オーストラリアの食品産業と日豪経済連携協定による関税恩恵 2015 年 12 月 日豪経済連携協定(JAEPA)とオーストラリアの食品産業 日豪の首相は 2014 年 7 月 8 日、日豪経済連携協定(JAEPA)に正式に署名しました。この協定は、日豪両国 の社会や経済をより緊密にすると共に、オーストラリアと日本に利益をもたらし、投資や貿易の機会のさらな る創出により経済成長を生み出します。2015 年 1 月 15 日に発効後、食品・飲料商品の大半が関税の即時撤廃 もしくは段階的な削減の恩恵を受けています。新会計年度を迎えた 2015 年 4 月 1 日からは既に 2 年目の関税 率が適応されています。 今後さらに TPP が発効すれば世界の GDP の 4 割近くを占める巨大な自由貿易圏が誕生します。これにより、 貿易と投資は拡大し、日豪の経済関係は更に活性化され、域内の経済成長に資する好循環が生まれます。TPP が発効すれば、発効済みの JAEPA に加えオーストラリア産の高品質な商品がさらにお求め安くなり、数多く流 通されることとなるでしょう。 JAEPA の恩恵を最大限にご活用いただくために、オーストラリアの食品産業の最新情報と各商品カテゴリーが 受ける JAEPA のメリットを下記にご紹介いたします。 1. 畜産物 オーストラリアの日本向け輸出 牛肉 2015 年 1 月より 10 月までの日本への牛肉輸出は 211, 999 トン、前年同日月と比較してほぼ同じペースで推移 しています。一方で 1 月 15 日より発効した日豪経済連携協定(JAEPA)の影響により 3 月 31 日までの第一四 半期のチルド牛肉の輸入量がセーフガードの発動基準を超えました。また特筆すべきはグレイフェッドの比率 が 50%を超えたことであり、13%増の 10 万 3 千トンにのぼり、これは内臓肉の輸出増にも貢献しました。 JAEPA 締結 2 年目の割当枠は 17400 トンですが、第三四半期を終えて、94%の消化率です。 豚肉 日本は世界でも有数の豚肉輸入国でありながら、オーストラリア産の豚肉の本年度 10 月までの関税枠を利用し た輸入量は 364 トンでした。周知のようにアメリカ、カナダ、デンマーク、メキシコ産と比較しても、生産量、 価格共に、大きな開きがあり、JAEPA による従価税の低減(4.3%から 2.2%)も現在の所、影響は小さいとい えます。豚肉加工品においては牛肉と豚肉のミンチをオーストラリア国内でミックスしたものが長年にわたり 輸入されています。価格面での競争は JAEPA および TPP が正式に発効しても困難が予想されるものの、オー ストラリアが長年に渡り培ってきた、食の安全、安心を全面に押し出したマーケティングが期待されています。 鶏肉 日本国内の昨年度の鶏肉の消費量は 2,226,000 トンであり国内生産は 1,365,000 トンでした。輸入については 80%以上をブラジルから、残りはタイとアメリカが占めています。また鶏肉加工品は中国とタイがほぼ日本マ ーケットを二分していますが、中国産鶏肉加工品の安全性問題が浮上したことで総輸入量が 6%減少、中国の 輸出量は 27%減少し、一方でタイの輸出量が増加しました。 オーストラリアから日本への鶏肉製品の輸出は本年度 6 月以降に冷凍ホールチキンが急激に増加しました。 昨年度の輸入実績 0 に対し、771 トンであったことの背景にはアメリカの鳥インフルエンザの影響があると考 えられます。一方 鶏肉の関税割当は本年度 56 トンであり、771 トンの輸入は遙かに枠を超えるものですが、 関税割当を利用した取引は 10 月 29 日の時点で 17 トンでした。 (参考文献:オーストラリア政府統計局 ABS 輸出データ、オーストラリア政府農林水産省) Australian Trade Commission Document title > 1 日豪経済連携協定(JAEPA)発効後の関税率の推移 牛肉冷蔵冷凍品 関税率表番号 品名 基準税率 (現行) 発効初年度+R5* (最終的な税率) 0201 牛肉(生鮮のものおよび冷蔵したものに限る) 0201.10.000 枝肉および半丸枝肉 38.50% 32.5%(15 年目以降は 23.5%) 0201.20.000 その他骨付き肉 38.50% 32.5%(15 年目以降は 23.5%) 0201.30.010 ロインのもの 38.50% 32.5%(15 年目以降は 23.5%) 0201.30.020 かた、うでおよびもものもの 38.50% 32.5%(15 年目以降は 23.5%) 0201.30.030 ばらのもの 38.50% 32.5%(15 年目以降は 23.5%) 0201.30.090 その他のもの 38.50% 32.5%(15 年目以降は 23.5%) 0202 牛肉(冷凍したものに限る) 0201.10.000 枝肉および半丸枝肉 38.50% 32.5%(15 年目以降は 23.5%) 0202.10.000 枝肉および半丸枝肉 38.50% 30.5%(18 年目以降は 19.5%) 0202.20.000 その他骨付き肉 38.50% 30.5%(18 年目以降は 19.5%) 0202.30.010 ロインのもの 38.50% 30.5%(18 年目以降は 19.5%) 0202.30.020 かた、うでおよびもものもの 38.50% 30.5%(18 年目以降は 19.5%) 0202.30.030 ばらのもの 38.50% 30.5%(18 年目以降は 19.5%) 0202.30.090 その他のもの 38.50% 30.5%(18 年目以降は 19.5%) *R5:JAEPA 発効の後 5 年目の年に見直しを行うことが定められています。 日豪経済連携協定(JAEPA)関税割当 二年目の関税割当 (トン) 品名 利用数量 (2015 年 10 月 29 日現在) 未使用枠割合 (%) 申請数 牛食用のくず肉 17,400 12,960 25.5 3,113 豚肉 7,280 335 95 23 鶏肉 56 17 68.9 4 ソーセージその他これに類する物品 1,420 50 96.48 13 2,366 57.7 145 その他の調製をし、または保存に適する処理を 5,600 した肉、くず肉および血 牛食用のくず肉の JAEPA 関税割当の利用状況 Quarter 1 関税割当数量 Quarter 2 (2015 年 10 月 29 日現在) Quarter 3 Quarter 4 年間トータル 4,350 4,350 4,350 4,350 17,400 申請数量(トン) 4,341 4,359 3,608 0 12,308 利用率(%) 99.8 100 83 0 70.8 (トン) Australian Trade Commission 2 2. 水産物 オーストラリアは天然ものと養殖水産物の漁獲に「環境面で持続可能な手法」を用いることで、安全で良質な 水産物の産地として世界から認められています。天然ものの水揚げ量は安定しているものの、潜在供給量にま で到達した感がある一方、水産養殖は国内・海外市場の需要に対応するため、生産を増やしています。 サーモン: 養殖サーモンは最大の養殖品目です。水産養殖全体の生産総額の 43%を占めています。タスマ ニア産養殖サーモンが日本に輸入され始めてから 20 年以上経ち、その品質は高く評価され、日本市場の強い需 要に対し、供給確保が追いつかない状態が長く続きました。2015 年後半には、日本に輸出可能な供給量が改善 され、過去最高の輸出量が見込まれています。 ウナギ: 肉厚で脂分が多く、やわらかいのが特徴のタスマニア産天然うなぎです。生息水域は飲料水と しても使用される恵まれた環境で、タスマニア州内陸水産管理局が主体となり、ライセンス制度の導入や稚魚 の放流を通じ、天然資源を保護しています。日本に輸入されるようになって 7 年経ち、安定して量を増やして います。蒲焼専門店への販売が確実に増えています。 オイスター: 総生産量 2 億個の 97%は、殻付きで流通され、レストラン・小売店にてハーフシェルで販売さ れます。主な養殖品種であるマガキ(Pacific Oyster) は戦後日本からタスマニアに持ち込まれたものが起源です。 タスマニア、南オーストラリアで発達した養殖技術は、世界で最も進んだものと評価され、日本ではオイスタ ーバーでの販売が伸びています。 マグロ: ミナミマグロ蓄養産業は、オーストラリア大陸南岸のポートリンカーンを拠点としています。 総生産量は約 75,000 トンで水産業合計の 30%を占めています。「美波そだち」ブランドは、業界や消費者に 広く認識されるようになりました。一方、キハダマグロとメバチマグロなどの天然マグロは、漁獲量の約 4 分 の 3 は日本を含める海外市場に出荷されます。 ロブスター: ウエスタン・ロックロブスター(西オーストラリア)とサザン・ロックロブスター(南オーストラ リアとタスマニア)の 2 品種が漁獲されています。従来はウエスタン・ロックロブスターが生産総額の約 6 割を 占めていましたが、増加傾向にあるサザン・ロックロブスターにシェアを譲りつつあります。 アワビ: 主に天然のブラックリップ、養殖のグリーンリップの 2 品種ががあります。タスマニア州は国 内総生産量の 55%を占め、世界でも最大級の漁場のひとつですが、ヴィクトリア州と南オーストラリア州でも 漁獲されます。輸出の 6 割は香港・中国・日本向けです。 日豪経済連携協定(JAEPA)と発効後の関税率の推移 以下の商品は、日豪経済連携協定により、関税が撤廃、軽減される水産物の一部です。(形状などにより適用関 税が異なる場合がありますので、該当する HS コードにて下記「JAEPA 特恵税率」ツールなどでご確認下さ い。) 商品 JAEPA 発行前の関税 JAEPA 発行後の関税 ロブスター 1.0% 即時撤廃 エビ 1.0% 即時撤廃 キハダマグロ 3.5% 即時撤廃 アワビ 7.0% 即時撤廃 Australian Trade Commission 3 オイスター 7.0% ウナギ 3.5% 初年度から段階的に削減 2019 年に完全撤廃 トラウト 3.5% 初年度から段階的に削減 2024 年に完全撤廃 ミナミマグロ 3.5% 5% 3.5% 2016 年から段階的に削減 2024 年に完全撤廃 2019 年から段階的に削減 B10* 2024 年に完全撤廃 サーモン 即時撤廃 3. 野菜・果物 オーストラリアは、安全性が高く病気に感染する心配のない産地として、国際的な評価を得ています。広大な 国土と多様な気候の中で、オーストラリアでは多品目の農作物が栽培されています。南半球の他国の生産地域 に比べ輸送時間が短く、鮮度と品質の高いの農作物をお届けできます。 オーストラ リアの園芸作物の生産量は金額ベースでは食肉と穀物に次いで 3 番目に大きく、主な栽培地域は ヴィクトリア(VIC)州の Murray River 周辺地帯, ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州の灌漑エリア、両 州境の Sunraysia, 南オーストラリア(SA)州の Riverland(ミバエ・フリー認定地域)、タスマニア(TAS) 州集(ミバエ・フリー認定地域)、そして西オーストラリア(WA)州南西部です。これらの地域は水源が豊富 で肥沃な土壌を有しています。気候の違いなどから栽培される作物は各州で異なります。 主な例として、亜 熱帯の QLD 州ではマンゴ、パイナップル、ブロコッリー、かんきつ類、マカダミアナッツなど、東海岸では、 多種類の野菜・果物、そして冷涼な TAS 州ではチェリー、りんご、そばの実やわさびなどが有名です。 オーストラリアの野菜・果物の輸出 2014-2105 年度(豪州会計年度ベース 7 月~6 月)のオーストラリアの実行関税率表第 7 類の輸出総額は約 12 億 2690 万豪ドルで、前年対比 13%増でした。うち日本向けは約2%の約 2 千 300 万豪ドルでした。同年の 輸出数総量は約 160 万トンで、日本向け輸出量は 1 万トンでした。日本向けに輸出されている主な野菜は、ア スパラガス、たまねぎ、にんじん、マッシュルーム、トリュフ、ブロッコリー、セロリ、芽キャベツなどです。 2013-2104 年度(豪州会計年度ベース 7 月~6 月)のオーストラリアの実行関税率表第 8 類(ナッツ類含む) の輸出総額は約 11 億 6989 万豪ドルで、前年対比 13%増でした。うち日本向けは約 4.9%の約 5 千 690 万豪ド ルでした。オーストラリアの 8 類の輸出総額は過去 5 年から毎年顕著に増加しており、日本をはじめとするア ジアやアメリカが主な輸出相手国です。日本向けに輸出されている主な果物は、ネーブルオレンジ、バレンシ アオレンジ、マンダリン、マーコット、その他の柑橘類、食用ぶどう、マンゴー、サクランボです。 (参考文献:オーストラリア政府統計局 ABS 輸出データ) <主な野菜の出荷時期と生産地域> アスパラガス 出荷時期 10-12 月。輸出量全体の 85%以上が日本向けであり、その殆どは VIC 州から供給さ れています。UC157F1 品種が大半を占めますが、近年では少量ベースでのホワイトアスパラ ガスの輸出もスタート。 にんじん 出荷時期 2-7 月。主産地は、SA 州、TAS 州、WA 州、VIC 州。日本向けには TAS 州と WA 州産。 たまねぎ 出荷時期:3-7 月。主産地は SA 州と TAS 州であり、この 2 州の合計はオーストラリアの全 生産量の約 2/3 に相当。輸出用のたまねぎの大半は TAS 州産で、主な供給先は EU と日本とア ジア ブロッコリー 出荷時期:5-9 月。主産地は QLD 州、NSW 州、VIC 州。関税撤廃の恩恵を受け、2015 年は 日本へ輸出。約 10 年ぶりの輸出。価格は若干割高ではあるが、品質と鮮度は良く市場の評価 高い。 トリュフ 出荷時期:6-8 月。主産地は TAS 州と WA 州。ヨーロッパ産と同品種の黒トリュフを輸出。 <主な果物の出荷時期と生産地域> かんきつ類 出荷時期:5 月~11 月。主産地は SA 州、VIC 州、NSW、QLD 州。日本に輸出されている主な 種類は、ネーブル、バレンシア、マンダリン、ハニーマ-コット、グレープフルーツ。 食用ブドウ 出荷時期:2 月~5 月。主産地は、VIC 州が輸出の 90%を占めます。トンプソンシードレス、ク リムゾンシードレス、レッドグローブの 3 品種のみ輸入可能。 マンゴー 出荷時期:1 月~2 月。QLD 州が主な産地で、日本に輸出可能なのは蒸熱処理済み (Vapor Heat Treatment: VHT) のものに限定。ケンジントンプライドとケイト品種がメイン。 サクランボ 出荷時期:12 月後半~2 月。TAS 州産のみ輸入可能。日本品種の佐藤錦・紅秀峰も栽培。 Australian Trade Commission 4 日豪経済連携協定(JAEPA)と発効後の関税率の推移 関税即時撤廃 品目 段階的削減 品目 毎年 4 月 1 日 より新税率 適応 <野菜> アスパラガス、人参、マッシュルーム、トリュフ、ブロッコリ、キャベツ、レタ ス、エシャロット、ネギ、たまねぎ(課税価格が 1kg につき 73 円 70 銭を超えるもの) <果物> マンゴー、サクランボ(TAS 州のみ)、レモン、ライム、クランベリー(TAS 州の み) たまねぎ (課税価格が 2015 年 4 月 1 日(5.7%)→ 2016 年 4 月 1 日(4.3%)→ 1kg に つ き 67 円 以 2017 年 4 月 1 日(2.8%)→ 2018 年 4 月 1 日(1.4%)→ 下) 2019 年 4 月 1 日より無税 たまねぎ(課税価格が 1kg につき 67 円を超 え、73 円 70 銭以下) 上記税率もしくは 2015 年 4 月 1 日 (課税価格 73.70 円) x4/6/kg のうちいずれか 低い税率、2016 年 4 月 1 日上記課税価 x3/6/kg のうちいずれか低い税率、2017 年 4 月 1 日上記課税価格 x2/6/kg のうちいずれか低い税率、2018 年 4 月 1 日上記 課税価格 x1/6/kg のうちいずれか低い税率、2019 年 4 月 1 日より無税 冷凍野菜 HS 071090080 オレンジ HS 080510000 6 月 1 日~9 月 30 日分 マンダリン HS 080520000 2015 年 4 月 1 日(3%)2016 年 4 月 1 日(1.5%)2017 年 4 月 1 日より無税 グレープフルーツ り ん ご ( TAS 州 の み) ぶどう 3 月 1 日~10 月末 ぶどう 11 月 1 日~2 月末 2015 年 4 月 1 日(13.1%)→(11.6%)→(10.2%)→(8.5%)→(7.3%) →(5.8%)→(4.4%)→(2.9%)→(1.5%)→ 2024 年 4 月 1 日より無税 2015 年 4 月 1 日(15.9%)→(14.9%)→(13.8%)→(12.8%)→ (11.7%)→(10.6%)→(9.6%)→(8.5%)→(7.4%)→(5.3%)→ (4.3%)→(3.2%)→(2.1%)→(1.1%)→ 2029 年 4 月 1 日より無税 2015 年 4 月 1 日(6.7%)→(5%)→(3.3%)→(1.7%)→2019 年 4 月 1 日 より無税 2015 年 4 月 1 日(6.8%)→(5.6%)→(4.5%)→(3.4%)→(2.3%)→ (1.1%)→ 2021 年 4 月 1 日より無税 2015 年 4 月 1 日(13.9%)→(12.4%)→(10.8%)→(9.3%)→(7.7%) →(6.2%)→(4.6%)→(3.1%)→(1.5%)→2024 年 4 月 1 日より無税 2015 年 4 月 1 日(5.9%)→(4.9%)→(3.9%)→(2.9%)→(2%)→ (1%)→2019 年 4 月 1 日より無税 4. ナッツ オーストラリアは様々なナッツを栽培してる南半球最大の産地であり、時差が 1 時間程度、季節が逆であると いうユニークなビジネス環境にあります。オーストラリアの消費者は健康志向からナッツをおやつ代わりに食 べることが多く、ナッツバーやシリアルバー、またはチーズにミックスされた加工食品も数多くあります。 オーストラリアは世界最大のマカダミアナッツ生産国です。年間生産量は 47,000 トンで、世界のマカダミアナ ッツ生産量の 28%を占めています。生産量は過去 20 年で 3 倍に成長しています。輸出の需要も年々伸びてお り、日本はオーストラリアにとって最大のマカダミアナッツ輸出国となっています(1)。 オーストラリアのアーモンド業界は急速に成長しており、生産量は米国に続き世界第 2 位となりました。2014 年の生産量は、65,060 トンで 2018 年まで生産量は拡大すると予想されています。主な品種は、ノンパレル (50.5%)、カーメル(31.6%)、プライス(11.8%)の 3 種類です(2)。 くるみの生産量は、6,840 トン(2013 年)で今後も拡大すると予想されます。約 70%が輸出されており、その ほとんどが殻つきのまま出荷されます(3)。生産量の拡大とともに輸出量も増加することが見込まれます。 栗の生産量は、現在 1,500 トン。2,020 年までに 2,000 トンまで増加すると予想されており(3)、日本への輸出も 拡大することが期待されます。この他ピスタチオ、ヘーゼルナッツも 1,500-2,000 トン程度生産しています。 (1) 出典: Australian Macadamia Society (2)出典: Almond Board of Australia (3)出典: Australian Nut Industry Council Australian Trade Commission 5 5. ドライフルーツ 現在、オーストラリア産レーズンの日本への輸入が増加しています。サルタナだけではなく、オーストラリア ならではのサンマスカットレーズンも主力輸出品目となってきています。枝付レーズンは 3 品種、カラントも 品質の高いものが日本に入荷されつつあります。他のドライフルーツに関しては現況生産量は限られています が、プルーンやブルーベリーは少しずづ増産され、これから海外市場に向けて輸出の可能性を秘めています。 オーストラリア大陸は亜熱帯気候、乾燥気候、地中海性気候、海洋性気 候といった地域により異なる気候を持っているため、同国内で多品種の 果実を生産することができます。例えば北部ではパパイヤやマンゴー、 南部ではイチジク、リンゴやプルーンといった、日本でも馴染みがあり、 ドライフルーツとしても需要の高いフルーツを全て供給することが出来 ます。今後は日本が求める需要とリクエストに応えながら、様々なドラ イフルーツを供給できる国として発展することが期待されています。 日豪経済連携協定(JAEPA)と発効後の関税率の推移 ナッツはスーパーフードと称されることもあり、近年日本ではその栄養素と健康効果に注目が集まっています。 ナッツに含まれるオレイン酸がコレステロール値を低下させる働き、豊富な食物繊維とビタミン、腹持ちが良 くダイエットにも効果的、といった情報は美容と健康に関心の高い消費者に限らず多くの一般消費者にも広く 知られるところとなりました。ナッツやドライフルーツの消費者向けの販路も拡大しており、スーパーは勿論、 100 円ショップにおいても量目と金額が指定された商品、プライベートブランド品の販売が好調です。この傾 向は年を追うごとに広がりを見せていることから、オーストラリアは自国の消費のみならず輸出拡大に積極的 になっております。JAEPA をご活用いただくことで、今後益々日本の皆様に更にお求めやすい価格で高品質な 商品をお届けできるようになりました。 商品 収穫時期 主産地 マカダミア ナッツ アーモンド 3-9 月 NSW 州、QLD 州 2-4 月 くるみ 3-4 月 栗 JAEPA 発行前 15 年 4 月 JAEPA 発行後 5% 0% 即時完全撤廃 VIC 州、SA 州 0-2.4% 0% 即時完全撤廃 10% 5% 6 年目より撤廃 3-6 月 NSW 州、TAS 州 shuu) VIC 州北東部 9% 7% 11 年目より撤廃 ピスタチオ 2-4 月 VIC 州、SA 州 0% 0% ヘーゼル 3-4 月 NSW 州北以南 6% 0% 即時完全撤廃 レーズン 3-4 月 VIC 州、SA 州 1.2% 0% 即時完全撤廃 9% 0% 即時完全撤廃 ベリー 12-4 月 NSW,VIC,SA,WA,TAS 州 業界団体 Australian Nut Industry Council: http://nutindustry.org.au/html/s01_home/home.asp Australian Macadamia Society: http://www.australian-macadamias.org/industry Almond Board of Australia: http://australianalmonds.com.au/ Australian Walnut Industry Association: http://www.walnut.net.au/ Chestnuts Australia: http://www.chestnutsaustralia.com.au/ Dried Fruits Australia: http://www.driedfruitsaustralia.org.au/ Australian Trade Commission 6 6. 加工食品 安全性・美味しさを追及した高品質の食品 オーストラリアは小麦、大麦、砂糖、乳製品、牛肉、羊肉などの主要農産物の生産者としてその存在感を高め てきました。またそういった原料確保が容易なことから優れた加工食品・飲料を製造することで国際市場でも 認知されています。オーストラリアの加工食品産業は、良質な原材料を国内の大規模な農水産業分野から安価 に調達し、小売からフードサービス、食品ブランドが求める優れた製品に加工して国内はもとより世界各国に 供給しています。 オーストラリアの加工食品や飲料の多くが消費地である都市部の近郊で生産される一方、原料である農作物の 生産地の近くに生産拠点を持ち、地方産業を支える有力企業もあります。オーストラリアの加工食品産業はま た、変化する消費者のニーズに応えるため、最新の食品加工技術と生産プロセスを取り入れています。スティ ックタイプの少量パックや常温保存可能な殺菌レトルトパウチなどの包装技術、スピーディでタイムリーな輸 送を可能にする無線周波数識別タグや自動仕分機などがその一例です。また外資系ホテル、レストラン、ケー タリングといった販路(HORECA)には、鮮度、栄養価、機能性が高くオーガニックやハラールなどの特殊な需 要にお応えする加工食品を提供しております。 豪州・ニュージーランド食品安全局(Food Standards Australia New Zealand=FSANZ)は原料、加工助剤、 着色剤、添加物、ビタミンやミネラルなどの使用を規制する共通の食品安全基準を定めております。また乳製 品、肉類、飲料のみならず、遺伝子組み換え食品などといった新技術によって開発された食品についても食品 安全基準を設けております。さらに特定の食品に関する表示義務基準を定めております。 ケース 1:ベーカリー、シリアル、菓子類メーカー ベーカリー、シリアル、菓子類はオーストラリアの加工食品の総生産額の 20%を占めます。特にオーストラリ アのベーカリー・シリアル・菓子業界では、グルテンフリー・オーガニック・減塩・低糖・低脂肪・機能性と いった最新トレンドに対応しており、十分な専門知識と輸出経験を持っています。具体的な商品はシリアル、 米粉ブレンド、チーズケーキミックス、ドーナツブレンド、パンミックス、ピザブレンド、フォッカチャミッ クス、ブロックチョコレート、ヨーグルトパウダー、冷凍生地、パン酵母など多岐に渡ります。 ケース 2:家族経営の小麦粉製粉業者 小麦粉製粉業 A 社は食品メーカーや家庭向けに特別な配合の小麦粉やミックスを提供しております。家庭料理 のブームの再燃を受けて、チャバータ、スコーン、フラットブレッド、ピザ、フォッカチオなどといった多岐 に渡る家庭向けミックスを提供しております。これらはオーストラリアの有機認証機関である NASAA の認証 を受けたオーガニックの食品として、英国、ニュージーランド、韓国、中国、香港そしてシンガポールなどに 輸出されております。 ケース 3:素材重視のジャム・ソース 自社農場で 40 年以上に渡りジャム、ソース、調味料を製造する B 社は、シンガポール、中国、日本、その他 の東南アジアを含む 24 ヶ国に輸出を行っています。60 種類以上のレシピから作られた製品は、14g から 1000kg にまで渡る 7 種類のパッケージに梱包されます。また食材の鮮度・色・香りにこだわりをもち、自社苺 農園から選定された果物を原料に使用しております。 ケース4:ソース、グレービースパイスメーカー C 社は本物志向の自家製・自然派のフレーバーとレシピを消費者、カスタマーにお届けすることで成長を遂げ てきました。特に、インドカレーソースのリーディングカンパニーとして、メルボルンとブリズベーンで製造 された製品をアジア、アメリカ、英国に輸出しています。 Australian Trade Commission 7 日豪経済連携協定(JAEPA)と発効後の関税率の推移 オーストラリア産日本向け主要加工食品の JAEPA 特恵関税率は下記の通りです。 輸入量 (Kg) HS コード 製品群名 090220200 151411100 180620290 180631000 2015 年 4月1日 より 2016 年 4月1日 より 2017 年 4月1日 より 2018 年 4月1日 より 2019 年 4月1日 より 17% 13.9% 12.4% 10.8% 9.3% 7.7% 407,120 10.90 円/kg 8.92 円/kg 0% 7.93 円/kg 0% 6.94 円/kg 0% 5.95 円/kg 0% 4.95 円/kg 0% 2,797,885 1,964,650 21.3% 177,795 125,055 10% 9.6% 9.5% 9.3% 9.1% 8.9% 2015 年 6 月まで 2014 年 6 月まで 緑茶 338,658 323,077 植物性油脂 3,222,422 チョコレートその他の ココアを含有する調製 食料品(重量が 2kg を 超えるもの) チョコレートその他の ココアを含有する調製 食料品(重量が 2kg 以 下の詰物をしたもの) JAEPA 関税率 WTO 関税率 関税割当数量内の税率 190410010 朝食用穀物調製品 510,324 566,512 11.5% 8.1% 8.1% 8.1% 8.1% 8.1% 190590312 ビスケット類 57,406 39,900 15% 14.5% 14.2% 13.9% 13.6% 13.4% 190590329 ビスケット類 調製したトマト(全形 のもの及び断片状のも の) 84,073 81,322 21.3% 20.5% 20.1% 19.7% 19.3% 19.0% 127,711 55,286 9.0% 6.0% 4.5% 3.0% 1.5% 0.0% 200969210 ぶどうジュース 557,968 598,044 19.1% 12.7% 9.6% 6.4% 3.2% 0.0% 200990220 混合野菜ジュース 966,398 619,920 5.4% 3.6% 2.7% 1.8% 0.9% 0.0% 2,700,789 2,724,591 7.2% 4.8% 3.6% 2.4% 1.2% 0.0% 1,246,202 1,712,760 8.4% 5.6% 4.2% 2.8% 1.4% 0.0% 200210000 210390130 210410020 その他のソース、調製 食料品 その他のスープ、ブロ ス、調製品 7. ワイン オーストラリアは、ヨーロッパを覆うほどの広大な国土の中で、その多様な気候を 反映した 65 の認定産地があり、2,500 弱のワイナリーがワインを醸造しています。 ブドウ栽培に適した地域に限っても、地中海性気候、大陸性気候、海洋性気候と多 岐にわたり、150 以上の品種が栽培され、多様性がオーストラリアワインの最大の 魅力です。 歴史という観点でもオーストラリアの地質の古さは無視できません。世界の 7 大陸 のなかで、オーストラリアの地質は最も古い 5 億年前に形成されたものです。南オ ーストラリア州のバロッサ・ヴァレーにはフィロキセラ害虫を免れた自根の樹齢 150 年を超えるシラーズやグルナッシュの古木があり、現在もそのブドウからワイ ンが造られています。オーストラリアのワイン造りは 1788 年にブドウの樹が持ち込 まれたことに端を発し、現在に至りますが、自由にブレンドを許されたワイナリー は彼らがそれぞれ目指す最高峰のワインを造るため、伝統に新しい技術を取り入れ 彼らが目指す最高のワインを世界中に届けるため取り組んでいます。 Australian Trade Commission 8 その結果として現在世界中でオーストラリアワインは高く評価されています。イギリスでは輸入ワインのシェ ア 1 位、アジアのグローバル都市、香港では 2 位、シンガポールでも 2 位です。日豪経済連携協定の恩恵を受 け、日本国内でもこれからますます多数のオーストラリアワインが販売されることを期待しています。 オーストラリアのワイン輸出状況・2015 年醸造量 2014 年の輸出量は 725 百万リットルでした。主な輸出相手国は価格ベースで、アメリカ 24%、イギリス 20%、 中国 11%、カナダ 9%、香港 7%。日本は 9 番目の輸出相手国で全体の輸出量の 2%ほどです。日本国内では 6 位 4%弱のシェアを持っています。日豪経済連携協定の実施後、2015 年 3 月は前年同月比 32%増、7月に至 っては 62%強の輸出がありました。(数量ベース/Australian Bureau of Statistics) 2015 年のオーストラリアワインの生産量は 1670, 000 トン (Winemaker’s Federation of Australia July 2015) 、 州別の醸造量は南オーストラリア州 32.3%、ビクトリア州 26.7%、ニューサウスウェールズ州 18.5%、西オー ストラリア州 14.1%、クイーンズランド州 5.6%、タスマニア州 2.1%です。主な赤ワイン品種はシラーズ、次 にカベルネソーヴィニヨン、メルローと続きます。シラーズは赤ワイン品種の全体醸造量の 47%を占めます。 白ワインの主要品種はシャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ピノグリ、ピノグリッジオで、白ワイン全体の 45%をシャルドネが占めています。 8. シードル オーストラリア国内でシードルの市場規模は 2014 年 94 百万リットルで前年比 11% の伸長でした。シードルの需要は増え続けると想定されており、2019 年に向けて 6%の拡大、128 百万リットルに到達することが見込まれています。オーストラリア 国内における輸入品と国産品の割合は 50%50%で、22 の主なブランドが 90%のシ ェアを持っています。残りの 10%は小規模の生産者のこだわった商品ですが、クラ フトビール等の人気と同様、こだわりのシードルブランドも注目を浴び、レストラ ンやバー、カフェのリストにはもちろん、スーパーの棚にも数多くのシードルが並 ぶようになりました。(Euromonitor International Sep 2015) 日豪経済連携協定によって関税の恩恵を受ける商品としても注目できます。日本国 内ではオーストラリアのシードルを目にする機会が少ないですが、今後成長が見込 めるこの商品群に JAEPA の関税恩恵を利用して有力なオーストラリアシードルの輸 入販売を始められてはいかがでしょうか。 日豪経済連携協定(JAEPA)と発効後の関税率の推移 HS Code Descripti on Tariff Rate Before JAEPA 15 Jan 2015 1 2015 Apr 1 Apr 2016 1 2017 Apr 1 2018 Apr 1 2019 Apr 1 2020 Apr 1 2021 2204.29 Bulk Wine 45 yen/ℓ 0.0% 2204.21 Bottle Wine 15% or 125yen/ℓ 11.30% or 125yen/ℓ 9.40% or 125yen/ℓ 7.50% or 125yen/ℓ 5.60% or 125yen/ℓ 3.80% or 125 yen/ℓ 1.90% or 125 yen/ℓ 0.0% 2204.10 Sparkling Wine 182yen/ℓ 13.10% or 125yen/ℓ 159.25yen /ℓ 136.5yen/ℓ 113.75yen/ℓ 91.0yen/ℓ 68.25yen/ℓ 45.50yen/ℓ 22.75yen/ℓ 0.0% 2206.00.229 Cider 42.4yen/ ℓ 35.3yen/ ℓ 28.3yen/ ℓ 21.2yen/ ℓ 14.1yen/ ℓ 7.1yen/ ℓ 0.0% Apr *一部情報提供協力:ワインオーストラリア Australian Trade Commission 9 JAEPA に関する情報 <JAEPA 特恵税率> 上記にご紹介させていただいた商品カテゴリ以外でも JAEPA による減免税を適用できるアイテムは数多くあり ます。上記以外の特定品目の JAEPA 特恵関税率は下記日本税関のホームページにてご確認下さい。 http://www.customs.go.jp/kyotsu/kokusai/gaiyou/au/au_staging201501.pdf(HS コード入力) また、オーストラリアの外務省が各品目の特恵税率をオンラインで簡単に確認できるツールを作成しました。 こちらも合わせてご活用ください。 https://ftaportal.dfat.gov.au/ (HS コード又は商品名を英語で入力すると、関税率その他申請に関する情報が表示されます。全て英語ですが、 使い方は簡単です。) <協定の概要> 日本外務省のリンクをご参照ください http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000044357.pdf <日豪 EPA 原産地申請手続き> オーストラリアからの貨物の輸入に対し、JAEPA 特恵税率を受けるには当該輸入貨物がオーストラリアの原産 品であることを証明する手続きが必要となり、手続きの方法は 2 つあります。まず一つは、輸出者が輸出国の 発給機関に依頼し原産地証明書を発行してもらう第三者証明制度、もう一つは輸出者、生産者又は輸入者が自 ら原産品申告書を作成する自己申告制度です。後者の場合は、原産地証明書の取得が不要というメリットがあ ります。自己申告制度の手引きも含めた詳細情報は、財務省関税局・税関の下記サイトをご参照ください。 http://www.customs.go.jp/news/news/jikoshinkoku/index.htm お問い合わせ オーストラリア大使館マーケティング事務所(オーストラリア貿易促進庁・オーストレード)は、札幌領事館、大阪 総領事館、福岡総領事館と合わせて全国 4 か所に事務所を構え、オーストラリアからの商品・サービスの輸入、また はオーストラリアへの投資をご検討される日本企業のお手伝いをしております。オーストラリアの食品・飲料のサプ ライヤーのご紹介、及び JAEPA 活用に関するお問い合わせは下記までご連絡下さい。 在日オーストラリア大使館 マーケティング事務所 食品・飲料チーム TEL: 03 5232 3930 Email: [email protected] Australian Trade Commission 10
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