団地型公共集合住宅のトータルリモデル

東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
団地型公共集合住宅のトータルリモデル
A11
The Total Remodeling of Public Residential Buildings Built in the Mass Housing Era
深尾 精一(教授) 門脇 耕三(助手) 松本 真澄(助手) 阿部 順子(研究員)
首藤 亮一(研究員) 小川 仁(博士課程) 鈴木 啓之(修士課程)
齋藤 茂樹(修士課程) 千賀 順(修士課程) 新井 健志(修士課程)
Seiichi FUKAO (Prof.), Kozo KADOWAKI (Res. Assoc.), Masumi MATSUMOTO (Res. Assoc.),
Junko ABE (COE Res.), Ryoichi SHUTO (COE Res.) Hitoshi OGAWA (Doctoral Course), Hiroyuki SUZUKI
(Master Course), Shigeki SAITO (Master Course), Sunao CHIGA (Master Course), Kenji ARAI (Master Course)
ABSTRACT
There is a huge volume of public residential buildings built in the mass housing era in Japan, and one of the most
significant pending solutions is barrier removal and customization for elderly residents. To solve this problem, this
project proposed the two new methods to add new elevator towers to the mid-rise stairway access type residential
buildings, which command a majority in the public residential building stock.
キーワード:エレベータ,バリアフリー,高齢居住者
Keywords: elevator, barrier removal, aged residents
1. はじめに
我が国では、高度成長期に大量の公共集合住宅が建
設された。その数は、昭和40年代に建設されたもので
120万戸を超え、これらの住宅ストックの活用は、持
続可能社会の実現などといった課題に照らして意義が
大きい。一方で、これらの住宅は、現在様々な問題を
生じており、適切な改善を加えることが必要である。
本プロジェクトは、団地型公共集合住宅の適切な改
善手法を提示することを目的とするが、本稿では特に、
高齢居住者の増加に伴い課題となっている、中層階段
室型住棟へのエレベータの設置手法に関する研究開発
図1 構造モデル
図2 外観デザインの例
について述べる。
2. 完全バリアフリー階段室型エレベータの開発
階段室型住棟へのエレベータ設置に関する代表的
な既存技術として、国土交通省が開発を促進した階
段室型エレベータが挙げられるが、半階分の段差が
生じるなど未解決な部分も多い。また、階段室型エ
レベータは、その運行頻度が少ないことなどから、
小型のエレベータを設置することにより、イニシャ
ルコスト・ランニングコストの双方を下げることが
可能であるが、面積の小さな昇降路とするとシャフ
図3 改善前の平面図(左)と改善後の平面図(右)
開発を行った階段室型エレベータの構造モデルを、
トの塔状比が大きくなり、細長い不安定な構造とな
図1に示す。ここでは、昇降路と階段を一体に生産
るため、結果として、現状の階段室型エレベータは、
し、外周部の引張部材によって階段を支持するとと
経済的な適正サイズを大きく超えている。
もに、課題となる塔状比をクリアし、軽快な昇降路
そこで、従来の階段室型エレベータを発展させ、
を創出するシステムを開発した。エレベータの設置
完全バリアフリーを実現する新たな階段室型エレベ
には、既存階段の撤去が必要であるが、昇降路と階
ータの開発を行った。
段が一体化されているため、組立てに要する期間は
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巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
片廊下・バルコニーの増築
エレベータの設置
[2005/04/28]
団地全体のエントランスとして機能する共用部(外部扱い)の増築
図4 既存の住棟平面図(上)と片廊下・エレベータ設置後の住棟平面図(下)
円弧状の梁を
活かした
ロフト付住戸
ごく短く、かつ階段の撤去と並行して進めることが
可能なため、居住者の仮移転期間は数日程度で済む。
また、既存建物に依存することなく構造的に安定さ
せることが可能であるため、集合住宅ばかりでなく、
ゆとりのある
バルコニーが
増築された住戸
公益施設や商業施設にも適用可能である。
3. 円弧梁によるEV・片廊下付加システムの提案
階段室型住棟にエレベータを設置するもう一つの
代表的既存技術として、エレベータとあわせて片廊
接地性の高い
メゾネット住戸
下を増築する技術が挙げられる。この場合、完全な
バリアフリーは達成されるが、片廊下増築に伴って
基礎の設置や住棟北側の埋設配管の処理が必要にな
るなど、合理化が充分であるとは言い難い。そこで、
都下M団地に立地する公共集合住宅を対象とし、合
図5 片廊下設置後の住棟断面図
理的な片廊下付加システムの開発を行った。
既存の住棟平面図、及び開発したシステムが適用
された状態の住棟平面図を、図4に示す。また、改
善後の住棟の断面図を図5に、改善前と改善後の写
真を、図6から図8に示す。
ここで開発を行ったシステムは、住棟に円弧状の
図6 既存の住棟の外観
図7 片廊下設置後の外観
梁を架け渡し、北側に片廊下を、南側にゆとりのあ
るバルコニーを設置しようとするものである。新設
される片廊下・バルコニーは、既存躯体からの吊り
構造となるため、基礎工事が不要であり、これらの
荷重は、既存躯体に過剰な応力を加えることなく、
合理的に流すことが可能である。
また、円弧状の梁は、各階の住戸に新たな空間的
性格を付与するとともに、意匠的にも、今までの団
地型集合住宅のイメージを一新するデザインの獲得
に成功している。
4. まとめ及び今後の課題
図8 片廊下設置後の外観(北側)
本プロジェクトでは、具体の建物を対象としたプ
フリー階段室型エレベータに関して、詳細設計、工
ロジェクト志向型研究を行うことにより、階段室型
程計画、コスト分析などを、外部研究者の協力を得
住棟へのエレベータ設置手法に関して、住宅計画、
ながら進める予定である。
構造的合理性、施工性などが統合されたシステムの
開発を行うことが出来た。今後は、特に完全バリア
なお、以上の研究開発は、東京都住宅供給公社と
共同で行ったものである。
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A112 集合住宅ストック把握・大規模改修事例集作成
Accumulation and Provision of Information on Activating Housing Stock
門脇 耕三(助手)
阿部 順子(研究員)
深尾 精一(教授)
首藤 亮一(研究員)
Kozo KADOWAKI (Res. Assoc.), Seiichi FUKAO (Prof.),
Junko ABE (COE Res.) and Ryoichi SHUTO (COE Res.)
ABSTRACT
Activation of housing stock built in the mass-housing era is a common subject in many countries in Europe,
likewise in Japan. This project aims to accumulate and provide the information on activating such housing stock.
We conducted a survey of activated examples in European countries and in Japan. These results will be published as
a booklet during 2005.
キーワード:高度成長期,ストック活用
Keywords: Mass-housing era, Activation of housing stock
1. はじめに
高度成長期に建設された公共集合住宅に適切な改修
環境に及ぼす影響に、多くの問題点があることが指
摘されており、その改善が喫緊の課題とされている。
を加え、活用していくことは、全国の都道府県を始め
こうした課題に対して、北西ヨーロッパ7カ国に
とする多くの事業主体が抱える課題であるが、最近で
チェコ共和国を加えた計8カ国の住宅会社や住宅協
は様々に工夫を凝らした改修の試みが行われるように
会により、持続可能な住宅再生を目指す国際組織
なってきている。また、第二次大戦後、郊外に大量に
SUREUROが設立され、EUからの支援を得て、集合
供給された集合住宅ストックの改修は、日本ばかりで
住宅団地の改善を行うための技術開発、及び社会環
なく、多くの諸外国においても共通の課題であり、特
境のあり方の検討が行われてきた。SUREUROの一
にヨーロッパでは、ヨーロッパ共同体(EU)の支援
環として実施された改修事例の一部を、下記に示す。
のもと、国際的な技術開発が行われている。
事例1:インスペクトーレン,スウェーデン
本プロジェクトは、これらの集合住宅のストック活
図1はカルマール市(スウェーデン)郊外に位置
用に関する情報を収集するとともに、広く外部に発信
する集合住宅団地インスペクトーレンの住棟の外観
することを目的としている。
である。省資源と自然環境に配慮した改善計画とな
2. 集合住宅ストック活用勉強会・意見交換会の開催
っており、改善にあたり、水資源の有効利用と、改
集合住宅ストック活用に関する情報交換、及び意
築による廃棄物の発生を最小限に抑えることを、大
見交換を行うことを目的として、都市再生機構 技
きな目標に据えたプロジェクトである。
術・コスト管理室 設計計画課と共同で、「集合住
事例2:トールストルプゴード,デンマーク
宅ストック活用勉強会・意見交換会」を立ち上げ、
図2はコペンハーゲン市(デンマーク)郊外の集
2004年度には4回を開催した。
合住宅団地トールストルプゴードの外観である。団
3. 集合住宅ストック活用に関する情報収集
地の周辺地域環境の改善を大きな目標に据えた実践
ヨーロッパ諸国、及び日本における集合住宅スト
例である。この団地では以前、治安などの社会環境
ックの改修事例に関する情報を収集した。下記に、
が悪化していたが、テナントデモクラシーによる屋
2004年度に得られた成果の一部を示す。
外環境の改善計画を実施し、団地内の空間構成を改
1) ヨーロッパにおける集合住宅ストック活用
めることで、地域再生を行った事例の一つである。
前述したように、ヨーロッパでは第二次大戦後に
2) フランスにおける集合住宅ストック活用
建設された集合住宅ストックの活用が大きな課題と
ヨーロッパの中でも、特にフランスは、集合住宅ス
なっている。特に、これらの住宅が都市環境、社会
トックの建築特性等に、日本の集合住宅ストックとの
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[2005/04/28]
図1 インスペクトーレン,
図2 トールストルプゴード,
図3 マント=ラ=ジョリ,
スウェーデン
デンマーク
フランス
図4 シテ・ミシュレ,フランス
図5 静岡市営安倍口団地,日本
図6 熊本県営保田窪団地,日本
共通点が多く、有用な情報が得られることが期待でき
な街路の整備、住棟のエントランスのセキュリティ強
るため、重点的に調査を行った。
化など、より快適な住環境づくりも同時に進められて
事例3:マント=ラ=ジョリ,ヴァル・フレ地区
おり、近年のフランスにおける団地改善の重要なキー
パリ西方50kmの重工業中心地のひとつ、マント=
ラ=ジョリにあるフランス最大のZUP団地地区がヴァ
ワード、résidentialisationの好例をみることができる。
3) 日本における集合住宅ストック活用
ル・フレ地区である。1980年代初頭のバンダリズムの
日本において、特に大きな課題となっているのが、
深刻化により、団地更新事業が次々と展開されてきた
中層の階段室型住棟へのエレベータ設置であるが、高
が、地区の荒廃を完全に食い止めるには至らなかった。
額なエレベータの設置・維持管理費用、円滑に進める
しかし、1996年「マントワ・セーヌ下流整備公社」の
ことが困難な住民の合意形成など、解決すべき問題は
設立後、周辺市町村を含むより広域の地域改良事業の
多い。また、意匠的に優れた事例が少ないという点も、
中に、ヴァル・フレ地区の更新も組み込まれ、EU、
日本の集合住宅ストック改修の課題であろう。
フランス政府、イル=ド=フランス地方、イヴリヌ県
事例5:静岡市営安倍口団地
などから投資を得て、地区改良は確実に進展をみせて
図5は、階段室型住棟へのエレベータ及び片廊下増
いる。現在のヴァル・フレ地区の団地更新事業は、都
築の事例である。階段室型住棟へのエレベータ設置で
市計画的なアプローチをもって展開されており、当該
は、完全なバリアフリーの達成と、居ながら改修の両
地区の孤立を解消する公共施設配置や道路整備、住棟
立が困難であるが、ここでは工程の工夫と既存階段の
密度の軽減のための住棟の減築、好ましく個性的な景
段階的撤去によって、居住者が住まいながらの工事が
観づくり等が進められている。
行われた。居住者の仮移転費用の削減により、改修費
事例4:シテ・ミシュレ、パリ19区
用の縮小にも成功している。
2002年3月、パリ市は、フランス政府や預金供託金
事例6:熊本県営保田窪団地
庫などとのパートナーシップのもと、パリ外周道路沿
図6は、熊本県営保田窪団地における、エレベータ
い地域の生活の質を向上させるために「都市更新大計
及び片廊下増築の例である。日本において、数少ない
画」を始動した。シテ・ミシュレは、その11の対象地
意匠的にも優れたエレベータ設置の事例である。
の一つである。今回の更新事業では、閉鎖的で活気を
4. まとめ
失っていた団地敷地を近隣地区と統合し、活性化する
本プロジェクトでは、集合住宅ストックの活用に
ことを目的とし、住民と公共のゾーンを明確化しつつ、
関する勉強会の開催や、各国における事例調査を通
公共施設や公園を敷地内に設置することで人的交流を
じて、多くの情報を収集した。2005年度には、これ
促し、当該団地の活性化を図っている。また、緑豊か
らの情報を、事例集として出版する予定である。
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A113 団地型公共集合住宅における戸別改修に関する研究
A Research on the One-unit-at-a-time Renovation in Public Residential Buildings
松本 真澄(助手)
門脇 耕三(助手)
深尾 精一(教授)
藤本 秀一(協力者,(独)建築研究所)
Masumi MATSUMOTO (Res. Assoc.), Kozo KADOWAKI (Res. Assoc.)
Seiichi FUKAO (Prof.) and Hidekazu FUJIMOTO (COE Collaborator, BRI)
ABSTRACT
The purpose of this research is to obtain the problems in renovating vacant units one-unit-at-a-time in public
residential buildings built in the mass-housing era, to promote the continuous living using the existing housing stock.
Firstly, we conducted a questionnaire survey to the residents of a housing estate built in 1976, to grasp their needs for
housing renovation. Secondly, we conducted two field observations of renovating works one-unit-at-a-time in the
units constructed in 1971 and in 1980, to grasp the subjects for the renovating technologies.
キーワード:改修ニーズ,施工性
Keywords: Needs for Renovation, Work Efficiency
1. はじめに
総合評価
1960年代から1970年代にかけて供給された住宅団地
家賃の額
の住戸プランは画一的であり、経年による内装や設備
住宅の広さ
の老朽化、生活水準の向上による設備などの陳腐化、
間取り
家族やライフスタイルの多様化による住要求の変化な
天井の高さ
天井の材質
どにより、住戸改善やリフォームのニーズが顕在化し
する構法や技術を開発することは、既存ストックを活
用した持続的な居住を図る上で、重要な課題である。
床の材質
住戸内部
ている。こうしたニーズを的確に把握し、これに対応
壁の材質
収納スペースの量
玄関
台所
そこで本研究では、改修ニーズを明らかにするため、
浴室
公団賃貸住宅(現:UR賃貸住宅)の居住者を対象に
洗面所
住戸改善・改修ニーズに関するアンケート調査を行う
トイ レ
洗濯機置場
とともに、戸別改修技術の課題を把握するため、公団
遮音
の分譲団地における戸別改修の施工調査を行った。
カ ビ ・結露
2. 公共賃貸住宅の改善・改修ニーズ調査
約400戸のうち、7棟200戸(5階建て5棟120戸、8階
建て2棟80戸)を対象とし、居住者へのアンケート
調査を実施した。空住戸25戸を除いた配布数は175
戸であり、回収数97票、回収率55.4%であった。
共用部分等
1976年に供給された多摩ニュータウン内のM団地
住宅内の段差
廊下・階段・エレベーター
建物の入口周り
建物の外観
駐車場・駐輪場
緑の豊かさ
通勤・通学の便利さ
買い物の便利さ
調査結果のうち、現在の住宅に対する満足度を、
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図1に示す。また、改善手法を、事業者主導型、自
己責任型、主体不問型に分類し(表1)、そのニー
不満
やや不満
普通
やや満足
満足
ズを把握したところ、現状復帰義務を免除するとい
図1 現在の住宅に対する満足度
う条件であれば、自分で行いたい(自己責任+主体
いったソフト面の要求が目立つ。また、改善ニーズ
不問)とするものが2割近く存在した(図2)。自
は、居住期間や、既に行われている改修の状況に影
己責任型においては、業者の紹介、改善の相談、と
響を受けることがわかった。
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[2005/04/28]
表1 改修手法の分類
居住者が改修部分を選択
事業者主導型 し、改修内容に応じて家
賃が上昇する方法
自己責任型
原状回復義務がないと想
定し、居住者が改修を自
己負担で行う方法
主体不問型
家賃上昇型、自己負担型
どちらでも行いたい場合
図2 改修手法の要望
3. 戸別改修工事の施工調査
1) 工数・工程に関する分析
図3 全面更新が行われた住戸における職種別工数
1980年及び1971年に日本住宅公団(現:都市再生
機構)が供給した、標準的な平面形式の5階建て階
段室型住棟における、戸別改修工事2件の施工調査
を行った。一つは、民間業者による内装の全面更新
工事が行われた分譲住宅の2階の一室であり、いま
一つは、都市再生機構の協力会社による内装の部分
更新工事が行われた賃貸住宅の5階の一室である。
全面更新工事が行われた住戸における職種別工数
を図3に、大工工事と水道・電気工事の作業日毎の
工数を図4に示す。戸別改修の場合、狭い住戸内で
複数の職種が錯綜することが工事の問題点の一つで
あるが、ここでは、電気・水道工事を工程の初期と
終盤に収集させることで、この問題に対処しており、
特に壁下地工事の工程には電気工事がほとんど重な
っていない。一方で、壁仕上げを行おうとする際に
計画通りに電気工事が行われていないことが判明し、
手戻りが多く発生するなど、課題も残されている。
さらに、同様の分析を、部分更新が行われた住戸
についても行い、両者を比較することによって、既
存の住戸の構法、新しく設置される内装の構法、改
修工事の工法などが施工性に与える影響や、戸別改
修工事における問題点を把握した。
2) 廃棄物に関する分析
図5に、部分更新工事が行われた住戸と、30m2程
度の1K都営住宅の建替え時に発生した、内装の廃
棄物量と廃材の構成を示す 注 1) 。部分更新工事では、
図4 大工工事と水道・電気工事の日ごとの工数(人・分)
建替えの場合と比して、廃棄物の総量は少ないが、
混合廃棄物が多く発生している。これは、戸別改修
工事の場合、内装の解体と施工を同時に行うため、
分別が困難であることが一つの要因である。
4. まとめ
本研究では、居住者の戸別改修に関するニーズ、
及び戸別改修工事の実態を明らかにし、集合住宅に
おける戸別改修の課題を明確にした。今後は、これ
図5 廃棄物量の比較 部分更新と建替え
らの知見を統合するとともに、実施プロジェクトを
通じて、望ましい戸別改修のあり方を提示する所存
である。
注1) 建替え時の廃棄物量に関するデータは、解体研究会(角田
誠 東京都立大学助教授,清家剛 東京大学助教授,名取発 東京
理科大学助手ほか)にご提供いただいた。
東京都立大学 21 世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development�of�Technologies�for�Activation�and�Renewal�of�Building�Stocks�in�Megalopolis�������� �[2005/04/28]
���多摩ニュータウン団地居住高齢者の生活像と居住環境整備に関する研究
A12���持続的継続居住からみた多摩ニュータウン集合住宅の再整備要件に関する研究シリーズ
The�Series�of�Studies�on�the�Sustainable�Living�Environment�
for�the�Elderly�in�Housing�Estate�of�Tama�Newtown
上野 淳(教授),松本 真澄(助手),加藤田歌(修士課程)
Jun�UENO�(Prof.),�Masumi�MATSUMOTO�(Res.�Assoc.),�Taka�KATOU�(Master�Course)
ABSTRACT
���This�study�aims�to grasp�the Life Style of�elderly�living�in�housing�estate�and�clarify�the�
problem�of�the�housing�estate�in�Tama�Newtown�.
The�results�of�the�analysis�are�as�follows;
1)�In�Tama�New�town,�living�environment�and�resident�differs�with�the�area.�So,�it�is�important�to�
consider�the�area�when�we�consider�the�environmental�improvement�in�Tama�Newtown.
2)�Some�toilets�and�bathrooms�become�too�old�for�use�in�housing�estates�of�Tama�Newtown�built�before�
1975.�It�is�necessary�to�put�those�in�good�condition.
3)�The�living�aspect�of�elderly�differs�with�their�health�condition�and�single�or�couple.
�
�
キーワード:多摩ニュータウン,持続的継続居住,高齢者,団地居住
Keyword:�Tama�Newtown,�Sustainable�Living�Environment,�Elderly,�Housing�Estate
1.研究の背景と目的
の在り方に関する知見を得ることを目的とし , 多摩N
入居から 30 年余り経った多摩ニュータウンでは,
Tの団地住宅に住む高齢者の居住様態を詳細に把握す
エレベーターのない集合住宅,住宅の老朽化などが地
る.
域に住む高齢者にとって大きなバリアとなっている.
2.調査概要
本研究は , 高齢者が自立して住み続けられる居住環境
多摩市住宅課との協同により,多摩市域の中から図・
の在り方と,豊かな生活を維持できる社会的サポート
1に示す 6 地区を対象にアンケート調査を行った.65
諏訪
地区
の
特徴
永山
愛宕
貝取
豊ヶ丘
落合
・単身,後期,要介護の割合が高い ・夫婦が50%
・単身,後期,要介護の割合が高い ・同居の割合が高い
・自宅内不便の回答が全体的に高い ・公団賃貸が45%
・都営賃貸が45%,2LDK以下28%
・集住率が91%
・「階段・坂が不便」が61%
・「古い」「狭い」の回答が多い ・自宅内不便の回答が全体的に高い ・3DK以上の間取りの人が91%
・分譲,公社賃貸が多い
・集住率89%,分譲80%,3DK-が多い
・3DK以上の間取りが多い
・夫婦居住が多い
・「風呂」「狭い」の不便回答が多い ・階段・坂が不便は55%
多摩センター駅
A-2
永山駅
Toyogaoka-1
Ochiai-1
Kaitori-1
永山駅
Suwa-1
Atago-1
S-2
T-2
O-3
O-2
A-3
K-2
S-3
:団地
タウンハウス
K-3
0
O-4
0.5
KILOMETER
T-3
T-4
S-4
K-4
N
N
N
N
N
N
O-5
A-4
S-5
O-6
T-5
T-6
K-5
高齢者/全人口
住居形式
戸建
5F以下
6F以上
タウンハウス
�1744人/10757人 (16.2%)
タウンハウス�4.1%(7)
戸建�
17.7%(30)
6F集合住宅�
11.2%(19)
-5F集合住宅�
64.7%(110)
20%
40%
建
設
年
数
-s49
s50-54 12
s55-59
s60- 3
不明
41
55
古い
28
台所
50
風呂
38
自 トイレ
21
宅 間取り
内 日当たり 7
段差
25
不
狭い
39
便
広い
点
特に無し
47
自 EVがない
宅 階段坂道
外 特に無し
29
47
60%
80%
11
�2618人/16307人�(16.1%)
タウンハウス�
戸建�
14.2%(38)
12.4%(33)
6F集合住宅�
22.5%(60)
20%
-5F集合住宅�
50.6%(135)
40%
35
49
60%
13
��1077人/6032人�(17.9%)
タウンハウス�
戸建�
3.5%(4)
13.8%(16)
6F集合住宅�
35.5%(41)
80%
20%
32
24
24
16
10
10
36
66
52
2
46
10
10
12
図・1 多摩ニュータウン:調査対象地区の概要
1
-5F集合住宅�
47.4%(55)
40%
7
51
20
22
22
20
11
60%
69
30
80%
-5F集合住宅�
81.6%(102)
20%
40%
33
25
13
21
15
9
7
12
7
13
11
40
17
20
21
��1161人/9491人�(12.2%)
タウンハウス�4.0%(5)
戸建�
5.6%(7)
6F集合住宅�
8.8%(11)
43
62
34
60%
1532人/12722人�(12.0%)
タウンハウス�
戸建�
12.8%(20)
7.7%(12)
6F集合住宅�
18.0%(28)
80%
20%
54
49
54
1
27
37
60%
84
23
19
27
55
戸建�
8.0%(17)
-5F集合住宅� -5F集合住宅�
59.6%(93) 79.3%(169)
40%
46
8
17
9
12
1741人/11478人�(15.2%)
6F集合住宅�
10.3%(22)
57
68
64
80%
20%
40%
60%
11
50
20
33
34
25
20
12
18
6
18
24
3
68
67
95
11
80%
東京都立大学 21 世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development�of�Technologies�for�Activation�and�Renewal�of�Building�Stocks�in�Megalopolis�������� �[2005/04/28]
歳以上の高齢者から 2500 名を無作為抽出して配布し,
また 2DK-3DK の間取りが中心で,全体的に自宅内の
回収数は 1058 名,回収率は 42.3% であった.訪問調
不便点の回答が多く,住棟周辺の階段や坂は半数
査では,アンケート調査において訪問調査の承諾が得
以上の人が不便と回答している.一方豊ヶ丘では,
られた高齢者の中から集合住宅に住む単身者 8 名,夫
3LDK-4LDK の間取りが中心で,持家が 80%,夫婦居住
婦 6 組の計 14 事例を選定し,自宅の使い方や不満点,
が半数以上である.自宅内不便点は全体的に少ない.
生活の様子などをヒアリングとマッピングの方法によ
2) 基本的な生活行為の実態とそれらの行為に関わる
って把握した.
住居部分について整理した(図・2)
.排泄は最も基
3.結果の概要
本的な生活行為であり 91% の人が自立して行っている
ここでは,主としてアンケート調査の結果から住戸
が,都営住宅居住者の 30% はトイレ設備に不便を感じ
内,住棟周辺の居住環境上の課題について整理する.
ている.入浴は 90% が自立して行っており,11% の人
研究全体の成果は資料編を参照されたい.
は自宅以外の風呂を利用している.買物行動は住棟環
1) 6地区の特徴を図・1に整理した.諏訪と愛宕
境や地域環境が深く関係し,道路と1階までの階段や
は昭和 49 年以前に建設された住宅が多く,単身居住,
段差,バス停までの坂道や階段が外出のしやすさに大
後期高齢者,要介護認定者の割合が他地区より高い.
きく影響する.
アンケート調査結果
a.排泄自立度
0%
自立
介助
20%
40%
アンケート調査結果
60%
80%
100%
排
泄
b.入浴自立度・入浴場所
0%
20%
40%
60%
80%
100%
自立
介助
自宅
コミセン
デイ
c.年齢層別入浴状況
0%
20%
40%
60%
237
175
79
27
16
5
1
65-69
70-74
年 75-79
齢
層 80-84
85-89
90 不詳
d.家族構成別入浴状況
0%
20%
40%
60%
80%
e.食事状況
自分
家族
宅配
外食
食べない
0%
朝食
昼食
50% 0%
f.男女・家族構成別食事状況
0%
20%
40%
夕食
50% 0%
60%
g.掃除状況
の
段
差
42
300
142
32
87
208
82
90
75
自炊+家族
0%
自立
助けをかりて
自分ではしない
h.買物状況
0%
自分で
家族やヘルパー
宅配
外食利用 宅配利用
家族
20%
40%
20%
60%
40%
60%
80%
100%
100%
0%
20%
40%
60%
80%
自分
家族
家族+宅配
自分+家族
宅配のみ
自分+宅配
その他
図・2 基本生活行為と住居・地域環境
0%
25%
50%
-s49
s50-54
s55-59
s60分譲
公団賃貸
都営賃貸
室内全域
室内の段差は,トイレや風
呂への移動を妨げるものと
して多くの事例で不満が挙
げられた.高さ18cm幅30cm
の段差もあり高齢者以外に
とってもバリアとなる.
トイレや風呂への移動負担を増大させ
継続居住の妨げになる大きなバリア.
早急に整備が必要.
「風呂」不便回答割合
0%
風
呂
設
備
25%
50%
-s49
s50-54
s55-59
s60分譲
公団賃貸
都営賃貸
風呂
昭和49年以前建設の住宅,特に
都営賃貸において割合が高い.
食
事
昭和49年以前に建設された
住宅や都営住宅には非常に
空間が貧しく設備の老朽化
した風呂が多く見られた.ま
た,低い浴槽の要望も多い.
自宅で安心して快適に入浴が出来る
ような整備が求められる.
建設年代・所有形態別
「台所」不便回答割合
0%
台
所
掃
除 そ
の
他
住
宅
内
100% 実数
42
300
142
32
87
208
82
90
75
排泄は自宅で行われる最
も基本的な生活行為であ
り,ほとんどの場合自立し
て行われる.手すりが設置
されている事例が多い(8
事例/14事例).
排泄は自宅で行う必要があり,
一日何回も利用するため,
快適に使用できるような整備が重要.
「室内段差」不便回答割合
25%
50%
-s49
s50-54
s55-59
s60分譲
公団賃貸
都営賃貸
台所・食堂
昭和49年以前建設の住宅,都
営賃貸において割合が高い.
i.年齢層・家族構成別買物状況
単身
夫婦
男
夫婦+子
本人+子
単身
夫婦
女
夫婦+子
本人+子
その他
トイレ
建設年代・所有形態別
無記入
80%
50%
都営賃貸において割合が高
い.
50%
100% 実数
80%
単身
夫婦
男
夫婦+子
本人+子
単身
夫婦
女
夫婦+子
本人+子
その他
自炊
入 室
浴 内
不明
併用
25%
建設年代・所有形態別
210
131
82
46
25
11
外のみ
0%
-s49
s50-54
s55-59
s60分譲
公団賃貸
都営賃貸
昭和49年以前建設の住宅,都
営賃貸において割合が高い.
100%
単身
家 夫婦
族 夫婦+子
構 本人+子
成
その他
不明
自宅のみ
「トイレ」不便回答割合
ト
イ
レ
設
備
100% 実数
80%
訪問調査結果
建設年代・所有形態別
買 住
物 棟
・
地
域
環
境
台所は設備の老朽化や台
所周りの狭さが問題にな
っている場合が多い.
使いやすく,安全に使用できる
調理環境が求められる.
建設年代・所有形態別
「狭い」不便回答割合
0%
25%
50%
-s49
s50-54
s55-59
s60分譲
公団賃貸
都営賃貸
室内全域
昭和49年以前建設の住宅,賃
貸住宅において割合が高い.
建設年代・所有形態別
「建物周辺の階段,段差,坂道」
不便回答割合
0%
25%
50%
-s49
s50-54
s55-59
s60分譲
公団賃貸
都営賃貸
特に昭和49年以前建設の住
宅,都営賃貸において高い.
洗面所に椅子を置いたり,
玄関に車椅子を置いたりす
事がある.また,介護しやす
いように間取りを変更した
いが原状復帰義務の為ため
らっているケースもある.
高齢者が住みやすいように
必要に応じて改修できるような
システムが必要.
玄関
住棟
地域
住棟環境では,2F以上の階
段はもちろん,1Fまでの階
段や段差も大きなバリア.ま
た,バス停や駅までにある階
段も高齢者の外出に大きな
影響を与えている.
1Fまでの階段,駅やバス停までの階段
や段差は外出行動に大きな影響を与え
る.地域全体の住環境整備が必要.
東京都立大学 21 世紀 COE プログラム
巨大都市建築ストックの賦活更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
A13
[2005/04/28]
公的賃貸住宅団地の建替え等に関する概況
Trend of Rebuilding Projects of Public Housing in metropolitan Area
松本真澄(助手) 高見沢邦郎(教授) 双川華子(修士課程)
Masumi MATSUMOTO(Res.Assoc.),Kunio TAKAMIZAWA(Prof.)
and Hanako FUTAKAWA(Master Course)
ABSTRACT
This study approaches the problem of the rebuilding of public rented housing, by analyzing the cases accomplished and on-going in Tokyo area to clarify the future difficulties in future rebuilding. Through interviews with
undertakers and examination of the documents concerned, this study analyzes the history and the general tendency of
the rebuilding enterprises, as well as grasps their actual status. Forthcoming serious difficulties are clearly recognized
such as how to endeavor the rebuilding of the dwellings supplied in a tremendous amount in 1970's, which building or
which area to start, and if one should proceed to some amelioration work while waiting for the rebuilding to begin.
キーワード:公共賃貸住宅 , 建替え , 団地
Keywords:Public rented housing,Rebuilding,Housing estates
1.目的と方法
ことから準備が始まり、1986年の公式スタートに至る。
昭和40年以前に供給された都市再生機構、公営、公
公社賃貸については都営や公団賃貸のような国レベ
社の賃貸住宅を対象に、その建替えの概況を調査し、 ルでの政策的な方向提示はなく、東京都主導によって
「住宅ストック改善」研究に基礎的な情報を提供するこ
都営に準じた対応がなされてきた。
とを目的とする。都市再生機構(旧:日本住宅公団)に
2)都営・都公社賃貸・公団賃貸の建替え計画と実績
よって一都三県に供給された賃貸住宅(以下、公団賃
の概況 こういった経緯をふまえて行われてきた各主
貸)
、東京都住宅供給公社によって供給された賃貸住宅
体の現時点の建替え方針の要点と実績の概況を表1に
(以下、公社賃貸)及び、東京都によって都営住宅とし
示す。
て供給された賃貸住宅(以下、都営)を対象に、資料収
建替え対象住宅の供給年代が異なるが、都営・都公
集と関係者ヒアリングを行い、建替えと改修の全体的
社賃貸・公団賃貸とも、
「昭和30年代に建設されたもの
方針、建替え実績、施策の変遷、課題等について概況
は建替え」で足並みが揃うことになった。
を把握・比較した。公団賃貸、公社賃貸については、昨
都営・公団賃貸の着手率(工事に入っている戸数の
年度の報告で詳しく扱ったので、今回は各主体の比較
建替え計画総対象戸数に対する比率)は 7 割程度だが、
及び、都営の建替えの近年の傾向を中心に述べる。
都公社賃貸のそれは約2割と低い。着手されても完了
2.建替えの位置付け等の経緯と建替えの概況
(入居済み)となるとさらに低く、都公社賃貸・公団賃
1)制度的変遷 東京都では 1952 年より木造応急簡易
貸ともに建替え計画総対象戸数に対しては2割強程度
住宅の建替え等を始めていた。1960 年頃には、その主
表1 建替え方針と実績
主体
都営
都公社賃貸
公団賃貸
対象が住宅地区改良事業に移行する。今日的な建替え
「都営住宅等ストック 「一般賃貸住宅の再編整備計
「建替え方針」(1986)
総合活用計画」(2001) 画」 (2003)
耐用年数の1/2を経過したもの
に向かうのは、1965 年の公営住宅払い下げ中止の通達
建替え計画 1)木造、簡易耐火造住宅 昭和34以前(建設43年以上経
のうち、古いものから(今の
とその要件 2)浴槽のない住宅
過)に建設された住宅約2万
ところ昭和30年代供給のも
3)昭和30年代以前
戸中、区部の約1.2万戸を10年
に伴って木造公営住宅の建替えを推進する方針が明確
の)。
建設の中層住宅
間で建替え。
年間
約3000戸
約6000戸(全国)
約500戸
になった頃からである。その後 1969 年の公営住宅法改
建替予定
1952年
建替え
1991年
1986年
正で建替え時の住宅明渡しに法的根拠が与えられるな
開始年
1986年(耐火)
旧計画
新計画
一都三県
都内
(1991~2002)
(2003~)
どにより、都営建替え事業が本格的にスタートする環
1945∼1964
建替対象年代
( 同 戸数)
(117,034戸)
1956∼1964
1956∼1964
1950∼1956 1951∼1964
(約6,600戸) (12,113戸) (85,866戸) (36,091戸)
境が整った。以後、建替えを容易化する法改正が行わ
65,406
26,829戸
1,499戸
84,509戸
建替着手戸数
れてきている。
(約23%) (未集計) (76.2%) (74.3%)
(着手率)
(72.2%)
(2002年時点)
(完了、一部完了含む)
公団賃貸の建替えは、1983 年の臨時行政調査会によ
1,422戸
17,409戸
7,832戸
建替完了戸数
(不詳)
(約22%) (未集計)
(完了率)
(20.3%) (21.7%)
(2002年時点)
る「行政改革に関する第 4 次答申」において「土地の高
1,541戸
建替えによる
125,943戸
(未集計) (不詳)
(不詳)
建設戸数
(2001年時点)
度利用を図るため、または新しい住宅需要に対応する
建替えによる高層化
小規模団地の集約余剰地の有 高層化
近年の
余剰地の民間活用
余剰地の活用
効活用
傾向
ため、既存住宅の建替え、改築を推進する」とされた
戻り住居に限定
(定期借地権)
東京都立大学 21 世紀 COE プログラム
巨大都市建築ストックの賦活更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
表2 「都市再生型」都営住宅建替え事例
の完了率となっている。
南青山1丁目団地:民間事業者企画・建設モデル
もっとも都公社賃貸の場合は、着手率は低いが着手
<敷地面積> 約0.68ha(従前都営住宅150戸)
されたものに対する完了率は高い。これは規模が大き
<計画内容>
・都営住宅150戸、民間賃貸住宅390戸
くて着手しても完了までに時間がかかる公団賃貸と、1
・区立図書館、区立保育園、(医療法人)グループホーム、私立大
学大学院施設
棟2棟が多くて着手すればすぐに完了できる都公社賃
・商業業務施設
<事業手法等>
貸との差によるものと考えられる。
次の事業計画により民間事業者を公募
・70年間定期借地で土地貸付を受けた民間事業者が全施設を建設
都営のは完了戸数が算出されないが、建替えによる
・その後、都、区、法人等へ譲渡し、住宅・業務商業床は賃貸経営
2001年方針決定、都市再生プロジェクト指定 2002年事業者の提案
建設戸数が約 12.6 万戸に達しているので、着手済みの
公募・選定
ものはかなりの程度に完了しているものと推察される。 2004年着工、2007年竣工・事業運営開始の予定
港南4丁目第3団地(民間施設ゾーン):定借分譲マンションモデル
3.都営の建替え実態と今後の課題
<敷地面積> 団地全体約3.4ha中の民間ゾーン約1ha
現在は現存する約 3.2 万戸の「昭和 30 年代以前の中
<計画内容>
(従前243戸を約800戸に建替え、敷地の集約によって民間施設ゾー
層住宅」が建替え主な対象になっている。また、現在
ンを創出)
・定期借地権付き分譲マンション約700戸、生活利便施設約1500m2
までに約8.5万戸の住宅が建替えに着手され(建替え着
<事業手法等>
手率約72%)
、建替え後住戸として12.6万戸の供給がな
2003年方針(定借活用による廉価な分譲マンションの供給モデル)
決定
された。建替え倍率を求めれば約1.5倍となるというこ
2004年提案公募・事業者選定予定
東村山本町団地(北側ゾーン):定借戸建分譲モデル
とである。年間 3 千戸という建替えのペースが続けば、
<敷地面積>約10ha(当該団地は建替え済みで、その際に生み出された
概ね 10 年で計画中の建替えは完了と見込まれる。
更地の敷地)
しかし10年という期間は、この間に昭和40年代に建
<計画内容>
・定期借地権付き戸建て分譲住宅(敷地165平米程度、一般の戸建て
設されたもの約 10.8 万戸にも建替えニーズが生ずると
より3割程度減価)を中心とした総合的な住宅地開発、付随する公共
施設、地区施設、各種生活関連施設
いうことでもある。これらについての計画はまだ公式
<事業手法等>
2004年方針(郊外居住モデルの開発と、定借活用・生産システムの
化されていないが、
「総戸数はさほどではないが団地数
工夫で廉価な戸建ての実証実験)決定、提案公募・事業者選定の予
定
の多い100戸未満のものは統合や区市への移管」
、
「大半
を占める 300 戸以上の団地のものは将来的に建替える
行し、公的資金の補助が見込めないなか、公社賃貸や
として現状維持」
、
「約3万戸ある100戸以上300戸未満
公団賃貸の建替えはその事業性の確保が簡単ではない。
の団地ものは当面<スーパーリフォーム>によって対 「10年の間には建替え」として対象住宅に対しては最低
応」
、との方向が検討されている。
限の補修しか行われない中で、10 年が 15 年、20 年にな
なお建替えについては、第 3 次住宅マスタープラン
る可能性はある。また今後に増える「大規模・郊外」団
(2002 ∼)で新規に記載された「都市再生型」が実施さ
地は今までの都心周辺の小規模団地より困難性が大き
れてきているので、表2にその事例概要を示す。ひとこ
いと思われる。建替え分の住宅を集約化して民間譲渡
とで言えば、高層化・集約化によって団地内に利活用
地を増やしても、民間の需要が確実にあるわけではな
できる留保地を生み出し、その利・活用目的を示した
いだろう。このように、建て替えの手法は、建て替え
上で定期借地権設定を基本に、プロポーザルを経て民
の初期にくらべ、経営主義ともいえる傾向に移ってき
間に事業を任せる、との方式である。
ているといえる。しかし、特に都営の場合には、民間
以上のように、都営の建替えは比較的に順調に進み
導入の意義も厳しく問われるべきと思われる。
ながら新たな方式も取り入られつつある、とされよう。 第2には、次の時代に対象となってくる大量供給時
ただし残る対象団地は、その立地や規模の大きさから
代のストックにどう対応するのかの問題がある。大規
してこれまでのような事業展開が可能との保証はない
模改修を行うとしても、個別住戸が散発的に改善され
し、さらに昭和 40 年代の大型郊外団地が対象になって
ても住棟あるいは団地の全体的老朽化は進むわけで、
きた時、その建替えが可能かは予測しがたい。
住棟・団地を単位とした「計画」が欠かせまい。また例
4.まとめと課題
えば比較的立地がよく空家率の低い団地を改修の対象
都営住宅、都公社と公団の賃貸住宅の建替え状況を
とすべきか、その反対の団地(いわば遠くて不人気な
把握してきた。今後の 10 年間程度の建替えは計画化さ
団地)を対象とすべきかは、改修後の家賃設定や応募
れていて、都営約 3.2 万戸、都公社賃貸約 1.2 万戸、公
状況も関係し、簡単に答えは出まい。いずれにせよ「建
団賃貸約 5.5 万戸といった数値になっている。
替えを待たず」あるいは「建替えに替わる改修」につ
最後に実態把握を通じて、浮かび上がってきた課題
いて、住戸・住棟・団地と連続性の視野を持って、立地
を2点挙げる。
位置も含めたハードと家賃等のソフトの両面から、総
第1には、当面の建替え計画が順調に実現し得るか
合的な検討をすることが必要だろう。いずれにしても
の問題があろう。都営は国の補助体制があるとは言え
次の時代の大量ストックにおいては「建替え」のみを
東京都自体の財政が逼迫しているし、独立採算性に移
対応方策とすべきではない。
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
直交壁がRC柱の崩壊に与える影響
A14
Effect of Transverse Side Walls on Collapse of RC Columns
金 紅日(博士課程)
芳村 学(教授)
中村 孝也(助手)
蝦名 航星(学部生)
Hongri JIN (Doctoral Course), Manabu YOSHIMURA (Prof.),
Takaya NAKAMURA (Res. Assoc.) and Kousei EBINA (Undergraduate)
ABSTRACT
The column with side walls is the typical form of RC apartment buildings. While the side walls existing for the
transverse direction is generally ignored at the seismic evaluation of old existing RC buildings, they are likely to
affect the collapse behavior of columns. Thus this research is intended to study the axial collapse of columns with
transverse side walls following shear failure. Half-scale column specimens are laterally loaded until they come to be
unable to sustain axial load. The tests have revealed the general nature of the effect of transverse side walls on
collapse of RC columns.
キーワード:RC柱
直交壁
崩壊
Keywords: reinforced concrete column, transverse wall, collapse
1.はじめに
旧基準によるRCラーメン構造集合住宅の柱には種
々の二次壁が取り付くが,想定している加力方向に対
ターには崩壊時に鉛直変形が急増することに備えて
50mmのリミットを設け,崩壊するとこのリミッター
が作動して実験が強制終了されるようにした。
して直交方向に取り付く壁(直交壁)については,設
表1 試験体一覧
計上無視されることが多い。しかし,直交壁は柱の最
大耐力に影響を与えることが知られている1)。また,
崩壊性状などの変形能力への影響も考えられる。した
がって,RC建物の耐震性能を評価するにあたり直交
壁が最大耐力や崩壊性状に与える影響について把握す
ることが重要である。しかし,これらに関する研究は
非常に少ない。そこで本研究では,旧基準によるせん
試験
体名
C16
C16W60
C16W90
C13
C13W60
C13W90
柱
直交壁
軸力
壁長さ
柱断面
壁厚
横補強
比
主筋比
壁筋
Lw
b×D h0/D 筋比
t
η
pg (%)
(縦・横)
(mm)
(mm) (mm)
pw (%)
壁なし
2.65
60
[12-D16]
250 1-D6@80
300
0.11
90
0.2
×
3
[2-D6
壁なし
300
@200]
1.69
60
[12-D13]
250 1-D6@80
90
断破壊RC柱を対象として,直交壁が崩壊までの柱の
Lw=250
Lw=250
を表2に示す。試験体は旧基準の柱を想定した約1/2模
300
300
試験体一覧を表1に,試験体断面を図1に,材料特性
300
2.実験概要
t=90
t=60
加力方向
構造性能に与える影響について検討する。
300
型で,柱のみのものが2体,直交壁付き柱が4体の計6
体であり,すべてせん断破壊するように設計した。柱
断面b×D=300×300mm,柱内法高さh0=900mm,横補強
300
(a) C16, C13 (b) C16W60, C13W60 (c) C16W90, C13W90
筋比pw=0.11%,柱のみの断面積に対する軸力比η=0.2
図1 試験体断面
(軸力=505kN)は全試験体共通で,実験パラメータ
表2 材料特性
は主筋比pgと壁厚tとした。主筋比は2.65%,1.69%の2
(a) 鉄筋
種類,壁厚はゼロ(壁なし),60mm,90mmの3種類
降伏強度
(N/mm2)
391
392
366
とした。加力は一定軸力下での水平方向正負交番載荷
とし,パンタグラフによって上下スタブの平行が保持
される逆対称加力装置を用いて,部材角±0.5%,±1%,
±2%の加力を各1回行ったあと崩壊するまで正方向に
押し切ることを原則とした。なお,鉛直アクチュエー
300
呼び名
規格
D16
D13
D6
SD345
SD345
SD345
(b) コンクリート
降伏歪
(%)
0.254
0.228
0.245
圧縮強度
(N/mm2)
28.4
圧縮強度
時歪
(%)
0.199
3.実験結果および考察
実験結果および諸耐力計算値を表3に,せん断力−
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
部材角関係を図2に,C16W60の破壊状況写真を写真1
直 交 壁 付 き 柱 ( C16W60 , C16W90 , C13W60 ,
に示す。なお,部材角が大きい場合には,水平力とせ
C13W90)では,柱のみの試験体と同様に柱の中央部
ん断力との違いが無視できないため,せん断力Vを次
にせん断ひび割れが発生してせん断力が急激に低下し
式により算定した。
た(図2(c), (d)のA点→B点)。しかし,このとき直交
V=HcosR+NsinR…
(1)
壁には,後で述べる縦方向ひび割れは発生しなかった
(写真1(a))。その後,図2(c), (d)のC点で直交壁に縦
ここで,H:水平力,N:軸力,R:部材角
方向ひび割れが発生し(写真1(b), (c)の丸内),その
後崩壊に至った(写真1(d))。なお,C16W60では部
表3 実験結果および諸耐力計算値
試験
体名
実験結果
終局強度計算値
最大せん断力(kN) せん断力(2)Vsu(kN)
222〔1.00〕(1)
187
241〔1.09〕
201
252〔1.14〕
215
240〔1.00〕
176
259〔1.08〕
190
257〔1.07〕
202
C16
C16W60
C16W90
C13
C13W60
C13W90
実験結果
崩壊変形(3)(%)
5.6〔1.00〕(1)
6.5〔1.16〕
4.2〔0.75〕
1.3〔1.00〕
5.2〔4.00〕
4.2〔3.23〕
(1)〔〕内数字は各シリーズでの柱のみの試験体に対する比率
る値 (3) 崩壊するまでに経験した最大の部材角
せん断力(kN)
250
200
150
100
-2
-1
C16
A
B
崩壊点
50
部材角(%)
1
-50
2
3
4
5
6
-100
-150
-1
C16W60
A
崩壊点
2
3
-100
-150
-200
-250
4
5
6
7
-2
-1
崩壊点
B
(c) C16W60
C16シリーズ
A
曲げ変形しており,柱と直交壁が分離して挙動してい
るように見える(写真1(b))。
3.2 直交壁が最大せん断力に与える影響
表3よりC16シリーズ,C13シリーズともに,直交壁
が柱に取り付くことにより最大せん断力が1割程度大
きくなっていることがわかる。しかし,壁厚の差によ
3.3 直交壁が崩壊変形に与える影響
1.3%
2
3
部材角(%)
4
5
6
7
8
(b) C13
C13W60
崩壊点
部材角(%)
2
3
C16シリーズ
表3より,C16とC16W60を比較すると直交壁が取り
付くことにより崩壊変形はやや大きくなるのに対し,
C16とC16W90を比較すると直交壁が取り付くことに
C
50
1
-50
8
が集中してせん断変形しているのに対して,直交壁は
る最大せん断力の違いは小さい。
-100
-150
-200
-250
せん断力(kN)
250
C
部材角(%)
1
-50
1
-50
C13
200
150
100
50
B
8
(a) C16
-200
-250
せん断力(kN)
250
200
150
100
-2
7
せん断力(kN)
250
A
200
150
100
B
50
-2 -1
(2) 荒川min式によ
材角の増大とともに柱はせん断ひび割れ面付近に変形
4
5
6
7
8
-100
-150
(d) C13W60
-200
-250
より崩壊変形はやや小さくなっている。つまり,直交
壁が取り付く場合,壁厚が厚いほうが崩壊変形が小さ
いという結果となった。
C13シリーズ
C13シリーズ
図2 せん断力−部材角関係(C16W90、C13W90を除く)
表3より,C13とC13W60およびC13W90を比較する
と,直交壁が取り付くことにより崩壊変形が3倍以上
も大きくなっていることがわかる。また,C13W60と
C13W90を比較すると直交壁が取り付く場合,壁厚が
厚いほうが崩壊変形がやや小さいことがわかる。これ
はC16シリーズと同じ結果である。
以上のように,C16シリーズでは直交壁は崩壊変形
にあまり影響を与えなかったのに対して,C13シリー
ズでは直交壁が取り付くことにより崩壊変形が大きく
(a)+1%時
(b)+4%時
(c)+4%時
(d)崩壊後
改善された。
写真1 C16W60の破壊状況((c)のみひび割れ図を示す)
4.まとめ
3.1 実験経過
柱のみの試験体(C16,C13)では,部材中央部に
せん断ひび割れが発生したのと同時に,このせん断ひ
(1)C16シリーズでは,直交壁が取り付いても崩壊変形
は増えなかった。しかし,C13シリーズでは,直交
壁が取り付いた場合の崩壊変形は増大した。
び割れが貫通した横補強筋が降伏してせん断力が急激
(2)C16シリーズ,C13シリーズともに直交壁が取り付
に低下した(図2(a), (b)のA点→B点)。しかし,この
くことにより最大せん断力が1割程度増大した。
とき崩壊は起こらなかった。その後,部材中央部のせ
ん断ひび割れ面付近に変形および損傷が集中し,せん
断力がゼロ程度に低下したときに崩壊した。
参考文献
1)日本建築学会:建築耐震設計における保有耐力と変形性能, 1990
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
団地型公共集合住宅の外観美観の改善手法
A15
The
Improvement Technique for Building Facades of Housing Complex Type Apartment
土屋
橘高義典(教授),松山祐子(九州産業大学PD),田村雅紀(助手)
潤(博士課程),岡部由利子(文化シヤッター㈱),佐藤昭夫(大成建設㈱))
Yoshinori KITSUTAKA (Prof.), Yuko MATSUYAMA (Kyushusangyo Univ., PD Fellow), Masaki TAMURA (Res. Assoc.),
Jun TSUCHIYA (Grad. Student), Yuriko OKABE (Grad. Student),Akio Sato (Taisei Co.LTD)
ABSTRACT
It is necessary to maximize the design life of buildings and take measures against the city construction stock.
Consequently, there is now a demand for the aesthetic qualities of buildings to be maintained for a long period. The
purpose of this study is to establish the improvement technique of building facades of housing complex type apartment.
The influence of color coordination on aging and desirability is clarified through the results of sensory tests and
systematized for the long-term management of building facades.
キーワード:エイジング,色彩特性,官能検査
Keywords: aging, color properties, sensory test
1.はじめに
本研究では,都市建築ストックに関する更新技術の
一手法として,既存住宅建築物の改修において単なる
a*
外壁補修・塗替え等だけではなく,今後の長期的な建
築の維持及び景観の向上,エイジング(年月の経過に
伴い景観的な質が向上する働き)を考慮し,新たな価
値を創出する外装美観の改善手法を提案することを目
的とし,多摩ニュータウン地域の集合住宅を対象とし,
30
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
1970年
1975年
1980年
1985年
1990年
1995年
2000年
2005年
年代
図2 外装構成材料のa*(赤み)の変化
外装材料の実態調査,外装材料の美観評価を行った。
2.多摩ニュータウン地域の集合住宅の外装材料の色
3.外装仕上材料の美観に関する官能検査
彩特性に関する実態調査
3.1 レンガ風外装パネルモデルの印象評価
調査棟数は1428棟である。調査結果より,外装構成
写真1に,検査に使用したパネル試料例を示す。ま
材に関しては,初期は単一塗装が多く,1980年頃はタ
た,検査結果の一例を図3に示す。試料の好ましさに
イルのみ使用頻度が高くなり,1990年以降はタイル+
は目地の色の影響が大きい。白色目地は新しく落ち着
塗装,複数塗装などの多様化が見られた(図1)。
きがなく,好ましくない,黒・灰色目地は古く落ち着
使用される色彩数に関しては,1990年までは増加す
きがあり,好ましいと評価される傾向がある。
るが,その後やや低下し一定となる傾向にあり,初期
は高明度の無彩色の外装が多いが,年代が進むにつれ
て明度が低下するとともに有彩色が使用される傾向が
ある。また,有彩色が使用される場合,黄赤系が多く
写真1 パネル試料例(左:白目地,右:灰色目地)
使用され青系は少なく,年代が進むにつれて赤系の彩
度が増加する傾向がある(図2)。
複数色塗装
塗 装 ・タ イ ル
R1
yR2
全タイル
2000年
古い ― 新しい
1995年
年代
1990年
1985年
1980年
1975年
1970年
0%
20%
40%
60%
80%
図1 外装構成材料の種類の変化
100%
R2
O
R1
yR2
yR1
rY
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
好ましくない ― 好ましい
単色塗装
白色目地 黒色目地 灰色目地
R2
O
yR1
rY
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
白色目地 黒色目地 灰色目地
図3 外装パネルの古さおよび落ちつき度
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
4.2 レンガ風仕上げ建築物の印象評価
3.2 砂岩仕上げ外装パネルの印象評価
表面仕上げの異なる砂岩試料を用いて照射光が砂岩
実物の建築物の画像に,外装素材モデルの模擬画像
の印象評価に及ぼす影響を把握した。検査結果の一例
を外装仕上として適用して作成したシミュレーション
を図4に示す。凹凸感,目の粗さ感は照射角度との関
模擬試料を対象として官能検査を行い,物理量と評価
係が明確に見られ,照射角度が小さいほど凹凸があり, 尺度との関係を定量的に分析した。
目が粗いと評価された。つや感,明暗感,自然感,心
図6に結果の一例を示す。全体的に黄色みが強いほ
地よさ,特色感,複雑さは照射角度との明確な関係が
うが好ましく,色彩特性が単色均一状態のれんが風仕
見られなかった。砂岩種類別に各角度で評価が異なり, 上建築物では,中明度・低彩度の評価が高く,黄赤系
の低明度の状態は古く落ち着きがあり,好ましいと評
は照射角度が小さいほどつや感が高く,明暗感は,各
価される。色彩特性が複数色不均一状態のれんが風仕
砂岩の表面色の影響が大きく,明度が高い試料ほど明
上建築物では,同一明度配色は古く落ち着きがあり,
るいと評価された。
好ましいと評価された。
砂1A-10
砂1A-40
砂1B-20
砂1D-40
8
4
0
-4
-8
砂1A-20
原画像
砂1B-30
砂1E-40
れんが風仕上
8
4
れんが仕上
0
既存集合住宅色彩情報
基調色:5Y 9 / 1
-4
-8
15° 30° 45° 60°
15° 30° 45° 60°
図4 照射角度による砂岩仕上外装パネルの印象
4.シミュレーション建築物の評価
4.1 勾配屋根集合住宅の印象評価
屋根葺き材料の色彩特性と屋根勾配角度・住棟縦横比
・住棟配列数が集合住宅の印象評価に及ぼす影響につ
いて,シミュレーション画像による官能検査を行った。
検討の結果,屋根勾配が小さい方が落ち着きがあり好
好ましくない ― 好ましい 好ましくない ― 好ましい
砂1-0
砂1A-30
砂1B-10
砂1B-40
不快 − 心地よい
凹凸がない-凹凸がある
陰影以外の要因の影響が考えられる。光沢のある試料
5
3
(中明度)
れんが風仕上
(中明度)
塗装仕上
1
0
-1
-3
-5
5
3
3
6
3
10
(低明度)
pR
6
10
(低明度)
R
1
yR
0
O
-1
rY
-3
塗装仕上
れんが風仕上
-5
3
低
6
←
彩度
→
10
3
高
低
6
←
彩度
10
→
高
図6 れんが風仕上および塗装仕上の好ましさの評価
ましいという傾向があった(図5)。
住棟条件による影響は,屋根勾配の違いが集合住宅
5.まとめ
の印象評価に与える影響が明らかとなった。なお,住
エイジングを考慮した団地型公共集合住宅の外装美
棟縦横比と住棟配列数配列数については,明確な影響
観の改善手法の確立を目的とし,建築物郡,建築物,
が見られない結果となった。
外装仕上材料の各レベルでの調査と評価を行った結果,
既存集合住宅の外装材料の種類および色彩の実態,外
装材料の種類別の評価の特徴などが明らかとなった。
陸屋根
10/10勾配
5/10勾配
落ち着きがない−落ち着きがある
6
3
0
-3
-6
5/10 10/10
高彩度
5/10 10/10
基準彩度
5/10 10/10
低彩度
5/10 10/10
無彩色
図5 屋根勾配と試料と落ち着き度との関係
関連発表論文
1)松山,橘高,田村:景観材料のエイジング評価に及ぼす色彩特
性の影響に関する研究(その2),日本建築学会構造系論文集 第586
号, pp.23-27, 2004.12
2)橘高,田村,佐藤,松山,土屋:多摩ニュータウン地域の集合
住宅の外装材料の色彩特性に関する実態調査,日本建築学会技術報
告集,第21号,2005.6(掲載決定)
3)松山,橘高:景観材料のエイジング評価に及ぼす色彩特性の影響に
関する研究その3れんが風仕上建築物の色彩特性がエイジング評価に
及ぼす影響,日本建築学会構造系論文集 第593号,2005.7(掲載決定)
4)土屋、橘高,田村:建築石材仕上げの視覚的評価に及ぼす表面
性状の影響に関する研究,その3 照射角度が砂岩表面の視覚的評価
に及ぼす影響,日本建築学会構造系論文集 第593号,2005.7(掲載決定)
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
団地型集合住宅の構造体健全度評価
A16
-補修 コンクリートの耐久性維持効果と構成材料の再資源化−
The evaluations of structural body of a housing complex type apartment
-Durability preservation in crack repaired concrete and recycling of concrete materials-
田村
雅紀(助手)
新井
橘高 義典(教授)
健志(修士課程)
Masaki TAMURA (Res. Assoc.), Yoshinori KITSUTAKA (Prof.)
and Kenji ARAI(Master Course)
ABSTRACT
The performances of durability preservation in crack repaired concrete and carbonation properties of recycled
concrete were investigated. Affects of matrix strength, fiber properties, an extent of crack repair and an extent of
loading forces of freezing and melting on fracture toughness were tested. The specimen of non-fiber concrete repaired
the crack mouth by epoxy resin showed toughness failure by loading forces of freezing and melting. On the other
experiments, The carbonation properties of Recycled concrete which introducing surface improvement method to the
recycled aggregate were different between surface improvement agents of oil type and silicon type.
キーワード:補修コンクリート, 凍結融解試験, 中性化試験 Keywords: crack repair concrete, freeze and melting test, carbonation test
生骨材を用いてコンクリートを製造し, その中性化抵抗
1.はじめに
既存コンクリート構造物に潜在する問題として, 材料
性を評価する。また再生骨材の品質管理項目で重要度
劣化したコンクリートを補修した後に,その効果が長期
が高いアルカリシリカ反応性試験については今後検討
に渡り維持できるのかを現状の技術で予測できない点
する。研究3は, 各種劣化機構(塩害, 中性化, 凍結融解)
が挙げられる。それは, 建築物の場合, 構造体に要求さ
が作用して性能低下した(させる)鉄筋入りコンクリ
れる各種性能から建築物の機能寿命が直接予測できな
ートを製造し, 特定の劣化機構を更に作用させて, 腐食
いこと, 補修性能を照査するシステムが確立していない
により性能低下しつつある状態を電気化学的手法によ
ことなど, 様々な理由がある。なお補修・補強の効果が
り直接評価し, 鉄筋コンクリート部材に本質的に要求さ
予め期待できないと判断された場合は,構造用再生骨材
れる性能の低下程度を評価する。
などに合理的に再資源化する技術も重要視されており,
2.2 使用材料と実験方法
後者については平成16年度の内閣府総合科学技術会議
表1に使用材料を, 表2に実験内容を示す。研究1は
における研究推進テーマとして掲げられている。本稿
モルタル試験体を使用し, 研究2は改質処理再生骨材コ
は, 上記内容を鑑み, 既存コンクリート部材およびその
ンクリートを使用し, 研究3は, 鉄筋を入れたコンクリ
構成材料を模擬した小試験体を作製し, 補修コンクリー
ート試験体を使用する。
トの耐久性維持効果, 再生骨材コンクリートの耐久性な
2.3 結果および考察
らびに鉄筋が腐食したコンクリート部材の劣化度評価
(1)研究1−補修コンクリートの耐久性維持効果−
を検討したものである。
図1,2に補修コンクリートに対し, 凍結融解の劣化
表1 主な使用材料(研究1,2,3)
2.研究概要
材料
2.1 実験の方針
セメント
本稿は, 大きく3部に構成されている。研究1は, 昨
1)2)
研究1
年度に引き続き , エポキシ樹脂でひび割れ補修したコ
ンクリートについて, 凍結融解の劣化機構を与え, その
研究2
造し, 再生コンクリートの品質低下の諸原因となってい
る付着ペーストの影響を低減する改質処理を施した再
研究3
ビニロン
繊維
エポキシ
樹脂
細骨材
砂岩砕砂
低品質
粗骨材
再生骨材
シラン系
改質処理材
油脂系
細骨材
砂岩砕砂
鉄筋
異型
補修材
耐久性維持効果を評価する。研究2は, コンクリート塊
を構造用再生骨材の品質規格に見合うように破砕・製
短繊維
種類
普通
セメント
記号
物性
C
密度3.16(g/cm3)
V
直径μm
長さ12mm
長さ30mm
40
Sss
---
密度1.30(g/cm3)
200
400
Ss
Sm
--Lm
660
Sl
---
E
超低粘度130(mPa/s), 引張20(N/mm2)
S
絶乾密度2.58(g/cm3),吸水率1.71(%)
L
絶乾密度2.58(g/cm3),吸水率1.71(%)
Si
Oi
S
D6
シラン系化合物水溶性エマルジョン
パラフィン系水溶性エマルジョン
絶乾密度2.58(g/cm3),吸水率1.71(%)
φ6 補強筋用異形鉄筋
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
表3 主な試験項目(研究1,2,3)
研究2
20
4
項目
a)普通強度
内容
劣化外力
凍結融解試験(JIS A 1148) サイクル数(0, 30, 60, 90, 120)
サイクル数:補修後20年程度の供用を想定(6回/年)
劣化度評価
評価項目:質量変化率(%),有効破壊エネルギー(Gfu), 初期結
合応力(σ)
研究1
試験体:材齢4周まで温度20度の水中養生, 養生後, 材齢
8周まで恒温恒湿漕(相対湿度60%, 温度20度)に設置。
促進中性化 材齢8周間近にエポキシ樹脂で上下面をシール。
試験:所定初期水中養生後, 温度20±2℃, 相対湿度60±
試験
JIS A 1153 5%, CO2濃度5±0.2%試験装置にて実施
参考
試験体大きさ:φ10×高さ20の円柱供試体3本。破断面円
周部より, 内部浸透位置に対し全10箇所測定。
期間:1,4,8,13週
評価:所定期間ごとに1%フェノールフタレイン溶液を噴霧,
赤変しない部分の深さ10ヶ所測定, 平均値が中性化深さ。
岸谷式3)の相関:R=1(中性化比率:普通ポルトランドセメント,
川砂川砂利), W/C=60%以下に適用可能な式を利用。
中性化評価
JIS A 1152
7.2
t=
R 2 (4.6w − 1.76 )
10
5
1
その性能が評価されるグラフとしている。
結果, 補修コンクリートに使用した短繊維長に関わ
らず, ひび割れが再び入り始める抵抗力を示す初期結
N-00基準
(1倍=68N/m)
N-00基準
(1倍=3.4MPa)
0
4
0
20
b)高強度
L-series
S-series
H-00
3
2
b)高強度
L-series
S-series
H-00
15
H-Lm02
H-Sm02
H-Lm01
H-Sm01
H-Lm02
10
H-Sm02
H-00
5
1
H-00基準
(1倍=6.7MPa)
原モルタル
4
H-Lm01
H-00基準
(1倍=87N/m)
H-Sm01
H-00
0
60
サイクル数
0
120
20
c)普通強度
N-Ss01
N-Sss01
N-Sl01
N-Sm01
N-00
3
S-series
N-00
原モルタル
0
60
サイクル数
c)普通強度
S-series
N-00
10
2
120
N-Sss01
N-Ss01
N-Sl01
N-Sm01
N-00
15
N-00基準
(1倍=68N/m)
比と, 有効破壊エネルギー比を示す。各供試体は, 短
繊維を使用しない標準供試体(1倍)に対する評価値で
L-series
S-series
N-00
Lm02(0サイクル),Sm01(60サイクル)
は解析不能
N-Lm02
N-Sm02
N-Sm01
N-Lm01
N-00
N-00
(W:水セメント比, X:中性化深さ(cm), t:期間(年))
機構を最大150サイクルまで作用させた初期結合応力
15
N-Lm02
N-Sm02
N-Lm01
N-Sm01
2
・x 2
2
劣化試験体
NaClを最大5kg/m3濃度で作製
作製
劣化機構(凍結融解)を与えた腐食促進試験体に挿入され
電位差測定
ている鉄筋の電位差を直接測定
a)普通強度
L-series
S-series
N-00
3
0
研究3
[2005/04/28]
1
5
N-00基準
(1倍=3.4MPa)
0
原モルタル
0
60
サイクル数
0
120
図1 初期結合応力比と凍結融解
サイクルの関係(a,b,c)
原モルタル
0
60
サイクル数
120
図2 有効破壊エネルギー比と凍結
融解サイクルの関係 (a,b,c)
合応力は劣化が進むにつれて一様に低下するが, 破壊
30
エネルギーは, 繊維長が長いほうが大きくなる。
ともに示す。なお, Lは低品質再生骨材を示し, Mは比
較用の中品質再生骨材の場合で, Sはシラン, Oは油脂系
である。改質処理の影響が確認され, シランの場合,
マトリックスの水和が阻害された可能性から中性化が
倍程度進行しており, 低品質でW/C0.6のシラン処理が
最も性能低下している。油脂系は, 無処理と同等であ
中性化深さ(mm)
(2)研究2−改質処理再生コンクリートの中性化抵抗性−
図3に中性化深さと促進期間の関係を破断面写真と
中性化深さ(W/C=60%)
Mn60
Mo60
Ms60
Ln60
Lo60
Ls60
岸谷60
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
促進期間(日)
25
図3 中性化試験結果(左図:中性化深さの結果,右上:呈色状況
W/C=0.4, 右下:呈色状況W/C=0.6,供試体左よりN,O,Sシリーズの順)
100
100
10 6
31
6
31
6 10
10
100
73
100
6 10
り, 改質処理の影響は確認されない。
(3)研究3−腐食鉄筋による部材劣化度評価−
30
56
5
本実験は現在予備実験を実施中である。図4に試験
体概要を示す。鉄筋入り供試体は, 100×100×100mm
でありφ6の内部丸鋼と表面部分とのかぶり厚が
5mm,10mmとなる2種類である。コンクリート中の鉄筋
が腐食した場合の電気抵抗値の変化を測定したところ,
試験結果からは, 軽度の腐食の場合, 健全な鉄筋の場
合と比較した抵抗値の差は殆ど発生しないことが確認
された。従って, 現在は測定方法を再検討しているが,
電気化学的な手法により鉄筋の腐食程度を直接測定し
て, 部材性能の劣化度と関連づけた評価をする重要度
は高いと考えられるため, 引き続き検討を行う。
5 6
36
6
36
65
図4 鉄筋入りコンクリートの腐食試験試験体
3.まとめ
研究1の補修コンクリートの耐久性維持効果は, 繊維
とマトリックスの調合条件により, その維持効果に差異
があることが確認された。研究2では, 改質処理剤を用
いて構造用再生骨材を使用する場合, 処理剤の種類によ
っては耐久性の低下が抑制できる。
参考文献
1)Kitsutaka,Y.,Tamura,M.and Arai,K.:Durability on the fracture toughness of
crack-repaired various concrete, Int. Conf. on 10 DBMC, LYON,2005.4
2)田村,橘高,新井,松沢:各種コンクリート試料のひび割れ補修による靭
性回復とその耐久性維持効果に関する研究,日本建築学会構造系論
文集第591号,pp.19-24,2005年5月(掲載決定)
3)岸谷孝一:鉄筋コンクリートの耐久性, 鹿島建設技研出版部, 1963年
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
A21
[2005/04/28]
建物改修時の耐震補強技術に関する調査・研究
Investigation on Seismic Retrofit Methods for Rehabilitation Buildings
芳村 学(教授)
北山 和宏(助教授)
森田 真司(研究員)
Manabu YOSHIMURA (Prof.), Kazuhiro KITAYAMA (Assoc. Prof.),
And Shinji MORITA (COE Researcher)
ABSTRACT
Various techniques and methods have been developed for seismic retrofit of existent buildings since HyogokenNanbu Earthquake in 1995. The retrofit methods, however, are not always employed appropriately on the basis of
those structural characteristics and mechanics. The project investigated properties of many seismic retrofit methods
through questionnaire to construction companies, such as advantages, earthquake resistant performance, the duration
and cost of specific construction work and the possibility of successive occupation of the building during retrofitting
works. Evaluation of respective methods contributes to optimum application of the method which is suitable to
strengthen each existent building.
キーワード:耐震補強、建物改修、工法調査
Keywords: Seismic Retrofit, Rehabilitation, Method Survey
1.はじめに
30
1.1 調査の目的
兵庫県南部地震以降、耐震性能の劣った既存建物を
25
適用事例有
適用事例無
24
補強することの重要性が再認識され耐震診断および耐
もない、さまざまな耐震補強技術・工法が開発されて
実用に供されているが、それぞれの力学的な特性・特
徴に基づいた適正な使用が為されているかどうか疑わ
しい事例も散見される。そこで本プロジェクトでは、
さまざまな耐震補強技術・工法を調査し、その特徴・
利点、補強設計時に注意すべき事項および使用例を整
理する。これによって既存建物の構造特性を生かした
最適な耐震補強工法を選定するための方法・手法を構
20
工法数
震補強が積極的に推進されるようになった。それにと
14
15
10
5
4
6
5
2
2
2
2
0
0
部材補強
フレーム
制震補強
免震補強
1
2
3
4
補強
床補強
5
図−1 工法種別ごとの適用事例の有無
築し、あわせて耐震補強技術の一層の発展に役立てる。
2.アンケート調査結果の分析
1.2 アンケート調査結果の概要
2.1 適用事例の有無
本研究では耐震改修工法のアンケート調査および
アンケート調査結果のうち、適用事例の有無およ
工法の適用事例について取りまとめを行った。アンケ
び各工法が適用された建物種別に着眼して調査結果
ートは建設実務を担っている建設業界を対象に実施し、
の分析を行った。各工法分類における適用事例の有
34社(61件)の回答を得た。アンケート調査結果から、
無の内訳を図−1に示す。工法の適用事例は、①強
現在の耐震改修工法は強度補強、靭性改善を狙ったも
度靭性型の部材補強、②強度靭性型のフレーム補強、
のが過半数を占め、床スラブ撤去時に適用できる可能
③制震補強、④免震補強、⑤床補強に分類して示し
性がある工法は全体の8%程度であった。また居付き
た。アンケートに回答のあった全61工法のうち、51
補強に着眼したアンケート調査結果から、居付き補強
件については改修の事例があり、10件については事
に拘らない場合、部材補強工法から工法を選定し、居
例がなかった。適用事例が無い工法は開発途中であ
付き補強したい場合、フレーム補強工法・免震補強工
ること、開発直後の工法であることが適用事例の無
1)
法から工法を選定すべきであることを示した 。
い理由であった。
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
2.2 工法の適用事例
[2005/04/28]
11%
各工法が適用された建築物の内訳を図−2に示す。
28%
ここでは、住宅(共同住宅、社員寮など)、官公庁
その他
その他
官公庁
・学校
・学校建物、オフィスビル、工場、銀行、病院、そ
の他(商業施設、寺院など)に分けて示した。部材
補強工法は、柱・梁・壁などに対する補強であるこ
6%
17%
住宅
工場
17%
適用された事例が最も多く全体の22%であり、次い
官公庁
・学校
49%
(b)フレーム補強工法
19%
22%
で官公庁・学校建物への適用事例が19%であった。
住宅
部材補強工法が住宅に適用された事例は全工法種別
その他
の中で7件と最も多かった。フレーム補強工法は、6 病院
7%
工法(6件)で適用事例があった。フレーム補強工
官公庁
50%
・学校 19%
法は、主に大学等の学校建築への適用であった。ま 銀行 4% 工場
オフ ィス
た住宅への適用例が1件、工場への適用例が1件あっ
ビル
7%
た。制震補強工法は、14工法(27件)で適用事例が
22%
(c)制震補強工法
あった。オフィスビルへの適用事例が多く、住宅へ
9%
9%
適用された事例は5件あり、部材補強工法に次いで
9%
その 住宅
多い結果となった。免震補強工法は、2工法(2件)
の適用事例があった。住宅1件およびオフィスビル1
9% 銀行
件)の適用事例があった。官公庁・学校建物への適
工場
9%
官公庁
・学校
住宅
63
フレーム補強
6
制震補強
27
37%
免震補強
2
床補強
11
18%
(e)床補強工法
各工法が適用された建物種別から判断すると、住
宅に対する工法としては部材補強・制震補強工法、
図−2 適用事例の内訳
学校建物等には部材補強・フレーム補強・制震補強
工法、オフィスビルには部材補強・制震補強工法が
工法の適用事例に着眼したアンケート調査結果の
適用されることが多い。これは集合住宅ではラーメ
分析を行った。この結果、部材補強工法および制震
ン構造に近いものが多くピロティ柱の補強等が容易
補強工法は様々な建物へ適用事例があり、他の工法
であること、学校建物では片廊下型建物が多いなど
と複合的に使用できる可能性があった。また完全に
建物種別ごとに特徴的な構造特性があるためである。
居付き補強を実施した事例はなかった。居付き補強
これらの建築種別ごとに適した工法が単独または複
に付いては、施工技術の向上や各工法の複合的な適
合的に使用されることによって効率的に耐震性能を
用の検討などが必要である。
今後は、耐震改修工法による耐震性能向上を定量
向上させることができると考えられる。
的に把握するため、耐震改修工法を適用した学校建
2.3 居付き補強との関係
居付き補強したい場合に選定すべき工法としてフ
1)
レーム補強工法および免震補強工法を挙げた 。これ
物を対象とした3方向骨組解析を実施していく予定
である。
ら2工法の適用事例は合わせて8件あったが、このうち
居付き補強が最も重要である住宅への適用事例はわず
謝辞
か2件であった。また、完全に居付きで行われた改修
公団と共同で行ったものである。
事例はなかった。完全居付き補強を前提として耐震改
修を進める場合の工法については、今後の施工技術の
向上などが必要不可欠である。
3.調査結果のまとめ
50%
適用事例総数
部材補強
オフ ィス
ビル
事例が2件あった。
オフ ィス
ビル
(d)免震補強工法
病院 他
件への事例であった。床補強工法は、5工法(11
用事例が4件で最も多く、次いでオフィスビルへの
工場
オフ ィス
ビル
22%
11%
(a)部材補強工法
件)で適用事例があった。このうちオフィスビルに
住宅
19%
病院
とから、様々な建物に適用されており24工法(63 銀行3%
17%
本研究は独立行政法人建築研究所及び都市基盤整備
□参考文献
1) 芳村学、北山和宏、森田真司他:建物改修時の耐震補
強技術に関する調査・研究、東京都立大学21世紀COEプ
ログラム「巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育
成」平成15年度成果報告会梗概集、pp.22-23、2004.6.
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
[2005/04/28]
ベトナム・ハノイの近代集合住宅の改善計画
A41
居住状況に関する2004年8月現地調査の結果概要
Project for Rehabilitation of Modern Collective Housing in Hanoi, Vietnam
Primary Findings from the Field Survey on the Housing State in August 2004
山田 幸正(助教授)
藤江 創 (研究員)
西田 司 (助 手)
チャン ティクェハ(協力者)
Yukimasa YAMADA (Assoc. Prof.)
So FUJIE (COE Res.)
Osamu NISHIDA (Res. Assoc.)
TRAN Thi Que Ha (COE Collab.)
ABSTRACT
Since the 1960s, the government of Vietnam has constructed various types of collective housing estates in Hanoi, whose buildings
have been deteriorating functionally, structurally and aesthetically. Every kind of change influenced by rapid economic growth occurs in
many apartments. In August 2004, we made a field survey on the present state and the transformation of the collective housing in the Trung
Tu District and Kim Lien District, Hanoi, in collaboration with a research group of Hanoi Architectural University. This paper refers to a
few observations on the actual state of urban housing, reporting some results based on this survey.
キーワード:
団地、
Keywords:
Housing Estate, Family Member, Extension,
家族構成、
1.はじめに
ベトナムの首都ハノイでは、1960年代以降、旧ソビエ
増築、
改装
Refurbishing
ど居住者それぞれの日常行動に対応する形での各室の
使われ方、さらに各室ごとの増改修の経緯などである。
トなど社会主義諸国からの援助を受けながら、国営の集
増改修箇所の確認、現状における家具配置の把握、各室
合住宅団地を数多く開発してきた。これらの集合住宅は
4枚程度の現況写真の撮影なども同時に行なった。
構造的にも、機能・設備的にも、また美観的にも大いに
表1にその概要を示した。
老朽化している。また近年、資本主義的な市場経済の積
表1 2004年8月調査対象の概要
極的な導入にともなって、とくに都市部において個人の
嗜好が多様化し、住宅に対する要求もかなり変化しつつ
あると考えられる。
調査 地
住戸階
No. 区
つつある社会的・経済的な変化のなかで、住民が将来ど
のような都市居住を考えているかを把握しながら、老朽
1979年
(5名)
2000年
2
1階
2000年
(2名)
2000年
3
2階
1977年
(3名)
1982年
4
5階
1998年
(5名)
3階
1972年
(6名)
国からの賃貸
3階
1976年
(3名?)
2001年
4階
1987年
(4名?)
1987年
男(63)/女(57)
8
1階
1988年
(6名)
2001年
男(76)/女(34)
9
1階
1975年
(7名)
2001年
10
3階
1976年
(5名)
2001年
11
4階
1975年
(4名)
2001年
12
1階
1974年
(4名)
2000年
13 ム
3階
1971年
(1名)
2001年
14
1階
1972年
(5名)
1999年
1階
1971年
(4名)
2001年
5
に報告したい。
7
ン
ト
ゥ
6
ゥ地区およびキムリエン地区の公的集合住宅団地にお
いて実施した現地調査の概要とその成果について簡潔
チ
ュ
月1日から5日の間、ハノイ市南部に位置するチュント
地
区
2.調査の概要
調査対象となったのは、70年代に開発されたチュント
ゥ団地で11戸、最初期60年代からのキムリエン団地で4
戸、合わせて15の住戸で、それぞれ住戸内に立ち入り、
以下のような聞き取り調査を中心に、写真撮影、図面採
取などを行なった。
聞き取り項目としては、入居時期、居住者の家族構成
キ
とその変化、近隣との関係、立地・間取り・環境などに
対する満足度、各室の呼称、食事・就寝・テレビ観賞な
居住者構成
住戸面積(居住時) 住戸面積(現状)(㎡)
(バルコニー等含む)
(現在居住人数)
(㎡)
女(82)/男(55)/女
(44)/男(5)
3階
化した集合住宅の改善のための計画策定をめざしてい
る。ここでは、ハノイ建築大学の協力のもと、2004年8
個人所有年
1
そこで、本研究プロジェクトは、これら1960年代から
70年代に建設された公的集合住宅団地を対象に、激変し
入居年
(入居時人数)
15
リ
エ
ン
地
区
40.39
73.43
(22.66)
46.25
100.42
42.90
77.40
(26.06)
39.77
79.35
(4.94)
42.48
74.07
(5.53)
42.02
51.69
(5.29)
43.74
76.66
(5.29)
(2人)
68.13
(19.43㎡売却)
74.65
(18.78)
男(65)/女(64)
13.93
52.27
35.03
45.22
(2.11)
35.03
45.22
(2.11)
36.71
91.21
(テラス部分48.72)
17.53
24.19
(ロフト部分6.66)
26.03
63.28
(外部台所部分48.72)
19.97
60.11
(4人)
男(74)/女(72)
(2人)
男(77)/女(80)/男
(49)/女(41)/男(18)
(5人)
1995年?
男(78)/男(45)/女
(45)/女(12)/男(10)
(父より名義変更)
(5人)
男(77)/女(70)
(2人)
男(72)/女(59)/男
(33)/女(27)/男(0)
(5人)
(2人)
(2人)
男(74)/女(58)/女
(31)
(3人)
男(62)/女(58)/男
(34)/女(32)/男(42)
(6名)
男(75)/女(65)/男
(40)/女(35)/女(15)
(6名)
男(66)
(1人)
男(65)/女(63)/男
(35)/女(33)/男(8)
(5名)
女(67)/女(38)/男
(34)/女(33)/男(7)
(5名)
東京都立大学21世紀COEプログラム
巨大都市建築ストックの賦活・更新技術育成
Development of Technologies for Activation and Renewal of Building Stocks in Megalopolis
3.居住者について
それぞれの団地とも4∼6人家族で70年代に入居し
た例を比較的多くみることができる。なかには14㎡程度
[2005/04/28]
の多くは入口近くから奥に移され、トイレ・シャワー室
を二つ備えるようになった例も多い。
住民による自主的な増改築は、とくにNo.8のように1
の住戸に7人家族が居住していた例さえある(No.9)。
階部分の住戸で、構造・設備的な制約がほとんどないた
しかし、80年代を中心に、子供が次第に結婚し独立する
め盛んに行なわれている。一方、上階では下階での増築
ことが多くみられ、現在では、老人夫妻だけの住戸もみ
が重要な要因となり、住民同士の調整で3階まで施工さ
られ、ハノイでもいわゆる「核家族化」が近年進んでい
れた例(No.10)もみられた。それ以外では、既存バル
る実情がみてとれる。1982年、87年、95年という早い時
コニーを利用し、床を2m近くまで持ち出した例もあっ
期もあるが、おおむね2000年前後に、国から賃貸してい
た。水周りの改修はほぼすべての住戸でなされ、台所シ
る1戸を除いて、それぞれの住戸は国からほぼ無償で払
ンクや洋風便器、洗面台などが導入されている。また、
い下げられ、現在、個人所有となっている。
キムリエン団地では、もと共用の水周りであった部分が、
住まいに対する満足度を聞くと、立地についてはほぼ
全員が満足しているのに対して、周辺環境に多くの人が
90年代後半以降、各住戸に分割所有され、それぞれで風
呂場などに改装されている。
不満をもっている。かつて50∼60年代では郊外地であっ
たが、今や都心に近い好立地であることは誰もが認める
5.今後の予定
ものの、建物などの老朽化が進むにつれて、地区の地盤
以上のような調査とは別に、昨年度はハノイの集合
沈下も起こりつつある現状が読みとれる。2002年に国費
住宅団地に関する既往の研究資料の収集をハノイ建
によって倍近い面積の増築が叶った住戸(No.1∼5、
築大学に依頼し、現在まで15件が収集済みである。今
No.7)を除いて、広さに対する不満は比較的多いが、一
後、これらの資料の翻訳と分析を開始する予定である。
方で増築した後に家族が減った例もみられる。広さに関
昨年度の調査で住戸内の居住調査についてはほぼ
係なく、間取りについても不満の多いことが目立つ。
内容的に固まったので、ベトナム側に同様な調査を委
託し、これに関する情報の精度を高めてゆきたい。
4.増築・改修について
また、聞き取りによると、近年、住民同士による住
前述のように、チュントゥ団地では2002年に床面積を
戸やその一部の交換が盛んに行なわれている。とくに
ほぼ倍にする増築が、躯体工事費を国が支弁して実施さ
1階部分の需要が高く、店舗などへの転用など有用性
れた。しかし、家族構成の変化や住民の要求に必ずしも
が注目されているようである。そこで、団地内での公
一致したものではなく、画一的で、間取りなど機能面に
園や学校、市場などの公共施設などの土地利用の実態
不満を残している。また、近隣では同様な増築を期待し
だけなく、各住棟の足回りにおける非公式的な使われ
ながら実現されておらず、これに対して強い不満が聞か
方など東南アジアに固有な土地活用の実態を調査し、
れた。この増築に対応して、水周りの面積も増し、台所
把握したいと考えている。
図1 増築・改築の事例(No.8 チュントゥ地区)