア、中
国、アフリカからの留学生を RA として雇用し、海外
拠点校における教育プログラムの情報収集や本プロ
ジェクト履修条件の翻訳などの業務を担当させる。
9.年次計画
取組内容
1年度目
2年度目
3年度目
4年度目
5年度目
6年度目以降
○調整費の取組
公募・選定
環境リーダーの選定
環境リーダーの育成
環境マイスターの
選定
環境マイスターの育成
公募・選定
留学生支援措置の構築
環境リーダー育成コー
スデザイン
環境マイスター育成海
外サテライト整備
養成目標人数(受入)
国外リーダー
国内リーダー
環境マイスター
6人
6人
2人
6人
6人
2人
6人
6人
6人
6人
6人
6人
毎年6人
毎年6人
毎年6人