トピック1 燃料価格の動向と営業利益率の関連性 ◆ 平成15年から平成27年までの軽油価格(ローリー)の推移 軽油価格は、平成 15 年 1 月には1リットル 63 円台(ローリー)であったが、平成 20 のリーマンショックを契機とした急騰、急落を経て、本報告書の対象期間である平成 25 年 10 月(112 円台)より平成 27 年 8 月(82 円台)の範囲で推移し、23 ヵ月の平均価格は 104.4 円となった。 <軽油価格(ローリー価格)の推移> 150.00 140.00 104.43 円 130.00 (23 カ月平均) 120.00 110.00 100.00 90.00 80.00 7月 4月 27年1月 7月 10月 4月 26年1月 7月 10月 4月 7月 10月 25年1月 4月 24年1月 7月 10月 4月 7月 23年1月 4月 10月 22年1月 7月 10月 4月 21年1月 7月 4月 10月 20年1月 7月 10月 4月 19年1月 7月 10月 4月 18年1月 7月 10月 4月 17年1月 7月 10月 4月 7月 10月 16年1月 4月 60.00 15年1月 70.00 (出所:全日本トラック協会調査) ◆ 平成 25 年度と平成 26 年度における軽油価格 平成 25 年度及び平成 26 年度における軽油価格の平均値は以下の通りである。スタンド 価格、ローリー価格、カード価格となるが、▲6.2%から▲4.5%の範囲で下落している。 こうした軽油価格の下落は、燃料油脂費率を縮減させ、その結果、営業利益率を押し上 げる効果があった。 <軽油の平均価格の推移> スタンド ローリー カード 平成25年度 118.17 111.29 117.43 平成26年度 112.80 104.43 111.65 -4.5% -6.2% -4.9% 対平成25年度下落率 ※平成 25 年度:平成 24 年 10 月~平成 26 年 8 月までの平均値 ※平成 26 年度:平成 25 年 10 月~平成 27 年 8 月までの平均値 (出所:公益社団法人全日本トラック協会 調査より作成) ◆ 軽油価格下落による運送原価への影響 燃料価格の下落は、運送原価の削減要因となっている。下図は燃料油脂費比率(対営業 収益) の推移であるが、 軽油価格の上昇により平成 25 年度は 21.0%で、 平成 26 年は 19.0% と大幅に下落した。 燃料油脂費率の推移(平成21年度~26年度) 22.0 21.0 21.0 19.9 20.0 19.0 19.0 17.9 18.0 17.0 16.2 16.0 15.0 14.2 14.0 13.0 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 ◆ 営業利益率の推移 営業利益の推移を考察すると、▲0.4%(平成 21 年度)から▲2.3%(平成 25 年度) まで低下したが、今期(平成 26 年度)は▲0.9%まで改善した。燃料価格上昇が燃料油脂 費率の大幅なアップにつながり、平成 25 年度まで営業利益率を長期間にわたり圧迫して きたことが考察される。 営業利益率(対営業収益)の推移(平成21年度~26年度) 経常利益率は、営業利益率と同様に平成 21 年度から平成 25 年度にかけて低下傾向にあ ったが、平成 26 年度は前年度比 1.0 ポイント改善し、▲0.2%まで改善した。 経常利益率(対営業収益)の推移(平成21年度~26年度) トピック2 トラック運送業の生産性向上に向けた考察 ◆ トラック運送事業における生産性 トラック運送業における労働生産性は、 平成 24 年度 4,701 千円から 590 千円改善し、 平成 26 年度は 5,291 千円となった。 規模別に考察すると、車両台数が小さい事業者ほど労働生産性は低くなる傾向があ るが、10 台以下では 4,750 千円まで回復した。 労働生産性(規模別) (単位:千円) 5,500 5,300 5,100 4,900 全 4,700 10台以下 体 11~20台 4,500 21~50台 4,300 51~100台 4,100 101台以上 3,900 3,700 24年度 25年度 26年度 なお、トラック運送業における生産性の代表的な指標は、実働率、実車率、積載率であ る。しかし、これらには時間の効率性が考慮されていない点に問題がある。そこで、1日 1車当たり売上高、1日1車当たり利益などを活用することができる。 ◆ 内航海運、鉄道による輸送との比較 トラック運送業と鉄道・内航海運における輸送効率は大きく相違している。トラック運 送業では、機動的に、きめ細かな輸送ニーズに対応できることが強みであり、荷主・元請 との円滑な取引関係を維持するため、積載率、実車率が低い輸送であっても、仕事を受け ざるを得ない状況にあるため、生産性が低い仕事にも取り組まざるを得ない状況にある。 一方で、鉄道、海運は、一定区間を定期的な時間を踏まえ、大量輸送を行うため、輸送 効率(生産性)が高いのは当然である。 トラック運送業は、機動的に、きめ細かな輸送サービスを提供することに強みがあるが、 一方で、輸送効率が悪く、生産性が低くなる。例えば、ジャストインタイム、多頻度小口 配送、翌日配送等は、現在常識であるが、そうした輸送はトラック運送業の生産性向上の 阻害要因になっている。 ◆ 生産性向上に向けた諸方策の検討 トラック運送業における労働生産性の向上は、トラック運送事業者が単独で取組むには 限界があり、十分な成果を得ることができない状況にある。そこで以下の諸方策を検討す ることが望まれる。 (1)荷主(他産業の事業者)との協力体制の一層の推進 生産性向上はトラック運送事業者単独では実現できない。特に、荷主の協力がなけれ ば、輸送の効率化(実車率、積載率の改善、到着時間の見直し等) 、運賃水準の引上げ、 長時間労働の削減に向けた取組ができない。トラック運送業全体の生産性向上を目指す には、荷主の協力が不可欠である。協力体制の推進にあたっては、トラック運送事業者 の努力だけでなく、行政・関連団体の支援体制が求められる。 (2)運賃水準の引上げに直結する方策の検討 トラック運送業に従事する労働者の給与を引き上げるには、その原資となる運賃水準 の引上げが必要である。しかし、現状の運賃設定の実態を考察すると、運賃の引上げは 極めて困難である。原価に見合った適正運賃を収受できる環境整備を実施することが求 められる。適正運賃を収受するための環境整備についても、行政・関連団体の支援体制 が求められる。 (3)高速道路料金における大口・多頻度割引最大 50%の恒久化 本来、高速道路料金は運送委託者(荷主・元請等)が負担すべきものであるが、実態 はトラック運送事業者が負担している。そのため高速道路料金の引下げは、高速道路の 利用が促進され、トラック運送事業者における物流効率化に直結する。また、高速道路 の利用は、交通事故の削減や環境改善にも大きな効果をもたらすものであり、現状、平 成 28 年度末までとなっている大口・多頻度割引の最大割引率 50%の恒久化が求められ る。 以上
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