確定拠出年金で5万円得するお金の教科書

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<目次>
はじめに
A、「私」の将来を考えよう
1、
老齢年金はいつから?いくら?を知ろう
2、
老後に必要な自己資金を算出する
3、
貯蓄プランを立てる
4、
老後資金作りに最適な方法
B、確定拠出年金の仕組みを知ろう
1、
会社に導入されている確定拠出年金のメリット
2、
任意で加入できる個人型確定拠出年金のメリット
3、
会社導入も任意加入も共通で得られる確定拠出年金のメリット
4、
確定拠出年金の注意点
C、 確定拠出年金の「運用」のポイント
1、
確定拠出年金の運用商品
2、
確定拠出年金の元本確保型商品
3、
確定拠出年金の元本変動型商品
4、
投資信託の選び方
5、
運用商品のリスク
2
はじめに
老後なんて、まだまだ先のこと!なんて思って、
「老後資金作り」を後回しにしてい
ませんか?
もしあなたが今40歳であれば、65歳の定年まであと25年ありますね。そこか
らの人生を仮に90歳までと考えると、実はそこも25年あるのです。
リタイア後の時間は意外に長い時間あるものなのです。
そしてご存じのとおり、今日本の社会保障制度はとても大きな問題を抱えていて、
高齢期の生活費を年金だけでは賄いきれず、私たちは不足する金額を自分で準備し
なければなりません。
つまり高齢期の自分へ、今の自分が仕送りをしてあげる必要があるのです。
例えば65歳以降の生活費が月30万円必要というご夫婦がいらっしゃったとしま
しょう。国からの年金が夫婦合わせて20万円とすれば、不足するお金は10万円
となります。
3
つまり、40歳の自分は65歳の自分に対して毎月10万円の仕送りが必要で、4
1歳の自分は66歳の自分に対して毎月10万円の仕送りが必要であるということ
になります。そしてこれは65歳までずーっと続くのです。
しかしながら、毎日のやりくりをしながら更に将来の自分に対して毎月10万円も
の仕送りをするのはどう考えても大変です。
でもその「大変だけれども、やらなくちゃいけないこと」が老後資金作りなのです。
25年間分の仕送りは、この例であっても3,000万円となるわけですから、本
当に大きなお金です。だからこそ、しっかり計画をたて今すぐに取り組まなければ
ならないことなのです。
この小冊子では、老齢年金はいつからいくらもらえるのかを確認する方法から、具
体的な老後資金作りの方法として「確定拠出年金」のご紹介までをさせていただい
ております。
確定拠出年金とは、節税しながら老後資金作りができるとてもお得な国の制度です。
今後この制度を活用できる「加入資格者」も拡大の方向でますます注目度が高まる
制度でもあります。
老後資金作りの考え方はライフプラン実現のための資金計画まで応用できるスキル
です。みなさんの資産形成のご参考になれば幸いです。
4
A、「私」の将来を考えよう
1、 老齢年金はいつから?いくら?を知ろう
公的年金がいつからいくらもらえるのかは、毎年お誕生月に日本年金機構から送付
される「ねんきん定期便」で確認できます。
50歳以上の方は、「ねんきん定期便」のここをチェック
注1
何歳から
注2
いくら
注1:歳をとってからもらう年金(老齢年金)は、60歳までの年金加入期間が30
0か月以上必要です。加入期間が不足しそうな場合、日本年金機構にお早目に相談
を!後払いや任意加入などで年金受給要件を満たす方法もあります。
注2:50代の方の場合、特別支給の老齢厚生年金(会社員のための上乗せ年金)
が65歳より前にもらえる場合があります。生年月日および性別によりスケジュー
ルが異なりますのでねんきん定期便の「老齢年金見込額」欄でチェックしましょう。
老齢年金見込額は、ねんきん定期便発行時点の給与で60歳まで会社員勤めをする
ことを前提として試算されています。そのため60歳までの間に年収に変化があっ
た場合など、金額が異なりますので必ず翌年のねんきん定期便を確認します。なお
5
厚生年金基金からの受給額については、ねんきん定期便には記載されませんので別
途厚生年金基金に問い合わせをします。
50歳未満の方は、
「ねんきん定期便」のここをチェック
注3
注3:50歳未満の方が受け取るねんきん定期便に記載されている年金額は、ねん
きん定期便発行時点での加入実績に応じた年金額ですので、その後60歳まで年金
制度に加入することにより老齢年金額を増やすことが可能です。
会社員の場合、以下の式で注3に記載された年金額に加算できるこれからの年金額
を試算できます。※日本年金機構の「ねんきんネット」でも試算できます。
計算式:
(給与額x5.481÷1000x今後の厚生年金加入月数)+(2万円x
60歳までの年数)=今後の働き方で増やせる年金額※あくまでも簡易計算です。
例:給与40万円、今後の厚生年金加入月数240か月、60歳までの年数20年
(40万円x5.481÷1000x240)+(2万円x20年)=
16円
→
926,
給与40万円で会社員を今後20年継続することにより老齢年金が約
93万円増額可能と試算できます。
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A、「私」の将来を考えよう
2、 老後に必要な自己資金を算出する
ねんきん定期便から、国からの老齢年金がいつからいくら見込めるかが分かったら、
キャッシュフロー表を使い、将来の家計を「見える化」します。以下の例を参考に
90歳くらいまでの家計を概算で良いのでエクセルなどで作表します。
貯蓄残高のマイナス分がこれからリタイアするまでに準備しなければならない老後
資金額の目安となります。
キャッシュフロー表例
西暦
2040
2041
2042
パパ
65歳
66歳
67歳
ママ
63歳
64歳
65歳
イベント
定年退職・記念旅行
リフォーム
パパ年金
100万円
200万円
200万円
ママ年金
0円
0円
90万円
その他の収入
1000万円(退職金)
収入合計
1100万円
200万円
290万円
生活費
240万円
240万円
240万円
住居費
180万円
180万円
180万円
税金・社会保険料等
25万円
30万円
43万円
その他の支出
50万円
150万円
0円
支出合計
495万円
600万円
463万円
収支
605万円
-400万円
-173万円
貯蓄残高
605万円
205万円
32万円
キャッシュフロー表のスタートは現在からでも結構です。あまり細かい数字にこだ
わらずまずは作ってみることが大切です。
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A、「私」の将来を考えよう
3、 貯蓄プランを立てる
リタイア後のキャッシュフロー表を作成し、老後の貯蓄残高のマイナスが2500
万円であれば、それがこれから準備する老後に必要なお金の目安です。キャッシュ
フロー表に書き込めていない万が一の費用(介護や病気での費用)があればその概
算も含め、貯蓄目標額を定めていきます。
いよいよ貯蓄プランを立てていくのですが、まず「今」我が家にお金がどのくらい
あるのか資産の棚卸をします。その際お金を以下の4つの項目に分けながらまとめ
ていくとわかりやすいです。またお金は使用目的に合わせて適切な金融商品を活用
するのが賢明ですので合わせて確認してみましょう。
区分
目的
適切な金融商品例
使うお金
生活費の3か月から半年分
銀行普通預金
貯めるお金
5年から10年以内に用途が決まっ
ネット銀行の定期預金
ているお金
個人向け国債など
10年以上先に使うお金
投資信託
用途が決まっていないお金
NISA、確定拠出年金
死亡、病気のリスクに備えるお金
死亡保険、医療保険など
殖やすお金
守るお金
網掛けの欄「殖やすお金」に記載されたお金が老後資金として現在確保できている
お金となりますから、老後の貯蓄残高のマイナス額との差額が、
「これから」準備す
る額となります。リタイアまでの月数で割ることで毎月の積立額が見えてきます。
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A、「私」の将来を考えよう
4、 老後資金作りに最適な方法
資産形成の基本は「積立」です。目標額を準備期間で割って、毎月の積立額を算出
し、それをコツコツ積立する以上の資産を確実に築く王道はありません。
積立といえば、財形貯蓄や積立預金がよく利用される金融商品ですが、低金利が続
く今、やはり私たちは「投資」も考えていかなければならないでしょう。
投資というと、どうしても「失敗したときの損失」を恐れてしまいがちですが、投
資による「お金の成長」も注目したいところです。
例えば、25年間で2500万円を作ろうとすると年間100万円の積立が必要で
す。毎月8万3,000円です。
しかし、利回り3%で運用ができれば毎月の積立額は55,000円で済むのです。
つまり差額2万8,000円は「仕送り」にせず「今」の生活費として使うことが
できるのです。
手元のお金には限りがあります。
「投資」による「お
金の成長力」という力も借りながら上手に資産形
成したいものです。
老後資金作りのための「積立」x「投資」といえば積立投資信託が具体的な方法と
して挙げられます。
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積立投資信託とは、投資信託を毎月決まった金額で買付をしていく方法です。これ
は主に証券会社で取り扱っており、月々5,000円から積立が可能なところもあ
ります。
投資信託とは、多くの投資家と共同で株式などを売買する方法で、ファンドマネー
ジャーという専門家に実際の運用が任せられるというメリットに加え、個人では投
資できないくらいの銘柄に「分散投資」ができるというメリットがあります。
更に毎月決まった金額で投資信託を購入すると、投資信託の「仕入れ」の値段が平
準化され運用効率があがるといわれています。これはドル・コスト平均法といわれ
る手法で、多くの投資専門家が推奨する投資の基本とも呼ばれている手法です。
老後資産作りにおいては、毎月決まった金額で、適切に分散された投資先に、長期
で投資を行うことが最も重要だとされています。そして、そのすべての要素を兼ね
備えたすぐれた仕組みが「確定拠出年金」という国の制度です。
確定拠出年金は、2015年現在、以下の方のみ加入および活用ができますが、そ
の重要性から注目が高まり近々すべての国民に加入資格が拡大される予定でいます。
2015年現在確定拠出年金が活用できる方
・会社員の方で、会社に確定拠出年金制度がある(企業型に会社として加入)
・会社員の方で、会社に企業年金制度がない方(個人型に任意加入が可能)
・自営業者の方 (個人型に任意加入が可能)
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B、確定拠出年金の仕組みを知ろう
1、
会社に導入されている確定拠出年金のメリット
会社で確定拠出年金が導入されているというところも多くなっています。導入の背
景はそれぞれですが、退職金の前払いといった位置づけのところが一般的なのかな、
と思います
退職金は会社をやめた時にもらう一時金ですが、退職金の前払いとしての確定拠出
年金は毎月支払われる給与と同時に分割で支給されます。会社によっては、支給さ
れる時点で「今給与として受け取るか、確定拠出年金の掛け金として積立をするか」
選択させるところもあるようです。
結論から言うと、退職金の前払いとしての資金を、給与として受け取ってしまうと
税金等の対象となり手取りが減るので不利です。
例えば会社から資金1万円の受け取り方を選択するよう言われたとします。この1
万円を給与として受け取ると、約15%の社会保険料が差し引かれます。また所得
税・住民税も差し引かれます。税金を10%と仮定すると、手取りは75%、つま
り7,500円が実際に使えるお金となります。
しかしこのお金を確定拠出年金の掛け金として受け取ると、社会保険料も税金も全
くかからないお金として1万円がそっくりそのまま自分の確定拠出年金口座に振り
込まれるのです。どっちが得か、一目瞭然ですね。
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B、確定拠出年金の仕組みを知ろう
2、
任意で加入できる個人型確定拠出年金のメリット
会社に確定拠出年金制度がなく、また厚生年金基金などの企業年金制度がない場合、
任意で確定拠出年金の「個人型」に加入することができます。月の掛金上限は23,
000円です
また自営業者の方も同様に「個人型」確定拠出年金に加入することができます。そ
もそも老齢年金が会社員のように厚生年金という上乗せがない分少ないので、ぜひ
積極的に活用したいところです。月の掛金上限は68,000円です。
個人型の場合まずご自身で窓口となる金融機関を決めます。金融機関によって、管
理手数料や選べる金融商品が異なるので、しっかり選びたいものです。弊社では個
人型の加入のお手伝いもしておりますので迷ったらご用命くださいませ。
個人型の場合、確定拠出年金加入の最大のメリットは、
「節税」です。企業型でも同
じなのですが、個人型の場合確定申告(会社によっては年末調整で手続きをしてく
れる場合もあります)をするので、お金がもどってくる実感がより湧くんですね。
具体的な節税額は、源泉徴収票を見ればすぐにわかります。まずサンプルの源泉徴
収票の青い網掛け部分の「給与所得控除後の金額」から緑の網掛け部分の「所得控
除の額の合計額」を差し引き、課税所得を算出します。次にその課税所得を右の税
率のテーブルにあてはめます。たとえば課税所得が300万円であれば所得税率は
10%となります。
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ご自身の所得税率が分かったら、確定拠出年金加入による節税効果はすぐにわかり
ます。確定拠出年金の年間掛け金
x
(所得税率
+
住民税率)です。住民税
はどこの自治体も10%です。
課税所得300万円の方が毎月確定拠出年金に2万円ずつ積立をしたとしましょう。
年間の掛け金は24万円ですね。この方の所得税率は10%、住民税率も10%で
すから24万円の年間掛け金に対し20%、すなわち48,000円が節税額とな
ります。
民間生命保険会社の年金保険も節税効果がありますが、
同様に月2万円を保険料として支払った場合の節税額
は所得税・住民税合わせて6,800円ですから、老後
資金作りとしては確定拠出年金を最優先で検討するべ
きなのです。
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B、確定拠出年金の仕組みを知ろう
3、
会社導入も任意加入も共通で得られる確定拠出年金のメリット
確定拠出年金は、どこで加入するかによって、掛け金の
出し方が変わります。企業型だと、掛け金拠出時の税制
優遇が「税金がかからないお金を企業からもらう」とな
りますが、個人型だと一旦課税された手取りから拠出し
て「確定申告で税金を取り戻す(所得控除)
」というス
テップになるので後者の方がメリットを理解しやすい
かもしれません。
拠出時の税制メリットのほか確定拠出年金にはもう二つ税制メリットがあります。
まず、運用益が非課税であること。確定拠出年金は毎月の掛け金で金融商品を購入
していくのですがその際の運用益がずっと非課税です。たとえば銀行の定期預金で
運用すると利息がつき通常ならその利息に対し20%の利子税が差し引かれますが、
確定拠出年金の定期預金ではこの利子税がかからないというメリットがあるのです。
この非課税の仕組みが60歳まで続くのでとても有利ですね。
税制優遇のある金融の仕組みといえば、NISA(少額投資非課税制度)がありま
すが、まず運用に回せるお金(拠出額)が確定拠出年金のように所得控除になりま
せんし、運用益に対する非課税の期間も確定拠出年金のように継続されるものでは
なく5年間という期間制限があるので、やはり老後資金作りを目的とするのなら、
NISAより確定拠出年金でしょう。
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<NISAと確定拠出年金のメリット比較>
NISA
年間120万円まで
確定拠出年金
拠出するお金
企業型、個人型で上限が設定さ
れている(NISAより少額)
なし
拠出時の税制優遇
あり(拠出額全額所得控除)
株や投資信託などのリスク商
投資できる商品
リスク商品のほか元本保証商品
品のみ
20歳以上だれでも
も投資できる
活用できる人
加入資格制限あり(今後誰でも
出来るようになる予定)
5年間
運用益に対する非 引き出しするまで(60歳以上)
課税期間
なし
受取時の税制優遇
あり(退職所得控除または公的
年金控除)
またNISAにない特徴として確定拠出年金は60歳以降一時金として引き出しを
すれば退職所得控除に、分割で受け取れば公的年金控除となり、税金が優遇されま
す。
退職所得控除は、確定拠出年金に加入した期間が控除適用期間として認められます
ので、早く始め、長く継続することにより税制優遇額を増やすこともできます。ま
たポータビリティといって、お仕事が変わっても「持ち運び」をして継続でき、そ
の期間も退職所得控除の適用期間として積算されますので、転職が当たり前となっ
た今の時代にあった「自分で作る退職金」とも言えます。
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B、確定拠出年金の仕組みを知ろう
4、
確定拠出年金の注意点
確定拠出年金は制度が少し複雑です。
企業型や個人型など、加入の経緯により掛け金拠出時の「税制優遇」の取扱い方が
異なります。特に企業型は、会社の当たり前の制度だと勘違いしてメリットを理解
せず、加入者があまり積極的に活用しないという残念な側面があります。
また毎月の掛け金額にも制限があり、これもち
ょっと面倒です。企業型の場合原則会社のルー
ルで毎月の掛け金が決定されますが、会社によ
ってマッチング拠出という自分自身で掛け金
を上乗せできるルールを取り入れているとこ
ろもあります。マッチング拠出は個人型と同じように課税されたあとの手取りから
拠出し税金をキャッシュバックしてもらうのでぜひ活用したい仕組みです。
個人型の場合、職業によって掛け金の上限額が変わります。自営業者は月68,0
00円が上限ですし、会社員は23,000円が上限です。毎月の掛け金は適時変
更できるので、自分自身のペースで資産形成ができるのはうれしいところです。
確定拠出年金の受け取りは、原則「死亡時」「障害を負った時」「60歳以降」の3
つのタイミングのみです。加入したものの途中で解約をしたいと言っても脱退一時
金の要件が非常に厳しく思い通りになりません。企業型であっても、個人型であっ
ても、やはり制度の理解は必要です。
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C、 確定拠出年金の「運用」のポイント
1、
確定拠出年金の運用商品
財形貯蓄であれば、毎月の掛け金を決めればあとは何もせずお金が貯まります。銀
行の積立預金もそうです。
しかし確定拠出年金の場合は、毎月の掛け金を決めたあともうひとつ「運用商品を
選ぶ」というとても大事なことをしなければなりません。
確定拠出年金はビュッフェみたいなものと思うとわかりやすいと思います。
お皿を手に持ち、自分でサラダやお肉料理や魚料理さらにはデザートまで好きに盛
り付けることができます。しかし選んだメニューによっては、非常に体に良い組み
合わせとなるかもしれませんし、肥満につながる良くない組み合わせかもしれませ
ん。
確定拠出年金も同じように、成長は期待できないけれ
ど資産の目減りの心配のない「元本確保型」商品から、
資産の成長は期待できるけれど場合によっては大き
く減額してしまうような「元本変動型」商品まで、通
常10本から30本程度の品揃えです。
加入者ここから老後資産作りにふさわしいメニューを選んでいく必要があります。
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C、 確定拠出年金の「運用」のポイント
2、
確定拠出年金の元本確保型商品
確定拠出年金には運用商品のメニューの中に必ず元本確保型商品を少なくとも一つ
は必ずいれなければならないことになっています。多くは銀行の定期預金や保険商
品です。
定期預金はもっとも馴染みのある金融商品かと思いますが確定拠出年金の定期預金
は普段私たちが利用する定期預金とは違う点があります。
通常定期預金はある程度まとまったお金を、期間を決めて預けますが確定拠出年金
では、毎月の積立金がそれぞれ独立した定期預金となります。たとえば毎月1万円
の積立で1年定期と決めれば4月拠出分で4月スタートの1年定期1万円、5月拠
出分で5月スタートの1年定期1万円、という風に1万円ずつの定期が毎月出来上
がるのです。金利も毎月見直しされています。
注意点は、これらを解約するときです。満期を待たずに定期預金を解約すると「中
途解約利率」という最初に約束された金利より低い金利が適用されてしまいます。
1年定期を1年継続したから12万円分の定期を解約して別の商品に「預け替え」
したいとなっても、満期を迎えた定期は1つだけでその他の1万円ずつの定期は中
途解約扱いになってしまうのです。
それでも定期預金の場合は中途解約のペナルティによって元本が割れてしまうこと
はありませんが保険商品の場合は、同様に毎月それぞれ独立した保険商品を買って
いることになり満期日前の解約では元本が割れてしまう場合もあります。
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C、 確定拠出年金の「運用」のポイント
3、
確定拠出年金の元本変動型商品
元本変動型商品としては投資信託がラインナップされています。
投資信託は、
「投資先」でまず分類します。
投資先
特徴
日本の債券
国債や社債に投資をするので安定利回りが期待できます。
日本の株式
大企業を中心に投資をするもの中小企業に投資をするものなどに
細分化されます。
外国の債券
日本の債券より高い利回りが期待できますが、為替の影響をうけま
す。先進国、新興国とさらに細分化されます。
外国の株式
世界をリードする会社の株式に投資ができますが、為替の影響をう
けます。先進国、新興国とさらに細分化されます。
その他
不動産に投資をするもの(REIT)や、商品(コモディティ)に
投資をする投資信託など。
投資先での分類が終わったら、
「投資方針」でさらに分類します。
インデックス型:ベンチマークに連動する運用を目指す。
アクティブ型:ベンチマークを上回る運用を目指す。
ベンチマークとは投資先の基準値となる数値です。例えば日本の株式であれば TOPIX
とか日経 225 です。インデックス型は、偏差値 50 を狙う投資信託、アクティブ型は
偏差値 70 を狙う投資信託というイメージです。高い偏差値を狙うにはそれなりに費
用が嵩む傾向があります。
19
C、 確定拠出年金の「運用」のポイント
4、
投資信託の選び方
資産運用において重要なことは「卵はひとつのカゴに盛らない」ということです。
卵とはお金のことです。カゴは投資先のことです。
株式や債券といった投資市場は、資産価値が上がったり下がったりするものです。
どこが上がるか予測するのは不可能ですし、上がる時もあれば下がる時もあります。
どこか特定のところに集中的に投資をするより、いろんな投資先に「分散」してお
けばカゴごと卵が割れてしまうリスクを避けられるという意味です。
そういう意味で確定拠出年金のラインナップの中にある「バランス型」投資信託と
いうのも選択肢としては有効です。バランス型というのは、株式や債券といった投
資先をあらかじめ組み合わせ「分散」しているいわば、定食のようなものです。
株式への投資割合が多いと成長は期待できますが、ややリスクは高まります。債券
への投資割合が多いとマイルドな価格変動となりますが、成長性も低めになります。
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C、 確定拠出年金の「運用」のポイント
5、
運用商品のリスク
確定拠出年金では、投資信託の資料に「ファンドの収益率とリスク(標準偏差)」と
いう表が掲載されています。その投資信託が過去においてどのような価格の変動が
あったのかの「バラツキ」を表す数字です。
あるファンド(投資信託)の収益率が3%でリスク(標準偏差)が5%だったとし
ます。あくまでもイメージですが、このファンドは1年間で3%の利益を得られる
可能性が高く、ただし約70%の確率で3%を中心にプラスマイナス5%の変動も
起こるという意味です。
-2%
3%
8%
一方で、投資先は同じで収益率が4%だけれどもリスクが10%のファンドがあっ
たとします。
-6%
4%
14%
すると同程度のリターンを得るのに、よりリスク(価格変動の幅)の大きいファン
ドであることが理解できますので運用商品選びの参考になります。
この先市場がどうなるかはわかりませんが、少しずつ投資の勉強をしながら自分な
りの投資スタイルを見つけていけたらよいと思います。
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著者 山中伸枝
心とお財布を幸せにする専門家
ファイナンシャルプランナー
確定拠出年金の加入サポートから運用アドバイスまで
株式会社アセット・アドバンテージ
〒104-0061 東京都中央区銀座 6-6-1 銀座風月堂ビル 5F
Tel. 03-6215-8312 / Fax. 03-6215-8700
メール:[email protected]
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