環境保護の生長の家 The Ecological Seicho 森の中のオフィス -No-Ie “Office in the Forest ” 大塚裕司 05/03/2015 みなさん初めまして。私は生長の家欧州駐在本部講師の大塚裕司と申します。本日は、一 昨年10月に山梨県北杜市に開所した、生長の家国際本部 森の中のオフィス について ご紹介させていただきます。 生長の家では今から15年前の2000年に、運動方針の中で、生長の家の日本国内の事 業所でISO14001の認証を取得することを掲げました。その理由として、最初に宗 教法人「生長の家」環境方針の中から基本認識をご紹介させていただきます。 宗教法人「生長の家」環境方針(2000 年 10 月 11 日) <基本認識> 地球環境問題は、その影響が地球規模の広がりを持つとともに、次世代以降にも及ぶ 深刻な問題である。今日、吾々人類に必要とされるものは、大自然の恩恵に感謝し、山 も川も草も木も鉱物もエネルギーもすべて神の生命、仏の生命の現れであると拝み、そ れらと共に生かさせて頂くという宗教心である。この宗教心にもとづく生活の実践こそ 地球環境問題を解決する鍵であると考える。 生長の家は、昭和5年の立教以来、 天地の万物に感謝せよ との教えにもとづき、 全人類に万物を神の生命、仏の生命と拝む生き方をひろめてきた。 生長の家は、この宗教心を広く伝えると共に、現代的な意味での宗教生活の実践とし て環境問題に取り組み、あらゆるメディアと活動を通して地球環境保全に貢献し、未来 に 美しい地球 を残さんとするものである。 (生長の家総裁谷口雅宣先生著『今こそ自然から学ぼう』P328∼329) このように生長の家は宗教団体として、万物を神の生命、仏の生命として拝む生き方の 現代的実践として、宗教的信念に基づき、地球環境保全の活動をはじめました。 そして翌年の2001年には、生長の家の東京原宿にあった国際本部と(写真)、長崎に ある生長の家総本山が(写真)、宗教法人としては初めてISO14001の認証を取得 しました。さらに2007年には日本国内の全ての事業所(66箇所)でISO1400 1を取得することができました。これはジュネーブに事務所があるISO本部 (International Organization for Standardization )が発行している雑誌ですが、この 中に生長の家のことが紹介されました。(ISO Management Systems July -August 2008 よ り) 1 また、生長の家では日本全国で生長の家講習会を開催しておりますが、2003年からは 生長の家講習会(写真)で使用する電力をグリーン電力でまかなうことになりました。そ して2007年からは 炭素ゼロ 運動をスタートさせ、教団の活動によるCO2排出量 を減らし、自然エネルギーや植林などで実質的にゼロにする取り組みがはじまりました。 同年、具体的な取り組みとして、生長の家の組織会員に対して、太陽光発電装置、小型風 力発電装置の設置への助成をはじめました。(2007年から1kW あたり2万円)また、 生長の家の信徒の家庭に「生活の記録表」 (写真)を配布して、各家庭で使用する電気、ガ ス、水道、灯油、ガソリンからCO2排出量を計算して、できるだけCO2を排出しない 生活をする取り組みをはじめました。また、2010年からは生長の家の組織会員に対し て、電気自動車を購入する際の助成をはじめました。(1台あたり 30 万円を上限とし、本 体価格の 10%まで)これらの生長の家の地球環境保全活動は、私たち一人一人のライフス タイルの改善から、地球環境の保全に取り組まなければならないという生長の家の考え方 によるものです。 このように生長の家の日本国内の環境保全運動が進む中、2009年には、生長の家の海 外の拠点である、生長の家ブラジル伝道本部が、2010年には生長の家アメリカ合衆国 伝道本部が、そして2011年には中華民國生長之家傳道協會が、それぞれISO140 01を認証取得しました。(写真)。 さて2011年3月には、東日本大震災が起こり、この時の津波の影響で、福島第一原子 力発電所で炉心溶融事故が発生しました。この時の教訓から、生長の家森の中のオフィス の建設計画が見直され、電力の自給を目指すシステムに変更されることになりました。そ して日本国内では最大級の、400kWh の大容量リチウムイオン電池の導入を決定しまし た。 また、この年2011年の8月に、生長の家一般講演会がイギリスのロンドンで開催され ました。その時に、谷口雅宣・生長の家総裁は、人間の自然や貧しい人たちへの思いやり の心が「経済発展」の名のもとに妨害されて来たことを指摘され、 『「強いほどいい」という考えが広く社会全体の心に浸透してしまったため、私たちの環境 には、その態度が「核兵器」や「原子力エネルギー」の形で反映しているのです。それら は力ばかりが強大ですが、地球の生物とはまったく相容れないものです。それらは、人間 と自然との不調和の産物です。だから、私たちはこの状態を正し、神の創られた世界の実 相を現さねばなりません。』(The notion of “the stronger, the better” has prevailed in our societal mind so that our environment reflects this attitude in the forms of nuclear weaponry and nuclear energy that are totally incompatible with lives on our planet. This disharmony between human beings and nature must be corrected to reflect the True Image of the God-created world.)と英語で講演され、生長の家は原子力エネルギー の利用に対して反対であることを訴えられました。(『次世代への決断』P230 参照) (一般 2 講演会の写真紹介) この書籍は2012年に出版された、谷口雅宣・生長の家総裁の『次世代への決断』とい う本ですが、この中にロンドンでの講演会の内容が掲載されています。そしてこの本の表 紙には、このように「宗教者が 脱原発 を決めた理由」と書かれており、生長の家が宗 教団体として、脱原発を推進する立場であることを明確に示しています。 日本で東日本大震災が起こった年の6月に、ドイツ連邦共和国においては、ドイツ国内の 原子力発電所を2022年末までに全廃することをドイツ連邦議会で可決したことはみな さんご存じのとおりです。私は、ドイツ基本法の第 20a 条の「自然的な生活基盤の保護義 務」(Schutz der natürlichen Lebensgrundlagen) の中に、「国は来るべき世代に対する 責任を果たすためにも(中略)自然的生存基盤及び動物を保護する」と謳われているのは、 自然を愛し大切にするドイツ国民の素晴らしい精神の表現だと思います。 そして、2013年10月には、生長の家森の中のオフィスが開所する運びとなりました。 このように、生長の家森の中のオフィスは、その構想が2003年にスタートして10年 の歳月を経て結実したものです。その間、生長の家では運動方針の中にさまざまな環境保 全活動の具体的な実践を取り入れ、生長の家の会員が一丸となって、宗教団体として環境 保全活動を進めて来た経緯があります。 これまで生長の家の信徒の協力によって設置された太陽光発電の発電容量は、7,997. 43kwになりました。また生長の家では現在、京都府に1,700kwのメガソーラ発 電所を建設する計画を進めており来月には完成します。また、これは生長の家の会員が植 樹を行っている様子ですが、日本全国で植樹が進められており(写真)、ドイツでも自然 保護団体 NABU(Naturschutzbund Deutschland e.V.)の協力によって、社団法人ドイツ生長 の家誌友会(Seicho-No-Ie Freundeskreis in Deutschland e.V. )が植樹している様子が 新聞に紹介されました(写真)。 さて、それでは森の中のオフィスの具体的な説明に入って行きたいと思います。皆さんに より良くご理解いただく為に、生長の家 森の中のオフィス の落慶記念パンフレットを ご用意させていただきました。その2ページの下段をご覧ください。このように書かれて います。 地域社会に協力し、世界の宗教と共に新しい文明の実現に貢献します。 私たちは、 森の中のオフィス の周辺の森を活性化するために、地域の人々と協働して 間伐や植樹の活動に取り組みます。また、北杜市の 環境創造都市 構想に呼応し、オフ ィスや職員寮で太陽光発電を行い、職員の通勤用の電気バスの導入や電気自動車の急速充 電器の一般開放など、低炭素な地域づくりに協力します。一方、地球規模の環境問題は、 一部の宗教・宗派で解決できるものではありません。生長の家は、 3 森の中のオフィス を拠点として、すべての宗教の中に共通する自然尊重の教えを互いに認め合い、世界の各 宗教と相互協力しながら、自然と人間が調和した心豊かな文明の実現に貢献してまいりま す。 このように、生長の家は、世界の宗教・宗派を超えて、自然尊重の考え方をもとに、自然 と人間が調和した新しい持続可能な文明を実現することを目指して、この ィス 森の中のオフ を建設しました。 パンフレットの7∼8ページを開いていただくと、日本初のゼロ・エネルギー・ビル (Japan’s first zero energy building)と書かれています。この写真が、森の中のオフ ィスの全景です。建物の屋根に2,700枚の太陽光発電パネルが載っています。このパ ネルによる発電容量は470kwです。これ以外の発電設備として、木質バイオマス発電 装置が設置されて175kwの発電容量があります。この木質バイオマス発電装置の写真 は10ページの下段に掲載されています。 これらの太陽光発電パネルと木質バイオマス発電装置により、昨年1年間で、62万9, 564kwh の電力がつくられました。オフィスの使用電力は電力会社からの購入分も含め て44万6,569kwh でした。また、電力会社に売電した余剰電力は27万1,015kwh で、これによるCO2の排出削減効果は、年間で14万1,199kgと計算されています。 つまり、この 森の中のオフィス はゼロエネルギーを超えて、プラスエネルギービルデ ィングとして活動していることになります。 またパンフレットの10ページの中断にありますように、オフィスには日本最大級の大容 量のリチウムイオン電池(400kw)が設置されており、太陽光発電、バイオマス発電 によって発電された電気が蓄えられます。そしてこれらの電力は、マイクログリッドシス テム(小規模発電ネットワーク)によって効率的に電力供給が行われるよう制御されてい ます。 そのページの上段には、自然の力と環境技術を組み合わせて、オフィスの炭素ゼロに向け た省エネの工夫が説明されています。それをまとめますと、以下のようになります。 ① 自然の風を利用して、夏場の冷房を不要にした。 ② 広い窓を使って自然の光を外部から取り入れるようにした。 ③ LED照明の利用により、消費電力を削減した。 ④ 断熱材および断熱性のガラスの使用。 ⑤ 屋根に太陽熱集熱パネルを設置して、床暖房に利用した。 ⑥ 建設中に出た自然石を砕いて、床下の蓄熱材として利用した。 続いてパンフレットの9ページをお開きください。(日本語は7ページ)森の中のオフィ スは木造二階建てで、延べ床面積は6,200㎡を超える日本最大級の木造建築物です。 4 木造建築物の環境に対する良い影響は、建設の際に発生するCO2の排出量が少ないこと があげられます。またこのオフィスの建築用材の90%は、地元の山梨県の県産材のFS C認証材を使用しており、森の中のオフィスは建築プロジェクトそのものに「FSC全体 プロジェクト認証」が与えられました。 FSCについては、パンフレットの5ページの下段に書かれていますが、FSCとは国際 的な森林管理の認証を行う森林管理協議会(Forest Stewardship Council )のことで、環 境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された木材に FSCマークが与えられます。したがって森の中のオフィスの建築プロジェクトそのもの に「FSC全体プロジェクト認証」が与えられたことは、森の中のオフィスが地球環境に 配慮して建設されたことの証明になっています。 次に、オフィスで使用する水について説明させていただきます、そのほとんどは八ヶ岳の 地下水でありとても美味しい水です。この自然の恵みを大切に使うため、オフィスから出 る汚水・排水は、地下に埋設されている「浄化槽」にいったん集められて浄化された後、 オフィス中のトイレに送られて洗浄水として再利用されています。また、雨水は、貯留槽 (雨水タンク)が地下にあり、農機具を洗ったりするのに活用されています。 また、この電気バスは(写真) 森の中のオフィス の太陽光発電やバイオマス発電でつ くられた電気で走行するもので、ここで働く職員の通勤や来訪者の送迎用に利用していま す。そしてこれは(写真)電気自動車用の急速充電設備で、生長の家の信徒以外の一般の 方も無料で使用できるように一般開放されています。この、電気自動車用の急速充電設備 の一般開放は、生長の家の森の中のオフィスだけではなく、他の生長の家の66箇所の事 業所へも順次広がりつつあります。 さて、ここが森の中のオフィスの食堂です(写真)。厨房はもちろんオール電化されており、 枯渇燃料であるガスは使用されていません。ここでは最大200人分の食事を用意できま す。メニューは毎日変わり、地元の食材を主に使って、ノーミートの料理を提供していま す。生長の家では、動物の殺生をできるだけ避けるという宗教的な理由と、地球環境保護 への配慮という二つの観点から、肉食を減らすことを運動として取り組んでいます。 肉食の弊害としては、飼育動物のメタンガスの大量排出が地球温暖化の原因の一つである ことがわかっています。さらに動物を飼育するのに必要な土地を確保するため、ブラジル のアマゾンなどの森林が伐採され自然が破壊されています。そして肉食が地球上の貧しい 人々の飢餓につながっていることが知られています。 この図のように、例えば1KG の牛の肉を生産する為には7KG の穀物が必要です。つまり 先進国の肉食が貧しい国の人々の食料を間接的に奪っているということになるわけです。 こういう視点から考えると肉食を減らすことは、個人の健康に良い影響があることや、動 5 物愛護の面のみではなく、地球環境の保護や、世界の平和にも貢献することがわかります。 現在、世界で起きている暴動やテロの原因の一つとして、世界における貧富の格差があげ られています。そこで生長の家では、肉食を減らすことは地球環境の保全や世界の平和に 貢献することになると呼びかけています。 最後になりますが、谷口雅宣・生長の家総裁は、地球環境問題が起こって来た原因として、 人間の都合を最優先させる生き方すなわち「人間至上主義」 (Anthropocentrism)的な生き 方をあげられています。それは、人類が自分の欲望の満足を優先させて、他の動植物の苦 しみや絶滅を省みない生き方です。人類は今やそのような欲望優先の生き方から、人間以 外の他の生物にも慈悲のこころをもち、自然と共に生きる新しい文明を構築すべき時に来 ているのではないでしょうか? そのためには、人間の神性・仏性の存在を信ずる私たち宗教者一人一人が、自分自身のラ イフスタイルを見直し、石油やウラニュウムなどの化石燃料から脱却して、自然エネルギ ーを利用した、自然と人間が調和した持続可能な新しい文明を創造していかなければなら ないと思います。私たちは 森の中のオフィス をその新しい文明の考え方とライフスタ イルのモデルであることを、世界に情報発信していくことに取り組んでいます。 アルバート・アインシュタインは、「吾々の仕事は全ての生き物と自然とその美を包容す る慈悲の心の環を広げることにより、私たち自身を自由にすることでなければならな い。」Our task must be to free ourselves by widening our circle of compassion to embrace all living creatures and the whole of nature and its beauty. と言っています。地球環境問題に直面した今、私たち信仰を持つもの一人一人が、神の愛 仏の慈悲心を日常の生活に具体的に生きることが求められる時代であると思います。 以上で私の発表を終わらせていただきます。ご清聴有り難うございました。 International Conference The 'Energy Shift' from Nuclear Power to Sustainable Forms of Energy -- What Can Religious Groups Contribute to Climate Protection? March 3 - 6, 2015 in Arnoldshain, Germany Organized by the Center for Ecumenical Work of the Protestant Church in Hesse and Nassau Revised on 7.2.2015 6
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