交流定住促進~住民参加による定住施策

広島県自治総合研修センター
平成 19 年度まちづくり協働研修
交流定住促進
住民参加による定住施策
平成 19 年 11 月
呉市
都市政策部住宅課
主事
兼光
賢
竹原市
建設産業部産業文化課
主事
村尾
裕基
三原市
地域振興部地域振興課
主任主事
井上
典彦
廿日市市
分権政策部定住推進室
主任
川本
誠
江田島市
商工観光課交流定住促進室 主任主事
安芸太田町 観光交流課
広島県
課長補佐
地域振興部交流定住促進室 企画員
中田慎一郎
岡
尚三
向井
雅史
目
次
全体概要 ······································································ 1
1
定住施策の必要性·························································· 2
(1) 人口減少時代の到来
(2) 人口減少による影響
(3) 定住施策による中山間地域の活性化
(4) 定住先の条件
2
広島県の取組み···························································· 6
3
北広島町の取組み·························································· 7
(1) 人口
(2) 生活圏の構成(通勤)
(3) UJIターンの支援
4
定住施策の課題と検討 ··················································· 10
(1) 定住施策推進上の課題
(2) 北広島町の現状からみた課題
(3) 三次市青河町の取組み
5
提案の方向性···························································· 13
(1) 住民参加
(2) 定住受入のターゲット
(3) 定住受入の条件整備
6
提案1
推進に向けた行政施策の展開 ····································· 17
7
提案2
地域住民による取組み ··········································· 18
(1) 推進組織「あつまーる」の設立
(2) ボランティアポイント事業の展開
(3) 収益事業の展開
(4) 収支試算
8
終わりに································································ 30
企画立案の経緯······························································ 31
政策研究大学院大学教授横道先生のコメント ··································· 35
全
体
概
中山間地域は深刻
【施策の必要性】 人口減少時代の到来
地域経済の活力低下
要
集落機能 の低下
地域文化の喪失
この危機を乗り越えるには定住対策が必要
定住のための条件
① 仕事
② 住居
③ 生活環境
【現状と 課題】 北広島町 でも
仕事もあり,広島市内からも通勤してくる人も多い
なぜ北広島町に住まないのか…考えられる理由
空き家バンクを開設しているが,物件が少ない
行政として基本的な整備できても魅力までは…
【提案の 方向性】
地域住民の参加
推進体制
定住受入のターゲット
30歳代を中心としたファミリ ー層
定住受入の条件整備
子育て支援など地域での助け合いの促進
【提案】 30代を中心としたIターンを受け入れる体制を地域住民主導で構築
子供と家計にやさしい里づくり
子育て支援
リサイクル
空き家管理
ボランティア
ポイント事業
推進組織
あつま ーる
収益事業
お試し暮らし
(仮称 )
ボランティア
青空市など
行政の役割
担当職員の配置・推進の支援
イニシャルコストの支援
-1-
1
定住施策の必要性
(1) 人口減少時代の到来
日本の総人口は,長期的な少子化傾向を反映して,平成 17 年には,戦後初めて前年より減少し
た。今後,継続的な減少局面に入るとともに,高齢化がさらに進行し,今世紀半ばには,3 人に 1
人が 65 歳以上となる「超高齢社会」を迎えることが予測されている。
広島県でも,少子化の進行や,人口流出による社会減の影響などから,総人口は,平成 10 年を
ピークに減少局面に転じ,その後社会減の縮小により幾分持ち直したが,長期的には全国と同様
な状況で推移するものと見込まれている。
人口減少の要因を見ていると,出生率減少により自然増が減少し,平成 17 年度には初めて自然
減となるなど,昭和 57 年度以降続く社会減を補完できなくなったことによるところが大きい。
社会増減のみを見てみると,平成 8 年度から 14 年度にかけて社会減が大きくなった要因は,県
内経済の停滞による雇用の場の減少にある。そのため,中国地方の他県等からの転入は減り,南
関東地域への流出が大きくなった。
図 広島県の要因別人口増減数
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
S41 S43 S45 S47 S49 S51 S53 S55 S57 S59 S61 S63 H2
H4
H6
-10,000
-20,000
自然増減数
社会増減数
-2-
人口増減数
H8 H10 H12 H14 H16
(2) 人口減少による影響
人口減少は,労働力人口の減少,消費者の減少に伴う市場の縮小など,経済の中長期的な成長
に影響を及ぼすと言われている。また,地方公共団体の税収を減少させる一方で,高齢化による
社会保障費・医療費が増大するなど地方財政が硬直化し,行政サービスが低下する要因となるこ
とが考えられる。
さらには,地方に対し,都市部との経済力格差の一層の拡大,地域社会の活力や集落機能の低
下,耕作放棄地の増加や森林の荒廃による自然災害の発生危険度の増大など,大きな影響を与え
ると予想されている。
特に,集落機能の低下について詳しく見ると,道や池,水路の補修等の共同維持管理作業での
個人負担の増大,地域文化の衰退・喪失,年中行事・冠婚葬祭のみならず農作業等を通じた日常
的な相互扶助機能の低下が懸念される。
例えば,2005 年農林業センサスによると,農業関連施設の管理に係る共同作業の状況を5年前
と比べると,「過去1年間の作業回数」は各施設とも「変わらない」が9割以上となっている一方
で,「1回当たりの参加人数」は「減少」が農道で 19.4%,農業用用排水路で 18.5%,ため池で
14.0%となっており,個人負担の増大の傾向が見られる。
このように,農作業での助け合いが困難になるに従い,耕作放棄地の増加も予想され,野獣害
の発生による日常生活上の不安増大,病害虫被害の拡大,集落景観の悪化へと影響を及ぼすもの
と思われる。
表 農業関連施設別の共同作業の実施状況
単位:%
5年前との比較
過去1年間の作業回数
1回当たりの参加人数
増加
変わらない
減少
増加
変わらない
減少
農道
2.3
92.6
5.1
3.2
77.4
19.4
農業用用排水路
1.6
94.2
4.2
3.3
78.2
18.5
ため池
1.7
95.5
2.9
1.8
84.2
14.0
(2005 年農林業センサス)
-3-
(3) 定住施策による中山間地域の活性化
広島県においても人口減少の局面に転じたものの,県内全ての市町で,人口減少しているわけ
ではなく,人口対策は,中山間地域の課題である。
現在,人口増加策の一つとして,社会増を目的に,大都市圏からの移住の推進を多く地方公共
団体が取り組んでいる。その背景には,2007 年問題に代表される団塊の世代のふるさと回帰のニ
ーズやスローライフなど田舎暮らしの指向の高まりがある。
こうした定住希望者の意向は,企業誘致が可能な地域ではなく,日本の原風景を残す中山間地
域への移住である。
平成 19(2007)年から定年退職年齢を迎える団塊の世代が活躍する地域社会づくりや,人口の
維持・確保に向けた地域間競争の一層の激化に備え,主に大都市住民を対象とした地方への交流・
定住による人口の確保・拡大を目指す戦略的な施策の展開が求められている。
そこで,ここでは,定住者を受け入れることによる中山間地域の活性化について,考えていく
こととする。
表 県内各市町の定住相談実績
相談件数
H18
広島市
呉市
竹原市
三原市
尾道市
福山市
府中市
三次市
庄原市
大竹市
東広島市
廿日市市
安芸高田市
江田島市
府中町
海田町
熊野町
坂町
安芸太田町
北広島町
大崎上島町
世羅町
神石高原町
合 計
相談件数(月平均)
H19.4-9
7
41
17
6
2
0
50
79
51
5
5
18
0
7
0
0
0
0
62
91
5
14
1
461
0
28
4
7
16
11
0
14
112
0
10
18
4
21
0
0
0
0
14
121
3
12
6
401
-4-
H18
H19.4-9
0.6
3.4
1.4
0.5
0.2
0.6
4.7
0.7
1.2
2.7
1.8
0.0
2.3
18.7
0.0
1.7
3.0
0.7
3.5
5.2
7.6
0.4
1.2
0.1
38.4
2.3
20.2
0.5
2.0
1.0
66.8
4.2
6.6
4.3
0.4
0.4
1.5
前年比
0%
137%
47%
233%
1600%
皆増
0%
35%
439%
0%
400%
200%
皆増
600%
-
-
-
-
45%
266%
120%
171%
1200%
174%
(4) 定住先の条件
特定非営利活動法人 100 万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センターが,平成 16 年に実
施したアンケート調査によると,「ふるさと暮らしをする場合,どのような条件が整備されていれ
ばよいと思いますか」という問いに対し,最も回答が多いのは「医療」,次いで「安全性」,「就業」,
「仕事」,「住居」,「買い物」という順の回答であった。
今後,定住を受け入れていくには,「仕事」や「住居」のみならず,医療や安全性,買い物など
「生活環境」の充実を図っていく必要がある。
図 ふるさと暮らしをする際の条件整備
(%)
0.0
10.0
20.0
医療施設の充実
安全性が高い
就業に対する支援等
土地・建物等の情報提供及び斡旋
商店街・スーパーが近い
福祉施設・介護サービス等
公共交通機関がある
公共施設が近くサービスが充実
居住地域内の道路整備
小中学校が近く教育施設の充実
高速道路のICが近い
IT環境の充実
保育園・幼稚園が近く充実
高校・大学が近く内容が充実
家事代行サービス
その他
無回答
-5-
30.0
40.0
50.0
60.0
2
広島県の取組み
これまでも企業誘致など雇用対策,交通の確保,情報網の整備,医療福祉対策,住宅の整備など
定住に関する支援を実施してきたが,さらに,平成 18 年度,専管の部署を設置し定住施策を展開し
ている。
(1) 広島県交流・定住促進協議会の設立
平成 18 年 5 月,交流・定住促進事業を戦略的に展開するため,国・県・市町,民間団体により
協議会を設立し,マーケティング・広報戦略,土地・住宅の紹介・斡旋,ワンストップ相談体制
の整備など事業を実施協議している。
【構成団体】
37 団体
厚生労働省広島労働局,(社)全日本不動産協会広島県本部,中国地域づくり交流会,
日本青年会議所中国地区広島ブロック協議会,日本労働組合総連合会広島県連合会,
広島経済同友会,(社)広島県観光連盟,(財)広島県市町村振興協会,広島県商工会議所連合会,
広島県商工会連合会,(社)広島県宅地建物取引業協会,(財)広島県農林振興センター,
広島県農業協同組合中央会,県内全市町,広島県
(2) ホームページの開設
交流定住ポータルサイト「広島暮らし」を設置し,(社)広島県宅地建物取引業協会の協力を得
て「空き家バンク」を開設するなど,インターネットを通じて,広島県内での定住に必要な情報
を発信している。
(4) 相談窓口の開設
広島県内への定住を促進するため,フリーダイヤルによる無料電話相談窓口や,広島県内への
U・J・Iターン希望者が多いと考えられる大都市圏(東京,名古屋,大阪,福岡)に直接面談
できる相談窓口を開設するなど「広島暮らしサポートデスク」を設置している。
(5) 定住フェアへの出展
田舎暮らしに興味がある人に,その移住先として広島県を候補として検討してもらうことを目
的に,ふるさと回帰フェアなどの大都市圏で開催される定住フェアに出展し,広島暮らしのプロ
モーションを展開している。
(6) ロングステイ型観光促進事業
団塊の世代等を対象とした,長期滞在型の観光客誘致などを通じて広島県の魅力を広く知って
もらう必要があるため,特色ある地域資源を活用して地域が取り組む参加,体験,学習,保養な
どの,長期滞在型の多様なメニューの開発に対して支援を行っている。
(7) U・Iターン無料職業紹介事業
U・Iターン就職希望者の家族を対象にした相談窓口を県内各地で開設し,各種情報を提供す
るとともに,夏季帰省時に併せ企業ガイダンスを開催するなど,U・Iターン就職に向けた施策
を複層的に実施している。
-6-
3
北広島町の取組み
各市町で交流定住施策が展開されているが,広島県内で先行的に取組んでいる市町の一つである
北広島町の状況を取り上げ,今後の検討の題材とする。
(1) 人口
北広島町は,平成 17 年,芸北町,大朝町,千代田町,豊平町が合併して発足した町である。
北広島町の人口は,平成 17 年現在,20,857 人(国勢調査),平成 12 年(21,929 人)と比較す
ると,1,072 人減少している。年少人口(0~14 歳)比率は 12.7%,生産年齢人口(15~64 歳)
比率は 54.1%,老年人口(65 歳以上)比率は 33.2%である。全国平均と比較すると,年少人口
比率は 1.0%,生産年齢人口比率は 11.7%低く,老年人口比率は 13.1%上回っており,少子高齢
化が進行している。
(2) 生活圏の構成(通勤)
北広島町に常住する就業者(11,416 人)の 84.8%に当たる 9,684 人が町内で従業する就業者で
あり,広島市周辺の沿岸地域等と比べると高くなっている。
北広島町以外への通勤者は 1,732 人で,通勤先は,広島市が 1,043 人で最も多く,次いで安芸
高田市となっている。また,島根県へも 70 人が通勤している。一方,他市町から北広島町に通勤
する従業者は 3,028 人であり,その 63.4%に当たる 1,921 人が広島市から通勤している。また,
安芸高田市から 569 人,さらには,島根県からも 262 人が通勤している。
通勤による流入と流出の差引では,1,296 人のプラスとなっており,北広島町は雇用力を有し
ている。
図 北広島町の通勤の状況 (平成 17 年国勢調査より)
島根県
三次市
46
70
262
38
318
100
安芸太田町
北広島町
安芸高田市
178
569
33
14
1,921
1,043
15
21
廿日市市
東広島市
広島市
-7-
(3) 定住の支援
ア
企業誘致と就業の場の拡充
積極的な企業誘致を行い,就業の場の拡充を図るため,北広島町内の工業地域に工場等の新
設及び拡充する場合,企業立地奨励措置を実施している。
具体的には,工場等設置奨励金(限度額 50,000 千円/年),雇用奨励金(限度額 20,000 千円),
土地取得奨励金(限度額 10,000 千円),設備取得奨励金(限度額 10,000 千円)を助成している。
イ
U・J・Iターンの情報提供・相談体制の充実
北広島町では,U・J・Iターンに関する情報提供と相談体制の充実を図っている。
その一つとして,求人と求職のマッチングを行う「北広島町求人情報センター(無料職業紹
介所)」を町独自で開設している。
表
北広島町求人情報センターの実績
求人登録
求職登録
就職件数
39 社・257 名
69 名
19 件
(H18.8~H19.8)
ウ
住まいづくりの支援
北広島町へ定住することを目的に,町外から住居を移転する新規定住者を対象に,居住する
ための住宅の「新築」,「増改築」又は「購入」する費用の5%(補助限度額は 50 万円)を助成
している。なお,補助金は,北広島町内の加盟店で使用できる地域通貨「ユート」で交付して
いる。
表
住宅建築費補助制度(新規定住化促進対策事業)の実績
事業指定件数
補助金交付件数
定住人数
13 件
8件
31 人
(H18.4~H19.8)
エ
住宅・宅地の供給
北広島町への定住を推進するため,町が住宅用地を造成し販売を行っている。現在,販売し
ている大朝間所第2地区住宅用地は,自然豊かな環境に加え,簡易水道及び下水道の整備,病
院,保育所など医療福祉関係など生活しやすい環境を整備するなど,自然環境と生活環境の調
和を前提に,質の高い住宅・宅地の供給を促進している。
表
住宅用地(大朝間所第2地区住宅用地)の販売実績
販売区画数
成立件数
定住人数
5 区画
2件
10 人
(H16. ~H19.8)
-8-
オ
空き家情報バンク事業の推進
空き家の有効利用を図るため,北広島町では,空き家の情報提供を行う「北広島町空き家情
報バンク」を設置している。将来的にも使わない空き家を貸したり,売ったりしたいと思って
いる建物所有者に「空き家情報バンク」へ登録していただき,登録した物件を町のホームペー
ジ等で情報を提供している。
表
北広島町空き家情報バンクの実績
空き家登録件数
利用希望件数
成立件数
定住人数
20 件
63 件
9件
23 人
(H18.7~H19.8)
図
北広島町の空き家情報バンクのフロー図
①空き家の募集
北広島町
立地定住推進室
②物件情報提供
(登録申請)
③町外 へPR
空き家情報バンク
データベース登録
空き家所有者
⑤希望者情報の
連絡
賃貸・購入希望者
④問い合 わせ
(登録申請)
⑥所有者情報の
連絡
⑦契約
大朝町間所第2地区住宅用地の定住者,北広島町空き家情報バンクによる定住者の定住パタ
ーン,定住時の世帯主の年齢をみると,Iターンの割合,また,30 歳代の割合が高い。
表
大朝間所第2地区住宅用地・北広島町空き家情報バンクによる
定住者の定住時の状況
定住パターン
世帯主の年代
Uターン
Iターン
20 歳代
30 歳代
40 歳代
50 歳代
60 歳代~
2件
9件
2件
5件
1件
1件
2件
-9-
4
定住施策の課題と検討
(1) 定住施策の推進上の課題
広島県内で先行的に取組んでいる市町の一つである北広島町の取組みを見ると,定住希望者に
対する情報発信とインセンティブの提供を実施しているが,残された課題には,北広島町のみな
らず多くの市町で共通する課題がある。
ア
推進体制が未整備
都市住民が移住先を決定する場合,仕事,住居,教育・医療・治安など生活環境が重要な要
因となる。定住施策は「まちづくり」そのものであり,定住担当課のみならず,他の部署と連
携し,施策展開することが必要であるが,関係機関が一体となった推進体制が整っていない。
したがって,現在,取組まれている施策は,ホームページの空き家バンクなどの情報を得た
都市住民に対し,定住担当職員が1対1で対応するなど,数人の転入を促進するような実績で
しかない。
イ
地域のビジョンが不明確
少子高齢化の進展,限界集落の発生は,経済動向の流れの中で生じている現象であり,この
流れを止めることは容易ではない。今後,行政施策の効率化を図るには,コンパクトシティー
的な発想も必要であり,全ての過疎化,高齢化した地域に定住施策を推進すべきか検討する必
要もある。
また,地域住民は集落の将来に危機意識が低く,定住施策の必要性の認識も低い。
(2) 北広島町の現状から見た課題
北広島町には雇用力があり,広島市を中心に他の市町からも多くの雇用を受け入れている。そ
の結果,通勤による流入と流出の差引では,1,296 人のプラスとなっている。
しかしながら,平成 12 年から 17 年までの 5 年間に 1,072 人の人口が減少している。
定住に必要な条件からすると,「仕事」が確保されていることから,「住居」がないか,「生活環
境」に魅力がないということが原因として考えられる。
実際,北広島町が開設している空き家バンクの空き家登録件数は 20 件と,利用希望件数は 63
件に対し,大きく下回っている。北広島町では,あらゆる場面を通じて空き家の登録の募集を行
っているが,登録件数は伸び悩んでいる。
また,生活環境についても,上下水道やブロードバンドサービスの提供などのインフラについ
ては,行政が中心となって整備することができるが,行政のみの取組みで魅力を高めることは困
難である。
(3) 先進事例の検証(三次市青河町の取組み)
地域住民が中心となって定住を推進する三次市青河町の取組みを検証する。
ア
青河町の概要
三次市青河町は,三次市の中心部の南に位置し,8 地区 13 常会で構成されているが,三次市
内で最も小さい行政区である。
-10-
表
イ
三次市青河町の概要
世帯数
人口
65 歳以上の人口
高齢化率
184 世帯
545 人
192 人
34.1%
自治振興会の活動
青河自治振興会を中心に多くのグループが組織され、多方面に様々なコミュニティ活動を展
開している。
特に,ホタルの会が,川を中心とした美しい自然を守り、ホタルとの共存ができる地域づく
りを目指し開催している「青河ホタル祭り」は他地域からの来場も多く、また「青河若連」の
地元の酒米「八反錦」で醸造する「清酒こいがわ」は町おこしに大きな役割を果たしている。
ウ
少子化対策
青河小学校の廃校が問題となり,自治振興会では,学校を地域の学校として受け止め,支援・
協力をすることとした。自治振興会では,地域の人口減少に歯止めをかけ,特に,児童の確保
を図るため,小学生のいる家庭を中心とした賃貸住宅の建設が必要と判断,そのため自治振興
会の役員が中心となり,有限会社ブルーリバーを設立した。
表
有限会社ブルーリバーの概要
設立
資本金
出資者
会社の所在地
平成 14 年 6 月
9,000 千円
9人
三次市青河町 49
有限会社ブルーリバーは 10 棟の住宅を整備し,43 人の定住者を確保した。その結果,青河
小学校の児童数 28 人となり,うち 9 人(32.1%)が新たな定住者である。
定住者は広島市及び三次市内からが多く、就職等がきっかけとなり三次市内での居住先を求
めて青河へ転入している。
定住の状況
エ
小学生
未就学児
大人
合計
9人
14 人
20 人
43 人
マスコミ効果
有限会社ブルーリバーは、広告宣伝費等を持っておらず、パンフレットを作成したり、新聞
広告を行うなどの活動を行っていない。
にも関わらず、青河地区への転入者が途切れないのは、青河地区の取り組みがテレビ・新聞
等のマスコミでも大きく取り上げられ、反響を呼んでいることが要因と考えられる。
-11-
オ
経営状況
建設資金は全額、出資金と、金融機関からの借入金で賄っている。
平成19年8月現在、借入資金の総額は約4630万円であり、収入金は月5万円程度の家
賃収入による41万円となっている。
表
年度
有限会社ブルーリバーの実績
提供物件
新築住宅
中古住宅
建設費用
14
2棟
-
1500万円
15
2棟
-
1600万円
16
-
1棟
-
17
-
2棟
18
1棟
-
19
2棟
-
-
1100万円
(販売価格)
1600万円
新築物件
-12-
中古物件
5
提案の方向性
(1) 推進体制
「4
定住施策の課題と検討」で述べたように,空き家バンクの登録物件の確保など住居の提
供や魅力的な生活環境の整備は,行政のみの取組みでは対応できない。
三次市青河町では,自治振興会の活動から有限会社を設立し定住促進の成果を上げている。有
限会社は住居の確保を担い,自治振興会の活動は交流事業などにより地域の魅力を高めている。
最終的に定住者を受け入れるのは地域であり,行政だけでなく,地域住民と一体となって取り
組むことが不可欠である。
地域住民の参加
(2) 定住受入のターゲット
現在,各地で取り組まれている定住施策は,団塊の世代を含むあらゆる世代をターゲットとし
ているが,中山間地域において,人口減少の影響を最小限に抑制し,地域の若返りと活性化を促
進するには,若年層を定住者として受け入れていくことが必要と考えられる。
若年層が居住地を移動する時期としては,大学等卒業後の就職時,結婚時,子育て時などが考
えられる。一般に,就職時や結婚時の居住地は,仕事の勤務先と近隣の都市部を選択するものと
思われるが,子育て時は,子供の教育環境と居住スペースの確保から郊外へ移動することが予想
される。
そこで,子育て世代である 30 歳代を中心としたファミリー層をターゲットに,定住施策を企画
する。
なお,UJIターンの別については,Iターンの受入体制を構築できれば,その地域に縁があ
るUターンや,何らかの関係を有しているJターンについては,当然のことながら受入可能であ
ることから,ここでは,Iターンの受入を中心に検討する。
30 歳代を中心としたファミリー層
-13-
図 100 人の村の 10 年後の人口ピラミッド (ある市町の人口予測を参考にシミュレート)
■ 100人(平成17年・2005年)の村は10年後(平成27年・2015年)にはどうなるのか
15
10
5
0
0
5
10
15
0~9
H17
H27 趨勢値
10 ~ 19
20 ~ 29
30 ~ 39
40 ~ 49
50 ~ 59
60 ~ 69
70 ~ 79
80 ~ 89
90 ~ 99
■ 100人の村で,4人家族が4世帯移住してくると,10年後にはどうなるのか
15
10
5
0
0
5
10
15
0~9
H27 趨勢値
H27 受入
10 ~ 19
20 ~ 29
30 ~ 39
40 ~ 49
50 ~ 59
60 ~ 69
70 ~ 79
80 ~ 89
90 ~ 99
■ 平成17年(2005年)と比較すると
15
10
5
0
0
5
10
0~9
10 ~ 19
20 ~ 29
30 ~ 39
40 ~ 49
50 ~ 59
60 ~ 69
70 ~ 79
80 ~ 89
90 ~ 99
-14-
H17
H27 目標値
15
(3) 定住受入の条件整備
ア
仕事
近隣に企業等就業先の確保が可能であればよいが,全ての地域で可能とは言えない。したが
って,広島市や福山市など就業機会の多い都市部への通勤によって,就業先を確保する。
また,子供の教育費など家計の支出が多い世代であるので,夫婦共働きを基本とし,地域外
への通勤と合わせ,地域内での女性の就業機会の確保も図る。
イ
住居
地域内の空き家を活用する。しかしながら,空き家バンクの登録物件数の事例にあるとおり,
容易には物件の確保が困難と考えられる。そこで,日頃から地域で空き家を管理する体制を整
え,地域内の空き家の流動化を促進する。
ウ
生活環境
魅力的な生活環境を地域住民主導で整備するため,地域通貨の考え方を導入し,ボランティ
アポイントの制度を構築し,ボランティア活動など地域の助け合いを促進する。特に,ボラン
ティアポイントは,定住者と地域住民とのコミュニケーションの円滑化のツールをして活用す
る。
そのボランティア活動の一つは子育て支援である。夫婦共働き,また,遠方への通勤が可能
なように地域全体で子育てをしていく仕組みを構築する。
また,このような活動を通じ,地域コミュニティの活性化を図られ,安心して暮らすことの
できるまちづくりにもつながる。
子育て支援など地域での助け合いの促進
-15-
図 ふるさと暮らしの際の条件整備 (年代別)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
土地・建物等の情報提供及び斡旋
就業に対する支援等
医療施設の充実
福祉施設・介護サービス等
家事代行サービス
保育園・幼稚園が近く充実
小中学校が近く教育施設の充実
29歳未満
高校・大学が近く内容が充実
30~39歳
40~49歳
公共施設が近くサービスが充実
50~59歳
60歳以上
商店街・スーパーが近い
居住地域内の道路整備
高速道路のICが近い
公共交通機関がある
IT環境の充実
安全性が高い
その他
無回答
-16-
6
提案1
推進に向けた行政施策の展開
(1) 地域住民への情報公開・住民との相互理解促進
地域住民の参加を得て,住民と行政の協働による定住施策を展開していくには,人口減少の現
状,人口減少が地域にもたらす影響など積極的に情報を発信し,一緒に考えていく体制を整える
こと必要である。
そのため,国勢調査など人口に関する統計から,自らの地域と他の地域の比較,また,今後の
人口の推移の予想をするため,県として統一した分析ツールを提供することが必要と考えられる。
こうしたツール等を活用し,行政は,積極的に住民との対話により相互理解を図る。
このような取組みを通じて,「要求」から「提案」へと地域住民の主体性の発揮を促すことが必
要である。
(2) 地域からの申請
先に述べたように,定住施策は,地域住民にその取組みの意思がない地域での展開は困難であ
り,地域住民が主体的に取り組む地域こそ,大きな成果が得られる。
そこで,定住施策に取り組む地域を募集し,申請があった地域において重点的に施策を展開す
る。
ただし,地域住民にとって定住施策は,身近な課題ではなく,特に,高齢化進行した地域では
地域のビジョンを協議することも困難と思われる。したがって,若い世代がリードしている地域
が対象となるものと思われる。
(3) 担当職員の配置・定住施策推進の支援
申請を受けた行政は,担当職員を配置し,次のとおり定住施策推進の支援を行う。
①
人口が減少している地区を選定
選定する範囲は最小で自治会単位,最大で小学校区単位(60 世帯 200 名から 300 世帯 1,000
人程度を想定
②
選定した地区の社会的資源等を事前に調査
(地理的問題,産業分布,地区世帯の年齢,既存の組織等)
③
地区の将来像に関するアンケート調査を実施
④
アンケート調査を基に集落座談会を開催
アンケート結果の発表後,事前に調べた地区のデータの公開と十年後の地区の予想人口,年
齢層の提示。これからの地区に何が必要か意見を交換。
⑤
座談会終了後,地域住民の取組みについて地域に提案。行政の支援メニューについても説明。
-17-
7
提案2
地域住民による取組み
子育て世代である 30 歳代を中心としたファミリー層にとって,移住先として魅力的な地域「子育
てと家計にやさしい里」を作り上げていく。
そのため,推進組織「あつまーる(仮称)」を設立し,この「あつまーる」において,ボランティ
アポイントの運営管理など地域の助け合いの促進を図る。また,その運営費と雇用機会の確保をす
るため,主に地域外の住民を対象とした収益事業を展開する。
子育て支援
ボランティアポイント事業
リサイクル
その他ボランティア
推進組織
あつまーる
(仮称)
空き家管理
青空市
収益事業
リサイクルショップ
お試し暮らし
子育てと家計にやさしい里づくり
就業
定住者
ボランティア
ポイント
地域住民
地域コミュニティの活性化
-18-
収益
事業
(1) 推進組織「あつまーる」の設立
ア
組織設立の必要性
これまでも地域や行政で定住者が来てくれるような働きかけを行い,受け入れを行って定住
者と地域住民の双方の努力で地域のコミュニティの活性化を徐々に図ってきたが,現在では多
くの中山間地域で高齢化が加速している状況で,この動きを一層迅速で定住の効果を最大限に
するための積極的な方策が要求されており,地域の住民が一体となって「定住」の必要性や地
域の活性化を考え,実行する必要がある。
そのため,地域住民で地域ボランティア通貨制度を流通させる「あつまーる」を組織し,そ
の中で定住者受け入れに必要な施策や,地域コミュニティを活性化する具体的施策を行ってい
く体制づくりが必要であると考える。
イ
設立までの流れ
① 行政からの組織設立の提案を受け、地域内で協議を行う。
② 組織の設立に必要な構成員の募集
③ 設立後の行政の支援に必要な書類の整備
④ 行政への申請とプレゼン
⑤ 支援の決定
⑥ 規約、予算案の整備
⑦ 設立総会
ウ
エ
あつまーるの設立に必要な書類
○
規約の作成
○
交流定住推進計画書の作成
○
集落空家マップの作成
○
収支計画書
あつまーるの構成員
会長,副会長,会計,監事等の役員と監査を設置し,地域住民も構成員として出資しあつま
ーるに加入する。なお、事務員は地域の中から1名原則雇用する。
オ
交流定住推進計画書に盛り込む内容
○
これから進む高齢化の対策として,地域に若い人に住んでもらい,その人達と一緒になり,
これらの地域の維持活性化を担ってもらうことを目的として,交流・定住を促進するという
趣旨を記載する。
○
交流定住促進にそれに必要な次の取組みに関する計画として,次に挙げる項目については
必ず記載し,実施する。
カ
①
ボランティアポイント制度の創設
②
若い人の定住者をターゲットとするため,地域全体での子育て支援
③
定住者の住居としての空き家の活用
④
お試し暮らし受け入れに向けた体制の整備
運営費
別紙,収支試算のとおり(P27~29)
-19-
(2) ボランティアポイント事業の展開
ア
ボランティアポイントの運用
魅力的な生活環境を地域住民主導で整備するため,地域通貨の考え方を参考に,ボランティ
アポイント(VP)の制度を創設する。
(ア) VPの導入の目的
①
新しい人間関係の構築,信頼関係の育成
VPによるサービスのやりとりを行うことによって,定住者と地域住民の新しい人間関
係を構築するきっかけとなることができる。
②
個人の能力の発掘
VPには,埋もれていた個人の能力を活かす効果がある。例えば,高齢となり,すでに
一線から引退した人が,VP事業を通して,過去の経験を活かして他の人にサービスを提
供する機会を創出できる。
③
地域の自立
VPは,自分の利益だけを考えてサービスを提供するのでは取引は継続しない。継続さ
せ,取引を積み重ねることが,参加者個人間の限られた信頼関係から地域におけるコミュ
ニティの中に信頼関係の醸成を促し,地域の課題に関心を寄せ,解決に向けて具体的な行
動を起こす自立した体制が形成される。
(イ) 運営のしくみ
①
加入時の世帯状況に基づきVPを付与
加
入
(3000円/世帯)
住 民
事業採択要件
地域内世帯の
2/3世帯以上が
加入すること
未 加 入
転入者
300VP
0円
既存住者
300VP
3,000円
40歳未満
(世帯主)
40歳以上60歳未満
150VP
3,000円
(世帯主)
60歳以上
200VP
3,000円
付加VP
住民負担金
(世帯主)
②
月例子育て支援VP・・小学生以下の子供が居る世帯に50VP/人・月を付与する。
③
受託者情報の把握
・加入時に受託作業を世帯内の成人者が2つ以上申告する
④
VPは紙幣とポイントカードを併用して運用
・日常のサービスは支援を依頼した人と依頼された人が直接紙幣で交換する。
-20-
一定程度紙幣が貯まった時点で、紙幣の紛失、増刷の抑制、状況把握の為、商店街な
どで利用されているものと同種のポイントカードと、そのカードリーダーを利用し、容
易な管理形態にする。将来的にはVPの利用状況など総量管理も可能
(地域内に5か所程度設置を想定)
⑤
有効期限(回転率を上げる為)
・ポイントカード・・・最終書き込み日から1年
・紙幣・・・・・・・・3年毎に更新
⑥
運用後の利用状況の検証
地域コミュニティの活性化を図るためのツールであり、その目的にあった運用、サービ
ス当たりのポイント数となっているのか確認が必要
-21-
ボランティアポイント(volunteer points)の利用一覧表(例)
項目(例)
放課後児童クラブ
学習ボランティア
託児ボランティア
(一時預かり)
送迎ボランティア
家事ボランティア
趣味ボランティア
労働量や時
子育て世帯に 双方に配慮し
間等を考慮し
配慮した場合 た場合
た場合
想定される内容
通常利用
延長対応
宿題
読み聞かせ
遊び相手(昔遊び)
通常利用
病後(子供)
病後(保護者)
就学前
小学生
70歳以上
買い物
草取り(地域の行事は除く)
ペット一時預かり(散歩など)
ペット長期預かり(旅行など)
釣り
家庭菜園
盆栽・庭いじり
歌(カラオケ)
楽器演奏
ものづくり
陶芸
絵画(絵手紙などを含む)
料理
おやつ等は実
5vp/人
3vp/人
10vp/人 費負担
10vp/人
5vp/人
15vp/人
10vp/人
5vp/人
15vp/人
5vp/人
5vp/人
車での送迎で
は原則として
10vp/人 燃料費は請
求しない。
5vp/回
5vp/回
10vp/回
10vp/人
10vp/人
100vp/回
150vp/回
100vp/回
10vp/回
15vp/回
10vp/回
教材費等は
10vp/人 実費負担
写真
パソコン
短歌・俳句
アウトドア教室
スポーツ各種
農作業ボランティア
翻訳・通訳
ボランティア
田植え(それに類するもの)
稲刈り(それに類するもの)
除草
外国語
点字
…
…
…
…
…
手話
※VP一覧表にない作業については,所要時間を基準に事務局が定める。
(使用例)労働量や時間等を考慮した場合
(1)放課後児童クラブで3人の子供の世話をした。
5vp/人 × 3人 = 15vp
(2)パソコン教室を3回開催し,1回目は5人,第2回と第3回はそれぞれ3人の参加者があった。
10vp/人 × 5人 + 10vp/人 × 3人 × 2回 = 110vp
(3)田植え作業を,夫婦二人で土日の2日間手伝った。
100vp/回 × 2人 × 2回 = 400vp
-22-
備考
イ
子育て支援
(ア) 地域で子育て支援の目的、対象等
①
目的
昨今、いじめ問題の深刻化、子どもを狙った犯罪の増加、犯罪者の低年齢化などが進み、
安心して子育てを行いたいと考える保護者が増えてきている。また、30歳代のファミリ
ー層にとって、「子育て」に係る経済的な負担は大きいところである。
こうした状況を踏まえ、地域ぐるみで子育てを支援することにより、安心して子育てが
できる環境の提供、経済的な負担の軽減、保護者の遠距離通勤の実現を目指すものである。
さらに、豊かな自然の中で子どもを育てることにより、子供たちに生きる力を育んでも
らうとともに、地域の活性化、高齢者の生きがい対策にも繋げていこうとするものである。
②
対象世帯
世帯主が40歳未満で、小学生以下の子どもがいる世帯
③
内容
VPにより、放課後児童クラブ,学習ボランティア,託児ボランティア(一時預かり)
といった子育て支援を実施する。
対象世帯には、最初の時点で他の世帯よりも多くVPを付与するともに、月例子育て支
援VPとして50VP/児童・月を付与する。
(イ) 運営のしくみ
①
地域の高齢者や教員の退職者などから子育て支援者を募集
②
定住者など保護者から子育て支援の希望者募集
③
必要に応じ、あつまーる事務局を通じて子育て支援を依頼
④
あつまーる事務局において子育て支援者を調整し、子育て支援を実施
⑤
保護者から子育て支援者にVPの支払
-23-
(3) 収益事業の展開
ア
空き家の管理
(ア) 地域で空き家管理をする目的
①
地域の環境保全
空き家になると荒廃が進み,その地域のイメージを低下する。地域として空き家を管理
し,荒廃を抑制することにより,地域の環境の保全を図るとともに,地域に対する誇りを
堅持する。
②
空き家の流動化の促進
空き家の家主は,空き家を所有して困ることはなく,また,見知らぬ者に貸したいと思
っていないが,地域住民の要請であれば,家主にとっても,維持管理は必要と考えており,
空き家の管理を委託するものと思われる。管理を委託することにより,家主の空き家に対
する流動化の意識を醸成する。
③
定住者用,お試し暮らし用住宅の確保
空き家の管理の委託を受けた物件の中から,家主の利用状況などから判断し,定住者用
の住宅やお試し暮らし(短期滞在,長期滞在)用の住宅としての活用を家主に依頼し,物
件の確保を図る。
(イ) 運営のしくみ
空き家の管理を家主から受託し,実際の管理は地元住民が行う。家主から委託費用として
現金を徴収し,地元住民にはVPを付与する。
①
空き家管理受託者への VP 付与
月1回の風通し+台風等災害後の見回り
環境保全のための除草
②
180VP/回・人
空き家管理委託費
月1回の風通し+台風等災害後の見回り
環境保全のための除草
③
50VP/回・人
15,000 円/年
5,000 円/回
空き家の簡単な修繕
必要経費
②空き家管理委託費
あ
家
空き家管理
空
主
つ
き
ま
家
│
る
③管理修繕
①VPの付与
地
域
住
民
-24-
イ
リサイクルショップ等・青空市
(ア) リサイクルショップ等の運営の目的
①
ファミリー層への支援
地域内での不要品の再利用を促進することにより,ファミリー層を中心に地域住民の生
活を支援する。
②
循環型社会の構築
地域内での不要品を再利用するなどリユースの流れを構築し,循環型社会の里づくりを
行うことにより,移住先として地域の魅力を高める。
③
VPの活用
地域内での取引によるリサイクル用品の支払方法は,VPを活用し,その利用促進を図
る。
④
地域外からの“外貨”の獲得
地域外の住民へも販売を促進し,その手数料(販売代金の 15%相当)を得ることによっ
て,地域外から“外貨”を獲得する一つのチャンネルとする。
(イ) 青空市の運営の目的
①
あつまーるの運営資金の確保
あつまーるが青空市を運営し,その手数料(販売代金の 15%相当)を得ることによって,
あつまーるの運営資金を確保する。
②
地域外からの“外貨”の獲得
農産物など地域外への販売を促進し,地域外から“外貨”を獲得する一つのチャンネル
とする。特に,市場出荷に向かない品物や少量の品目も販売できること等によって生産者
の収益の向上を図る。
③
生きがいの場の提供
生産者に自由に販売できる場を提供するとともに,消費者と生産者の間に,また,生産
者同士の間にコミュニケーションの場を提供し,特に高齢者の生きがいを創出する。
(ウ) 運営のしくみ
①
販売品目の募集
②
青空市のPR
③
商品の販売
④
生産者等への支払い
-25-
ウ
お試し暮らし
お試し暮らしとは,将来の定住を視野に入れて生活設計を考えている人に向け,数週間から数
ヶ月かけて生活体験を提供するものである。
定住希望者は縁のない地域に定住することには大きな不安があり,地域住民においても,とも
に地域コミュニティの活性化を担っていく相手として,定住者を受け入れることに大きな不安が
あるため,お試し暮らしを行うことにより,お互いに移住後のイメージをつかむことができる。
そこで,あつまーるは,お試し暮らしに対して体験メニュー等を整備することにより,自分達
の地域内でお試し暮らしを行うとともに,収益事業として“外貨”の獲得を目指す。
(ア) あつまーるの取り組み
(1)
お試し暮らし用住宅の整備
・地域内の宿泊施設との提携
・行政が所有する遊休施設の活用
・管理している空き家の活用(※1)
(2)
受け入れに向けた体制(メニュー)の整備
お試し暮らし希望者に体験してもらい,定住につなげるメニューを用意し,実行する体
制を整える。
【体験メニュー例】
例1
農作業体験メニューを複数用意し,例えば耕作可能な時期であればいつ希
望者がきても体験メニューが組めるよう地域の農業者の中で話しあい体
験メニューカレンダー等を整備する。(漁業体験も同様)
例2
地域に伝統芸能(たとえば神楽等)があれば,体験メニューを用意すると
ともに,体験したい人を団員として登録,年に数回練習への参加を促し,
継続して地域に足を運んでもらう。
例3
釣り,陶芸,絵画など地域の人が講師を務める教室に参加して新しい趣味
を探すとともに地域の人との交流を深める。
(3)
お試し暮らし参加者の募集
(4)
参加者から料金を徴収
料金の流れ
①サービス提供者へは,VPを支給
②利用者から参加料を現金で徴収(材料費などの必要経費+手数料)
↑
事務局の収益
(※1)お試し暮らしへの空き家バンク登録物件の活用によって発生する家賃や手数料を事務局が
収益とすることは,不動産取引法や旅館業法の関係から現時点では難しい。
しかし,特区申請など行政のバックアップ等により,将来的には可能であると考える。
-26-
(4) 収支試算
地域が主体的に関わり,早期に安定した運営が図られるよう, 3 年目には黒字に転換すること
を目指して試算している。ただし,イニシャルコストを補填するほどの内部留保が得られるわけ
ではないので,イニシャルコストを支援する必要がある。
あつまーる収支試算表
【歳入】
費
(単位:円)
目
内
容
1年目
2年目
3年目
空き家管理受託収 ①月1回の風通し+災害後の見回り
入
②景観保全のための草取り
75,000
15,000
25,000
農作物販売手数料 販売手数料として売上の15%を徴収
900,000
1,200,000
1,500,000
リサイクル品販売
販売手数料として売上の15%を徴収
手数料
32,400
34,200
36,000
1,022,400
1,379,200
1,751,000
1年目
2年目
3年目
計
120,000
備
考
180,000 15,000円/年
35,000 5,000円/回
地域外の人に販売
した場合のみ
【歳出】
費
目
内
容
複合プリンタ(2台)
プリンタラック
FAX(家庭用)
通信費
減価償却費
0
0 ★
0
0 ★
0 ★
レジスタ
50,000
0
0 ★
ポット
10,000
0
0 ★
耐火金庫(重量70kg程度)
70,000
0
0 ★
書庫(引違・2組)
60,000
0
0 ★
デジカメ
50,000
0
0 ★
20,000
0
0 ★
160,000
0
0 ★
50,000
0
0 ★
180,000
180,000
固定電話代
60,000
60,000
60,000
インターネットプロバイダ代
60,000
60,000
60,000
ウィルス対策費
36,000
36,000
36,000
5,000
5,000
5,000
コピー用紙、プリンタインク代等
60,000
60,000
60,000
図書購入費
15,000
15,000
15,000
パソコン(周辺機器を含む)
62,500
62,500
62,500
カード購入費(1,000枚)
電気、水道、ガス代
郵便代
事務費
23,000
0
各種事務用品(ポイント券印刷用紙代含む)
光熱水費
0 ★
30,000
パソコンソフト
消耗品購入費
0
100,000
事務用机(両袖)・イス(両肘)
事務用品費
備
120,000
応接セット(センターテーブル、イス4脚)
カードリーダ(5台)
交通費
個人所有の自家用車を使用、ガソリン代負担
修繕料
カードリーダ等メンテナンス費用
雑費
茶菓子代等
人件費
1人役、週27.5時間で設定
保険料
労災保険(拠出金を含む。)
税金
法人税、県民税、市町村民税、事業税
その他
事務所家賃、駐車場代、下水道
計
考
180,000 50~60m 2を想定
50,000
50,000
50,000
250,000
250,000
250,000
5,000
5,000
0
10,000
5,000 年間で260km程度
15,000
10,000
10,000
10,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000
4,550
4,550
4,550
70,000
70,000
70,000
0
0
0
2,611,050
1,878,050
1,883,050
市町・県の遊休施
設活用
★:イニシャルコスト
-27-
【収支】
収支
歳入ー歳出
-1,588,650
-498,850
-132,050
【償却資産】
費
目
内
容
調達価格
耐用年数
年償却額
パソコン
周辺機器を含む
250,000
4
62,500 ★
応接セット
センターテーブル、イス4脚
150,000
3
50,000 ★
カードリーダ
5台
750,000
3
250,000 ★
計
1,150,000
備
考
備
考
362,500
【資金運用】
費
目
受入額
内
容
1年目
繰越現預金
2年目
3年目
416,850
280,500
-1,588,650
-498,850
-132,050
減価償却費
362,500
362,500
362,500
出資金
900,000
収支
補助金
県1/2
946,500
★の1/2
補助金
市1/2
946,500
★の1/2
その他
計
1,566,850
償却資産購入
支出額
280,500
510,950
1,150,000
0
0
416,850
280,500
510,950
1,150,000
その他
計
差引次期繰越額
【参考】専用事務所を設置せず,役員等の自宅で事務処理する場合
設立当初から収益事業を大きく展開できないことを考慮し,当初はリサイクルショップ,青
空市の収益事業を実施しないこととして収支の試算をしたのが,下の表である。
あつまーる収支試算表(専用事務所を設置しない場合)
【歳入】
費
(単位:円)
目
内
容
1年目
空き家管理受託収 ①月1回の風通し+災害後の見回り
入
②景観保全のための草取り(5,000円/回)
計
2年目
3年目
75,000
120,000
180,000
15,000
25,000
35,000
90,000
145,000
215,000
備
考
備
考
【歳出】
費
目
事務用品費
消耗品購入費
内
容
1年目
2年目
3年目
カラープリンタ
50,000
0
0 ★
プリンタラック
23,000
0
0 ★
FAX(家庭用)
30,000
0
0 ★
160,000
0
0 ★
50,000
0
0 ★
6,000
6,000
12,000
12,000
カード購入費(1,000枚)
各種事務用品(ポイント券印刷用紙代含む)
光熱水費
電気代
通信費
固定電話代
事務費
コピー用紙、プリンタインク代等
郵便代
-28-
6,000 あつまーる分負担
12,000
2,500
2,500
2,500
24,000
24,000
24,000
減価償却費
パソコン(周辺機器を含む)
カードリーダ(5台)
交通費
個人所有の自家用車を使用、ガソリン代負担
修繕料
カードリーダ等メンテナンス費用
計
62,500
62,500
62,500
250,000
250,000
250,000
5,000
5,000
10,000
10,000
10,000
5,000 年間で260km程度
685,000
372,000
372,000
★:イニシャルコスト
【収支】
収支
歳入ー歳出
-595,000
-227,000
-157,000
【償却資産】
費
目
内
パソコン
周辺機器を含む
カードリーダ
5台
容
調達価格
計
耐用年数
年償却額
250,000
4
750,000
3
1,000,000
備
考
備
考
62,500 ★
250,000 ★
312,500
【資金運用】
費
受入額
目
内
容
1年目
2年目
930,500
1,016,000
-595,000
-227,000
-157,000
減価償却費
312,500
312,500
312,500
出資金
900,000
繰越現預金
収支
3年目
補助金
県1/2
656,500
★の1/2
補助金
市1/2
656,500
★の1/2
その他
計
1,930,500
償却資産購入
支出額
1,016,000
1,171,500
1,000,000
0
0
930,500
1,016,000
1,171,500
1,000,000
その他
計
差引次期繰越額
-29-
8
終わりに
まちづくり協働研修という貴重な場を戴いたことに心より感謝申し上げます。経済のグローバル
化や構造改革により中山間地域への定住促進は,戦後最も困難な時期に直面しています。加えて中
山間地域は,財政状況が悪いうえに広い行政区域を抱えている市町が多く,居住地の分散は行政サ
ービスの低下と高コスト化として,住民に不満と負担を強いる要因となっています。
今回提案した企画は,若者のⅠターンをターゲットに定住人口の増加を目指すものです。しかし,
その一方で,地域からの申請主義をベースに定住施策の選択と集中を図り,居住地域の集積を誘導
することも視野に入れた企画です。適正なる過疎化として野山に帰る地域は,いずれの時代かに人
が切り開いた地域でもあります。
また、地域ボランティア通貨導入にあたっては、地域によって受委託者の需給状況や目的が大き
く異なるため、一定の方向性を提案したものです。若者や新規定住の地域の実情に応じて,受委託
作業のウェイトや具体的事業内容をご検討いただければと思います。
加えて、地域ボランティア通貨制度は、研修参加者の管内である安芸太田町上殿地域や呉市郷原
地域が適地として考えられます。この地域において実際に導入し、その成果をあらためてご報告で
きれば幸いです。
過去の取組みや各市町の状況を鑑みて、あえてハード事業に頼らず正面から交流定住促進につい
て検討を重ねたため,話題性,実効性に欠ける企画かもしれませんが,未熟な私たち 7 名がどのよ
うな経緯を経て立案に至ったのかを,末尾に企画立案の経緯として掲載してまとめとさせていただ
きます。
最後に政策立案論を体系的にご指導いただきました政策研究大学院大学教授横道清孝先生,私た
ちの研修を縁の下で支えてくださった自治総合研修センターの皆様に心よりお礼を申し上げます。
-30-
企画立案の経緯
第1章 現状と課題
1 研修参加の背景 (第1期 自治総合研修センター・H19.7.5)
私たちは,交流定住施策は観光産業以上に総合的分野で,受入体制の整備が必要な上に移住者の
要望が千差万別で,空き家バンクのようにマンツーマン型の施策は著しく効率が悪く,新規定住者からのクレ
ームへの対応等,日々交流定住施策の推進に悪戦苦闘していました。
加えて,離島や過疎地域振興対策は,国,県,市町の重要施策として多額の予算を数十年にわたり
投下するとともに,優れた諸先輩が英知を結集して取り組んでこられましたが,十分な成果を見るにいたって
いません。
私たちは,こうした状況への不安と活路を見出すため今回の研修に参加いたしました。
2 交流定住促進の視点 (第1期 自治総合研修センター・H19.7.5)
(1)交流定住対策の視点!
「数人対象の施策で人口減少に歯止めをかれるだろうか?」
「新規定住者を募るより転出に歯止めをかけるべきではないか?」
「若い人がわざわざ不便なところへ住むだろうか?」
「中山間地域と都市部では対策内容が違うのではないか?」
「単なる行政のパフォーマンスではないだろうか?」
「住宅団地の整備が最も効率的ではないだろうか?」などの視点から施策を考えことになりました。
(2)過疎高齢化の著しい中山間地域の活性化施策の視点!
「地域単位に考えると,定住施策は地域の生き残りをかけた重要な対策」
「限界集落では,今のことしか考えられないのでは?」
「地域の将来は,各地域でデザインすべきでは?」
「地域の将来デザインを行政が支援するには限界があるのでは?」
「わが子を都会に出している地域住民は,過疎高齢化の加害者でもある。将来の地域デザインの中で
定住対策に取り組めるだろうか?」
「可能であればどんな人に定住してもらいたいのだろうか?」などの視点からも施策を考えてみることになり
ました。
3 交流定住対策の推進上の課題 (第1期 自治総合研修センター・H19.7.5)
(1)移住希望者の確保
広報不足,地域間競争の激化,魅力的な特典,お試し暮らし,アフターケアーなどが十分でないため,
信州,北海道等に比べ移住を希望者する人が少ない。
(2)受け入れ環境の整備
ア 生活環境
近年,特に都市部との格差が広がり,医療・福祉・教育・交通・衛生・情報等の整備
イ 就労環境
企業誘致・自営・農林水産業・通勤等の支援
-31-
ウ 住環境
公営住宅・譲渡又は賃貸の民間不動産物件・仲介斡旋の不動産業等の整備
(3)地域の受け入れ態勢の課題
ア 農山漁村の課題
地域の慣習・地域内の意思の不徹底・転入者との意識のずれ・自分の子を都会に出していることの
負い目など。
イ 都市部の課題
古い団地での高齢化問題。郊外団地の空洞化など郊外から都心への回帰現象を起こしている都
市開発の規制緩和の弊害。
ウ 住民に対する啓発活動の課題
自治会に対する交流定住対策の周知不足,住民に対する考える場の提供,幼児期からのふるさ
と教育,子育て世代への地域の将来を考えるワークショップなど。
(4)行政の受け入れ態勢の課題
ア 受け入れ組織
定住に前向きな特定の人に頼ってしまう。また,家の増改築の相談に対して特定の業者を紹介でき
ない。一度転入者を世話すると将来にわ たって面倒を見なければならない。など,早急に財団や
NPO,まちづくり協議会の組織化が必要。
イ 内部連携
定住交流は,最も高度な総合的施策であるため,各職員における認識はあるものの具体的連携
手法が整備されていない。
ウ 地域に応じた施策
地域により生活環境,就労環境,住環境が大きく異なるため,各地域に応じた細やかな施策の展
開が必要です。転入者が増加することにより行政負担が増加する場合の行政の対応指針を早急に
示す必要があります。
4 サブテーマと今後の展開(交流は,定住に包括される) (第1期 自治総合研修センター・H19.7.5)
私たちはこうした定住対策の視点に立脚し,推進上の諸課題を考えたとき,地域住民の自助,地域との
共助が最も重要な施策であるとの結論に至りました。
地元住民の理解をどう得るか。地元住民にどのような役割を担っていただくか。行政と地域住民の連携を
どのように図るか。それぞれの役割分担を明確にし,定住希望者受け入れまでの具体的な手法をサブテー
マ『住民参加による定住施策』として掲げることにしました。
第2章 リサーチと企画検討
1 経済動向と定住
中国地方総合研究センター地域経済研究部長
(自治総合研修センター・H19.8.21)
人口減少化社会に至る以前は,過疎と過密は表裏一体の問題として取り組まれていました。この問題
は,資本主義社会においては経済活動の変遷により発生するごく一般的な社会現象で,わが国において
は,諸規制や支援策により急激な人口移動や商業資本の過大投資に規制が加えられて来ました。
しかし,経済のグローバル化や構造改革による市場原理の導入により,こうした規制が緩和されたため,こ
れからの経済動向を学び今後の定住動向を見極めるべく学習をしました。
-32-
2 先進地事例調査 (北広島町役場・H19.8.28)
北広島町は,企業誘致により広島市から北広島町へ働きに来る人が増えています。さまざまな定住施
策を展開するにもかかわらず,昼間の人口が多いという北広島町の実態を視察し「人はどんな選択をして
住む場所を決めるのか?」を考えるために視察研修を行いました。
3 具体的事業決定に対する考え方 (廿日市市役所・H19.9.10)
住民参加の定住施策を進めるにあったって,次の視点で検討を重ねました。
「住民をやる気にさせるには?」
「若い世代を中心にした推進体制を確立させるには?」
「住民が参加し展開する定住施策とは?」
この結果,地域の課題に目を向け,気づかせ,行動へと動機付けを促すために,住民同士の意識や価
値観を共有化させる施策として,現状把握,地域の将来予測,行政データの開示,行政職員による地
域担当制度等の創設が必要ということになりました。
また,地域活動の原動力となるのは,若い世代であることから PTA,消防団,商工会青年部など若者を
中心に啓発活動をすることになりました。
住民が参加し展開する施策として,空き家バンク情報の提供,お試し暮らし,都市交流,日々の暮らし
に密着した体験活動,市町の遊休施設の貸与等をから取り組んで行くことになりました。
第3章 中間報告と第三者からの指摘
1 具体的施策・事業例における課題指摘 (第2期 自治総合研修センター・H19.9.20-21)
(1)施策の整理。(時系列・段階別・分野別・実施主体別)
(2)課題設定の基本をすべての基本に。(現状分析・先進事例・政策提言)
(3)地域をいかに商品に創っていくか。(ソバ等セールスポイントになるもの)
(4)来てほしい人を地域の側からどう提案していくか。
(5)その商品を誰に,どう売るか。(ターゲットに応じた売り込み)
○ターゲットは?(退職世代,30代,新規大卒者 等)
○ 売り方は?(まずは縁作りから,その仕掛けは?)
○ 民間のノウハウをどう活かすか?(ビジネスとして成り立つように)
2 指摘事項の改善と論点の整理 (第2期 自治総合研修センター・H19.9.20-21)
(1)ターゲットは,中山間地域にⅠターンを希望する 30 代前半の人で二地域居住は対象外。
(2)ターゲットを定住させるには,治安の良さと適度な医療・福祉・教育・交通・衛生・情報等の生活環境
の整備が必要。
(3)ターゲットは,子育て世代になることから『子育てと家計に優しい相互扶助の地域づくり』として,地域ボ
ランティア通貨を核にした定住施策の展開をはかる。
第4章 企画書の作成
1 住民がやる気になる原動力 (三次市青河地区・H19.10.2)
~三次市青河町の先進地事例に学ぶ~
三次市青河町は、小学校の存続に向け地元住民が100万円ずつ出資し有限会社ブルーリーバーを
-33-
設立。若者用住宅を建設してファミリー人口の増加に成功している。その原動力と地域の状況を視察し
ました。
2 企画の具体化
(安芸太田町役場・H19.10.23
呉市役所・H19.10.25)
(1)企画書全体概要フローチャートの整理
(2)地域ボランティア通貨事業構想の検討
(3)地域ボランティア通貨事業の具体化
ア ボランティアポイント事業内容の検討
イ 収益事業内容の検討
3 企画書の編集及びプレゼンテーションの作成 (第3期 自治総合研修センター・H19.11.1-2)
(1)企画書の最終校正
(2)地域ボランティア通貨事業内容の検証
ア ボランティアポイント事業内容の整理
イ 収益事業内容の整理
4 企画の発表 (第3期 自治総合研修センター・H19.11.2)
(1)内容
ア 開会挨拶(広島県自治総合研修センター天野所長)
イ 発表(研修生全員で,パワーポイント・報告書により発表)
ウ 質疑
エ 講評(広島県交流定住促進室 西野室長・政策研究大学院大学 横道先生)
オ 閉会挨拶(広島県自治総合研修センター天野所長)
(2)聴講者
広島県地域振興部(地域振興総務室,交流定住促進室,新過疎対策推進PT),各地域事務所
企画調整課,各市町の交流定住等の職員
5 報告書の最終調整 (自治総合研修センター・H19.11.15)
発表の際の意見等を踏まえ,報告書の最終調整を行った。
-34-
政策研究大学院大学教授横道先生のコメント
・ 全国的に、団塊世代対策もあって、交流・定住促進の動きが加速し,ブームとなっているが,それを受
け入れる肝心の地域や市町がどう思い,どうなっているかについて見てみることが大切である(国や県は
煽っているだけのところもある)。
・ 都市住民をお客様として受け入れるのではなく,地域の側から来て欲しい人を明確にして,嫌な人は
断るくらいの姿勢も必要ではないか。
・
今回の提案のポイントは,次のとおり。
(1)ターゲットを、団塊世代ではなく、若年層に絞り,明確にしたこと。
(2)仕事先については,都市部への通勤でよいと割り切って,地域内に求めなかったこと。
(3)子育て支援等,行政に頼らず,地域が主体的に取り組む内容にしたこと。
・ 新しいことをやっているということや,地域内に人と人とのつながりがあること,安心して暮らせると
いうことが大きな魅力となる。
(4)一律の事業展開ではなく,地域からの申請主義としたこと(やる気のある地域が取り組む)。
・ 課題としては,ボランティアポイントが上手く流通するかということがあるが,これは、今回の一般的な提
案レベルでの検討ではなく,具体的に地域レベルで検討していくしかない。
-35-