第2章 計画の基本的な考え方

第2章
計画の基本的な考え方
第1節 計画の位置付けと基本理念
第2節 計画の基本方針
第3節 計画の体系
第4節 計画期間と他の計画との関連
第5節 計画の推進体制
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第1節
計画の位置づけと基本理念
本計画は、健康増進法第 8 条に基づき、平成 19 年 3 月に策定した「荒川区健康増進計画
(平成 19~23 年度)」を継承する健康増進計画であり、区民の健康意識を高め、一人一人
の健康づくりを支援するための指針となります。
本計画は、「荒川区基本計画~『幸福実感都市 あらかわ』を目指して~」を上位計画
とし、
区民一人一人が生涯にわたって心身ともに健康で
生き生きと暮らせるまち「生涯健康都市あらかわ」
を基本理念として、その実現をめざします 5 [図 8]。
この計画における「健康」とは、「病気で
はない、弱っていないということではなく、
肉体的にも、精神的にも、そして社会的に
も、全てが満たされた状態にあること 4」を
言います。また、健康づくり(ヘルスプロ
モーション)とは、健康を自分自身でコン
トロールできるように一人一人の能力を高
め、健康を支援する環境を整備し、健康の
向上を通じて、より豊かな生活を実現して
いくことです。[図 9]。
本計画は、区民が自分自身の健康のため
に必要なことを考え実行し、より健康な状
態で生活できる社会を創ることが目的で
す。区はその実現のために、様々な施策を
展開し、支援していきます。
図 8 「幸福実感都市 あらかわ」の 6 つの都市像
幸福実感都市あらかわ
安全安心都市
生涯健康都市
子育て教育都市
産業革新都市
文化創造都市
環境先進都市
図 9
健康づくり(ヘルスプロモーション)のイメージ
区民
【区民みんなでめざす健康づくり】
5
世界保健機関(WHO)の憲章による定義。
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第2節
計画の基本方針
計画を改訂するに当たり、5つの基本方針をあげました。
(1)大目標の設定
生涯にわたる健康は幸せな人生の礎であり、生き生きと暮らすことは誰もが願うこ
とです。自分自身が「健康状態がよい」と感じる主観的健康感 6 の研究では、主観的健
康感が高いほど、その人に病気があるかどうかにかかわらず、長生きする傾向が強く、
生活満足度も高いことが報告されています。この関連性は高齢者だけでなく、若年者
や働き盛り世代にもみられ、健康にかかわるライフスタイルや生活習慣にも影響を与
えるものであると報告されています。
荒川区の平成 22 年度世論調査においても「幸福にとって必要なことは健康であるこ
と」と区民の 8 割の方が回答しており、幸福であることと健康であることは関連して
いることが分かりました。
そのため、今期の計画では「健康状態がよいと感じる人を増やす」ことを大目標と
して設定します。
(2)
「5 年間の重点目標の設定」
❒ 糖尿病対策で健康寿命を延ばす
❒ がん対策で早世を減らす
生活機能の低下や、脳卒中の後遺症などにより介護を必要とする【要介護状態】と
ならずに、健康で元気に暮らせる期間【健康寿命】を伸ばすために、糖尿病への対策
を実施します。
また、働き盛り世代の死亡【早世】を減少させるために、この世代の死因の 1 位で
あるがんについての対策を強化します。
(3)
「予防から治療まで一貫した糖尿病対策」
糖尿病は進行すると、合併症により失明、手足の切断、人工透析となるなどQOL
(生活の質)が極端に低下し、本人の経済的負担も大きくなります。また、このよう
な状況になると、介護保険や健康保険などの社会的負担も大きくなります。従って、
今まで区が実施してきた、病気にならないための取り組み(一次予防)と共に、治療
を要する人や疾病との境界領域にいる人たちの重症化を防ぐこと(二次予防)が、喫
緊の課題となっています。
糖尿病は、薬物治療を開始してからも、飲みすぎ、食べすぎを避け、適度な運動を
行うなど、適切な生活習慣を継続しなければ治療効果を上げることができない疾患で
す。従って、糖尿病予防のための生活習慣改善は、糖尿病になってしまった後の重症
化防止や、合併症予防のためにも必要な取組であり、予防から治療まで一貫した対策
を行うことで効果をあげることが期待できます。
6
現在の健康状態についての本人の評価のことで、健康度自己評価ともいわれます。
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また、糖尿病対策は、同じ生活習慣病である脳血管疾患や心臓病にも効果があるた
め、地域における生活習慣病予防対策の中核として重点的に取組んでいきます。
具体的には、区内の医療関係機関と行政が連携して、糖尿病連絡会を設置し、糖尿
病に対する共通認識を図りながら、個人の健康づくりを総合的に支援していきます。
(4)
「早期からの健康教育」
がんや生活習慣病など病気を予防するためには、できるだけライフステージの早期
から、健康に関する知識を普及させることが大切です。
学童期は、健康をまもる基本的な生活習慣を確立させる時期で、肥満や生活習慣病
を予防する知識を分かりやすく伝えることが重要となります。子どもは、健康に関す
る教育を受けることで、自らの将来の健康を考え、更には親の健康にも目をむけるこ
とになります。その結果、家族全員が各々の健康を考え取り組むきっかけをつくるこ
とにつながります。
このように、ライフステージの早期から健康教育を開始するとともに、人生の節目
ごとにその年代にあわせた健康教育を繰り返し行うことが、生涯健康で元気に暮らす
ために重要です。この取組を実現するには、家庭、学校、企業、地域、行政とが共通
認識をもち、一体となって健康づくりの推進を図っていきます。
(5)
「一人一人にあった健康づくりを支援する幅広い情報提供と環境整備」
健康づくりは、多種多様なライフスタイルや健康観を持つ区民一人一人が主役です。
健康づくりに取り組む過程では、自分がこうありたいという健康な姿や幸福な姿「目
標」をイメージし、そこにたどり着くためには何が必要かを知って、何をすべきか「プ
ランを設計」し、それを達成するためにはどんな方法があるのか、誰にサポートを頼め
ばいいのか「手段」を選択していくことが大切です。それによって、目標とした健康
や幸福な生活を「実現」していくことができます。
荒川区は、この全ての過程において区民が「目標」を達成することができるよう、
幅広い情報提供と環境整備に努めます。また、区民とともに実効性のある仕組みづく
りに取り組み、「生涯健康都市あらかわ」の実現を目指します。
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第3節
計画の体系
平成 24 年度から 28 年度までの 5 年間は、
「早世減少」と「健康寿命の延伸=介護予防」
を実現するために、
「糖尿病対策」と「がん対策」を重点目標とし、
「減塩と食生活改善」
「運動と身体活動」「禁煙と受動喫煙防止」
「アルコール」「こころの健康づくり」「歯と
口の健康」の 6 分野を設けて施策を実施していきます。そして、これらの各分野の施策
を包括的に押し進めるために、健康づくりを支援する環境を整備していきます。
[図 10]。
図 10
計画の全体イメージ
糖尿病対策とがん対策を両輪に
生涯健康都市行きのバス「さくら」が
健康づくりを支援する環境のもと
6 分野に取り組む区民を乗せて
生涯健康都市あらかわを目指して走ります
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第4節
計画期間と他の計画との関連
この計画の期間は、平成 24 年度から 28 年度までの 5 年間とします。
本計画は、区政のすべての分野にわたって区が取り組むべき主要施策の方向性を示した
「荒川区基本計画~『幸福実感都市 あらかわ』を目指して~」を上位計画とします。
そして、区が策定する「高齢者プラン」
「次世代育成支援行動計画」などの健康に関する
分野の計画との整合性を図りながら推進していきます[図 11]。
図 11
平成
19 年度
平成
20 年度
荒川区における健康増進に関する計画の関連図
平成
21 年度
基本計画
高齢者
プラン
次世代育
成支援行
動計画
健康増進
計画
平成
22 年度
平成
23 年度
平成
24 年度
平成
25 年度
平成
26 年度
平成
27 年度
平成
28 年度
平成 19 年度から 28 年度
第3期
第4期
第5期
前期計画
(平成 17~21 年度)
後期計画
(平成 22~26 年度)
平成 19 年度から 23 年度
平成 24 年度から 28 年度
見直し
活動的な80歳を
めざして介護予防
若い世代から
の健康づくり
荒川区基本計画
健
康
増
次世代育成支援行動計画
進
家庭や地域で
取り組む
健康づくり
計
画
高齢者プラン
(1) 高齢者プランとの関係
荒川区では、高齢者の誰もが住み慣れた地域で元気に暮らし続けられるよう、
「荒川区
高齢者プラン」を 3 年に 1 度、見直し策定しています。このプランは、老人福祉法第 20
条の 8 に基づく市町村老人福祉計画と介護保険法第 117 条に基づく市町村介護保険事業
計画を含んだ計画です。
高齢期を活動的で健康に生活するためには、若い時期から健康づくりに取り組み、生
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活習慣病を予防することが重要です。そして、高齢期に入ってからも身につけた健康的
な食習慣や運動習慣を継続することで、病気や要介護状態になることを予防できます。
本計画と高齢者プランは、健康寿命の延伸、すなわち介護予防という同じ目標に向か
って、それぞれの分野で最大限の効果を上げることができるよう、相互に連携を図りな
がら取り組んでいきます[図 12]。
図 12
高齢者プランとの関係
・がん
・心臓病
・脳卒中
など
主として健康増進計画
主として高齢者プラン
生活機能低下の予防
・運動器の機能向上(転倒や骨折防止を含む)
・栄養改善
・口腔機能の向上
・閉じこもり予防と支援
・認知症予防と支援
など
加齢や心身機
能低下に伴う
危険な老化の
サインの
早期発見と
早期対処
介護予防
・糖尿病
病気の早期発見と
早期治療
健康寿命の延伸
「生活習慣病」の予防と
重症化防止
(2)次世代育成支援行動計画との関係
次世代育成支援行動計画は、
「みんなで応援 生き生き子育て in あらかわ」を基本理
念として、次世代の社会を担う子どもを育成し、又は育成しようとする家庭に対する支
援を定めたものです。次世代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育つことが
できるよう、環境整備のための施策・取組が盛り込まれています。
図 13 に示すように、健康部が実施している事業については、各目標に応じて次世代育
成行動計画の中に示されており、今後も子どもを健やかに生み育て、子どもの健康を守
る母子保健の分野については、次世代育成支援行動計画に基づき施策を進めていきます。
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図 13
〈基本理念〉 〈三つの要素〉
次世代育成支援行動計画における健康部の事業との関連
子どもの成長と
親の子育て力の
向上を支援する
地域で互い
に支え合う
地域住民が共に
支え合う子育て
活動を推進する
〈健康部の事業〉
・・・
みんなで応援
親子が自ら
成長する
いきいき子育て
すべての子育て
家庭を支援する
・親の子育て力向上へ
の支援
・母親学級
・両親学級
・在宅育児家庭など
への支援強化
・育児グループ
・子育てに関する相
談支援機能の充実
・新生児訪問
活動支援
子育てと仕事の
両立できる環境
を整備する
社会全体で
あらかわ
in
〈取組の方向性〉
〈六つの目標〉
支援する
子どもの生命を
守り、健康に育
てる
・予防接種
・平日準夜間小児初期
救急診療事業
・妊産婦健診
・乳幼児健診
・妊産婦の禁煙対策
・アレルギー予防教室
・子どもの事故予防
教室
・母親の骨密度測定の
実施
・子育てハッピー講座
・小児医療の充実
・親子の健康確保
・食育の推進
子どもの安全を
確保する
第5節
計画の推進体制
荒川区では、荒川区健康増進計画策定委員会設置要綱に基づき、学識経験者、医師会、
歯科医師会、町会、区民委員を含めた策定委員会を設置し、下記のような日程で今期計画
を策定しました。
日
程
内
容
平成 23 年 08 月 04 日
第1回
前計画の評価と基本方針
平成 23 年 09 月 14 日
第2回
体系、施策の方向性の検討
平成 23 年 10 月 27 日
第3回
施策の検討
平成 23 年 11 月 24 日
第4回
健康増進計画書素案の検討
平成 24 年 02 月 16 日
第5回
健康増進計画案について
事業の実施状況や事務事業評価、また各評価指標については、随時、各種実態調査など
を実施し、毎年度把握します。これらを、
「生涯健康都市戦略本部」及び「(仮称)健康増進
計画推進委員会」、「健康増進計画幹事会」にて、計画の進捗状況を評価し、その結果に基
づいて必要時、計画の改定を行います。
なお、平成 27 年度は、最終年度の 28 年度に向けて計画や施策の見直しを行います。
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