FT/IR application data 新しい FT/IR 分析情報 Date ●130-AT-0244 April 11, 2016 ●ATR PRO ONE VIEW を用いた微小試料分析 1. はじめに 試料とプリズムを密着させて赤外(IR)スペクトルを測定する ATR 法は、迅速かつ簡便な測定法として、 非常に広く利用されています。ATR 法においてプリズム面よりも微小な試料を測定する場合、できるだ けプリズムの中心に試料を密着させることが良好なスペクトルを測定するためには重要となります。こ こで示す観察型一回反射 ATR “ATR PRO ONE VIEW”は、試料観察をしながら ATR 測定ができる付属品 であるため、微小な試料をプリズム中心に適切に密着させることができ、結果として良好な IR スペク トルを測定できます。ここでは、ATR PRO ONE VIEW を利用して、微小な試料であるつけまつ毛の材 質評価を行いました。 目元用の美粧品として多種類のつけまつ毛が販売されていますが、それらの素材については、人毛、 獣毛、天然繊維が素材と表記したものが多数あります。しかしながら、実際には「ミンク調」「セーブ ル調」という質感を表しているに過ぎず、多くの商品は合成繊維であるといわれています。ここでは ATR PRO ONE VIEW を用いて、人のまつ毛及び人毛素材と表記された市販のつけまつ毛の IR スペクトルを 測定し素材の識別を行った事例を示します。 <Keywords> 微小試料、識別、ATR 2.方法 人のまつ毛及び人毛素材と表記された市販のつけまつ毛を、モニター を用いながら試料をプリズム中心に設置しました。IR スペクトルの測定 条件は以下に示します。 <測定条件> 分解: 4 cm−1 測定法: ATR 法 検出器: DLATGS 積算: プリズム: PKS-D1V 装置: FT/IR-4600 50 回 図 1 ATR PRO ONE VIEW 付属品: ATR PRO ONE VIEW 3. 結果 図 2 に人のまつ毛及び市販のつけまつ毛の試料画像及び IR スペクトルを示します。試料画像よりプ リズム中心に試料が設置されており、良好な IR スペクトルが得られていることがわかります。人のま つ毛の IR スペクトルでは、1640 cm−1 近傍及び 1550 cm−1 近傍のアミド I,II のピークが検出されていま す。 本社・工場 192-8537 東京都八王子市石川町 2967-5 TEL 042(646)4111 代表 FAX 042(646)4120 東京 03(3294)0341 / 北海道 011(741)5285 / 北日本 022(748)1040/筑波 029(857)5721 /西東京 042(646)7001 / 神奈川 045(989)1711/名古屋 052(452)2671 / 大阪 06(6312)9173 / 広島 082(238)4011/九州 092(588)1931 この結果から人のまつ毛の主成分はタンパク質であることがわかります。対して市販のつけまつ毛の IR スペクトルは人のまつ毛の IR スペクトルと大きく異なり合成繊維の可能性が示唆されます。つけま つ毛の IR スペクトルをデータベースにて検索したところ、ポリエステルの一種であるポリブチレンテ レフタレートであることが確認できました(図 3)。 0.4 0.08 0.06 Abs 0.3 100 μm 0.04 Abs 0.2 0.02 0.1 0 4000 3000 2000 1000 500 −1 Wavenumber [cm ] 図 2 100 μm 0 4000 3000 2000 1000 500 −1 Wavenumber [cm ] 人のまつ毛の試料画像及び IR スペクトル(左)と 人毛と表記された市販のつけまつ毛の試料画像及び IR スペクトル(右) 4.まとめ ATR PRO ONE VIEW を用い、画像を 確認しながらプリズム中心に試料を設置 することで、微小な試料についても的確 に同定ができることがわかりました。ま た人毛素材と表記された市販のつけまつ 毛の成分は合成繊維であるポリエステル であることが判明しました。一般的に異 物分析、犯罪捜査、成分の表示の誤表記 などでは、微小な試料を非破壊で定性分 析をする必要が出てきます。このような 図 3 検索結果 上段 ポリブチレンテレフタレートの標準スペクトル 下段 つけまつ毛の IR スペクトル 場合、ATR PRO ONE VIEW を用いることで、微小試料の非破壊分析が可能となります。また ATR PRO ONE VIEW では、IR スペクトルに加えて試料画像やサイズなどの情報も同時に得られます。ATR PRO ONE VIEW を用いることで、異物分析、犯罪捜査、成分偽装などで有用な証拠情報が提供できるものと 考えています。 その他情報はこちら(www.jasco.co.jp/jpn/technique/index.html)
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