報告書 - 内容.docx

平成 24 年度実践内容
■概要
【位置づけ】
・中学生、高校生を対象としたアニマシオンは、山梨県子ども読書支援センターの設立準
備として平成 22 年度から取組みはじめ、平成 22 年度は高校生を対象に実施。平成 23
年度は中学生を対象に実施した。
・今年度は、2012 年 11 月、新県立図書館に設置された山梨県子ども読書支援センターの
「子どもの発達に応じた読書プログラムの開発」の一環として、中学生を対象にアニマ
シオンの研究実践を行った。
【対象・回数】
・対象: 中学生
理由 1 中学生になる時期に読書離れ(活字離れ)が顕著になる。
2 中高生が一緒に参加した場合、中学生が萎縮することが考えられるた
め、中学生のみとする。
・回数: 中学生対象は年 1 回。
事前に山梨県立図書館協力会の協力員を対象に2回実施。
【役割分担】
・図書館職員(子ども読書推進担当): アニマドール、研究の企画・運営、記録
・山梨県立図書館協力会の協力員(読書支援分野)
:研究・実践に協力(当館が提案する図書(作品)や作戦の協議、実践への参加)
平成 24 年度協力員氏名(敬称略)
浅川玲子、有泉芹香、上野美穂子、小畑啓子、後藤美里、近藤幸枝、
佐藤美智代、清水富子、孫玉芳、田草川文、寺田幸子、服部町子
■研究日程
4 月 27 日(金)
今年度の方針と日程決定。中高生向け作戦の一覧を作成。
5 月 18 日(金)
図書・作戦決定の方針を固める。
5 月 25 日(金)
図書と作戦の候補を協力員に提案。
6 月 29 日(金)
協力員と協議し、図書を『カラフル』、作戦を「これが私のつけた書名」
と決定。
8 月 31 日(金)
実践1 作戦 これが私のつけた書名(協力員対象)
9 月 14 日(金)
実践2 作戦 合戦
2 月 17 日(日)
実践3 作戦 これが私のつけた書名(中学生対象)
3月
「読書へのアニマシオン実践報告」発行
(協力員対象)
4
■図書・作戦決定
図書・作戦決定のプロセス
・作戦決定のプロセス
1 図書・作戦選定方針の決定
図書・作戦選定方針の決定
【図書・作戦選定方針】
1 M.M.サルト氏(スペインで読書へのアニマシオンの活動を開始)の著書『読書へのアニ
マシオン -75 の作戦』(柏書房)を基に実践。
*以下、作戦番号およびねらいは、上記の本の番号を示す。
2 参加者がよく本を読んでいる子どもであっても、そうでない子どもであっても、楽しい
時間を共有できる図書・作戦にする。
3 1 つの作品を使い、様々な作戦を試す方法をとる。
メリット:作品に当てはまる作戦を探す方がやり易い。
デメリット:どの作品にするのかが決めにくい。
作戦を検討する中で、どの作戦を試しても向かない作品だとわかった時
に改めて作品を選ぶことは時間がかかりすぎる。
図書館内での協議内容は以下のとおり。
Q1 (本をあまり読まない子にとっての)読みやすさを考えると、推薦図書やヤングアダル
ト文学から選べないが問題はないか?
A1 読んで楽しめたか、深く読めたか、他の人の考えを聞けたかが図書館で行うアニマシ
オンの目的。従ってそれほど内容にこだわらなくてもよいのでは。
Q2 『読書で遊ぼうアニマシオン』(モンセラット・サルト著 柏書房)には、成長過程
に合わせた目的から作戦を決め、そこから作品を選ぶとあるが?
A2 目的があってそのための手段を決めるのが当然だが、参加者は図書館でのアニマシオ
ンの他に学校で授業を受けている。従って、図書館のアニマシオンは読書への動機づ
けという意味合いが強くなる。教育課程を考えたアニマシオンとは違うので、まず、
勧めたい本から始めてもいいのではないか。
Q3 詩を候補に入れるか?
A3 一編が短いので読みやすい。しかし、個人の好み、感受性と大きく関わるジャンル。
協力員の意見を聞く。
Q4 選ぶ基準は?
A4 本を読まない子でも読む気になるという点を重視しつつ、読書の動機づけになる本
(中学生が興味が感じられるもの、子どもが何か得られるもの、あまり長くないもの、
短くて感情移入しやすい作品など)、中学生に勧めたい本を選ぶ。
Q5 作戦 15「合戦」はアニマドールの役割が前半で終わってしまい、アニマシオン批判に
つながりやすい。
A5 選ぶかどうか協力員の意見を聞く。
※日本アニマシオン協会ホームページ(http://www.animacion.jp/)
に掲載されているアニマシオン図書リスト(中高生以上)も参考とした。
5
2 中高生向け作戦リスト作成
『読書へのアニマシオン -75 の作戦』巻末の付録(段階別作戦一覧)と、文中に「対象
が中学生以上」と書いてある作戦をあわせ、中高生向け作戦の一覧を作成。
アニマシオンに慣れている人、読書力のある人、高校生以上向けでないと難しい作戦は、
印を付け区別した。
【中高生向け作戦リスト】(『読書へのアニマシオン -75 の作戦』より)
★…アニマシオンに慣れている人、読書力のある人、高校生以上向け。
*基本的に人数分の本、ホワイトボード
作戦no.
名称
6 本と私
7 どんな人?
ねらい
人数
一冊の本を読む時、全ての読
み手がその本に潜む価値や
10~30
メッセージを見出せるようにな
ること
本の中から正確なデータを探
20
し出すこと
11 これが私のつけた書名
作品を総合的に捉え、読んだ
15~20
内容を掘り下げる
12 前かな、後ろかな?
集中力を鍛える、物語の順序
15~30
やテンポの価値を知る
1人1人の力が全体に及ぼす
力を確認する、本のどこが重 10~20
要かを判断する
作品中のどんな場面にも注意
それぞれのタイトルを、
16
を払い、どの箇所も積極的に 20
あるべき場所に
読み取ること
15 合戦
17 …と言っています
18
これがあらすじです
★
19 海賊文
20 ファラウテはだれ?
作品の魅力になっている、状
況や人物を浮き彫りにした箇 25~30
所に目を向けること
読むということを理解する、あら
30
すじと説明の区別
記憶力を鍛える、登場人物の
態度を理解する、物語の表現 15~20
の一貫性を評価する
主人公ではないけれども主人
公を紹介したり物語を要約す 5~25
る役割も大切だという事を知る
21 アングルを変えて
一冊の本の中にいくつも視点
100
があることを発見すること
22 …と言われています
脇役がどのような人だったか
発見すること
23 想像のはさみ
言葉の大切さを知る、分脈で
15~20
の意味を理解する
24
20
だれが、何を、どのよう 美的/文学的/思想的に本
10~20
に?
を評価する方法を学ぶ
6
進め方
時間
物品*
指定の本を事前に読む→子どもがリレー方 45分~
式であらすじを語る→本の評価→自分との 1時間
比較
半
事前に読む→主要人物を考える→服装、身
体的特徴、感情を答える
事前に読む→書名の目的を説明→読んだ
本の書名が内容に合っているか、また他の
書名を考える→発表、投票→選ばれた書名
を考えた理由を言う
指定の本を事前に読む→カードを配る→各
自カードを読んで、順番に席に並んでいく
→全段落の順序が明らかになったところで
再度カードを読み上げる
指定の本を事前に読み、質問を各自3つ作
る→2チームに分かれてどの質問を使うか決
める→出題と回答で1ラウンド、得点制
アニマドールが各章に付けたタイトルを見
て、その章でどんなことが起きたか参加者が
説明する
1時間
-
紙、筆記用具
40分
本の一文を書
いたカード
1時間
~1時 紙と鉛筆
間半
50分~ 章名入りカー
1時間 ド
人数の半分
の紙に本の
指定の本を事前に読む→紙を配り、黙読で
中の文章を書
45分~
どんな状況/誰のことを言っているか見つ
き出した紙
1時間
ける→全員に話してもらう
(…と言って
いますでしめ
くくる)
指定の本を事前に読む→要約を配りどれが
本当のあらすじか考える→結論とその理由 30分 3種類の要約
の発表
本から抜き出した段落に挿入された、本の
テクストと全く関係ない文を探し出す
40分
指定の本を事前に読む→誰がファラウテか
→作品中に何回登場したか→最も重要な 30分
役割を果たしたのはどこか
1時間
指定の本を事前に読む→発表者が意見を
~1時
述べる→傍聴の子どもから質問を受ける
間半
指定の本を事前に読む→伏せたカードを1
人1枚取る→文を読んで誰のことを書いた
45分
か、その人は他の登場人物とどんな関係に
あるか発表する
指定の本を事前に読む→カードを配り、一 50分~
部分を削るため考える→読み上げて点数を 1時間
メモする→最高得点を付けた人を発表
半
指定の本を事前に読む→あらすじ、ジャン
ル、言語、文体を話す→分析と解釈になら 1時間
ないよう、問いかける→本を評価する
段落を書いた
紙
質問を書いた
紙
広い場所、大
半の子が読
める冊数
本の一文を書
いたカード
鉛筆、段落を
書いたカード
作戦no.
名称
こう始まり、こう終わる
33
★
34 彼を弁護します ★
40 私はこう考える ★
ねらい
人数
本の中で重要な意味を持つ
30
場面に注目する
じっくりと考える力をつける、口
頭で表現する力を引き出す、
30
一冊の本にある様々な見方を
見つける
作者の考え方で思考し、作者
の考えを見つける手助けをす 30
る
進め方
時間
物品*
指定の本を事前に読む→あらすじを説明→ 50分~ 本の一文を書
紙を配り、状況の原因と結果を探る
1時間 いた紙
作品のテーマを説明→カードを配る→当
役割を書いた
たった役割の行動や態度について質問、説 1時間
名札
明
指定の本を事前に読む→カードを配る→文
の解釈を発表し、他の子どもに同じように解 釈するか尋ねる
43 みんなの記憶
詩のリズムと韻で遊ぶ、記憶
力を引き出す
44 詩人の気持ち ★
詩にこめられた詩人の感情を
10~30
発見すること
45 いい詩だなあ!
美しいと思える詩を見つけるこ
15~20
と
25
詩的な感情を引き出す、気後
46 あなたは、私と一緒に れすることなく詩に抑揚をつけ 20
て読めるようにする
本の一文を書
いたカード
長い詩、詩の
詩を黙読し、部分に分けられた詩句を元通
1時間 4行を書いた
りにする
カード
やりやすい
詩、詩を書い
一人一枚紙を配る→同じ詩の題を持つ者同
た紙、感情を
士組になる→組で相談し、表現されている 50分
表す言葉を
感情を説明する
書いた大きな
紙
一人一枚紙を配る→余白に気に入った詩の
4~6編の詩
記号を順に書く→取り上げた詩人の名前を 40分 を書いた紙、
教える
鉛筆
詩の一行を書
1人1枚カードを配る→カードを読み上げ、
いたカードと
一行の子と全体の子のグループに分ける→
50分 それ以外の
自分の行だと思った子を呼ぶ→2人で朗唱
部分を書いた
する
カード
滑稽に見えるかもという恐れを
克服する、詩にこめられた感
15~30
情を味わう、仲間と連帯感を持
つ
1人1枚詩の紙を配る→朗唱を聞いて点数
詩を書いた
をメモする→集計して最高の吟遊詩人を発 1時間 紙、参加者用
表する
の紙、鉛筆
49 だれが、だれと?
登場人物の結びつきという観
15~25
点から作品を掘り下げる
事前に読む→本の内容をざっと思い出させ
る→覚えている登場人物を黒板に書き出す
→互いにどんな関係にあるか挙げ、グルー 1時間
プに分ける→何が結びつきの理由なのか考
える→除外できる人物を考える
だれが、だれに、何
54
を?
ストーリーの核心に深く入る、
登場人物の生き方を理解す
30
る、本を読んで批判する力を
引き出す
事前に読み、当日は本を持たない→カード
30~
を配り、誰が誰に言った言葉か考える→読
40分
むことで印象が変わったか話す
48 吟遊詩人
せりふを書い
たカード
参加人数の
1人1枚詩の紙を配る→詩の題名を読み上
詩的なものの価値を発見す
半数の詩を書
げ、同じ題名の者同士組になる→二人で一 45分~
56 詩人の対話
る、詩を読む時の気後れを克 二人一組
いた紙、参加
つの詩を交互に朗唱する→どの詩が良かっ 1時間
服する
者用の紙、鉛
たか投票する
筆
詩句を書いた
題名カードを配り、同じカード同士で組にな
詩のリズムや韻律で遊ぶ、仲
カード、題名
58 みんなで一つの詩を
30
る→詩句カードを選ぶ→詩句を正しい位置 1時間
間との協力を促す
を書いたカー
に並べる→読み上げて修正する
ド
詩的な言葉遣いを理解する、
詩の主題になっている物を具体的に表す言
詩を書いた紙
61 詩人はこううたう
詩を通して自然を慈しむことを 30
葉を省いた詩を読んで、前後の描写から何 1時間 (一編2枚ず
知る
をうたった詩か当てる
つ)
本の中にある思考を表した文
言葉を書いた
指定の本を読む→カードを配り、同じ目印
この文には、意味があ を発見し、それに対する自分
カード(1人3
62
20~25 同士組になる→カードを並べて文を作る→ 1時間
ります
のコメントが言えるようになるこ
枚、フェイクあ
答え合わせをし意見交換
と
り)
本選びの大切さを知る、ある本
「批評家」のみ事前に本を読む→批評家以
64 一見して
を受け入れるのも拒むのも読 20
外(発見者)はタイトル、表紙等からどんな 1時間
者の自由だと気づく
本か探り出す→批評家と発見者で討論する
各自好きな詩を探して持ってくる→詩の題
選択の自由を知る、自分が発
68 詩を持ってきました
20
名を出させる→詩を読み上げる→どの詩が 見したことを人に伝える
良かったか投票する
詩を書いた
紙を配り、入りそうな言葉を考える→言葉
詩人の言葉の美しさを発見す
紙、抜いた言
69 言葉が飛んでいった
20
カードを配る→自分のが違いそうだったら他 1時間
る
葉を書いた
の人のと交換する→詩を読み上げる
カード
7
作戦no.
70
名称
意味は、はっきりして
る?
71 発見しました! ★
ねらい
人数
批判する力を引き出す、象徴
的な内容や難しい内容をふま 20
えてテクストを解釈する
解釈するのが難しい作品を考
16~20
えたり分析したりする手助け
本を批評する意識を訓練す
いいですか、いけませ
る、仲間の判断基準を尊重す んか? ★
る
本を選ぶ自由を大切にする、
この本を好きなわけ、
73
良い作品を発見したことを仲 15~18
知っていますか?
間に説明する行為を評価する
72
考えていることを言い
74
ます ★
他の人の発見によって読み方
を豊かにする、登場人物の感 情を共有する
75 私なら消さない
小説を豊かにしている要素を
評価する、質の高い作品とそ うでない作品の区別をつける
進め方
時間
物品*
2グループに分け、カードを1人1枚配る→こ
ことわざを書
とわざの意味を考える→向かいの子が補足 1時間
いたカード
する
解釈につな
指定の本を読む→紙を配り同じ章同士組に
1時間 がるポイントを
なる→発見したことを話し合い発表する
書いた紙
指定した本を読む→1人1枚紙を配る→番
状況を書いた
号順に読む→その場面を受け入れるか否 1時間
紙
か書き留める→全員の結論を出す
自分が選んだ本を持ち寄り、発表する
-
指定した本を読む→1人1枚紙を配る→同じ
テクストを持つ者同士組になる→文を読み
本の一文を書
1時間
上げ説明する→気に入った文があったか確
いた紙
認する
指定した本を読む→1人1枚紙を配り、描写
本の一文を書
の意味と評価を考える→同じ紙を持つ者の 1時間 いた紙(3枚
点数を並べて書く→その表現を消すか議論
ずつ)
3 図書と作戦の候補を挙げる
図書と作戦の候補を挙げる
図書・作戦選定方針を基に図書と作戦の案を作成し(作戦は上記、中高生向け作戦リス
トから選ぶ)理由もあわせて協力員に提案。提案内容は以下のとおり。
『ノーライフキング』いとうせいこう著(新潮社)
推薦理由:塾に通う小学生が主人公。189 ページで短い。文庫版もある。
→作戦 16「それぞれのタイトルを、あるべき場所に」
:遊ぶうちに内容理解につながる作戦。章立てされている作品なので向いて
いる。
→作戦 22「…と言われています」
:読む上で基本となる登場人物の関係をつかむ作戦。主人公の友達、先生、
母親等特徴ある人物が出てくるので向いている。
→作戦 74「考えていることを言います」
:人と自分の感じ方を共有できる作戦。言葉の使い方が印象的な作家だと思
われるので向いている。
『いちご同盟』三田誠広著(河出書房新社ほか)
推薦理由:ピアノをしている中学生が主人公で身近。思春期ならではの悩みをテーマに
している。
→作戦 20「ファラウテはだれ?」
:主人公(読み手が感情移入する)以外の人物に焦点を当てる作戦。
主人公と出会う入院中の少女や、主人公と対照的な同級生が重要な役割を
果たす物語なので向いている。
→作戦 64「一見して」
:本という物体と内容とを関係づける作戦。新しく文庫で出ており、タイト
ルが不思議な作品なので向いている。
8
「趣味の遺伝」夏目漱石著
『倫敦塔・幻影の盾』(岩波書店)等に所収
推薦理由:文豪で近寄り難いイメージだが、こういう不思議な短編も書いているという
ことで選んだ。
→作戦 24「だれが、何を、どのように?」
:作品の基本的な構造を知る作戦。近代の作品なので今とは違う文章だとい
うことを意識する機会にもなる。
→作戦 62「この文には、意味があります」
:遊びながら作家の文章の組み立て方をなぞることができる作戦。漱石であ
ればしっかりと考えられていると思うので組み合わせに迷うことも少な
いのでは。
→作戦 74「考えていることを言います」
『秒読み』筒井康隆著(福音館書店)
推薦理由:ユーモアのあるショートショートが収められているため読みやすい。
→作戦 15「合戦」
:話の細部に目を向ける作戦。一つ一つの話が短いのでストーリーを把握し
やすい。
→作戦 33「こう始まり、こう終わる」
:一文から前後の関係を探る作戦。一つ一つの話が短いのでストーリーを把
握しやすい。
『二十億光年の孤独』谷川俊太郎著(サンリオほか)
推薦理由:あまり好き嫌いの出ない詩人だと思われるので選んだ。
→作戦 43「みんなの記憶」
:詩であれば順番を思い出しやすいのでは。
→作戦 48「吟遊詩人」
:日本では詩を朗読することがあまり一般的でないので。
→作戦 56「詩人の対話」
:同上
『カラフル』森絵都著(講談社、理論社、文藝春秋)
推薦理由:主人公が中学生なので、感情移入しやすい。ストーリーに意外性があり興味
を持って読める。あまり難しすぎない。ヤングアダルトの推薦図書となって
いる。
→作戦 11「これが私のつけた書名」
「おのぞみの結末」『おのぞみの結末』星新一著(理論社、新潮社)
推薦理由:ショートショート。印象的な結末のユーモアある作品。
→作戦 11「これが私のつけた書名」
9
『クローディアの秘密』 E.L.カニグズバーグ作(岩波書店)
推薦理由:地味な作品だが、前半「兄弟だけで美術館に隠れ、ある像がミケランジェロ
の作であるという証拠を探す」という内容で、スリルがあり推理もするわく
わくする物語で一気に読める。「確証を得たがそれを秘密にする」という落
ちも印象深い話。
→作戦 22「…と言われています」
『ダイブ 1』 森絵都著(角川書店、講談社)
推薦理由:飛込み競技でオリンピック出場を目指し、ライバルたちと競う少年達の話な
ので、部活小説感覚で読める。本嫌いでも、スポーツ小説なら読めるかもし
れない。
→作戦 7「どんな人?」
→作戦 49「だれが、だれと?」
4 図書(作品)
図書(作品)の
(作品)の決定
【決定した図書(作品)】
『カラフル』森絵都著
協力員に提案した推薦図書を読んで頂き、1 つの作品に絞り込むため協議を行った。
協力員から推薦が多かった作品と、理由は以下のとおり。
『クローディアの秘密』推薦 3 名
・読んでみても本当に楽しい。アニマシオンの作戦をするのに向いている。
・子どもが好きな本である。
・色々な要素が入っている。行間に隠れたものがあるのでやり甲斐があるのではないか。
こういう作品と子どもが一度は触れてほしい。中学生に人気で注目されている作品もい
いが、世界中のジュニアが読んで感動を覚える作品がいいのでは。言い間違いなど、原
書ではどうなっているのか興味もある。名作と言われているものを図書館で取り上げて
ほしい。
『カラフル』推薦 2 名
・奇抜だが中学生に身近なことが盛りだくさん。色々な作戦が使えるのではないか。生き
返る設定は、読者を惹きつける手法として面白い。生徒たちに命を考えさせる機会があ
り、命を失ってみてどうなるかという意味でそういうものにつながる気もする。
・本を読まない子でも読む点を重視して選ぶ。中学生の日常が舞台であり作品に気持ちを
のせやすい。他にたくさんヤングアダルト作品を書いているので作家に対する興味を広
げてもらえる。『いちご同盟』も中学生が主人公で作品に入りやすいが、森絵都の方が
若い人に近い感覚。
10
『いちご同盟』推薦 1 名
・前回話し合った選書の目的から、「読ませたい」を第一に考えて。何を目的に勉強する
のか登場人物が問う場面があり、中学生も受け取りやすい。一所懸命生きる姿を受け取
ってもらえる本では。
次に、推薦が多かった『カラフル』と『クローディアの秘密』のどちらがより適している
か協議した。協議内容は以下のとおり。
・森絵都は人気作家。今後も作品に関わる機会はあるだろう。本に背を向けた子どもにと
考えた時、流行のものから離れ国際的なものに目を向けてもよいのでは。
・読書の広がりを考えると、岩波少年文庫、カニグズバーグという選択。子どもの読みた
い気持ちとこちらの読ませたい気持ちを合わせるとカニグズバーグ、全く読まない子ど
もに手を伸ばさせようとすると森絵都。
・『クローディアの秘密』は美術館に潜入する設定がセキュリティシステムがある現代に
はそぐわない部分もあるが、作品の背景に深いものがあるということを大人が示せる。
流行に飛びついてよいのかという気もする。
・両方やってみたい。実践に来る子どもにもよる。『クローディアの秘密』はこのような
本もあると動機付けになるかもしれないが、登場人物が少し年下なので気持ちが乗せら
れないのでは。小学生ならワクワクするか。中学生対象なのでその部分が少々気になる。
・今年度は『クローディアの秘密』にし、『カラフル』は来年度の候補の1冊としてはど
うか。
・『カラフル』は主人公の兄が大学を受験する設定であるため高校生対象でもよいかもし
れない。今年度は中学生を対象とするが、来年度の対象を変えてもよいのではないか。
・アニマシオンの目的(読まない子へのアプローチ)から言うと『カラフル』か。昨年度
の参加者はよく読む子どもたちだった。同じようによく読む参加者であれば『クローデ
ィアの秘密』では人によって言いたいことが出てくるかもしれない。参加する子どもに
読んでみたいと思ってもらえないと問題。
この協議結果を基に、図書館職員で最終協議を行い、図書・作戦選定方針を踏まえ、中
学生でもすんなり感情移入できる作品として『カラフル』を選んだ。
5 作戦の決定
【決定した作戦】
作戦 11「これが私のつけた書名」を軸にして、作戦7,15,16,の視点で作品を確認で
きる場を設け、協力員を対象に実践した上で最終的に決定する。
作戦 11「これが私のつけた書名」と他の作戦を組み合わせるかどうかについて協力員と協
議。協議内容は以下のとおり。
11
・昨年度も実践したがさほど時間がかからない。作戦 11 の前に中身を思い出させる他の作
戦
を組み合わせてはどうか。
・色々な問題を持つ人が出てくるので作戦 7「どんな人?」と組み合わせてもよい。
・場面整理には作戦 16「それぞれのタイトルを…」も良い。
・作戦 15「合戦」は質問の取り上げ方でどこが重要な部分か見つけられる。
・考えた書名の理由を話す時間を取ると結構かかる。色々な場面を丁寧に話してもらうの
が良い。
・図書・作戦選定方針を踏まえて、『読書へのアニマシオン -75 の作戦』に忠実に行い、
1 つの作品に対し 1 つの作戦で実施がよい。
・昨年度、作戦を組み合わせて複雑になったという反省がある。
12
■実践1
実践1 作戦 11 これが私のつけた書名
日
(協力員対象)
時: 2012 年 8 月 31 日(金) 午後 1 時 30 分~午後 3 時 30 分
参 加 者: 11 名(協力員 7 名、図書館職員 4 名)
アニマドール:図書館職員(子ども読書推進担当 小林和美)
使用した本: 『カラフル』森絵都著
作
戦: 11 これが私のつけた書名
(1) アニマシオン試行
(◆アニマドール、◇参加者(協力員)の発言)
13:35 開始
人物確認
◇出てきた人物:
真、母、プラプラ、僕、満、父、唱子(佐野)、ひろか(桑原)、早乙女君、
ボス、先生(沢田、天野)、真からお金を奪った子(少年たち)
13:43 あらすじの確認
◆一番最初に登場したのは?
◇僕が抽選に当たり、小林真に乗り移る。
◇小林家の一員として生活を始め、学校へ行くようになる。
◇プラプラにガイドしてもらいつつ真がどんな人か気づいていく。
◇皆よそよそしい中、唱子が「前の真と違う」とつきまとう。
◇スニーカーの話題から早乙女君と友達になる
(他の参加者から思い出したという声)。
◇美術室で憧れのひろかと会う。
(「ドキドキするような女の子」と他の参加者から補足)。
◇満は真にひどいことを言うが、最終的には良いお兄ちゃん。
◆最後の方はどうだった?
◇実は僕が真だった。
◆どうやってわかったか?
◇24 時間以内に死んだ原因を思い出せば自分の体に戻れるとプラプラから聞き、僕
は佐野唱子と話すうちに記憶を取り戻す。「おめでとうございます」で終わる。
13:56 アニマドールによるあらすじの再確認
タイトルの例を説明
14:01 紙を配りタイトルを考えてもらう
(初め 5 分。時間が欲しい人のために延長)
13
14:15 発表
(動きを出すため、読み上げたら参加者に前に出てきて紙を貼ってもらう)
◇魂のホームステイ
◇君の世界
◇復活のチャンス ~ふつうでいいんだ~
◇クイズ! 私は何をしたのでしょう
◇わたしって何の色?
◇生きて生きて生き抜いて、見えてくる
◇リ・スタート!!
◇ホームステイ
◇青春
14:20 投票
得票数の多かった「魂のホームステイ」(3 票)と「リ・スタート!!」(2 票)で
決選投票
→「リ・スタート!!」(6 票)に決定
◇自分のタイトルに投票してもいいか?
◆自分以外のタイトルに投票する。
◇装丁は関係するか?
◆主に内容で判断してほしい。
14:25 タイトルの理由
決戦投票に残った 2 人にタイトルをつけた理由を聞く。
◇「魂のホームステイ」嫌な時も、ホームステイしていると思うと気が楽になる。他
人の人生と思って客観視できるのではないか。物語の落ちがわ
からないようなさりげないタイトルにした。
◇「リ・スタート!!」自分の体へ返る物語。自殺した時は周りを一面的にしか見てい
なかったが、様々な事に気づく中でもう 1 度生きてみたくなっ
た主人公の気持ちを込めて。
決戦投票に残らなかったタイトルについても聞いたところ、本が売れるかどうかや装
丁のことを考える参加者もあった。
14:30 まとめ
14
(2) 振り返り (◆アニマドール、◇参加者(協力員)の発言)
◆『読書へのアニマシオン -75 の作戦』の作戦 11 を使った。前回の協議でいただいた
アドバイスにより、人物・あらすじを押さえてから作戦に入った。「書名とは」とい
う説明は具体例でよいのではと考えて行わなかった。決選投票に残った人にタイトル
を付けた理由を聞くのが本来のやり方だが、今回は決戦投票に残らなかった人にも聞
いた。担当でリハーサルを行った時はあらすじの発言があったが、今回はなかなか発
言がなかったため名前を糸口にした。一人が言うと他の人も発言する。
◇名前を糸口にしたことは良かった。
◇あらすじの確認の場面では緊張し発言しにくかった。中学生を対象に実践する時、積
極的な子がいれば違うかもしれない。雰囲気が大事。
◇アニマドールの雰囲気が和やかで優しくて良い感じだった。登場人物の名前を間違っ
て言ってしまったが、どんどん名前を出した後、学校と家とに分けたのはわかりやす
かった。あらすじの確認も難しかったが、名前をヒントに思い出すのは良かった。今
回は丁寧に時間をとって実践したのも良かった。タイトルは買う立場で色々考えた。
疑問は、理由を聞いて投票することと、ダイレクトに投票することとどちらがよいか。
票が入らなかった子にも聞く、言いたい子を救ってあげるのも必要かと感じた。
◆『読書へのアニマシオン -75 の作戦』には理由を聞かずに投票し、決選投票に残っ
た人にだけ聞くとある。
◇中学生対象の実践の時はもっと人数が多い。全員に聞くのは時間が足りないかもしれ
ないが、聞きたいし言いたい。
◇意気込んだ中学生が参加するので、一人の子が話しすぎる可能性もある。進行がうま
くないと、言えるはずの子が言えなくなる。また、「カラフル」というタイトルがぴ
ったりなので、この作戦を行うことは難しい。この本はこのタイトルで成り立ってい
ると思う。他の本で同じ作戦をした時にはもっとイメージが膨らんだ。書名を考える
前に色々な書名を提示してくれたのは参考になる。
◆『読書へのアニマシオン -75 の作戦』には適正人数は 15~20 人とあるがその理由は
不明。人数が増えあらすじの確認が長引く場合は、発言にストップをかける必要があ
る。
◆別のタイトルを考えることについては、中学生の場合「この本の書名はカラフルしか
ない」とは思わないかもしれない。
◇人物確認をしたことは入りやすい。あらすじは引き出し方が難しいが、うまく引き出
せていた。ただ、あまり時間をかけてしまうと書名への突っ込みが足りなくなる。な
ぜこの書名にしたかを皆に聞いてみたい。まとめで「見方が変わったか」と問いかけ
をしただけであったが、作戦の狙いを達成するために参加者の意見を聞いてはどうか。
どう変化したかという所の確認。定まっている狙いの点検がいる。「じっくり考える」
という狙いが今回どれだけ達成できたか?
◆タイトルを付けることを通し、物語の主旨を捉えているか考えることになるのではな
いか。
15
◇あらすじの細かい所が出てこなかった。時間設定が 80 分の所 60 分で終わり、うまく
まとめられた。残り時間で題名をつけた理由を聞いてはどうか。読書の楽しみからは
離れるが、中学生にとっては色々なことが盛り沢山な作品なので、作品を通して何を
言おうとしているのか、最後のまとめの所で感想を聞いてもよいのではないか。
◇初めてのアニマシオンだったのでどのようなものかドキドキしていたが、思った以上
に発言できたので満足感がある。作戦を知っていたため、事前に本を読む際はタイト
ルを探しつつ読み、候補を考えてきた。このため当日は 5 分でタイトルをつけること
ができた。タイトルを付けるということは、どこに心を動かされるかにあるが、その
こととは少し違っていた。アニマドールには臨機応変にできることが必要だと感じた。
この本の内容には、中学生の心に触れる所が色々ある。いつもの感情を吐き出せる場
を提供することも大切。その時間を取る取らないは進行次第である。
◇中学生の場合、もっと発言が多いと予測する。内容を確認することで、また違う考え
で自分に入ってくるので良かった。題を付けた理由をさらに聞くことができると、違
う人の見方がわかる。全員に聞くのは大変だが大事と思う。
◇考えたタイトルを発表する時、理由を続けて言ったが、タイトルだけ言うのはどうか。
◇先に投票し、次に理由を聞き、もう一度投票というやり方はどうか。本を買う時には、
タイトルの説明は聞かないが。
◆最後に理由を聞く場面を作る。
◇アニマシオンを通して言い合うことでグループが生き返る。作戦通りにいったとして
も集団によってやり方が変わる。
◇本当の意味で作品を受け取れているかの確認も必要ではないか。
◇参加者募集の際に中学生へのアドバイスとして「作者の言いたいことを考えながら読
んで」と伝えるとタイトルを付けやすいか?
◇まっさらで臨むのがよい。登場人物確認やあらすじで振り返りができる。事前に要求
すると負担感も増える。
(3) 結論
・書名発表の際には書名のみ発表してもらう。
・決戦投票に残らなかった参加者にも、書名をつけた理由を説明する時間を決選投票後に
取る。
・作戦 11「これが私のつけた書名」で中学生を対象に実践を行う。
16
■実践2
実践2 作戦 15 合戦
日
(協力員対象)
時: 2012 年 9 月 14 日(金) 午後1時 30 分~午後 4 時 30 分
参 加 者: 9 名(協力員 5 名、図書館職員 4 名)
アニマドール:図書館職員(子ども読書推進担当 向山きよみ)
使用した本: 『カラフル』森絵都著
作
戦: 15 合戦
(1) アニマシオン試行
13:33 アニマシオンの説明
13:36 チーム分け
・2 チーム
・チーム名は「青い空」「モノトーン」
13:37 クイズ作成
・質問と答えを配ったカードに書く。
・「同じ質問になったら、本を見て別の問題を作ってください。」
14:00 クイズ合戦
・「本を見てはいけません。」
・「誰も答えられなかったら、次の質問は発表者が読んでください。」
【青い空チームの質問と答え】(順不同に質問)
Q1 プラプラの外見は?
A1 美形の優男、長身のスリムに体に白い布をまとい翼をもつ。
Q2 下界で真を待っている人がいるとプラプラが言った人達とは? (家族以外で)
A2 早乙女君、唱子、ひろか
Q3 僕の魂が下界で再挑戦した期間は?
A4 4 ヶ月
Q4 「ほんとは、ちゃんとわかってた。あっちの世界とこっちの世界の小林くん、ぜん
ぜんちがうけどおんなじだって」という佐野唱子の言葉があるが、なぜ同じとわか
ったのか?
A4 真の描く絵は以前と今と全く変わりがなかったから。
Q5 佐野唱子のいう真が「全部一人で受け止めていたもの」とは何か?
A5 この世の悲しみ
Q6 真の母はどのような習い事をしたか。10 個あげてください。
A6 (この中から 10 個)クッキング、あけびのつるでの花かご作り、フラダンス、江
戸芸かっぽれ、ソムリエ、パントマイム、足つぼ健康法、香道、超能力セミナー、
コーヒー占い、水墨画、似顔絵、仏像を彫る、長唄
17
Q7 「取り返しのつかない誤解をこの世に残したまま真は永遠に死に続ける」と「僕」
は思ったが、取り返しのつかない誤解とはどんなものか。
A7 父親は上司のミスの責任をとらされ仕事を辞めたのを、父親自身がミスをして辞め
させられたと誤解していた。
Q8 真が奇跡的に生き返ったことで、父親にも兄の満にも大きな変化があった。それは
それぞれどのようなものか。
A8 父…生き返った喜びは一瞬にして上司への恨みなど精算してあまりあるものとな
った
兄…医学部に進学希望
Q9 真の両親と満が真の高校のことを心配してくれた時、「僕」が胸の奥で真に向かっ
て強く叫んだのはどんな言葉だったか
A9 「やっぱりおまえ早まった!」
Q10 ぼくが早乙女君とスニーカーを買いに言ったお店の名前は?
A10 ごめんそうろう
【モノトーンチームの質問と答え】
Q1 公園でぼこぼこにされた真を助けたのは誰?
A1 兄の満
Q2 父に釣りに誘われた時どうして僕は泣いてしまったのか?
A2 本当に早まったことをしてしまったと強く感じたから
Q3 真が兄、満にいつもからかわれるのを気にしてネットで買い、ベッドの下に隠して
いたものは?
A3 シークレットブーツ
Q4 真が退院したのは何曜日?
A4 日曜日
Q5 真が描いていた絵に出てくるまだ描きかけの動物は?
A5 馬
Q6 悪徳商法の容疑で訴えられた商品の名前は?
A6 らくらくダイエットまんじゅう
Q7 僕がホームステイした、ホストファミリーの正体は?
A7 父親は利己的な人間に見えたが、実は上司のミスを背負わされて会社を辞め、次の
会社では会社で冷遇された後、上司が検挙されようやく企画の仕事ができるように
なった。母親はフラメンコ教室の先生と不倫。でも手紙をもらって、飽きっぽい性
格だが、いろいろチャレンジしてきたことがわかる。絵が好きな真のために高校を
探してくれた。兄の満はいじわるに見えたが、少年達からぼこぼこにされた時救い
出したり、真の高校進学を応援しようと医学部受験を延期。
Q8 僕が改めて桑原ひろかの様々な心の有り様を実感したのは、彼女のどんな行為を見
た時か?
A8 真の絵に黒い絵の具を塗ろうとした時
Q9 真の担任は何の教科を教えている?
A9 体育
18
Q10 僕の前世を思い出すヒントを与えてくれたのは誰であったか?
A10 美術室の佐野唱子。
15:06 集計
・青い空チーム
… 135 点
・モノトーンチーム …
70 点
15:07 まとめ
15:08 終了
(2)振り返り (◆アニマドール、◇参加者(協力員)の発言)
◇ほとんどの質問が相談してなんとか答えられた。ぽんと答えられる問題を半分入れても
よい。答えられないと嫌になる。
◇時間が長すぎる。
◇知らない人同士でやるが仲良くなれると思う。楽しかった。一問一答で答えられる問題
にして、本の本質に迫る問題は 1、2 に絞るのはどうか?
◇どういう質問を作ってくるかによる。簡単なのと、本質的なのと。本質的なのは、重く
なるのでアニマドールが臨機応変に対応を。
◇初めてやる子たちに、深く読むのか、楽しくやるのか、図書館がどちらを求めるかであ
る。
◇楽しかった。答えが出ないことがあっても楽しい。とばし読みするような(細かいネー
ミングなど)部分が質問になっていたが、自分が読む場合は心の有り様など読むように
する。そこが必要と暗に気づかせることが必要では。
◇本を見ないので記憶に頼ってしまう。「このページにある」と言い、探してもらうのは
どうか。
◇質問によって本を見てもよいのでは。本を見て確認する。
◇アニマドールが本を見て確認しないと答えられないような質問が出た時は、出題者に「ヒ
ントは?」と聞いてもよいのでは。それでも答えられない場合は本を見てもよいのでは。
◆答えがわからない時は次の人へと思ったが、今日はヒントを出し答える形になった。ね
らいに「本の中のどこが重要か判断できる」「目立たないけれど何らかの役割を果たし
ていることがらに気づく」とあるが、「重要」なものはうまくさばかないと、進まない。
◇「どこまで答えるのか」「ヒントを出してよいのか」については課題にしてもよいので
は。今ここで答えが出ない。
◇事前の質問作成の際のヒント「いつ、どこで」はよかった。
◇1 人で答えるのは孤独。2 人グループになって相談するとリラックスしてできると思う。
◇問題を用意してこさせたが、無理がなくよいと思う。
◇10 問は長い。半分で中だるみした。工夫が必要。深いの、楽しいのが織り交ざっていた
が、本に親しみを持たせるためなので、楽しいでのよいと思う。どんな子にもできる内
容になってしまうが。
◇質問を減らす(5 問)と答えるチャンスは減る。
19
◇やり方だが、ヒントはどこまで出すのか、チームで話し合ってよいのか、をアニマドー
ルがきちんと示した方がよいと思った。
◆自分で答えるのは孤独だが、思い出したことを言葉にする場になる。答えられない時は
チームの誰かが答えて支えてくれるので、グループより 1 人で答えたほうがよいと思う。
◇1 人目、2 人目は自分で答えるが、3 人目はチームで話し合い答えるのはどうか。
◇答えられないことも多かったが、大事な部分が見えていないので読まなくてはと思った。
また、大事な部分が他の人と違うのかとも思った。
◇自分で答えるというのは大事。指名されるのはプレッシャーだが、アニマドールが声か
けしサポートすることが必要。
◇アニマドールが質問と答えを事前に知っているのか?
◆知らない。
◇答えを知っていないとサポートできない。全部答えられるようにしたほうがよい。
◇それぞれの答えを聞くと、新しい発見がある。
◇質問を作る際もダブリを除いた。似た質問がでた場合はどうするのか?
◇合戦中、答えが同じ質問があったので、やってよいのかわからなかったが、別の質問に
作り替えた。
◇質問の予備カードがあると差し替えできる。
◇準備する質問は 3 つだったが。
◇ダブリを取るので多めに出してよいのでは。「これは難しい」などグループで選ぶ作業
も楽しい。
◇準備する質問は 2 つずつでもよいのでは。
◆参加者の数で調整する。
◇グループを 3 つにわけるのは?また、各グループの人数はどのぐらいがよいのか?
◆各グループ 10 名となっている。質問や回答する機会はあるのでは?
◇大人が 1、2 人入って、大人の視点で考えさせてみたい。大人も一緒に遊ぶ感じで。
◇大人的な質問を最後のまとめで投げかけはどうか。アニマシオンはきっかけなので。
◇アニマドールが質問を出して、高得点にしてもよい。
(3)結論
・「どこまで答えれば正解とするか」「ヒントを出していいのか」は今後の課題とする。
・アニマドールは、参加者に先に質問を作ってもらい、事前にどんな質問か見ておく。
・答えるのが難しい問題が出たら、他の質問に変更するようアニマドールが指示する。
20
■実践 3 作戦 11 これが私のつけた書名
(中学生対象)
日
時: 2013 年 2 月 17 日(日) 午後 2 時~午後 3 時 30 分
場
所: 山梨県立図書館 1 階 交流ルーム 101
参 加 者: 14 名(中 1―女子 2 名、中 2-女子1・男子 8 名、中 3-女子 3 名)
見 学 者: 3 名 (参加中学生の学校図書館司書の方)
協 力 員: 5 名
図書館職員: 4 名
アニマドール:図書館職員(子ども読書推進担当 小林和美)
使用した本: 『カラフル』森絵都著
作
戦: 11 これが私のつけた書名
配 置 図:
ホワイトボード
机
アニマドール
参加者
見学者・協力員
(1) アニマシオン
(◆アニマドール、◇参加者(中学生)の発言)
14:00 導入、登場人物の確認
名前とどんな人か挙げてもらう。
発言がないのでアニマドールから指名する。(発言は本を見ながらでも可。)
◇小林真(主人公。自殺した中学生の男の子)
◇プラプラ(ガイドをした天使)
◇桑原ひろか(小林真の元彼女) *実際は初恋の人
◇小林満(主人公の兄)
◇佐野唱子(真の絵を見て美術部に入った女の子)
◇父親(利己的な人)
◇沢田先生(担任の先生)
◇母親(不倫した)
◇早乙女くん(真の友達)
◇天野先生(美術部の先生)
21
◇中年の男(ひろかといちゃついていた)
◇フラメンコの先生(母親と浮気していた)
→用意した紙にはなかったのでその場で書く。
◇プラプラのボス(やり直す魂を決める人)
◆とてもよく出てくる人がまだ挙げられていない。
◇僕(自分が誰かわからない魂)
アニマドール、出てきた名前を家庭・学校等にグループ分けする
14:22 あらすじの確認(発言は本を見ながらでも可。)
◆はじめに何があった?
◇僕が抽選に当たって再挑戦のチャンスを得た。
◇生き返った僕が小林真と対面した。
◇外界モードのプラプラに会った。
◇家に帰って、小林真の周りについてプラプラに説明してもらった。
◆周りとは?
◇学校や家。
◇桑原ひろかが中年男といちゃついていた。
◇母親がフラメンコの先生と不倫しているのを真が見た。
◇父親が、上司がクビになったことに喜んでいた。
◇沢田先生と真が進路について相談した。
◇僕が自分の存在に気付き始めた。
◆自分の存在に気付くとは?
◇ひろか達と話しているうちに自分が何をしたか少しずつわかり始めたということ。
◇母親が真に手紙を書いた。
◆結末はどうなった?
◇下界にホームステイすることになった?
◇そうではなく、僕がもう一度小林真として生きることになった。
◇僕の前世が小林真だということを思い出した。
その他、アニマドールが適宜主語や目的語などを確認する。
最後にアニマドールがあらすじを再確認する。
アニマシオンの様子
22
14:32
タイトルを考えてもらう
◆『カラフル』というタイトルになった理由は何だと思う?
◇色々な人が出てくる。その人それぞれの色があるから。
◇真が他の人と話すうちに明るい所も暗い所もあるとわかってくるから。
◇真は自殺する前、自分の世界が暗いと思っていた。ホームステイして世界の色々
な色を見つけるから。
◇ホームステイの間に良いことや悪いことがあったから。
◇登場人物それぞれに特徴があり、それぞれに色があるから。
14:36
◆皆に別のタイトルを付けるということをしてもらう。時間は 15 分。
タイトルの例を挙げ、メモ用紙とタイトルを書く紙、サインペンを配る。
参加者、タイトルを考える。隣の人と相談してもいい。
14:57
発表
◆タイトルを発表してください。タイトルを書いた紙を見せ、つけた理由は言わず
にタイトルを 2 度読み上げてください。それから前に出てホワイトボードに磁石
で紙をとめてください。発表したい人はいますか?
◇パレット
◇小林真の幽雅な日常
◇真疾風伝
◇小林真のゆううつ
カラフル
◇人生 (人生と書いてカラフルと読む)
◇輪廻のサイクル
◇START
◇小林真にホームステイ
◇Campus
◇性格
◇天使の福音
◇再挑戦
◇僕は僕の世界で生きる
◇AGAIN
15:02
投票
◆自分以外の誰かがつけたタイトルに 1 人 1 票投票してください。他の人と相談せ
ず自分で考えて投票してください。
付箋を配る。
1 人が動き出すと全員動き出した。結果は
「Campus」
2票
「天使の福音」 2 票
「再挑戦」
2票
「AGAIN」
4票
23
決選投票。
◆票が多かった 4 つのタイトルで決選投票をします。
投票数の多いもの以外は紙を外す。付箋を配る。結果は
「Campus」
1票
「天使の福音」 1 票
「再挑戦」
1票
「AGAIN」
10 票
「AGAIN」が第 1 位となり、「決定おめでとう」のマークを貼る。
◆タイトルを付けた理由を言ってください。第 1 位から。
◇「AGAIN」
真が前の自分ではなくもう 1 回新しい自分としてやっていく
ので「もう 1 回」を強調したかった。
◇「再挑戦」
自殺した後、もう 1 回挑戦できて本当のことを知ることがで
きたから。
◇「Campus」
真が美術部ということもある。色々な人がキャンパスに描く
人生。
◇「天使の福音」
プラプラの言葉で真は最終的にもう 1 回生きてもいいかと思
ったから。
決選投票に残らなかった他の参加者にも理由を聞く。
◇「パレット」
色々な色を出すということで。
◇「小林真の幽雅な日常」別の本の名前『妖怪アパートの幽雅な日常』から。本の内
容でつけた。
◇「真疾風伝」
それぞれの場面で気持ちとか活躍した人とか印象に残った
人とかを刻もうということで。
◇「小林真のゆううつ」 最初憂鬱だったが、時間が経ち生き返って前向きになって
いった。
カラフル
◇「人生」
◇「輪廻のサイクル」
人生は色々あるからというのと元のタイトルを一緒にした。
本当は輪廻のサイクルから外れるところだが、抽選に当た
ってそのサイクルにのることができたから。
◇「START」
真は新しい人生をスタートさせた。
◇「小林真にホームステイ」 最初ホームステイというタイトルにしたが、誰のとい
うことを追加した。
◇「性格」
人々と会ってまた生きようとした。そこが一歩踏み出すチ
ャンスになった。
◇「僕は僕の世界で生きる」 最後に自分で生きることを決めた。
24
15:15
まとめ
◆アニマシオンをしてみてどうだった?
◇人それぞれ感じることが違った。続きを想像して楽しめる。
◇タイトルのつけ方も違って面白い。
◇1 冊の本の中でいろんな考えを持つのは面白い。
◇読んでいくうちにタイトル、人物の見方が変わるのは分かっていたが、それらの
関係が詳しく分かった。
◇自分と同じ所を見ても他の人は解釈が違って面白い。
◇気付かなかったことが共有できて楽しかった。
◇最初の印象と違った所が見えた。
◇アニマシオンをやって意外と楽しかった。
◇自分の意見を発表することがなかったが、今回できた。
◇色々な人の気持ちを考えていくうちに見方が変わった。
◇タイトルからその人の考えがわかって面白い。また本が読みたくなった。
アニマドール、森絵都の本を紹介。
15:20
終了
(2) 振り返り
(◆アニマドール、△協力員、○図書館職員の発言)
◆参加人数が多く、協力員を対象とした実践と違う点があり少々戸惑った。違う点は登場
人物確認で「僕」が出てこなかったこと、あらすじ確認の時に参加者の捉え方が違い発
言がなかったこと。「カラフル」というタイトルの理由を聞いた時は意見が出された。
書名を付けることが楽しそうだった。書名を考える時に他の子と話し合っていたが、そ
れはいいのか? つけた書名の理由も皆、説明してくれ、自身も面白かった。
△アニマドールと同じこと(発言が出ない)を感じハラハラした。シャイな年齢なので、
名指しすると言うが、いざ手を挙げて発言することはハードルが高い。真と僕の捉え方
が疑問だったが、「カラフル」というタイトルがつけられた理由を述べる時に自分の考
えを言っていたので、ちゃんとわかっていることを確認できた。参加者数は良い人数だ
った。どうしてその書名をつけたか、人の意見を聞けたかというアニマシオンのメイン
の所ができていた。
△第一声を出すのが緊張する。自己紹介がなかった。どこから来た誰という自己紹介を入
れてもいいのでは。あらすじ確認では、落ち着いて皆が言うのを待っていたことや、「結
末はどうなった?」で収めるという区切り方がよかった。長い物語なので、記憶の引き
出し方には工夫がいる。タイトルをつける場面では「これで何となく『カラフル』とい
う書名の意味が分かってきたと思う」というまとめ方が良かった。解釈してしまうとそ
れに縛られてしまう。書名を考える時間も今回程度で良かった。発表する時、ホワイト
ボードの前に出て 2 度唱える方がはっきり分かる。書名は「カラフル」から離れて自由
につけられていた。真の生き方が印象的だったのだろう。人様々という感想があったが、
それに気付けばアニマシオンとして良かったと思う。名札が見づらいようだったので、
もっと大きく書いて分かりやすい所に付けてもらうといい。
25
△初めての子が 1 時間の間に親しげな感じになり、
その中でアニマシオンをでき良かった。
せっかく集まったので自己紹介があると互いにとってよい。登場人物に「僕」(一人称)
が出なかったのは、結末を読むと真(名前)と同一人物だからか。あらすじの確認は難
しい。出てきた順にするなら、「1 章と 2 章の間ではどうか?」と章ごとに探させると
比較的早くできる。本を見て答えていたので、記憶を呼び戻しながらで良かったかと思
う。タイトルの理由を聞くのは良かった。ただ、campus と書いていたが正しくは canvas。
確認をするとよかった。子どもも色々考えたなと思う。投票時は他の人の投票に左右さ
れる可能性がある。タイトルに番号を付け、付箋に番号を記入して出させるなどした方
がいいか。また、最後のアニマドールのまとめで、より作品を深く読めるようなつなぎ
方は何かないか。
△最初に声を出すのが難しいので、自己紹介を。同じ学校の人を分けて座らせるとよいが、
今回のように長い本を読んでアニマシオンをすることは難しいため、友達とちょっと話
をしてすることもよいのではないか。アニマドールが 1 人でホワイトボードに貼るなど
の作業も行ったので補助の人がいても良かった。
△同じ学校の子が並んで座ると話し合ったりするので最初に席をばらしてしまうのがよい。
また、名札を 2 枚書いてもらい片方で自分のテーブルに座席表を作るとわかりやすい。
自己紹介や群読などで声を出させるとよい。あらすじの確認では、予め紙にあらすじを
書いておき順番を並び替えるという方法もある。子どもも動ける。印象の強いことしか
発言がなかったが、時系列に思い出させる方法が何かあるのではないか。タイトルの発
表では、理由を聞くと偏ってしまうので 2 回言うだけというのは良かった。1 位でない
子も書名をつけた理由を言うことができたので時間的配慮も良かった。本の深さはアニ
マドールがよく知っていて、結論づけるのではなくこういう面もあるという感じでまと
める仕方もある。作品一つ取ってもすごく深いと感じている。
△目的をどこに置くかによるが、楽しくという点では良かった。深く読むという点ではも
うひと工夫いる。
△同じ子どもたちに続けてアニマシオンをする場合は、次の本を自殺がテーマのものにし
たり、他の本ではこう言っていると紹介したりするなどの方法がある。
○死や自殺という深いテーマに対して、アニマドールから投げかけ、それが参加者の中で
広がっていけばよいと思う。
△やはりアニマシオンは同じメンバーでするものということか。
△図書館の目標や、選ぶ図書(作品)による。「自分の言葉で言いましょう」とするとつ
ながり、深まっていく。
△本を選んだ時点で問題提起しているということで、一段階クリアしているとも考えられ
る。じっくり読めたかは、アニマシオン終了後の狙いなので今の時点ではわからない。2
つ目の狙い「自分の発見したことを人に伝えられるようになる。」は達成できた。もっ
と読みたいと思ってくれれば成功だろう。
○3 月に実践報告書を作る。皆様からアンケートでもらう意見も今後の取組みに反映させ
たい。
26
(3)アニマドールが今後の実践のため検討が必要と考えた事項と結論
図書館内での協議内容は以下のとおり。 (◆アニマドール、○図書館職員の発言)
【始める前に】
◆名札は見えやすい位置に貼ってもらうか?
○図書館で大きく書いて作成するか?
結論 → 大きめの名札を用意する。大きな文字で書いてもらう。見える位置に貼っ
てもらう。
◆座席が自由だったので、同じ中学の生徒達が互いに話ができる状況だった。バラバ
ラがよいか?
○バラバラでよい。
○バラバラにすると「隣の人と相談しないで」という注意を省けるが、初対面の場で
は心細すぎるか?
結論 → 座席は自由ではなく、知り合い同士で固まらないようにバラバラに座る。
自己紹介の時間をとり、互いの顔が見えるように円形に座るので、不安感
は減るのではないか。
【自己紹介】
◆初対面の中学生は少し緊張気味。自己紹介を入れ、紹介内容は「○中学○年生名前」
ではどうか?
○よい
結論 → 自己紹介を入れる。中学校名、学年、名前とする。
【人物確認】
◆確認の場面で、「僕」が出てこなかった。その場合どうするか?「僕=小林真」と
同一視していると考えよしとするか?
○出てこない場合、小説の技巧的な部分なのでよしとするか?または、自分を客観視
することの重要性を知らせるために出るまで待つか?
○「とてもよく出てくる人がまだ挙げられていない」と言った今回のように、簡単に
説明を加えてはどうか。
結論 → 簡単に説明を加え「僕」が出てくればよい。
出てこない場合は、あらすじの最後で「僕=小林真」と確かめ、よしとす
る。
27
【あらすじの確認】
◆確認は時系列にするか?思いついた順にするか?
○時系列
○話の流れの確認なので、時系列がよい。「その後どうなった」「その前に何があっ
た」などアニマドールが導ければ。
結論 → 時系列に確認。だが、きっちり確認するのではなく、大まかに重要な出来
事を思い出してもらい、書名をつける作戦につなげる。
◆確認の際、本を見ていた。よいと思うがどうか?
○よい。
○最初は自分の持った印象を活かすため見ないでやり、出てこない場合は見る。
結論 → 最初は本を見ないでやる。発言がない場合は、見てよいことにする。
◆発言がなかなかない場合は?引き出す工夫とは?
①順番に指名して答えてもらう
②記憶力テストではないので、「こうだった」という発言をもとにアニマドールが
まとめ、どんどん次の答えを引き出す
③章ごとに区切ってみる(どの内容がどの章か、覚えていないが…)
④前か後ろかの作戦を入れる(2 つの作戦の組み合わせになる)
○①は授業のようになってしまう。後でも発言の機会があるので順々でなくてもよい。
②または、参加者の発言をもとに、アニマドールが重要な場面が出てくるようにヒ
ントを出す。
○②がよい。①はよくないが、発言が消極的な人に言葉を添えてあてていくとよい。
結論 → 参加者の発言をもとに、アニマドールが発言を確認したり、重要な場面が
出てくるようにヒントを出し、発言が消極的な人に言葉を添えて発言を促
す。
◆「最後はどうなった?」と聞いてよい?
○展開にもよるが、よい。
○今回、「はじめに何があったか」で始まったのでよい。
結論 → 時系列に確認するのでよい。
【『カラフル』という書名はどうしてつけられたか?】
◆ヒントのページを読むまでもなく、各自しっかりいろんな捉え方をしていた。意見
がない場合は、ヒントのページを読む方法でよい
○よい
結論 → 意見が出ない場合も、意見が出た場合も、ヒントのページを読む。
28
◆「アニマドールが「『カラフル』という書名がつけられた理由がなんとなくわかっ
てきた」とまとめ、こうだったと決めつけないからよかった」と意見があった。決
めなくてよいと思うがどうか?
○ヒントのページも読むので、決めなくてよい。
結論 → 書名がつけられた理由は決めない。
【タイトルの例を挙げる】
◆書名を言ってから「長いタイトル」と言ったがそれでよいか?逆?
○他の例示と合わせればよい。
○どちらでもよい。
結論 → どちらでもよいが、先に書名、次にどういう意味の書名か説明とする。
◆どういう意味の書名か忘れないよう本の後ろに付箋で書いておいたがどうか?
○よい。
結論 → 緊張して忘れそうな場合は、意味を付箋で書いておくとよい。
【書名発表】
◆書名を考える時間、参加中学生が他の子と「この書名はどう?」と話をしていたが、
作業は 1 人ですべきか?話をしてもよいのか?
○他の人のタイトルに影響されてしまう可能性もあるが、今回、それほど同じにはな
らなかったのでよい。単発のアニマシオンの場合は、相談OKにしてもよい。
○基本的には 1 人。他校の中学生とならOKか。
結論 → 周りに相談しないで 1 人で決める。
◆「各自の席では見えにくい。前に出てはどうか」と意見があったがそれはよい。
○よい。
結論 → 前に出て発表
◆「canvas」と書きたかったのに「campus」と書いていた場合など、記載事項が間違
っていることに気づいた場合は、
「canvas」は帆布の意味?と確認したほうがよい。
○よい。
結論 → 漢字や綴りの間違いかと思われる場合は、その場で確認する。
【まとめ】
◆「アニマドールが「自殺」などもっと深く読むために投げかけの言葉を言ってはど
うか」という意見があったが、この本を「読む」「書名をつける」ことで自殺や生
きることも含め考え、結果は参加中学生が考えた書名やどうしてつけたかと述べた
理由に現れているので、最後にあえて聞かなくてよいと思うがどうか?
○読む入口づくりという目的なので聞かなくてもよい。生命・自殺の関連図書の紹介
程度でよい。
結論 → まとめでは、「自殺」や「死」について投げかけの言葉を言わない。
29
◆「もっと参加者同士の交流を」と意見があったが、意見交換の場が必要か?『読書
へのアニマシオン -75 の作戦』には記載がない。
○他の人が考えた書名への印象(投票した理由)を聞くのはどうか?
○各場面で、他の人の意見を聞いているので、このままでよいのでは。
結論 → 特に付け加えない。
【ねらいは達成できたか】
◆作戦 11 これが私のつけた書名には 1~3 のねらいがある。(『読書へのアニマシ
オン -75 の作戦』)ねらいは達成されたか?ねらいの具体的内容を図書館職員も
考え、参加中学生へのアンケートで生徒自身の捉え方がわかるように工夫したが、
どうか?
ねらい1 作品を深く読む
◆深く読む=正しく読むということか?自殺問題を通して生と死について考えるとこ
ろまでいくのか?(だが、初対面の中学生同士でしゃべることができるか?)テー
マは家族、友達、好きなこと、進路についてなど広いがどこまで捉えれば深いのか?
○自分で読んだ印象と、また違った印象を抱ければ(今回のアンケートのような形で
確認が可能であれば)「深く」と仮に言ってもよいのでは。
○この時間内で全てを求めるのは無理。入口まででよく、これを契機に個々に考えて
いってもらえればよいのでは。
結論 → アニマシオンへ参加することで、自殺問題を扱った指定図書『カラフル』
を読み、書名を考える際にも「自殺」や「死」については思いめぐらせる
可能性もある。この作戦では、深いテーマで語り合うことが目的ではない
ので、アニマシオンをきっかけに各自で考えてもらう。
ねらい2 自分の発見したことを人に伝えられるようになる
◆人物やあらすじの確認、カラフルの書名の意味を考え発表する、自分でつけた書
名の理由を発表することで、ねらいの達成はよいのではないか?
○よい
○実際に発言しても、アンケートでは「伝えられなかった」という子もいたので、ア
ンケートで聞くことも有効と思う。
結論 → 上記の発言の機会に加え、アンケートでねらいが達成できたか確認する。
ねらい3 読んだことをじっくりと考える。
◆人物やあらすじの確認、カラフルの書名の意味を捉えること、それらについて他
の人の意見を聞くこと、書名をつけるために物語の一番のポイントを考えること
で達成したとしてよいのではないか?
○アニマシオンの後に考えることもあり、本当に内面の働きなので測定することは
難しい。
○よい
結論 → 今回のアニマシオンへの参加で達成できた。
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■資料1
資料1 実践3 参加者募集チラシ
参加者募集チラシ
体験してみよう!
読書へのアニマシオン
県立図書館では、中・高校生の皆さんが土・日曜日を利用して読書の楽しさを体験すること
ができるよう、
「読書へのアニマシオン」を行っています。今回、中学生を対象に、森絵都の小
説『カラフル』をテキストとしたアニマシオンを行います。ぜひ、参加してください。
1.日
時
平成25年2月17日(日)
14:00~16:00
2.会
場
山梨県立図書館 1階 交流ルーム101
甲府市北口2-8-1
TEL 055-255-1040
3.内
容
森絵都著『カラフル』をテキストにしたアニマシオン
○アニマシオンとは?
ゲーム感覚で、楽しく皆で本を読み、
本への理解を深める読書方法です。
○事前の準備は?
テキストを読んで、当日持ってきてください。
この本は、中学生にもサクサク読めて心動かされるおすすめの物語です。
4.参 加 者
県内の中学生 20 名以内
(申込受付順で定員になり次第締め切りとなります)
5.申 込 み
各中学校の担当の先生に申し込んで下さい。
締め切り 平成25年2月8日(金)
6.テキスト
テキスト『カラフル』の出版社や発行年は、次の通りです。
この4つのどれかを選び、読んでください。
○『カラフル』森絵都著 理論社 1998 年
○『カラフル』森絵都著 文藝春秋(文春文庫)2007 年
○『カラフル』森絵都著 理論社(フォア文庫)2010 年
○『カラフル』森絵都著 講談社 2011 年
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■資料
資料2
資料2 実践3 参加者アンケート内容
参加者アンケート内容
1 月に何冊、本を読みますか?
冊
2 今日のアニマシオンに参加して、作品『カラフル』に対し、新しい発見がありまし
たか?あった場合、それはどんなことですか?
あった
なかった
わからない
3 今日、自分が発言する場面で他の人にしっかりと自分の考えを伝えられましたか?
伝えられた
伝えられなかった
その他
4 その他、アニマシオンに参加して気づいたこと、感想など自由に書いてください。
32
■資料3
資料3 実践3 参加者アンケート結果
回答数 14 (回答率 100%)
読む本の冊数
平均値
23.6 冊
中央値*
15
冊
*中央値とは、数値を小さい順に並べていき
真ん中にきた数値のこと
アニマシオンを通しての新たな発見 …ねらい「深く読めたか」
あった
10
なかった
1
不明
3
【新たに発見したこと】
・他の人が自分と他の発見もしていて面白かった。
・人の解釈はたくさんあり、この 1 冊の本で色々な事を知った。
・この本の名前の由来がよく分かったし、本の内容も分かった。
・最初、少し暗い本だなと感じたが、皆の意見を聞いて、明るくてとても「カラフル」
にふさわしい本だな、と思った。
・自分ではわからなかったような、深い所、おもしろさに気づくことができた。
・それぞれ、違う人の意味を聞いて自分とは違う考えなどが聞けて面白かった。
・題名で人の考えていることが分かって面白かった。
・内容のとらえ方が人によって違うとわかった。
・真君の心情がよくわかった。真君くんはしっかり生きている。
・私としては、あまり明るくないイメージだったが、人の話を聞いて明るいイメージ
の所ができた。
自分の意見が言えたか …ねらい「自分の考えを伝える」
言えた
言えなかった
10
4
【言えなかった理由】
緊張して、全てを話すことが出来なかった。
33
34
35
36
実践方法のまとめ
■作戦 「これが私のつけた書名」
テキスト: 『カラフル』 森絵都著 ★事前に読んでおく。持参してもらう。
作
戦: 11 「これが私のつけた書名」
人
数: 15~20 人が適当
(考え、選び、投票するため、人数が多くなりすぎないようにする)
対
象: 11 歳以上
時
間: 87 分
ねらい : 『読書へのアニマシオン -75 の作戦』(MM サルト著、柏書房)より
1 作品を深く読む。
2 自分の発見したことを人に伝えられるようになる。
3 読んだことをじっくりと考える。
作戦の展開:
0 導入
A 始める前に
B アニマシオンの説明
C 自己紹介
D 使う本の確認
1 本の書名が内容にあっているか、もっと良いものがあるか考える
A 登場人物の確認
B あらすじの確認
C 『カラフル』という書名がどうしてつけられたか確認
D 他の本の書名のつけられ方を確認
2 めいめいが一番良いと思う書名を紙に書く
3 1 人ずつ書名を発表
4 投票
A 投票
B 決戦投票
C 書名をつけた理由を発表
5 まとめ
準備する物:
・参加者がつける名札(宛名シールをカット)
・登場人物の名前を書いた紙
・メモ用の白紙(人数分)
・清書用の白い紙(人数分)
・ペン
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・ホワイトボード
・マグネット
・付箋 2 色
・決戦投票第 1 位のタイトルに貼り付けるおめでとうマーク
・決戦投票第 1 位のタイトルを書くための黄色い紙(1 枚)
【作戦の展開】
■0 導入
A 始める前に
・名札にペンで名前を書いてもらい、アニマドールから見えやすい位置に貼ってもらう。
・座席は、知り合い同士、友達同士で固まらないように、バラバラに座ってもらう。
B アニマシオンの説明(2
アニマシオンの説明(2 分)
・「皆さん、こんにちは。今から、アニマシオンをします。アニマシオンとは?ゲームを
楽しむ感覚で、本の世界に遊びながら、理解を深める読書方法です。あまり固く考え
ずに楽しんでやってみてください。」
C 自己紹介
・「始める前に、今日は皆、初めて会う人同士なので、最初に自己紹介したいと思います。
まずは、私から。県立図書館の○○と言います。アニマドールといって、今日のアニマ
シオンで皆にやり方を説明をしたり、質問したり、すすめる役目をします。」
・「では次に参加者の皆さん、順番に自己紹介してください。立って、中学校名、学年、
名前の順で言ってください。」
D 使う本の確認
・「今日使う本は、森絵都さんの『カラフル』です。皆さんには事前にこの本を読んでき
てもらってありますが、まず最初に、どんな内容だったのかちょっと皆さんと一緒に
確かめてみようと思います。」
1 読んできた本の書名が内容に合っているか、もっと良いものがありそうかどうか考える。
読んできた本の書名が内容に合っているか、もっと良いものがありそうかどうか考える。
A 登場人物の確認(5
登場人物の確認(5 分)
・
「どんな人が登場した?登場人物の名前と、どんな人だったかを一言で言ってください。」
・発言があった名前の紙をホワイトボードに貼る。
・準備していなかった登場人物名が出てきた場合は、メモ用紙にペンで書き、貼る。
・僕=小林真と同一視している場合、僕が出てこない。その場合はあらすじの際に確認。
・大まかに「家」と「学校」の登場人物にわけて貼り、最後にペンで囲む。
(参加者に登場人物を把握させ、書名を考える参考とするため、相関図を示す)
38
登場人物の名前と、人物例:
(◎は必須人物として思い出してもらう。あらすじの確認の際でもよい。)
◎僕…魂、死んだ。前世に大きな過ちを犯したが、生まれ変わるため再挑戦中
◎プラプラ…天使、再挑戦のガイド
ボス…天使のボス
まこと
◎小林真 …絵が好きな中学 3 年生。友達がいない。いじめられていた。美術部。
自殺した。
みつる
◎小林満 …真の兄。高校 3 年生。医学部に志望変更。口が悪い。
◎父親…真の父。会社の上層部が検挙され、部長に昇進
◎母親…真の母。絵の才能がある真に期待している。習い事に熱中。
フラメンコ教師と不倫。
◎桑原ひろか…真の初恋相手。中学 2 年。中年男と愛人契約。
しょうこ
◎佐野唱子…美術部。真を好き。
沢田先生…真の担任。ゴリラ並みの体力。
天野先生…美術部の先生。美術専科の高校の資料を取寄せてくれる。
中年の男…桑原ひろかの相手。
◎早乙女君…真の初めての友達。
少年たち…真から財布を奪った。
フラメンコの先生…真の母の不倫相手。
B あらすじの確認(15
あらすじの確認(15 分)
・「どんなあらすじだったか確認してみよう。」
・「あらすじの追加はある?」
・時系列に、大まかに重要な出来事を思い出してもらい、書名をつける作戦につなげる。
・本は最初見ないで発言してもらい、無理だったら見てもよいとする。
・発言がなかなか出ない場合は、参加者の発言をもとに、アニマドールが発言を確認した
り、重要な場面が出てくるようにヒントを出したり、発言が消極的な人に言葉を添えて
発言を促す。
・(もし大まかなあらすじが 2・3 人ですべて出されてしまったら)
「印象に残った場面はある?」
あらすじ例:
①僕の魂が生まれ変わるため自殺を図った小林真の体に入った。ガイドは天使のプラ
プラ。僕は小林真の家族がいい人なので何で自殺したかわからない。
②1 週間で退院。プラプラが僕に小林真の家族の正体を明らかにする。家族に冷たく
する。真が学校でも孤独だった上に、初恋の桑原ひろかが中年おやじとラブホテル
に行くのを見てショックを受けたと知る。
③学校に行く。佐野唱子に魂が違うことを見抜かれる。真が熱心だった美術部に行き
絵を描く。
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④のほほんとしていてプラプラから怒られる。新しい家庭やその世界で関係を築くこ
とに不安や恐怖があると自覚。
⑤髪型を変え、流行りのスニーカーを買う。
⑥高校受験が決まる。
⑦桑原ひろかを中年男から救い出したはずが、愛人契約してると聞きショックを受け
る。
⑧熱を出す。プラプラから、再挑戦の期限が 1 年間と聞く。
⑨暴行を受ける。
⑩佐野唱子が見舞いにくる。桑原ひろかの悪口に怒り、真の別の一面を伝える。
⑪母親の告白と謝罪の手紙を読む。
⑫早乙女君と友達になる。
⑬兄、満と口ゲンカ。
⑭父から釣りに誘われ、話を聞き、父の会社でつらかった立場を知る。母や兄の見方
も変わる。この話は本物の真が聞くべきだった、聞かせてやりたいと泣く。
⑮桑原ひろかが、真の絵に黒い絵の具を塗ろうとする。いろんなひろかがいると知る。
⑯家族や担任、美術部の先生が皆で、美術専科の高校受験を薦める。「真、おまえ、
早まったよ」と思う。友達がいるから公立高校に行きたいと言う。
⑰真の家族との関係が好転。だが、有効期限もあり後ろめたい思いになる。
⑱プラプラに本物の真を返したいと訴える。プラプラが僕の魂がじゃまだから 24 時間
以内に、前世のあやまちを思い出せと言われる。
⑲佐野唱子の話にヒントを得て、前世(=自分が自殺した小林真の魂)を思い出す。
⑳プラプラから再挑戦に成功したと宣言され、下界に戻る
あらすじのまとめ:
・「今、皆さんに言ってもらったあらすじを、もう 1 回、大まかにまとめると、前世にあ
やまちを犯した僕の魂が、生まれ変わりにチャレンジすることに。魂は自殺を図った小
林真の体に入った。ガイドは天使のプラプラ。小林真の家族や友達とのつきあいがわか
るにつれて、自殺の原因が見えてくる。僕なりに家族や友達につっこみを入れ、彼らの
別の面を知り、真が自殺を早まったと思う。自分が自殺した小林真の魂だと思い出し、
再び生き直すチャンスを得る。」
C 『カラフル』という書名がどうしてつけられたか確認(3
『カラフル』という書名がどうしてつけられたか確認(3 分)
・「では次に、この本には『カラフル』というタイトルがついていますが、別のタイトル
をつけてみよう。」
・「『カラフル』という本のタイトルは、どうしてつけられたと思う?」
・(もし意見がでなければ)「P.55、P.197、P.206、P.272※の辺りにヒントがあるよ。
ちょっと読んでみます。」
例えば、P.197
「ぼくのなかにあった小林家のイメージが少しづつ色合いを変えていく。それは、黒
だと思っていたものがよく見るとじつにいろんな色を秘めていた、という感じに近い
かもしれない。」
40
P.206
ひろかから「ひろか狂ってるの?」「だれかをうんと傷つけたくなるのはひろかだけ
じゃない?」と聞かれた真は「ひろかだけじゃない」「みんなそうだよ。いろんな絵
の具を持っているんだ、きれいな色も、汚い色も」(中略)この世があまりにもカラ
フルだから、ぼくらはいつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが
自分の色だかわからなくて。」
(※ページは初版、改訂版、文庫など版によって異なる。この場合は 2011 年講談社刊。)
・(意見が出た場合も)「皆からいろいろな考えが出されましたが、本の中にもヒントが
あります。ちょっと読んでみます。」
・書名がつけられた理由は決めつけない。
D 他の本の書名のつけられ方を確認(2
他の本の書名のつけられ方を確認(2 分)
・他の書名を挙げ、「書名」の付け方を考えてみる。
・本物の本を用意し、表紙を見せ、書名を言い、次にどういう意味の書名か伝える。
本の表紙が見えるように、立てて置いていく。
・緊張して忘れそうな場合、どういう意味の書名か本の後ろに付箋で書いておくとよい。
内容をそのままタイトルにした例:
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
(岩崎 夏海/著 ダイヤモンド社 2009)
主人公の名前が入ったタイトル例:
『アンネの日記』(アンネ・フランク/著 文藝春秋 1994)
その他のタイトル例
セリフからとった例:
『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』(小林 朋道/著 築地書館 2008)
長いタイトルの例:
『十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』
(遠藤 周作/著 海竜社 2006)
短いタイトルの例:
『穴』(ルイス・サッカー/著 講談社 1999)
意外性があるタイトルの例:
『バカの壁』(養老 孟司/著 新潮社 2003)
読んでみないと意味がわからないタイトルの例:
『狐笛のかなた』(上橋 菜穂子/作 理論社 2003)
41
2 めいめいが一番良いと思う書名を紙に書く(15
めいめいが一番良いと思う書名を紙に書く(15 分)
・書名を考える時は、周りに相談しないで 1 人で決める。
・いくつも思いついた場合は、1 つに絞り込む。
・メモ用紙(いくつも思いついた場合のため)と清書用の用紙、サインペンを配る。
・清書用の用紙は同じ向きになるように「縦書き(もしくは横書き)に使ってください」
と言う。
・ホワイトボードの登場人物名は書名を考える際に必要であるので、貼り続け、全員が書
名を書き終わった時に剥がす。またはホワイトボードをひっくりかえす。
3 1人ずつ書名を発表(10
1人ずつ書名を発表(10 分)
・理由は述べずに、書名だけを順に発表してもらう。
(理由を聞くと、書名から受けた印象とは異なる先入観ができてしまう)
・1 人ずつ前に出て、書いた書名を見せながらよく聞こえるように、2 回くり返して読む。
・発表後、用紙をホワイトボードにマグネットでとめてもらう。
(漢字や綴りの間違いかと思われる場合は、その場で確認する。)
4 投票(30
投票(30 分)
A 投票
・付箋を渡し、自分ではなく他の人が考えた書名でよいと思うものに貼り付けてもらう。
・票が多かったタイトルを残す。
(『読書へのアニマシオン -75 の作戦』によると、3・4 個)
B 決戦投票
・決選投票をし、もう 1 度、付箋をはりつけてもらう。一番よかったものを選ぶ。
・第一位が決まった時は、拍手する。
・『カラフル』のタイトル部分を、第一位のタイトルを書いた紙に置き換えて見せる。
C 書名をつけた理由を発表
・第一位になった参加者に「どうしてこの書名にしたか」「特にどんな事に気をつけて考
えたか」を説明してもらう。
・決選投票に残った他の参加者の話を聞く。
・決戦投票に残らなかった参加者の話を聞く。
5 まとめ(5
まとめ(5 分)
・アニマドールはまとめをし、コメント
例 「今日は「1 つの物語に自分でタイトルをつける」ということにチャレンジしてみ
ました。書名をつけてみて、この本の見方が変わりましたか?」
「アニマシオンを初めてやってみて、どうだった?(何か発見がありましたか?)」
・「『カラフル』作者の森絵都さんには、他にも心にガツンとくるおもしろい作品がたく
さんあります。例えば、中学生を主人公にした『DIVE!!』や『リズム』がお薦めです。
ぜひ読んでみてください。」
42
■作戦 「合戦」
テキスト: 『カラフル』森絵都
作
戦: 15「合戦」
人
数: 20 人
対
象: 中学生、高校生
時
間: 80 分
ねらい : 1 深く掘り下げて読む。
2 本のなかのどこが重要かが判断できる。
3 目立たないけれども、何らかの役割を果たしていることがらに気づく。
作戦の展開:
0 準備
1 アニマシオンの説明
2 本の内容を理解しているか、深く読み込めているか
A チーム分け
B クイズ作成
C クイズ合戦
D 集計
3 まとめ
準備する物:
・参加者用のメモ用紙と鉛筆
・アニマドール用の本
・チーム名用の画用紙
・マジック
・ホワイトボード
・磁石
・机と椅子
【作戦の展開】
作戦の展開】
0 準備
参加者に問題とその答を各自 3 つ作り、事前にアニマドールに提出してもらう。誰が、何
を、どうやって、なぜ、どこで、いつなど本から読み取れる質問にしてもらう。そのうち
1 つは一言で答えられるものにする。
(連続して行う場合、1 回目は一言で答えられる質問を主にし、何度目かの場合は色々織
り交ぜる。)
机と椅子をチームの形に配置しておく。
43
1 アニマシオンの説明
「皆さんこんにちは。今から、アニマシオンを始めます。アニマシオンとは、ゲームを楽
しむ感覚で、本の世界に遊びながら、理解を深める読書方法です。あまり固く考えずに楽
しんでやってみてください。」
「今日使う本は森絵都の『カラフル』です。皆さんには事前にこの本を読んで、いくつか
質問を作ってきてもらいましたが、これからチームに分かれて問題を出し合って、遊んで
みたいと思います。」
2 本の内容を理解しているか、深く読み込めているか
A チーム分け(10
チーム分け(10 分)
10 人の 2 チームに分け、筆記用具、チーム名用の紙を渡す。
「10 人でグループを作ってください。分かれたら、自分たちのチーム名と発表する人を決
めてください。チーム名が決まったら、今配った画用紙に書いて私に出してください。」
B クイズ作成(20
クイズ作成(20 分)
「皆さんには、前もって本に関する質問を 3 つずつ作ってきてもらいました。今からグル
ープで話し合って、どの質問を相手チームに出すかを決めてもらいます。5 問選んで、質
問と答を配ったカードに書いてください。相手チームと問題が重なった時のために、予備
の問題を 2 問選んでおいてください。それと、チームの中で同じ問題が重なって 7 問に足
りない時は、本を見て別の問題を作ってみてください。」
クイズがうまく作れているか確認するため、声をかける。ただし、どの質問を採用するか
に口を挟まない。
C クイズ合戦(30
クイズ合戦(30 分)
ホワイトボードにチーム名を書いた紙を貼り、得点表を書いておく。先攻と後攻を決める。
「それでは、本をしまってください。まずクイズの説明をします。先攻の◇◇チームの発
表者が●●チームから 1 人選んで、その人に質問をします。質問を出された人の答が正解
なら 20 点、わからなくて発表者または発表者が指名した人が答えられたら 10 点獲得です。
それでも答えられないと 0 点です。最後に得点を集計します。」
正解かどうかの判断は、質問したチームが判断する。後攻チームが質問。
「それでは、今答えた人(誰もわからない時は発表者)が今度は先攻チームから 1 人選ん
で質問をしてください。」
これで 1 ラウンド。これを 10 ラウンド繰り返す。
本を見ながら、本文からは答を導けない質問・細かすぎる質問などはアニマドールが指示
して、予備問題から再度出題させる。
44
D 集計(5分)
チームの得点を集計する。
「今回得点が高かったのは、●●チームでした。よく本を読みこなせて/深く掘り下げて
問題を出せましたね。おめでとう!」
拍手。
3 まとめ
「今日は本の内容を基に、クイズ合戦をして遊んでみました。質問を作ったり答を考えた
りして『カラフル』がより楽しくなったでしょうか? 森絵都の本は他に『DIVE!!』『宇宙
のみなしご』など心にガツンとくる面白い作品がたくさんあります。ぜひ読んでみてくだ
さい。」
45