手軽に40kHzを聴こう

手軽に40kHzを聴こう
「ラジオを作ってみよう」係
1. はじめに
おおたかどや山標準電波送信所より長波標準電波(JJY−40KHz)の運用が開始されて今年で5
年目になったということを聞いて、早速5年前に作った回路を見直して受信機を作ってみました。
周波数が低いのでコイルの巻数が多くなるなど、いろいろ問題はありましたが、なんとか受信することがで
きました。なるべく簡単に、あまり部品も使わず手軽に作れることを目指し増幅器も極力手を省きました。
電池も単三乾電池1個を目標にしましたが、聴こえた電波は蚊の鳴くような音。
ここでは、その受信機の製作方法を簡単に紹介します。
1.1 基本的な回路
抵抗R2
抵抗R1
抵抗R1
1.5∼3.0V
乾電池
抵抗R2
ループアンテナ
コンデンサC1
+
イヤホン
トランジスタ
トランジスタ
−
コンデンサ C2,C3,C4
2. 主な材料
まず材料を用意します。(手元にあった材料を使用したので最適化されていません)
○ トランジスタ2SC1815BL
2個
○ 抵抗 R1(22kΩ)
2個
○ 抵抗 R2(2MΩにするために1MΩを2個直列に) 4個(1MΩならば)
○ コンデンサ C1(0.1μF)
2個
○ コンデンサ C2(2200PF)
1個
○ コンデンサ C3(470PF)
1個
○ コンデンサ C4(47PF)
1個
○ コンデンサ C5(100PF)
(あれば同調回路で追加)2個
○ クリスタルイヤホン
1個
○ 端子台(サトーパーツ ML-40S1EXF 5P)
1個
○ ポリウレタン線(0.4φ)
約74m
○ ペットボトル(65φx130程度)
1個
○ 木材 8x10x200(加工して使う)
1本
○ 木材(版画用)
1枚
○ 木ネジ(皿頭 長さ10mm)
5本
○ 木工用ボンド
少々
○ 電池ケース(単三乾電池用)
1個
端子台は特殊なので手に入らないかもしれませんね。
- 1 -
2.1 材料の説明
ここで使用している材料(トランジスタ、抵抗、コンデンサ、端子台)について説明をします。
2.1.1
トランジスタ(2SC1815BL)
この図はトランジスタの足か
ら上を見上げたものです。
平な面
コレクタ C
ベース B
C1815
エミッタ E
ベース B
ベース B
エミッタ E
コレクタ C
エミッタ E
コレクタ C
回路図ではトランジスタをこのように描きます。エミッ
タの矢印の向きは電流の流れる向きを示しています。
トランジスタの足
トランジスタには足が3本あり図のような形をしています。
なおそれぞれの足には ベース(B)
、コレクタ(C)、エミッタ(E)という名前が付いています。
2.1.2 抵抗
R1(22KΩ),R2(2MΩですが 1MΩを2個直列に)
抵抗は図のような形をしています。なお抵抗には色の帯がついています。
色の帯は数字を表していますが詳しくは資料を参照してください。
黄色 4
22kΩの抵抗
1MΩの抵抗
赤色 2
単位はΩ
黒色 0
黒色 0
黒色 0
赤色 2
茶色 ±1%
茶色 ±1%
赤色 2
赤色 1
220x102 Ω
100x104 Ω
100x10000=1MΩ ±1%
2.1.3 コンデンサ
220x100=22kΩ ±1%
C1(0.1μF),C2(2200PF),C3(470PF),C4(47PF)
コンデンサは図のような形をしています。
単位はpF
C1 0.1μFのコンデンサ(青色をしています。
)
単位はpF
C2 2200PFのコンデンサ(青色をしています。
)
それに続く零の数
4
それに続く零の数
2
有効数字の1桁目
0
有効数字の1桁目
2
有効数字の2桁目
1
有効数字の2桁目
2
104
100000pF=0.1μF
2200pF=2200PF
- 2 -
222
単位はpF
C3 470PFのコンデンサ(青色をしています。
)
それに続く零の数
1
有効数字の1桁目
7
有効数字の2桁目
4
単位はpF
C4 47PFのコンデンサ(青色をしています。
)
471
470pF=470PF
有効数字の1桁目
7
有効数字の2桁目
4
47
47pF=47PF
2.1.4 端子台(サトーパーツ ML-40S1EXF-5P)
端子台は図のような形をしています。この端子台にトランジスタや抵抗、コンデンサ、LEDを取り付けま
す。
ここに部品を
取り付ける。
3. 製作
3.1 組み立てる
まずループアンテナ(コイル)を作ります。
3.1.1
コイルを作る
ペットボトル(直径65mm、長さは130mm程度)を用意します。250∼300cc程度の小型
のものがベストですが、500ccのものでもかまいません。
コイルは全体で360回巻きます。一度に360回巻いてもよいのですが、図のように分割して巻いた方が
巻きやすいと思います。 なおポリウレタン
線の巻き始めと終わりは図のようにテープで
1 2 3 4 5 6
止めます。
ポリウレ
タン線
コイルのインダクタンスは
∼5.4mH です。
テープ
で張る。
60回巻く、それを
6回繰り返す。
全体で360回
- 3 -
3.1.2
同調回路を作る
1
2
3
4
同調回路を作るにはコイルとコンデンサ
を組み合わせて作ります。
5 6
周波数をfとすると
f=1/2π√LC から
222(2200PF)1本
471(470PF)1本
47(47PF) 1 本 を 並
列接続にする。
222
471
f=40x10^3 Hz
π=3.1415
LC=15.8475x10^−12
L=5.4x10^−3 Hのとき
C=2.935x10^−9 F
47
C=2935PF
実際に使っている C の値は図にあるように
2200+470+47=2717PFです。
このC=2717PFとL=5.4mHを使って周波数を求めるとf=41.6kHzになります。
2kHzほど高い周波数に同調していることになります。同調させるには2935PF(2200+470
+100+100+47=2917)が必要ですが、多少ずれていても聴こえました。
3.1.3
端子台に部品を取付ける
コイルが終わったら端子台に部品を取り付けます。
3.1.3.1 トランジスタを取付ける
トランジスタ
平らな面は向こうを
向いています。
もう一つのトランジスタ
平らな面は手前です。
トランジスタ2個を図のように取付
けます。なお2個のトランジスタは向き
が違っているので気を付けましょう。
端子台のネジはプラスのドライバでゆる
めることが出来ます。
3.1.3.2
コンデンサ C1(0.1μF)(青色)を取付ける
コンデンサ C1(0.1)(青色)
コンデンサC1(0.1)を2個
104
104
3.1.3.3
抵抗 R1(22kΩ)を取付ける
- 4 -
図のように取付けます。
抵抗R1(22kΩ)を2個
図のように取付ける。
抵抗 R1(22kΩ)
104
104
3.1.3.4
抵抗 R2(2MΩ)を取付ける
抵抗R2(2MΩ)を2個 図のように取付ける。
抵抗R2の2MΩは手元にあった1MΩの抵抗を2個
直列にして使いました。手に入りやすい2.2MΩでも
結構です。
抵抗 R1(22kΩ)
104
104
抵抗 R2(2MΩ)
3.1.3.5
クリスタルイヤホンを取り付ける
図に示すようにクリスタルイヤホンのケーブル
を接続します。
抵抗 R1(22kΩ)
なおイヤホンのケーブルの先の絶縁物は取り除
いておくことを忘れずに。
104
104
被覆を取り除く
ク リス タル イヤ
ホンのケーブル
- 5 -
3.1.3.6
電池ケースを取り付ける
乾電池の+側の
ケーブルを巻き
つける
電池ケース(単三用)を使って電
源は供給しましょう。
電池を入れるのは組み立てが完
成してからです。
抵抗 R1(22kΩ)
104
104
−
単三乾電池
端子台まわりの回路はこれで終
わりです。
次にコイルを接続します。
+
被覆を取り除く
3.1.4
組立て
端子台
にコイル
を取り付
けます。
222=2200PF 1本
471=470PF
1本
47=47PF
1本
を一緒にする。
222
471
コンデンサの足
3本とコイルの
線1本を一緒に
巻きつける
コンデンサの足3本とコイル
の線1本と、−側の線1本を
一緒に巻きつける。
47
−側の線
104
104
−
単三乾電池
巻きつける
- 6 -
+
全体を版画用の板に木ネジなどを使って取付けると見栄えのよいものが出来ます。
3.1.5
完成
60回巻を6回
計360回まく
コイルはそのままでは転がって安定しないので、例え
ば図のような支え棒を使って支えると良いでしょう。
完成したら早速単三乾電池を入れて聴いてみます。
ペット
ボトル
コイル
木工用ボンド
で接着する。
版画用板
4.
調整
さて完成した40kHzの受信機の調整ですが、一般のラジオの受信機は周波数を調整するためのダイ
ヤルが付いています。しかしこの40kHzの受信機には周波数を調整するためのダイヤルはありません。
つまり40kHz専用の受信機で、それ以外の周波数を受信することは出来ません。
「3.1.2 同調回路を作る」で計算によってコンデンサCの値を求めました。したがってこの値のコンデンサ
Cを接続すれば40kHzを受信できるはずです。でも図にあるように実際に取付けたコンデンサは200
PFも小さい値のものでした。これは手元にあったコンデンサを使ったからです。計算によると実際に放送
されている電波の周波数の2kHzも高い周波数を受信していることになります。しかし心配無用です。こ
の受信機は手軽に作れることを目標としたので、それほど性能の良い受信機ではありません。多少周波数が
ずれていても聴こえます。
さて実際に放送されている標準電波ですが、ホームページ(http://jjy.nict.go.jp)から「標準電波の
出し方について」のページに入って、ページの左側の「長波JJY送信方法」のページに入ると標準電波の
詳しい情報が記載されています。
この情報によるとタイムコード情報が送信されていることが分かります。
送信されるタイムコード情報はパルスであることと、変調がなされていないため、受信機で受信しても可聴
音として聴けないことがわかります。
一般のラジオ放送では送信される電波に音声で変調がなされており、それを検波して音声として聴くことが
できるのですが、この標準放送では変調されていないため、電波が出ているか、出ていないかを聴くことに
なります。
実際に、この受信機で受信した標準電波はまるでノイズがON、OFFされているかのように聞こえます。
- 7 -
それもあまりも小さな音で(まるで蚊の鳴く(羽ばたき音)ようなと表現できるような音です)。
この受信機で40kHzの世界をちょっと覗いてみたのですが、なんとすざましい音に包まれた世界なので
しょうか。
ほとんどの家庭にはテレビがあると思います。このテレビからも強烈なノイズが出ていることがわかります。
ありとあらゆる電化製品からノイズが出ていることが実感できるのではないでしょうか。
そういう世界で標準電波を聴くには屋外に出ましょう。 それでも多くのノイズが飛び回っていることが実
感できるでしょう。
耳をすまして聴いてみましょう。かすかなノイズのON、OFFを・・
4.1 注意する点
この受信機を、測定器もない一般の家庭で作る場合の注意する点として
4.1.1
コイル
ここで紹介しているコイルは、直径65mm程度のペットボトルにポリウレタン線を360回ほど巻きま
した。あまりに沢山巻くので、つい巻いた数を忘れたり間違えたりします。 そこで忘れ対策として、ここ
で紹介しているように分割巻とすれば間違えることも少なくなります。
ただ私の経験からこの数でも間違えることがあります。
ペットボトルの直径がもっと大きくなったら巻き数はどうればよいのでしょうか。
円形コイル(ソレノイドコイル)のインダクタンスLは次の式で表すことができます。
L=KμN^2S/d
(K:長岡係数,µ:透磁率,N:コイルの巻数,S:コイルの断面積,d:コイルの軸方向の長さ. K
はコイルの直径とコイルの長さで決まる)
なお N^2はNの2乗をあらわしています。
これからインダクタンスLは、コイルの巻数が一定ならばコイルの断面積に比例します。
つまりペットボトルの直径が大きくなったらインダクタンスLは大きくなります。
したがって もしここで紹介している直径のペットボトルが手に入らなくて、もっと直径の大きなペットボ
トルの場合には、インダクタンスLを一定にするには、コイルの巻数を減らすことになります。
インターネットが使える人は検索ソフト例えば「http://www.google.co.jp/」などを使って、
「コイルの
インダクタンス」で日本語のページを検索してみましょう。
すると「コイルのインダクタンスの計算」などが見つかりますので、そこで自分の作りたいコイルの寸法を
入れると、自動的に計算してくれます。私もここでチェックしてみましたが、ほぼ実測値に近い値が得られ
ました。参考にしてください。
4.1.2
コンデンサ
計算によって求めたコンデンサCの値は、市販品のコンデンサの中から幾つかを並列接続して作ること
になります。 それぞれのコンデンサも誤差があるためぴったりの値を得ることは出来ませんから、多少の
誤差は目をつむることになります。この受信機では200PF以上の誤差がありますが、イヤホンで聴く限
りそのずれは感じられませんでした。
4.1.3
その他
手軽に受信できることを目指して作った受信機ですが、あまりにノイズが大きい世界のために、せっか
く受信できていても聴こえないかもしれません。
私の住んでいる場所はおおたかどや山標準電波送信所から凡そ143km離れた茨城県にあります。ま
わりは開けた関東平野で近くに筑波山が望めます。
(送信所からの距離はインターネットで緯度、経度を入れ
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ると自動的に計算してくれます。便利な世の中になりました。)農村地帯なのでノイズも少ないのですが、都
市部は人工ノイズに悩まされるかもしれません。
ほんとうに「蚊の鳴くような・・」小さな音なのです。
耳をすまして聴きましょう。
ノイズが少ない屋外では、電池の数を2個(直列接続)すると音も大きくなり聴きやすくなるかもしれませ
ん。ただし同時にノイズも大きくなってしまいます。
なおこの受信機は方向性があり、コイルの軸方向を北から右回りに80度ほどの方向にします。ただしこれ
は私の住んでいる場所での話しでした。
次に受信機の写真を取りましたのでこれを紹介して終わりにしたいと思います。
全体図
平らな板は版画用の板です。
コイルの拡大図
あまりきれいに巻いてありませんが、こ
れでも一応はコイルになります。
60回づつ分割巻にしてあります。
∼5.4mHでした。紹介したホームペ
ージの計算式からは5.58mHとなり
ました。
端子台まわりの拡大
端子台の部品の配置の様子ですが、半田
付けをせずに、手でひねったりして接続
している様子がわかると思います。
結構いい加減に作ってあります。
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