日本における自動車産業の黎明期 4.輸入車から国産自動車の生産へ 2 日本人の手による自動車生産 純国産の自動車製造は、欧米より1世紀以上も遅れた20世紀 国産第1号、山羽式蒸気自動車 初頭、岡山市の山羽虎夫が走らせた蒸気自動車、および内山 1 日本最初の輸入・販売 駒之助の手によるガソリン乗用車「タクリ一号」に始まると 日本に初めて輸入された自動車については諸説がありますが、ロコモビル・カンパニー・オブ・アメリカ日本 代理店という貿易商を通じて輸入されたアメリカの「ロコモビル蒸気自動車」が定説とされています。 ● 外国系商社により自動車輸入・販売 ロコモビル蒸気自動車 いわれています。 ● パイオニアたちの開発努力 1902年(明治35)年、東京・銀座の自動車販売店「双輪商会」 日本に自動車が登場したのは1898(明治31)年、フランス人のテブ の技師、内山駒之助が日本で最初の自動車2台を製作しまし ネが自国の自動車を持参して来日したのが最初といわれ、自動車 た。ただし、これはアメリカから持ち帰ったガソリンエンジンを の輸入・販売は、アメリカのロコモビル蒸気自動車を専門に輸入 ベースにボディを乗せたもので、純国産のものは1904(明治37)年 した「ロコモビル・カンパニー・オブ・アメリカ日本代理店」が に岡山市の山羽虎夫が走らせた蒸気乗合自動車が最初といわ 始めたようです。1901(明治34)年に初輸入され、東京銀座に展 れています。一方、1907(明治40)年には先の内山が国産ガソ 示と販売を兼ねた陳列所が設置されました。 リン乗用車の第1号「タクリ一号」を完成させました。いず 資料: 「日本自動車産業史」日本自動車工業会 国産ガソリン乗用車、タクリ一号 れにしても日本の自動車製造は欧米より1世紀以上も遅れて ● 自動車の初登場を報ずる新聞記事 スタートしたことになります。 「自動車初輸入(実際の輸入は明治34年)・仏国ブイ機械製造所 資料: 「日本自動車産業史」日本自動車工業会 ● 世界の自動車メーカーの動向 テブネ技師は仏国に於て馬車の代りに発明されしトモビルと称 ビゴーの風刺漫画 する石油の発動にて自由自在に運転する自動車一輌を見本として は 1897年、フランスで行われた自動車レースでガソリン自動車が 携へ来りしが某最高速力一時間三十キロメートルを駛する由」 蒸気自動車に勝つというエポックがありました。日本にパナー (「東京朝日新聞」明治31年1月11日付) ル・ルヴァッソールが登場した前年に当たります。この頃から ガソリン車の優勢が色濃くなっていきます。翌1898年にはフラ ● ビゴーの風刺漫画 資料: 「日本自動車産業史」日本自動車工業会 当時の自動車の新聞広告の例 ンスのルノー、ドイツのオペルがそれぞれ1号車を完成、つづく 築地∼上野間を運転するテブネ技師と自動車を初めて見て驚く 1899年にはアメリカのパッカード、イタリアのフィアットが、 東京市民(明治31年2月)。 1903年にはアメリカのキャデラック、イギリスのボグソールが、 資料:佐々木 烈「明治の輸入車」日刊自動車新聞社 ● 日本の自動車工業の黎明期 1898(明治31)年 フランス人デブネが自国の自動車「バナール・ルヴァッソール」を持参して来日 1901(明治34)年 アメリカの蒸気自動車を輸入、銀座に陳列される 1905年にはイギリスのオースチン、ロールス・ロイスがそれぞれ 1号車を完成するなど、世界の自動車メーカーが続々と動きだ しました。そして1908年には「T型フォード」が発表され、世界 は自動車の大衆化路線を歩みはじめます。 1902(明治35)年 日本人の手で最初の自動車が製造される 1904(明治37)年 純国産蒸気バス(乗合自動車)の開発に成功 1907(明治40)年 ガソリン乗用車第1号「タクリー号」の誕生 1909(明治42)年 築地自動車製作所(国末金庫店内)で「国末1号」完成 1914(大正3)年 純国産自動車「ダット号」の誕生。自動車の製造が継続的となった最初 1917(大正6)年 乗用車量産 第1号「三菱A型」の生産開始 資料:佐々木 烈「明治の輸入車」日刊自動車新聞社
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