博 士 ( 工 学 ) 早 田 俊 広 学 位 論 文題 名 A Study on the Evaluation of Policies for Financial IvIanagement of Urban Development Projects. ( 都 市 開発 事 業に お ける 財 政運 営 の政 策 評価 に 関する研究 ) 学位論文内容の要旨 都市 の社会資 本整備、 特に長期 的・大規 模な都市 開発事業は 公団、第 三セク ター 方式で実 施される ことが国 内外を問 わず多い 。このよう な都市開 発事業は 長期 の事業期 間中に経済社会の大きな変動の影響を受けることある。そのため、 都市 開発事業 の運営、 マネジメ ントは都 市計画の 円滑な実現 と都市の 社会資本 整備 の遂行に とって重要な事柄である。また、長期的・大規模な都市開発事業は 経済 社会の変 動の中で その意義 と役割を 再点検し 、政策評価 を行うこ とが社会 的に 求められ るように なってい る。 本 論文 は、公 団、第三 セクター 方式で実施 されてい る長期的 ・大規模 な都市 開 発 事 業につ いて、事 業主体で ある公団、 第三セク ターの財 政運営と それを監 督 す る 政府・ 自治体の 支援施策 について、 政策評価 の観点か ら研究を 行ったも の である。 研 究の 対象と しては主 に、公団 、第三セク ター方式 による都 市開発事 業につ い て そ の歴史 が長く、 かつ規模 が大きいフ ランスの バりを取 り上げる 。具体的 に は フ ランス 政府が国 策として 建設を開始 したバリ 市郊外の 新都心〓 デフんン ス 地域開発 事業とそ の事業主 体、デフ ァンス公 団(EPAD)、また、バリ市内最大 の 再 開 発であ り、パリ 市政府が 実施してい るバリリ ブゴーシ ュ地区開 発事業と そ の事業主 体、混合 経済会社 (SEMAPA)を取り 上げた。 こ の2つの 都 市 開発 事 業に つ い て、 その事 業の財政 運営の実 態、財政 危機の 発 生とそれ に対する 対応策に ついて、公団、混合経済会社の内部資料・報告書、 フ ラ ン ス政府 設備省、 パリ市議 会議事録等 の原資料 をもとに 、実証的 に分析を 行 い 、 同時に 、公団、 政府、バ リ市議会等 の関係者 から分析 の適切さ について ヒ ア リ ングに よる確認 を行い、 都市開発事 業に財政 運営の危 機・課題 が発生し た 場 合 の施策 の方針と その役割 について、 我が国の 都市開発 事業との 比較を念 頭 に置きな がら、そ の全体像 を解明し たもので ある。 第 1章では、 序論とし て、本論 文の目的 、意義、 研究方法についてまとめた。 第 2章 では 、 都 市開 発 事業 の 財 政運 営、マ ネジメン トにとっ て最も重 要な外 部 要 因 であ る 不 動産 市 場の 変 動 につ い て、 フ ラ ンス の 状況 に つ いて 示した。 第 3章 では 、 デ ファ ン ス地 域 開 発事 業の概 要、デフ ァンス地 域開発公 団の組 織 、 責 任 、 財 政 制 度 及 び 財 政 運 営 に つ い て 分 析 を 行 なっ た 。 第 4章 で は 、 1958年 の 事 業 開 始 以 来 、1970年 代 及び 1990年 代 の2度 の オ イ ルショッ ク、不動 産市場の危機、これらの財政状況の悪化に対する政府の施策・ 措置、さ らに、1990年 代の開発負 担金をめ ぐる訴訟 事件の意 義につい て分析す るこ と によ り 、デ フ ァン ス 地域開発の 財政運営の 特質を明ら かにした。 第 5章 では 、 バ リリ ブ ゴー シュ地区開 発事業の 概要、バ リ市政府 設立の混 合 経 済 会 社 の 組 織 、 責 任 、 財 政 制 度 及 び 財政 運 営 につ い て 分析 を 行な っ た 。 第 6章 では 、 バ リリ ブ ゴー シュ地区開 発事業の 開始直後 、生じた 1990年代の 不動産市 場の危機 、バリ市政 府によっ て採られ た施策・ 措置につ いて分析する ことによ り、同事 業の財政運 営の特質 を明らか にした。 第 7章 では 、 フ ラン ス の都 市開発事業 の財政運 営の特徴 として、 企業会計 原 則に基づ くバラン スシートの 作成、ア カウンタ ピリテイ の徹底と 、財政運営に 対する政 府・自治 体の機動的 ・積極的 な支援策 の内容・ 意義につ いて分析・評 価を 行 った 。 ま た、 こ れ らの 点 をわ が 国 の状 況 と比 較 した考察 を行なっ た。 第 8章 では 、 本 研究 で 得ら れた結論お よび今度 の課題を まとめた 。長期的 ・ 大規模な 都市開発 事業におい ては事業 主体であ る公団、 第三セク ターと監督官 庁・自治 体との間 で、経済社 会の変動 に適切に 対処し、 公団、第 三セクターの 健全な収 支バラン スを実現す るためは 、都市開 発事業の 財政運営 面でのアカウ ンタピリ テイを明 確化することが重要であることを明らかにした。また、都市開 発事業の 財政運営 のアカウン タピリテ イの実施 が、適時 ・適切な 計画と事業内 容の見直 し、イン フラ整備の 負担原則 の明確化 ・見直し 、金融面 の支援施策の 必 要 性 の 有 無 に つ いて 等 の前 提 条件 に なる こと を 明ら か にし た 。 学位論文審査の要旨 主 副 副 査 査 査 教 教 教 授 授 授 越 小 佐 澤 林 藤 英 馨 明 嗣 一 学 位 論文 題 名 A Study on the Evaluation of Policies forFinancial ManagementofUrbanDeVe10pmentProjeCtS・ ( 都 市開 発 事 業に お ける 財 政運 営 の政 策 評価 に関 する研究) 都市の社 会資本整 備、特に 長期的・ 大規模な都 市開発事 業は公団 、第三セク ター方式 で実施さ れること が国内外 を問わず多 い。この ような都 市開発事業は 長期の事 業期間中に経済社会の大きな変動の影響を受けることある。そのため、 都市開発 事業の運 営、マネ ジメント は都市計画 の円滑な 実現と都 市の社会資本 整備の遂 行にとって重要な事柄である。また、長期的・大規模な都市開発事業は 経済社会 の変動の 中でその 意義と役 割を再点検 し、政策 評価を行 うことが社会 的に求め られるよ うになっ ている。 本 論文は、 公団、第 三セクタ ー方式で実 施されて いる長期 的・大規模な都市 開 発事業に ついて、 事業主体 である公団 、第三セ クターの 財政運営 とそれを監 督 する政府 ・自治体 の支援施 策について 、政策評 価の観点 から研究 を行ったも の である。 研 究の対象 としては 主に、公 団、第三セ クター方 式による 都市開発事業につ い てその歴 史が長く 、かつ規 模が大きい フランス のバりを 取り上げ る。具体的 に はフラン ス政府が 国策とし て建設を開 始したバ リ市郊外 の新都心 =デフんン ス 地域開発 事業とその事業主体、デフんンス公団(EP AD)、また、バリ市内最大 の 再開発で あり、パ リ市政府 が実施して いるバリ リブゴー シュ地区 開発事業と そ の事業主 体、混合 経済会社 (SEMAPA)を取り上 げた。 こ の2つの 都 市開 発 事業につ いて、そ の事業の 財政運営の 実態、財 政危機の 発 生とそれ に対する対応策について、公団、混合経済会社の内部資料・報告書、 フ ランス政 府設備省 、バリ市 議会議事録 等の原資 料をもと に、実証 的に分析を 行 い、同時 に、公団 、政府、 バリ市議会 等の関係 者から分 析の適切 さについて ヒ アリング による確 認を行い 、都市開発 事業に財 政運営の 危機・課 題が発生し た 場合の施 策の方針 とその役 割について 、我が国 の都市開 発事業と の比較を念 頭 に置きな がら、そ の全体像 を解明した ものであ る。 第 1章では、 序論として 、本論文 の目的、意義、研究方法についてまとめた。 第 2章で は 、 都市 開 発事業の 財政運営、 マネジメ ントにと って最も 重要な外 部 要 因で あ る 不動 産 市 場の 変 動に つ い て、 フ ラン スの状 況につい て示した 。 第 3章で は 、 デフ ん ンス地域 開発事業の 概要、デ ファンス 地域開発 公団の組 織 、 責 任 、 財 政 制 度 及 び 財 政 運 営 に つい て 分析 を行 な った 。 第 4章 で は 、 1958年 の 事 業 開 始 以 来、 1970年 代及 び 1990年 代の 2度 の オイ ル ショック 、不動産市場の危機、これらの財政状況の悪化に対する政府の施策・ 措 置、さら に、1990年代の 開発負担 金をめぐ る訴訟事 件の意義 について分析す る こ とに よ り、 デ フん ンス地域 開発の財政 運営の特質 を明らかに した。 第 5章で は 、 バリ リ ブゴーシ ュ地区開発 事業の概 要、バリ 市政府設 立の混合 経 済 会 社 の 組 織 、 責 任 、 財 政 制 度 及 び 財政 運 営に つ い て分 析 を行 な っ た。 第 6章で は 、 バリ リ ブゴーシ ュ地区開発 事業の開 始直後、 生じた1990年 代の 不 動産市場 の危機、バ リ市政府 によって 採られた 施策・措 置につい て分析する こ とにより 、同事業の 財政運営 の特質を 明らかに した。 第 7章で は 、 フラ ン スの都市 開発事業の 財政運営 の特徴と して、企 業会計原 則 に基づく バランスシ ートの作 成、アカ ウンタビ リテイの 徹底と、 財政運営に 対 する政府 ・自治体の 機動的・ 積極的な 支援策の 内容・意 義につい て分析・評 価 を 行っ た 。 また 、 こ れら の 点を わ が 国の 状 況と 比較し た考察を 行なった 。 第 8章で は 、 本研 究 で得られ た結論およ ぴ今度の 課題をま とめた。 長期的・ 大 規模な都 市開発事業 において は事業主 体である 公団、第 三セクタ ーと監督官 庁 ・自治体 との間で、 経済社会 の変動に 適切に対 処し、公 団、第三 セクターの 健 全な収支 バランスを 実現する ためは、 都市開発 事業の財 政運営面 でのアカウ ン タビリテ イを明確化することが重要であることを明らかにした。また、都市開 発 事業の財 政運営のア カウンタ ピリテイ の実施が 、適時・ 適切な計 画と事業内 容 の見直し 、インフラ 整備の負 担原則の 明確化・ 見直し、 金融面の 支援施策の 必 要 性 の 有 無 に つ いて 等の 前 提条 件 にな る こと を 明ら かに し た。 これ を要する に、著者 は、長期 的・大規 模な都市開 発事業における事業主体 の運 営、マネ ジメント に関して 、健全な 財政運営を 可能にするアカウンタビリ テイ の確立が 都市計画 、都市の 社会資本 整備の実現 にとって大きな意義と役割 を果 たすこと を明らか にしたも のであり 、都市計画 学、社会工学に貢献すると ころ 大なるも のがある 。 よっ て、著者 は、北海 道大学博 士(工学 )の学位を 授与される資格あるもの と認 める。
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