ワインの貿易に係る諸規制 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 著者 髙橋, 梯二 戸塚, 昭 巻/号 106巻10号 掲載ページ p. 656-667 発行年月 2011年10月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所 Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat ワインの貿易に係る諸規制 ワインの製造方法や表示などの規制は箇によって異なるため,ワインの輸出入に捺しては様々な宿題が生 じる。日本から甲州のワインを輸出しよう,という取り緩みが成されているが,これまで情報が少なかった ワインの貿易に関する国際的な法律上の問題を,日本からワインを検出する場合を想定して解説していただ いた。 高橋梯二 1 戸塚昭2 れるワインに適用されることが大きな要素になってい 1 . はじめに る。ヨーロッパは,ワインの先進国であり, 1 0 0年以 ワインの輸出入は近年増大し,今では,世界各国が 上も前からワインの品質を高め,かつ有名なワインの いろいろな国のワインを楽しむことカfできるようにな 名声を守るため,様々な制度や基準を構築してきた。 っている。このことが,後発のワイン消費国のワイン 8 8 9年のグリフ法等によって, たとえば,フランスで 1 需要を押し上げているといっても過言でない。しかし ワインは,新鮮なブドウを発酵させたもので¥水,ア ワイン貿易には様々な規制があり,輸出する場合,こ ルコ}ルや人工着色料を加えていないものと定義され, れらの規制をクリアーしなければならないという現実 造の技術的基準が異なり,輸出国は,基本的には輸入 EUのワイン規則ではこの定義をほぼそのまま採用し Uの定義に合わないワインは ている。その結果, E EUに輸出できない。戦後ヨーロッパをはじめとする 国のこれらの基準に合致していなければワインを輸出 世界各国にワインの輸出を伸ばしてきたアメリカやオ がある。これは,各国のワインに関する表示基準や製 できないことから生じる貿易上の規制j である。これら ーストラリア等はヨーロッパの基準を緩和するよう要 の規制については WTO (世界貿易機関)や OIV(国 求もしかつ妥協も図ってきたが,それぞれの国でワ 際ブドウ・ワイン機構 )(iWなどの多国間あるいは 2国 インづくりに対する思想・習慣や,気候条件等に応じ 間ベースで調和の努力が行われているが,まだ,多く た製造方法の違いもあり, の問題が残されている。 ることが困難でもある。 EUの基準に完全に合わせ 本稿は,これらの規制の現状をできるだけ明らかに 一方,ヨーロッパでは, AOC制度(統制原産地呼 するとともに, どのような国際調和の努力がなされて 称制度)が発展し, 1 9 9 4年には,それを含む地理的 Uなどにワ いるかを分析することによって,日本が E 表示 (GI)が WTOにおいて知的所有権のーっとし インを輸出する場合の参考とするためのものである。 て認められることになった。しかしアメリカ等は依 Iで他国のワインとの差別化を図るのは貿 然として G 2 . 規制の背景 ワインの貿易に関する規制が問題となるのは, 易障害になりうるとの考えを捨てておらず¥GIにま EU つわる複雑な貿易規制の開題も存在する。 (ヨーロッパ連合)の厳しい規制が E U諸国へ輸出さ R e s t r i c t i o n sa n dR e g u l a t i o n so nI n t e r n a t i o n a lT r a d eo fW i n e T e i j iT A K A H A S H I CDoctor01Laws,Toulouse以n i v e r s i む1,S t u d yg r o u pJ もrJ a p a n e s ew i n el o w .L e c t u r e r ,Gradu α t e y ) S c h o o l0 1A g r i c u l t u r a landL扮 S c i e n c e s ,T okyo日 Un i v e r 問 ; S 幻1 む 砂み A k i r aT O T S U K A (Do c t o r0 1A g r i c u l t u r e ,S tudyg r o z ψl o rJ < < ρo z e s ew i n el o w .P r e s i d e n t ,J < < ρa n e s eS o c i e t y0 1防 t i ω 但 V i n i c u l t u r e .P r e s i d e n t ,T e c h n o c u l t u r eL t d . ) B5B 醸 協 (2011) 3 . 表示に関する規制 保護される条件に関しては, 2 0 0 5年の WTOパネル 報告 (EUとアメリカ及びオーストラリアとの係争で I規制に関するもの)によっ 農産物に関する EUの G ( 1 ) GIに係る規制 G Iワインを輸出する障にとって,輸出先の国で G I て次のような解釈がなされている。まず,第一の条件 として認定されるか否かは,重大な問題である。 G I Iとして認定 は,当該第三国において法律に基づき G として認定されなければ,テーブルワインとしての評 Iの基準が されていること。第二は,当該第三国の G 価しか受けられないうえ, G Iとしての原産地名称の 必ずしも EUの基準と同じでなくてもよいこと。 保護,すなわち使用する権利のない者が名称を使用す Iに関して管理・検査機関を当該第三国 は , EUが G ることを禁止する「排他的使用権」の付与が受けられ に要求するのは国際協定に違反していないと解釈され ない。さらに,上質ワインとしての表示も認められな たことである (rWTO紛争処理機関の決定の地理的 い。たとえば. EU規則によれば,産地表示,伝統的 表示の国際保護に及ぼす影響J参照)。 表現(シャトー,クロ, ドメイン,シュールリなど), 多国間登録の合意の見通しがなく,かつ日本と EU 特別の醸造法の表現(樽醸造,樽熟成,など)が認め との関に二国間協定がない状況においては, 日本の上 られない(制。 Iワインとして認定され 質ワインが国内法において G Iと認定されたワインが,他の しかしある国で G Iとして認められるのかあるいは ても EUにおいて G Iワインと認定されるか 閣でどのような判断基準で G テーブルワイン並みに扱われるのかは, EUの法制度 は,まだ国際的に明確になっていない。 TRIPS拶J定 に基づく EUの判断となるが, EU規則においてはこ (知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)では, の点をどう取り扱うかは明確になっていないと思われ G Iの保護を園内法において実施しなければならない I るo EU規則の条文をそのまま解釈すると, EUの G Iが他屈でどのよう としたが,ある国で定められた G 制度に登録することが必要とも解釈される O なお,現 に保護されるかについては明確な合意がなされなかっ 時点では日本には G Iワインとして認定されているワ た。したがって法律の独立性の原知(各国の法律は他 インはない。 悶の法律の影響を受けずそれぞれ独立の法律とする原 なお, EUの G I制度に登録することにあたり,日 Iを自閣の法律で保護するか 則)によって,他国の G Iは EUほど厳しい内容のものでなくともよい 本の G どうかは,その国の法的判断に任せられているとされ I並と認められ が,どのような内容であれば EUの G るO ただ,二国間協定や多国罰協定があれば加で,た 0 0 9年に仮署名され るのかは明確になっていない。 2 とえば, リスボン協定(原産地呼称の保護及び国際登 た EUと韓国の自由貿易協定において地理的表示に関 9 5 8 ) では原産地呼称は,加盟国の 録に関する協定, 1 する合意があり,その中での相互に保護するための地 涼産国で登録されれば,他の加盟関においても基本的 理的表示制度に必婆な婆素が規定されており,ニ宙開 には白動的に保護されることになっている。なお, リ Iワインと認められるためには,これ 協定において G スボン協定の批准国はフランス,イタリアなどヨーロ が参考となるかもしれない。また,現在,中国が農産 6カ国で, 日本,アメ ツパのラテン系諸国を中心に 2 物・食品 1 0品目ほどについて EUに G I登録申請をし リカ,オーストラリア等は加盟していない。 ているので,この結果をみれば,ある程度 EUの方針 このような状況にあるので,国際保護を確実にする が分かると思われる。 ためには,他国の G I制度に自国の G Iを申議して登 録するか,多国間あるいは二国間協定によってお互い Iを登録し保護する方法がとられている。 EUは , のG ( 2 ) 産地表示等 ワインについては,産地表示は決定的に重要である。 関際保護を確実にするため多信聞の国際登録制度を主 フランスでは AOCワインを上級ワインとして守るた 張しているが, WTOの場でなかなか合意されないの め , AOCワインでないテーブルワインについては産 で,二回間協定による相互の登録に重点を震きつつあ 地表示することを禁止し,それが, EU規則に受け継 るO がれている。この規制によれば, EUで輸入されるワ 第三国の G Iが EUにおいても G Iとして登録され 第 1 0 6 巻 第 1日 号 Iと認識されなければ,産地表示が インについても G 657 できないと解釈される。しかしよ記(1)で述べた 1トカイ j のみは 内に停止することを約束している ( ように国際的な G Iの承認方法が明確になっていない 1 0年 ) 。 Iを知的所有権として認めるかどうか ので,互いの G を棚上げにして(削,産地表示についてはワインの主 要輸出国と EUとの簡でそれぞれ 2国間協定を結び, ある程度の解決が阪られている。 たとえば,アメリカと EUとの協定 (Agreement ( 3 ) 伝統的表現の表示 「シャトー J . 1クロ J . 1ドメイン J . 1クリュ」など の伝統的表現はヨーロッパの長いワイン生産の歴史の 9 1 9 過程で形成されてきた表現であり,フランスの 1 betw巴enthe United S t a t e so fAmerica and t h e 年原産地呼称法で原産地呼称ワインにしかこれらの表 EuropeanCommunityont r a d ei nw i n e .2 0 0 6 ) にお 現の使用が認められないとされた(第 1 0条)。この考 0 0 0種類ほどの G Iの名称 いては,アメリカは EUの 2 え方が EUワイン規則に採り入れられ,今では,伝統 をアメリカ園内において保護することとし EUはア 的表現の EUの登録制度が設けられている。一方,ア メ リ カ の AVA (AmericanApprovedV i t i c u l t u a l メリカやオーストラリアさらに日本等においても「シ Area:米政府承認ブドウ栽培地域)の産地名,ナト│の ャトー J . 1ドメイン」などの表現が用いられている。 名前及び郡の名前を保護することを約束している。ま したがって. EUは,長い間,ヨーロッパの伝統的表 た , オ ー ス ト ラ リ ア と EUと の 協 定 (Agreement 現の使用をやめるようこれらの周に申し入れを行い, betweenA u s t r a l i aandt h eEuropeanCommunityon これらの表現を使用しているワインの輸入を制限して I名がオ t r a d ei nw i n e .2 0 0 8 ) においては. EUの G きていた。最近. EUとアメリカ等の国とのそれぞれ ーストラリアで保護されることはもちろんのこと,オ のニ間間交渉により,その使用について一定の合意が ーストラリアの G Iの地域名(1l2 ) 及び州の名前が みられている。 EUにおいて{呆護されている,なお,オーストラリア たとえば,アメリカと EUとの協定においては,ア のG Iの産地表示においては. 1ヶ所の産地が表示さ メリカは. 1 シャトー J .1 クロ J .1 シュールリ」など れている場合は,その産地において収穫されたブドウ の一定の表現は EUに輸出されるワインにも表示でき が 85%以上. 2または 3ヶ所の産地が表示されている ることになった。オーストラリアと EUの協定におい 場合は 95%以上とされている。それぞれの国での以 ては,オーストラリアは. EUで登録されている伝統 3条 ( 1 ) 上の産地名の保護については TRIPS協定第 2 的表現は原則として使用しないこととしさらに,伝 と問じ高い水準の保護が適用されることになっている。 統的表現を含む商擦の登録を圏内で認めないことを約 産地表示においては,古くは,ヨーロッパの産地名, 前に「意図的に偽ること等がない」という善意の下で 2 0 0 8年)より以 束した。しかし協定の署名時点 ( クラレット(ボルドー)J .1 パーガンデイ たとえば. 1 登録されていたこれらの蔚擦は有効とされた。また, (ブルゴーニュ)J .1 シャンパーニュ J .1 ホック J .1 ラ B u s i n e s s 「シャトー Jなどの伝統的表現を含む企業名 ( イン」などの産地名をワイン新興国が使用していたこ names) も同様の扱いとなった。 とに対して,ヨーロッパ諸国が反発するという問題が 大きかった。 ECはこれらのワインの輸入を禁止して いた。長年の二国間交渉及び多国間交渉を経て,最近, ( 4 ) 品種等表示 ワイン醸造用原料ブドウ品種についてみると,フラ この問題はほぼ解決をみているが,アメリカとは,な ンス等において 1 9世紀後半のフイロキセラ被害から お,問題を抱えており,アメリカはセミジ、エネリック の復興過程でアメリカ品種が導入されたが,ワインの 6に限定するとの と称するこのような名称の使用を 1 品震が落ちた苦い経験から 約束を EUに対して行ったが,そのための法律がまだ によるワインを基本とすることとされ. EU規則にそ 6の名称の 議会で承認されていない。さらに,この 1 れが反映されている。したがって. EU加盟国ではワ 使用も期間が限定されており,その後は再交渉を行う イン醸造用原料ブドウとして栽培可能な品種をヴイテ ヨーロッパ系ブドウ品種 ことになっている O オーストラリアについては,これ イス・ヴィニフェラ種及びその交配穏に浪定している。 らのヨーロッパの産地名の使用を協定発効から l年以 なお,第三国からの輸入ワインについては. EUのこ B 5 8 醸 協 ( 2 0 1 1 ) の厳しい基準に限定されることなく,当該第三国の間 h a r v e s t (ブドウ収穫期を特に遅くしたもの ) Jの表現 内法あるいは代表的な団体で作成された基準に従った も認められている。ただし「シュールリ Jの表現に 品種表示であって,かつ, OIV,UPOV (植物新品種 ついてはオーストラリアでは使用しないことで合意さ 保諮問際同盟)あるいは IBPGR (国際植物遺伝資源 れている。 理事会)のリストに掲載された品種でなければならな いと EUワイン規則に定めた。アメリカや日本等にお いては,米国系ブドウ品種および米国系とヨーロッパ 系の交配雑種といった EUの規定に適合しない品種を 原料としたワインがあり,調整の努力が行われている。 ( 6 ) その他の表示規制 その他に醸造年度の表示,色の表示, -甘口等 の表示があるが,これらについてもアメリカ,オース トラリア等と EUとの協定によって取り決めが行われ EUに輸出されるワ ている。たとえば,醸造年度の表示は,アメリカとの インについてコンコード,ナイヤガラ等の米国系品種 協定では任意表示として認められており,オーストラ を含む 2 0 0種類ほどの品種リスト(別表)を作成し リアとの協定では表示した年に生産されたブドウが これらの品種の表示を可能としている。また,追加の 85%以上でなければならない。 アメリカでは 2国間協定によって 0 1 0年に甲州 手続きも定められている。日本では, 2 色の表示は,赤,白,ロゼに加えてその他の色の表 種 が OIVのリストに登録され, EUへ翰出する甲ナトl 示も可能となっている。すなわち, 稜ワインに品種名の表示が可能となった。オーストラ 色j などの表示も可能である。 r グ1 )Jや「黄 は IBPGRで作成されたリストの品種であれば表示可 f 辛口J. r 甘口」などの表示のうち,ステイルワイ ンについては, EU規則で 4段階の任:意表示が認めら 能 と し た 。 た だ し 表 示 さ れ た 品 種 が 85%以上使用 れ,それぞれの糖分含有率が定められている。アメリ リアについては,協定において OIV,UPOVあるい されていなければならないことになっている。 カ及びオーストラリアと EUとの各協定においては, アメリカ等の新興ワイン生産国を中心に,世界的に品 I D r yJ .r M e d i u md r yJ . r M e d i u ms w e e , J t r S w e e t Jの表示が任意表示として 認められ,それぞれに EUの基準とは多少異なる糖分 種表示が普及してくると国際競争上不利になることか 合有率の基準が定められている O 発泡ワインについて なお, EUにおいては従来から品種及び醸造年度の 表示は,テーブルワインには認められていなかったが, ら , 2 0 0 8年に EU規則を改正し, GIワイン及びテー ブルワインの区別なく,品種と醸造年度を任意表示と して認めた。 両国のワインについて は EUでは 7段階の表示が義務となっているが,間協 r B r u tn a t u r eJ .I E x t r ab r u t J,r B ru , J t r E x t rad r yJ .I D r yJ . 1M 巴d i u md r yJ .I S w e e t Jの任 意表示が可能で、それぞれに EUの基準とは多少異なる 定においては, ・ ・ ( 5 ) 製造方法等に関する表示 EUの規別によれば, r 樽発酵J. r 樽貯蔵 J ,r 樽熟 r , シユールリ」等の表示は G Iワインにのみ認め 成J Iワイ られており,かつ第三国のワインについても G 糖分含有基準が設けられている。以上のほか,賞やメ ダルについても表示が認められている。 4 . 技術基準 ンでなければならないと規定されている。したがって, 一般的に,輸入 i 誌において定められているワイン醸 この基準に反するワインは EUに輸出できない。しか 造技術基準に合致しないワインは輸入が認められない。 しアメリカなどのワイン輸出国は EUと交渉を行い, ワインの生産屈はそれぞれの国内事情に応じて醸造技 0 0 6年の協定によって, EUに輸出さ アメリカでは 2 術泰準を定めているので,醸造技術基準の間際調整が れるワインについても f 樽発酵 J ,I 樽熟成J. I 樽貯 蔵J ,r シュールリJ.発泡酒の場合の f 瓶内(ニ次) 必要となる。この点で OIVは大きく貢献してきた。 発酵J等の表現を用いることができることになった。 アと EUとの隠で醸造技術基準の調整は絶えず問題と EUとオーストラリアとの協定でもほぼ同様の扱いと なっているが, r ボトリシス」や r n o b l el a t eh a r v e s t ( 収 穫 期 を 遅 ら せ た 貴 腐 ブ ド ウ )J ,I s p e c i a ll a t e 接造技術を重視していたが,新世界の生産国は新しい 第 1 0 6巻 第 1 日号 ワインの輸出を伸ばしてきたアメリカやオーストラリ なってきた。一般的にいえば, EUは概して伝統的な 醸造技術を開発し,その技術を導入することによって 659 国際市場で受け入れられる競争力のあるワインの生産 ⑥特性の異なる 2種類のワイン(例えば発泡性ワ インとステイルワイン)を 50%ずつ競合した を目指してきた。 ハーフアンドハーフ ( H a l fa n dh a l f ) ワインの国際市場での競争が激しくなるにつれ, EUのワインは価格と酒質のバランスの面から新世界 一方,オーストラリアと EUとの協定では,オース のワインに押され気味であり,競争力を強化するため トラリアで醸造法として認可されている「樽材のチッ には醸造技術基準に関してより柔軟性を持たせなけれ プ(ウッドチップ)やウッドパウダーをワインへ添加 ばならないと判断し, 2 0 0 8年にワイン規前の改正を し 樽 の 風 味 を ワ イ ン に 付 与 す る 方 法 Jについて, 行った。つまり,補糖,補酸,減酸に関する器準及び EUにおいても 2 0 0 6年に法改正が行われ, 2 0 0 8年か 水及びアルコール添加の原則禁止などの禁止事項に関 らその条項が施行されている。さらに,逆浸透膜装置 する醸造技術基準は理事会規則で定めるが,その他の 夜接触分離装置 による脱アルコール操作,気i 醸造技術基準は委員会規則で定め,改正が容易である ( s p i n n i n gc o n ec o l u m n ) による低アルコール分ワイ ようにするとともに,かつ 基本的には OIVの基準 にあわせることとした。 Iと ンの製造も EUにより認められ,完全な相互承認申J なっている。その 1 -tわり,オーストラリアは,セミジ ェネリツクの名称や伝統的表現の使用について EUに このような趨勢の中で,最近,アメリカやオースト 大幅な譲歩を行っている。また,アメリカ及びオース ラリア等のワイン貿易に関する協定において相手国の トラリアと EUとの両協定においては,新しい醸造技 醸造技術基準を相互に承認し輸出国の醸造技術基準 術の採用に関する手続き規定が定められているのが特 に合致していれば輸入留はそのまま輸入を認めるとい 徴である。 う合意に達している。しかしまだ,以下のようなペ 5 . 規制の国際調整の手段 ンデイング事項があり若干の問題を残している。なお, アメリカは 3 0カ 国 と 醸 造 技 術 基 準 に 関 す る 合 意 以上のような規制については,長年にわたり,ワイ ( a g r e e m e n t ) を締結しており,そのうちアルゼンチン, ンの輸出国間で交渉や協議が行われ,調撃がなされて オーストラリア,カナダ,チリ及びニュージーランド きた。 c e r t i f i c a t i o nr e q u i r 巴m e n t s )を の 5カ国とは証明書 ( 要求しないことで合意している。 (1)多額間交渉・協議 原産地呼称や地理的表示については,主として多国 EUとアメリカとの協定 ( 2 0 0 6年)においては,こ 9 5 8年の原産地呼称の保 間交渉が行われ,古くは, 1 の醸造技術基準の相瓦承認は,アメリカがセミジ、ェネ 護及び国際登録に関するリスボン協定であり,加盟国 リックの名称の使用を 1 6に限定することにつき議会 の原産地呼称を保護し,図際登録を行うものである。 の承認を得るまでは,発効しないと取り決めたことで 6カ国と少ない。近年になり,交渉の重点 参加国は 2 ある。それまでは,暫定協定 ( B r i d g ea g r e e m e n t ) 9 9 4年のウルグアイ・ラウンドの は , WTOに移り, 1 として適用されている。このため,アメリカでは法的 マラケッシュ協定によって,地理的表示が知的所有権 に認可されている次の醸造技術を採用したワインは, のーっとして位置づけられた。その後, まだ EUへの輸出が認められていなし、。 ドーハーラウ ンドにおいてワインの地理的表示の国際登録が交渉さ ①乳酸およびリンゴ酸を用いた補酸 れている。しかしアメリカ等の反対で国際登録の合 ③逆浸透膜装置による脱アルコール操作および香 意が得られる見通しは立っていなしミ。悶際登録が成立 気成分の除去 すれば, WTO加盟国の G Iは格互に知的所有権とし ③イオン交換樹脂によるワインの鴻質改良 て認められ,輸出される場合の表示も「関税,税等の @気 i 夜接触分離装置 ( s p i n n i n gc o n ec o l u m n )に 制度について輸入産品についても国内産品と同等の扱 よる低アルコール分ワインの製造 f l u i dm i l k ) を使用した浮下げ・清澄操 信牛乳 ( 乍 イ 6 6 0 いをする Jという内閣民待遇の原剣により輸入国の G Iと同等の表示ができることになる。しかし国際 登録の見通しが立っていないので, EUは二国間の登 醸 協 ( 2 0 1 1 ) 録に重点を置きつつある。また, r シャブリJ. EUは , いて G Iワイン並と認識され,望ましいと思われる表 「シャンパーニュ」等,ワイン産地名に関連して広く 示等が輸出先悶で認められるようにするのは,容易で 認知されている名称がアメリカ等で一般名称として使 1の名称 用されているので,これを防止するため, 4 EUは表示等について厳しい Iワインとテーブルワイ 規則を採用しており,特に G を記載した「クローパックリスト」と呼ばれるリスト ンを明確に区分しその取り扱いに差を設けている。 ないことが推泌される。 を作成し, WTOの場でリスト掲載名称について国際 このような状況からすると,日本のワインの輸出を 保護をするよう提案し交渉した。しかし反対する国 伸ばすためには,表示等について輸出先国との綿密な も多く,これらの問題は 2005年に二国間の交渉によ 交渉・協議が必要であろう。 WTO等の多国間交渉の って調整することに切り替えられている。 場で なお,表示や技術主主準などについては OIVなどの 国際機関が調整の努力をしている。 ンは, G Iの由際登録が合意されれば, 日本の G Iワイ EUをはじめ加盟国の G Iワインと悶等の取り 扱いを受けることでき,それに伴って表示問題の多く が解決されるはずであるが,今のところ国際登録が成 ( 2 ) ニ国間交渉・協議 立する可能性は高くない。したがって,当面は,輸出 以上のような状況から,ワインの貿易に関する規制 EUと EUは G Iに 先国との二国間の協議・交渉が主体となろう。 については,現在,二国間ベースで交渉・協議が行わ の自由貿易協定などの交渉が始まれば, れている o EUにワインを輸出する悶と EUとの交渉 ついて相互の登録と保護を含む協定(ワインのみでな は古くから行われてきたが,最近,いくつかの国で新 く農産物・食料品についても)の締結を強く嬰求して しいワイン貿易に関する協定が締結され,かなりの程 I制度のあり方,表示規 くると予想される。この際 G Uとは,アメリカ (2006年), 度調整が進んで、いる o E 制等も話題になると思われる。 オーストラリア ( 2 0 0 8年),南アフリカ ( 2 0 0 2年), 2 0 0 4年),チリ ( 2 0 0 2年),スイス ( 2 0 0 2 カナダ ( 年)等が協定を締結している O 以上のような協議・交渉は,地理的表示,その他の 表示,技術基準などについて,いずれも法律に裏打ち EUは G Iについて,ニ国間交渉において相 された制度を前提として行われるので, 日本でも,早 互に登録・保護することに重点を撞いてきており,特 急に,法律に基づく制度として整えつつ,関係国と協 に,開発途上聞やアジア諮問との自由貿易協定締結の 議・交渉を行っていかなければならないと思われる。 際に,地主史的表示に関する合意を組み入れていること 60年以上前から日本ワインの主要メーカーが OIVへ また, EUと韓 G Iを 登 録 し 保 Iに 護することとした。注目すべきことはお互いの G 関する制度が G Iとして保護に値する制度かどうか確 が多くなっている。近く発効すると思われる の加盟を希望し, 1989年に日本ワイナリー協会,北 国との自由貿易協定では,お互いの 海道,山形県,長野県,山梨県のワイン酒造組合・業 界団体が,それぞれワインの主管官庁である国税庁長 官にあてて, 日本国の OIVへの加盟要望書を提出し 認したことである。これによって,韓国は,農産物・ ている O ワイン貿易の規制に関し日本の意見をできる G Iに関する法律の改正を行っている(it4)。韓 国はワインについては多くの EUの地理的表示ワイン 限り国際的に反映させるうえからも, 食料品の 等の登録を認めたが,韓国の酒類で登録すべきものは J i n d oH o n g i uのみと極めて少なかった。日本と EU 問の経済連携協定などの交渉が始まれば, EUは地理 日本国として OIVへの加盟を早急に実現させる必要がある。 2 0 1 0 なお,以上のような認識にも立って,昨年 ( 年) 1 2月ワイン業界関係者及び学識経験者から構成 された《日本ワイン法制定研究会》が発足した。 的表示に関する合意を協定に組み込むことを強く要求 してくるものと予想される。 6 . おわりに 以上のワイン貿易に係る諸規制の内容と関係国間の 調整の経過をみると, 日本が輸出する上質ワインにつ 第 1 0 6巻 第 1 0号 i 主 (1)国際ブドウ・ワイン機構 ブドウ栽培,ワインの醸造・表示・流通に関する 悶際基準の制定等を目的に設立された国際機関。本 部はノ'¥J )0 2 010年現在,加盟国は 44カ国であり, 6 6 1 ワイン生産国で未加盟なのは日本とアメリカの 2カ 者の正当な利益が考慮されるよう新たな登録に対 屈のみである。 する反対手続 ( 2 ) EUワイン規則による G Iワインには認められる がテーブルワインには認められない表示の主なもの は次のとおりである O ①産地表示 c ?伝統的表現(シャトー,クロ, 参考文献 「 欧 州 、l 共肉体におけるワインラベル表示規則の改革 についてJ,蛇原健介,明治学院大学法学研究 ドメイン,シュ ー ル リ 豆f 商,ヴイラージュなど) ③醸造法に関する表現(樽熟成,樽発酵,樽貯蔵, 発泡性ワインの製造法である瓶内二次発群と伝 M e t h o d et r a d i t i o n n e l l e ), 微 発 泡 性 統的手法 ( ワインであるクレマンなど) ( 3 ) ア メ リ カ と EUと の ワ イ ン 貿 易 に 関 す る 協 定 ( 2 0 0 6年 ) 第 1 2条 第 4項 は , 協 定 に よ っ て 互 い の 国の地理的表示を保護することは,それらの地理的 表示を自国の法律にさまづく地理的表示として認める ことを意味するものでなく,また,認めることから 排除することを意味するものでもないと規定してい るO ( 4 )2 0 0 9年 1 0月 1 5Bに 署 名 さ れ た EUと韓国との 自由貿易協定の地理的表示の部分 ( S u bS e c t i o nC 地理的表示)の 6において相互の保護にとって必婆 とされる G Iの制度の必要な要素について次のよう に合意されている。 SubS e c t i o nC-6 EU及び韓国は,第 l項及び第 2項に定める地理 的表示に関する登録及び管理に必要な事項について は次のように合意する。 ( a ) それぞれの国・池域 ( r e s p e c t i v et e r r i t o r i e s ) において保護される地理的表示のリストの登録 ( b ) 地理的表示が両陣地域の国土,地方又は地域を 第8 8号 , 2 0 1 0年 「世界のワイン法 Ju l本博,姥原健介,高橋梯ニ, 0 0 9年 日本評論社, 2 「地理的表示は有効な所有権か」高橋梯二訳, (社) 音産技術協会, 2 0 0 9年 「地理的表示における各国の法的対応と日本の謀 題 J高橋梯ニ,法律時報, 2 0 1 0年 8 2巻 8号 rWTO紛 争 処 理 機 関 の 決 定 の 地 理 的 表 示 の 国 際 保 護に及ぼす影響 j 高橋梯二,のびゆく農業 9 8 8, 農政調査委員会, 2 0 1 0年 1 1月 1 5B 「フランスワインの原産地呼称」高橋梯ニ,のびゆ く農業 9 4 7,農政調査委員会, 2 0 0 4年 Agreementbetweent h eEuropeanCommunity 0 0 8 andA u s t r a l i ao nt r a d ei nw i n e2 Agreem巴n tbetweent h eEuropeanCommunity 呂n dt h e SwissConfederationont r a d ei n a g r i c u l t u r a lp r o d u c t s tbetweent h eEuropeanCommunity Agreem巴n a n dt h eR e p u b l i co fS o u t hA f r i c ao nt r a d ei n w i n e2 0 0 2 Agreementbetweent h eEuropeanCommunity andCanadao nt r a d ei nw i n e sands p i r i t s2 0 0 2 Agreementbetweent h eEuropeanCommunity 巴so fAm 巴r i c ao nt r a d ei n andt h eU n i t e dS t a t w i n e2 0 0 6 Freet r a d eagreementbetweent h eEUandt h e 0 1 0 S o u t hKorea2 原産としその一定の品質,名声,又はその他の特 性が主として地理的な独自性に帰することを証明 参考 I する行政手続き ワ イ ン 貿 易 に 関 す る ア メ リ カ と EUと の 消 の 協 定 2 0 0 6年(主要条文の繊訳) (Agreement between t h e United States o f Americaandt h eEuropeanCommunityo nt r a d ei n w i n e2 0 0 6 ) ( c ) 産品の名称が(伝統や地域特有の生産方法等に より)特定された産品でなければならないこと, 又は,産品の仕様が行政的な手続きによって定め られ,産品が特定されるものでなければならない ( d ) 生産の際に適用される管理に関する規定 ( e ) 登録された名称については,対応する仕様に合 致した農産物・食料品の販売を行う事業者は誰で も使用可能で、あることを定める規則 ( 0 名称が知的所有権の形で保護されていたかそう でないかを問わず,以前から名称を使用していた 6 6 2 第 3条 協 定 の 範 囲 l 本協定の目的のため, r ワイン」の用語は,新 鮮なブドウの全量又は一部をアルコール発酵した もののみから得られる飲料を意味する。この場合, ブドウは破砕したものあるいは果汁でもよく,ま 蟻 協 ( 2 0 1 1 ) た生産当事国で認可された新鮮なブドウの構成部 第 7条 原 産 地 の 名 前 分を追加しでもよく,かつ,ワインが生産される 地域の当事国の規制制度の下で認められたワイン l アメリカは,ある名前によって原産地のワイン の醸造法に従って生産された次のようなものであ を指定する目的をもって,一定の名前が原産地の 名前として使われるよう措置しなければならない。 これは,付属書 N P a r tA に記載された特定の地 る 。 域で生産される上質ワイン及び地理的表示を伴う ( a ) アルコール濃度が容量で 7%以上 22%未満の もの テーブルワインの名前及び P a r tBの EU加盟国 の名前を含むものとする。 ( b ) 人工的な着色料,香料及び技術的に必要望な量 を超える水を添加しないもの 注 付 属 書 N EUのワインの産地名 P a r tA EUの AOPワイン名及びヴァン・ ド・ペイなどの AOPワインでない 2 人間の健康及び安全を保護するための雨当事国 が産地名のあるワインの産地名 の措麓は,本協定の対象としない。 P a r tB EU加盟留の名前 第 4条 現 行 の ワ イ ン 醸 造 法 ( p r a c t i c e s ) 及び明 綿 ( s p 巴c i f i c a t i o n s ) 2 EUは,付属書 Vに記載されたワイン生産上の l 各当事国は,自国の法律,規財,必須事項の目 意味を持つ名前がこのような名前によって示され 的を遂行するために. 適正なワイン製造基準(法 る原産地のワインであることを示すため,ワイン 律に射ってワインを造るうえで事業者が守るべき の原産地を示す名前として使われるよう措置する。 r 基準)に合致しない方法を用いてブドウに由来す る特性を変える j ということのない醸造法を認可 注 付 属 書 V アメリカのワインの産地名 している他の当事国の法律,規則を承認する P a r tA アメリカの AVAの名前 P a r tB アメリカの外l の名前 ( r e c o g n i z e )。これらの醸造法は,ワインの品質 や安定性を向上するための合理的で、技術的,実際 P a r tC アメリカの郡の名前 的な方法,及びワインの特'生や組成について間違 った印象を与えない範囲内で製造者の期待する効 3 両当事国の拐当当局は,本条に合致しない表示 果を達成する ( a c h i e v e ) 方法を含むものとする。 のワインが市場に販売されないよう,又は,本条 に合致されるよう表示されるまで市場から撤去す 2 第 3条に規定された本協定の範囲内において, るよう確{呆しなければならない。 両当事国は,ワイン醸造法及びその明細を基礎と して,付属苦言 1に記載されている他の当事国の法 4 ( 罰 告 ) 律,規則の下で認められたワイン醸造法を用いて 醸造される他の当事悶を原産とするワインの輸入 及び販売行為を制限しではならない。 第 8条 ワインの表示 l 間当事悶は,自閣の領域で販売されるワインに ついて,特に組成,又は原産地に関し,誤ったあ 注(1) 付属書 I アメリカ及び EUのワイン製造 るいは誤認を招く表示が含まれることがないよう 上の基準に関する法令を列挙している O ( 2 ) アメリカがシャンベーン等のセミジェネリ 2 両当事国は,前項の規定に従い,ワインの表示 にしなければならない。 ックのワイン名の使用を 16に限定するこ とについて議会の承認を得て法制化されな に衡する議定書 ( P r o t o c o lonWineL a b e l l i n g )に いと. EUはアメリカの現行の製造方法及 表示できる。 3 両当事留は,ワイン醸造に使われる加工,調製, び仕様は認めないとの条件が付いており, よって任意の事項あるいは追加的情報をワインに それまでは,暫定協定 ( B r i d g e 技術が表示によって確認されることを要求できな agreement) が適用されることになってい る 。 し ミ 。 4 アメリカは付属番立に記載された EUを起源と する名前をワインのクラス又はタイプを示すもの 第 1 0 6巻 第 1 0号 663 として使用することを許可するものとする。 2 . 3 ( a ) 付属書 Eで特定された産品のタイプ 注 付 属 委E ( b ) ワイン販売に従事した個人又は法人の名前, 職業,住所 ノf ーガンデ?イ,シャブリ,シャンパーニユ, キャンテイ,クラレット,オー・ソーテルヌ, ( c ) 特別の色,特別の色とは r ート, レッジナ,ライン,ソーテルヌ,シエ リー, トカイ fロゼ/ピンクJ. 「赤 J , 白j ではなくその他のすべての色 ホック,マデイラ,マルサラ,モーゼル,ポ 7 玉 付属書 E ステイルワインについて 参考豆 ワインの表示に関する議定書 ( P r o t o c o l ) (付属番以外は全訳) Dry, Mediumd r y, Mediumswee. t Sweetの 定義 発泡ワインについて アメリカと EUとのワイン貿易に関する協定第 8条 ( 2 )に基づく。 第 A章 アメリカを原産とするワイン r l . 本議定書において, アメリカのワイン Jとは, アメリカと Eむとのワイン貿易に関する協定(以 下「本協定Jという)の規定に従って,アメリカ を原産とするワインで, EUに輸出され,販売さ れるものをいう。 2 任意表示とは, 2 . 1 ( a ) 生産年 ( b ) 1種類又は複数のブドウ品種名 ( c ) 瓶詰の場所 ( d ) 賞,メダル,その他品評会に関する事項、 ( e ) ブドウ関場の名称 o i n t1に記載された事項 (f)付属議:1の p ( g ) 付属書 Eに従ったワインの製造方法に関す る事項 B r u tn a t u r e,E x t r ab r u t,B r u t,E x t r ad r y, Dry, M巴diumd r y, Sweetの定義 3 . アメリカのワインについては,第 2項による任 意の事項は,以下に規定する要求事項に従って, 表示することができる。 3 . 1 任意事項は,改正された US連邦規則コード i t l e2 7,P a r t4に従つてのみ表示できる。 のT 3 . 2 2 ユlの任意事項は,ワインが本協定付属書 v(アメリカの産地名)に記載された産地の 名称に限り表示できる。 3 . 3 2 . 2 . 2の任意事項(エステート瓶詰)は,ワ インが本協定付属誉 V P a r tA (AVA) に記載 された名称に限り表示できる。 3 . 4 原産地の名称を表示しているワイン又は表 示していないワインのいずれについても, 2 . 2. 3 の任窓事墳の表示を行うことができる O 3 . 5 本議定舎に特別の定めがある場合を除き, 任意事項は,本協定付属書 Nに記載されてい る EUに お い て 保 護 さ れ て い る 原 産 地 と 同 じ 名称を含んでいてはならない。 Y 玉 3 . 6 任意事項としてのブドウの品種名の使用に 付属誉 I 関しては, C h a t e a u, c l a s s i c, c l o s, cream, c r u s t e d / i n e, l a t eb o t t l e dv i n t a g e, c r u s t i n g, f n o b l e,r u b y,s u p e r i o r,s u rl i e,tawny, v i n t a g ea n dv i n t a g ec h a r a c t e r 付属香 E B a r r e laged, b a r r e lf 巴r mented, b a r r e l a ka g e d,o a kf e r m e n t e d,o a k matured,o g e d, woodf e r m e n t e d matured, wooda ( 呂 ) 任意事項として表示できるブドウ品種名は, 付属議: Nに記載されたものとする。この規定 は,ブドウ品種名が付属書 Nに記載されてい るかどうかにかかわらず, 1 也のプゃドウ品種の 使用を禁じるものではなく, EUの規則に従 い,特に, EU規 則 ( E C )N o 7 5 3 / 2 0 0 2に 従 い,許可される。 ( b ) 付属書 Nに記載されていないブドウ品種に ついて,アメリカが新たに記載を要求した時 2 . 2 エステート瓶詰の表示 6 6 4 は , EUは付属委 Nを改正し当該品種を追加 醸 協 ( 2 0 1 1 ) 記載しなければならない。この規定は, EU 合には,少なくともワインの 75%は当該地域で収 が通知を受領した白から 6 0日以内に当該品 穫されたブドウによらなければならない。 種名が EU規則で認められないこと,特に, 第 B章 EU規則 (EC) N o 7 5 3 1 2 0 0 2で 認 め ら れ な い ことをアメリカに通知しない場合に限り適用 される O ( c ) 上記( b )は,上記( b )の通知がなされない場合 においても付属書 Nの改正の間当事閣の機能 ( a b i l i t y ) を害するものでない。 、 伍 付属書 N EUを原産とするワイン 1 本議定書のこの主主において, iEUのワイン Jと は,本協定の条件に従い, EUを原産とするワイ ンで,アメリカに輸出され,販売されるワインを し 、 つ 。 2 EUのワインは, US連邦規則コード T i t l e 2 7, s e c t i o n4 . 3 8( f)に定義され, EU理事会規則 ( EC) h a p t e r I及び付属書 v r並 No1493/1999T i t l eV C びに委員会規則 ( EC) N o 7 5 3 1 2 0 0 2に合致した追 2 0 0品種以上のブドウ品稜名が記載されてい 加的情報を表示することができる。ただし追加 る(別表を参照) 的情報は,アメリカの要求事項に合致して表示さ れ,また,アメリカの義務的規制と矛盾せず,又 3 . 7 2 . 2. 1( b )の任意事項に関しては,次の事項を は,これらの要求事項によって情報としての資格 I E 表示することができる O が与えられ,さらに,追加的情報は,真実で, ( a ) 単一品種:ワインの 75%が当該ブドウ品 礁で,特定でなければならず,また,本質的に異 種からのもので,また,当該品種がアメリカ なったり ( d i s p a r a t i n g ),誤認を招くようなもの 合衆国の規別に刻り,ワインの特性 であってはならない。 ( c h a r a c t e r ) を決定していることを条件とす る 。 ( b ) 2種類又はそれ以上の品種:補糖の目的で 注意 本稿で引用した協定及び議定書は, EUの 2 0 0 8 使われたフ、ドウの量について補正を行ったう 年及び 2 0 0 9年に行われたワイン規則の全面改正以 えで,使用した当該ブドウ品種のみで 100% 前の EU関連規則に基づいており,最近,協定等が であることを条件とする。ただし 4種類以 改正されたか杏かについては確認できていない。 上の品種名を表示する場合は,表のラベルで はなく,裳ラベルに表示しなければならない。 3 . 8 2 . 2. 1(f)の任意事項の表示は,付属書 Iに従 なお,本稿の要旨は,平成 2 3年 4月 2 0日の「日 本ワイン法制定拡大公開会議」における参考資料に 掲載されている。 つ 。 (日本ワイン法制定研究会) u 東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻 4 アメリカを原産とするワインは,本協定第 2条 講師〉 a r tお及 例に規定するように,本協定付属委 V P ( 2 .一般社団法人葡萄 j 闘技術研究会代表理事会長 a r tCに記載されている州又は郡の名前を表 びP テクノカルチャ一代表取締役〉 ( 有 ) 示できる O ただしナトi 又は郡の名称を表示する場 第 1 0 6巻 第 1 0号 6 6 5 EUに輸出されるアメリカ産ワインの品種リスト APPENDIXlV onvincv a r i e t ynamesasr e f e r r e d1 0i nP a r tA, Point3 . 3 . 6oftheProtocol 。 。 品 A邑l i a n i c Agw 出n A l b a r i A l b e m a r l e A l e a t i c o AJi‘~ante BO l I s c h e t A l i g o t e A l v a r e l h a o l Ir i n h o Alv A r n e i s Al Ir o r e B a c c h l l S Ba じo b l l l n c I l Bacono 8出 b e n l むo n Beu 1 、 別 8臥 : BcJ l a n d a i s B e t a 日t h B l a c kC o r i 主P ea r 1 B J a c B l a n cDl IB o i s B l u eEyc Bonarda B o u m i f u l Burdin4672 Burdin5201 B U lせi n1 1 0 4 2 Ir gaw Bl Bl I f g c r Cabcl 1 1c tfr~ 1Ic Cl Ib e r n e tP t e t l e r Cabe . r ne tS a u v i g n o l 】 C a l z i n CampbellE a r l y ( l s l a n dB e l lc : ) C剖 l u J aMuscuc C a p l i v a t o r C a r i芭n a n e C a r l o s Carmenere Carmine C剖 n e l i a n C凶 c a d e C a s t c l l仏 637 Calawba CayugaWhite C e n t u r i o n Chambourcin C h a n c e l l o r Churbono C h a r d o l l e l C h a r d o l l u a y Ch詰s s e l a sd o r e 666 D c a r i n g I l < I C DeCha¥I DeJaware Diamond D i x i e D o l c e t t o Doreen 。o r n f e l d e r D u l c c t Dl Ir i f D u l c h e s s E a r l yBl Ir g u n d y E a r l yMUSCl Il E d e l w e i s s Eden E h r e n f e l s e' l E l l e nS c o l l E l v i r a EmeraldR i e s l i n g F e h e rS z a g o s F e r n a oP i r e s FcmMω印 1 F i a n o F l o r a F l o r e n t a l F o l l eb l u m : h e F r e d o n i a F r c i s a F r y In n i n t Fl 。 出n ay1 l0 l r G出 1 ' o n c t . anlminer Gewlir Gladwinl13 Glenn : c 1 Gold GolJcnl s l e s GoldenM l l s c a t G n l l l dN o i r Gr : c c l 1H u n g a r i u n Grcnuche G r i g n o l i l l o G r i l l o GrosV c r d o t H e l e n a e l 】lO n t H出 b H i g g i n s H o r i z o n Hl In t l o n a l s a b e l l a I v e s James J c 、 / ; c l l 一 S e m i l l o n S c r e k s i y a Scyvl I l( S e y vl Il b l u n c ) S i e g e r r c : b e S i e g l r i e d l l 1 d Somhh Souzao S l e u b c n S t o v e l Sl Ig a r g a t e Su/ tu n i n a (Thol l 1s p o nSeedh :s s ) Im日 】i l Sl Sl Iw annec S y l v a n e r Symphony Mün~h S y r u h( S h i w z ) u d e lh : M出 c SwcnsonRed Is c a tb l a n c Ml T a n l l a t (M凶 ωtulI1c l l i ) T a r h c c l ル1 1 Is c a td uM O l l l i n Iy l o r Tl Is c a tHl Im burg Ml p n m il J o(Valdcpcllu~) T出.JJ ( B l a c kMus 山 t ) T c r o l d c g o Ml Is c a to f A ! . : x, m d r i a l 1 a s Thol M出 catOt ! ond ThompsonS e c d h : s s Ip l e s Nl ( S u l t a n i n a ) Nc むb i o l υ T i n t uM a d e i r a N e g r c l t c T i l l l o c a υ NcwYorkM u s c a l T o p s a i l N i a g a r a T o u r i g a Noah T r a m I n c r Noble Tr , U l l i n CI l C N o r t o l l( C y l l l h i出 m) T r o l l s s e a l l 01 l la r i o Tr o u s s e a ug r i s c a l OrangeM¥ls Io ) Ugnib l a n c( T n : b b i ul P a l o m i n o V a l d i g u i e P a m l i c o V l l l e r i 剖I PcdwXimcnes V出 1Bun:1 l Il V引 ' d o t P el I 九 : l Il eS i r a h V e c b l a n ι V e l t l i n C l P e v e r e l l a V e n t u!"a P i n o t a g e Venlcl t :l P i n o tb l a n c V e r d e l h o P i n o tg r i s( P i n o tG r i g i o ) V i d u lb l a n c P i n ω l n o 1 1 V i l l a r db l a n c P r e c o c cd cM a l i n g r e V i l l出 dI lo i r P r i d e V i m : e n t P r i m i t i v o V i o g n i c r Rayond'Ol V i v a n t Raval34 WelschR i z l i n g R a v a t5 1( V i g n o l e s ) R u v a l n o i l W a t e r g l l l e : WcJuer R e d g u lt Rl ! g a l e Yuga i n l a n d e l ; , l i n g . t WhiteR i c s l i n 話 ) Z R i e Man 引lIln c Mdody Mc l !mdesourgogne ( M e l o n ) M c r l o t ル ¥ cl l n i c r( P i n o tM引lI1i e r ) Mish ル I is slOn MissoωiR i c s l i l l 話 ルl o n d c l l s e( R c t o s c o ) MontdIore y MoorcE出 I Mor 凶・ Ml IS k, 1 l Mourvedn:(Ml It a r o ) トT h l l l忠則 M l i l t e a 事 穣 協 ( 2 0 1 1 ) C h e l o i s Chcninb l H n c Chicf Chowan C i n s a l l t ( B l a c kM a l v o I s I c ) C la i r e l l cb l a n c h e C l i n t o n Colombard ( F r e l l c hColombard) C o l o b e l C o r t c s e C o r v I n a Conιord C o n q u i s t a d o r Coudcrcn o i l Counoise COWUl1 Crcek C y n l h i a n u( N O l ・ l o n ) J o u n n c sScyve1 2 4 2 8 J o a n n c sScyvc2 3 4 1 6 K c r n c r KayGmy K l c i n b e r g 山 LaCrossc LakcE l l l cl 1 Il d Lambrusco L a n d a l L a n d o l n o I r L c n o i r LeonM i l l o l Limbcrgcr( L c m b c r g c r ) MadclincAl I g c v i n c ルlagnolia M之1 9 o o n Malbec M u l v a s I ab i a n c a MarechalFoch ねW lzI lc i !( 船( a l s i l c l i ) Roanoke R o s c l l e R O l l c a n c u f Rougeon Roussannc R o y a l t y R u b i r e d RubyCabc l 1 lc l SI .C r o i λ .L aul ' c n l SI S a i n tM a c a i r e S a l c l l l S a l v a dOl S a l l g i o v c s c S a u v i g n o nb l a n c (Fumeb l a n c ) S c a r l c l S c h c u r c b c 執筆者紹介(J [ I 買不同・敬称略) 高橋梯二<TeijiTi 孔K AHASHI> <勤務先とその所在地>法学博士(フランス・トゥ 萩 原 大 祐 <DaisukeHAGIWARA> 昭和 5 3年 3月 3日生まれ<勤務先とその所在地> ルース大学), 日本ワイン法制定研究会会員,東京大 千葉大学真菌医学研究センター,〒 2 6 0 8 6 7 3千葉市 学大学 i 淀 農学生命科学研究科農学国際専攻講師,〒 8 1<略歴>平成 1 2年早稲田大学理工 中央区亥鼻 1 1 1 3 8 6 5 7東京都文京区弥生 1 1 1 8年名古屋大学生命農学研 学部応用化学科卒,平成 1 戸塚 B B<AkiraTOTSUKA> <勤務先とその所在地>農学博士・技術士(農学部 究科修了(農学博士),同年名古屋大学農学部 COE 研究員平成 1 9年東北大学未来科学技術共同研究セ 門), 日本ワイン法制定研究会会員,一般社団法人葡 ンタ一日本学術振興会特別研究員 ( P D ),平成 2 2年 萄酒技術研究会エノログ部会(前)部会長, (有)テ 中央大学理工学部生命科学科機構助教,平成 2 3年千 クノカルチャ一代表取締役,千 1 4 1 0 8 3 1東京都品川 葉大学真菌医学研究センター特任助教,現在に至る。 区西五反田 2 1 4 1 3 6 0 2 <抱負>糸状菌のシグナル伝達機構を理解して抗真菌 剤の開発を目指す。<趣味>読書,スポーツ観戦,少 し昔の DVDを楽しむ。 第 1 0 6巻 第 1 0号 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