耐久消費財における部分的買い替え ~色の部分的買い替えに焦点を当てて~ 慮にいれないものとする。また、本稿では耐久消費財の ① ―――はじめに 中でも特にインテリア・家具業界に焦点を当てている。 ② ―――家具・インテリア業界の現状 理由として一つ目に、家具・インテリアは他の耐久消費 ③ ―――既存研究のレビュー 財と比較して技術革新・性能革新などの要素が尐ない。 ④ ―――仮設 そのため、一度家具やインテリアを購入すると、引越し ⑤ ―――提案 するなどと言った大きな理由がなければ、買い替えをし ⑥ ―――仮説検証 なかったり、同じ家具を複数個持つなどと言ったことが ⑦ ―――終わりに 他の耐久消費財よりも発生しにくいのではないかと考え るからである。 菅又 碧 鈴木 嘉洋 二つ目に、平成 21 年 5 月から導入された家電の「エコ 堀畑 剛人 三留 暢亮 ポイント制度」 、21 年 6 月から導入された自動車買い替 えに対しての「エコカーへの買い替え補助金制度」など 立教大学 高岡ゼミ 鈴木班 耐久消費財の中でも行政の対応により、消費が上昇傾向 にある製品もある。しかしそういった動きの中で、家具・ ①―――はじめに インテリア業界は行政による政策の対象にはなっていな い現状がある。行政の対応といった追い風がない中での 本稿の課題は、不況下における消費者の節約志向により 消費者購買意欲を促進することに意義があると考えたか 消費が落ち込んでいる耐久消費財市場、特に家具・イン らである。 耐久消費財に関する研究に Booz&Company(2009) テリア業界において新しい購買・ビジネスモデルを提案 することにより消費者の購買意欲を喚起することにある。 が提唱し た耐久消費財の購買モデル がある。 Booz& 内閣府経済社会総合研究所景気統計部の調査によると Company(2009)によれば、耐久消費財購買までの消費 平成21年3月の一般世帯の消費者態度指数は、前期(平成 者行動として、一般消費財とは違い「認知・親近・意見・ 20年12月)差1.5ポイント上昇し28.4となった。同研究所 考慮・意図・行動」といった順を踏んで購入にいたると によると、これは、前期に比べ「収入の増え方」が低下 いうことである。低関与購買の一般消費財の場合は、い したものの、 「耐久消費財の買い時判断」 「雇用環境」 「暮 わゆる AIDMA というプロセスで消費者は購買意思決定 らし向き」の意識指標が上昇したことによるとされてい を行うと考えられていた。マス広告によって Attention る。確かに前期と比較すると若干の上昇は見られるもの (注意)と Interest(関心)をひき、その商品を欲しい の、18年3月と比較すると約20ポイント減尐しており、 という Desire(欲求)をひきだして、Memory(記憶) 依然として消費者の消費に対する意識は低いと考えられ に焼付け、店頭での Action(購買)に結びつける、とい る。 う流れでマーケティング戦術を考えることが一般的であ なお、一般的な耐久消費財の定義としては原則として った。しかし、耐久消費財の場合は、購買意思決定に時 想定耐用年数が1年以上で比較的購入価格が高いものと 間がかかり、その間のプロセスは AIDMA では表現でき されているが、本稿でいう耐久消費財は価格の高低は考 ないということがわかった。そこで市場調査会社のアリ 1 ソンフィッシャーが、自動車を例にモデル検証をした。 2.家具・インテリア業界での価格戦略 自動車という商品の場合広告を見ただけではなく、実際 に走っている姿を見たり、周囲の評判を聞いたり、雑誌 なぜ家具・インテリア業界全体として売り上げを下げ などを読んだりして、ブランドイメージを自分の中に形 続けているにも関わらず IKEA・ニトリなどの企業はこ 成するのであるが、それを親近と意見の二段階に分けて のように好調に業績を推移させているのかを考察してい 分析する。また、実際の車の購買には、多くの候補車種 く。すると、これらの企業の共通点として、経営戦略に をまず想定して、そこから徐々に一車種に絞り込んでい 低価格戦略を含んでいるということがわかった。IKEA くというステップをとることが多いので、 「考慮」と「意 はニトリなどの競合他社との価格競争のために今夏8月 図」の二段階にわけている。顧客は購買車種の決定前か に 1,450 品目を対象として平均で25%の値下げを実施 らディーラーをいくつか訪問して情報収集を行い、決定 した。ニトリの低価格戦略としてまず、平成 20 年 5 月 後にディーラーで最後の交渉を行い、購買「行動」に至 30 日から 1 年間 3 ヶ月ごと 4 回に分けて値下げをすると るといったモデルである。しかしこのモデルでは感情的 いう計画を発表し、実際に 1 回目の 5 月の値下げ時に品 要素が強く、購買頻度が低く、購買意思決定時間が長い 目数 268 品目(家具 43 品目、ホームファッション商品 という問題が挙げられる。 225 品目)平均 19.6%の値下げを実施する。続いて 2 回 そこで本研究では製品使用年数が長く買い替え需要の 目の 8 月の値下げ時に値下げ品目数 372 品目(家具 40 大きな耐久消費財市場に、現在も続く世界的不況下にお 品目、ホームファッション商品 332 品目)平均 16.8%の いて消費者態度指数を下げ続ける消費者に新たな購買モ 値下げを実行する。続いて 3 回目の値下げ時の値下げ品 デル・ビジネスモデルを提示することにより耐久消費財 目数 360 品目(家具 37 品目、ホームファッション商品 市場の中の家具・インテリア業界の消費促進をはかる。 323 品目)平均 15.0%の値下げを行った。そして最後の 4 回目の 2 月の値下げ時の品目数 300 品目(家具、ホー ムファッション商品 240 品目)ここまでで、累計値下げ 品目数は約 1300 品目(全体品目数の 16%)第四弾累計 ②―――家具・インテリア業界の現状 で平均 20%の値下げとなった。しかしそれにとどまらず その 3 ヵ月後の 2009 年 5 月に追加 400 品目の値下げを 1.家具・インテリア業界の業績推移 インテリア業界の現状分析から、現在の家具・インテ 発表し、さらにその 3 ヵ月後の 8 月に追加 400 品目値下 リア市場低迷の考察を計る。現在の家具・インテリア業 げを発表、さらにその 3 ヵ月後の 11 月に 400 品目値下 界は、 2001 年に 25,842 (億円) をピークに 2003 年 22,040 げを発表をするといったように、各企業が低価格戦略に (億円)2005 年 20,398(億円)、2007 年 18,534(億円) 躍起になっていることが伺える。なぜそこまで低価格に と販売総額が年々減尐の一途を辿っている。これに比例 こだわるのかを次の段落で説明していく。 し、家具・インテリア小売市場規模は縮小し続けている。 3.現在の消費者の低価格志向 しかし、企業ごとの業績推移を見てみると、ニトリは、 インテリア市場全体が縮小を続けている 2003 年から 現在の消費者の低価格志向の背景には、世界的金融恐 2007 年の間に 197.6%の売上高伸び率をほこっている。 慌に端を発する不況からくる消費者物価指数の減尐から 株式会社バルスも 2003 年から 2007 年の間に、ニトリに わかる。 は务るものの 182.0%という高い数字を残している。他 ■表―――1消費者物価指数の減尐 にも IKEA のような新しく海外から参入してきた企業も 図 高い売上高推移をほこっている。IKEA は 2004 年から 2007 年に 154%も全世界で売上高をのばしている。 IKEA が日本に上陸したのは 2006 年であるが、そこから 急成長を遂げている。 2 表 米の大手小売業の PB 成功に学び、PB 比率をこの 2~3 年 で 10%~20%に拡大しようとしている。果 たして PB 比率を上げることは収益につながるのであろ うかということである。世界の小売上位 30 社のなかでデ ータ分析が可能な 15 社について PB 比率と収益性との関 係性を分析してみた。表の 2 を見ると、利益と PB 比率は 「U 字型」の関係になっており、中途半端な PB 比益性を この消費者物価指数の減尐の他にも PB の市場拡大から 悪化させるということが分かる。日本の小売業はもうか も消費者の低価格志向がいかに広まっているかが分かる。 る水準にあるが、このまま単純に PB 比率を上げていくと 総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は景気 低収益ゾーンに入ることになり、PB 比率をどの水準にも 後退、消費低迷により品質と低価格で支持を得ている PB っていくか、あるいはどんな PB 戦略をとるか、が問われ 食品調査の報告書調査結果「PB 食品市場の実態総調査 ている。 2010」を発表した。この報告書によると、調査対象 PB 食 百貨店なども経営不振から PB 市場に参入し始めている。 品の市場は 2009 年に前年比 21.6%増の 2 兆 3380 億円を 百貨店は従来からここからもいかに現在の市場に低価格 見込んでおり、これからも規模を拡大する市場であると 志向が蔓延しているかが分かる。しかしこの消費者の低 いわれている。さらに週刊エコノミスト 2009 年 4 月 21 価格志向が企業間の価格競争を引き起こしている。製品 日号が PB を多く取り扱っているイオンやセブン&アイ の大幅な値下げを図り低価格戦略をとっているニトリや の PB 戦略とその戦略からくる経営への影響をあげてい バルス、イケアは売上を伸ばし大きく成長しているもの るがそれによると、不況が小売業を直撃しており、多く の業界全体は縮小を続けている。この要因として低価格 の企業が減収減益にあえいでいる中、PB の売上比率は高 高品質の製品の売り上げ増による薄利多売のかたちがで まっている。イオンの自社 PB「トップバリュ」は 08 年 2 きてしまったことと考える。そもそも耐久消費財は買い 月期で 2,647 億円を売り上げ、08 年 8 月中間決算では対 替え需要が売り上げの大きな割合を占めており、低価格 前年 138%と好調が続き、2011 年 2 月期には 7,500 円の 高品質の商品が多く売り上げをあげている現在消費の停 売り上げを目標としている。この数字は 08 年 2 月期の小 滞が進行し、業界全体として売り上げを下げているとい 売り事業(約 4 兆 1,000 億円)の 18%に当たる。セブン うことがわかる。この現状から考えられることとして、 &アイも 07 年 6 月にグループ PB「セブンプレミアム」 低価格戦略をとることが現在の消費者ニーズにこたえら を発売、初年度に 800 億円を売り上げ、2010 年 2 月期に れると考えられる。また低価格戦略だけでは結果的に業 は取り扱い品目を 600 から 1,300 品目に拡大し、売り上 界全体の不振を招いてしまうということがわかる。ここ げを御 3,200 億円と大幅に伸ばす計画だとしている。こ から低価格と何かを組み合わせたモデルを形成すること のほか、大手小売業は軒並み PB 品目数と、大幅な売り上 が出来れば不振を続ける耐久消費財市場、中でも家具・ げの拡大を計画している。減収減益で苦しくなると、ど インテリア業界の活性化につなげられるのではないかと の企業も利益率の高い商材に重点を置き、利益確保に努 考える。 める。各社の PB 比率の上昇はこの動きに合致したもので ■表―――2 ある。特に、小売業の売上高に占める PB の売上比率は、 日本では 5%程度にすぎないが、ヨーロッパ各国では 30%を超える国が多く、イギリスでは 43%にまで達して いる。個別企業では、ドイツのディスカウンターである アルディでは 90%を超え、小売り最大手のウォルマート が 39%、二番手のカルフールで 35%、三番手のテスコは 50%といずれも高水準にある。そこで日本の小売業は欧 3 利益と PB 比率 論を生みだしたという文脈が成り立つと考えられる。 しかし、清水(2007)ではこの顧客囲い込み論の進展 は、顧客関係強化を背景としながらも、一方で「顧客切 り捨て」を前提としていると考える。この考えの源には 「パレートの法則」の誤用がある。ここでいうパレート の法則とは、働き蜂を例にとると、真面目に働いて、営 巣に貢献するハチは全体の 20%で、その「まじめバチ」 ばかり集めて営巣させると、貢献するハチはやはり全体 の 20%で、残りの 80%は働かないというといったもの である。現在、日本における」数多くの業界では、その 市場が飽和、成熟状態であり、競争者のシェアを奪わな いと企業存続自体が危うい状況にある。 また、消費動向の多様化、複雑化ゆえ、ビッグヒット 商品が生まれにくく、大規模な新規顧客獲得も難しくな ③―――既存研究のレビュー ってきている。こういった状況下では、 「いつも、高い買 い物をしてくださる、お客様にはいつまでも、よいお客 1.顧客の囲い込み 様でいてもらう」という当たり前の発想が生まれてくる。 顧客囲い込みによるブランドロイヤリティの獲得の研 ここでまず、 「顧客囲い込み論」と「顧客関係構築」論 究に、清水(2007)の「顧客囲い込みマーケティングの の相違が生まれてくる。すると顧客囲い込み論では、よ 死角」がある。清水(2007)の研究にふれる前提として いお客様だけを重視し、コントロールしようという発想 顧客囲い込みマーケティングを明らかにする。 となる。その論拠には、新規顧客獲得に比べて既存顧客 このマーケティングスタイルをとるに至る日本の市場 維持コストが低いという調査結果、 「パレートの法則」の 背景として、高度成長、バブル経済と崩壊、複合不況を 濫用がある。顧客囲い込み論は、さまざまな分野の要素 経て、成熟、衰退市場に差し掛かった商品、サービスが が、組み合わさって誕生し、一見強固に見える理論的根 多いということがあげられる。各業界の市場では、買い 拠を地盤にして、ビジネスの各方面へ広がっていったと 替え需要が中心となり、決まった大きさのパイを奪い合 考えられると指摘する。 う構図に変化し、こういった状況下においては、強力に このように清水(2007)以前の顧客囲い込みマーケテ 新規市場を開拓する商品開発と競合者からのブランドス ィングではパレートの法則の話などからわかるように、 イッチが必要になるが、これには莫大なコストがかかる。 顧客に優务をつけてしまっている。これでは真の顧客ロ 新製品開発費、研究費はもちろん、ブランドスイッチの イヤルティの形成にはいたらない。ここでいう顧客ロイ ための広告費、販促費が企業に重くのしかかっている。 ヤルティとは直訳すれば顧客の忠誠となり、繰り返し自 ここで企業内に既存の顧客を維持しようという発想が 社に発注、購買をし、競合他社に浮気をしない顧客のこ 生まれ、顧客囲い込みマーケティングが登場するわけで とである。その点清水(2007)では、利益の源泉は真の ある。既存顧客維持コストは新規顧客獲得の約1/5 とい 顧客ロイヤルティとし、重きをおいて話を進めている。 う調査結果もあり、とにかく顧客を自社内に取り込んで、 自社と顧客の「WIN・WIN 関係」 、つまり価値交換の 収益を確保したいという企業の一方的な思惑が表れる。 取引によって、双方の利益享受を実現することが、顧客 また、今後の市場の不透明性、流動化も企業の保守的な 関係性強化にとっていかに重要であるかが理解できると 考え方に拍車をかけている。このように市場の成熟化と し、顧客関係性強化の延長線上に企業の長期安定的高利 それに伴う新規顧客獲得のコスト負担増、マーケティン 益体制の確立も見えてくるはずとしており、顧客ロイヤ グにおける顧客関係強化志向の強まりが、顧客囲い込み ルティ創造の第一歩は「顧客にとっての価値づくり」で 4 あると次のような式で表している。顧客にとっての価値 本節では、上記の現状分析を踏まえて、顧客ロイヤル =「顧客にとっての好結果+プロセスの価値」/「売値 ティを獲得した後のモデルの意義やメリットを特定し、 +商品を得るためのコスト」というような式である。分 モデルの特定化を行う。現在市場では企業間の価格競争 子の要素である「顧客にとっての好結果」とは、商品や が激化し、低価格高品質の製品があふれている。その製 サービスの購入による、顧客の課題解決である。例を挙 品を消費者が購買することにより、低価格製品を使用し げると、ビールを購入した顧客は、のどの渇きという問 続け買い替えが発生するサイクルが長期化し消費が停滞 題を解決し、さらに爽快感という好結果を顧客にもたら しているのが現状である。その問題を解決するためには したということになる。 「プロセスの価値」は商品やサー じめにであげた AFOCIA モデルの欠点である購買頻度 ビスの提供過程から得られる価値をいう。売り手の親切 の低さ、購買意思決定時間の長さという問題を解決し、 さ、心配り、丁寧な接客態度などが、これに含まれる。 製品ライフサイクルを短縮し、消費者の消費意欲を喚起 顧客はサービスの結果だけでなく、サービスの提供にお するようなモデルを提唱できれば、消費者の消費意欲を けるプロセスの充実も求めていることに注目したい。ま 喚起し、消費低迷の現状を打破できるのではないかとい た分母の「売値」は、顧客が商品やサービスに対して払 う考えのもとに話を進めていく。 う対価。 「商品を得るためのコスト」は、顧客が、商品を ⑤―――提案 手に入れるまでのコストである。手間や時間をかけて、 商品情報を収集し他社と比較してやっと商品購入にいた 1.AFOCIA モデルに沿ったビジネスモデ った場合、そのコストは大きくなる。つまり、式の分子 ル が大きいほど、分母が小さいほど、顧客にとっての価値 本稿が提示するモデルは耐久消費財市場における部分 は大きくなる。そして、その価値の積み重ねが、顧客満 的色の買い換えである。既存研究を基に考察すると、成 足に裏打ちされた顧客ロイヤルティを生み出すのである。 熟マーケットや買い換え率の高いマーケットにおける企 こうして清水(2007)でいう顧客にとっての価値の算 業戦略の焦点はブランドロイヤルティの向上、製品差別 出方法を可視化した式をもとに真の価値提供をすること 化などに基づいて自社シェアを維持することであり、各 で自社に恒久的な利益をもたらすことができると述べて 企業のシェア維持戦略の一連としてブランドロイヤルテ いるが、現在の家具・インテリア業界には低価格かつ高 ィを向上させ、ブランドスイッチングを防ぎ、反復購買 品質な製品が多数存在し、もし顧客ロイヤルティを獲得 に至るようにするのが大切であるが、現在は消費者の消 でき競合他社から顧客を奪い取り自社製品を購買させた 費意欲も低く顧客ロイヤルティを獲得し、そこから何か としてもその後のマーケティング的施策について何も言 もうひとつ施策が必要を打たなければならないと考える。 及されていないため、買い替え需要が大きな割合を示す その施策の部分にこの家具・インテリア業界における この市場で買い替えの促進がはかれない限り消費が停滞 「色」の部分的買い換えがあたる。 してしまう。さらに消費者態度指数、消費者物価指数の 1.買い替え時の消費者欲求 両方が減尐し続けている現在において、低価格かつ消費 ここで、色の部分的買い換えのモデルを考察していく 者の消費意欲を喚起できるような新しいモデルが大切で 前に家具・インテリア業界と他の耐久消費財買い換え時 あるといえる。この顧客ロイヤルティを獲得し、競合他 の消費者欲求についてここで言及しておく。そもそも人 社から顧客を奪い取り自社製品を購買させた後の消費喚 がモノを買い換える・買い換えないなどの理由について 起については未研究であり、かつ耐久消費財の買い替え は、内的要因と外的要因の二つの要因で考えることが有 についての研究はいまだに多くなく、よってこの論題で 効である。まず、内的要因とは、その商品を買いたいと の研究は意義があるものといえる。 思う、消費者の内側から沸きあがってくる購入欲求のこ とである。次に、外的要因とは、その商品の買い換えに ふさわしいタイミングや予算など、消費者の欲求の外側 ④―――仮説 にある外的状況のことである。そして、言うまでもなく、 5 消費者が購買に踏み切る決断をしやすいのは、上記二つ サイクルの短縮も可能となる。今回この部分的色の買い の要因がともにそろった時である。どちらか一方の要因 換えモデルをオフィスをケースとして説明していく。は だけだと消費者がなかなか購買行動に踏み切れないとい じめにオフィス内インテリアについて関する 2 つのアン うことがいえる。例えば、もし、内的要因がそろってい ケートから現在のオフィス内インテリアのニーズを探っ て、ある商品をとても買いたいと思っていたとしても、 ていく。2008 年 3 月にコニカミノルタホールディングス 外的要因がそろっていないとき、あるいは予算が足りな 株式会社が 20 歳以上のビジネスパーソンに対して行っ い、現在の商品がまだ新しいといった状況の場合、購買 た色に対する意識調査が行われたのだが、この調査の要 行動には至らない。また、逆に外的要因はそろっていて、 約として以下の 4 点があげられる。 買い換え時の予算も十分あり、手持ちの商品は古くて使 1・壁紙や内装の色で気分が変わる人は多い。 いづらい状況になっていたとしても、そもそも欲しいモ 2・オフィスには明るさ、落ち着き、清潔感のある色が ノがなければ購買行動には至らない。特に家具・インテ 好まれている。 リア買い換え時の消費者欲求を考えた場合、他の耐久消 3・オフィス内インテリアの色を変えると働く人のモチ 費財とは違った消費欲求があると考えられる。 ベーション向上につながるが、最も色を変化させて 家電などの耐久消費財は技術革新的欲求からくる消費意 効果的と思われているのは壁 欲が大きな割合を示す。例を挙げると、Microsoft の OS 4・オフィスの中で色を変えたいと思うものの上位 3 つ が Windows Vista から Windows 7 に進歩したり、今年 はデスク・壁・床の3つである の秋に三菱電機から発売された『瞬』冷凍機能i搭載の冷 ということであった。 蔵庫などがある。これらのように、家具・インテリア以 二つ目のアンケートとして株式会社デザインワークスプ 外の耐久消費財は大幅に技術革新をすることが多い。し ロジェクトが 2006 年 8 月に調査したオフィス移転による かし家具・インテリア業界においてはそういった技術革 満足度意識調査によると、女性の社会進出、人材の流動 新的欲求が尐ないため購買行動に至らせる為の内的要因 化、成果主義の導入、情報技術の進歩による知的生産業 を形成することが他の耐久消費財よりも大切な課題とな 務の拡大等、さまざまな社会的環境の変化を受けてビジ る。そんな状況が考察できるためこの二つの要因に対し ネスパーソンのワークスタイルが多様化してきており、 てアプローチをする必要があり、特にこの家具・インテ このような変化の中、企業のオフィスに対する意識の変 リア業界においては内的要因に対して綿密なアプローチ 化が起きていることが読み取れた。以前は常時多数の人 が必要となる。次にこの家具・インテリアの「色」の部 が働くための固定的な場所といったイメージであったオ 分的買い換えモデルについて言及していく。 フィスが現在は、環境の変化にフレキシブルに対応でき る空間や、人材獲得や従業員満足・ブランディングに活 2.家具・インテリアの色の部分的買い替え 用できるワークスペースへと変わりつつあり、今後より 家具・インテリアの色の部分的買い換えとは、ソファ 一層従業員の働き方や企業の成長ステージに応じたオフ を丸ごと買い換えたりするわけではなく、ソファの皮の ィス戦略を実行していかなければならないということが 色や、壁紙の色やいす等の色、パーテーションなどの色 わかった。さらに詳細な数字を見ていくと、 「オフィス移 を買い換えるといったように、その製品全てを買い換え 転にあたって重視したポイント」として 1 位が「立地・ るわけではなく、一部分の色を買い換えるといった内容 周辺環境」 (59.8%) 、2 位「移転コスト」 (58.3%)3 位 である。部分的な色の買い換えのメリットとしては製品 「オフィス内レイアウト」 (35.8%)と、コスト面や立地 全てを買い換えるわけではないためコストパフォーマン のみならずオフィス内のインテリアなどまでも高い割合 スがよいこと、長期使用における飽和感を取り払ってく で重視するということがわかった。さらに「オフィス移 れることなどがあげられる。さらに部分的な色の買い換 転をする際にコストを抑えたい項目は何か」という問い えの場合、シーズンごとの改装や気分転換といった内的 に対して、上位に「引越し作業の費用」 (61.8%)、 「不動 要因に働きかけることも可能になるとともに製品ライフ 産に関わるコスト」 (55.0%)が高い割合を示したのに対 6 し、 「内装・設計デザイン費用」の項目は(32.0%)と回 その活動を CSR 活動としてとらえる。Wylie 答数が低く、オフィス内インテリアにはコストを惜しま (1958 年)によるオフィス内インテリアの色 ないということがわかった。さらに、現在のオフィスの と体感温度との研究によると、暖色と寒色が 満足しているところという問いには、 1位 「立地」 (21.3%) 温度近くの際を引き起こすということを示 2 位「取引先・顧客に対する信頼性向上」 (17.5%)3 位 唆している。ニューイングランドの保険会社 「ビルの設備や概観」 (16.5%)とオフィスの外形的な部 で、管理者がくすんだとび色のオフィスの配 分で満足しているのにとどまり、オフィス内インテリア 色を、青の際立った涼しげでくつろいだ感じ には必ずしも満足していないという現状であるというこ に変えた。これを行ったのが 8 月だったのだ とがわかる。これら 2 つのアンケートからわかるとおり が、冬が来たとき、従業員たちは涼しく感じ オフィスで働いている人たちはオフィス内インテリアの すぎると苦情を言った。このオフィスは通常 色など気になっており、そこへの設備投資はする意欲は 21℃に維持されていた。苦情が続いたため あるものの、今は何もしていないというのが現状である。 24℃まで引き上げたが従業員たちは依然と オフィス内インテリアの色を部分的に買い換えをするこ して寒がったため討議と研究が重ねられた とにより発生するメリットは大きく二つあり、一つには、 後、配色が暖かい黄色と安らかな緑に変えら 環境への配慮としての CSR への取り組み、二つ目に企業 れた。室温は 24℃のままであった。すぐに従 ブランディングを可能にするということがあげられる。 業員たちは暑すぎるといって抗議し、室温が 本稿で言う企業ブランディングとは、企業や団体の内外 もとの 21℃に引き下げられたとき苦情は収 に対して、自社の独自性と優位性を浸透させる活動であ まったという実例や、アメリカ中西部の大き り、共通のメッセージを軸に、企業や団体の事業活動を なオフィスビルの食堂が明るい青に塗り替 束ね競合他社と差別化を図ることである。次段落からこ えられたとき、従業員たちは冷え冷えすると れらメリットへの言及をしていく。 苦情を言い始め女性従業員は昼食時に上着 を着始めた。実際の食堂での温度は以前と違 3.買い替えのメリット いがなかった。そこで壁が再びオレンジ色に メリット一つ目の環境への配慮としての 塗り替えられ、椅子にオレンジのカバーが取 CSR としての取り組みということで、独立行 り付けられた。すると温度が変わらない子の 政法人労働政策研究・研修機構がまとめた調 部屋への苦情は一つも出なくなった。といっ 査結果によると、CSR に関する取り組み状況 た例から考察するに、オフィス内インテリア を見ると、「法令などによる規定範囲、社会 の色によって従業員たちは体感温度が著し から要請されている範囲以外でも、積極的に くかわり、夏には寒色系、冬には暖色系のイ 取り組んでいる」とする企業が 37.2%、 「法 ンテリアにすることで大幅な冷暖房費のコ 令による規定範囲、社会から要請されている スト削減となり、消費電力の削減・CO2 の削 範囲で取り組んでいる」とする企業が 57.7% 減につながりこれらが環境への配慮をした となっている。これを前回調査(2005 年)と CSR 活動となる。このように環境への配慮を 比べると、前者の割合が 7.4 ポイント上昇し CSR 活動とし、成功を収めた実例として、キ ている。この調査からもわかるように CSR と リ ン MC ダ ノ ン ウ ォ ー タ ー ズ 株 式 会 社 の して何かの取り組みをするということは現 Volvic という製品の 1L for 10L といったプ 在社会においては当たり前のこととなって ログラムがある。これは Volvic の売り上げ いるということがわかる。本研究ではオフィ の一部でユニセフの活動を支援していると ス内インテリアの色を季節ごとに変えるこ いうもので、内容が、アフリカで飲料水を確 とにより、冷暖房費の大幅な削減をはかり、 保するための井戸作り、及び 10 年間に渡る 7 メンテナンスを行うことで、消費者が購入し ったり、共感・共鳴・感動できる企業スピリ た1L あたり、10L の水がアフリカの井戸か ット(企業精神)であったりするのではない ら生まれるといったものである。この活動に か。最近数多くの企業・特に中小企業が、デ より Volvic の売り上げは 7・8 月のキャンペ ザインやブランドや企業文化作りに注目す ーン時に前年比 134%と増加しており、効果 る背景がここにあると考えられる。21 世紀は 的な CSR 活動は企業経営に大きな効果をもた 「文化の時代」だといわれて久しく、企業も らすことが伺える。メリット二つ目の企業ブ 消費者も文化への志向を強めるようになっ ランディングをオフィス内インテリアから てきている。経済的豊かさを手に入れた現在 はかるのだが、はじめに企業文化の創造の重 の日本社会は高度な成熟化に至る。この社会 要性について言及していく。今日のようなモ の成熟化は、従来であれば見過ごされがちな ノ余りの背景には、社会が高度に成熟化し、 人間の精神的・文化的側面の高度な人間的欲 一応生活に必要なものはほとんど所有して 求を目覚めさせ、生活の向上、人間と自然の いるということが言える。そんな中で現在の 調和、人と人との心の触れ合いやいきがいや 消費者心理として、モノそのものの機能以上 精神的・文化的豊かさを強く求める要因とな に、モノそのものの所有や使用がもたらす精 っている。こうした市場・社会の性格の変化 神的満足や、そのモノを製造している(提供 が消費者の価値観を大きく変化させ、この変 している)企業の考え・行動・社会的役割な 化こそが企業文化の重要性を押し上げてい どへの共感という共振的満足を求めている るのである。よってこれから企業はいかにし と考えられる。ただ基本機能が優れているだ て、商品・サービスの持つ精神的・文化的豊 けでなく、感性の高いデザインのインテリ かさの付加価値を伝え、それを提供する社会 ア・家電製品や・健康志向名モノ・自然環境 的存在としての企業の顔(社会性豊かな企業 に配慮したモノなどを求めようとする時代 文化)を見せるかが重要であるため、オフィ になったのである。このような変化は、既に ス内インテリアから企業文化の創造をはか 数十年前から指摘されており、例を挙げると るのである。近年は Volvic の成功事例から 「人間性の心理学」という心理学を打ち立て もわかるとおり、企業は消費者から見て、た たアブラハム・マズローの人間の欲求の階層 だ経済原則(生産性・収益性・成長性)だけ であるマズローの欲求のピラミッド・欲求5 で企業活動する会社ではなく、社会に貢献す 段階説では、基本的な欲求(生理的欲求)が る企業文化・世界に開かれた企業文化を持つ 充足されると、安全と安定の欲求→所属と愛 会社に共感を持ち、魅力を感じ、支持する。 の欲求→承認欲求→自己実現の欲求へと欲 消費者の支持を得るために企業文化の創造 求への質が変わると説いている。つまり社会 は必須であり、オフィス内インテリアにコー が成熟し、消費者がモノの機能以上の満足を ポレートカラーに合う色のデスクやパネル 求めるようになった現代においては、デザイ などを設置し平素の就業時から従業員に企 ンも含めそのものを製造・提供する企業の考 業文化を感じさせるインターナルマーケテ え・行動(企業理念・活動・実績→企業文化) ィングの橋渡しとなるのがこのオフィス内 こそが、企業の差別化を行う大きな要素にな インテリアの部分的色の買い換えのメリッ るということである。既に製品(商・サービ トである。 ス )の機能面(実質面)での差別化が困難 4.VS 行動モデル になりつつある中で、更に差別化を行うこと のできる価値は、感性に訴えるデザインであ 色の買い換えということだが、色展開の数 8 は買い換えする製品によって異なるものの 下のバンドルセットの中に複数含まれてお 小川(2005)のバラエティーシーキング行動 り、VS 行動の理論が明示された。オフィス内 モデル(以降 VS モデルと表記する)に沿っ インテリアの色の買い換えを消費者に提案 て可能な限りの多色展開を図る。VS モデルと する際にも多色展開から自由に買い換えの は消費者の多様性追求現象を説明する枠組 色を選ばせることでそれぞれの企業のカラ みとして意義があり、商品である。やブラン ーを選択させる機会の提供が可能になる。次 ドの選択にあたって多様性を求める消費者 に和民の事例を説明していく。例えば、ファ 行動を分析するものである。ここで消費者の ミリーレストランでは、通常は季節ごとにメ VS 行動に関する事例を 2 つ挙げる。カジュア ニューの入れ替えを行っている。食品スーパ ル衣料品チェーンの「ユニクロ」(㈱ファー ーでも、売り場の棚変えは季節の変わり目に ストリテイリング)と和食レストランチェー タイミングを合わせている。ところが「居食 ンの「和民」(㈱ワタミフードサービス)の 屋・和民」を展開するワタミフードサービス 事例である。ユニクロの店頭で、靴下やトラ では、通常の和食レストランに比べて、メニ ンクス(ショーツ)がバンドル(同じ商品を ューの改訂を頻繁に行っている。メインメニ 複数個束ねる形態)で販売されている。単品 ューは別にして、サイドメニューは月ごとに (一足)の価格は 200 円だが、2 足バンドル 変更されている。一番の理由は、提供商品で は 390 円、3 足バンドル販売されるときには 目先を変えて、固定客の来店頻度を上げるた 590 円で値付けされている。ユニクロで販売 めである。消費者に飽和感を与えないために される靴下は、中国の協力工場で製造されて 常に新しい顔を見せ続ける施策をとってい いるのだが、向上から出荷する際の効率だけ る。この事例から、買い替えの色をシーズン を考えると、4 足(790 円)とか 5 足(990 ごとに提案するだけではなく、頻繁に新色展 円)でバンドル販売するほうが収益性が高く 開を行うことで消費者に飽和感を与える機 なると考えられる。しかし 4 足以上のバンド 会を減らし、さらに購買行動に至るきっかけ ル販売を消費者はどう評価するか、割安だか を常に与え続けることで消費者の購買意欲 ら購入するという気になるだろうか。またそ を喚起できると考える。 の際には、同じ形や同じ色の靴下を事前にバ ンドルしておくべきだろうか(プレ・バンド ⑥―――仮説検証 リング)。それとも、購入個数と価格のみを 事前に指定しておき、陳列棚からは色や形を 自由に選べるようにするべきだろうか(フリ まず消費者に向け、「認知」をさせることから始めるわ ー・バンドリング)。子の場合の、小売業の けだが、シーズンなどに合わした色による部分的な買い マーチャンダイジングを決定付けるのは、消 替えという新たなスタイルを消費者に知らしめなくては 費者が商品のバラエティーをどのように選 ならない。非耐久消費財においては、1980 年代から 1990 択するかという要因である。小売店頭での実 年代にかけてマス広告から店頭マーケティングに、プロ 験を経て実際に採用したのはフリー・バンド モーション戦略の重点をシフトしてきた。今なおこのプ リングでバンドル個数は 3 個までという結論 ロモーション戦略のスタイルが持続的で店頭マーケティ であった。この形態をとることで消費者の VS ングを重視するあまりその収益性を低下さしているとい 行動を喚起させることができる。さらにフリ う問題に直面しているが、耐久消費財業界においても、 ー・バンドリングにすることで、単独では選 近年プロモーション戦略によって生じる効果の違いがう 択されない選好下位のアイテムが、実際に靴 かがえる。富士通総研の耐久消費財購入時の利用情報の 9 変化についての研究によると、2007 年 12 月期では、耐 ング活動を行うことは、企業としての明確な目的を見失 久消費財を購入する際に利用する情報源は最も多かった うかつ収益性も低下させかねない。 のが「店頭の実物(75.3%) 」であり、 「テレビ広告 上記にあるように、テレビ CM などのマスメディア広告 (59.4%) 」、 「企業のサイト(50.9%) 」が続く。 「個人ブ は重要な情報源として判断されず、さらには 2004 年 3 月 ログやクチコミサイト(38.5%)」の選択率は「雑誌の広告 期調査から 2007 年 12 月期調査にかけて利用する情報源 (33.1%) 」を上回る結果だった。 としてもポイントを下げている。 一方でこれら利用する情報源の中で重視するものは しかしそれでいてなお、 「店頭の実物」についでテレビ 「店頭の実物(74.7%) 」がトップに来ることが変わりは CM は第 2 位に利用数であり、消費者に「認知」のみを与 ないが、2 番目は「個人ブログやクチコミサイト(55.1%)」 えるのであれば、依然として有力な広告媒体であると判 で、 「企業のホームページ(43.6%)」、 「友人、家族のクチ 断できる。やはり耐久消費財購買時において、消費者に コミ(42.2%)」と続き、情報源すべての場合とは順位が違 「認知」のみを与える第 1 次プロモーションとしはテレ ってくる。 ビ CM 等のマスメディア広告が効果的であるといえる。 この 2 つの視点からの調査結果を照らし合わせると、 さらには消費者を「親近」 、 「意見」の段階に向けなく 「店頭の実物」はよく利用されるかつ重視される情報源 てはならない。しいては、消費者に向けより一歩踏み込 であるといえるが、 「テレビ広告」などマスメディア広告 んだアプローチを行うべきである。AFOCIAモデルを提唱 に関しては多くの人に利用されるが、それほど重視され したBooz&Company東京オフィスのディレクター・オブ・ ない情報源であると判断できる。さらにはマスメディア ストラテジーである岸本義之の著書「マーケティングROI 広告ほど多くの人々に利用されるわけではないが、 「個人 の改善」によると、消費者は「認知」をしてから、ブラ ブログやクチコミサイト」などの CGM は選んだ人に重視 ンド・イメージを自分の中に形成するのであるが、それを、 される率が高い情報源であることが判断できる。 Familiarity(自分にとって好ましいイメージかどうかの さらに 2004 年 3 月期における第 1 回調査と比較すると、 評価)とOverall Opinion(自分が必要とする具体的な特 「店頭の実物」のポイントは 3 年間でさほど大きく変わ 徴の評価)の二段階に分けて分析する。広告や商品の認 らないが、 「テレビ CM」 、 「折り込みチラシ」 、 「雑誌の広 知から好意的意見に繋げるためには、ネットもしくは新 告」は利用情報源としての選択率が大きく下がり、 「折り 聞・雑誌に広告または記事を出すことが必要とされてい 込みチラシ」については重視される度合いも低下した。 る。テレビ広告は15秒や30秒の制約の中で行うために知 近年、マスメディア広告の効果を疑問視する声が上がっ 名度やイメージを高めることまでしかできないが、ネッ ているが、この分析結果もそうした声があながち否定で トや新聞・雑誌は、その商品の具体的な特徴、機能、性能 きないことを裏付けている。その一方で注目する点は、 に関する情報を提供することができる。ネット広告は比 「企業のホームページ」 、 「個人ブログやクチコミサイト」 、 較的安価であるし、マスメディア広告が高コストを要す 「友人、家族のクチコミ」などの項目がすべて重視され る広告媒体であることを考えると、認知度よりは好意的 る度合いのポイントを上げている。この調査結果から、 意見の改善の資金の方が、同じシェア改善を達成するた 消費者は耐久消費財の購入時において、マスメディア広 めに、プロモーション戦略によりはするが、尐ない支出 告は利用情報源としての選択率、重視する度合いが低下 で済むということが分かる。それであっても、自社のプ してきており、それに対し個人ブログやクチコミサイト ロダクト、理念、ターゲットに見合ったプロモーション などの CGM がより重視される情報源となっている傾向が 手段を選択することは必須であり、予断は許されない。 うかがえる。 上記の富士通総研の研究を再び取り上げると、「企業 現在多くの企業が広告費削減に着手している背景には、 のホームページ」、「個人ブログやクチコミサイト」な このような消費者の動向も影響を及ぼしているものとい どのCGMが重要視される度合いが高いのがわかる。ここで える。しかし、このような社会的背景、消費者動向を重 注目するのが「雑誌の広告」である。2004年3月期の調査 視しすぎ、偏重したプロモーションないしはマーケティ ではよく利用する広告としての選択率が50%以上であっ 10 た。比較的上位といえる数値であったが、2007年度12月 ここまではAFOCIAモデルに沿い、プロモーションを基 期では33.1%までにポイントを落としている。しかしな 盤としアプローチを提唱してきた。以下からは、さらに がら、重要視する情報源としての選択率と照らし合わせ 色による部分的買い替えを念頭に置きながら、他マーケ ると、第1回調査では利用する情報源の選択率に対し、重 ティング要素からのアプローチを論じていく。ジェロー 要視される度合いは半数程度でしかなかったが、第2回調 ム・マッカーシーが提唱した、プロモーションを含む企 査では利用率は低下しているが、それとほぼ同率的な重 業目線の「4P」というマーケティング分類に反発したの 要視される度合いの数値を記録している。言い換えれば、 がロバート・ラウターボーンであり、彼は顧客目線の「4 雑誌広告は利用する情報源としては衰退傾向にあるとも C」こそが最初に考慮されるべきと反論した。今回の提案 判断できるが、重要視される情報源としては一定値を保 においても、もちろん考慮しなければならないマーケテ った安定的な媒体であると判断できる。雑誌は一定のロ ィングにおける重要なツールである。まずプロモーショ イヤリティを持ったユーザーを有しているためであろう。 ンだか、消費者からすると企業との数尐ないコミュニケ なんにせよ、雑誌広告は母体数はマスメディア広告ほど ーションの媒体であるし、プライスにしても低価格であ 多くないが、ある一定数には確実なプロモーション能力 ろうが消費者にとってそれはコストに当たる。プロダク を持った広告媒体であるといえる。なにより、詳細なプ トは消費者にとっての顧客価値になり、プレイスすなわ ロモーションが可能であり、流動的でない利用者の手元 ち流通は顧客にしてみれば利便性の話に過ぎない。確か に残り得る広告手段なのである。 に、これらのギャップは必然であり、マーケティングを 企業は「認知」から消費者を「親近」 、 「意見」の段階に 展開していく上で見逃すことは出来ないはずである。 引きずり込む手段として、より詳細を伝えることができ まず、色による部分的買い替えは新商品としてではな る2次的なプロモーションが必須であることがわかる。低 く、新たな消費サイクルの提案である。この場合は消費 関与の商品であればファネルの段階数が 者が自身に照らし合わせられるような、実証的なコミュ 尐なく、認知からすぐに意図につながる場合もあり、購 ニケーションが必要だ(実際に季節ごとの買い替えを仕 買頻度の高い商品であれば、 「試し買い」をしてから徐々 立てたテレビCMなど) 。そして先述にもあるように、CGM に固定客に移行するというプロセスを踏む場合もある。 が重要視されるようになってきたことを考慮して、そこ 企業はこれらを十分考慮し、ターゲット、理念に見合っ から流動的に購買につなげられるようなインターネット た雑誌広告の掲載や、企業サイト等のCGM充実を図ってい 販売など利便性の充実が必須となってくる。さらに低価 くべきである。 格であることは消費者にとって一概に良いとは言えず、 好意的な意見を持たすことができたなら、後は消費者 すぐに壊れるのでは、など顧客価値の創造を妨げる可能 の購買考慮、購買意図に移行するのを待つこととなる。 性まで有してしまう。まず第1周目の買い替えサイクルに 岸本義之「マーケティングROIの改善」によると、AFOCIA おいて、企業と消費者間の考えのギャップを埋めること モデルにおいて最も重要なのは「認知」を持った消費者 が必須になってくる。さらに第2週目以降のサイクルにお を親近感、好意的意見を持たす段階に移行させることで いては新たなモデル実現がうかがえる。 あり、好意的意見まで移行したならば、ほぼ2分の確立で 購買考慮に入り、また同様の確立でさらに購買意図に移 (6)終わりに 行すると言うことが、パーチャス・ファネル分析によっ て提唱されている。つまりは好意的意見を消費者に持た せることが、最も重要であり、さらに企業にとって尽力 本研究では、耐久消費財市場、家具インテリア市場に することにより状況を改善させる余地のある唯一の段階 おける部分的買い替えモデルとそのモデルを広めるマー なのである。この1つの段階を改善、向上させることによ ケティングプランを提唱した。低価格高品質の製品があ ってほかのステップにおいても向上が期待、ないしは確 ふれ、同一製品を長期的に使用し、消費者意欲が減退し 信できるのである。 ているこの耐久消費財市場において、部分的買い替えと 11 いうモデルを提案することにより、もともと商品購買に 至るまでに認知・親近・意見・考慮・意図という様々な 過程を経るために購買意思決定時間が長く、中々購買行 動に至らない消費者に対して、耐久消費財を購買すると いうことを以前よりも手軽かつ身近にすることを可能に したのだと考える。部分的買い替えにおいてはブランド ロイヤルティの確立も容易であり、決められたパイの奪 い合いの様相を呈するこの市場で顧客を維持できるとい ったことは有用である。さらに、色の部分的買い替えを 訴求することにより、歴史のある大企業から、新進気鋭 の中小企業などにも自社ブランディングの有用性を訴求 し、その橋渡しとなれるモデルであると考える。また本 研究を進めていく中で、部分的色の買い替えということ で既存の耐久消費財の購買モデルを使用したが、独自の 耐久消費財の購買モデル形成にいたらなかったため、今 後より詳細な研究へとつなげていきたい。 12 注 i 過冷却で衝撃を与えると、水が瞬間で凍るという原理 を応用した、新冷凍方式。 参考文献 ライブドアニュース http://news.livedoor.com/article/detail/4231601 /コニカミノルタホールディングスのビジネスパーソンの色に 対する意識調査 http://konicaminolta.jp/pressroom/imageing/pd f/005.pdf オフィス移転に関する満足度調査 http://www.dwp.co.jp/enquete/060905_DWP_e nquete.pdf Volvic とユニセフ活動 http://www.volvic.co.jp/1Lfor10L/about/activity .html#Container 企業文化の創造 http://www.mizuhonet.jp/mn/company-calture/ 企業ブランディング http://www.gravity-one.co.jp/keywords/brandin g.html VS モデル http://www.kosuke-ogawa.com/?eid=304 13
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