「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究

プール学院大学研究紀要 第 53 号
2012 年,177 〜 189
「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究
蔵 田 實 はじめに
高 度 情 報 通 信 社 会 の 進 展 に 伴 い、 学 校 教 育 に お い て も ICT(Information & Communication
Technology)の活用が大きな流れとなっている。とりわけ平成8年 7 月の中央教育審議会答申「21
世紀を展望した我が国の教育の在り方について」を受け、平成 10 年度(高等学校は 11 年度)の学
習指導要領の改訂により「総合的な学習の時間」(以下、「総合的学習」とする)が小・中・高等学
校すべてに導入された。そのなかで情報教育が「横断的・総合的な学習活動」の一つとして例示さ
れたことは、ICT を加速するうえで大きな原動力となった1)。また「総合的学習」とともに中学校
段階では技術・家庭科に「情報とコンピュータ」領域が必修化され、高等学校段階では教科「情報」
が新設されるなど、国の教育政策の中で情報教育の推進が重要な課題となっている。 これに対応し、コンピュータや情報通信ネットワークのハード面での充実を図るため、平成 11 年
度「教育の情報化プロジェクト」が策定された。これは、①平成 13 年度までに、全ての公立小中高
等学校、特別支援学校等(約 39,000 校)がインターネットに接続できるようにする。②平成 16 年
度を目標に、公立小中高等学校等が、校内ネットワーク機能の整備を行えるようにする。③平成 17
年度を目標に、全ての公立小中高等学校等が、各学級の授業においてコンピュータを活用できる環
境の整備を行えるようにする。 ④平成 16 年度を目標に、私立の小中高等学校等が、公立学校と同
程度の水準の整備をめざして、コンピュータの整備及びインターネットの接続を行えるようにする。
この施策は、当時の文部省を中心に郵政省、通産省の共同事業として取り組まれ、現在では全国の小・
中・高・特別支援学校等の 96.6%にコンピュータ教室が設置され、74.9% に光ファイバによるインター
ネット接続が可能となっている2)。
しかしハード面が整備されても、「総合的学習」などで児童・生徒が「調べ学習」を行う際には、
学習対象となるコンテンツの充実が必要不可欠になってくる。どんなに高性能なコンピュータを整
備し、高速のインターネット回線を導入しても、Web 上から収集できる教育情報がなければ ICT を
活用した「問題の解決や探究活動に主体的、創造的、協同的に取り組む」3)学習活動を行うことは
できない。このため、国は教育用コンテンツの収集・流通・開発を行う目的で平成 13 年度「教育情
報ナショナルセンター」を創設したが、その役割を十分果たせぬまま運用を停止してしまった。
このような状況を鑑み、児童・生徒や教員等が「調べ学習」などで ICT を活用した学習活動を行
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プール学院大学研究紀要第 53 号
うための教育用コンテンツ開発に向けた研究に取り組んだ。これは、アナログ情報として保存され
ていた映像教材をデジタル化し、Web 上で閲覧できるシステムの構築をめざしたものである。具体
的には、K 教育委員会が、アナログ情報として昭和 47 年度から制作してきた「教育放送番組」のデ
ジタル化を図るとともに、番組の中からコンテンツとして有意な部分を抽出し、「調べ学習」用の映
像素材として Web 上で提供するシステムの研究開発である。なお、この研究開発は、K 教育委員会
カリキュラムセンターの全面的な協力のもとに実施したものである。
1 研究のねらい
K 教育委員会の「教育放送番組」は、昭和 47 年度より制作されており4)、撮影時の各学年の教科
内容に対応して構成されている。しかし、撮影から年数を経た番組では、現在までに数回の学習指
導要領の改定を経ており、特定の学校段階や学年を特定することが困難となっている。また、番組
中のシーンについては、番組の対象としている単元とは別の単元での活用も可能なものがある。
本研究では、この「教育放送番組」を現在の ICT 環境に対応できるデジタル教材として再生する
とともに、対象とする学校段階や学年を限定しない教材として有意なシーンをクリップ化(30 秒か
ら 60 秒程度)を開発する。利用形態としては、学校教育が中心であるが家庭学習や生涯学習にも配
慮する。すなわち、①教員が授業中に児童・生徒の理解の深化を図るための活用とともに児童・生
徒が「調べ学習」で主体的に活用する。②教員がプレゼンテーション教材を作成する際の基礎素材
としても活用する。③インターネットで無償配信するので、家庭学習や地域における生涯学習で活
用する。
対象とする分野は、K 教育委員会が制作した「教育放送番組」のうち、効果的に活用できるクリッ
プが数多く含まれている理科及び社会科の番組を中心に、研究開発を進める。
2 研究開発の手法
16 ミリフィルム、オープンリールビデオテープ及びUマチックビデオテープなど、アナログ媒体
に記録されている「教育放送番組」をデジタル化し、クリップ情報を抽出後、インターネットによ
る提供を行うため、図1に示すシステムの構築を策定し、(1)対象番組の選定、(2)デジタル化、
(3)クリップ抽出、(4)クリップ教材のデータベース化、(5)ストリーミングデータ作成、(6)
Webでの配信、(7)権利問題の解決、の手順で研究開発に取り組む。
(1)対象番組の選定
① 理科の番組については次の点に留意し、表1の番組を対象とする。
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「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究
16ミリフィルム、オープンリールビデオテープ、Uマチックビデオテープ
デジタルビデオテープ DVDビデオディスク クリップ情報 クリップ抽出システム 番組管理システム (番組・クリップデータベース) ストリーミングデータ作成 クリップ情報 Webでの提供 複製DVDでの提供 図1 システム構成図
1)自然や環境を対象にデジタル化及びクリップ開発を行う。
身近な自然や環境へ注目することは、理科に関わる内容の学習を進める上での導入段階と
して有効である。
2)物理、化学、生物、地学からそれぞれ1~2分野を対象にデジタル化及びクリップ開発を行う。
・物理では、基本となる力学分野と電気分野の番組を対象とする。
・化学では、変化に富んだ動画像が期待できる物質や化学反応の番組を対象とする。
・生物では、単一分野で最も番組数の多い植物の番組を対象とする。
・地学では、身近な現象として理解しやすい気象の番組を対象とする。
3)その他の番組についても、関連シーンのある番組については、積極的に対象とする。
小学校理科
1年
自然・環境
2
物理
力学・電気
12
化学 物質・化学反応
1
生物
植 物
20
地学
気 象
6
そ の 他
分 野
計
41
小学校理科
2〜6年
3
1
1
36
19
2
中学校理科
1年
2
8
14
13
6
中学校理科
2年
62
43
43
9
10
15
9
表1 対象とした理科の番組数
中学校理科
3年
9
3
38
26
2
78
計
16
30
29
122
66
263
4
267
180
プール学院大学研究紀要第 53 号
② 社会科の番組については次の点に留意し、表2の番組を対象とする。
1)地形や産業、特色ある地域を対象にデジタル化及びクリップ開発を行う。
我が国の産業や国土に係わる内容の学習を進める上で、教員による資料提供や児童による
「調べ学習」に有効である。番組を対象にデジタル化及びクリップ開発を行う。
具体的内容としては、
・地形、気候、産業及び交通網の番組を対象とする。
・県庁所在地の番組を対象とする。
・農業や水産業の番組を対象とする。
・商業や工業の番組を対象とする。
・観光や伝統的な工業の番組を対象とする。
など、地理的内容を多く含んでいる。
2)歴史的内容と政治経済的内容の番組を対象にデジタル化及びクリップ開発も行う。
3)その他の番組についても、関連シーンのある番組については、積極的に対象とする。
分 野
地
理
的
内
容
地形、気候、産業及び交通網
小学校社会
科3年
小学校社会
科4年
特別番組
計
4
15
19
県庁所在地
13
7
20
農業や水産業
24
10
34
商業や工業
25
3
4
1
2
7
歴史的内容
13
13
5
31
政治経済的内容
44
67
2
113
そ の 他
2
4
129
120
観光や伝統的な工業
計
28
252
6
9
258
表2 対象とした社会科の番組数
(2) デジタル化
アナログ媒体に記録されている番組の一部に音質や画質の劣化が見られるので、オーディオミキ
サーによる音質改善及びタイムベースコレクタと同期信号発生装置による画質改善を行った後、デ
ジタルビデオテープへダビングする。
さらに、後のクリップ抽出やストリーミングデータ作成を効率化するため、デジタルビデオテー
プからDVDビデオディスクを作成する。図2にデジタル化システムの構成図を示す。
アナログ媒体に記録された番組は、図3に示す手順でデジタルビデオテープへダビングする。なお、
DVDビデオディスクへの収録可能時間を考慮し、1 本のデジタルビデオテープには、15 分の番組
を 5 番組収録する。このダビング作業に要する時間は、15 分番組を 5 番組分で約 5 時間を要するこ
「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究
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アナログ記録媒体の再生装置
同期信号 オーディオミキサー (音質改善) タイムベースコレクタ (画質改善) 同期信号発生装置 (画質改善) デジタルビデオデッキ DVDオーサリングシステム DVDビデオディスク 図2 デジタル化システムの構成図
新品のデジタルビデオテープ
130 分
タイムコードとカラーバーを挿入 タイムコードとカラーバーを挿入したデジタルビデオテープ 15 分
5分
15 分
アナログ番組の再生確認 音声信号と映像信号の調整 5番組分繰り返す ダビング デジタル化した番組(5番組を収録したデジタルビデオテープ) 図3 デジタルビデオテープへのダビング手順及び作業時間
ととなる。
また、番組は収録媒体の種類によって、それぞれ次の方法で作業を実施する。
① 16 ミリフィルムに記録されている番組
再生装置として、シネビデオ装置(エルモ社製)を用い、VHSビデオテープにダビングした後、
音質改善及び画質改善を行い、デジタルビデオデッキへ再ダビングする。
② オープンリールビデオテープに記録されている番組
再生装置の入手が不可能なので、専門業者へ依頼し、VHSビデオテープにダビングした後、
音質改善及び画質改善を行い、デジタルビデオデッキへ再ダビングする。
③ Uマチックビデオテープに記録されている番組
再生装置として、Uマチックビデオデッキ(ソニー社製)を用い、音質改善及び画質改善の後、
デジタルビデオデッキへダビングする。
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プール学院大学研究紀要第 53 号
デジタルビデオテープへダビングした番組は、5番組単位で、DVDオーサリングシステムを用い、
図4に示す手順でDVDビデオディスク化する。このDVDビデオディスク化作業に要する時間は、
5番組分で、約3時間である。なお、MPEG2へのエンコードの際のサンプリングレートは、6
M/秒で固定とする。
デジタル化した番組(5番組を収録したデジタルビデオテープ)
80 分
MPEG2へエンコード MPEG2形式のファイルにした番組(5番組分) 10 分
DVDビデオディスクのメニューイメージファイル作成 50 分
DVDビデオディスクイメージファイルへのコンパイル DVDビデオディスクイメージファイルにした番組(5番組分) 50 分
DVD-Rディスクへの書き込み DVDビデオディスク化した番組(5番組を収録) 図4 DVDビデオディスク化の手順及び作業時間
(3) クリップ抽出
番組全体からのクリップ(30 秒~ 60 秒程度の有意なシーン)開発作業は、該当する教科・分野の
現職教員の協力のもとに実施する。このクリップ抽出にあたっては、次の点に留意して行うことと
する。
① クリップの長さ(時間)
・内容的に完結していれば、クリップの長さにはこだわらない。
② クリップの内容
・番組の対象学年や教科にとらわれず、広い視野で抽出する。
③クリップの利用形態
・教師が教室でプロジェクタなどを使ってクリップを見せながら授業を展開する。
-短時間のクリップは授業展開の補助的教材として利用する。
-短時間のクリップを複数組み合わせることで、授業展開の中心にすることができる。
・児童、生徒自身が「調べ学習」の資料として利用する。
-コンピュータ教室や図書室あるいは各教室のPCを利用し、情報を検索する。
-検索した情報をプレゼンテーションソフト等へ貼り付け、発表資料とする。
④ その他の留意点
・台詞と画像の同期に注意して抽出する。
・肖像権に配慮し、人物の写っているものは極力避ける。
「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究
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(4) クリップ教材のデータベース化
抽出したクリップの分類については、児童・生徒が利用する場合とクリップを教師が利用する場
合とに対応するため、それぞれ次の点に留意し、原則としてLOMの分類を活用することとする。
① 児童・生徒が利用する場合
・カテゴリ別(教科書や学習指導要領順が望ましい)
特に、小学校低学年の児童でも利用できるよう、絵文字によるカテゴリ検索にも対応でき
るよう配慮する。その際、分類は可能な限り教科書あるいは学習指導要領に準ずるよう配慮
する。
② 教員が利用する場合
・全文検索
情報機器操作に慣れた教員が利用しやすいよう、商用の検索サイトの検索方式に準ずるよ
う留意する。
・カテゴリ別(教科書や学習指導要領順が望ましい)
情報機器操作に不慣れな教員でも利用しやすいよう、分類は可能な限り教科書あるいは学
習指導要領に準ずるよう配慮する。
また、複数のカテゴリに該当するものがあることにも留意するとともに、LOMのカテゴリを登
録するユーザーインターフェイスに工夫を加え、可能な限り登録漏れのないようにする。
さらに、抽出したクリップのデータベース化にあたっては、クリップのポイントが一目で分かる
よう、サムネイル画像を用意する。
(5) ストリーミングデータ作成
ストリーミングデータの作成にあたっては、DVDビデオディスクから、可能な限り自動化した
方式で作成できるよう、新たに自動変換ソフト(DVDtoStream)を開発する。この自動変換ソフト
は、DVD ビデオディスク上のビデオファイル(.vob ファイル)をMPEG2エレメンタリーストリー
ム(.m2v)とPCM音声ファイル(.wav)にした後、ストリーミングビデオファイル(.rm ファイル)
に自動変換するものである。
(6) Webでの配信
クリップ教材のWeb上での配信にあたっては、データベースから検索した結果(開始位置と終
了位置)をもとに、配信サーバで、目的の番組のファイルから必要なクリップを再生・送出するシ
ステムを構築する。
184
プール学院大学研究紀要第 53 号
(7) 権利問題の解決
番組や抽出したクリップをWebで配信するにあたって、権利上の問題として次の点について留
意する。
① 番組制作会社の著作人格権
番組の制作会社との契約上、番組の著作権は K 教育委員会が有しているが、著作人格権は制
作会社にある。したがって、クリップをWeb上で配信するにあたっては、特に氏名表示権と
同一性保持権について、制作会社の許諾を得ることが求められ、「教育放送番組」のデジタル化
とクリップ抽出に関する合意書を締結することが必要である。
② 出演者の肖像
出演者の肖像については、個人情報保護法の個人情報にあたる可能性があり、個人情報にあ
たる場合は、原則としてWeb上での配信にあたっては本人(場合によっては保護者)の許諾
を得る必要がある。なお、個人情報にあたるか、また、本人への許諾の必要性の判断には、時
間がかかるため、当面は、人物の写っていないクリップのみを抽出し提供することとする。
なお、肖像権に抵触しない番組は、全編Web上で配信するとともに、クリップを抽出し、
抽出されたクリップもWeb上で配信する。
3 研究開発の成果
① 番組のデジタル化
デジタル化を完了した番組(DVD化した番組)数は、269番組で、その内訳は、理科が表3
に示す131番組、社会科が表4に示す138番組である。
分 野
小学校理科1年 小学校の理科
自然・環境
物理
力学・電気
化学
生物
地学
中学校理科1年 中学校理科2年
3
中学校の理科
計
10
13
1
4
7
物質・化学反応
1
5
9
3
18
植 物
13
2
7
29
51
気 象
計
0
12
7
2
5
23
37
25
13
28
65
131
表3 デジタル化を完了した理科の番組数
185
「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究
分 野
地
理
的
内
容
小学校社会科3年
小学校社会科4年
地形、気候、産業及び交通網
2
13
県庁所在地
2
7
9
農業や水産業
7
7
14
商業や工業
9
3
12
観光や伝統的な工業
3
1
4
歴史的内容
7
13
政治経済的内容
9
51
39
95
計
特別番組
計
15
4
24
60
4
138
表4 デジタル化を完了した社会科の番組数
②クリップ抽出
抽出したクリップは、632クリップで、その内訳は、理科のクリップが表5に示す240クリッ
プ、社会科が表6に示す392クリップである。
物理
化学
生物
地学
分 野
自然・環境
力学・電気
物質・化学反応
植 物
気 象
計
クリップ数
39
16
54
61
70
240
地
理
的
内
容
表5 抽出した理科のクリップ数
分 野
地形、気候、産業及び交通網
県庁所在地
農業や水産業
商業や工業
観光や伝統的な工業
歴史的内容
政治経済的内容
そ の 他
計
クリップ数
82
32
45
25
29
97
78
4
392
表6 抽出した社会科のクリップ数
抽出したクリップの長さ(時間)は、図5に示すとおりで、30秒~60秒のクリップが全体の
ほぼ50%を占めている。長さ(時間)0秒のクリップは、番組中から抽出した静止画を示している。
抽出したクリップの半数が30秒~60秒となっているのは、
「教育放送番組」を制作するうえでは、
多くのシーンがその程度の時間で構成されているためと思われる。
なお、今回、小中学生向けの番組を対
(件)
80
象とした訳であるが、抽出したクリップ
70
の中には、高等学校で利用できるものも
60
数多くある。
50
社会
理科
40
30
20
10
0
0
60
120
図5 抽出したクリップの時間
180
(秒)
186
プール学院大学研究紀要第 53 号
③ クリップ教材のデータベース化
抽出したクリップに対して、現職教員の協力によってLOMの分類に基づくデータ及び各クリッ
プに対する内容説明の文章の登録を行う。
抽出クリップに対する内容説明文章の全文字数は、635 件のクリップに対して、24,086 文字で、1
クリップあたり 40 文字前後となっている。
④ ストリーミングデータ作成とWebでの配信
ストリーミングデータの転送レート(帯域)は、エンコードデータとする。
なお、ストリーミングデータは、今後の更新や追加に対して柔軟に対応できるようにするため、個々
のクリップに対して別々のファイルで用意するのではなく、番組単位にファイル化し、データベー
スにはそれぞれのクリップの開始位置(時間)及び終了位置(時間)を登録することとする。
Web上での配信については、データベースから検索した結果(開始位置と終了位置)をもとに、
配信サーバで、目的の番組のファイルから必要な教材クリップを再生・送出するシステムを新たに
開発する。
⑤ 権利問題の解決
番組の制作会社との契約上、
「教育放送番組」の著作権は K 教育委員会が有しているが、著作者人
格権は制作会社にある。したがって、クリップを Web 上で配信するにあたって、特に氏名表示権と
同一性保持権について、制作会社の許諾を得る必要があると判断し、インターネット配信する番組
を制作した制作会社と「教育放送番組のデジタル化等に関する合意書」
(仮称)を締結する必要がある。
4 今後の課題
① クリップ教材のデータベース化
抽出クリップに対する内容説明文章の全文字数は、635 件のクリップに対して、24,086 文字で、
1 クリップあたり 40 文字前後となる。クリップを検索する際の全文検索の原文としては、40 文字
では十分とはいえず、個々のクリップについて、今後さらに詳細な内容を説明する文章を登録す
る必要がある。
したがって、今後は、Web上からクリップの抽出や、内容説明の文章を登録できるようなシ
ステムの開発も必要になるものと思われる。なお、その際には、併せて登録された内容の正確性
を期すため、査読をするための仕組みも必要になると思われる。
② ストリーミングデータ作成とWebでの配信
ストリーミング配信については、最新の配信技術を積極的に取り入れ、より少ない転送レート(帯
「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究
187
域)で、より高品質な画像を提供できるようにする必要がある。
また、ファイヤーウォールの設置などさまざまなインターネット接続環境にも対応できるよう、
複数の形式の転送方法についても積極的に採用していく必要がある。
なお、ストリーミングデータについては、200kbps 程度の転送レート(帯域)があれば、教室
で児童・生徒が一斉に視聴することが可能な画質となるが、実用的な視聴者数をサポートするこ
とを考えると、できるだけ絞らなくてはならない。この点を考慮し、より適切な転送レート(帯域)
を検討することも必要である。
③ 権利問題の解決
権利問題については、著作権や著作者人格権については、概ね解決できるが、登場人物の肖像
権など、個人情報の問題については未解決の問題があり、現在抽出しているクリップも個人情報
にかかる問題のある人物は登場しないものを登録してあるにとどまっている。
現在、個人情報保護法の手続きに基づいているが、特定することが困難な登場人物への許諾の
問題など、さらに検討を進める必要がある。
④ 授業や「調べ学習」での活用法
今後は、教科書や学習指導要領に沿ったクリップの有機的な結びつき、さらには授業や「調べ
学習」での活用事例などをデータベース化し、実際に効果的な授業活用を目指した取り組みも進
める必要がある。
<注>
1)「総合的な学習の時間」は平成 20 年度(高等学校は 21 年度)の学習指導要領改訂においても時間数は縮減
されたが、同様の趣旨で位置付けられている。
2)『平成 23 年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査』総務省統計局
3)『小学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編 第 1 目標』文部科学省
4)平成 19 年度をもって「教育放送番組」の制作は中止となっている。
【参考文献】
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水越敏行 他(2003)『ICT 教育の実践と展望』日本文教出版
水越敏行 編著(2008)『ICT 教育のデザイン』日本文教出版
全国研究所連盟 編(2004)『学校を開く e ラーニング』ぎょうせい
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文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編』東洋館出版 文部科学省(2008)『中学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編』教育出版
文部科学省(2009)『高学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編』教育出版
文部科学省ホームページ(2013)『学校基本調査』
www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/.../1267995.htm
総務省統計局ホームページ(2012)『学校における教育の情報化実態等に関する調査』
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001045486&requestSender=d
search
Len Masterman (1985) Teaching The Media Tuttle-Mori Agency
Paasa Sara (2002) A Gift Of Fire, Social, Legal and The Internet Peason Education Inc.
「調べ学習」に活用できる教育用コンテンツ開発に関する研究
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(ABSTRACT)
The Development of Digital Contents
for Research-Based Learning Activities
KURATA Minoru The Board of Education began to produce Education Broadcast Programs beginning
in 1970. Approximately 2500 of these programs have been produced. Digitizing this valuable
visual educational content is an effective way of protecting it from degradation and facilitates its
broadcast over networks and playback on various digital devices.
In this project, the digital archiving of mainly social and natural science programs and the
streaming of the resulting content has been investigated. A search engine interface for digital still
and clip content has also been developed.
More than 250 DVDs and 600 digital content clips have been created and an easy-to-use
search engine has been completed. These educational programs and clips are accessible from the
internet.
Using this system, teachers can easily show audio-visual educational materials to students
during class. Moreover, students can also directly access audio-visual educational materials as part
of research-based learning activities.
It is hoped that teachers will use the many still images and short clips to develop new
educational materials.