(4)先住民権利法(共和国法第 8371 号・フィリピン) S.No.1728 H.No.9125 フィリピン共和国 フィリピン議会下院 マニラ首都圏 第 10 議会 第 3 回通常議会 1997 年 7 月 28 日月曜日マニラ首都圏にて開会 共和国法律第 8371 号 先住民問題に関する国家委員会を創設し、実施機構を設立し、 それらを目的とした資金を調達し、先住民文化共同体および 先住民の権利を認知、保護、促進するための法律 招集したフィリピン上下両院により制定 第1章 一般規定 第1節 【略称】 本法は略称を「1997 年先住民権法」とする。 第2節 【国家政策の宣言】 国は、憲法の枠内で下記に列挙した先住民文化共同体および先住民(以下 ICCs/Ips と いう)のすべての権利を認知し、促進する。 a) 国は、国家の統一と開発の枠内で、ICCs/IPs のすべての権利を認知し、促進する。 b) 国は、ICCs/IPs の経済、社会、文化的福利を確保すべく先祖伝来領域に有する権利を 保護し、先祖伝来領域の所有権および範囲を定めるに当たり、財産権または関係を定 める慣習法の適用性を承認する。 c) 国は、ICCs/IPs が自身の文化、伝統、制度を維持、発展させる権利を承認し、尊重し、 かつ保護する。国は、国内法および政策の策定にあたって、これらの権利に配慮する。 d) 国は、ICCs/IPs の構成員が性の別なく、すべての人権および自由を何らの格差、差別 なしに享受しうることを保証する。 e) 国は、ICCs/IPs 関係者の参加を得て、ICCs/IPs の権利を保護し、その文化の保全を 尊重することを保証し、かつ ICCs/IPs の構成員が国内法および規則により ICCs/IPs 以外の国民に与えられている権利および機会により、一般国民と対等の立場で利益を 得られるよう図るための対策を講じる。 f) 国は、ICCs/IPs の教育、保健、その他の事業につき、これらの共同体の需要および要 望への対応を強化するため、これら事業の管理運営に ICCs/IPs の最大限の参加を保証 することにより、ICCs/IPs の文化保全を求める強い主張への対応を図る義務があるこ とを認識する。 これらの目的達成に向けて、国は ICCs/IPs の習慣、伝統、価値観、信条、利益、制度 に配慮しながら、これらの権利に対する認識を強化し、保証し、および彼らの先祖伝来領 域に対する権利の保護対策を採用・導入するために、必要な機構を制定し、設立する。 33 第2章 用語の定義 第3節 【用語の定義】 本法の目的上、以下の用語の意味を次の通り定める。 a) 先祖伝来領域:本法第 56 節にしたがい、戦争、不可抗力、または強制移動、詐欺、略 奪、あるいは政府事業その他、政府および民間の個人もしくは企業により締結された 自発的な取引等の結果として中断された時期を除いて、ICCs/IPs がそれ自身または祖 先を通じて、大昔から現在に至るまで継続的に、全住民の共有または個別に、所有権 の請求権に基づいて保有、占有、または所有している土地、内水、沿岸域、およびそ こ に 存 す る 天 然 資 源 か ら 成 る す べ て の 地 域 で あ っ て 、 一 般 的 に ICCs/IPs に 属 し 、 ICCs/IPs の経済、社会、および文化的福利の確保のために必要とするものをいう。こ れには、先祖伝来の土地、森林、牧草地、居住地、農地、その他の譲渡可能、処分可 能その他の種類の個人所有地、狩猟地、墓地、崇拝区域、水域、鉱物その他の天然資 源、および土地であって、現在は必ずしも ICCs/IPs が占有しているわけではないが、 自分らの生活や伝統的な活動のために伝統的に利用しているものが含まれ、特に、現 在も遊牧生活や移動農耕活動を続けている ICCs/IPs の住居地等を含む。 b) 先祖伝来地:本法第 56 節にしたがい、戦争、不可抗力、または強制移動、詐欺、略奪、 あるいは政府事業その他、政府および民間の個人もしくは企業により締結された自発 的な取引等の結果として中断された時期を除いて、ICCs/IPs 自身または前権利者を通 じて、大昔から現在に至るまで継続的に、個別または伝統的集団の所有権の請求権に 基づいて、ICCs/IPs の構成員である個人、家族、および部族が占有、所有、および使 用している土地をいい、これには住居区域、稲田または棚田、私有林、焼き畑農場、 樹林地等を含むが、ただしこれに限定されるものではない。 c) 先祖伝来領域権原証明書:本法に基づいて識別、線引きされた先祖伝来領域について、 ICCs/IPs の有する占有権および所有権を正式に認知する権原証書をいう。 d) 先祖伝来地権原証明書:ICCs/IPs が先祖伝来地について有する権利を正式に認知する 権原証書をいう。 e) 共同体の請求権:確定された領域内において、共同体全体に帰属する土地ならびにそ の土地に存する資源および権利に対する同共同体の請求権をいう。 f) 慣習法:それぞれの ICCs/IPs により伝統的かつ継続的に認知、受容、遵守されている 多数の成文法および不文法、慣用法、慣習、慣行をいう。 g) 自由かつ事前の情報に基づく同意:本法での使用では、各 ICCs/IPs の慣習法および慣 行にしたがって、いかなる外部からの操作、干渉、および強制も加えることなく、対 象行為の意図と範囲を当該共同体の住民の理解できる言語と手法をもって完全に開示 した上で得た、当該共同体の全構成員の総意をいう。 h) 先住民文化共同体および先住民:自身および他者の属性認識により確認されている集 団または同質社会で、共同社会としての境界のある確定された領域に、組織された共 同体として継続的に居住し、大昔からその領域を所有権の請求権に基づいて占有、所 有し、共通の言語、習慣、伝統その他の明確な文化的習性を有している住民、あるい は、植民地主義、異文化社会の宗教および文化等の政治、社会、文化的な侵入に反抗 して、歴史的に大多数のフィリピン国民から乖離しているものをいう。また、ICCs/IPs には、征服または植民地化された時代、または、異文化の宗教が侵入してきた時代、 あるいは現在の国家が成立した時代にこの国に居住していた人々の子孫で、独自の社 会、経済、文化、政治体制のすべてまたは一部を保持しているが、自らの伝統的な領 域から移動させられたり、あるいは先祖伝来領域から移住していった住民も含まれる。 i) 先住民政治機構:長老評議会、ティムアイス評議会、ボドン・ホルダーズ、その他の 裁決機関またはそれらと同質の組織等のように、ICCs/IPs が識別した意思決定および 参加のための組織的かつ文化的な指導の体制、機関、関係、形態、プロセスをいう。 34 j) 個別の請求権:個人、家族、部族に譲渡された住居区域、稲田および棚田、樹林地、 その他の土地およびその権利に対する請求権をいう。 k) 国家先住民問題委員会(NCIP):本法に基づいて設立された事務機関で、大統領室の下 部に置かれ、ICCs/IPs の権利の認知、保護、促進を目的とする政策、計画、プログラ ムの策定および実施を所管する主要な政府機関をいう。 l) 在来権原:記憶でたどれる限りにおいて ICCs/IPs の私的所有権の請求権に基づいて保 有され、これまでに一度も公有地となったことがなく、したがって、スペインに征服 される以前からそのように保有されていたと明らかに推測されている土地および領域 に対する、征服時代以前の権利をいう。 m) 非政府組織:ICCs/IPs への各種サービスの提供を主たる目的として設立され、その機 関が対象とする社会への有効性とその受入にしっかりした実績を持つ自発的な民間の 非営利機関をいう。 n) 人民組織:ICCs/IPs の構成員から成る自発的な民間の非営利機関で、当該 ICCs/IPs の代表として受け入れられているものをいう。 o) 持続可能な伝統的資源権:a)土地、空気、水、鉱物、b)植物、動物、その他の生物、 c)採取場、漁場、狩猟場、d)聖地、e)その他先住民の知識、信条、制度、慣行に基づい て経済、祭祀、美的側面からの価値を有する地域等を、ICCs/IPs が持続的に使用、管 理、保護、保全する権利をいう。 p) 大昔:記憶のたどれる限りで、特定の ICCs/IPs が、彼らの慣習と伝統にしたがって慣 習法の運営者から譲り受けたか、またはその先祖から相続した確定領域を占有し、持 ち主として所有し、および使用していたことが知られている期間をいう。 第3章 先祖伝来領域に対する権利 第4節 【先祖伝来地・領域の観念】 先祖伝来地・領域には、単に物理的環境にとどまらず、ICCs/IPs が所有、占有、使用し、 所有権の請求権を有する地域への精神的および文化的なつながりを含めた全体的な環境を 含む領域という観念が含まれる。 第5節 【所有権に対する先住民の観念】 所有権に対する先住民の観念では、先祖伝来領域およびそこに含まれるあらゆる資源が、 彼らの文化を保全するための重要な基盤としての役割を果たすという見解が保たれている。 所有権に対する先住民の観念では、一般的に先祖伝来領域が ICCs/IPs の私的ながらも共 同体の財産としてすべての世代に帰属するものであり、したがってこれを売却、処分、破 壊することはできないとされている。それは同時に、持続可能な伝統的な資源権も対象と している。 第6節 【先祖伝来地・領域の構成】 先祖伝来地および先祖伝来領域は、本法第 3 節(a)項および(b)項で述べた ICCs/IPs に帰 属する地域すべてにより構成される。 第7節 【先祖伝来領域に対する権利】 ICCs/IPs の先祖伝来領域に対する所有権および占有権は、認知かつ保護される。当該権 利には以下が含まれる。 a) 所有権:ICCs/IPs が伝統的かつ実際に占有している土地および水域、聖域、伝統的な 狩猟場および漁場、ならびに領域内であらゆる時点においてなされたあらゆる改良工 事に対して所有権を主張する権利。 b) 土地および天然資源の開発権:本法第 56 節に基づき、伝統的に占有、所有または使用 35 してきた土地および領域を開発、管理および使用する権利。領域内の天然資源を管理・ 保全し、将来の世代に対して責任を負い続ける権利。領域内で得た天然資源の配分お よび活用から得た利益を享受し、共有する権利。国内法および慣習法に基づいて領域 内の生態系および環境の保護・保全対策を講じるために、天然資源開発の諸条件につ いて交渉する権利。政府・民間の別なく、先祖伝来領域に何らかの影響をもたらすあ らゆるプロジェクトの策定および実施に対して、情報を得た上で聡明な参加を行う権 利、およびそのプロジェクトの結果として被った損害に対して、公正かつ公平な補償 を受ける権利。そして、これらの権利に対するあらゆる干渉、疎外、および侵略を防 止するための政府による効果的な対策を受ける権利。 c) 領域内の居住権:領域内に居住し、そこから移動させられない権利:いかなる ICCs/IPs も、自由かつ事前の情報に基づく同意なしに、あるいは土地収用以外の手段で、移住 させられることはない。例外措置として移住が必要と見なされる場合には、その移住 は、関連 ICCs/IPs の自由かつ事前の情報に基づく同意を得た上でのみ行われ、可能な 限り、その移住理由が消滅次第ただちにその先祖伝来地に帰る権利を保証する。その ような復帰が、協定その他の適切な手順での判定によって不可能とされる場合は、可 能な限り ICCs/IPs には、現在の需要と将来の発展に備えるに適切で、移住前に占有し ていたのと同等以上の質を備えた土地と法的地位を与える。こうして移住させられた 人々は、その結果として生じるあらゆる損失・損害に対して完全な補償を受ける。 d) 移住の場合の権利:自然災害の結果として移住が起きた場合は、国は移住させられた ICCs/IPs が一時的な生 活支援体制を得 られる 適切な場所に再定 住で きるように努 力 する。ただし、被移住 ICCs/IPs は、放棄した土地の正常性と安全性が確定されるまで、 その土地に帰る権利を保有する。さらに、当該 ICCs/IPs の先祖伝来領域が消滅し、以 前の居住地の正常性と安全性を得ることが不可能になった場合、被移住 ICCs/IPs は、 再定住させられた土地に対して安定した保有を享受でき、また彼らの需要に適切な対 応がなされるように、基本的なサービスと生計を保証される。 e) 移住者の入境に対する規制権:領域への移住者や団体の入境を制限する権利。 f) 安全かつ清浄な空気と水を確保する権利:この目的のために ICCs/IPs は、内水と空 間を管理する総合的な制度を利用することができる。 g) 指定地部分に対して請求する権利:各種の目的のために指定されている先祖伝来領域 について、一般および公共の福祉とサービス用として指定されている場所を除いた部 分に対して、請求する権利。 h) 紛争解決権:土地が所在している地域の慣習法にしたがって土地紛争を解決する権利 で、それを行使しない場合にのみ異議の解決を和解に持ち込み、あるいは必要があれ ば裁判所に提訴することができる。 第8節 【先祖伝来地に対する権利】 ICCs/IPs が先祖伝来地に有する所有権と占有権は、認知および保護される。 a) 土地・財産の譲渡権:この種の権利には、同じ ICCs/IPs の構成員向けにまたはその間 で土地または財産権を譲渡する権利も含まれ、関連共同体の慣習法および伝統にした がう。 b) 買い戻し権:何らかの合意または企図により行われた土地または財産の ICCs/IPs の構 成員以外への譲渡が、当該 ICCs/IPs の合意としては無効なものにより行われたこと、 または良心的でない対価または価格で行われたことが明らかになった場合は、譲渡し た ICCs/IPs には譲渡日から 15 年以内にその物件を買い戻す権利が与えられる。 第9節 【ICCs/IPs が先祖伝来領域に対して負う責任】 正式に認定された先祖伝来領域を占有する ICCs/IPs は、以下の責任を負う。 a) 生態系の均衡維持:先祖伝来領域内の動植物、水系の流域、その他の保護地を保護する ことにより、均衡のとれた生態系の保全、復元、維持に努める。 36 b) 荒廃地の復元:公正かつ妥当な報酬を得て、荒廃地の植林やその他の開発計画およびプ ロジェクトを積極的に先導し、実行し、かつそれに参加する。 c) 法律の遵守:本法およびその効果的な実施のための諸規則の規定を順守する。 第10節 【無許可および不法な侵入】 先祖伝来領域のいかなる部分への無許可および不法な侵入もしくはその使用、または本 法に定めた上記の各権利に対する違反は、すべて本法による処罰の対象となる。さらに政 府は、ICCs/IPs に帰属する所有権、土地の占有権を保護するために、ICCs/IPs 以外の者 が、ICCs/IPs の慣習または法律知識の不足を悪用することのないように対策を講じる。 第11節 【先祖伝来領域に対する権利の認知】 在来権原に基づいた先祖伝来領域に対する ICCs/IPs の権利は、認知、尊重される。関 連する ICCs/IPs により懇請があれば、正式の認知は「先祖伝来領域権原証明書」(CADT) として作成され、これにより、識別され、線引きされた領域に有する権原が、当該 ICCs/IPs に対して認定される。 第12節 【共和国法律第 141 号改正法、または土地登記法第 496 号に基づく権原証明書取 得選択権】 個別に所有されている先祖伝来地に関して、文化共同体の個々の構成員であって、彼ら 自身または前権利者を通じて、大昔から現在に至るまで継続的に、本法の制定直前までに 少なくとも 30 年間以上、所有者としての観念をもって当該土地を保有および占有し、か つ同じ ICCs/IPs の構成員からの異議の申し立てを受けていない者は、共和国法第 141 号 改正法、または土地登記法第 496 号に基づき、その先祖伝来地に対する権原を取得する選 択権を有する。 この目的上、個別に所有されている当該先祖伝来地であって、農地という特性を有し、 実際に農業、居住、牧草地、林業等の目的に使われている土地は、傾斜地が 18%以上にな るものも含めて、本法により譲渡可能かつ処分可能な農地に分類される。 本節で認められた選択権は、本法承認後 20 年以内に行使されるものとする。 第4章 自治権およびその付与 第13節 【自治権】 国は、ICCs/IPs 固有の自治権および自決権を認知し、彼らの価値観、慣行および制度の 無欠性を尊重する。したがって国は、ICCs/IPs が自由に経済的、社会的、文化的開発を行 う権利を保証する。 第14節 【自治領域の支援】 国は憲法によって創設された自治領域を、その要求または必要に応じて継続的に強化し、 支援しなければならない。国はまた、ミンダナオ島イスラム教徒地域とコルディレラ山脈 に含まれない、またはその外部にいる他の ICCs/IPs に対しても、彼らの生活様式を、フ ィリピン共和国憲法に定められた基本的人権およびその他の国際的に認められた人権に即 した形式と内容で活用するよう奨励する。 第15節 【司法制度、紛争解決機関、および平和確立手順】 ICCs/IPs は、彼ら自身の一般的に受容された司法制度、紛争解決機関、平和確立手順ま たは機構およびその他の慣習法ならびに慣行を、それぞれの共同体内部で、国の法律制度 および国際的に認められた人権に即した内容・形式で活用する権利を有する。 37 第16節 【意思決定への参加の権利】 ICCs/IPs は自ら希望する限りにおいて、彼らが選択する手続きを通じて、自身の権利、 生活および将来に影響を及ぼす事柄に関するあらゆるレベルの意思決定に参加する権利を 有するとともに、彼ら固有の政治体制を維持・発展させる権利を有する。したがって国は、 ICCs/IPs が、政策決定機関その他の地方立法評議会に法定代表権を得られるように保証す る。 第17節 【開発優先順位の判定と決定の権利】 ICCs/IPs は、自身の生活、信条、制度、精神的福利、所有・占有・使用する土地等に影 響する開発について、自らの優先順位を判定し、決定する権利を有する。ICCs/IPs は、国、 地域、地方レベルの開発で直接影響を及ぼす可能性のあるものについての政策、計画、プ ログラムの策定、実施、評価に参加する。 第18節 【バランガイという部族社会】 人口の大半が ICCs/IPs である複数の隣接地域または共同体が自治体、州、または都市 の中にあり、当該自治体等の人口に占める ICCs/IPs 人口の割合が過半数に達しない場合、 当該地域や共同体に住む ICCs/IPs は、バランガイという部族社会に関する地方自治体法 にしたがって、別個のバランガイを形成または構成することができる。 第19節 【人民組織の役割】 国は、ICCs/IPs が、平和的かつ合法的な方策により、自分らの正当かつ共同の利益と強 い欲求を追求かつ保護することができるように、個々の ICCs/IPs 組織の役割を認知およ び尊重しなければならない。 第20節 【ICCs/IPs の開発および権限付与の対策】 政府は、ICCs/IPs 自身の制度と計画の本格的な開発と権限付与のための対策をたて、必 要があれば、それに必要な資源を供与する。 第5章 社会正義と人権 第21節 【ICCs/IPs の均等な保護と差別禁止】 フィリピン共和国憲法の均等保護条項、国連憲章、女子差別撤廃条約を含む世界人権宣 言、および国際人権法に沿って、国は、ICCs/IPs の明確な特性と独自性の正しい認識に立 って、ICCs/IPs の構成員に対し、他の国民すべてが享受している権利、保護および特権を 付与する。また国は、社会の構成員全員が有するのと同等の就業の権利、機会、基本業務 の提供、教育その他の権利、ならびに特典を ICCs/IPs に授与する。これにしたがい、国 は ICCs/IPs に加えられるいかなる形の暴力または抑圧に対しても、法律をもって対応す る。 国は、憲法および関連の国際法に法制化されている基本的人権および自由を、先住民女 性に対しても保証することを約束する。この目的のため、本法のいかなる条項についても、 一般に適用されている現行法によりすでに女性に認められて適用されている権利および特 権を縮小する結果をもたらすような解釈を禁ずる。 第22節 【武力紛争中の権利】 ICCs/IPs は、武力紛争の際に特別の保護と安全確保を得る権利を有する。国は、1949 年の第 4 次ジュネーブ協定を中心とした、緊急武力紛争時の市民の保護について定めた国 際 規 約 を 遵 守 し 、 ICCs/IPs の 構 成 員 を そ の 意 に 反 し て 徴 用 し て は な ら ず 、 特 に 、 他 の ICCs/IPs に対抗する勢力として利用してはならない。またいかなる場合でも、ICCs/IPs 38 の子どもを兵力として使ってはならない。また個々の先住民に土地、領地、生活手段の放 棄を強制する等、いかなる差別的条件においても、軍事目的で特定のセンターに移住させ てはならない。 第23節 【差別からの自由ならびに均等の機会および処遇を受ける権利】 採用や雇用条件に関するいかなる差別からも解放されることは ICCs/IPs の権利であり、 それにより ICCs/IPs は、雇用への受入、医療および社会援助、安全その他職業関連の特 典の供与等において均等の機会を享受することができ、保証担保労働その他の形式の債務 奴隷等の強制的な徴用制度の対象とならないように、現行労働法で定められている権利お よび利用可能な救済手段等についての情報の徹底、ならびに、性的いやがらせからの保護 を含む雇用上の男女の均等取扱も、ICCs/IPs の権利とする。 このため国は、一般労働者に適用される法律により効果的な保護が得られない範囲に限 り、国内法の範囲内において、また関係する ICCs/IPs の協力を得て、これらの共同体に 属する人々の採用と雇用条件に関し、効果的な保護を保証するための特別措置を採用しな ければならない。 ICCs/IPs は、結社の権利とあらゆる労働組合活動の自由、雇用主団体との集団交渉協定 を締結する権利を有する。同様に彼らは、特に農薬その他の毒性物質にさらされる等によ って、自らの健康にとって危険な労働条件を課せられない権利を有する。 第24節 【雇用に関する不法行為】 次の各事項は、何人にとっても不法行為である。 a) そ の 家 系 を 理 由 に 、 雇 用 の 諸 条 件 面 で 差 別 さ れ る こ と 。 同 価 値 の 労 働 に 対 し て は 、 ICCs/IPs、非 ICCs/IPs の別なく、同一賃金が支払われる。 b) いずれかの ICCs/IPs に対し本法で定められた権利もしくは利益の付与を拒否するこ と、または、本法で定められた権利もしくは利益の付与を避けるために、ICCs/IPs を 解雇すること。 第25節 【基本的サービス】 ICCs/IPs は、雇用、職業訓練および再訓練、住居、衛生、保健、社会保障の分野等の彼 らの経済的および社会的条件の迅速で効果的かつ継続的な改善のための特別措置の適用を 受ける権利を有する。先住民の女性、老人、青少年、子ども、各種障害者の権利や特別の 需要に対しては、特に注意を払う。したがって国は、水、電気設備、教育、保健および社 会基盤施設等を含め、ICCs/IPs が政府の基本的サービスの供与を受ける権利を保証する。 第26節 【女性】 ICCs/IPs の女性は、社会的、経済的、政治的、文化的生活の面において、男性と同等の 権利および機会を享受しなければならない。あらゆるレベルにおける先住民女性の意思決 定および社会開発への参加について、正当な敬意を払い、認知しなければならない。 国は、教育、母子の保護、保健と栄養、住居サービスの面において、先住民女性にあら ゆる利用の機会を提供する。職業、技術、専門業務その他の形式の訓練を行って、これら の女性が社会生活のあらゆる面に本格的に参加できるよう取りはからう。でき得る限り国 は、先住民の女性がこうしたすべてのサービスを自身の言語で利用できるようにする。 第27節 【子どもと青少年】 国は、ICCs/IPs の子どもと青少年が、国家形成に重要な役割を果たすことを認識し、彼 らの身体、道徳、精神、知性、社会面での安寧を促進し、保護する。そのため国は、ICCs/IPs の子どもと青少年の市民としての有効性の形成と育成を目的としたあらゆる政府の計画を 支援し、先住民の子どもと青少年の権利の保護に必要な機構を設立する。 39 第28節 【総合教育制度】 国は、国家先住民問題委員会(NCIP)を通じて、先住民の子どもと青少年の需要に即 した完全で適切かつ総合的な教育制度を設ける。 第6章 文化の保全 第29節 【先住民の文化、伝統、制度の保護】 国は、ICCs/IPs がその文化、伝統、制度を保全・保護する権利を尊重し、認知し、保護 する。国は、国家計画および政策の策定および適用にあたって、これらの権利に配慮する。 第30節 【教育制度】 国は、ICCs/IPs 自身の言語により、彼らの教育・学習方式に適切に対応した方式での教 育を施すことにより、彼ら自身の教育制度や機関を設立して管理する権利を損なうことな く、教育制度、官民の文化組織、奨学金、助成金、その他の奨励制度を通じて、ICCs/IPs に対し、各種の文化的機会を等しく提供する。先住民の子どもと青少年は、国によるあら ゆるレベルと形式の教育を受ける権利を有する。 第31節 【文化的多様性の認識】 国は、ICCs/IPs の文化、伝統、歴史、希望の尊厳と多様性を、あらゆる形の教育、公共 情報、文化教育交流に反映させるよう努力する。これに基づき、国は関連の ICCs/IPs と 協議の上で、ICCs/IPs 間および社会のあらゆる部門の間での偏見と差別をなくし、寛容、 理解および良好な関係を促進すべく、あらゆる効果的な対策を講じる。さらに政府は、国 営メディアに先住民文化の多様性が正しく反映されるよう、効果的な対策を施す。また、 国としても同様に、学校、地域社会ならびに、祭、会議、セミナー、ワークショップ等の 国際協力事業に、適切な先住民代表の参加を得て、先住民独特の伝統と価値の助成と拡大 を図る。 第32節 【共同体の知的所有権】 ICCs/IPs は、自身の文化的伝統および慣習を実践し、復興させる権利を持つ。国は、彼 らの文化の過去、現在、将来における発現と、ICCs/IPs の自由かつ事前の情報に基づく同 意を得ずにとられた、または彼らの法、伝統もしくは慣習に反してとられた文化的、知的、 宗教的および精神的財産を復元する権利とを保全し、保護し、発展させなければならない。 第33節 【宗教の地、文化的場所、および儀式】 ICCs/IPs は、自身の精神的および宗教上の伝統、習慣、儀式を発現、実践、発展、教導 する権利、宗教の地および文化的場所を維持し、保護し、かつ利用する権利、儀式的事物 を使用し、管理する権利、および遺体を引き取る権利を有する。これにしたがい国は、関 連の ICCs/IPs と協力して、埋葬地も含めた先住民の聖地が保全され、尊重され、保護さ れることを保証する。この目的の達成上、次の行為は法律違反となる。 a) 関係する共同体からの自由かつ事前の情報に基づく同意を得ずに、文化的価値を有する 事物を取得する目的で、ICCs/IPs の考古学的遺跡を探査、採掘または掘削すること、 b) ICCs/IPs の文化遺産保全のために彼らにとって極めて重要な人工物を、汚損、除去、 またはその他の方法で破損すること。 第34節 【先住民の知識体系および慣行についての権利、および独自の科学技術を開発す る権利】 ICCs/IPs には、全面的な所有権の認知を受け、自らの文化的、知的権利の管理と保護を 40 得る権利がある。彼らは、人その他の遺伝資源、種子(派生物を含む)、伝統的薬剤と伝統 的保健慣行、重要な薬効を有する動植物や鉱物、土着の知識体系と慣行、動植物の特性に 関する知識、伝承、文学、デザイン、視覚芸術、実演芸術等、彼らの科学技術および文化 的発現を管理し、開発し、保護する特別の対策を受ける権利を有する。 第35節 【生物資源および遺伝資源の利用】 生物資源および遺伝資源ならびにこれらの資源の保全、利用、拡張に関する土着の知識 の利用は、関連する ICCs/IPs の慣習法にしたがって、当該共同体の自由かつ事前の情報 に基づく同意が得られた場合にのみ、彼らの先祖伝来地および領域内において認められる。 第36節 【持続可能な農業技術開発】 国は、持続可能な農業技術開発に関する ICCs/IPs の権利を認知し、その効果的な実施 のための行動計画を策定、実施しなければならない。国はまた同様に、ICCs/IPs の間にお ける生物遺伝資源管理制度を促進し、ICCs/IPs の持続的開発を成功させるための政府機関 同士の協力を奨励する。 第37節 【考古学的遺跡および名所旧跡用資金】 ICCs/IPs は、国の政府から ICCs/IPs の考古学的遺跡、名所旧跡および人工物の管理と 保全用として特に指定あるいは割り当てられたすべての資金を、国家政府機関の財務およ び技術支援と共に受け取る権利を有する。 第7章 国家先住民問題委員会(NCIP) 第38節 【先住民文化共同体および先住民に関する国家委員会(NCIP)】 本法に定めた政策の実施を目的として、ICCs/IPs に関する国家委員会(NCIP、以下「国 家先住民問題委員会」という)を設立し、これをもって ICCs/IPs の権利と福利を促進し、 保護し、かつ彼らの先祖伝来領域およびそれに属する彼らの権利に対する認知を促進し、 保護するための政策、計画およびプログラムの策定と実施を所管する主要政府機関とする。 第39節 【付託事項】 国家先住民問題委員会は、ICCs/IPs の信条、習慣、伝統、制度に十分配慮して、彼らの 利益と福利を保護し、促進する。 第40節 【構成】 国家先住民問題委員会は、大統領室の下部に置かれた独立機関であり、ICCs/IPs に属す る 7 名の委員で構成され、その内の一名が議長を務める。委員は、真正の ICCs/IPs から 提出された被推薦者リストからフィリピン大統領が任命するが、ただしこの 7 名の委員は、 以下の各民族誌学的地域から任命される。すなわち、第 1 地域とコルディエラ山脈;第 2 地域;ルソン島の残りの地域;ミンドロ、パラワン、ロンブロン、パナイ、ビサヤの残り の地域を含む島嶼グループ;ミンダナオ島北部と西部;ミンダナオ島南部と東部;ミンダ ナオ島中央部。ただし、7 名の委員のうち最低 2 名は女性とする。 第41節 【資格、任期、報酬】 議長と 6 名の委員は生まれつきのフィリピン市民で、それぞれの属する部族により真正 の ICCs/IPs 構成員であることが証明されており、民族問題の経験者で、ICCs/IPs の共同 体または ICCs/IPs に関するいずれかの政府機関において少なくとも 10 年間勤務したこと があり、任命時の年齢を 35 才以上とし、誠実かつ公正な人格であることが証明されてい る者とする。ただし、7 名のうち 2 名以上はフィリピン法曹協会の会員とし、またこの委 41 員会のメンバーの任期は 3 年とし、さらに一期は再任できるものとするが、2 期を超えて 務めることはできない。空席ができた場合には、前任者の残りの任期を任期とする委員を 補充し、いかなる場合も、臨時または代行委員として委員を任命してはならない。また、 議長と委員は、給与基準法に基づいて報酬を受ける資格を有する。 第42節 【退任】 理由があれば法律の定める正しい手続を経た後、大統領が自らの意思またはいずれかの 先住民共同体からの提言によって、国家先住民問題委員会のメンバーを任期満了前に退任 させることができる。 第43節 【委員の任命】 大統領は、本法発効日から 90 日以内に、国家先住民問題委員会の 7 名の委員を任命す る。 第44節 【権限と機能】 国家先住民問題委員会は、その付託事項を達成するため、次の権限、司法権、および機 能を有する。 a) ICCs/IPs が政府の援助を求める際に窓口となる主要な政府機関として、またその援助 を行う媒体として機能する。 b) 現行法およびそれに関連する政策を含め、ICCs/IPs の状況を検討・評価し、国家開発 における彼らの役割に対応すべく、関連の法律および政策を提案する。 c) ICCs/IPs の経済的、社会的および文化的発展のための政策、計画、プログラムおよび プロジェクトを策定し、実施する。 d) 委員会の目的達成のために必要な他の政府機関からの専門家またはコンサルタントの 役務および支援を要請し、彼らを雇用する。 e) 先祖伝来地権原証明書および先祖伝来領域権原証明書を発行する。 f) 現行法に従い、本法の目的達成のために必要な契約、協定、あるいは取り決めを政府 機関または民間の機関もしくは団体と締結する。また、大統領の承認を得ることを条 件として、政府系融資機関およびその他の融資機関からそのプログラムの資金とする ための融資を受ける。 g) 資金の折衝を行い、フィリピン大統領の承認を得て、ICCs/IPs のために国内外等各種 資金源からの助成金、寄附、贈り物、または形態の如何に関わらず財産を受領し、そ の提供条件にしたがってその管理を行う。条件が定められていない場合は、ICCs/IPs の利益および現行法に沿った方法で行う。 h) ICCs/IPs 振興のための開発プログラムおよびプロジェクトの調整を図り、その適切な 実施を監督する。 i) 政策または計画の検討、評価、提案を目的として、先住民の定期的な総会たは集会を 開催する。 j) ICCs/IPs に関するすべての事項についてフィリピン大統領に助言し、各暦年終了後 60 日以内に、その運営と達成事項に関する報告書を提出する。 k) 本法に基づく政策の実行を目的として、適切な法案を議会に提出する。 l) 適切な予算を作成し、大統領室に提出する。 m) 民間の個人、民間企業、または政府機関、公団もしくはその支部による先祖伝来領域 の一部の処分、利用、管理および取得に対し、許可、リース、譲渡、その他の同様な 権限を付与する前提条件として、関連の ICCs/IPs の総意による承認を考慮し、適切な 承認証を発行する。 n) 委員会内のすべての部局の決定および措置から出されたあらゆる要請に対して、決定 を下す。 o) 本法の実施に必要な諸規則を公布する。 42 p) フィリピン共和国大統領から指示された上記以外の権限および機能を行使する。 q) 先 住 民 問 題 や そ れ に 関 連 す る 問 題 を 扱 う す べ て の 国 際 会 議 や 協 議 会 に 、 フ ィ リ ピ ン ICCs/IPs を代表して参加する。 第45節 【利用可能性と透明性】 法律および法律より公布された諸規則に定められた限界にしたがうことを条件として、 あらゆる公式記録、公式の措置、取引または決定に関する文書および書類、その他委員会 の政策策定の基礎として使われた研究データ等は、すべて一般の人々に利用できるように する。 第46節 【国家先住民問題委員会内の部局】 国家先住民問題委員会 には、以下に定めた政策の実施責任を負う次の部局 を設 置す る。 a) 先祖伝来領域局:先祖伝来領域局は、先祖伝来地および領域の識別、線引き、認定を 所管する。また、基本計画に基づく先祖伝来地および領域の管理、ならびに本法第 3 章に定める先祖伝来領域に対する ICCs/IPs の権利の実施についても所管する。さらに また、すべての先祖伝来領域の領地保全を図るにあたって ICCs/IPs を補佐するため、 関係 ICCs/IPs の自由かつ事前の情報に基づく同意を得て、彼らの利害またはその先祖 伝来領域に影響を与えるような天然資源の開発に対し、あらゆる許可、リース、認可 に先立って承認証の発行を行う。同様に、委員会が適切かつ必要と認めるその他の機 能も果たす。 b) 政策企画研究局:政策企画研究局は、ICCs/IPs のための5か年基本計画の策定等、 ICCs/IPs を対象とした適切な政策やプログラムの策定を所管する。そうした計画につ いては、情勢の変動に応じて、委員会が 5 年ごとに計画を検討して変更を加えるとい った処置をとる。この局は慣習法の文書化も行い、モニタリング、評価、政策策定に 必要な民族誌学的情報の保管所として機能する研究センターを設立し、維持する。同 局は、ICCs/IPs の利益を図る適切な法案の策定にあたり、国家政府の立法部門を援助 する。 c) 教育文化保健局:教育文化保健局は、本法に定める教育、文化、その他の関連権利の 効果的な実施を所管する。特に、先住民集団の構成員が既存の教育施設を利用できな い地域を中心に、現地の先住民共同体のために、公式・非公式両様の共同体学校を援 助し、振興し、支援する。また、奨学金制度その他の ICCs/IPs 受益者向けの教育の権 利を、教育文化スポーツ省および高等教育委員会と協力して管理する。同局は、利用 可能な予算の範囲で、言語訓練および職業訓練、国民保健および家族援助プログラム ならびに関連の課題を含む特別プログラムを運営する。 また、医療関連分野で訓練できることが見込める ICCs/IPs を特定し、彼らが医学、 看護学、理学療法その他、医療関連職業に関する講習を行う学校に入学するよう奨励 し、援助する。 この目的のため、国家先住民問題委員会は、前述の業務を直接遂行し、かつ ICCs/IPs からの苦情を聴取して関係機関に必要な措置をとらせる代表者を、上記各部局ごとに 配置する。また国立博物館のほか、ICCs/IPs の歴史的、考古学的人工物の管理と保全 を総合目的としている同様な政府機関の活動を監視するほか、国家先住民問題委員会 が適切かつ必要と見なす他の機能の実施を所管する。 d) 社会経済サービス・特殊問題局:社会経済サービス・特殊問題局は、国家先住民問題 委員会が、ICCs/IPs に影響を及ぼす各種の基本的な社会経済業務、政策、計画、プロ グラムの実施を専門に所管する関連政府機関との調整を図る際に、窓口部局として機 能し、ICCs/IPs が上記の業務や計画等を適切かつ直接に享受できるように取りはから う。また、国家先住民問題委員会が適切かつ必要と見なす他の機能の実施を所管する。 e) 権限付与・人権局:権限付与・人権局は、先住民の社会政治、文化、経済上の権利が 尊重され、認知されるように保証する。また、能力育成制度を設け、ICCs/IPs が希望 43 f) g) すれば、あらゆるレベルの意思決定に参画するためのあらゆる機会が彼らに与えられ るように、保証する。また、基本的人権および国家先住民問題委員会の定めるその他 の権利が、現行法と諸規則にしたがい、保護され、増進されるように保証する。 行政局:行政局は、国家先住民問題委員会に対して、経済的、効率的かつ有効な人事、 財務、記録、機器、安全保護、供給、およびそれに関連する役務を提供する。また先 祖伝来領域基金の管理も行う。 法務局:法務局を設け、国家先住民問題委員会に対して ICCs/IPs に関するあらゆる法 律問題に関する助言を行い、共同体の利害が絡む訴訟において ICCs/IPs に法務上の援 助を行う。また、ICCs/IPs の権利を侵害したと考えられる自然人または法人に対して ICCs/IPs が申し立てた苦情に基づいて、初期調査を行う。その調査結果に基づいて、 国家先住民問題委員会に対し、適切な法的行為または行政措置の手続きを開始する。 第47節 【その他の部局】 国家先住民問題委員会は、必要と見なされる場合には、既存の諸規則に基づいて追加の 部局を創設する権限を持つ。 第48節 【地域事務所および現地事務所】 既存の地域事務所と現地事務所は、国家先住民問題委員会の強化された組織構造の下で、 引き続き機能する。他の現地事務所は必要に応じて創設され、その人員配置は国家先住民 問題委員会が定める。ただし、ICCs/IPs がいても現地事務所が置かれていない州には、国 家先住民問題委員会がその州の現地事務所を設立する。 第49節 【事務局長室】 国家先住民問題委員会は事務局長室を設け、そこが事務局として機能する。この局長室 は、フィリピン共和国大統領が国家先住民問題委員会の推薦によって常任職として任命す る事務局長が指揮する。人員配置は、既存の諸規則に基づいて、国家先住民問題委員会が 定める。 第50節 【相談機関】 さまざまな ICCs/IPs の伝統的な指導者、長老、女性および青少年の代表からなる相談 機関が、随時国家先住民問題委員会によって設けられ、ICCs/IPs の問題、希望、利害関係 に関する事項について助言を行う。 第8章 先祖伝来領域の線引きと認定 第51節 【先祖伝来領域の線引きと認定】 先祖伝来領域の識別と線引きの指針としては、自己の線引きを原則とする。したがって、 関係する ICCs/IPs が、これに関連するすべての行為において決定的な役割を担う。こう した伝統的領地の判定にとっては、領地の範囲に関する長老の宣誓陳述と、もしあるなら ば隣接する ICCs/IPs と締結した協定や協約が、必須条件となる。政府は、必要な手順を 踏んで、関係 ICCs/IPs が伝統的に占有してきた土地を確定し、その ICCs/IPs の所有権と 占有権の効果的な保護を保証する。関係 ICCs/IPs の独占状態が崩れている場合であって も、未だに遊牧をしたり、または移動耕作を行ったりしている部族の場合等、伝統的にそ の土地を利用して生計を立てたり伝統的な活動を行ったりしている部族であれば、状況に 応じて、当該 ICCs/IPs のその土地に有する権利を保護するための対策を講じる。 第52節 【線引きの手順】 先祖伝来領域の識別と線引きは、次の手順にしたがって行う。 44 a) 本法制定以前から線引きされている先祖伝来領域:下記の規定は 1993 年シリーズ環境 天然資源省(DENR)行政命令第 2 号にしたがってすでに線引き済みの先祖伝来領域や 先祖伝来地、ならびに本法制定前に別の共同体・先祖伝来領域プログラム等で線引きの 終わっている先祖伝来領域や先祖伝来地には適用されない。本法制定前に公式に線引き されている先祖伝来領域や先祖伝来地を所有している ICCs/IPs は、以下の手続を踏ま ずに先祖伝来領域権原証明書(CADT)の発行を申請する権利を有する。 b) 線引きの請願:特定の境界線の線引き実施手順は、関係 ICCs/IPs の同意を得て国家先 住民問題委員会が開始するか、または ICCs/IPs の構成員の過半数から国家先住民問題 委員会に提出された線引き請願書により、開始することができる。 c) 適正な線引き:先祖伝来領域境界線の公式な線引きは、その中に住む先住民の共同体構 成員の人口調査も含めて、関係 ICCs/IPs からの申請書提出後直ちに、先祖伝来領域部 局により実施される。線引きは関係共同体との協力で行われ、常に関係共同体構成員の 実際の関与と参加を含めて行わなければならない。 d) 証拠の必要性:先祖伝来領域の請求権の証拠書類には、長老または共同体の宣誓証言お よび当該 ICCs/IPs が、所有者という観念をもって、大昔からのその地域を所有または 占有してきたことを直接または間接に立証するその他の文書を含むものとし、それは以 下のいずれか一つとする。 1) ICCs/IPs の慣習と伝統の説明書 2) ICCs/IPs の政治体制と制度の説明書 3) 古い改良工事、埋葬地、聖地、古い村落等のように、長期にわたる占有を示す写真 4) 関係 ICCs/IPs とその他の ICCs/IPs との間で締結された協約、協定等を含む歴史的 経緯説明書 5) 測量図およびスケッチ地図 6) 人類学的データ 7) 系図調査書 8) 共同体の伝統的な森林および狩猟地の写真と歴史説明 9) 山、川、小川、尾根、丘陵、棚田、その他同様な伝統的な陸標の写真と歴史説明 10) 共同体の土着の方言から派生した名称や場所の報告書 e) 地図の作成:上述のような調査や発見事実に基づいて、国家先住民問題委員会の先祖伝 来領域局は、技術的な説明とその中に存在する自然の特徴や陸標の記述を含めた完全な 境界地図を作成する。 f) 調査報告書とその他の文書:国家先住民問題委員会の先祖伝来領域局は、事前人口調査 と調査報告書の完全なコピーを作成する。 g) 通 知 と 公 表 : 関 係 ICCs/IPs の 土 着 言 語 へ の 翻 訳 も 含 め た 各 文 書 の 写 し を 、 当 該 ICCs/IPs 内の目立つ場所に最低 15 日以上掲示する。また同文書の写しは、国家先住民 問題委員会の現地事務所、州事務所、地域事務所にも掲示するとともに、一般紙 1 紙に も週 1 回ずつ 2 週連続して掲載し、他の主張者が公表日から 15 日以内にそれに対して 異議を申し立てられるようにする。ただし、そうした新聞のない地域では、ラジオ放送 も有効な代替手段と見なされ、さらにまた、新聞もラジオもない地域では、掲示だけで も十分と見なされる。 h) 国家先住民問題委員会への承認:先祖伝来領域局は、公表から 15 日以内に、また検査 手続の 15 日以内に、十分な証拠を持つと見なされる請求に対して好ましい措置を承認 する国家先住民問題委員会向け報告書を作成する。しかしながら、その証拠が不十分と 見なされる場合には、先祖伝来領域局は追加の証拠の提出を求める。ただし、先祖伝来 領域局が検査と検証後に明らかに誤りまたは不正とみなした請求については、すべて却 下する。また、却下した場合には、先祖伝来領域局は申請者に却下の根拠を記載した正 式な通知を交付し、すべての関係者にその写しを配布する。却下に対しては、国家先住 民問題委員会に提訴できるが、ただし ICCs/IPs 間に先祖伝来領域の境界線について相 反する請求がある場合、先祖伝来領域局は次節に述べる全面裁定を受ける権利を損なう 45 ことなく、紛争当事者に会議を開かせ、紛争の予備的解決を果たせるように援助する。 i) 他の政府機関の管理下にある地域で、先祖伝来領域内にあるものの返還:国家先住民問 題委員会議長は、対象とされる地域が先祖伝来領域であることを証明する。農地改革省、 環境天然資源省、内務自治省、法務省の各長官、国家開発公団理事長その他、当該地域 の管轄権を主張する政府機関には、その旨が通知される。この通知によって、それ以前 に主張されている法的根拠はすべて終了する。 j) 先祖伝来領域権原証明書(CADT)の発行:国家先住民問題委員会から、正式に先祖伝来 領域の線引きと決定を受けた ICCs/IPs には、関係共同体名義の先祖伝来領域権原証明 書が発行され、そこには当該調査で確定された領域がすべて列記されている。 k) 先祖伝来領域権原証明書(CADT)の登記:国家先住民問題委員会は、発行した先祖伝来 領域権原証明と先祖伝来地権原証明を、その物件所在地の登記官に登記する。 第53節 【先祖伝来地の識別、線引き、証明】 a) 個人または先住民団体(家族または部族)の請求者に対する先祖伝来領域内の土地の割 当は、慣習と伝統にしたがって関係の ICCs/IPs に委任される。 b) 個人または先住民団体の請求者が、先祖伝来領域内に含まれない先祖伝来地に対して 公式に請求を行いたい場合には、先祖伝来領域局に申請書を提出して、その請求対象 の線引きと識別を求めることができる。個人または、家族もしくは部族の長として認 められている者はそれぞれ、自分自身または、自分の家族もしくは部族を代表して当 該申請を行うことができる。 c) この申請書には、その共同体の長老の宣誓証言、および当該個人または団体の請求者 が、所有者という観念をもって、大昔からのその地域を所有または占有してきたこと を直接または間接に立証する他の文書等、当該請求の証拠を添付するが、この文書は、 税金申告書と納税証明書を含めて、本法第 52 節(d)に列記した正式の文書のいずれか とする。 d) 先祖伝来領域局は、各先祖伝来領域請求者に対して、上述のような別途文書、宣誓 陳述書および類似の文書等、同局が申請・請求内容の真実性を明らかにすると見なす 文書を要求することができる。 e) 先祖伝来領域局は、先祖伝来地の請求権の線引きと認定の申請書を受領後、当該申 請書と、関係する ICCs/IPs の土着言語の翻訳も含めて、提出された各文書の写しを 当該 ICCs/IPs 内の目立つ場所に最低 15 日以上掲示する。またこれら各文書の写しは、 国家先住民問題委員会 の現地事務所、州事務所、地域事務所にも掲示するとともに、 一般紙 1 紙にも週 1 回ずつ 2 週連続して掲載し、他の主張者が公表日から 15 日以内 にそれに対して異議を申し立てられるようにする。ただし、そうした新聞のない地域 では、ラジオ放送も有効な代替手段と見なされ、さらにまた、新聞もラジオもない地 域では、掲示だけでも十分と見なされる。 f) 先祖伝来領域局は、公表から 15 日後に各申請書を調査・検査し、有意義なものと判 明すれば、請求対象地域の区画測量を行う。先祖伝来領域局は、検査と検証後に明ら かに誤りまたは不正とみなした請求については、すべて却下する。却下した場合には、 先祖伝来領域局は申請者に却下の根拠を記載した正式な通知を交付し、すべての関係 者にその写しを配布する。却下に対しては、国家先住民問題委員会 に提訴できるが、 ただし請求者である個人間または先住民団体間に相反する請求が場合、先祖伝来領域 局は、本法第 62 節に基づく全面裁定を受ける権利を損なうことなく、紛争当事者に 会議を開かせ、紛争の予備的解決を果たせるように援助する。本法に定める先祖伝来 地の識別または線引きの手続きにおいては、土地局長(Director of Land)がフィリ ピン共和国の利益を代表する。 g) 先祖伝来領域局は、調査して線引きしたすべての申請について、個別の報告書を作 成して国家先住民問題委員会に提出し、同員会は、提出を受けた報告書の評価を行う。 国家先住民問題委員会は、当該請求権を有意義なものと認めれば、各個人または団体 46 (家族または部族)の先祖伝来地に対する請求権を宣言し証明する先祖伝来地証明書 を発行する。 第54節 【詐欺的請求権】 先祖伝来領域局は、ICCs/IPs からの請願書を受け取り次第、いずれかの個人または共同 体が詐欺的に取得した既存の請求権について審査する。いずれかの個人もしくは共同体が 不正に取得しまたは発行を受けたことが判明した請求権は、関係者全員への正式の通知あ るいは公聴会によって取り消される。 第55節 【共有権】 本章第 56 節にしたがい、先祖伝来領域内の地域は、線引きの有無にかかわらず共同体 により共有されているものと見なされる。ただし本法による共有権は、通称「新民法」と 呼ばれる共和国法律第 386 号にいう共同所有権とは見なされない。 第56節 【既存の財産権制度】 本法発効時にすでに存在しまたは授与されていた先祖伝来領域内の財産権については、 これを認知かつ尊重する。 第57節 【先祖伝来領域内の天然資源】 ICCs/IPs は、先祖伝来領域内のあらゆる天然資源の収穫、抽出、開発、利用に関して優 先権を持つ。関係する ICCs/IPs の構成員以外の者は、当該天然資源の開発・利用に対し て 25 年の期間に限って参加できるものとし、その期間は 25 年以内の期限に限って更新可 能とする。ただし、関係 ICCs/IPs と正式な書面による協定を締結するか、または当該共 同体が、自らの意思決定手続きにしたがって、そうした運用を認めることに同意している ことを条件とする。さらにまた、上記契約において ICCs/IPs の権利を保護するため、国 家先住民問題委員会が視察権を行使し、かつ適切な措置を講じることができることも条件 とする。 第58節 【環境への配慮】 先祖伝来領域またはその部分であって、適切な機関が ICCs/IPs の全面的参加を得て、 重要な集水域、マングローブ、野生生物保護区、原生自然地域、保護区、森林被覆および 植林にとって必要と認めたものについては、それらの目的に沿って維持し、管理し、開発 する。関係する ICCs/IPs には、政府機関の全面的かつ効果的な援助を得て、それらの維 持、開発、保護および保全を行う責任が与えられる。ICCs/IPs がその地域に対する責任を 移譲することを決めた場合は、その決定を文書で行う。ICCs/IPs の当該同意は、自由かつ 事前の情報に基づく同意に関する現行法の基本的要件を損なうことなく、ICCs/IPs の慣習 法にしたがって到達する。ただし、その移譲は一時的なものとし、最終的には技術移転プ ログラムにしたがって ICCs/IPs に返還されるものとする。さらに、本節に定める目的の ために ICCs/IPs を移動、または移住させることは、同意を与える権限を有する特定の人 物の同意書を得ない限り、行ってはならない。 第59節 【証明の前提条件】 すべての省庁およびその他の政府機関は、影響を受ける地域が先祖伝来領域と重ならな いという国家先住民問題委員会からの事前の証明を得ない限り、今後、いかなる免許、使 用許可、リース等の発行、更新、許諾も行ってはならず、またいかなる生産物分与協定も 締結してはならない。この証明は、関連地域の先祖伝来領域局が現地調査を行った後にの み発行される。ただし、この国家先住民問題委員会の証明は、関係 ICCs/IPs の自由かつ 事前の情報に基づく同意を得ない限り発行してはならない。また、いかなる省庁、政府機 関、または公有企業もしくは公営法人も、未許可の先祖伝来領域権原証明(CADT)申請 47 がある場合には、新たな免許、使用許可、リースまたは生産物分与協定等を発行してはな らない。またさらに ICCs/IPs は、本法にしたがって、この協議手続きの要件を満たして いないいかなるプロジェクトについても、それを中止または停止させる権利を有する。 第60節 【免税】 先祖伝来領域である旨の証明を受けたすべての土地は、実際に大規模農業、商用植林地、 および住居用に使われていたり、私人による権原を設定してある場合を除いて、固定資産 税、特別賦課金その他の徴税から免除される。ただし、すべての徴税は、先祖伝来領域の 開発および改良の促進に使われるものとする。 第61節 【臨時登用権限】 国家先住民問題委員会は、付託事項を効果的に達成するための制度的な測量能力がしっ かりと整うまで、創設後 3 年を超えない範囲で、本法に基づき、協定書(Memorandum of Agreement: MOA)をもって、先祖伝来領域境界の線引きを環境天然資源省(DENR)測 量チームその他同等の能力を有する民間測量チームに要請する権限を与えられる。環境天 然資源省長官は、要請が発せられてから 1 ヶ月以内にそれを承諾するが、ただし当該協定 書には、特に国家先住民問題委員会への技術移転について規定することを条件とする。 第62節 【紛争の解決】 測量図に線引きされた先祖伝来領域内に相反する請求があり、利害の衝突が生じてそれ を解決できない場合には、国家先住民問題委員会は、適切な当事者に通知した後に審問を 行って、先祖伝来領域の線引きから生じた紛争に裁定を下す。ただし、その紛争が二つ以 上の ICCs/IPs の間のそれぞれの先祖伝来領域の伝統的な境界線をめぐるものである場合 には、慣習法の手続きにしたがう。国家先住民問題委員会は、必要な諸規則を公布してそ の審判機能を果たす。ただし、先祖伝来領域関連の紛争または本法の適用、実施、施行、 解釈に関わる国家先住民問題委員会の決定、命令、裁定または判決に対しては、判決文等 を受け取った日から 15 日以内に、上訴裁判所に再審請求を行うことができる。 第63節 【準拠法】 財産権、請求権と所有権、相伝、土地紛争の解決に関しては、紛争の発生した土地の ICCs/IPs の慣習法、伝統および慣行が、先ず最初に適用される。法律の適用と解釈につい てのあらゆる疑義または両義性については、ICCs/IPs に有利な解決を行う。 第64節 【救済手段】 利害の衝突に関する解決は、 「公益」の原則に基づいて収用で解決を図ることができる。 公式文書として作成された権原証書で不法な手段により取得されたものに対しては、国家 先住民問題委員会が適切な法律措置をとって取り消す。ただし、当該措置においては、善 意の所有者の権利が尊重されるよう保証するものとし、さらに、当該取消措置は、本法発 効後 2 年以内に開始されるものとする。さらにまた、元の所有者への返還は、現行法にし たがって 10 年以内に行うものとする。 第9章 裁判管轄権と権利行使の手続き 第65節 【慣習法と慣行の優位性】 ICCs/IPs の関与する紛争においては、慣習法と慣行を紛争の解決に使う。 第66節 【国家先住民問題委員会の裁判管轄権】 ICCs/IPs の権利に関わるあらゆる請求と紛争については、すべて国家先住民問題委員会 48 の地域事務所が裁判管轄権を持つ。ただし、当事者が自らの慣習法に定められたあらゆる 救済手段を適用し尽くした後でなければ、そうした紛争が国家先住民問題委員会に持ち込 まれることはない。この目的上、紛争の解決に携わった長老・指導者評議会から、その紛 争が未解決である旨の証明が発行されなければならず、当該証明が、国家先住民問題委員 会に提訴する際の前提条件となる。 第67節 【上訴裁判所への上訴】 国家先住民問題委員会の決定については、再審請求により上訴裁判所に上訴することが できる。 第68節 【決定、裁定、命令の執行】 本法に定める期間の満了時に、いずれの紛争当事者によっても上訴が完遂されなかった 場合、国家先住民問題委員会の審問官は、自らの判断または勝訴当事者からの申し立てに したがって、郡保安官その他の適切な公務員に対して国家先住民問題委員会地域審問官の 最終決定、命令、または裁定の執行を求める執行令状を発行する。 第69節 【国家先住民問題委員会の準司法的権限】 国家先住民問題委員会は次の権限と職権を有する。 a) 提訴された事件の審問と解決を扱う諸規則、ならびにその内部機能および本法の目的達 成に必要な諸規則の制定 b) 宣誓の執行、紛争当事者の召喚、証人の出席と証言または、本法にしたがって調査中も しくは審問中の事項の公正な判定にとって重要な帳簿、書類、契約、記録、協定書、そ の他同様の性格の文書の提出を求める召喚状の発行 c) 人に対して直接または間接的に侮辱罪に問うこと、およびそれに対する適切な処罰の執 行 d) 取扱中の事件で、直ちに規制しなければ事件当事者のいずれかに重大もしくは修復不能 な損害を与える、または社会的もしくは経済的活動に深刻な影響を与えるおそれのある、 すべての行為の禁止。 第70節 【差止命令または仮差止命令の禁止】 フィリピンのいかなる下級裁判所も、国家先住民問題委員会またはその正規授権機関も しくは指定機関に対し、本法その他 ICCs/IPs および先祖伝来領域の関連法から生じた、 またはそれらに不可避な訴訟、紛争もしくは争訟、またはそれらの解釈において、いかな る差止命令または仮差止命令も発令する司法権を持たない。 第 10 章 先祖伝来領域基金 第71節 【先祖伝来領域基金】 収用された土地、先祖伝来領域の線引きおよび開発等の補償金をまかなうため、先祖伝 来領域基金と呼ばれる基金を本法により開始金額 1 億 3,000 万ペソで開設する。5,000 万 ペソは、フィリピン慈善宝くじ局(PCSO)の宝くじ運営総収入から、1,000 万ペソは、前年 の旅行税の総徴収額から調達し、社会改革評議会の資金は、先祖伝来地および先祖伝来領 域の測量と線引き用に充当し、その他、政府が適切と認める他の資金源からも資金を調達 する。その後は、これらの金額は年次総歳出予算法に組み込まれる。フィリピン政府を通 じて ICCs/IPs に供与される国内外からの資金は、国家先住民問題委員会を介して交付さ れる。国家先住民問題委員会は、寄附、寄贈、および拠出金形式の助成金を募集、受領す ることができ、これらの寄贈金については、所得税、贈与税、その他のあらゆる税金、手 数料、料金等、政府またはその他の政治的出先部門または機関により課せられる賦課金を 49 免除される。 第 11 章 罰則 第72節 【処罰対象行為と適用する罰則】 本法第 3 章第 10 節に定める先祖伝来地または先祖伝来領域への無許可または不法な侵 入等、本法のいずれかの規定に違反した者、または第 5 章第 21 節、第 24 節、第 6 章第 33 節に定める禁止行為を犯した者は、関係 ICCs/IPs の慣習法に照らして処罰される。た だし当該処罰は、残酷なもの、人格の尊厳を傷つけるようなもの、または非人間的なもの であってはならない。さらに、死刑や過剰な罰金を科してはならない。本規定は、ICCs/IPs の現行法による保護を受ける権利を損なうものではない。上記の場合において、本法のい ずれかの規定に違反した者は、有罪の判決により 9 ヶ月以上 12 年以下の禁固刑に処せら れるか、または 10 万ペソ以上 50 万ペソ以下の罰金、あるいは裁判所の裁量により、上述 の罰金と禁固刑の両方に処せられる。同者は、これに加えて、関係する ICCs/IPs が違法 行為から受けたあらゆる損害に関して、彼らに賠償金を支払わなければならない。 第73節 【処罰対象者】 違反者が法人の場合は、登記証明、免許証、またはその両方の取消に加え、違法行為に 責任を有する社長、部課長、支店長等を含むあらゆる役職者が刑事責任を問われる。ただ し、違反者が公務員の場合は、公職からの永久失格が処罰に加わる。 第 12 章 北部文化共同体局(ONCC)および南部文化共同体局(OSCC)の合併 第74節 【北部文化共同体局および南部文化共同体局の合併】 大統領令 122-B 号に基づいて創設された北部文化共同体、および同 122-C 号に基づいて 創設された南部文化共同体局(OSCC)は、本法により国家先住民問題委員会の有機的部局と して合併され、同委員会の目的達成のために活性・強化された体制の下で機能し続ける。 ただし、スタッフ理事、部局理事、副専務理事、専務理事等の役職は、地域理事以下の役 職を除いて、本法発効後段階的に消滅する。さらに、消滅する部局の職員および従業員で 資格を有する者は、国家先住民問題委員会への再就職を申請することができ、同委員会の 新設される職席の充当にあたって、就職斡旋委員会の設定する資格にしたがって優先権を 与えられうる。ただし、同等の資格を有する先住民と非先住民が同一の職務に応募した場 合は、前者に優先権が与えられる。これらの事務局の合併によって段階的に消滅する職員 と従業員は、優良勤続年数 1 年につき 1.5 ヶ月分の給与に相当する賜金、またはそれに近 い割合になるように、過去に受け取った最高給与額に基づいて従業員に有利になるように 算定した賜金が支払われる。前述の職員と従業員が、すでに退職金または賜金を受ける資 格を有する場合は、退職金または本法に定める賜金のいずれか有利な方を選ぶ選択権が与 えられる。復職を認められた役員および従業員は、上記の退職金あるいは賜金として受け 取った金額を払い戻さなければならない。ただし、吸収される人員は、公務員委員会およ び本法により創設された就職斡旋委員会の設定した資格および基準要件を満たさなければ ならない。 第75節 【移行期間】 北部文化共同体局および南部文化共同体局には、本法発効から業務の終了および財務監 査の終了まで、6 ヶ月の期間が与えられる。 50 第76節 【資産および財産の譲渡】 上記の両合併部局に帰属または所属するあらゆる不動産および動産は、改めて移譲、移 転、または譲渡をする必要なく国家先住民問題委員会に移され、これまでの事務所のとき と同じ目的に利用するために維持される。なお、合併部局の業務に関連したあらゆる契約、 記録および文書は、国家先住民問題委員会に譲渡される。両合併部局が締結したあらゆる 協定および契約は、国家先住民問題委員会がそれ以外の解約、変更、改訂を行わない限り、 そのまま効力を有し、有効とする。 第77節 【就職斡旋委員会】 政府の再編成規定にしたがい、就職斡旋委員会が国家先住民問題委員会により公務員委 員会との協力で創設され、最適の資格を有する最も有能な人物が再組織された機関に配置 されるよう、人員の慎重な選定と配置を支援する。就職斡旋委員会は、7 名の委員と、北 部文化共同体局(ONCC)および南部文化共同体局(OSCC)の第 1 部および第 2 部従業員組合 それぞれから選ばれた ICCs/IPs の代表、共同体で 5 年以上の活動を続けてきた非政府機 関(NGO)、設立後 5 年以上の国民組織(PO)の代表により構成する。この委員会は、諮問機 関により作成された雇用・任用基準および公務員法の関連規定を指針として活動する。 第 13 章 最終条項 第78節 【特別条項】 バギオ市は独自の憲章による統治を継続し、ニュータウン建設用地部分として宣言され たすべての土地は、適切な立法によって別の再分類が行われるまでは、当該用地用という 現状を維持する。ただし、本法発効以前に司法、行政、その他の手続きにより認定または 取得された土地の権利および権原は、引き続き有効とする。さらに、この規定は、本法発 効後にバギオ市制に編入された土地には適用されない。 第79節 【歳出予算】 本法の当初施行資金として必要な金額は、今年度の北部文化共同体局および南部文化共 同体局の歳出予算に計上される。それ以降は、本法の継続的な施行に必要な金額は、年次 総歳出予算法に組み込まれる。 第80節 【施行規則】 国家先住民問題委員会は、下院の国民文化共同体委員会および上院との協議により、選 任直後から 60 日以内に、本法の効果的な施行に必要な諸規則を公布する。 第81節 【留保条項】 本法は、他の規約、勧告、国際条約、国内法、裁定、慣習および協定に基づく ICCs/IPs の権利および利益に、いかなる悪影響も与えることはない。 第82節 【分離条項】 本法のいずれかの規定またはその一部が、管轄裁判所により憲法違反を宣言されても、 それ以外の規定がその宣言の影響を受けることはない。 第83節 【廃止条項】 大統領令 410 号、122-B 号、122-C 号、その他本法に合致しないあらゆる法律、法令、 命令、諸規則、またはその部分は、本法により廃止または本法にしたがって修正を加えら れる。 51 第84節 【発効】 本法は、政府公報および一般紙 2 紙に発表した日から 15 日後に発効する。 承認者署名 下院議長 ホセ・デ・ヴェネシア・ジュニア 上院議長 エルネスト・M・マセダ 上院法案 1728 号および下院法案 9125 号を併合した本法律は、1997 年 10 月 22 日に両院 において最終的に可決された。 下院事務局長 ロベルト・P・ナザレノ 上院事務総長 ロレンゾ・E・レイネス・ジュニア 承認日:1997 年 10 月 29 日 フィリピン大統領 フィデル・V・ラモス 52
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