[無機・分析化学基礎] (1)次の事象に関して利用されている化学現象を

[無機・分析化学基礎]
(1)次の事象に関して利用されている化学現象を,化学反応式を用いて示せ.
(a) 飛行機内の酸素マスク用の酸素源には塩素酸カリウムの入ったカート
リッジを用いている.
(b) 白色固体の炭化カルシウム(カルシウムカーバイド)は,汎用な液体と
反応させると簡単にアセチレンを発生させることができるので,アセチ
レン源として用いられている.
(c) 欧米では,車のエアバッグにアジ化ナトリウムが衝撃で爆発的に分解す
る現象を利用している.この際に,生成物を化学的に安定にするため,
硝酸カリウムと二酸化ケイ素を加えておく.
(2)遷移金属錯体に関する以下の問いに答えよ.
(d) 下に示した 3 個の錯体(I),(II),(III)について,それぞれ下記の(ア),
(イ),
(ウ)に答えよ.
(ア)名称(日本語または英語,慣用名も可)を記せ.
(イ)化学構造はどの点群に属するか,記号で示せ.
(ウ)反磁性か常磁性かを答えよ.
(e) 平面四配位型の cis-および trans-[Pd(C2H5)2(PPh3)2]のいずれかと CO とを
反応させたところ,反応系(A)では C2H5COC2 H5,(B)では C2H5CHO と
C2H4 を生じた.以下の仮定にしたがって,反応機構を図示して説明し,
(A), (B) が cis 体,trans 体のいずれの反応系かを答えよ.
(i) 両異性体とも平面構造を保ちながら反応が進行する.
(ii) 両異性体ともまず,PPh3 の脱離と CO の付加がおこり,PPh3 の位置
に CO が置換する.
(iii) 両異性体とも,エチル基が隣接する M-CO 上に移動してアシル錯体
が生成し,T 字形三配位錯体となる.
(iv) 一方の異性体では,水素脱離反応が起こり,ヒドリドエチレン錯体
になる.
(v)
両異性体とも還元的脱離反応が起こって生成物を与える.
(3)酸化還元反応に関する以下の問いに答えよ.
(f) 下記の酸化還元反応(1)の標準電極電位 E0 の値を,反応(2), (3)の E0 の値
から求めよ.
2Hg2+ + 2e- = Hg22+
Hg22+ + 2e- = 2Hg
Hg2+ + 2e- = Hg
(1)
E0 = 0.796 V (vs. SHE)
E0 = 0.850 V (vs. SHE)
(2)
(3)
(g) 以下に示す Mn の酸性溶液中での Latimer 図から Frost 図を作成し,それ
ぞれの酸化状態の熱力学的安定性について考察せよ.数値は電位(V vs.
SHE)を示している.
解答
(1)
(a) 2KClO3(l) → 2KCl(s) + O2(g)
(b) CaC2 + 2H2O → Ca(OH)2 + C2H2
(c) 2NaN3(s) → 2Na(l) + 3N2(g)
10Na(l) + 2KNO3(s) → K2O(s) + 5Na2O(s) + N2(g)
2K2O(s) + SiO2(s) → K4SiO4
2Na2O(s) + SiO2(s) → Na4SiO4
(2)
(d)
(A) (ア) ジクロロジアンミン白金(II) dichlorodiammineplatinum(II) (イ) C2v
(ウ)反磁性
(B) (ア)ヘキサカルボニルバナジウム(0) hexacarbonylvanadium(0)
(イ) Oh (ウ)常磁性
(C) (ア)ビス(5-シクロペンタジエニル)コバルト(0)
bis(5-cyclopentadienyl)cobalt(0) cobaltcene
(イ) D5h (ウ) 常磁性
(e)
cis 体
コバルトセン
trans 体
(3)
(f)
=
2Hg2+ + 4e- = 2Hg (3)
Hg22+ + 2e- = 2Hg (2)
2Hg2+ + 2e- = Hg22+ (1)
(0.850 * 4 – 0.796 * 2)/2 = 1.808 / 2 = 0.904 V vs. SHE
(g)
+2 :
+3 :
-1.18*2 = -2.36
-2.36 + 1.51 = -0.85
+4:
+5:
+6:
+7:
-0.85 +0.95 = 0.10
0.10 + 4.27 = 4.37
4.37 + 0.274 = 4.644
4.644 + 0.564 = 5.208
-nE
酸化状態
(解答例)
熱力学的に最安定なのは Mn2+
不均化を起こすのは Mn3+, MnO43MnO4-は高い酸化力