本の修理の玉手箱(守谷中央図書館)

本の修理の玉手箱
本の修理の玉手箱
守谷中央図書館長
飯塚 哲夫
本は,私たちを楽しませてくれますが,本はとても壊れ易いものです。特に人気
のある本は,利用回数も多くすぐに傷んでしまいます。
図書館では,ボランティアの皆様にご協力をいただいて,壊れた本の修理をして
います。
ここで紹介している修理方法は,製本修理の講習会などで教えていただいたもの
や,毎日の修理の中で自分達で工夫して行っている方法です。私たちの修理方法が
皆さんの参考になれば幸いです。
A
B
C
D
本の種類と部分名称
主な修理道具
主な補修資材
ブッカーのかけ方
P 2~ 3
P 4~ 6
P 7~ 9
P10~13
番号
ページ
1
14
破れ補修その 1
修理専用テープを使用したページ破れの補修
2
15
破れ補修その 2
糊などを使った補修
ページ外れ補修
ページが取れた時の木工用ボンドなどを使った
補修
17
テープ等の剥し方
アイロンやドライヤーを使った方法
18
綴じ糸がゆるんでい
本の背やノドにボンドを入れる補修
る場合の補修
3
4
5
6
7
16
19-21
22
修 理 方 法
説
明
寒冷紗を使った補修 表紙と中身が取れてしまった場合の補修
ノド部分の破れ補修
糸綴じ部分の紙が切れてる場合などの補修,
ページの欠損補修
ページ欠損
ページの一部分が破けてなくなっている補修。
背の破損
背の破れた部分等の修理
8
22-23
9
24
10
25-26
針と糸の準備
糸綴じ修理を行う前の準備
27-29
糸綴じ修理(かがり
綴じ)
麻糸で行うかがり綴じ
30-32
糸鋸を使った補修
無線綴じの本を綴じ直す場合など
11
12
1
本の修理の玉手箱
A 本の種類と部分名称
イラスト
説明
本の種類には,ボール紙を芯にして表紙にし,
中身を包んだ「上製本」(ハードカバー)と少し
厚めの紙で中身を包んだ「並製本」(ソフトカバ
ー)があります。また,上製本には,丸背と角
背があります。







天
本の上端
地
本の下端
平
本の平面部分
背
綴じた箇所を表紙で覆った部分
前小口 中身の背の反対側
ミゾ 背と平の継ぎ目,本を開き易くする
部分
角
本の 4 角
花ぎれ 本の背の天地に付いている布製
の飾り,補強の役割も兼ねている
 しおり 読んでいるところなどに挟む紐
 ノド
本の中身や見返しの背に付いて
いる部分の内側

・ ・見返し
2
中身と表紙の間に付けてある紙
(遊び紙ときき紙)
本の修理の玉手箱
本の綴じ方
イラスト
綴じ方の名称と説明
中綴じ
用途
週刊誌,パンフレットなど
二つ折りにした紙の折り目をホチ
キスなどで綴じた本。
平綴じ
教科書,報告書,企画書な
ど
背から 5 ㎜程度の所を針金やホ
チキスなどで綴じた本。丈夫だが
本のノド部分までは,開かない。
無線綴じ
文庫本,雑誌,マンガ週刊
誌,上製本,並製本など
糸や針金を使わないで本の背を
糊や樹脂で固めて綴じた本。
糸綴じ
図鑑,辞書,百科事典など
二つ折にした本の中身の背を糸
でかがって綴じた本。ノドまで開く
ことが出来て丈夫なため上製本
に使われる。
あじろ綴じ
上製本,並製本,辞典,写
無線綴じの改良版,背の部分に 真誌など
切れ込みを入れて糊や樹脂を
浸透させて強度を増した本。
3
本の修理の玉手箱
B 補修用道具
写 真
道具の名称と説明
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
カッター(小)
ハサミ
ピンセット(先のとがったもの)
セロテープを剥がす時などに使用
目打ち(中左)
糸綴じ修理などの際に針を通す穴を開ける
プラ定規
カッ
ターを使う時などに使う。糸綴じ穴を開ける時の印を付
けるときに使う,中央に 0 のメモリが付いているものが
便利。
コップとスポンジ
水を入れて,ボンドが付いた筆や竹串を入れる。
竹串
ボンドをノドの部分に付ける時や背の中にボンドを入れ
る時に使用。
絵筆(平筆 8 号,10 号程度・毛の部分はナイロン製が
良い:使用後の手入れがしやすい)
糊やボンドを塗るときに使用。
糊刷毛少し広い面に糊を塗るときに使用。
丸さい(木槌)
紙を折ったときなどに厚みが出ないよう叩いて仕上げ
る時などに使用。
玄翁(げんのう・金槌)
山だし用の叩きに使用。
目打ち叩き
目打ちで穴を開ける時などに使用。
定規
本の小口などを切りそろえる時などに使用。
糸鋸
接着強度を増すため本の背に切れ込みを入れる時使
用。
刷毛
見返しを張る時や表紙など広い面積に糊を塗るとき使
用。
4
本の修理の玉手箱
・
・
・
・
・
・
アイロン(小型のものが良い)
セロテープを剥がす時や紙の破れを糊で貼り付ける時
などに使用。
電熱式いちょうゴテ(左)
製本作業の時,ミゾ付けに使用。ただし,修理の時は,
セロテープを剥がす時や紙の破れを糊で貼り付ける時
などに使用することが多い。
いちょうゴテ(右下)
熱してミゾの焼付けなどに使用。
かるかやタワシ(左)
背固めの際,寒冷紗などを貼った時,軽く突いて隙間
無いよう貼る。
霧吹き(右)
濡れてシワがついてしまった時などに紙を濡らすため
使用。
・目打ち台(30 ㎝×30 ㎝程度)
本に穴を開ける時下に敷くボール紙製の台。
・ カッターマット
・プレス機
ボンドや糊で補修した後,本を固定する。
山出しやその他の締め作業に使用。
5
本の修理の玉手箱
・ 締め付け機(自作のものです)
締め付け作業に使用する自作の締め付け機,サイズ
は,A4 と A5 サイズの本が入るサイズです。
・ ボンド容器(中央上)
調味料の容器。穴は製本用の針であけました。 修正液
容器は,口の中にある弁などを取除きました。使いやす
いのですが中のボンドがすぐに無くなる欠点がありま
す。
・ 紙やすり(中央の中)
本の中身の小口を平らにする時に使用。薄い板に巻い
て使います。
・ 色鉛筆 テープの剥がしやページの欠損を補修した
時,欠けた絵などの部分に色付を行います。
・ ペンチ
本の分解でホチキスの針外しなどに使用します。
・ ページヘルパーのはく離紙(左)
補修でノドにボンドを入れた時,ページの貼り付き防止
のため間に挟みます。
・ ドライヤー
熱に弱いブッカーやセロテープなどを剥がす時
に使用します。
6
本の修理の玉手箱
C 主な補修用資材
写 真
説 明
・ ページヘルパー
ページの破れた箇所に使用します。ページヘルパ
ーは,糊の劣化が少なく,テープの厚さも薄くかさ
ばりません。一般の利用者の中にはセロテープで
補修する方もいますが,劣化して黄ばんだり,剥れ
てベトついてしまうなど問題が多いので,破れても
補修しないで返却してください。
・ 補修用ボンド(中央及び右)
本修理専用のボンドですが,木工用ボンドでも結
構です。色は白いですが,乾燥すると透明になりま
す。小さな密閉容器に入れて使用しています。主
に背固めなどに使用します。
・ 澱粉糊(左)
昔からある糊(障子張用など)を使用しています。
また,接着力を強くしたいときは,ボンドを混ぜ(糊
1 対ボンド 1 対水 1 で良く溶く)て使用します。水は
何回かに分けて糊を溶きます。ボンドは最後に混
ぜてください。(水を一度に入れるとダマになりま
す。
・ 麻糸
糸綴じ修理を行う時に使用する。通常は,#50 番
もしくは,#30 番を使用。用途に合わせて幾種類
かあると良いです。
・ 製本用針
製本用の針,長さ 75 ミリメートル程度のものと 65 ミ
リメートル程度のものを使用しています。無い場合
には,布団針でも可。麻糸を通すので糸を通す穴
が大きいものを選んでください。
・ 寒冷紗(左)
薄い紙に細い糸で作ったネットを貼って強度を増し
たものです。主に表紙と中身を取付ける時に使用
します。
・ ダック寒冷紗(右)
通常の寒冷紗より強度を増したもの,重い本など
に使用します。
7
本の修理の玉手箱
・ ページヘルパー
ページの破れた箇所に使用します。ページヘルパ
ーは,糊の劣化が少なく,テープの厚さも薄くかさ
ばりません。一般の利用者の中にはセロテープで
補修する方もいますが,劣化して黄ばんだり,剥れ
てベトついてしまうなど問題が多いので,破れても
補修しないで返却してください。
・ 補修用ボンド(中央及び右)
本修理専用のボンドですが,木工用ボンドでも結
構です。色は白いですが,乾燥すると透明になりま
す。小さな密閉容器に入れて使用しています。主
に背固めなどに使用します。
・ 澱粉糊(左)
昔からある糊(障子張用など)を使用しています。
また,接着力を強くしたいときは,ボンドを混ぜ(糊
1 対ボンド 1 対水 1 で良く溶く)て使用します。水は
何回かに分けて糊を溶きます。ボンドは最後に混
ぜてください。(水を一度に入れるとダマになりま
す。
・ 麻糸
糸綴じ修理を行う時に使用する。通常は,#50 番
もしくは,#30 番を使用。用途に合わせて幾種類
かあると良いです。
・ 製本用針
製本用の針,長さ 75 ミリメートル程度のものと 65 ミ
リメートル程度のものを使用しています。無い場合
には,布団針でも可。麻糸を通すので糸を通す穴
が大きいものを選んでください。
・ 寒冷紗(左)
糸で出来た細かなネットの物と丈夫な薄い紙に細
い糸で作ったネットを貼って強度を増したものがあ
ります。主に表紙と中身を取付ける時に使用しま
す。
・ ダック寒冷紗(右)
通常の寒冷紗より強度を増したもの,重い本など
に使用します。
8
本の修理の玉手箱
地券紙(上)
背の補強に使用するボール紙(写真は丸背用の薄い地
券紙)
和紙(習字用半紙)
美濃紙など楮(こうぞ)や雁皮(がんぴ)などで作られた
丈夫なもので写真のように絵や文字が透けて見えるも
のが良いです。あらかじめ 5 ミリメートル程度に細く切っ
て使用します。
ブッカー
本の表紙にかける粘着性の薄いビニールカバー。サイ
ズは本の大きさに合わせて数種類使用しています。
(フィルムを剥した後のはく離紙は,補修の際の当て紙
などに使用しています)
ベビーパウダー(魔法の粉)
セロテープを剥がした跡などに粘着性の糊があります。
この粉を付けるとべたつかなくなります。
カラーノド布テープ
布製の製本テープ。表紙と中身の取付け部が切れてい
る時などに補強用として使用(写真,左は寒冷紗)
クッキングシート
ケーキを焼く時などに使用する半透明でツルツルした
紙。糊とアイロンを使用した補修に当て紙として使用し
ます。A5 サイズ程度にカットして使用します。何度も使
用すると劣化するので交換してください。
9
本の修理の玉手箱
D ブッカーのかけ方
写真
手順
説明
ブ ッ カ ー ( カ バ ー 用 フ ィ ル 横は背の部分を包んで小口
ム)を本より天地左右とも 2 部分より 2 センチ程度大きく
センチ程度大きくカットしま します。
す。(本の大きさによって調
整してください。)
本の表紙にカバーがある
場合は,内側への折込部
分の 4 箇所を写真のように
カットします。
カバーの折込部分が大きい
とブッカーと表紙の接着面
積が少なくなるので,あらか
じめ角から斜めにカットしま
す。
本の位置を決めます。
ブッカーのはく離紙を内側
にして 2 つに重ね間に本を
差込みます。
きちんと奥まで押し込んでく
ださい。
ブッカーの上下の隅も良く
合わせてください。
ブッカーを開き,本の背の 本が動かないよう注意してく
位置をはく離紙に鉛筆で印 ださい。
をつけます。
10
本の修理の玉手箱
本を一時的によけて,ブッ
カーのはく離紙を手前から
おおよそ 4~5 センチメート
ル程度めくり,折り曲げま
す。
本の背を手順 4 でつけた印
に合わせかつ左右のスペ
ースも同じ に合わせ手前
のブッカー の粘着面に本
の小口側を降ろします。
接着面を上から押さえ本の
端をブッカーに貼り付けま
す。
ブッカーと本を一緒に裏返
します。
手で本を押さえ,プラ定規
などで背の方向に向け,前
方に滑らせるように空気を
抜きながらブッカーを貼り
ます。
定規は,少し厚めの物が使
い易いと思います。
定規は,手前を斜めに持ち
上げて背の方向に押しつけ
ながら滑らせます。
ミゾがある本は,ミゾの部分
も定規でしっかり押し付けて
貼って下さい。
本をしっかり抑えながらブ
ッカーを持ち上げ,背の部
分にブッカーを貼ります。
ブッカーとはく離紙の両方を
つまんで持ち上げると良い
でしょう。
背の部分は空気が残ってい
るか確認してください。残っ
ている場合は指などで空気
を抜いてください。
11
本の修理の玉手箱
ブッカーをプラ定規を使っ
て空気が入らないように貼
ります。
小口側までいったらはく離
紙を完全に剥がしてくださ
い。
空気が残っていないか確認
してください。
小口側上下 4 隅のブッカー ブッカーは,内側に巻き込ん
を切り取ります。
で貼った時,本からはみ出
ないよう少し斜めにカットし
ます。
ブッカーの背から 2~3 セン
チメートル程度離して少し
斜めに切り込みを入れま
す。上下同じように 4 箇所
入れます。
ブッカー の切れ込みが完
了しました。
前小口側のブッカーをを内
側に貼ります。
12
ブッカーは,中央を持って貼
り,空気を抜きながら貼りま
す。
両手を使って貼っても結構
です。
手前から空気を抜きながら
貼ってください。
本の修理の玉手箱
本体を一時はずしてカバー 本体がブッカーに貼り付か
中央部の切れ込みを入れ ないよう注意してください
たブッカーを内側に貼りま カバーが無い本は,折込め
す。天地両方貼ります。
ないのでカットしてください。
本体をカバーの中に戻しま
す。
天地部分のブッカーを内側 カバーに表紙がきちんと入
に貼ってください。
っているか確認してから貼
り付けてください。
反対側も同様にブッカーを
貼り終わったら完成です。
13
本の修理の玉手箱
1 破れ補修その1
写真
手順
アドバイス
ページが破けています。
ページヘルパーを使った補
ページヘルパーを使って 修は,原則としてページの平
修理します。
の部分が破れた場合などに
行います。ノド部分の破れや
ページ外れには出来るだけ
使用しないようにします。
本の破れた箇所をクリップ
で固定します。
ページヘルパーを貼りま
す。
クリップにテープがかかっ
ても大丈夫です。クリップ
を後から外して端まで良く
貼り付けます。
破れた部分を正確に合わせ
目玉クリップで下になる中身
や表紙といっしょに固定しま
す。
斜めに裂けた法面がある場
合は,その部分も良く合わせ
てください。
破れが小さい場合などはそ
のままテープを貼っても結構
です。
はみ出ているテープを切 はみ出たテープは,反対側
り取ります。
に巻き込まないで,出来るだ
け切り取ってください。再度
補修する場合にテープを剥
がす際,苦労する場合があ
ります。
反対側の残りの部分も同
様に補修します。
完成です。
14
本の修理の玉手箱
2 破れ補修その2
写真
手順
アドバイス
ページ破れ(糊代あり)を
和糊を使って補修します。
破れたページの下にブッ
カーのはく離紙(ブッカー
を貼った際剥がした紙・ツ
ルツルし た面を 上にして
敷く)
ブッカーのはく離紙が無い場
合は,クッキングシートでも
可。
写真誌など表面がコートされ
ている紙は,水蒸気で表面
が膨らんでしまう場合がある
のでこの補修方法は避けて
ください。
筆を使って糊代の部分に
糊を塗ります。塗り残しが
無いように,かつ手早く塗
ります。
水を加えない濃い糊を使用
してください。(あまりに糊の
伸びが悪い場合は,多少水
を加えても結構です。) 下に
はく離紙を敷いてあるので多
少はみ出しても大丈夫です。
破れた箇所を貼り合せ,ク クッキングシートはあまり大
ッキングシートを上にあて きいと作業がしにくいので A5
ます。
サイズ程度が使いやすいと
思います。
電熱のイチョウゴテ又はア
イロンをクッキングシート
の上から軽くあてます。コ
テやアイロンは強く押し付
けないでください。力を入
れると張り合わせた箇所
がずれてしまう場合があり
ます。
15
ずれた場合は,霧吹き等で
濡らすと剥れます。ただし,
ボンドを使用した場合は,や
り直しは不可。
コテやアイロンの温度は,
150℃~180℃程度を目安に
してください。熱いので火傷
しないよう注意してください。
本の修理の玉手箱
3 ページ外れ補修
写真
手順
ページが外れていま
す。
ボンドを使用して補修し
ます。
アドバイス
ボ ン ド は , 原 液を 使 用し ま
す。
容器は,修正液の容器を再
利用しています。(修正液で
はありません)
ボンドをノドに入れます
ボンドの量は縫い糸からタコ
ボンドを竹ヒゴなどでノド 糸程度までの太さを目安に
の奥に入れます
してください。ボンドの量が
あまり多いとページの間に
はみ出してしまいます。
外れたページをノドの部 下のページと良く合わせてく
分にきちんと差し込みま ださい。はみ出してしまう時
す。
は,前小口部分を合わせし
っかり押さえて小口からノド
方向に押し込むように入れ
ます。
竹ヒゴなどを使ってノ ド ミゾ部分を竹ヒゴで抑えると
部分を軽く押し込みます ページが奥まで入ります。
ブッカーのはく離紙を 4 セン
チ幅程度にカットして2つに
折ったものをのど部分に挟
むとページがくっつかないの
できれいに仕上がります。
目玉クリップなどで背を 接着するまでの時間は,紙
挟んで固定します。
質や気温で異なりますが,
概ね 30 分から 1 時間程度で
ある程度接着します。クリッ
プを外しても結構です。ただ
し,本を開くのは,1 日置い
て完全に乾燥してからにし
てください。
16
本の修理の玉手箱
4 テープのはがし方
写真
手順
説明
電熱のイチョウゴテやアイ 最初は、テープの端にコテ
ロンを温めます。
やアイロンをあて溶けない
溶ける場合は,ドライヤー か確認してください。
を使用します。
テープの上にコテをあて
粘着剤を溶かし,テープを
ピンセットで剥がす。
ドライヤーを使用してテー 風量は,少ない温風でじっく
プを剥がします。
り温めてください。
温度調節は,テープとドライ
(薄いセロテープやブッカ ヤーの距離で調節してくだ
ー,透明な荷づくりテープ さい。
など,溶けやすいものにド ピンセットの先は高温になる
ライヤーを使用します。)
場合があるので注意してくだ
さい。
粘着剤が付いている部分 何ページも続けてアイロンを
に,ベビーパウダーをたた 使ってセロテープを剥がす
きます。
と,前に剥がしたテープの糊
画が溶けて,付いてしまう場
余分なパウダーを落として 合があります。あわてず,ド
完了です。
ライヤーで温め,剥れてから
再度パウダーをつけます。
17
本の修理の玉手箱
5 綴じ糸のゆるみ補修
写真
手順
説明
糸がゆるんで隙間が出来 ボンドを入れて中身と一緒
ています。
にゆるんだ糸を背に接着す
る補修です。
写真は隙間があるため直 ボンドを入れすぎると,閉 じ
接 ボ ン ド を 充 填 し て い ま た時,本の中まではみ出す
す。
ので注意してください。最初
は少なめで徐々に適量を掴
んでください。
あまり隙間が無い場合な
どは,天地からボンドを入
れ竹ヒゴ等で奥まで入れ
ます。
竹ヒゴを回しながらボンドを
奥に入れます。
ボンドを入れすぎた場合な
どは,竹ヒゴを使ってかき出
します。
写真の竹ヒゴを入れている
箇所は,表紙と中身を取り
付けている寒冷紗が剥れ
ているため,ボンドを入れ
て接着しています。
本を閉じ,背をクリップ等で
固定します。
竹ヒゴで十分に広げてくださ
い。
背の部分にもボンドを付け,
表紙とつけます。
乾燥したら完成です。
18
本の修理の玉手箱
6 寒冷紗が切れた場合の修理
写真
手順
説明
中身と表紙がはずれてい 寒冷紗が切れているので本
ます。
を分解して修理します。
遊び紙を中身から剥がし 中身と遊び紙の間に両手の
ます。
親指を入れしっかり握り固定
しながら開いてください。
ノド部分を開くように剥が
します。
3,4 回あおるように剥がし
ます。
片方が剥がれたら,持ち
替えて,天と地両方を同じ
ように剥がします。
大きな本は,天地をあおって
開いてから,遊び紙を引いて
中央部分を剥がします。寒冷
紗が切れていない場合は遊
び紙を剥がしてからカッター
等で切り離します。
中身と表紙が完全にはず
れました。
寒冷紗と見返し紙を一緒
に表紙から剥がします。剥
がす幅は,2~3 センチ程
度で,寒冷紗が貼ってあ
る部分です。ミゾに貼りつ
いた寒冷紗と見返紙を破
かないように丁寧に剥が
します。
19
見返紙を剥がす際,ブッカー
が邪魔になる場合がありま
す見返紙に沿ってブッカーに
切れ込み(1 センチ程度)を
入れて剥がします。
本の修理の玉手箱
貼ってある寒冷紗を剥が 見返し紙が破けてしまう場合
します。
は,止めてそのまま糊で貼り
付けます。
中身の外れている部分を
糊付けします。
背の部分から 3~5 ミリメ ボンドをつける時は,当て紙
ートル程度の幅でボンドを をして塗ると一定の幅でつけ
つけます。
ることができます。
ページを合わせて貼り付
けます。
花ぎれとしおりを中身から 背の部分の痛んでいる部分
外し,中身の背の部分を を剥がします。
きれいに掃除します。
背の部分より長さが 2 セン
チ程度短い寒冷紗を用意
します。
花ぎれとしおりを元の位置
に取り付けます。
20
本の修理の玉手箱
中身の背にボンドを付け, 寒冷紗の幅は,本の中身の
寒冷紗を貼ります。
厚さ+4~6 センチ程度で縦
は,中身より 2~3 センチ短く
します。
寒冷紗の羽部分(中身から
両サイドに出ている部分)が
狭いと表紙に取り付ける際
強度が不足します。
寒冷紗を貼ったところ。
表紙と中身をクリップで仮
留めし,寒冷紗と見返し紙
を持ち上げて,表紙の部
分とミゾの部分に糊をつけ
ます。
寒冷紗を貼ります。
仮留めする時は,表紙と中
身の天地が逆にならないよう
注意します。
寒冷紗を貼るときは,ミゾの
部分によく入れます。
貼り付けた寒冷紗の上に
さらに糊をつける。その
時,見返しが貼ってあった
中身の背の部分に 3~5 ミ
リ程度の幅で糊をつけま
す。
見返し紙を貼ります。
反対側も同様の作業を行
います。
目玉クリップ等でミゾ部分 小口側が開いてしまう場合
を挟んで固定します。
は,重しを載せるか,小口側
乾燥後クリップを外して完 もクリップで固定します。
成です。
21
本の修理の玉手箱
7 のど部分の破れ補修
手順
写真
説明
ノ ド の 部 分 が 破 れ て い ま この修理方法は,主にノドの
す。
部分が破れた時の修理方法
です。
補修用和紙(雁皮紙)を 5 補修用和紙(雁皮紙)やペー
から8ミリ程度の幅で,カッ ジヘルパーは,絵や文字が
ターで切っておきます。
透きとおるものを使用してく
ださい。
破 れ て い る 部 分 を あ わ ボンドの塗り幅は,広くなっ
せ,和紙の幅より広めにボ ても乾燥すると透明になる
ンドをつけます。
ので問題ありません。
薄いボンドを使うと強度が弱
破けている部分に和紙を くなります。
貼り,軽く抑えます。
和紙は濡れると非常に破け
やすくなります。一度指で押
さえたら出来るだけ触らない
ようにしてください。
気温にもよりますが,1 時間
程度で乾燥します。
8 ページの欠損補修
写真
手順
説明
ページが欠けています。
破けた部分が無くなっていま
す。
22
本の修理の玉手箱
同系色のカラーコピー用
紙などを欠損部分の形
に合わせ,1 センチメート
ル程度大きく破きます。
欠損した部分が大切な場合で
複本がある場合は,カラーコピ
ーして欠損部分を修理する方
法もあります。
破れたページの下にはく あらかじめ破いた紙の位置を
離紙を敷いておきます。 確認し,少し大きめに糊をつけ
破けた箇所の周りに糊 ます。
をつけます。
補修用の紙を貼ります。
乾燥後,定規をあて,カ
ッターで余分な部分をカ
ットします。
ソリなどがある場合は,
アイロンで平らにしま
す。
23
和糊を使用した場合は,アイ
ロンで乾燥させます。
ボンドを使用した場合は,乾燥
してから軽く低温でアイロンを
あててください。
本の修理の玉手箱
9 背の補修
写真
手順
説明
背の部分が破れて剥れ 写真は小さな破れですが大き
ています。
な破れでも修理の方法は同様
です。
背の部分の修理は、様々なケ
ースがあるので、症状に応じて
工夫してください。
破れている部分に筆を ボンドを入れる際,ハードカバ
差し込むようにボンドを ーの本は,中身の背に直接ボ
入れます。
ンドをつけないで,背幅の補強
の紙(クータなど)を背に差込
み,ボンドをつけて補修してく
ださい。
ボンドは、中身とクータの間に
入れてください。
ブッカーを補修部分より
少し大きめにカットし て
補修した箇所の上に貼
り完成です。
24
本の修理の玉手箱
10 針と糸の準備
写真
手順
製本用の針と麻糸を用
意します。
針に糸を通します。
説明
写真は、6 センチメートル程度
の針と麻糸 30 番です。糸の太
さは、本の種類により異なりま
す。元の本に使用されていた太
さに近い糸もしくは、少し太め
の糸を使用します。
糸の太さは、何種類か用意して
あったほうが良いと思います。
よく使用するのは、30 番と 50 番
です。
糸にロウを塗っておくとすべり
が良くなります。
通した糸の先端から 5~ 本を縫う時,針から糸が抜け
10 センチメートル程度の ないように処理します。
位置を針で糸を刺しま
す。
写真の状態から長いほ 最初に長い糸を針の根元まで
うの糸を引いて針を通し 引き次に短い糸を持って針を
ます。
引き抜きます。
針と糸が固定されまし
た。
25
本の修理の玉手箱
人差し指に 1 回糸を巻き
つけます。
糸のお尻に抜け止めの 人指し指を抜いて小さな輪を作
結びめ(引き解け結び) り,その中に短いほうの糸を半
を作ります。
分通します。(完全に抜き出さ
ないでください。)
小さな輪から引き出した
糸をつまみ,軽く引き絞
り,引き解け結びを作
る。
針と糸の準備が出来まし
た。
26
本の修理の玉手箱
11 糸綴じ修理
写真
手順
説明
写真は 2 枚を 2 つ折にし
て 8 ページが 1 セットにな
った絵本です。糸綴じの
本を分解する時は、最初
に本を開いて、綴じ糸をカ
ッターなどで切ってくださ
い。その他の本の分解方
糸綴じの本は、いくつかの束
(1 番多いと思われるのは、2
つ折 8 ページ)を 1 つにまとめ
て綴じた本で、絵本や図鑑な
どノドの部分まで開く本に多
いです。
法は、寒冷紗を使った補
修のページをご覧くださ
い。
破れなどが無く元の針穴
が利用できる場合は、そ
のまま利用します。新しい
穴を開ける時は、ページ
の背の部分に針穴の位
置を鉛筆で印をします。
3 センチ間隔の場合、本の中
央から上下とも 1.5 センチの
位置に、印を付け、次から 3
センチ間隔で印をつけてくだ
さい。
複数の束に分かれている時
穴の間隔は、おおむね 2.5 は、1 つの束に印をつけて、
センチから 3 センチ程度を 重ねて他の束に写すと良い
でしょう。
目安にします。
天地は 1 センチ以上離し
て穴をあけて下さい。穴
の数は、偶数個にしてくだ
さい。
印の位置に目打ちや千枚
通しなどで穴をあけます。
慣れれば,直接針で縫っ
ても結構です。
ただし,内側から針を通す
時,穴が無いと位置が判
りません。
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穴を開ける時は、ページを良く
合わせ、2 枚の束ごとにあけ
てください。一度に複数の束を
重ねて穴を開けようとすると、
穴の位置がずれてしまいま
す。
本の修理の玉手箱
ページの下半分をクリップ
で固定します。
背の方向から針を入れ縫
い 始めます。天地どちら
からでも結構です。(写真
は地から縫い始めまし
た。)
針と糸の準備を見て用意し
てください。
最初の束は,外側と内側
交互に縫います。端までく
ると ,針は内側から背に
出ます。
糸を軽く引いて,ゆるみを取
ります。糸を引く時は,必ず
縫い方向に水平に引いてく
ださい。背に直角若しくは戻
り方向に引くと紙が切れてし
まいます。
縫い始めの位置には,抜け
止めの引き解け結びが残り
ます。強く引いて結び目を抜
いてしまわないよう注意して
ください。
2 番目の束を上に乗せ最
初の束全部と 2 番目の束
の下半分をクリップで固定
します。
2 つ目の束の背から糸を
通し 2 番目の穴から背に
糸を通します。
2番目の穴から通した糸
を軽く引いて,緩みを取
り,ページの上で指で糸を
抑えます。
最初の束の背の糸を針で
下からすくいます。(3 束目
以降は,すぐ下の束の糸
をすくいます)
糸を軽く引くと,2 番目の
穴の位置で一重結びがで
きます。次の穴に針を通し
ます。
28
背から針を通し,内側から
出た糸を下の糸と結ぶこ
の繰り返しです。
一重結びはすぐにゆるみ
ますがあまり気にしなくて
も結構です。
強く引いてノド部分を破か
ないようにしてください。
本の修理の玉手箱
端まできたら,縫い始めの
位置の糸の引き解け結び
を解いて縫ってきた糸と固
結びにします。
3 束目を乗せて 2 束と 3 束
目の半分をクリップで固定
し,手順 7~9 の作業を繰
り返します。
3 束目の端まで縫ったら写
真のように 1 束目と 2 束目
の間に針を通し,下の糸
をすくいます。
4 束目を同様に綴じます。
14 最後の束を綴じ終わ
ったら,手順 12 と同じく糸
を処理し下の糸と結びま
す。
束と束の間に針を通す時,針
で紙を刺してしまう時がありま
す。下の糸だけをすくうように
してください。
余分な糸は,1 センチ程度残
して切ってください。
背に少し多めのボンド を
付け,筆や指で平らにしま
す。
背の隙間が多いとボンド
がページの中まで入って
しまう場合があります。隙
間が多い時は,天地及び
真中をクリップなどで挟ん
でからボンドを塗ってくだ
さい。
クリップで固定します。
糸と中身をボンドで固めます。
ボンドがゆるい(水で薄めてあ
るなど)と隙間に入り易いので
原液を使用してください。
乾燥後,寒冷紗を背に貼 寒冷紗は,左右 2~3 センチ
ります。
程度の羽を付けます。
表紙と中身を取り付けま
す。
※表紙と中身の取付け方
法は,寒冷紗を使った補
修を見てください。
29
本の修理の玉手箱
12 糸鋸を使った修理
写真
手順
アドバイス
ソフトカバーの本の表紙と 糸鋸を使って中身を補強し
中身が外れています。
表紙に取り付けます。
中身についている接着剤 無線綴じの本で、中のペー
や背を固めている樹脂な ジもいくつかに分れてしまっ
どを取り除きます。
ています。
中身が動かないよう帯紙 帯紙の合わせ目はセロテー
を巻いてしっかり固定しま プ等でしっかり固定します。
す。
帯紙は、使用済みの封筒や
ブッカーのハクリ紙を使用して
います。
固定するため締め付け機 締め付け機は,ホームセン
に帯紙を巻いたまま入れ ターで A4 の紙がゆっくり入る
ます。
大きさの板を購入し,4 角に穴
を開けてボルトで締め付ける
ものを手作りしました。(ボル
トの位置は,A4 サイズより少
し大きい位置にしてくださ
い。)
1 センチ程度、背を出して
ボルトを締め固定します。
30
本の修理の玉手箱
背に糸鋸で切り込みを入 2 センチ程度の間隔で切り込
れます。
みを入れます。
切り込みは細かく入れたほう
が強度が出ますが、あまり細
かくても背の部分が傷んでし
まう場合があります。細かく
ても 1 センチ間隔程度までに
してください。
全体に切れ込みを入れた 補強の糸を入れる前に一度
ら , 背 に ボ ン ド を 塗 り ま ボンドをぬります。
す。
背ののこぎりの穴に太目 本来は,平麻を入れますが,
の麻糸を入れます。
麻糸で代用しています。
すべての切れ込みに,糸
を入れ終わりました。
糸の上からボンドを塗り, ボンドが透明になるまで乾か
クリップで背を締め固めま します。
す。
31
本の修理の玉手箱
糸を少し残してカットして, 糸を少し残すのは,表紙と
ほぐします。
中身を取り付けた時に,一
緒に貼り付け糸が抜けにく
くするためです。
あまり長いとはみ出して汚
くなります。
ほぐれない糸はカットして
結構です。
背の部分にボンドを付け,
表紙に取り付けます。
クリップで固定します。
乾燥すれば出来上がりで
(締め付け機を使用するこ す。
とも可能ですが,締め付
けの際,ずれる場合があ
るのでクリップ等で行って
います)
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