第29回 長崎県母性衛生学会総会・学術集会 プログラム

 第29回 長崎県母性衛生学会総会・学術集会
プログラム
長崎大学医学部 良順会館 専斎ホール(理事会) ボードインホール(総会・学術集会) 2016 年 6 月 12 日(日)
長崎大学医学部 良順会館
長崎県母性衛生学会 会長 増崎英明 事務局:長崎大学医学部産科婦人科学教室 1
第 29 回 長崎県母性衛生学会総会・学術集会
期日 会場 会長 2016 年 6 月 12 日(日)
良順会館(長崎大学医学部構内)
増崎英明 長崎大学病院 病院長
長崎大学産婦人科 教授
全理事会
11:20-11:50
長崎大学医学部 良順会館 専斎ホール
総会・学術集会
11:55-17:05
長崎大学医学部 良順会館 ボードインホール
Ⅰ.総会(11:55-12:05)
Ⅱ.学術集会 開会の挨拶(12:05-12:10)
長崎県母性衛生学会 会長 増崎英明 Ⅲ.教育講演(12:10-12:50)
座長:長崎大学産婦人科 教授 増崎英明
「胎児 MRI」
演者:長崎大学放射線科 助教 瀬川景子 Ⅳ.一般演題(1)(12:55-13:35)
座長:長崎大学病院 6 階西病棟 師長 柘植久美 1-1. 当院における母親学級の取り組みと振り返り
山中恵美、岩佐千枝、小島安紀子、田川悦子、芦塚二葉、村上京子、村上俊雄
医療法人 佐世保晩翠会 村上病院
1-2. 当院における妊娠中の説明・支援
川良聖子、池田恵、前田かおり、真倉さなえ、東 愛、石川潤子、山口千恵子、内野令子 松尾美佐子、宮崎明子、内山彩子、溝口奈津子、奥園麻里、瀬尾啓子、高柳初美、井上哲朗
井上産科婦人科 1-3. 両親学級と父性の向上について ∼産後の夫の育児支援を調査∼
島田市子、芝田久美子、山津満喜子、森田久美子、大串美智子、前田富美子、中尾美香 大瀬良侑乃、中山聡子、岩永キミ子、久保和代、小林恵美子、小川真弓、溝道エミ子 2
三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒 医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科
1-4. 妊婦の日常生活における子宮収縮と切迫早産の予防∼第 3 報∼
中山聡子、中尾美香、大瀬良侑乃、溝道エミ子、山津満喜子、森田久美子、大串美智子 芝田久美子、前田富美子、島田市子、岩永キミ子、久保和代、小林恵美子、小川真弓 三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒
医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科
Ⅴ.一般演題(2)(13:35-14:25)
座長:長崎大学病院看護部看護研修センター看護師長 赤星衣美 2-1. 出産自己評価に影響を及ぼす要因
次原詩乃 1) 、定松千枝 1) 、渕利雄 1) 、佐々木規子 2) 、宮原春美 2)
1) 渕レディスクリニック 2) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
2-2. 産後の手関節腱鞘炎についての一考察
腹筋と腱鞘炎の関係性
下田真太郎 1) 、村田広志 1) 、宮本正史 2)、上窪幸子 2) 、田嶋智子 2) 、山口由紀 2)
山口晴子 2) 、濵﨑哲史 2) 、犬塚邦彦 2)
1) 長崎百合野病院リハビリテーション科 2) 花みずきレディースクリニック
2-3. 妊婦の臀部痛への理学療法介入∼子宮頸管縫縮術後の一例∼
村田広志1) 、下田真太郎 1) 、宮本正史 2) 、上窪幸子 2) 、田嶋智子 2) 、山口由紀 2)
山口晴子 2) 、濱崎哲史 2) 、犬塚邦彦 2)
1) 長崎百合野病院リハビリテーション科 2) 花みずきレディースクリニック
2-4. 胎児奇形の告知を受けた妊婦の経験と思い -告知直後のインタビューから市成沙由理 1) 、石田綾奈 1) 、坪田幸子 1) 、赤星衣美 1) 、三浦清徳 2) 、宮原春美 3)
1) 長崎大学病院 6 階西病棟 2) 長崎大学病院産婦人科 3) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
2-5. 助産師リカレント教育の実施および評価
∼生き生きと働く実践力のある助産師キャリアアッププログラム 2015∼
松井香子 1) 、江藤宏美 1) 、佐々木規子 1) 、山本直子 2) 、永橋美幸 1) 、宮原春美 1)
大石和代 1) 、赤星衣美 3) 、野間田真紀子 4)
1) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 2) 鹿児島大学大学院 母性・小児看護学講座
3) 長崎大学病院 4) プロジェクトマム さくらの里助産院
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Ⅵ.ワークショップ(14:35-15:50)
「妊婦の痛みと出血の取り扱い」
座長:長崎大学産婦人科 准教授 吉田敦 WS-1. 当院における妊婦の痛みと出血の取り扱い
田中幸子、村岡亜希子、山口晴子、宮本正史、犬塚邦彦、濱崎哲史
花みずきレディースクリニック
WS-2. 妊婦の痛みと出血の取り扱い∼当院での各種教室での指導と電話対応について∼
城下美雪、永瀬陽子、東川佳代子、竹本真衣子、木下英美、平野香、板倉礼子 王志洪、森崎正幸
医療法人 宝マタニティクリニック
WS-3. 当院における時間外の対応、および母親学級の現状
川上百合香
長崎みなとメディカルセンター市民病院 WS-4. ハイリスク妊産婦の対応について
豊﨑彩乃、川村由香子
長崎大学病院
WS-5. 夜間・休日の超緊急帝王切開術
中山大介、野々下晃子、築山尚史、永田典子、布施正樹、村上誠
佐世保市総合医療センター
WS-6. 当院における超緊急帝王切開術に対する取り組み
松脇隆博 1) 、河野通晴 1) 、山田美樹 1) 、平木裕子 1) 、森崎佐知子 1) 、吉田至幸 2)
1) 諫早総合病院 産婦人科 2) 島原マタニティ病院
Ⅶ.特別講演 (16:00
17:00)
座長:長崎大学産婦人科 教授 増崎英明 「近代日本における産屋の変容」
佛教大学・甲南女子大学・和歌山工業高等専門学校 非常勤講師
(公財)世界人権問題研究センター嘱託研究員
伏見裕子
Ⅷ.閉会の挨拶(17:00-17:05)
増崎英明 長崎県母性衛生学会 会長 4
【 参加者へのご案内】
1. 総会・学術集会の受付は 6 月 12(日)10:50 から良順会館 1 階で行います。
2. 学術集会参加費
会員・・・・・・・1,000 円
一般参加者・・・・3,000 円
学生・・・・・・・無料(学生証の提示が必要です。大学院生も含みます。)
※お支払方法は現金のみです。
【発表についてのご案内】
1) 発表時間
一般演題:発表時間は 7 分、質疑応答は 3 分です。
ワークショップ:発表時間は 1 題 8 分
約 25 分間の総合討論を予定しています。
2) 円滑な学術集会進行のため、時間厳守にご協力お願いいたします。
3) 発表開始 10 分前までに、会場内左側の次演者席にご着席ください。
4) メディア、PC 持参に関するお願い
・発表形式はすべて PC を用いた発表となります。
・ 一般口演題の発表者の皆様は 12:30 までに、ワークショップの発表者の皆様
は 14:10 までに、メディア媒体(USB メモリ、CD-R)を会場1階 PC 受付
にご持参いただき試写・動作確認を行ってください。
・ メディア媒体を持参される方は事前にウイルスチェックを済ませておいて
ください。
・プレゼンテーションソフトは以下のものをご使用ください。
① Windows 版 PowerPoint2003/2007/2010/2013
② Macintosh 版 PowerPoint をご使用の方は事前にご連絡いただくか、
PC をお持ち込みください。
・動画ファイルをご使用の方は PC をお持ち込みください。
【学術集会に関するお問い合わせ先】
学会事務局 長崎大学医学部産科婦人科学教室 東島 愛
〒852-8501 長崎市坂本 1-7-1
TEL:095-819-7363 FAX:095-819-7365
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一般演題 1
1-1. 当院における母親学級の取り組みと振り返り
山中恵美、岩佐千枝、小島安紀子、田川悦子、芦塚二葉、村上京子、村上俊雄
医療法人 佐世保晩翠会 村上病院
【研究目的】
当院では現在、産前教育として前期スクールと後期スクールおよびおっぱいサークルを行っ
ている。今回は当院が 18 年前から取り入れているソフロロジー分娩を中心とした後期スクール
について焦点を当て、その中で母親学級の有効性と改善点を明らかにし、今後の母親学級に活
かせるようにしたい。
【研究対象・方法】
平成 27 年 1 月 1 日∼平成 27 年 12 月 31 日に分娩した帝王切開術を含む、実際に当院で出産
した 589 名の褥婦を対象とし、アンケート調査を行った。うち、有効回答数が 329 件であった。
【結果・考察】
有効回答 329 件のうち、後期のスクールに参加したのは全体の 87.9%であり、高い参加率お
よび出産に向けての関心があることが示された。また、参加者のうち 88.4%が出産に向けての
不安の軽減やリラックスすること・呼吸することの大切さがわかったとの回答をしており、出
産後には赤ちゃんをイメージしながらリラックスや呼吸を行うことが出来たという意見が得ら
れた。よって、後期のスクールによって産婦の出産や児に対する肯定的な考えの変容があった
と考える。しかし、出産に対する不安が増強したり、出産への自信がなくなったと回答してい
る参加者もおり、出産後には陣痛の痛みによりリラックスができなかった、耐えられなかった
という回答もあった。分娩前のスクールによるマイナスイメージは、助産師面談などでできる
だけ個別に関わることで軽減させ、分娩後はお産に立ち合った助産師との振り返りの中で肯定
的に捉えられるように関わっていくなど一人ひとりの分娩前後の丁寧な関わりが必要と考える。
また、今後もアンケートを実施して内容の改善に努めていく必要があると考える。
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一般演題 1
1-2. 当院における妊娠中の説明・支援
川良聖子、池田恵、前田かおり、真倉さなえ、東 愛、石川潤子、山口千恵子、内野令子 松尾美佐子、宮崎明子、内山彩子、溝口奈津子、奥園麻里、瀬尾啓子、高柳初美、井上哲朗
井上産科婦人科 当院の基本方針はマンツーマンの説明・母乳育児・自然分娩です。
平成元年の開院当初から助産師によるマンツーマンの説明(保健指導)を行ってきました。パ
ンフレットは長年積み上げてきたプリントを基にオリジナルのものを作り、妊婦さん全員に渡
しています。
妊娠中は不安や不快症状も多いものです。しかし、集団指導の中ではなかなか医療者に伝え
にくいのでは
と考え、教室という形ではなく妊婦健診の折にマンツーマンで説明を行ってき
ました。
分娩に関しては、自然分娩・アクティブバースをイメージし、バースプランが立てられるよ
う妊娠後期に集団で安産教室を開いています。
母乳育児支援については以前の長崎県母性衛生学会で発表いたしましたので、今回は当院で
行っている妊娠中の説明と安産教室を紹介したいと思います。
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一般演題 1
1-3. 両親学級と父性の向上について ∼産後の夫の育児支援を調査∼
島田市子、芝田久美子、山津満喜子、森田久美子、大串美智子、前田富美子、中尾美香 大瀬良侑乃、中山聡子、岩永キミ子、久保和代、小林恵美子、小川真弓、溝道エミ子 三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒 医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科
【目的】
現在は核家族化や女性の社会進出が進み、父親の育児支援は必要と考える。当院の外来では
助産師が妊婦への初回説明時に父親の妊婦健診の同席や両親学級の受講などを勧め、育児への
協力が得られるよう働きかけている。そこで今回は、両親学級に参加した父親の産後 1 ヶ月に
おける育児支援が継続的に行われているかを調査したので報告する。
【方法】
研究期間:平成 28 年 2 月∼3 月中旬まで
研究対象:両親学級に参加し、1 ヶ月健診に来院した母親 研究方法:独自に作成した質問紙を用いて対象者に来院時調査を実施した。
【結果】 1.
両親学級で実施した、沐浴・オムツ交換・子をあやすの項目については、ほぼ全員が実施
できていた。
2.
両親学級に参加している夫の育児支援は、産後から継続的に行われており、
「大変満足。ほ
ぼ満足している」と回答している母親が多かった。
3.
両親学級に参加していても、授乳や家事全般に関しては、満足している人が少人数で十分
な協力が得られていない。
4.
夫に対しては社会的育児支援(保健所などで行われている両親学級など)に対しての情報が
十分に知られていない。
5.
育児休暇制度があっても十分活用されていない現状がわかった。
【まとめ】
今回の研究を通して両親学級に参加した夫の育児支援は、出産直後だけでなく、その後も継
続的に行われるようになっていることが分かった。両親学級に参加する夫の育児支援への意識
は高いと考えられ、父性を育てていくうえで大切な場であると考える。今後、両親学級の内容
を充実させ、夫の両親学級への参加や、妊婦健診への同席を推奨していきたい。
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一般演題 1
1-4. 妊婦の日常生活における子宮収縮と切迫早産の予防∼第 3 報∼
中山聡子、中尾美香、大瀬良侑乃、溝道エミ子、山津満喜子、森田久美子、大串美智子 芝田久美子、前田富美子、島田市子、岩永キミ子、久保和代、小林恵美子、小川真弓 三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒
医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科
【はじめに】
切迫早産は絨毛膜羊膜炎に起因することが多いといわれる。しかし、それを証明する臨床症
状や検査所見がないにも関わらず、頻繁な子宮収縮により、頸管の短縮を認めるケースもある。
当院では H26 年から「妊婦の子宮収縮の自覚とその時の行動」について調査を実施している。
その結果から切迫早産予防のための生活指導の一助にするため、子宮収縮の多い時間帯・行動
様式について考察したので報告する。
【方法】
期間:平成 27 年 10 月∼平成 28 年 2 月
対象:妊娠 22 週∼37 週未満の当院外来通院中の協力を得られた妊婦 初産婦 71 名、経産婦 88 名(計 159 名)
方法: (1) 子宮収縮を自覚した時の時間帯と行動、強さを 5 段階に分け、調査表に記録してもら
う。
(2) 調査日は妊婦の任意で設定。
【結果】 (1) 子宮収縮を自覚する頻度が増加するのは 25 週頃からの傾向があった。
(2) 子宮収縮を自覚する回数は、初産婦・経産婦とも起床時から 9 時頃まで増加し、その後日中
は少し減り、再度 15 時頃から寝る前まで多くなった。
(3) 子宮収縮を自覚した時の行動は、初産婦・経産婦とも「起床・就寝」「食事の支度・後片付
け」が多かった。経産婦は「上の子の世話」が最も多かった。
(4) 子宮収縮の強さは、経産婦に強いと感じたという回答が多かった。
【まとめ】 25 週頃から子宮収縮を自覚する妊婦が増えることがわかった。経産婦と初産婦を比べると、
全体的に経産婦の方が多く子宮収縮を自覚していた。一方子宮収縮を自覚した時の行動には初
産婦・経産婦とも大きな差は見られなかった。しかし経産婦は「上の子の世話」があるために
子宮収縮を自覚する回数が増えると考える。
また陣痛発来時間は妊娠中の子宮収縮とは違い、夜間に多く日中に少ないという明らかな傾
向が見られた。子宮収縮は陣痛発来時間とは違い昼間の行動している時間に自覚する傾向にあ
るため、正期産の 37 週に達するまでは計画的に 1 日を過ごし無理のない日常生活を送るよう働
きかけていく必要がある。
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一般演題 2
2-1. 出産自己評価に影響を及ぼす要因
次原詩乃 1) 、定松千枝 1) 、渕利雄 1) 、佐々木規子 2) 、宮原春美 2)
1) 渕レディスクリニック 2) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
【目的】
出産自己評価に影響を及ぼす要因について評価し、高い満足感を得られるような助産ケアを
検討する。
【方法】
A 産科クリニックにおいて正期産で経腟分娩した初産婦で、研究参加への同意が得られた 20
名に対し、常盤の「出産体験自己評価尺度短縮版」と分娩全体の満足感を問う VAS を用いた質
問紙調査を行った。
出産体験自己評価尺度短縮版の合計得点(以下、尺度合計とする)とその下位尺度である産
痛コーピングスキル、生理的分娩経過、医療スタッフへの信頼の得点及び VAS の得点を年齢、
職業の有無、分娩所要時間、会陰裂傷、会陰切開、医療介入の有無、出血量で比較した。分析
には記述統計、スピアマンの順位相関係数、マン・ホイットニーの U 検定を用い、有意水準は
p<0.05 とした。
本研究は長崎大学医歯薬学総合研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:
15010866)。
【結果】
対象者の平均年齢は 29.3
た。尺度合計の平均は 68.05
5.85 歳、平均分娩所要時間は 13 時間 51 分
10.21 点、VAS の平均は 86.35
9 時間 46 分であっ
21.25 であった。
尺度合計の得点と VAS の得点には有意な正の相関がみられた。
会陰切開の無群は、有群に比較して産痛コーピングスキル、生理的分娩経過、尺度合計の得
点が有意に高かった。医療介入無群では、有群に比較して医療スタッフへの信頼、生理的分娩
経過、尺度合計、VAS の得点が有意に高かった。年齢や分娩所要時間、職業の有無、会陰裂傷、
出血量では差は認めなかった。
【考察】
出産自己評価が高いと、全体的な分娩への満足感が高い。また、会陰切開を含む医療介入が
無いほうが満足感は高い。産婦が満足感の高い出産ができるように、分娩がスムーズに進行す
るための助産ケアを提供しなければならない。
なお本研究は、平成 27 年度長崎看護学同窓会研究奨励賞の助成を受けて実施した長崎大学大
学院医歯薬学総合研究科修士論文の一部である。
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一般演題 2
2-2. 産後の手関節腱鞘炎についての一考察
腹筋と腱鞘炎の関係性
下田真太郎 1) 、村田広志 1) 、宮本正史 2) 、上窪幸子 2) 、田嶋智子 2) 、山口由紀 2)
山口晴子 2) 、濵﨑哲史 2) 、犬塚邦彦 2)
1) 長崎百合野病院リハビリテーション科 2) 花みずきレディースクリニック
【目的】
産褥婦の腰痛に手関節の腱鞘炎が合併した症例をしばしば経験する。腱鞘炎の原因は、育児
における過負荷が原因と考えられる。一般的な腱鞘炎の治療としては局所の冷却、安静、装具
による固定あるいはストレッチなどが行われる。一方、産褥婦に対する理学療法介入の経験か
ら、手関節腱鞘炎を発症した症例の多くは腹筋や骨盤底筋の筋力低下を伴っていることに気づ
かされた。今回これまでとは異なる観点から体幹筋の弱化が腱鞘炎の一要因になると推測し、
腹筋へのアプローチを行い症状が改善した症例を報告する。
【倫理的配慮・説明と同意】
本症例報告は当院の倫理委員会で承諾されており、症例の同意も得ている
【対象と結果】
39 歳、専業主婦、1 妊 1 産。帝王切開後 2 ヶ月で手関節腱鞘炎出現。その後、疼痛が増悪し
当院へ受診。
主訴) 両手関節疼痛、巧緻動作困難(書字・衣服のボタンを留める)。
理学療法評価) 疼痛検査:両母指の外転・伸展・対立運動で疼痛誘発 VAS:8。
触診:両側の第 9・10 肋骨に付着する前鋸筋、外腹斜筋の筋緊張低下。骨盤底筋の筋緊張低
下・随意的収縮困難。腹横筋下部線維の筋緊張低下・随意的収縮困難。
理学療法アプローチ) 帝王切開創部周囲の硬い軟部組織をストレッチ後に骨盤底筋と腹筋群
の共同収縮を実施、加えて座位姿勢の指導を行った。
結果) 理学療法中に骨盤底筋と腹筋群の筋収縮を獲得した時点で、手関節の疼痛は消失した。
【考察】
理学療法的視点では、四肢の筋力を発起するためには体幹筋の筋力が必要である。自然分娩
や帝王切開においても体幹の機能障害は生じる。育児などの上肢の筋力が必要となる動作では、
低下した体幹の筋力を手指や前腕の筋群が代償した結果、手関節の腱鞘炎が発症すると推測さ
れる。産褥婦の腱鞘炎の発症機序の1つに、出産による体幹の機能障害の存在を考慮していく
必要があろう。局所の所見にとらわれず、全身的に患者をとらえていくことが重要と思われた。
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一般演題 2
2-3. 妊婦の臀部痛への理学療法介入∼子宮頸管縫縮術後の一例∼
村田広志 1) 、下田真太郎 1) 、宮本正史 2) 、上窪幸子 2) 、田嶋智子 2) 、山口由紀 2)
山口晴子 2) 、濱崎哲史 2) 、犬塚邦彦 2)
1) 長崎百合野病院リハビリテーション科 2) 花みずきレディースクリニック
【はじめに】
妊産婦において腹部筋や骨盤底筋の筋力低下が生じ、その代償として身体的トラブルが出現
することがある。今回、子宮頸管縫縮術(縫縮術)後の妊婦に生じた歩行障害に対して理学療法介
入を行ったので報告する。
【倫理的配慮・説明と同意】
本報告は当院の倫理委員会での承諾を得ている。また、対象者には本報告の主旨・目的を説
明し同意を得ている。
【症例紹介】
30 歳、1 妊 1 産(第 1 子 1 才 11 か月)
主訴:妊娠 27 週右臀部痛による歩行困難
既往歴:16 歳左右の足関節捻挫、17 歳右肩関節脱臼
現病歴:第 1 子出産後、子宮頸部高度異形成のため円錐切除術を受けた。第 2 子妊娠後は比
較的安静に過ごし、妊娠 16 週に縫縮術を受けた。その後、妊娠経過は良好であったが妊娠 25
週より右臀部痛が出現し、妊娠 27 週に当院を紹介された。
【理学療法評価】
疼痛動作:歩行(VAS:8/10)、あぐら座位
筋力低下:骨盤底筋群、腹筋群、足底筋群、上肢屈筋群(右握力:14 ㎏、左握力:18 ㎏)
可動域制限:右股関節屈曲、右股関節内旋、胸郭回旋
【治療】
本症例は腹部の増大により腹横筋と骨盤底筋の機能低下を起こし、代償として腹斜筋と股関
節周囲筋に負荷が加わっていた。したがって、まずは股関節と胸郭のストレッチにて柔軟性を
改善させた。さらに、妊婦であるため腹圧を最小限に留めながら、呼吸を利用し腹横筋と骨盤
底筋の筋力改善を図った。これらに加え、既往によると思われる右上肢機能低下の負荷が股関
節に影響していたため、肩甲帯∼上肢の筋機能改善のエクササイズを行うことにより、痛みが
消失し歩行障害も改善した。
【まとめ】
今回、縫縮術後妊婦の歩行障害に対し理学療法介入を行った。縫縮術前後の安静が筋群の機
能低下に関与していた可能性は否定できない。妊婦への介入は既往や安静期間など様々なこと
を考慮し母子へ加わる身体的負荷を最小限に留める必要がある。今後も妊婦への介入の際には
アプローチの工夫をしていきたい。
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一般演題 2
2-4. 胎児奇形の告知を受けた妊婦の経験と思い -告知直後のインタビューから- 市成沙由理 1) 、石田綾奈 1) 、坪田幸子 1) 、赤星衣美 1) 、三浦清徳 2) 、宮原春美 3)
1) 長崎大学病院 6 階西病棟 2) 長崎大学病院産婦人科 3) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
Key Word:胎児奇形、妊婦、経験、思い
【研究目的】
胎児奇形の告知を受けた妊婦の告知直後の経験と思いを明らかにすることで必要な助産ケア
について検討する。
【研究方法】
研究協力者は胎児異常を告知された妊娠 22 週以降の分娩まで継続的なフォローが必要な妊
婦で、研究趣旨に同意が得られた妊婦 8 人である。告知を受けて 3 週間以内に 1 回 30 分程度の
半構成的インタビューを実施し、質的帰納的に分析した。データの分析において信頼性・妥当
性を得るために、質的研究の経験者からスーパーバイズを繰り返し受けた。なお、長崎大学病
院看護研究倫理委員会の承認を得て実施した(平成 27 年 4 月 5 日承認、承認番号:15032473)。
【結果】 研究協力者の平均年齢は 29.88
6.20 歳でありインタビュー時間は
表 1. 概念とカテゴリー
【カテゴリー】
告知直後の衝撃
平均 14 分 (11-20 分)であった。イ
ンタビュー結果から、12 のカテゴリ
ーと 32 の概念が抽出された(表 1)。
【まとめ】
胎児奇形の告知直後の妊婦は衝撃
を受け、様々な心の揺れや家族の思
いを経験しながら、家族や医療スタ
ッフの支援があることで胎児奇形を
受け入れることに繋がっていた。妊
婦が胎児奇形という現状を理解し受
け入れられるように、思いを丁寧に
受け止めて共感的な姿勢で関わるこ
妊娠中の行動に対する後悔と自責
受け入れられない家族の思い
家族のスムーズな受け入れ
周囲の人に合わせる煩わしさ
検査結果を待つ間の気持ちの揺れ
不確かな今後への不安
自分なりの納得
(自分なりに何とかしようとする気持ち)
胎児への愛着の芽生え
とが必要である。
助産師として、告知直後から継続
して関わりを持ち、胎児奇形を特別
視せず情緒的な関わりをすることで
入院生活でのピアサポート
入院生活のストレス
母の気持ちに寄り添う医療スタッフの関わり
妊婦との信頼関係を築くことができ、
<概念>
中絶の選択肢
ショック
信じられない気持ち
漠然とした不安
実感のなさ
妊娠中の後悔
妊娠中の行動や態度に対する自責
児の疾患に対して受け入れられない思い
育児のサポートに対する不安
夫のスムーズな受け入れ
家族のスムーズな受け入れ
周囲の人へのうっとうしい(面倒な)気持ち
周囲に対して無理をしている自分
検査結果を知ることへの恐れ
結果に対して揺れる気持ち
胎児の健康状態に対する不安
児がかわいそう
生まれてからの育児に対する不安
ポジティブな受け止め
まだまし(仕方ないと思いこませる)
治療ができることによる希望
あえて考えない
胎児からのポジティブなメッセージ
胎児や生まれてくる児への準備や配慮
自分より赤ちゃんを優先する気持ち
同じ体験をした人からの支え
入院していることへのストレス
点滴や安静による行動制限のストレス
胎児奇形を特別視しない関わり
医療スタッフのエモーショナルな関わり
助産師の安心できる対応
気持ちに寄り添うケアが行える。さらに、情緒的な関わりをするだけでなく、妊婦の支援者(夫
や家族、ピアサポート)を探し繋ぐ役割もあるとわかった。
本研究は長崎大学看護学同窓会研究奨励賞の助成を受けた。
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一般演題 2
2-5. 助産師リカレント教育の実施および評価
∼生き生きと働く実践力のある助産師キャリアアッププログラム 2015∼
松井香子 1) 、江藤宏美 1) 、佐々木規子 1) 、山本直子 2) 、永橋美幸 1) 、宮原春美 1)
大石和代 1) 、赤星衣美 3) 、野間田真紀子 4)
1) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 2) 鹿児島大学大学院 母性・小児看護学講座
3) 長崎大学病院 4) プロジェクトマム さくらの里助産院
【はじめに】
2014 年 9 月より文科省委託事業「高度人材養成のための社会人学び直しプログラム」として
「生き生きと働く実践力のある助産師キャリアアッププログラム」
(以下プログラム)を実施し
ている。女性の健康及び周産期ケアのプロである助産師が、生き生きと活躍できる教育プログ
ラムの提供とキャリアアップ支援体制の充実を図ることが本プログラムの目的である。今回、
実践者としての助産師のリカレント教育方法について一考を得たので報告する。
【実施方法】
当プログラムは自律した助産実践力を養成するプライマリ助産師コースと、実践力に加え教
育力・マネジメント能力を養成するコアリーダー助産師コースの 2 コースを設けた。初年度は、
①update な情報を修得する科目: e ラーニング 90 分 16 コマ、対面授業 90 分 1 コマ、②update
な実践能力を修得する科目:e ラーニング 90 分 8 コマ、演習 49.5 時間、実習 37.5 時間、③対
人関係能力を修得する科目: e ラーニング 90 分 7 コマ、対面授業 90 分 4 コマの 3 科目を開講
した。e ラーニングは周産期医療に関連した最新の知識技術の伝達を行い、受講生の受講状況を
アクセスログ記録で管理した。対面授業や演習は助産実践に必要な内容を網羅し、計 5 回実施
した。実習は、受講生が他施設に赴き助産ケアの実際を学んだ。終了後、実習レポートを提出
してもらった。
【結果】
受講生のアクセスログから、当初夜間や週末、配信終了間近の e ラーニング学習が多かった
が、徐々に受講スタイルが確立し、週日や日中のアクセスが増加した。受講環境に関するアン
ケート実施、掲示板機能等により、受講生の生の声が聴かれた。就業と学習の両立のサポート
を行なった結果、5 人のプライマリ助産師、7 人のコアリーダー助産師が 1 年間履修し、単位を
取得した。
【まとめ】
助産師が継続的に学ぶために、e ラーニング、対面授業、実習等を組み合わせた学習方法によ
り科目履修の確立に一定の効果を挙げると考える。
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ワークショップ
WS-1. 当院における妊婦の痛みと出血の取り扱い 田中幸子、村岡亜希子、山口晴子、宮本正史、犬塚邦彦、濱崎哲史 花みずきレディースクリニック <はじめに>常位胎盤早期剥離は母児ともに生命予後にかかわる重篤な疾患である。約 8 割に
性器出血や下腹痛を訴えるが、発症初期には典型的な症状を認めないこともある。そのため早
期発見と対策が必要となり、妊婦さんへの情報提供と指導が重要である。常位胎盤早期剥離の
早期発見のために当院で行っている取り組みを紹介する。 <取り組み>妊婦健診においては、医師による診察後に看護スタッフによる個別指導を行って
いる。プリントなどの資料を活用して各回における注意事項を、異常と正常の判断がしやすい
ようわかりやすい言葉で丁寧に説明している。特に 30 週以降は胎動減少も重要な要素であるた
め、胎動 10 カウントの説明も行っている。 妊娠後期に行う出産教室においては、分娩の兆候のついての説明を行うが、異常出血や異常
な腹痛等には特に注意するよう指導している。出産教室は 1 クラス 8∼10 名の少人数で行って
おり、一方的な講義形式でなく、距離感も近く質問等がしやすいような雰囲気ですすめていく
よう心掛けている。 電話対応については、妊婦さんが連絡を迷ったり、不安な時に悩んだりして、異常の早期発
見が遅れるということがないよう、「24 時間体制ですので、いつでも気軽に電話して下さい」と
いうことを指導時に伝えている。 夜間も看護スタッフ 3 人(助産師 1∼2 名)と当直医が院内に必ず待機しており、迅速な対応
ができるようにしている。 <おわりに>当院をはじめとした産科クリニックでは、高度な医療を提供することができない。
したがって、異常の兆候に対し迅速に対応するために、妊婦さんに常に正しく適切な情報を提
供し、指導を行うことが重要となる。指導方法についても一方的なものでなく、妊婦さんの理
解度を確認しながら工夫しなければならない。また、クリニックという特徴を生かし、日頃か
ら妊婦さんとのコミュニケーションをなるべくとるようにし、信頼関係を築くことも大切にし
ている。 15
ワークショップ
WS-2. 妊婦の痛みと出血の取り扱い
∼当院での各種教室での指導と電話対応について∼
城下美雪、永瀬陽子、東川佳代子、竹本真衣子、木下英美、平野香、板倉礼子 王志洪、森崎正幸
医療法人 宝マタニティクリニック
は じ め に 常位胎盤早期剥離(以下、早剝)は発症すると予後不良な疾患であり、発症から児娩出まで
の時間が予後を規定する場合が多く、妊婦の初発症状や、それに伴う妊婦の初期行動が重要で
ある。今回、痛みと出血の取り扱いについて、当院での各種教室での指導と電話対応、早期剥
離の実際についてまとめたので、ここに報告する。
指導の実際
当院では、各種教室での集団指導をメインに、健診時の症状や訴え、妊婦の理解度に合わせ、
個別に指導を追加する方法で患者教育を行っている。
各種教室として、全妊婦を対象とした前期・後期母親学級、経膣分娩の方を対象とした安産
教室を行っている。
前期教室では、切迫流産、切迫早産の管理と周産期死亡率を減少させる事の重要性を説明し
た上で、超音波検査、子宮頸管長、NICU の県内状況と母体搬送について話を行い、早産チェ
ックの重要性を理解してもらっている。
後期母親学級では、注意して欲しい症状(腹部緊満感、痛み、出血、胎動等)や、早剥につ
いて説明し、切迫症状や胎動減少等いつもと違う感じがあれば、すぐに相談・受診するよう声
かけている。特に、早剝については、前触れなく突然起こり、起きてしまった場合は母児共に
危険な状態に陥り、早急な対応が必要であること、妊婦自身に病態の知識がない場合が多いこ
とから、開院当初より学級で紹介している。
病態や緊急性について説明し、妊婦自身の認識を高め、早期受診してもらえるよう勧めている。
安産教室では、分娩の経過、陣痛中の過ごし方、入院のタイミング、呼吸法、分娩 DVD、LDR
見学を行っている。早剥のリスクとして、早剥の既往、妊娠高血圧症候群、切迫早産、前期破
水、喫煙等があるため、妊婦の生活環境を把握すると共に、経産婦では前回分娩経過の聞き取
り(所要時間、出血量、吸引・促進剤の使用・早剝等の異常経過の有無)を行い、外来カルテ
に記載、Dr・スタッフ全員が情報を共有し、出血が多かった例や早剝既往例では、特に注意し
て経過を見ていくようにしている。また、分娩時は母児の安心安全の為、つきっきりの出産を
行っている。
予定日近くになると、出血をおしるし(産徴)として捉えたり、胎動が減少しても予定日近
くは胎動が減ると雑誌に記載してあることから、分娩が近づいたサインとして捉える妊婦も多
く、早剥徴候を見逃しやすい。当院では、院長の格言として「出血がある場合に、すぐ来てく
ださい!と答えないスタッフはクビ!!」があり、胎動減少感や出血があった場合は、時間外・
休日であっても必ず受診してもらうことを徹底しており、超音波による胎盤チェック・内診・
NST を行い、切迫症状や早剝徴候がないか確認するようにしている。
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常位胎盤早期剝離の実際
平成 10 年 1 月から平成 27 年 12 月までの当院での総分娩数は 6990 人、分娩中の部分早剝も
含めた。早剥例は 74 人(1.06%)であった。早剥例の内訳として、初産 24 人(32.4%)、経産
50 人(67.6%)、経膣 59 人(79.7%)、緊急帝王切開 15 人(20.3%)で、特に経腟分娩では経
産婦が 44 人(74.6%)と多くを占めた。分娩週数は 35 週 3 人(4.1%)、36 週 10 人(13.5%)
で、37 週以降が 61 人(82.4%)であった。出生体重 2000g未満は 1 人(1.4%)、2500g未満
は 14 人(18.9%)であった。臍帯血 pH は、7.0 未満 4 人(5.4%)、7.15 未満 10 人(13.5%)、
7.15 以上が 60 人(81.1%)であった。1 分後のアプガースコアは 3 点以下 4 人(5.4%)、4∼6
点 9 人(12.2%)、7∼10 点 61 人(82.4%)、5 分後のアプガースコア 3 点以下 1 人(1.4%)、
4∼6 点は 1 人(1.4%)、7∼10 点 72 人(97.2%)で、殆どの症例が 5 分以内で状態回復して
いる(5 分後 3 点以下の 1 例は、分娩時早剥と母体間輸血症候群を併発、重度新生児仮死にて
搬送、生後 1 日目死亡となった症例)。緊急帝王切開となった症例の主訴は、出血、腹部緊満感、
下腹痛、腰痛、胎動減少感等で、内診・胎盤エコー、胎児心音等を併せ診断をしているが、主
訴のうち、出血あり 12 人(80%)、出血なし 3 人(20%)で、出血なし例のうち 2 人は分娩時
出血量 2000ml 以上で輸血施行。出血なし例の方が分娩時の出血量が多く、児の状態も悪い傾
向にあった。早剥の診断・緊急帝王切開の決定から児娩出までの時間は 31∼58 分(平均 48 分)
であった。早剥疑いの緊急搬送は 4 人で、出血なし、腹緊頻回、胎動減少感で来院、搬送中胎
児心拍消失、NIFD、DIC 併発、輸血となった症例が 1 例、辺縁剥離 10%未満、輸血となった
症例が 1 例、早剝を疑い搬送したが明らかな早剝ではなかった症例が 2 例で、4 例中 3 例は母
児ともに救命されている。 まとめ
・早剝の既往、妊娠高血圧、切迫早産、低出生体重児、経産婦等リスクのある症例では、
妊娠中の教育、分娩中の観察を十分に行う必要がある。
・出血がない場合、早剥に気付きにくく、分娩時の出血が多くなったり、児の状態が悪い傾向
がある。出血がない場合でも、痛みや胎動減少感を訴える時は慎重に観察していく必要がある。
・早剝は突然起こり、母児ともに危険な状態に陥ることもあるため、早急な対応が必要である。
産前教育の中で、夜間でもすぐに来る、タクシーの番号を教えるなど緊急性の教育をしっかり
行うことが妊婦の意識向上につながる
・胎 動 減 少 、 出 血 ⇒ す ぐ に 来 院 ! を 今 後 も 啓 発 し て い く 。
当院での早剝症例は 5 分後 AP7 点以上が 97.2%で、多くが母児ともに元気な状態で退院とな
っているが、これは出血、痛み、胎動減少感などの異常があった場合に妊婦さんが早期に受診
していただける為であると考える。
今後も、母児の安全のために、産前教育や積極的な声かけを続けて行きたい。
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ワークショップ
WS-3. 当院における時間外の対応、および母親学級の現状
川上百合香
長崎みなとメディカルセンター市民病院 当院は平成 20 年 4 月に長崎県地域周産期母子医療センターに指定されており、正常妊娠から
ハイリスク妊娠および長崎近郊の母体搬送を受け入れている。2013 年度分娩件数 278 件、うち
帝王切開 116 件(41.7%)。2015 年度分娩件数 306 件、うち帝王切開 133 件(43.5%)であっ
た。母体搬送受け入れは、2014 年 81 例、2015 年は 110 例である。
当院に通院中患者の時間外の対応として、妊娠 11 週 6 日までの患者の電話での問い合わせや
診察の依頼があった時、その症状が軽い場合(少量の出血、軽度の下腹痛)には外来看護師が
自宅で安静にして翌日産婦人科外来を受診するように、症状が進行増悪するようなら再度連絡
としている。妊娠 12 週 0 日以降の妊婦の電話での問い合わせは病棟助産師が対応、拘束医へ連
絡し、自宅安静、診察等医師の指示を妊婦へ折り返し電話をしている。分娩に関する対応、判
断は助産師が行っている。
妊婦指導として、病棟助産師が毎月、第1、第2、第 4 火曜日に母親学級を行っている。母
親学級の案内は、母子手帳発行後の妊婦健診で週数と日程を調整し外来で予約をとっている。
2015 年母親学級受講者は 47 名で、その中の 26 名は不妊治療後の妊娠、GDM、筋腫合併、血
液型不適合妊娠、双胎、FGR 等ハイリスク合併妊娠の診断で診療所から紹介されていた。今回
のテーマである妊婦の痛みと出血は時期によってその原因が異なり、当院へ紹介後からの受講
者もいる為、母親学級は妊娠初期、中期、後期の妊婦が混在している。
集団指導による妊婦間での情報交換の場を提供し、プライバシーに配慮した個別の指導を融
合させ、異常の早期発見、安心、安全な分娩に繋げられる様に妊婦のニーズに応えていきたい。
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ワークショップ
WS-4. ハイリスク妊産婦の対応について 豊﨑彩乃、川村由香子
長崎大学病院
周産期を管理していく上で、疼痛と出血時の取り扱いについて最も重症で迅速な対応を要する
のは、常位胎盤早期剥離である。しかし症状の現れ方や感じ方によっては個人差があるため、
切迫早産、陣痛、産徴等と判別することが困難な場合がある。特に妊婦からの電話対応では、
受診の必要性や来院方法などを判断することが難しい。しかしながら、初期対応よっては、妊
産婦と児の予後に大きく影響を与えるため、妊産婦への保健指導やスタッフの教育は必須であ
る。 長崎大学病院は、第三次医療施設としてハイリスク妊娠や分娩を対象としている。そのため、
外来では、限られた時間の中、一般的な保健指導だけではなく、妊婦それぞれの状況に合わせ
た教育を行っている。また、合併症を抱えている妊婦も多いため、迷わず連絡できる環境づく
りに努めている。 病棟は、スタッフ教育として常位胎盤早期剥離や出血の勉強会の実施、新人教育として場面の
シナリオに沿った電話対応のシミュレーションを行い、緊急時の対応に備えている。患者教育
に関しては、入院中は受け持ち助産師を中心に保健指導を行い、退院時には電話連絡方法など
を指導し、外来助産師とも連携を図っている。 今回、私たちが行っている患者教育や、電話を受けた時点で常位胎盤早期剥離の恐れがあると
判断・対応した症例について紹介し、各施設間で議論を深めることによって、更なる周産期医
療体制の充実を図りたい。 19
ワークショップ
WS-5. 夜間・休日の超緊急帝王切開術
中山大介、野々下晃子、築山尚史、永田典子、布施正樹、村上誠
佐世保市総合医療センター
時間外、すなわち夜間や休日、当院に小児科の当直医はいるが、産婦人科医、麻酔科医、手
術室看護師、助産師はいない。家や出先から呼び出す必要がある。したがって帝王切開術を急
ぐ患者が来院しても、帝王切開すると決めてから児を娩出するまでに 1 時間はかかる。
そこで平成 27 年、時間外にも超緊急帝王切開術ができるよう以下のような取り組みを行った。
(1)院内への根回し:患者の到着を待たず、搬送の依頼があった時点で手術室看護師、麻酔科
医を呼び出すことについて同意を得た。(2)手術室の準備:一日の業務終了時、緊急帝王切開
術に備えた室内のセッティングは以前から行っていた。それに加え、手術器械をコンテナにセ
ット化し、衛生材料をキット化した。医師毎にバラバラであった針・糸を統一した。(3)産婦
人科医、麻酔科医、小児科医、ER 看護師、助産師、手術室看護師によるシミュレーションを 2
回行い、問題点を話し合った。
その後時間外の常位胎盤早期剥離の搬送依頼が 4 例あった。4 例とも全身麻酔下の超緊急帝
王切開術を行った。患者到着から児娩出までの時間はそれぞれ、23 分、17 分、14 分、20 分で
あった。
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ワークショップ
WS-6. 当院における超緊急帝王切開術に対する取り組み
松脇隆博 1) 、河野通晴 1) 、山田美樹 1) 、平木裕子 1) 、森崎佐知子 1) 、吉田至幸 2)
1) 諫早総合病院 産婦人科 2) 島原マタニティ病院
超緊急帝王切開術とは、
「方針決定後、他の要件を一切考慮することなく、直ちに手術を行い、
一刻も早い児の娩出をはかる帝王切開術である」と定義され、
「帝王切開術決定から児の娩出ま
で 20 分以内を目標とする」とされている。当院では、産婦人科、麻酔科、小児科および手術室
Ns のいずれもオンコール体制であり、超緊急帝王切開術を行うには各関連部署の協力が不可欠
であり、日頃から綿密な連携が必要と思われる。2013 年 9 月以前は県央地区で超緊急帝王切開
術を必要とする症例は長崎医療センターに搬送されていたが、2013 年 10 月以降では当科でも
搬送を受け入れる方針としたため、緊急帝王切開術、超緊急帝王切開術の症例が増加した。電
子カルテを導入した 2006 年 11 月から 2015 年 12 月までに当院で取り扱った分娩数は 1,621 例
であり、そのうち超緊急帝王切開術は 15 例(約 0.9%)で、2013 年 9 月以前は 7 例であり、
2013 年 10 月以降は 8 例であった。受け入れ当初は超緊急帝王切開術に対する取り決めはなく、
帝王切開術決定から児娩出までの時間(Decision-to-Delivery time: DDT)が長時間の症例もあっ
たが、産婦人科医、小児科医、麻酔科医、病棟看護師、助産師および手術室看護師と連携をは
かり、超緊急帝王切開術に関して明確な取り決めを行うことで DDT 短縮を可能にできると思わ
れた。当院で行っている取り決めとその効果について報告する。
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賛助会員
施設名
郵便番
号
住所
医療法人誠美会 荒木産婦人科診療所
荒木 純夫
857-0805
佐世保市光月町 4-4
井上産婦人科
井上 哲朗
858-0913
佐世保市新田町 707-5
いまむらウィミンズクリニック
今村 定臣
850-0918
長崎市大浦町 1-26
奥田産婦人科
奥田 倫子
852-8117
長崎市平野町 11-9
小濱産婦人科医院
小濱 正美
850-0902
長崎市丸山町 1-5
倉田医院 内科・婦人科
倉田 須和
852-8125
長崎市小峰町 3-6
子
医療法人 後藤産婦人科
後藤 英夫
856-0813
大村市西大村本町 364
佐藤医院
佐藤 公康
859-1303
雲仙市国見町神代丙 414-1
重松 潤
856-0822
大村市古町 1-514
811-5132
壱岐市郷ノ浦町東触 854-2
下村 修
850-0851
長崎市古川町 8-11
陣林 伯豪
859-0401
諫早市多良見町化屋 879-4
医療法人光善会 長崎百合野病院
瀬良 敬祐
851-2103
西彼杵郡時津町元村郷 1155-2
立石産婦人科医院
立石 由紀
854-0013
諫早市栄町 7-6
出口 晴彦
854-0014
諫早市東小路町 14-33
濱崎 哲史
852-8154
長崎市住吉町 13-16
平井 雅直
857-0341
北松浦郡佐々町羽須和免 780-5
医療法人 藤田クリニック
藤田 晃
850-0031
長崎市桜町 7-2
医療法人 淵レディースクリニック
淵 利雄
850-0871
長崎市麴屋町 2-16
医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科
三浦 清巒
851-2104
西彼杵郡時津町野田郷 25-1
医療法人 安永産婦人科医院
宮下 昌子
854-0003
諫早市泉町 17-22
産婦人科 宮村医院
宮村 庸剛
852-8114
長崎市橋口町 22-10
医療法人 みやむら女性のクリニック
宮村 泰豪
852-8108
長崎市川口町 1-1-108
医療法人鶴泉会 牟田産婦人科
牟田 郁夫
850-0852
長崎市万屋町 6-32
医療法人佐世保晩翠会 村上病院
村上 俊雄
859-3215
佐世保市早岐 1-6-22
医療法人翔南会 山崎産婦人科医院
山崎 裕允
855-0823
島原市湊町 350
医療法人愛心会島原マタニティ病院
吉田 至誠
850-0803
島原市新町 2-278
医療法人福重会 レディースクリニックしげまつ
医療法人協生会 品川病院
品川 晃一
郎
医療法人 しもむら産婦人科
医療法人まごころ会
たらみエンジェルレディースクリニッ
ク
子
医療法人和光会 出口医院レディースクリニック
医療法人愛育会
花みずきレディースクリニック
平井産婦人科医院
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