先生解説用

しぐさの話【解答・解説】
●はじめに
人間の他にも様々な動物たちが生きていること、みんなが同じ地球上の仲間であり、お互いに
関わり合って生きることを実感するには、まず個体レベルでの動物の理解が必要です。そこで第
1ステップとして動物に共通する様々な形態を取り上げてみました。今回のテーマは「動物のし
ぐさです。
野毛山動物園で動物を観察される際に、飼育係を見かけましたらお気軽に声をおかけください。
動物たちのとっておきの話が聞けるかもしれません。
●ねらい
動物たちの見せるしぐさや行動にはひとつひとつ意味があります。飼育されている動物では、
野生の行動を見せなくなることもありますが、それでも本来の行動を色濃く残していることも多
くあります。今回は動物のしぐさや行動を観察することで、そこから見えてくる動物の生態に気
づくことをねらいとしています。
●解説
①チンパンジー
暑い季節には、日中の大部分を川などの水辺で過ごし、水に入り横になったり立ったま
まで涼をとることもあります。
■動物園で見られる行動
夜行性のため日中は休んでることが多い。尿でスプレーする行動や爪研ぎによるマーキ
ングを見ることができます。暑い時期や興奮したときは、水の中に入ります。
③ホンシュウジカ
■分類:偶蹄目 シカ科
■生息地:本州各地の森林で生活し、採食のため草地などに出てきます。
■野生での暮らし
草や木の葉・皮などを食べます。昼夜の区別なく行動し、採食に1日の40%の時間を
費やしています。1日は採食と休息・反芻(一度飲み込んだ食物を口に戻してかみなお
すこと)の繰り返しで、1〜2時間採食すると座って周りを見回しながら反芻します。
休憩中は首や胴を地面について眠ることもありますが、小さな音でもすぐに目を覚まし
首をたてて警戒します。休憩場所は木陰などで、個体によってよく使う場所います。オ
スは10月をピークとした1〜2ヵ月間の発情期には、におい付けや鳴くなどの誇示行
動を行うようになります。
角はオスにのみあり、秋には角を木などにこすりつけ、角を包んでいる皮膚を剥ぐ行
動(角研ぎ)が見られます。
■動物園で見られる行動
日中は立って餌を食べているか、反芻しているか、座って休息していることが多いです。
秋になると雌ジカが角をフェンスにこすりつけて角を研ぐ姿を見ることができます。
■分類:霊長目 ショウジョウ科
■生息地:アフリカ西部から中央の熱帯雨林やサバンナでせ生活しています。
■野生での暮らし
数十頭の群れをつくって生活していますが、群れは絶えず離合集散を繰り返しています。
そのため出会いのたびに声を出したり手を差し伸べたりキスを行ったりする挨拶を交わ
すことが知られています。その他にはかん高い大声を伴うディスプレーを行って、優位
④ニホンツキノワグマ
性を誇示したり他の群れ牽制することもあります。毛づくろいや交尾の誘いなど、様々
■分類:食肉目 クマ科
なコミニュケーションを発達させています。
■生息地:本州、四国、九州の森林で生活しています。
果実を中心に食べるため樹に登ることが多く、休憩や夜眠るときは木の上に枝や葉で
■野生での暮らし
鳥の巣のようなベッドをつくります。
朝夕を中心に歩きまわる昼行性です。雑食性ですが、植物質のものを主に食べます。木
移動は地上を利用し、足で立って歩くこともありますが、基本は四足歩行で、こぶし
の葉などを採食するため木登りが得意です。また、クマは周囲の大枝に座り、周囲の枝
を地面につくナックルウォークを行います。
をたぐり寄せて実を食べるため、次第に自分の方に枝が重なって、ベッドのようになり、
■動物園で見られる行動
満腹になるとそのベッドの上で寝たり、休んだりする習性があります。針葉樹の樹皮を
朝と昼には食事をしている姿を見ることができます。日中はベンチの上や止まり木の上
剥き露出した部分をかじるという習性もあります。移動するときに川を泳いで渡ること
でひなたぼっこや毛づくろいをしていることが多い。また時には大声を上げて扉やガラ
もあります。5〜7月の繁殖期以外は単独で生活しています。なわばりはもちません。
スをたたく誇示行動が見れるかもしれません。
■動物園で見ることができる行動
午前中はよく動き、餌を探しているような行動が見られます。また、木をかじったり、
②アムールトラ
登ったりもします。昼頃からは、棚の上で休んでることが多くなります。夕方になると
■分類:食肉目 ネコ科
またよく活動し始めます。夏になるとプールに入って涼んでいることもよくあります。
■生息地:ロシア・中国東北部の森林や、やぶの中で生活しています。
■野生での暮らし
夜行性ですが、日中に狩りをすることもあります。やぶなどが密生する茂みの多い土地
このワークシートに対するご感想やご意見、またワークシート作りへのアドバイスを
に単独で暮らし、同性の個体とは重ならない行動圏を持ちます。獲物をみつけると茂み
お寄せください。今後の参考とさせていただきます。どんな事でも結構です。先生方の
に身を隠しながら忍びより、ダッシュをして獲物を捕まえます。一晩の狩りで10〜2
声をお待ちしています。
0㎞歩きます。
横浜市立野毛山動物園 〒220‑0032 横浜市西区老松町63‑10
雌雄共に自分の行動圏を維持するために、肛門腺から分泌物が混ざった尿をけもの道
TEL045‑231‑1307 FAX045‑231‑3842
http://www.nogeyama‑zoo.org/
に沿った茂みや岩、木にひっかけ、目立つ場所に糞や爪研ぎの跡を残します。繁殖期に
教育普及担当
は尻尾を上げて上向きに尿をスプレーする行動もみられます。