注意:左右シフトしています 原著者序文 第 3回折り紙の科学,数学,教育国際会議(3OSM E;Third International Meeting of Origami Science, Mathematics, and Education)論文集『Origami 』の序文が書けることは,私にとって非常に刺激的で喜ばしいことであ る.この会議のプログラムオーガナイザー,そして本論文集の編集者にとっ て,本書は 3年間の作業の完成を意味する. 第 1回会議は, 「第 1回折り紙の科学と工学国際会議」と銘打たれて,1989 年 12月にイタリアのフェラーラで開催された.この歴 的なイベントの生み の親はパドバ大学の藤田文章であった.わずか 17の口頭発表であったが,世 界中の人々が折り紙の科学的,数学的,教育的な局面について研究を共有する 基礎が築かれた.第 1回会議の論文集は,折り紙研究を収集し普及させる初の 出版物として画期的であった.今日なおこの論文集は非常に重宝されている. 第 2回折り紙の科学と科学的折り紙国際会議」は,1994年 12月に日本の 大津で開催された.これは私が出席できた折り紙に関する最初の会議であっ た.三浦 売の太陽電池パネル設計から吉澤章の折り紙芸術まで,川崎敏和の 抽象的な研究,高次元平坦折り紙からビルタ・クレスリングによる自然界にお ける折り目パターンまで,発表の多様さと幅広さが非常に印象的であった.科 学,芸術,教育,数学の知識や思想が一堂に会したことは,折り紙の歴 にお いて大津会議を唯一無二なものにした.この会議でも素晴らしい論文集が 生 した.会議のオーガナイザーであり論文集の編集者である三浦 亮,布施知 子,川崎敏和,前川淳の尽力を賞賛したい. 1994年の大津会議の中で,第 3回会議はアメリカでとの提案がなされた. その翌年,私が学会でサンフランシスコに行き,ピーター・エンゲル( 『折り 紙ユニバース(Folding the Universe) 』の著者)とロバート・ラングと運良 く夕食をともにすることができた.私が参加した大津会議のことと次回の会議 をアメリカですべきことを話すと,二人は「われわれが組織しよう」と応え た.当時私は大学院在学中で,このようなイベントをどう準備すればよいのか 皆目見当がつかなかった.だが始まったのである.わが人生の目的の 1つを果 たしたように感じざるをえなかった. もちろん,オリガミ USA(Origami USA)が後援し準備するというのが自 然な選択であった.オリガミ USA の役員として,私はこのプロジェクトの指 ii 原著者序文 揮を取ることを決意し,彼らは会議のとりまとめ全般にわたって支援してくれ た.オリガミ USA の 命には,一般大衆に折り紙の知識と教育での利用を普 及させることがあり,この会議を通してこの目標に突き進んだ.オリガミ 「Origami USA, 15 West USA に関する詳しい情報や会員になりたい方は, 77th Street, New York, NY 10024-5192」に連絡するか,以下のウェブサイ トにアクセスされたい「http://www.origami-usa.org」 . これらの論文集のための出版社 A K ピーターズと出会えたことも非常に幸 運であった.出版という手段を通して,この論文集は世界のライブラリへの道 を見いだして,数学者,科学者,教育者に知られることになる.初めて,折り 紙の学究的研究が容易に入手可能となる.私は毎年のように「折り紙や数学/ 科学/教育をもっと知るにはどうすればよいですか.」と尋ねられる.いまこの 人達に指し示すものができたことは,私個人として非常に喜ばしい. 私には第 3回会議をできる限り成功させたいという個人的理由もあった.私 が最初に出合った折り紙の数理についての研究のいくつかは,1989年の会議 の第 1回論文集のものであった.数学者となるために大学院で勉強していたと きこれらの論文を読んだことが私の人生を変えたといっても過言ではない.折 り紙研究での真剣な取組みに途方もない可能性があることに目を見張った.そ れ以来,数学と教育の両面で研究し続けることがわが進む道,わが人生の夢と なった.3OSME 会議を通して,そして皆様の手許にあるこの論文集を通し て,折り紙という知識の喜びを探究する伝統があらゆる 野の研究に拡がり, 先達の素晴らしい努力の成果が引き継がれることを切に願う. この論文集を編集するにあたり,多くの人々の力を拝借した.サラ-マリ エ・ベルカストロ,ヴァン・コーニーリアス,ロバート・ラングは最も必要な 編集の手助けと多くの論文についてアドバイスをしてくれた.アン・ラヴァン という完全無欠の助っ人を得て,世界各国からさまざまなフォーマットで送ら れてきた数多くの画像を処理することができた.アリスとクラウス・ピーター ズ(A K ピーターズの「A」と「K」 )は,編集の手助けや本の素晴らしい最 終レイアウトで見事な手腕を発揮された.最後に,3OSME 会議と本論文集 がこのように質の高いものとなったことを,本書に収録できなかった研究者を 含めて,すべての皆様に感謝申し上げる. トーマス C.ハル 3OSM E 編集者 メリマック大学数学科 注意:左右シフトしています 訳者序文 折り紙の研究は始まったばかり,開拓者を待っています. 『Origami 』の翻訳作業中の 2004年夏,東洋大学で開催された第 10回日本 折紙学会(折紙探偵団)国際コンベンションのゲストとして,『Origami 』編 集者のトーマス C. ハル氏が来日されました.招待講演のなかで,氏は「折り 紙は研究の宝庫.やることがみな新しい研究になる. 」と述べています.30年 折り紙にかかわってきた訳者も同感です.皆さんがご自 の専門を通して折り 紙を研究すると次々と新たな発見に出会い,折り紙世界の幅広さと奥深さに驚 くことになるでしょう. 本書は『Origami 』の第一部(折り紙の数理)と第二部(折り紙の科学と 応用)の翻訳書ですが,部のタイトルで語れないほど,収録されている論文の 内容は多岐に渡っています.本書は,フェラーラ会議と大津会議の論文集以上 に,折り紙研究のバイブルとなるに違いありません.興味ある論文に目を通し て, 「私なら別のアプローチをするけれど,……」と思えばしめたもの.あな たはもう折り紙の開拓者です. 翻訳にあたり,多くの方々の力をお借りしました.特に,高島直昭さんに は,最も困難なラドヒカ・ナグパル氏の論文,アレックス・ベイトマン氏,三 浦 亮氏の 3編を翻訳していただきました.心より感謝申し上げます.永田紀 子さん,前川淳さん,川村みゆきさんは,ご自身の論文の翻訳を快く引き受け てくださいました.ありがとうございました.川畑文昭さん,羽鳥 ん,森保仁さん, 士郎さ 尾秀樹さん,大里浩文さん,兄・川崎英文には専門用語や 英語表現で多くのアドバイスをいただきました.この場をお借りしてお礼申し 上げます.また糸岐宣昭先生には,翻訳を引き受けるかどうか躊躇していたと き支えていただきました.感謝申し上げます. 最後になりましたが,『Origami 』という折り紙界の記念碑の翻訳の機会を 与えていただいたうえ,遅々として進まぬ作業に辛抱強く付き合いながらご指 導いただいた森北出版の利根川和男さんに感謝申し上げます. 2005年 4月 川崎敏和 注意:左右シフトしています 目 次 原著者序文 ……………………………………………………………………………………………… ⅰ 訳者序文 ⅲ ………………………………………………………………………………………………… 折り紙の数理 トーマス C.ハル 1 第1章 コンピュータ折り紙 最近の成果 エリック D.ドメイン/マーチン L.ドメイン ……………………………………………… 第2章 折り紙手品のためのディスクパッキングアルゴリズム マーシャル・ベルン/エリック・ドメイン/ デイビッド・エプシュタイン/バリー・ヘイズ ………………………………………… 第3章 平坦折り組合せ論 概論 トーマス C.ハル ………………………………………………………………………………… 第4章 非平坦折り紙の数学モデル サラ-マリエ・ベルカストロ/トーマス C.ハル ……………………………………… 第5章 表裏同等折りの定義 前川 淳……………………………………………………………………………………………… 第6章 折り鶴の幾何 川崎敏和……………………………………………………………………………………………… 第7章 折り紙作品「オーブ(宝珠) 」の正確性 ジェニーン・モズリー ………………………………………………………………………… 第8章 数学折り紙 アルハーゼン最適化問題のもう 1 つの視点 ロジャー C.アルペリン ……………………………………………………………………… 第9章 青年ガウスのように正方形と戯れる 正 17 角形を折る ロベルト・ゲレトシュレーガー……………………………………………………………… 第 10章 ユークリッド幾何学の折り紙作図 節約の練習 ベネデット・スキメニ ………………………………………………………………………… 目 折り紙の科学と応用 次 ロバート・ラング 115 第 11章 平織り(折り紙テッサレーション)デザインのための コンピュータ・ツールとアルゴリズム アレックス・ベイトマン……………………………………………………………………… 第 12章 モデル作成およびドキュメント作成プログラム Foldinator ジョン・スジンガー …………………………………………………………………………… 第 13章 地図と地図帳の設計への折り紙科学の応用 三浦 亮 …………………………………………………………………………………………… 第 14章 折り紙容器 布施知子/大原康弘/永島 明/奥村 博 ………………………………………………… 第 15章 折り紙多々面体 ロバート・ラング ……………………………………………………………………………… 第 16章 三角関数を用いた任意角の折り出しの方法 川村みゆき ………………………………………………………………………………………… 第 17章 一枚折りの箱のねじれについての 察 永田紀子 …………………………………………………………………………………………… 第 18章 折るべきか,くしゃくしゃにすべきか? ブライアン A.ディドンナ …………………………………………………………………… 第 19章 折った筒と亀甲竹 ビルタ・クレスリング ………………………………………………………………………… 第 20章 正方形の循環 フレクサゴン解析入門 エザン・ヴェルコフ/ジェフリー・デュモント ……………………………………… 第 21章 自己組織化によるグローバルな形態の形成への 折り紙概念の適用 ラドヒカ・ナグパル …………………………………………………………………………… 索 引………………………………………………………………………………………………… v
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