PET 薬剤精製自動化システムの開発 Development of the automation system for refined medicine of PET 指導教官 研究者 1.はじめに 前川公男 石川和彦 5EI23番 藤本武志 り陽子を Ni-64 に当て、Ni-64 の陽電子を放出し銅 ガンの撲滅は人類にとって大きな目標である。そ に変える。次に、6基底塩酸や 0.1 基底塩酸、水及 こで、ガンの早期発見の方法の一つとして、 びグリシンにより、繰り返し洗浄・溶解する。する PET(Positron Emission Tomography,陽電子断層撮 と、半減期がそれぞれ20分、3時間、12時間の 影法)がある。PETは正の電荷を持った電子、即ち Cu-60、Cu-61、Cu-64 の PET 薬剤が精製される。 陽電子が消滅するときに放出するガンマ線を検出す 図1は、銅のPET薬剤を精製するための制御モデ る装置である。そこで福井大学医学部では高エネル ル図である。 ギー医学研究センター内で、数年前より、PET によ りガンの診断を行っている。しかし、サイクロトロ ンで製造するポジトロン核種で標識された放射性薬 剤は超短寿命であり、迅速かつ確実な合成が必要で ある。しかも、臨床に適した安全性を確保しなけれ ばならない。そこで、PET 診断に必要な PET 薬剤 の精製を自動化する装置を開発することが研究の目 的である。 2.自動化の利点 PET 薬剤の精製を自動化することの利点は、主に 次の 6 つが考えられる。 ・ガンの早期発見・早期治療につながる ・精製担当者しか行えない複雑な操作を制御するこ とができる ・自動化することにより、精製担当者の手動ミスを 防ぐことができる 図1. システムの構想図 4.自動化システムの構成要素 精製担当者の手動で制御している箇所は、 ・シリンジポンプ ・六方バルブ ・複数箇所のソレノイドバルブ ・自動化システムは、LAN を経由して遠隔制御する である。計画しているシステムの核となる ので精製担当者の被曝の可能性が最小限になる DDU-5000Ⅱ及び六方バルブはシリアル通信で制御 ・類似品は数千万円するが、システムが完成すると する機器であり、ソレノイドバルブは、電磁石で鉄 コストが大幅に削減される 片を引き付けたり、離したりしてバルブをON/OFFする ・システムが完成すると多方面の研究者の需要によ 機構である。そのため LAN を経由してシリアル通信や り、医学その他さまざまな産業の発展につながる デジタル出力を出せるインターフェースとして、PICNIC 3.システムの概要 を使用することにした。研究材料として福井大学医学部 本研究で実施する PET 薬剤の精製は、安全性や より、シリンジポンプを制御する DDU-5000Ⅱ1台、六方 半減期が比較的長いなど扱いやすい銅の PET 薬剤 バルブ1台、ソレノイドバルブ複数個、そしてこれらを接 を精製する。精製手順はまず、サイクロトロンによ 続するテフロンチューブを提供頂いた。 5.FUJI‐PET 6.色水混合システム FUJI‐PET とは、PET 薬剤を精製するための 実際に PET 薬剤精製自動化システムを制御すると ソフトウェアであり、C 言語で開発した。ちなみ いうことを前提に、実際のシステムに似せて色水混合 に FUJI-PET の由来は開発者の藤本と PET を組 装置(図4)を組み立て、FUJI‐PET で制御し色水を み合わせ命名した。具体的な機能は以下に示す。 生成した(図5)。例として Blue の生成は4つの状態 ・PC から LAN を経由し、PICNIC のシリアルポ (図3)で考えられる。 ートから DDU-5000Ⅱを制御する ・PC から LAN を経由し、PICNIC のシリアルポ 状態 A: Magenta の吸引可能状態 状態 B: Magenta の排出可能状態 状態 C: Cyan の吸引可能状態 ートから六方バルブを制御する 状態 D: Cyan の排出可能状態 ・DDU-5000Ⅱからの応答を受信する ・六方バルブは受信の応答をしないので、 FUJI-PET から六方バルブへの送信は遅らせ るように設計 (衝突防止機能) ・PICNIC のパラレルポートを制御し、フォトM OSリレーを経由してソレノイドバルブを制 御する ・記述された手続き型プログラムを読み出して実 行する FUJI-PET の制御例 図3.Blue 生成の状態遷移図 図2.FUJI-PET で実現するシステム図 図2において、液 A を容器 B に移動させるコ マンドは以下の手順である。 1.> svtUv …DDU-5000Ⅱから va までの空気が排除されたら 図 4.色混合装置の外観図 図5.実行例 7.まとめ 研究は材料不足のため簡単なプロトタイプの 製作と動作確認にとどまった。システムの完成を 2.へ。 今年の研究で果たせなかったことに悔いが残る 2.> StvUv が、この研究を引き継ぐことになる研究者に、P …DDU-5000Ⅱから va までの液体が液 A なら 3. ET薬剤精製自動化システムを完成させて欲し へ。 い。 3.> StvUav 8.参考文献 …DDU-5000Ⅱから液 A を吸引し容器 B へ排出す 「高エネルギー医学研究センター年報2000」 る。 福井医科大学(H13年12月1日発行)
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