第 22 回荒尾市民病院院内学会抄録 『地域に支えられる病院づくり』 開催日 平成 20 年 10 月 25 日(土) 会 場 荒尾総合文化センター 主 催 荒 尾 市 民 病 院 病院理念 荒尾市民病院は地域住民の健康 維持、増進に努め、患者中心の安 全で質の高い医療の提供をめざす。 式 次 第 開 会 式 (敬称略) 1.開会のことば 運営委員長 勝守 高士 2.挨 学 会 長 大嶋 壽海 名誉学会長 前畑 淳治 辞 荒尾市医師会長 高橋 評 学 会 長 大嶋 壽海 学会事務局長 荒牧 正弥 3.祝 拶 洋 閉 会 式 1.総 2.閉会のことば 学 9:30 受 付 開 会 式 10:00 11:10 会 日 程 11:45 12:00 13:00 Ⅰ.特別講演 Ⅱ.一般演題 (1/2) 南 慧昭 氏 セッション1 「心の健康」 表 彰 昼 食 13:15 Ⅲ.新人 発表 14:25 Ⅳ.一般演題 (2/2) セッション2 セッション3 閉 会 式 学会テーマ【地域に支えられる病院づくり】 第 22 回荒尾市民病院院内学会プログラム 【9:30~10:00】 <開会式> 【10:00~11:00】 Ⅰ.<特別講演> 座長:大嶋 院長 演題:心の健康 講師:南 え しょう 慧 昭 (南陽山勝光寺住職) 【11:10~11:45】 Ⅱ.<一般演題(1/2)> 〔セッション1〕 座長:鶴田敬一郎 ①「当科における腹腔鏡下手術の現状と展望」 外科医師:水流添 ②「当院で経験した甲状腺クリ―ゼの一例」代謝・内分泌内科医師:萩原 ③「お薬手帳活用における窓口業務の充実」 薬 周 利奈 局:大久保達也 【11:45~12:00】 <ボランティア表彰> ① 有明高等学校 感謝状授与:大嶋院長 ・・・清掃活動を通して地域医療の振興・発展に寄与 ② 花いっぱい弥山サークル ・・・花いっぱい運動を通して地域医療の振興・発展に寄与 【12:00~13:00】 ― ― ― ― ― ― ― ― ― <昼 食> ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 【13:00~13:15】 Ⅲ.<新人発表> ④「腎移植の現状と問題点」 腎臓内科:松岡竜太郎 ⑤「一年間を振り返って」 北1F:小川 仁美 【13:15~13:50】 Ⅳ.<一般演題(2/2)> 〔セッション 2〕 座長:原 明信 ⑥「当院人間ドック受診者における生活習慣病と喫煙の関連性 ~保健指導に役立てる為に~」 ⑦「当院の作業療法について」 健康管理センター:谷口朋子 リハビリテーション科:安楽一也 ⑧「有効的な血液培養検査とプロカルシトニンの検査報告」検査科:西田志保 【13:50~14:25】 〔セッション 3〕 座長:村上 和子 ⑨「相談支援センターの役割 ~がん患者の退院支援~」 相談支援センター:齊木 ⑩「ICUにおける過剰抑制軽減への取り組み」 ゆかり ICU :大久保 美和 ⑪「無菌室(クリーンルーム)入室患者への調査 に基づいた看護支援の検討」中4F:松島 【14:25~15:00】 <総 評> 【15:00~ <閉 大嶋院長 】 会> 荒牧副院長兼事務部長 美由紀 特別講演 講師 南陽山 勝光寺住職 南 慧昭 1.勝光寺を継承したのは定年後 私は勝光寺に、姉一人男三人の長男に生まれて、本来であれば跡継ぎなのです が、どうしても大都会で自分の力を試したいという気持ちがありまして、東京へ 出て食品関係の会社に就職しました。三男のこうせつは中学生の頃から、プロの 歌手を目指して活動していたので、寺の方は次男が継ぐことになり、副住職を務 めていたんです。ところがその弟が癌で亡くなり、二年後に父も亡くなり、こう せつが「継ぐ」とも言ってくれたのですが、彼には好きな音楽をやらせておきた かったので、私が継ぐことに決めたんです。 でも当時は、関連会社の社長に就任したばかりですぐに継ぐわけにもゆかず、 寺の世話は親戚の僧侶に頼み、自分は仕事のかたわら、夜は駒澤大学で『正法眼 藏』などを聴講し、土日は総持寺の参禅会に参加していろいろと質問したり、い わば僧侶になる準備をしました。そして六十歳の定年と同時に、福岡の修行僧堂 に入り一年八ヶ月の修行を経て、平成十七年に正式に住職になりました。 2.ビジネスの世界からの転進にとまどいは・・・ 仏弟子になる修行はサラリーマンの世界とはまるで違う世界ですからね。でも 私は、三十六年間のサラリーマン生活を経験してから修行に入ってよかったと思 っています。 入社した時代は高度成長の時代で、それ以後も食品業界は激変の時代でした。 その中で私自身も、大阪万博やディズニーランドの現場を任されるなど懸命に働 いた。そしてふと気がついてみたら四十代。日本は豊かになったと言われ、確か に給料も上がったけど物価も上がり、相変わらず忙しい。 「これで豊かなのかな」 と思いました。さらに利益を上げるために合理化が進む中で、強いストレスを感 じたり、あるいは他人に手を差し伸べる優しさなどをなくしている自分に気がつ いたりして、満たされない思いもありました。そうした経験があるから、今、心 を病んでいる人の気持ちを共感できる。これは高校から駒澤大学に進み、そのま ま住職になっていたら中々わからないことです。だからでしょうね、檀家さんか ら「和尚さんにはとても話しやすい」と言われます。 3.修行の中で感じたこと 食べ物から何からすべて違う世界ですし、世間の常識とは切り離された世界で すからね。そのすべてが違う世界に自分自身がストンっと入った。すると不思議 に物の見方・考え方が変わってきました。たとえばバブル崩壊の原因は経済にあ るといわれていますね。それが修行をする中で、あれは人間のお金に対する欲を 戒めるための天のお咎めと捉えられるようになった。物事には限界がある、欲も 程度を弁えろということです。 今は、いろいろなことが楽しく経験できますし、それはさまざまな人にアドバ イスとして伝えられます。 4.「歌説法」のきっかけ きっかけは福岡での修行時代でした。ある集まりの中で司会を仰せつかり、た またま歌を披露したところ、「何かやっていたのか」と訊ねられたので、「合唱を していました」と答えたんです。すると長老が、 「お寺は昔から人が集う場所だっ た。ところが経済優先の世の中になって人はお寺から離れていった。あなたには 皆を楽しく歌わせる技術があるのだから、もう一度、人々がお寺に集まるように、 布教にそれを生かしたらどうか」と言って下さって。実は私も同じように歌を使 って教えを説けないかな、と考えていたんです。 そこですぐに福岡の大きなお寺、六ヶ所ぐらいでやりました。まだ修行中で、 普通なら許されないのに、私だけ特別に許されて(笑)。 それが大変に好評でして、「楽しいからうちでもやってください」と口コミで 広がっていきました。 「出前歌説法」と命名したのは『夕刊フジ』の女性記者なんですが、その方が 「和尚さんがみんなの中に降りてゆく、人ってゆく。そういう説法は絶対に面白 い」と小さい記事にして掲載したら、今までないほどの反響があったそうです。 その後、あれやこれやで、今は全国から依頼が来て収拾がつかない状態です。 5.素晴らしい歌声・・・ 元々、音楽は好きでした。でも私の世代は、まだ音楽をやる男は軟弱者といっ た風潮がありまして…(笑)。本格的に音楽を始めたのは大学時代でした。アメリ カからいろいろな音楽が入ってきまして、それに触発されましてね。学校に行か ずにジャズに男声合唱、さらには歌声喫茶と音楽、音楽の毎日(笑)。最後は男声 合唱の指揮をするまで夢中になりました。 会社勤めした後も、地域のサークル活動で合唱団を立ち上げて指揮を担当して …。ずっと音楽とは切れませんでしたね。 6.歌を歌うことで、会場の雰囲気の変化 みんな笑顔になりますね。私はよく童謡や民謡、それと自作の歌を手拍子をと りながら歌うのですが、特に童謡などには詩情というのか、背景があります。ま た昔、その歌を歌ったときの情景やぬくもりがある。そうしたものが皆さんの心 の中に込みあげてくる。すると、七十歳ぐらいの怖い顔をした男性も最後にはニ コニコ顔になる。 また歌は腹式呼吸ですから、歌うと体中に酸素がゆきわたります。健康にもい いし、心も安定する。だから歌い終わるとみんなよい笑顔で若返る。 7.心と身体の癒し そうです。そして「皆さん、今、鏡をお持ちならご自分の顔を見てください。 十歳どころかもっと若返ってますよ。その笑顔で暮らしていたらトラブルは起き ません。一番大切なのは笑顔です。その笑顔で互いに声をかけましょう。 『おはよ う』 『こんにちは』 『ご苦労様』、そして『ありがとう』と。そうした輪が大きく広 がってゆくと世の中はよくなりますよ」とお話をすると、皆さん大きく頷かれま す。 8.わかりやすく楽しく・・・ わかりやすく楽しくはとても大切です。たとえば私は必ず「三分間坐禅」とい うものをやります。坐禅する場所は椅子でも布団の上でもかまわない、楽な姿勢 で背筋を伸ばして法界定印を結んで深く静かに腹式呼吸をし、三分間瞑想をする。 すると心が安らかになる。これは坐禅とはいえないかもしれないが、その一部 を応用することで心が安らぎストレスがなくなる。それも仏教だと思います。現 実の社会の中で生きてこそお釈迦様の教えです。 でも私がお伝えしていることは特別なことではありません。日本人が本来持っ ている心の豊かさ、優しくて丁寧でハートがあって絆を大切にするということを 思い出そうということです。今は経済優先が過ぎて、心の面が衰えてしまった。 それを取り戻して、心も経済も豊かなバランスの取れた国になればと考えていま す。 9.人と人との絆の再生 人と人との絆の再生は家庭からです。特に一番大切なのは学校へ行く前の子供 たちです。私のお寺にもお子さんが来ます。その時は、 「あなたたちが生まれてき たのは、お父さんお母さんがいて、またお祖父さんお祖母さんがいて、さらにご 先祖さまがいて、みんなのお蔭さまだよ。そしてみんながあなたたちを心配して 見守っているんだよ」と、きちんと親やご先祖様のお蔭さまを教えます。その上 で両親やお祖父さんが、一緒に歌ったり、温かいスキンシップを心がけること。 家族の絆がしっかりできていると、いざというときに「あの時、お祖父さんが『七 つの子』を歌ってくれたな」ということが心に浮かんで歯止めがかかるものです。 今、団塊の世代が定年を迎え元気がない人もいます。この世代にはお孫さんを ハートのある子供に育てるという素晴らしい余生があります。だから元気出して 欲しいですね。 10.今後の活動 長老から勧められて始めた「歌説法」がこんなに喜んでもらえるとは思いませ んでした。私の「歌説法」で、いろいろな人が癒されるなら、できるだけ全国へ ゆきたいと思っています。でもそれも七十歳までと決めています。 その後は勝光寺に拠点をおいて、参禅会を開くとか、歌を歌う会をするとか、 勝光寺を人が集まる場所にして、ここからいろいろなことを発信したいです。 ☆一般演題☆ セッションⅠ 1.当院で経験した甲状腺クリーゼの一例 代謝・内分泌内科 萩原 利奈 症例は 82 歳女性。生来健康。約半年前より頻脈を認めた。骨折後のリハビリ目的 で近医入院中、喘息発作、肺炎を機に発熱、頻脈、胸部不快感、血圧上昇が出現し、 徐々に意識障害を認めたため当院救急外来紹介、搬送となった。既往歴に気管支喘息、 高血圧症あり。甲状腺疾患の罹患歴、家族歴はなし。甲状腺腫大や圧痛なく、眼球突 出、手指振戦は認めなかった。心電図では洞性頻脈を認めた。来院時は傾眠傾向で、 活動性は欠如していた。来院時採血で TSH0.003μU/ml,FT3 16.72pg/ml,FT4 6.29ng/dl と甲状腺中毒症を呈しており、38℃台の発熱、胸部 CT で肺炎像を認めた。甲状腺クリー ゼと診断し、ICU 管理としクリーゼに準じた治療および全身管理を開始した。甲状腺ホルモ ン値は徐々に減少し、入院 4 日目には脈、血圧正常、意識レベルほぼクリアとなったため、 一般病棟にて以降抗甲状腺薬投与を継続した。採血にて TRAb64.5%陽性、TSAb292%陽 性で抗 Tg 抗体、抗 TPO 抗体陰性、また甲状腺エコーではびまん性腫大と血流増加を認め、 最終診断確定のため施行したヨード摂取率検査では、24hr uptake13.11%(正常 7~35%) で、年齢のわりに高値と判断し、諸検査と合わせバセドウ病と診断した。第 17 病日 頃より喘息発作を認め、それに伴い FT3,FT4 の軽度上昇、頻脈、微熱、夜間不眠が出 現した。ステロイド吸入及び点滴で経過を見ていたが、状態が徐々に悪化するため、呼吸 器専門治療のため大牟田天領病院へ転院とした。 今回、高齢者バセドウ病による甲状腺クリーゼを経験した。甲状腺クリーゼは甲状 腺機能亢進症の極限状態で、まれであるが、いったん発症すると死亡率は 20%に達す る重篤な病態である。そのため早急な診断と早期治療、全身管理が必要となる。本症 例を通じて高齢者バセドウ病の特徴や、診断のポイント等について考察を行った。 2.当科における腹腔鏡下手術の現状と展望 外科 水流添 周 荒尾市民病院は荒尾市、長洲町を中心とした広い医療圏をカバーし、同医療圏にお いて緊急例を含めた全身麻酔手術を行えるほぼ唯一の施設である。当院外科の平成 19 年度の入院患者数は 850 例で、395 例の手術を施行した。当科の特色として、腹腔鏡・ 胸腔鏡を用いた手術が挙げられる。日本で初めて腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行されたの は 1990 年であるが、当科では翌年の 1991 年に導入した。平成 19 年度に行った 395 例のうち 177 例が腹腔鏡もしくは胸腔鏡を用いた手術であり、その対象疾患も良性か ら悪性まで幅広い。中でも悪性疾患は、平成 16 年に初めて系統的郭清を伴った回盲 部切除や完全腹腔鏡下幽門側胃切除術を行ったのを皮切りに、現在では胃全摘や食道 亜全摘も行っており、結腸・直腸に関しては基本的にすべての部位を対象としている。 当科では特に、可能な限り完全鏡視下手術に努めている。演者は平成 9 年卒業で今年 12 年目であるが、これまで主に腹腔鏡下胆嚢摘出術のみを行ってきた。平成 20 年 4 月に赴任して以来、そ径ヘルニア根治術、虫垂切除術、十二指腸潰瘍穿孔手術などの 良性疾患手術に加え、胃癌・大腸癌に対する腹腔鏡下手術も経験した。熊本県下でこ うした経験ができるのは当科を除いてあまりなく、これは若い外科医が研修先を決定 する際に大きな魅力となりうる。腹腔鏡や胸腔鏡を用いることの利点は数多いが、呼 吸器合併症や腸管癒着が少ない点は重要である。当科ではさらにハイビジョンカメラ を導入し、拡大視効果による精細・確実・安全な手術が可能となっている。また当院 は平成 21 年度、診断群分類包括評価病院となる予定であり、合併症の防止と在院日 数の短縮はこれまで以上の課題である。当科では、手術の手技をさらに向上し、さら に術前・術後管理を改善することによってこうした課題を解決し、当院医療圏内外の 患者が治療を望むようなチームを作ることを目標としている。 3.お薬手帳活用における窓口業務の充実 薬局 ○大久保 達也、安部 正樹、江原 正博、古賀 俊光 【はじめに】 いわゆる「お薬手帳」の活用は、患者様が使用している薬剤の情報、副作用歴やア レルギー歴などを記録することで、相互作用や重複投与、更には発現の可能性がある 副作用をも発見・防止できるなど、薬剤使用に伴うリスクを回避するための有用な方 法である。 また、今年度の診療報酬改定では、後期高齢者を対象に、処方内容をお薬手帳に記 載・提供することで、薬剤情報提供料の加算として認められた。これに伴い、当院に おいても8月より実施し始め、医薬品の適正使用の推進、薬・薬連携に努めている。 【方法】 外来処方(救急外来、透析処方は除く)にて、75 歳以上の患者様を対象に処方内容 を印刷した紙面をお薬手帳に貼付し、薬剤情報提供書と共に提供する。尚、お薬手帳 には他施設や調剤薬局により良い患者情報を提供するために、副作用の既往歴の有無、 他施設からの処方の有無、健康食品の服用の有無を記載する。また、抗がん剤やオピ オイド製剤が処方されてある場合は告知グレードを確認し、グレード4の患者のみ、 その旨を記載する。 【結果】 8月、9月の2ヶ月間、実日数 41 日間において、お薬手帳に記載した延べ患者数 は 558 名(613 件)、1日平均 13.61 名になった。また、各科別で見ると、整形外科 156 件、泌尿器科 106 件、内科 97 件、循環器 65 件、外科 60 件の順であった。 【考察】 現在、開始して、2ヶ月が経過した。75 歳以上の院内の外来処方の半数以上の患者 様にお薬手帳を提供し、窓口でより良い服薬説明ができてきていると思われる。そし て、患者様の中には薬を当院だけでなく、他の病院からもらわれているケースもあり、 このお薬手帳が情報提供の一つとして、貢献していると考察される。 【結語】 今後、お薬手帳を通じて、薬剤によるリスクを未然に回避し、患者様や医療スタッ フから信頼していただけるように努めていきたいと考えている。また、より見やすく、 分かりやすい薬剤情報提供書を目指し、今現在、改定作業を進めている所である。 ☆新人発表☆ 1.腎臓移植の現状と問題点 腎臓内科 松岡 竜太郎 腎臓移植は腎不全に対する治療として透析治療と並ぶ有効な治療手段であり、唯一 の根治的治療法である。 現在の透析治療を受けている患者は毎年13000人ずつ増加しており、全体とし ては35万人を突破するところである。原因としては糖尿病による腎機能障害が1位 であり、腎不全患者・透析患者の増加を食い止めるには糖尿病の予防・治療が特に重 要である。 日本で行われている腎臓移植は総数で15000例に満たない状況であり欧米諸 国に比べて極めて少ない。日本における腎臓移植を普及させるには、死体腎臓移植に ついての一般の理解と認知を行い、死体腎臓ドナーの増加を図る事が重要である。 その一例として臓器提供意思表示カードがある。厚生労働省日本臓器移植ネットーワ ークが発行しているものであり、国民への臓器移植への治療認知普及に努めている。 移植での問題点としては、拒絶反応が一番に挙げられるが、拒絶反応の病態生理的 な解明の進歩と免疫抑制剤の進歩により移植の成績は向上してきている。この為、移 植後の合併症としては高血圧・糖尿病・高脂血症・悪性腫瘍など内科的、生活習慣病 的な問題点が重要となってきている。 Memo 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2.一年を振り返って 北 1 病棟 小川 仁美 私は去年の 8 月に入職し、当院の脳外科・泌尿器科である北 1 病棟に勤務する事に なりました。今思えば一年間が、あっという間に過ぎたように思えます。 まず私が勤務し始めた時の病棟は、患者様の入退院が多く、学生の実習指導も行っ てあり、先輩方も忙しそうでした。その中で、私は申し送りを聞いても、分からない 専門用語や略語、物品もどこにあるのか分からない等で、何も理解できていなかった ことを覚えています。 分からない事があっても笑顔で返事し、後から時間をかけて指導してくれる先輩を みつけては、こっそりと尋ねていた気がします。 早く慣れたいという思いはありましたが、先輩方も忙しそうにみえたので、変に気 を遣ってしまっていました。スタッフ間でのコミュニケーションも上手くとれず、気 持ちだけが空回りし、なかなか仕事を覚えることができなかったことが、反省点です。 そんな時、院内での新人研修がありました。人や業務に慣れないまま不安で参加す ると、新人である私達は、慣れない、不安であるという気持ちは皆同じでした。 そんな時、新人研修を指導してくださる先輩看護師さんが「みんな初めは分からな いことが当たり前だし、積極的に先輩たちに尋ねながら、慣れていけばよいよ」と優 しく笑顔で声をかけてくださいました。その時の先輩看護師さんの笑顔に、私は、と ても励まされたことを覚えています。 研修後、私は先輩看護師さんの笑顔に救われ、以前とは違ってスタッフ間でのコミ ュニケーションも次第にとる事ができ、業務も少しずつ覚えて慣れていきました。そ して改めて、コミュニケーションの重要さと、笑顔の素晴らしさに気づく事ができ、 私も患者様の前に立つ時は、常に笑顔である事に心掛け、共感的態度で接したいと思 っています。 また市民病院に勤務し、病院理念である「荒尾市民病院は地域住民の健康・維持・ 増進に努め 患者中心の安全で質の高い医療の提供を目指す」と、朝の唱和にありま した。以前勤めていた病院と比べると、以前は業務が忙しすぎて、患者中心ではなく、 看護する側が中心となり、自分自身が病院に慣れて働いていたと反省します。 しかし今回、新たな病院で勤務することになり、看護師としての初心に戻り、当院 の基準・手順のマニュアル使用での看護技術の徹底や、患者様の個別性にあった看護 の実施など、毎朝、カンファレンスを行い、スタッフ間で声を掛け合いながら患者様 と接することができていると実感します。 これからも、とても励まされ、勉強になった院内研修への参加や、2年目の看護師 として、一生懸命に頑張っていきたいと思います。 ☆一般演題☆ セッション Ⅱ 1.当院人間ドック受診者における生活習慣と喫煙の関連性について ~保健指導に役立てるために~ 健康管理センター ○谷口朋子 桑田幸恵 鶴田敬一郎 【背景】 ①生活習慣病が重なったメタボリックシンドロームは将来心血管疾患発症に関 連している。 ②心血管疾患発症の危険因子として喫煙がある。 【目的】 生活習慣病と関係のある8つの生活習慣の項目について、喫煙との関係を検討す ることにより、メタボリックシンドローム罹病予防の為の保健指導に役立てる。 【対象】 H20 年 4 月~H20 年 7 月に当院人間ドック受診者 1033 名のうち、男性 619 名を対 象とした(平均年齢 50.0 歳)。 喫煙群 307 名(49.4%) 非喫煙群 312 名(50.6%) 【方法】 喫煙群・非喫煙群の生活習慣病と関係のある項目について問診を行い、将来メタ ボリックシンドローム罹病の可能性について検討した。 【成績】 喫煙者においては、朝食欠食、寝前 2 時間以内に夕食を摂る事が多く、運動習慣 がないが非喫煙者より有意に多かった。 【結語】 喫煙者が将来メタボリックシンドロームに罹病しやすい生活習慣を持っている。 喫煙者については、メタボリックシンドローム罹病予防に結びつく生活習慣改善 に向けた、禁煙指導・支援を含めた多方面からの指導が重要である。 2.当院での作業療法の取り組み リハビリテーション科 ○安樂一也 坂本真樹子 塚本裕之 園田大介 今年度より、荒尾市民病院における急性期リハビリテーションの充実を図るため、 リハビリテーション科へ新たに作業療法部門が開設されました。 作業療法とは何かそれは、大きく分けて次の3つの意味合いがあります。①食事 や排泄など、基本的な活動である『日常生活活動』。②就業、仕事や役割、社会生 活を送る上で必要な『働く活動』。③色塗りや手工芸など、趣味的な意味合いを持 ち、生きがいとして感じる部分である『遊ぶ・楽しむ活動』があります。当院は急 性期病院としての役割を担っており当院の作業療法の訓練としては、現在日常生活 活動である食事動作、トイレ動作など、仕事・生産的活動の訓練として家事動作訓 練、遊び・余暇活動としては、風船バレーや趣味的な活動などを行っています。ま た、上肢機能訓練、高次脳機能訓練等の訓練も随時実施しています。 訓練を通して、獲得した動作を病棟で実行していただき、 「できる ADL」と「して いる ADL」の差が少なくなるように他職種への連携等を行っています。 そこで今回、当院での作業療法の取り組みについて紹介させて頂きたいと思いま す。 3.有効的な血液培養検査とプロカルシトニンの検査報告 細菌検査 ○西田志保 山田洋子 宮本典昭 【はじめに】血液培養検査は、全身感染の有無を確認し、特に敗血症に対する迅速か つ的確な診断ならびに治療方針を立てる為、また原因微生物の分離・同定・薬剤感受 性につなげる為に実施されている。新項目として取り入れたプロカルシトニン(PC T)検査は、菌血症の証明は必要とせず培養の結果とは、全く別の視点から、敗血症 の早期診断、重症度及び予後予測、治療効果の判定に役立つ、細菌感染症のマーカー として注目を浴びている検査である。 両検査を、同時に実施することにより、診療に貢献できると思われる。 熊本県微生物ネットワーク研究会(参加施設 11 施設)で調査した、血液培養の依 頼件数と、陽性率の集計で、当院は依頼件数が少なく、陽性率が高いことが判明した。 どの様に改善すれば、依頼件数が増加するのか、血液培養の実施状況を調査すること にした。又、PCT検査の結果を血液倍培養結果と併せて報告する。 【方法】参加施設に次の項目でアンケート調査を実施した。1.1 患者1回につき依頼 セット数 2.採血実施者 3.採血部位 4. 採血部位の消毒方法について。 〔結果・考察〕1、1 患者 1 依頼につき 2 セットの傾向にある 2、看護師中心の実施 傾向である。3、上腕部の静脈からの採血が多い傾向にある。4 採血部位が上腕など 変化したことより、アルコールのみの消毒で簡素化されている施設もあった。当院の 陽性率が、高かったのは、菌血症を起しているような重症患者のみ、実施している傾 向にある。 【対象】平成 20 年 1 月から 6 月に実施されたPCT検査 53 件について 【検査結果・症例】陰性 0.5(ng/ml)未満 26 件 陽性 0.5~2.0 8 件 2.0~ 10.0 5 件 PCT10.0 以上 14 件 である。症例 1、PCT10.0 以上 血液培養 4/4 ボトルより肺炎球菌が検出。肺炎球菌による細菌性重症敗血症と診断。症例 2、 PCT10.0 以上 血液培養 2/2 ボトルより肺炎桿菌が検出。肺炎桿菌による細菌性重 症敗血症と診断。 症例 3、PCT0.5 未満 血液培養依頼無し βD―グルカン> =300 で深在性真菌症による敗血症と診断され細菌性が否定された症例である。 【まとめ】PCT検査で、細菌感染による敗血症を迅速に診断し、同時に血液培養検 査を実施することで、原因微生物を分離・培養し薬剤感受性が可能となる。結果とし て早期診断、早期治療、早期退院とつながり、私達が目指すDPCに貢献できると考 える。 ☆一般演題☆ セッションⅢ 1. 相談支援センターの役割 2. 相談支援センター ~がん患者の退院支援~ ○齊木ゆかり 村上裕子 湯藤陽子 江口美和子 はじめに 相談支援センターの患者への支援は、患者や家族からの直接の相談と、院内ス タッフの患者に対する情報提供から始まり、院内外問わず適切な部署・機関との 連携によって進めていく。多くの方々に相談支援センターの業務内容を理解した 上で、患者に対する様々な情報提供をお願いする必要があるため、先ず相談支援 センターの概要を説明する。次に、院内外の連携の必要性を述べるために、末期 がん患者の退院支援に関わり、院内連携・地域医療連携の重要さを再確認した事 例を報告する。 (1)相談支援センターの概要 相談支援センターは、地域医療連携室・医療福祉相談室から構成されている。本 年度4月~8月までの相談概要は以下の通りである。 ○相談件数 ○患者内訳 相談件数 患者内訳 相談件数 348 94 182 7 201 174 125 96 59 66 35 43 区 分 入 院 43 47 183 2 そ の 他 開 放 型 病 受 付 経 済 的 困 窮 家 庭 問 題 調 整 ・受 診 関 係 在 宅 療 養 支 援 診 察 傾 聴 心 理 支 援 退 院 支 援 介 護 保 険 関 係 社 会 保 障 制 度 医 療 保 険 制 度 障 害 者 福 祉 制 度 癌 患 者 支 援 セ カ ン ド オ ピ ニ オ ン 400 350 300 250 200 150 100 50 0 区 分 外 来 ○利用者内訳 利用者内訳 310 308 その他 本人 243 家族 医療・介護機関 2、事例報告 1790 2、事例報告 A 氏 80代男性 (病名)胃がん 病名・予後の認知有。治療拒否。がんの進行後、転移等詳細不明。 (家族構成)独居。家族等は遠方在住。 (本人の意向)一日でも早く自宅に帰りたい。施設等の入所拒否。 (利用したサービス)在宅医・訪問看護・訪問介護・ケアマネジャー・ 食事サービス・地域包括支援センター 3、考察 この事例では、自宅退院が困難な患者に対して、各種制度を活用し地域の関係機関 と連携を図ることにより本人の希望である自宅に帰られた。患者は退院から約2ヶ月 後に死亡されたが、最期まで自宅で過ごされた。最期を自宅で迎えることが、本人の 強い希望であった為、本人の意向に添った支援を実施したと考える。しかし、看取り を考えた時、果たしてこの支援が正しかったのか自問自答している。 相談支援センターの業務は、センターのみで完結できるものは少ない。各部署から の患者に対する情報を得て、それによりセンターの支援が始まる。よって各部署がセ ンターの業務内容を把握し、センターに対して情報提供をしていただく必要がある。 患者への切れ目のない支援の実践のためには、院内の協力体制の構築という院内連携 が必要である。そして院内連携を円滑にする事が、より良い地域医療連携に繋がると 考える。 2.ICUにおける過剰抑制軽減への取り組み ~上肢抑制基準表による抑制の基準化~ 南B1病棟 ○大久保 美和 杉本 久美子 寺本 清美 酒井 由美子 藤本 康子 1999 年頃より、抑制をしない医療といわれる中で、ICUのようなクリティカルケア の場においては、患者の安全を守る為の抑制が存在する。当ICUでは、入院時に身 体抑制同意書はとっているが、当院の身体抑制マニュアルの活用ができていない。抑 制の開始・継続・解除は看護師個々の判断に任されており、過去数年を振り返ると、 生命維持に必要性の高いルートの自己抜去が報告されている。自己抜去のリスクを考 えると、抑制が適切か判断することなく継続され、過剰に抑制が行われている可能性 がある。 2006 年日本救急看護学会で、鳥取県立中央病院の、抑制基準フロー図使用による不 必要な抑制の軽減の効果が分かっている。そこで当ICU入室患者の意識レベル、転 倒転落危険度、ルートの種類、ルート触り行為の有無、上肢の動き(Dejong の分類)、 抑制の種類を調査した。結果、前期775症例中、意識レベル1~30が50%と最 も多く、転倒・転落危険度はⅡが40%、Ⅲが60%、抜管による生命の危険が大き いルートがある患者は54%であった。上肢の動きを Dejong の分類よりみると、2 a~5が86%、ルートを構わず体動、ルートを気にして触る患者が9%であった。 抑制方法はリムホルダー使用が77%であった。これらの結果を基に、身体抑制マニ ュアルと、先行文献を参考に抑制の開始・継続・方法変更・解除の判断基準として上 肢抑制基準表を作成した。前期・後期の症例に対し、過剰抑制の現状を、上肢抑制基 準表と一致した場合を適正、それ以上を過剰抑制として調査した。前期症例では1 4%、後期症例では11%の過剰抑制があった。急性期看護で、患者の状況の変化が 著しい場面において、抑制方法の変更が出来ていないことが過剰抑制につながってい ると考えられる。そこで、意識レベル別のフローチャート式上肢抑制基準表を作成し、 各勤務で、状況・状態を再評価し、統一した基準でアセスメントできたことが、3% だが過剰抑制の軽減につながったのではないかと考える。 今後も、患者の安全を守りながら上肢抑制基準表の再評価を行っていき、最小限度 の身体抑制に努めていく必要がある。 3.無菌室(クリーンルーム)入室患者への調査に基づいた看護支援の検討 中央病棟4階 ○松島 美由紀 竹内 由美子 鹿野 美佐子 田上 姫美子 はじめに クリーンルームで生活する患者にとって、苦痛やストレスがあるのは先行研究から も明らかであり、当病棟でもクリーンルームに入室された患者との関わりからも感じ られていた。 今回、医療者として患者が必要としている関わりについて知るために、入室患者を 対象とした調査を実施。調査結果から見えてきた、患者や医療者の抱える問題から、 クリーンルームに入室する患者への指導や関わりの現状を分析し、支援・指導方法の 改善を検討した。 Ⅰ.研究目的 1.調査を実施することで現状を把握し、問題点やその原因となるものの抽出す る。 2.抽出結果を分析し、患者の状況に応じた関わりと、指導に必要な要因を導き 出す。 Ⅱ.調査対象と研究方法 中央病棟4階入院患者1名と、中央病棟3階入院患者2名の計3名に対し、研 究メンバーにより作成した調査票に基づいて、看護師2名で面接・インタビュー を行い、記録をする。 調査した項目を8項目(①クリーンルームの入室説明 ②精神状態 ③スト レスの対応④面会状況 ⑤家族との関わり ⑥治療上の制限 ⑦スタッフの指 導・対応 ⑧クリーンルームの設備)に分類し、分析を行う。 Ⅲ.結論 1.調査結果から現状が分かり、現状と問題点を抽出した。 1)閉鎖的環境によって、患者はより不安や孤独感を感じている。 2)制限された生活環境に、適応しようと努力している。 3)クリーンルームで療養するためには、家族の支援は重要である。 4)医療者は、患者の状況を理解した指導と関わりが必要である。 5)家族の支援と、医療者の関わりによって、患者は精神的安定が保たれ、治 療に専念できると考えられる。 2.抽出結果からの分析により、患者が必要としている看護支援の要因を検討し た。 1)既存の患者用マニュアルの見直しと作成。 2)スタッフを対象とした勉強会の開催。 3)ケースカンファレンスにより、患者の状況を把握し、情報の共有を図る。 おわりに クリーンルームという特殊な環境においては、患者が落ちついて療養に専念できる 環境調整がより必要であり、医療者は、患者に応じた指導と関わりに努めなければな らないと考えた。今回の調査結果には、2つの病棟の指導方法に関する相違は入って おらず、当病棟独自の結果ではないが、一般的なクリーンルーム入室患者への看護支 援についての考察は出来たと考える。 今後は、当病院に設置されたクリーンルーム入室患者全員に対する統一した指導と、 関わりが出来るよう取り組んで行きたい。
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